特許第6193735号(P6193735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193735
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/20 20060101AFI20170828BHJP
   B62K 5/01 20130101ALI20170828BHJP
   B62M 7/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B62K25/20
   B62K5/01
   B62M7/06
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-235358(P2013-235358)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-93627(P2015-93627A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋田 浩平
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143269(JP,A)
【文献】 国際公開第97/010967(WO,A1)
【文献】 特開昭62−74788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/20
B62K 5/00−5/027
B62M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、
車幅方向に延びる揺動軸が設けられる車体フレームと、
前記駆動輪を駆動するための駆動源と、
基端部が前記揺動軸回りに揺動可能に前記車体フレームに取り付けられ、先端部が前記駆動輪を回転可能に支持するスイングアームと、
前記駆動源から出力される回転動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達機構と、を備え、
前記スイングアームは、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され、
前記動力伝達機構は、前記スイングアームの内部に設けられ、前記動力伝達機構の少なくとも一部が、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され
前記駆動輪は、左右一対設けられ、
前記スイングアームは、前記左右一対の駆動輪の車幅方向内側に配置される、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記駆動源は、出力軸が車幅方向中央部に位置するように配置される、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記駆動源は、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置される、請求項1または2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
駆動輪と、
車幅方向に延びる揺動軸が設けられる車体フレームと、
前記駆動輪を駆動するための駆動源と、
基端部が前記揺動軸回りに揺動可能に前記車体フレームに取り付けられ、先端部が前記駆動輪を回転可能に支持するスイングアームと、
前記駆動源から出力される回転動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達機構と、を備え、
前記スイングアームは、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され、
前記動力伝達機構は、前記スイングアームの内部に設けられ、前記動力伝達機構の少なくとも一部が、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され、
前記駆動輪は、左右一対設けられ、
前記駆動源は、左右一対設けられ、
前記動力伝達機構は、左右一対設けられ、前記左右一対の駆動源のそれぞれから出力される回転動力を前記左右一対の駆動輪のそれぞれに伝達するように構成される鞍乗型車両。
【請求項5】
駆動輪と、
車幅方向に延びる揺動軸が設けられる車体フレームと、
前記駆動輪を駆動するための駆動源と、
基端部が前記揺動軸回りに揺動可能に前記車体フレームに取り付けられ、先端部が前記駆動輪を回転可能に支持するスイングアームと、
前記駆動源から出力される回転動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達機構と、を備え、
前記スイングアームは、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され、
前記動力伝達機構は、前記スイングアームの内部に設けられ、前記動力伝達機構の少なくとも一部が、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され、
前記駆動源は、電気モータであり、
前記電気モータは、前記スイングアームに支持されて、当該スイングアームとともに前記揺動軸回りに揺動可能に構成され、
前記電気モータは、前記揺動軸と平面視においてオーバーラップするように配置される鞍乗型車両。
【請求項6】
前記電気モータは、回転軸が前記揺動軸と同軸に配置される、請求項5に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記駆動源は、電気モータであり、
前記電気モータは、回転軸が前記揺動軸と同軸に配置されるように前記スイングアームに支持されて、当該スイングアームとともに前記揺動軸回りに揺動可能に構成される、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動二輪車等の鞍乗型車両においては、電気モータ等の駆動源の回転動力を用いて駆動輪を駆動する。このような鞍乗型車両において、駆動源および駆動源から出力される回転動力を駆動輪に伝達する動力伝達機構を、駆動輪である後輪を片持ち支持するスイングアーム内に設ける構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−105141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、後輪を片持ち支持するスイングアームは、車体の幅方向一方側に配設されるため、車幅方向の重量バランスが悪くなる場合がある。鞍乗型の車両においては、左右で同じ旋回をするために運転者が車体を倒し込む力を左右で変えなければならなくなる。
【0005】
本発明は、車幅方向の重量バランスを向上させ、操作性を向上させることができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明のある形態に係る鞍乗型車両は、駆動輪と、車幅方向に延びる揺動軸が設けられる車体フレームと、前記駆動輪を駆動するための駆動源と、基端部が前記揺動軸回りに揺動可能に前記車体フレームに取り付けられ、先端部が前記駆動輪を回転可能に支持するスイングアームと、前記駆動源から出力される回転動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達機構と、を備え、前記スイングアームは、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され、前記動力伝達機構は、前記スイングアームの内部に設けられ、前記動力伝達機構の少なくとも一部が、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置されるものである。
【0007】
上記構成によれば、動力伝達機構の少なくとも一部が平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置され、当該動力伝達機構が内蔵されたスイングアームが平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置されるため、車幅方向の重量バランスが向上し、操作性が良くなる。特に、鞍乗型車両においては車幅方向の重量バランスが左右対称となることは操作性向上に効果的である。
【0008】
前記駆動源は、出力軸が車幅方向中央部に位置するように配置されてもよい。これにより、動力伝達機構を車幅方向中心線に沿って容易に配置することができ、車幅方向の重量バランスを向上させることができる。
【0009】
前記駆動輪は、前記スイングアームの左右に配置される左右一対の駆動輪として構成されてもよい。これにより車両の車幅方向の重量バランスを向上させることができる。
【0010】
前記駆動源は、平面視において車幅方向中心線に対して対称に配置されてもよい。駆動源は車両を構成する要素の中で比較的重い要素であるため、これを左右対称に配置することにより車両の車幅方向の重量バランスを向上させることができる。
【0011】
前記駆動輪は、左右一対設けられ、前記駆動源は、左右一対設けられ、前記動力伝達機構は、左右一対設けられ、前記左右一対の駆動源のそれぞれから出力される回転動力を前記左右一対の駆動輪のそれぞれに伝達するように構成されてもよい。駆動源と駆動輪との間の各構成を左右対称に配置することにより、車両の車幅方向の重量バランスを向上させることができる。
【0012】
前記駆動源は、電気モータであり、前記電気モータは、前記スイングアームに支持されて、当該スイングアームとともに前記揺動軸回りに揺動可能に構成され、前記電気モータは、前記揺動軸と平面視においてオーバーラップするように配置されてもよい。これにより、スイングアームの揺動によって生じる慣性モーメントを低減することができ、スイングアームの支持剛性を過剰にすることなく、電気モータをスイングアームに支持させることができる。
【0013】
前記電気モータは、回転軸が前記揺動軸と同軸に配置されてもよい。これにより、スイングアームの揺動によって生じる慣性モーメントを低減することができ、スイングアームの支持剛性を過剰にすることなく、電気モータをスイングアームに支持させることができる。
【0014】
本発明の他の形態に係る鞍乗型車両は、駆動輪と、車幅方向に延びる揺動軸が設けられる車体フレームと、前記駆動輪を駆動するための駆動源と、基端部が前記揺動軸回りに揺動可能に前記車体フレームに取り付けられ、先端部が前記駆動輪を回転可能に支持するスイングアームと、前記駆動源から出力される回転動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達機構と、を備え、前記駆動源は、電気モータであり、前記電気モータは、回転軸が前記揺動軸と同軸に配置されるように前記スイングアームに支持されて、当該スイングアームとともに前記揺動軸回りに揺動可能に構成されるものである。上記構成によれば、電気モータの回転軸がスイングアームの揺動軸と同軸に配置されるため、これにより、スイングアームの揺動によって生じる慣性モーメントを低減することができ、スイングアームの支持剛性を過剰にすることなく、電気モータをスイングアームに支持させることができる。したがって、操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鞍乗型車両によれば、車幅方向の重量バランスを向上させ、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両の右側面図である。
図2図2図1に示す鞍乗型車両の上面図である。
図3図3図1に示す鞍乗型車両に適用されるスイングアームを示す水平断面図である。
図4図4図3のIV−IV断面図である。
図5図5は本発明の第2実施形態に係る鞍乗型車両の上面図である。
図6図6は本発明の第3実施形態に係る鞍乗型車両の上面図である。
図7図7図6に示す鞍乗型車両の電気モータおよびスイングアームの側面図である。
図8図8は本発明の第4実施形態に係る鞍乗型車両の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、特に言及しない場合にはその重複する説明を省略する。
【0019】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態においては、鞍乗型車両として、駆動源が電気モータである鞍乗型電動車両について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両の右側面図である。図1に示すように、鞍乗型車両1は、車体を構成する車体フレーム3と、従動輪である前輪4と、駆動輪である後輪5とを備えている。車体フレーム3は、前下がりに傾斜したヘッドフレーム6と、ヘッドフレーム6の上端部から後方に延びる左右一対のアッパーフレーム7と、ヘッドフレーム6の下端部から後方に延びる左右一対のロアフレーム8と、アッパーフレーム7の前部とロアフレーム8の前部とを上下方向に接続するフロントガセットフレーム9と、アッパーフレーム7の後部とロアフレーム8の後部とを上下方向に接続するリアフレーム36とを有する。各フレーム7〜9はパイプで形成され、互いに溶接により固定されている。
【0020】
ヘッドフレーム6は、前輪4を支持するための上下一対の前側支持部12,13を有している。前輪4には、上下一対の前輪アーム10,11の前端部が回動自在に接続され、前輪4から後方に延びる前輪アーム10,11の後端部が前側支持部12,13に接続されている。前輪アーム10,11の後端部は、前側支持部12,13に対して横方向の軸線周りに回動自在に接続されているので、前輪アーム10,11は、前側支持部12,13に対して上下に揺動自在である。前輪4には、後上方に向けて斜めに延びる左右一対のハンドル支持部材14の下端部が接続されている。ハンドル支持部材14の上端部には、車幅方向内方に向けて突出するハンドルグリップ15が設けられている。
【0021】
アッパーフレーム7およびロアフレーム8の後端部には、クロスフレーム19,20を介して、リアフレーム36が固定されている。リアフレーム36の後部が、後輪5を支持するスイングアーム17の基端部に回動自在に接続されている。これにより、スイングアーム17は、車幅方向に延びる揺動軸50回りに揺動可能にリアフレーム36に取り付けられる。スイングアーム17は、車幅方向両端部(揺動軸50の軸線方向両端部)においてリアフレーム36に支持される。前述したように、リアフレーム36は、車幅方向に延びる揺動軸50が設けられる車体フレーム3の一部を構成する。
【0022】
スイングアーム17は、中空形状である。スイングアーム17には、走行駆動用の駆動源である電気モータ18が取り付けられる。さらに、スイングアーム17には、電気モータ18から出力される回転動力を後輪5に伝達する動力伝達機構60(図3参照)が収容されている。スイングアーム17内に動力伝達機構60を設けることにより、駆動系を簡単かつコンパクトな構成にすることができる。スイングアーム17の先端部は、駆動輪である後輪5を回転可能に支持する。
【0023】
車体フレーム3には、前輪4と後輪5との間において、電気モータ18に電力を供給するための蓄電ユニット22が搭載されている。蓄電ユニット22は、全体として円柱形状であり、円筒形状の外形を有している。蓄電ユニット22は、蓄電装置24と、蓄電装置24に電気的に接続されかつ蓄電装置24の後方に配置されたインバータ26とを備えている。インバータ26と電気モータ18とは前後方向に延びる3本の高圧電線27(三相交流)により接続されている。
【0024】
ロアフレーム8は、ヘッドフレーム6から後方に水平に延びたフレーム前部8aと、フレーム前部8aの後端から後方に延びて且つ蓄電ユニット22に沿うように前下がりに傾斜したフレーム後部8bとを有している。ロアフレーム8のフレーム後部8bの下方には空間が形成されており、ライダーが足裏を載せるためのステップ部材30が車体フレーム3から当該空間を通って延出されている。車体フレーム3には、車体フレーム3を上から覆うドーム状のカウル31が取り付けられている。カウル31の後方かつスイングアーム17の上方には、ライダーが跨いで着座するためのシート32が配置されている。シート32は、図示しないシートレールにより車体フレーム3に取り付けられている。
【0025】
図2は、図1に示す鞍乗型車両の上面図である。図2に示すように、鞍乗型車両1の構造は、左右対称である。蓄電ユニット22は、平面視で、車両1の車幅方向中心を通過して車体前後方向に延びる中心線(車幅方向中心線)L0上に配置されている。蓄電ユニット22の軸線は、平面視で中心線L0と重なっている。スイングアーム17は、車体の車幅方向中央部に配設される。電気モータ18を含むスイングアーム17も、平面視で車体前後方向に延びる中心線L0上に配置されている。
【0026】
本実施形態では、蓄電ユニット22およびスイングアーム17の両方が、平面視で中心線L0に対して対称に形成されている。さらに言えば、前輪4、前輪アーム10,11、蓄電ユニット22、電気モータ18、スイングアーム17(図1参照)、および後輪5が、車幅方向中心を通過する前後方向に延びる鉛直面に対して対称に形成されている。すなわち、後輪5は、スイングアーム17の左右に配置される左右一対の駆動輪として構成される。これらの構成を左右対称に配置および形成することにより車両1の車幅方向の重量バランスを向上させることができる。
【0027】
電気モータ18は、シート32の真下に位置している。蓄電ユニット22は、カウル31で上方から覆われている。カウル31の後部31bは、カウル31の前部31aよりも車幅方向の幅が狭い。平面視において、ロアフレーム8のフレーム前部8aは、カウル31により覆われているが、ロアフレーム8のフレーム後部8bは、カウル31の狭幅な後部31bより車幅方向外方にはみ出している。アッパーフレーム7のフレーム後部7bは、カウル31より車幅方向にはみ出していない。
【0028】
図3は、図1に示す鞍乗型車両に適用されるスイングアームを示す水平断面図である。図3に示すように、動力伝達機構60は、平面視において中心線L0に対して対称に配置されている。これに加えて、前述したように、動力伝達機構60が内蔵されたスイングアーム17が平面視において車幅方向中心線L0に対して対称に配置される。このため、鞍乗型車両1の車幅方向の重量バランスが向上し、操作性が良くなる。特に、鞍乗型車両1においては車幅方向の重量バランスが左右対称となることは操作性向上に効果的である。
【0029】
また、電気モータ18は、回転動力を外部に出力する出力軸40が車幅方向中央部に位置するように配置される。これにより、動力伝達機構60を中心線L0に沿って容易に配置することができ、車幅方向の重量バランスを向上させることができる。なお、電気モータ18の出力軸40は、ロータ(図示せず)の回転軸に一致する。
【0030】
電気モータ18は、出力軸40の軸線が車幅方向に延びている。また、電気モータ18は、出力軸40の軸線に沿って左右一対(2つ)設けられている。この左右一対の電気モータ18は、それぞれの出力軸40が互いに車幅方向内側に向くように対向配置されている。これによって、駆動源を構成する左右一対の電気モータ18は、平面視において中心線L0に対して対称に配置される。駆動源は車両1を構成する要素の中で比較的重い要素であるため、これを左右対称に配置することにより車両1の車幅方向の重量バランスを向上させることができる。
【0031】
左右一対の電気モータ18および左右一対の駆動輪(後輪5)に対応して、動力伝達機構60も左右一対設けられる。左右一対の動力伝達機構60は、1つのスイングアーム17内に収容される。左右一対の動力伝達機構60は、左右一対の電気モータ18のそれぞれから出力される回転動力を左右一対の後輪5のそれぞれに伝達するように構成される。スイングアーム17が車両1の車幅方向中央部に沿って配設されることにより、スイングアーム17に取り付けられる左右一対の電気モータ18、左右一対の動力伝達機構60および左右一対の後輪5の車幅方向の重量バランスが平面視において中心線L0に対して対称となる。これにより、操作性が良くなる。また、左右一対の電気モータ18および左右一対の動力伝達機構60を用いて左右一対の後輪5を左右独立に駆動することができる。このため、左右一対の電気モータ18で異なる出力制御を行うことにより、左右一対の後輪5で異なる回転数制御を行うことができる。したがって、車両1の旋回制御を積極的に行うことができる。
【0032】
電気モータ18は、スイングアーム17に支持されている。電気モータ18は、ロータおよびステータを含む全体がスイングアーム17とともに揺動軸50回りに揺動可能に構成されている。さらに、電気モータ18は、揺動軸50と平面視においてオーバーラップするように配置される。本実施形態において、電気モータ18は、スイングアーム17の揺動軸50の軸線Sが電気モータ18を貫通するように配置される。より詳しくは、電気モータ18は、回転軸に一致する出力軸40がスイングアーム17の揺動軸50と同軸に(すなわち、出力軸40の軸線が揺動軸50の軸線Sに一致するように)配置される。これにより、揺動軸50は、平面視において電気モータ18の重心を通過している。
【0033】
電気モータ18と揺動軸50とが平面視においてオーバーラップすることにより、スイングアーム17の揺動によって生じる慣性モーメントを低減することができる。したがって、スイングアーム17の支持剛性を過剰にすることなく、電気モータ18をスイングアーム17に支持させることができる。また、駆動輪(後輪5)内に電気モータ18を配置するよりばね下重量を軽くすることができる。したがって、車両1の運動性能を向上させることができる。
【0034】
図4は、図3のIV−IV断面図である。図4に示すように、動力伝達機構60は、複数(3つ)のギヤで構成されている。より具体的には、動力伝達機構60は、電気モータ18の出力軸40に同軸固定された第1ギヤ61と、後輪5の回転軸の軸線Tに同軸固定された第2ギヤ62と、第1ギヤ61と第2ギヤ62との間に設けられ、第1ギヤ61から第2ギヤ62へ動力伝達を行う第3ギヤ63と、を有している。
【0035】
このように、複数のギヤ61〜63を用いて動力伝達機構60を構成することにより、速度変化または姿勢変化時におけるバックラッシュがチェーン駆動等より少なくなるため、伝達ロスを少なくすることができる。特に、駆動源として電気モータ18を用いる場合、減速時において電力を回生させる構成においては、伝達ロスが少ないことにより、電力変換効率を高くすることができる。
【0036】
駆動輪である左右一対の後輪5は、回転軸の軸線T上を延びて当該軸線T方向両側に開放される中空部5cをそれぞれ有する左右一対のホイール5aを有している。左右一対のホイール5aは、車幅方向内側の外周部においてスイングアーム17にベアリング64を介して軸支される。左右一対のホイール5aの車幅方向外側の外周部には、それぞれタイヤ5bが取り付けられる。
【0037】
左右一対のホイール5aの車幅方向内側の端面には、それぞれ第2ギヤ62が固定される。第2ギヤ62もホイール5aとともに、回転軸の軸線T上を延びて当該軸線T方向両側に開放される中空部5cを形成している。これにより、第2ギヤ62の内側に空気が流通するため、タイヤ5bおよび動力伝達機構60を構成するギヤ61〜63の温度上昇を好適に抑えることができる。また、中空のホイール5aに中空の第2ギヤ62が外歯車として形成されることにより、第2ギヤ62の波数を大きくすることができる。すなわち、波数の大きい第2ギヤ62と第3ギヤ63とが噛み合うことにより、動力伝達機構60における減速比を大きくすることができる。
【0038】
また、電気モータ18は、回転軸の軸線上を延びて当該軸線方向両側に開放される中空空間が形成されるように構成されてもよい。この場合、さらに、第1ギヤ61も回転軸の径方向中心部に中空部を有する構成としてもよい。これにより、電気モータ18および動力伝達機構60を構成するギヤ61〜63の温度上昇を好適に抑えることができる。
【0039】
前述したように、本実施形態においては、左右一対の電気モータ18および左右一対の動力伝達機構60が、鞍乗型車両1の中心線L0に対して左右対称に配置されている。これに代えて、左右一対の電気モータ18で共通する1組の動力伝達機構60を用いることとしてもよい。また、左右一対の動力伝達機構60を有する場合には、左右一対の動力伝達機構60を構成するギヤ61〜63の少なくともいずれか1つを接続して連動させたり、互いに遮断して左右独立駆動を可能にしたりしてもよい。
【0040】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る鞍乗型車両の上面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。図5に示すように、本実施形態の鞍乗型車両101は、電動二輪車である。車両101は、従動輪である前輪104と駆動輪である後輪105とを備えている。
【0041】
本実施形態においても、スイングアーム117の前端部における揺動軸50がシート32の下方の図示しない車体フレームに取り付けられている。また、駆動源である電気モータ18は、スイングアーム117に支持されて、当該スイングアーム117とともに揺動軸50回りに揺動可能に構成されている。
【0042】
本実施形態においては、1つの電気モータ18が、出力軸40が車幅方向に向くように配置されている。さらに、電気モータ18の出力軸40は、車幅方向中央部に位置している。電気モータ18の回転軸に一致する出力軸40の軸線は、スイングアーム117の揺動軸50の軸線Sに一致している。また、スイングアーム117は、第1実施形態と同様に、平面視において車幅方向中心線L0に対称に配置されている。動力伝達機構160は、スイングアーム117内に収容され、平面視において車幅方向中心線L0に対称に配置されている。
【0043】
このような自動二輪車においても、動力伝達機構160の少なくとも一部が平面視において車幅方向中心線L0に対して対称に配置され、当該動力伝達機構160が内蔵されたスイングアーム117が車両1の車幅方向中央部に配設される。このため、車幅方向の重量バランスが向上し、操作性が良くなる。
【0044】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る鞍乗型車両の上面図である。また、図7は、図6に示す鞍乗型車両の電気モータおよびスイングアームの側面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。図6に示すように、本実施形態の鞍乗型車両201は、電動二輪車である。車両201は、従動輪である前輪204と駆動輪である後輪205とを備えている。
【0045】
本実施形態においても、スイングアーム217の前端部における揺動軸50がシート32の下方の図示しない車体フレームに取り付けられている。また、駆動源である電気モータ18は、スイングアーム217に支持されて、当該スイングアーム217とともに揺動軸50回りに揺動可能に構成されている。
【0046】
本実施形態においては、1つの電気モータ18が、出力軸40が車両前後方向(後方)に向くように配置されている。電気モータ18は、出力軸40が車幅方向中央部に位置するように配置される。さらに、電気モータ18は、平面視において車幅方向中心線L0に対して対称に配置される。また、スイングアーム217は、第1実施形態と同様に、平面視において車幅方向中心線L0に対称に配置されている。動力伝達機構260は、スイングアーム217内に収容され、平面視において車幅方向中心線L0に対称に配置されている。
【0047】
電気モータ18は、出力軸40がスイングアーム217の揺動軸50とは軸線が一致していないが、電気モータ18は、揺動軸50と平面視においてオーバーラップするように配置される。電気モータ18の出力軸40の軸線がスイングアーム217の揺動軸50の軸線Sと一致していない場合でも、電気モータ18の重心位置をスイングアーム217の揺動軸50上に位置させることにより、スイングアーム217の揺動によって生じる慣性モーメントを低減することができ、スイングアーム217の支持剛性を過剰にすることなく、電気モータ18をスイングアーム217に支持させることができる。
【0048】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る鞍乗型車両の上面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。図8に示すように、本実施形態の鞍乗型車両301は、電動二輪車である。車両301は、従動輪である前輪304と駆動輪である後輪305とを備えている。
【0049】
本実施形態においては、1つの電気モータ18が、出力軸40が車幅方向に向くように配置されている。さらに、電気モータ18は、車幅方向中央部に位置している。電気モータ18の出力軸40の軸線は、スイングアーム317の揺動軸50の軸線Sに一致している。電気モータ18は、回転軸に一致する出力軸40が揺動軸50と同軸に配置されるようにスイングアーム317に支持されて、当該スイングアーム317とともに揺動軸50回りに揺動可能に構成される。
【0050】
電気モータ18が車幅方向中央部に位置することにより車幅方向の重量バランスが向上する。また、電気モータ18の出力軸40がスイングアーム317の揺動軸50と同軸に配置されるため、スイングアーム317の揺動によって生じる慣性モーメントを低減することができ、操作性を向上させることができる。
【0051】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する好適な態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の趣旨を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。例えば、複数の上記実施形態および変形例における各構成要素を任意に組み合わせることとしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、駆動源が電気モータ18である場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、駆動源がエンジンであってもよいし、エンジンと電気モータとを組み合わせたものであってもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、駆動輪が後輪である場合について説明したが、前輪を駆動輪とした構成についても本発明を同様に適用可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては、車体フレーム3に取り付けられた上下一対の前輪アーム10,11によって前輪4を支持する構成について説明したが、本発明が適用される鞍乗型電動車両は、これに限られない。例えば、鞍乗型電動車両は、車体フレームに支持されたフロントフォークによって前輪が指示される構造を有してもよい。
【0055】
また、第1〜第3実施形態においては、動力伝達機構60,160,260全体が平面視において幅方向中心線L0に対して対称に配置されている構成について説明したが、動力伝達機構の少なくとも一部が平面視において幅方向中心線L0に対して対称に配置されていればよい。
【0056】
また、第1実施形態においては、動力伝達機構60として複数のギヤによって駆動される構成について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、ベルト、チェーンまたはシャフトにより駆動される構成としてもよいし、ギヤを含むこれらの構成を組み合わせた構成としてもよい。
【0057】
また、第1、第2および第4実施形態で説明したように、スイングアーム17,117,317の揺動軸50と、電気モータ18の回転軸(出力軸40)とは、同軸であってもよいし、第3実施形態で説明したように、スイングアーム217の揺動軸50と、電気モータ18の回転軸とは同軸でなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、鞍乗型車両において、車幅方向の重量バランスを向上させ、操作性を向上させるために有用である。
【符号の説明】
【0059】
1,101,201,301 鞍乗型車両
3 車体フレーム
5,105,205,305 後輪(駆動輪)
17,117,217,317 スイングアーム
18 電気モータ(駆動源)
36 リアフレーム(車体フレーム)
40 出力軸
50 揺動軸
60,160,260,360 動力伝達機構
L0 車幅方向中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8