特許第6193740号(P6193740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193740
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20060101AFI20170828BHJP
   F24H 4/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F24H1/18 301Z
   F24H4/02 H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-241724(P2013-241724)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-102259(P2015-102259A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】阿部 基
(72)【発明者】
【氏名】反町 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元泰
(72)【発明者】
【氏名】本間 誠
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 亮
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−344258(JP,A)
【文献】 特開昭61−295465(JP,A)
【文献】 特開2012−163238(JP,A)
【文献】 特開2008−116147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24H 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を加熱して沸き上げる加熱手段と、前記貯湯タンクに給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク内の湯または熱の使用量から深夜時間帯に沸き上げる量を決定し、深夜時間帯の終了時刻より余裕時間前の所定時刻に深夜時間帯に沸き上げる量を沸き上げ完了するための沸き上げ開始時刻を演算するピークシフト演算手段とを備えたものにおいて、前記余裕時間を長く変更する朝方モードを設定する朝方モード設定手段を設け、前記朝方モード設定手段は、前日までの所定期間の深夜時間帯の終了時刻直前の所定時間帯の、前記貯湯タンク内の湯または熱の使用量に応じて前記余裕時間を決定することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を加熱して沸き上げる加熱手段と、前記貯湯タンクに給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク内の湯または熱の使用量から深夜時間帯に沸き上げる量を決定し、深夜時間帯の終了時刻より余裕時間前の所定時刻に深夜時間帯に沸き上げる量を沸き上げ完了するための沸き上げ開始時刻を演算するピークシフト演算手段とを備えたものにおいて、前記余裕時間を長く変更する朝方モードを設定する朝方モード設定手段を設け、前記朝方モード設定手段は、予め設定入力されている設置地域情報に基づいて前記余裕時間を決定することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記朝方モード設定手段は、給水温度に基づいた給水温度情報と、外気温度に基づいた外気温度情報と、カレンダー機能に基づいた日付情報のいずれか一つと、前記設置地域情報との組み合わせの情報に基づいて前記余裕時間を決定することを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記朝方モード設定手段は、前記リモートコントローラの所定操作がされることで前記朝方モードの設定/解除を可能としたことを特徴とする請求項1〜のいずれか項に記載の貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深夜時間帯に貯湯タンク内の湯水を沸き上げて貯湯しておく貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を加熱して沸き上げる加熱手段と、前記貯湯タンクに給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク内の湯または熱の使用量から深夜時間帯に沸き上げる量を決定し、深夜時間帯の終了時刻以前の所定時刻に深夜時間帯に沸き上げる量を沸き上げ完了するための沸き上げ開始時刻を演算するピークシフト演算手段とを備え、深夜時間帯の終了と同時に沸き上げ運転が停止されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−285659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のものでは、早朝に湯を多く消費する使用パターンのユーザーの場合、深夜時間帯の終了前かつ早朝等の沸き上げ中に多量に湯を消費すると、昼間の沸き増しが多くなり、ランニングコストが増加してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を加熱して沸き上げる加熱手段と、前記貯湯タンクに給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク内の湯または熱の使用量から深夜時間帯に沸き上げる量を決定し、深夜時間帯の終了時刻より余裕時間前の所定時刻に深夜時間帯に沸き上げる量を沸き上げ完了するための沸き上げ開始時刻を演算するピークシフト演算手段とを備えたものにおいて、前記余裕時間を長く変更する朝方モードを設定する朝方モード設定手段を設け、前記朝方モード設定手段は、前日までの所定期間の深夜時間帯の終了時刻直前の所定時間帯の、前記貯湯タンク内の湯または熱の使用量に応じて前記余裕時間を決定することで、沸き上げ完了前の早朝時間帯の給湯量等の使用量に応じて余裕時間が決定され、適切な所定時刻を定めることができ、無駄に所定時刻を早めすぎることがなく、貯湯タンクからの放熱ロスも最小限とすることができる。
【0007】
また、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を加熱して沸き上げる加熱手段と、前記貯湯タンクに給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する給湯管と、前記貯湯タンク内の湯または熱の使用量から深夜時間帯に沸き上げる量を決定し、深夜時間帯の終了時刻より余裕時間前の所定時刻に深夜時間帯に沸き上げる量を沸き上げ完了するための沸き上げ開始時刻を演算するピークシフト演算手段とを備えたものにおいて、前記余裕時間を長く変更する朝方モードを設定する朝方モード設定手段を設け、前記朝方モード設定手段は、予め設定入力されている設置地域情報に基づいて前記余裕時間を決定するため、日の出と共に活動を行うような家庭(農家など)において、適切な時刻に沸き上げを完了させることができ、利便性が向上する。
【0009】
また、前記朝方モード設定手段は、給水温度に基づいた給水温度情報と、外気温度に基づいた外気温度情報と、カレンダー機能に基づいた日付情報のいずれか一つと、前記設置地域情報との組み合わせの情報に基づいて前記余裕時間を決定するため、日の出と共に活動を行うような家庭(農家など)において、適切な時刻に沸き上げを完了させることができ、利便性が向上する。
【0010】
また、前記朝方モード設定手段は、前記リモートコントローラのの所定操作がされることで前記朝方モードの設定/解除を可能としたことで、リモコンから容易に朝方モードを設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、早朝に湯を多く消費する使用パターンのユーザーであっても、湯を使用開始する前に沸き上げを完了させることができ、電気料金の高い昼間の沸き増しを不要あるいは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態の概略構成図
図2】同第1の実施形態のピークシフト演算手段のブロック構成図
図3】同第1の実施形態の作動を説明するためのフローチャート図
図4】同第2の実施形態のピークシフト演算手段のブロック構成図
図5】同第2の実施形態の余裕時間を決定する方法の一例を説明するための図
図6】同第3の実施形態のピークシフト演算手段のブロック構成図
図7】同第4の実施形態のピークシフト演算手段のブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の第1の実施形態のヒートポンプ貯湯式給湯装置1を図面に基づいて説明する。
2は湯水を貯湯するステンレス製の貯湯タンク3を有した貯湯タンクユニット、4は貯湯タンク3内の湯水を主に深夜時間帯等の深夜時間帯に沸き上げる加熱手段としてのヒートポンプユニット、5は給湯設定温度を変更する等の操作を行うためのリモートコントローラである。
【0014】
貯湯タンクユニット2には、貯湯タンク3底部に市水を給水する給水管6と、貯湯タンク3上部から出湯する出湯管7と、給水管6から分岐された給水バイパス管8と、出湯管7からの湯水と給水バイパス管8からの水とを給湯設定温度になるように混合する給湯混合弁9と、給湯混合弁9で混合された湯が流通する給湯管10と、給湯管10途中に設けられ給湯温度を検出する給湯温度センサ11と、給湯管10途中に設けられ給湯流量を検出する給湯流量センサ12と、給水バイパス管8途中に設けられ給水温度を検出する給水温度センサ13と、貯湯タンク2の側面上下に複数設けられてそれぞれ貯湯温度を検出する貯湯温度センサ14と、給水管6に設けられ市水の給水圧を一定の圧力に減圧する減圧弁15と、貯湯タンク2内の過圧を逃がす過圧逃がし弁16と、ヒートポンプユニット4で加熱するため貯湯タンク2底部から取り出した湯水を流通させる加熱往き管17と、ヒートポンプユニット4で加熱された湯水を貯湯タンク2上部へ戻すために流通させる加熱戻り管18とが設けられている。
【0015】
また、貯湯タンクユニット2には、貯湯タンク2内の湯の熱で浴槽19からの浴水を加熱するための風呂熱交換器20と、浴槽19と風呂熱交換器20とを浴水が循環可能に接続する風呂循環回路21と、風呂循環回路21途中に設けられ浴水を循環させる風呂循環ポンプ22と、風呂循環回路21を風呂熱交換器20をバイパスして接続する熱交バイパス管23と、浴槽19からの浴水を風呂熱交換器20側へ流すか熱交バイパス管23側へ流すかを切り替える三方弁24と、浴槽19から風呂熱交換器20へ流れる浴水の温度を検出する風呂温度センサ25と、風呂循環回路21の浴水の循環の有無を検知する流水スイッチ26と、浴槽19内の水位を検出するための水位センサ27とが設けられている。
【0016】
さらに、貯湯タンクユニット2には、給湯管10から分岐されて風呂循環回路21途中に接続される湯はり管28と、湯はり管27途中に設けられ湯はり流量を検出する湯はり流量センサ29と、湯はり管28途中に設けられ湯はり温度を検出する湯はり温度センサ30と、湯はり管28途中に設けられた電磁弁よりなる湯はり開閉弁31と、湯はり開閉弁31の下流に設けられ、湯はり開閉弁31上流側の給水圧よりも浴槽19からの逆流圧が高いときに浴水を外部に排水するホッパー弁32とが設けられている。
【0017】
ヒートポンプユニット4には、冷媒を圧縮する圧縮機33と、圧縮された高温冷媒と貯湯タンク3からの湯水とを熱交換する冷媒水熱交換器34と、冷媒水熱交換器34で放熱された冷媒を減圧する膨張弁35と、低温低圧の冷媒を蒸発する蒸発器36と、圧縮機33、冷媒水熱交換器34、膨張弁35、蒸発器36を環状に接続した冷凍サイクル配管37と、蒸発器36に熱源となる外気を送風する送風機38と、外気温度を検出する外気温度センサ39と、冷媒水熱交換器34の水側に貯湯タンク3からの湯水を供給する加熱循環ポンプ40と、加熱往き管16から冷媒水熱交換器34に流入する湯水の温度を検出する入水温度センサ41と、冷媒水熱交換器34から加熱戻り管17へ流出する湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサ42とが設けられている。
【0018】
リモートコントローラ5には、給湯機に関する各種の情報(給湯設定温度、風呂設定温度、風呂設定湯量、残湯量、給湯機の作動状態等)を表示する表示部43と、給湯設定温度および風呂設定温度あるいは風呂設定湯量を設定操作するための設定スイッチ44と、浴槽19へ風呂設定湯量の湯はりを指示する湯はりスイッチ45等の複数の操作スイッチ46とが設けられている。
【0019】
47は貯湯タンクユニット2内に設けられ、給湯温度センサ11、給湯流量センサ12、給水温度センサ13、貯湯温度センサ14、風呂温度センサ25、流水スイッチ26、水位センサ27、湯はり流量センサ29、湯はり温度センサ30の検出値が入力され、給湯混合弁9、風呂循環ポンプ22、三方弁24、湯はり開閉弁31の作動を制御すると共に、ヒートポンプユニット4およびリモートコントローラ5と必要な情報を送受信可能に接続された貯湯制御手段である。ここで、貯湯制御手段47は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0020】
48はヒートポンプユニット4内に設けられ、外気温度センサ39、入水温度センサ41、沸き上げ温度センサ42の検出値が入力され、圧縮機33、膨張弁35、送風機38、加熱循環ポンプ40の作動を制御すると共に、貯湯制御手段47と必要な情報を送受信可能に接続された加熱制御手段である。ここで、加熱制御手段48は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0021】
49はリモートコントローラ5内に設けられ、操作スイッチ46の操作信号や貯湯制御手段47からの信号を受け、表示部43に予め定められた必要な表示を行わせると共に、貯湯制御手段47に操作信号に基づく信号を送信するリモコン制御手段である。ここで、リモコン制御手段49は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0022】
ここで、貯湯制御手段47と加熱制御手段48とリモコン制御手段49は互いに必要な情報を授受して、互いに連携してヒートポンプ貯湯式給湯機1の作動を制御する制御手段として振る舞うものである。
【0023】
図3は、貯湯制御手段47の要部の制御ブロック図で、51は深夜時間帯(長さX)の開始時刻t1と終了時刻t2を設定する深夜時間帯設定手段で、深夜時間帯設定手段51は予め複数の電力会社の電力料金制度に対応した深夜時間帯Xの開始時刻t1とt2が複数セット記憶されており、ユーザーが選択した電力料金制度に応じた深夜時間帯Xが設置業者によって設定されるものである。
【0024】
52は給湯流量センサ12で検出する給湯流量や湯はり流量センサ28で検出する湯はり流量等の情報に基づいて一日分の給湯等の使用熱量Qを算出して複数日分記憶する使用熱量記憶手段である。使用熱量Qは、常時給湯流量センサ12および湯はり流量センサ29の出力を監視し、給湯設定温度と給水温度と給湯流量および風呂設定温度と給水温度と湯はり流量とからそれぞれ給湯の使用熱量と湯はりの使用熱量を算出し加算することで算出するもので、これにさらに風呂熱交換器20で浴槽水の加熱に消費された熱量の概算分を加算するようにしてもよい。
【0025】
53は予め設定されている貯湯タンク1の有効容量Vから、貯湯温度センサ13で検出する沸き上げ可能な上限温度以上の残湯量Vzを減算して貯湯タンク1内に沸き上げる容量(沸き上げ必要量Vn)を算出する沸き上げ必要量算出手段である。
【0026】
54は使用熱量記憶手段52で記憶している過去複数日分の使用熱量Q等からヒートポンプユニット30で沸き上げる湯の温度(沸き上げ目標温度Ts)を決定する沸き上げ目標温度決定手段である。
【0027】
55は沸き上げ必要量算出手段53で算出された沸き上げ必要量Vnを沸き上げ目標温度決定手段54で決定した沸き上げ目標温度Tsに沸き上げるのに必要な時間(必要沸き上げ時間H)を、ヒートポンプユニット30の定格加熱能力Wと給水温度Twを用いて算出する沸き上げ必要時間算出手段である。
【0028】
56は深夜時間帯設定手段51の深夜時間帯Xの情報t1、t2と、沸き上げ必要時間算出手段56の必要沸き上げ時間Hの情報とに基づき、沸き上げ運転の開始時刻(沸き上げ開始時刻tps)を決定する沸き上げ開始時刻設定手段で、深夜時間帯Xの終了時刻の余裕時間Y(ここでは30分間)前の所定時刻t3から必要沸き上げ時間Hだけ遡った時刻を沸き上げ開始時刻tpsとするものである。
【0029】
57は本発明の特徴的構成である朝方モード設定手段で、余裕時間Yを大きな値に変更して沸き上げ運転の終了時刻を早める朝方モードを設定するもので、ここではリモートコントローラ5の所定操作によって余裕時間Yを初期値(ここでは30分)から所定時間単位(ここでは30分単位)で上限時間(ここでは3時間または午前4時)までの範囲で変更可能としており、余裕時間Yが初期値に設定されると朝方モードが解除されるようにしている。
【0030】
これら深夜時間帯設定手段51、使用熱量記憶手段52、沸き上げ必要量算出手段53、沸き上げ目標温度決定手段54、沸き上げ必要時間算出手段55、沸き上げ開始時刻決定手段56、朝方モード設定手段57で沸き上げ開始時刻tpsを演算するピークシフト演算手段を構成しているものである。
【0031】
そして、貯湯制御手段47は、現在時刻が沸き上げ開始時刻決定手段56で決定した沸き上げ開始時刻tpsになると、沸き上げ運転を開始すべく加熱制御手段48に対して駆動指令を出力するようにしているものである。
【0032】
次に、本発明の沸き上げ動作時の作動を図3のフローチャート図に基づいて説明する。
まず深夜時間帯Xの開始時刻t1が到来すると(ステップS1でYes)、貯湯制御手段47は全ての貯湯温度センサ14の検出温度を確認し、沸き上げ可能な上限温度以上の残湯量Vzを算出し(ステップS2)、沸き上げ必要量算出手段54にて予め記憶されている貯湯タンク1の有効容量Vから残湯量Vzを減算して沸き上げ必要量Vnを算出する(ステップS3)。
【0033】
次に沸き上げ目標温度決定手段55にて使用熱量記憶手段53で記憶されている過去複数日分の使用熱量Qに基づいて沸き上げ目標温度Tsを決定する(ステップS4)。ここでは沸き上げ目標温度決定手段55は使用熱量Qに基づいて沸き上げ目標温度Tsを決定するためのデータテーブルが予め記憶されており、使用熱量Qが多いほど沸き上げ目標温度Tsは高い温度に決定されるようにしている。なお、沸き上げ目標温度Tsの決定に際して、外気温度センサ39で検出する外気温度が低いほど沸き上げ目標温度Tsを高い温度となるように補正するようにしてもよいものである。
【0034】
そして沸き上げ必要時間算出手段56にて、沸き上げ必要量Vnに沸き上げ目標温度Tsから給水温度センサ13で検出していた最低給水温度Twを減算した値を、予め記憶されているヒートポンプユニット3の定格加熱能力Wで除算して、沸き上げ必要量Vnの湯水を沸き上げ目標温度Tsまで沸き上げるのに必要な時間(必要沸き上げ時間H)を算出する(ステップS5)。
【0035】
次に朝方モード設定手段57によって余裕時間Yが初期値以外の値に変更されているかどうかを確認し(ステップS6)、沸き上げ開始時刻決定手段56は、確認した余裕時間Yだけ深夜時間帯Xの終了時刻から遡った所定時刻t3から、必要沸き上げ時間Hだけ遡った時刻を沸き上げ開始時刻tpsとする(ステップS7)。
【0036】
そして、貯湯制御手段47は現在時刻が沸き上げ開始時刻決定手段56で決定した沸き上げ開始時刻tpsとなると(ステップS8でYes)、加熱制御手段48に対して沸き上げ運転の開始指示を出力し、加熱制御手段48は圧縮機33や膨張弁35、送風機38を駆動してヒートポンプサイクルによる沸き上げ運転を開始する(ステップS9)。
【0037】
貯湯タンク1最下部の貯湯温度センサ14が所定の沸き上げ終了温度以上を検出すると、沸き上げが終了したと判断して(ステップS10でYes)、貯湯制御手段47は沸き上げ運転の停止指示を加熱制御手段48に対して出力し、加熱制御手段48は圧縮機33や膨張弁35、送風機38を駆動停止処理してヒートポンプサイクルによる沸き上げ運転を停止する(ステップS11)。
【0038】
なお、沸き上げが終了する前に沸き上げを完了させる予定の時刻である所定時刻t3になっても沸き上げが完了していない場合は、深夜時間帯Xの終了時刻t2を限度に沸き上げ完了するまで沸き上げ運転を継続するようにしている(ステップS12)。
【0039】
このように、沸き上げ運転を完了させる予定の時刻である所定時刻t3を早める朝方モードを設定する朝方モード設定手段を設けたので、早朝に湯を多く消費する使用パターンのユーザーであっても、湯を使用開始する前に沸き上げを完了させることができ、電気料金の高い昼間の沸き増しを不要あるいは抑制することができると共に、リモートコントローラ5の所定操作によって所定時間単位で余裕時間Yを変更可能としたことで、ユーザーが簡便に沸き上げ完了させる時刻を設定することができ、ユーザーが望む時刻までに沸き上げを完了させることができ、利便性が向上する。
【0040】
次に、図4に示す本発明の第2の実施形態について説明する。
ここでこの第2の実施形態は、第1の実施形態の朝方モード設定手段57を変更したものであり、第1の実施形態と同一のものは同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
朝方モード設定手段57は、設置業者等によるリモートコントローラ5の所定操作によって予め設定入力されている設置地域情報と、図示しない日照センサ等からの日照開始時刻情報と、給水温度センサ13が検出する給水温度に基づいた給水温度情報と、外気温度センサ39が検出する外気温度に基づいた外気温度情報と、貯湯制御手段47のMPU等のカレンダー機能に基づいた日付情報のいずれか一つまたはいずれか二つ以上の組み合わせの情報に基づいて余裕時間Yを決定するもので、日の出と共に活動を行うような家庭(農家など)において、適切な時刻に沸き上げを完了させるべく、日の出時刻を各情報に基づいて推測し、日の出時刻付近を沸き上げ完了させる所定時刻t3にすべく予め各情報に応じた余裕時間Yを記憶していると共に、各情報のいずれか一つまたはいずれか二つ以上の組み合わせによって余裕時間Yを決定するようにしているものである。
【0042】
ここで、朝方モード設定手段57の記憶している余裕時間Yと各情報の対応関係の一例を図5に示す。この対応関係においては、経度あるいは緯度の異なる設置地域情報(関東、関西、九州)と、カレンダー機能に基づいた日付情報から余裕時間Yを決定している。なお、カレンダー機能に基づいた日付情報のみから余裕時間Yを決定するようにしてもよいが、上記のように設置地域情報と組み合わせることでより適切な余裕時間Yを決定できるものである。
【0043】
給水温度や外気温度に基づいて余裕時間Yを決定するには、一年間を図5のような4つの区間に区分し、各区間毎に余裕時間Yを割り当てて予め記憶しておき、前日の給水温度あるいは外気温度からどの区間に該当するかによって余裕時間Yを決定するようにすればよいもので、前記設置地域情報を組み合わせることでより適切な余裕時間Yを決定できるものである。
【0044】
なお、図示しない日照センサ等によれば正確に日照開始時刻情報が得られるため、日の出前に沸き上げ動作を完了させるための余裕時間Yの設定ができるため好ましい。また、日照開始時刻情報の入手先としては、日照センサだけでなくヒートポンプ貯湯式給湯装置1がネットワーク機器と接続されるものであればネットワーク経由であってもよく、この場合、設置地域情報と組み合わせることで、設置地域の日照開始時刻情報を入手することが可能となる。
【0045】
このように、この第2の実施形態では、予め設定入力されている設置地域情報と、日照センサからの日照開始時刻情報と、給水温度に基づいた給水温度情報と、外気温度に基づいた外気温度情報と、カレンダー機能に基づいた日付情報のいずれか一つまたはいずれか二つ以上の組み合わせの情報に基づいて前記余裕時間を決定するため、日の出と共に活動を行うような家庭(農家など)において、適切な時刻に沸き上げを完了させることができ、利便性が向上する。
【0046】
次に、図6に示す本発明の第3の実施形態について説明する。
ここでこの第3の実施形態は、第1の実施形態の朝方モード設定手段57を変更したものであり、第1の実施形態と同一のものは同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
ここで、貯湯制御手段47は、沸き上げ動作のたびに、所定時刻t3までに沸き上げ運転を完了することができたか否かを監視しており、複数日分の記憶領域が予め用意され、所定時刻t3までに沸き上げ完了することができなかった場合には沸き上げ未完了情報を記憶し、所定時刻t3までに沸き上げ運転を完了することができた場合には、沸き上げ未完了情報は記憶しないようにしている。
【0048】
朝方モード設定手段57は、前回の沸き上げ運転が最後まで完了できなかった旨の情報(沸き上げ未完了情報)を受けると、余裕時間Yを一定時間(ここでは15分間)長くするようにしたもので、所定時刻t3までに沸き上げ完了することができた状況が複数日間連続すると、余裕時間Yを一定時間短くするようにしているものである。
【0049】
このように、沸き上げ完了前の早朝時間帯に給湯されたことなどによって沸き上げが完了しなかったような場合に、翌日には沸き上げを完了させる所定時刻t3が早まり、適切な所定時刻t3を定めることができ、無駄に所定時刻t3を早めすぎることがなく、貯湯タンク3からの放熱ロスも最小限とすることができる。
【0050】
次に、図7に示す本発明の第4の実施形態について説明する。
ここでこの第4の実施形態は、第1の実施形態の朝方モード設定手段57を変更したものであり、第1の実施形態と同一のものは同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
朝方モード設定手段57は、前日までの所定期間(ここでは7日間)の深夜時間帯の終了時刻直前の所定時間帯(ここでは午前4時から深夜時間帯の終了時刻t2までの間)の、貯湯タンク3内の湯または熱の使用量(これを特定時間帯使用実績情報とする)に応じて余裕時間Yを決定するようにしたもので、沸き上げ完了前の早朝時間帯の給湯量等の使用量が多くなると、これに応じて余裕時間Yを長くなるように決定するようにしているので、適切な所定時刻t3を定めることができ、無駄に所定時刻t3を早めすぎることがなく、貯湯タンク3からの放熱ロスも最小限とすることができる。
【0052】
ここで、これら第2〜第4の実施形態では、リモートコントローラ5の特定操作によって朝方モード設定手段57を設定/解除することができるようにしており、ユーザーの望みに応じて容易に設定/解除が可能としている。
【0053】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で改変可能なものである。
【符号の説明】
【0054】
3 貯湯タンク
4 ヒートポンプユニット(加熱手段)
5 リモートコントローラ
6 給水管
10 給湯管
57 朝方モード設定手段
58 ピークシフト演算手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7