特許第6193749号(P6193749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193749
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】医療用剪刀
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3201 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   A61B17/3201
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-253548(P2013-253548)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-109928(P2015-109928A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】504184167
【氏名又は名称】上山 博康
(73)【特許権者】
【識別番号】598024226
【氏名又は名称】株式会社高山医療機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088568
【弁理士】
【氏名又は名称】鴇田 將
(72)【発明者】
【氏名】上山 博康
(72)【発明者】
【氏名】高山 隆志
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−173443(JP,A)
【文献】 特開平9−140720(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0077649(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0009795(US,A1)
【文献】 日本国外務省,“ハイテクジャパン脳外科手術ハサミ”,[online],平成19年10月,キッズ・ウェブ・ジャパン,[平成29年7月3日検索],インターネット,<URL:http://web-japan.org/kidsweb/ja/hitech/scissors/>
【文献】 飯田文明,外7名,“技能を守れ町工場の底力〜脳外科手術機器編〜(前編)”,精密工学会誌,社団法人精密工学会,平成20年1月,第74巻,第1号,p.37−43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3201
B26B 13/00 ― 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断対象物を保持する上刃直線刃3aの下端と連接する首部4の左右が内側に向けて同じ曲率で彎曲し、該彎曲した首部4の端末に上下に位置するハンドル同士がピンを介して回動自在に枢着し、5を備えるとともに、該上刃の直線刃3aと開閉自在に交叉する下刃2は上刃3の下端から上方の外側に向けて彎曲した下刃の彎曲刃2aを備え、下刃2aの首部4の曲率は、下刃の外側に位置する首部4の曲率半径よりも下刃2の内側に位置する首部4の曲率半径を大きく形成し、かつ下刃の硬度がHRC56〜63以上のステンレス鋼材であることを特徴とする医療用剪刀。
【請求項2】
請求項1記載の医療用剪刀の上刃がステンレス系刃物鋼の多層積層材からなる上刃の直線刃であって、かつ請求項1記載の被切断対象物を保持する上刃の被切断対象物を保持する上刃の端面全体が粗面構造であることを特徴とする請求項1記載の医療用剪刀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科、脳外科、血管外科等の各種医療分野における手術用として使用されるマイクロ剪刀等の医療用剪刀に関する。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−173443 特許文献1の外科、脳外科、血管外科など多岐にわたる分野において利用されるマイクロ剪刀として、板バネ把手の先端部分に、板バネ把手の開閉方向に対して垂直方向あるいは斜め方向に開閉する刃を、リンクを介して取り付けたことを特徴とする請求項1記載の発明がある。また、その請求項2には、一方の板バネ把手の先端に前後方向にスライドするリンクを接続し、このリンクの先端を片側の刃の基部に接続した請求項1に記載の外科手術用マイクロ剪刀がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の外科手術用マイクロ剪刀の発明は、左右一対の刃部で脳内の手術部位を切断する作業において、板バネ把手の水平方向の開閉に対して垂直方向あるいは斜め方向に開閉する刃を設けたものである。しかも固定側の刃と可動側の刃はいずれも直線的な刃同士が交差摺動する形状である。
【0005】
しかし、本発明では従来のマイクロ剪刀のように左右の刃で切断するのではなく、一方の刃は例えば脳外科手術におけるクモ膜等の被切断対象物を切断する刃としての役割を果たし、切断刃に対向する刃は被切断対象物の固定刃となり、かつ従来よりも対向する切断刃の基部に連接する首部の彎曲する半径を大きく形成することによりなだらかな刃先に向かい従来の下刃の円弧よりも本発明の下刃の円弧の方が同じ開き幅で刃長を長くとることができ上刃と下刃の交差角もより狭角になり被切断対象物に鋭角に作用することができ、切断刃の切れ味が大幅に増すマイクロ剪刀を含む医療用剪刀を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、従来のマイクロ剪刀よりも少なくとも下刃の刃材強度を高くすることで刃の耐久性が増し、下刃の切れ味と相俟って長寿命化を確保するマイクロ剪刀を含む医療用剪刀を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明は医療におけるマイクロ剪刀含む医療用剪刀の切断刃に対向する固定刃がステンレス刃物鋼の積層材を鍛造仕上げにより固定刃の積層端面をミクロンオーダーの微細な波状面に仕上げにより被切断対象物が前後に滑動することなく確実に保持された状態で対向する切断刃により切断されるので医師による切断作業の負担は大幅に解消されるマイクロ剪刀を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る医療用剪刀は、被切断対象物を保持する上刃直線刃3aの下端に首部4の左右が内側に向けて同じ曲率で彎曲し、該彎曲した首部4の端末にハンドル5を備えるとともに、該上刃の直線刃3aと開閉自在に交叉する下刃2は上刃3の下端から上方の外側に向けて彎曲した下刃の彎曲刃2aを備え、下刃2aの首部4の曲率は、下刃の外側に位置する首部4の曲率半径よりも下刃2の内側に位置する首部4の曲率半径を大きく形成し、かつ下刃の硬度がHRC56〜63以上のステンレス鋼材であることを特徴とする医療用剪刀である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の医療用剪刀の上刃がステンレス系刃物鋼の多層積層材からなる上刃の直線刃であって、かつ請求項1記載の被切断対象物を保持する上刃の被切断対象物を保持する上刃の端面全体が粗面構造であることを特徴とする請求項1記載の医療用剪刀である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、支軸で下刃と上刃が交差自在に支持されたハンドルの先端から下刃の峰側の根元までの弯曲した首部の曲率半径よりも下刃の首部の内側の曲率半径をより小さく緩やかな彎曲形状に形成し、その延長線上に沿って下刃の刃先までなめらかな曲線形状に形成したことに特徴とするステンレス鋼製の医療用剪刀であるので、被切断対象物を保持する上刃と被切断対象物を切断する下刃との挟み角度が従来よりも一層狭い角度となって切断され、かつ下刃の彎曲刃による切断距離も長く確保され、刃の切れ味が良く、錆びない長寿命の医療用剪刀を提供できる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の下刃は硬度と耐食性を備えた高炭素で高硬度のステンレス鋼であることを特徴とする請求項1記載の医療用剪刀であるので、医療分野における外科手術において、比較的硬い部位を切断する場合においても刃こぼれがなく、長期使用に耐え、錆びにくい性質により衛生的であり、医師による切断作業に大きな力を要せず簡単に切除できる。
【0013】
また、本発明の請求項1又は請求項2記載の上刃がステンレス系刃物鋼の多層積層材で形成され、かつ請求項1又は請求項2記載の被切断対象物を保持する刃が直線的又は直線に近似した曲率形状に形成された上刃の被切断対象物を保持する端面全体が鍛造により粗面化形成されているので、例えば硬膜を切除する場合にも硬膜部位が上刃の刃先表面が鍛造による積層端面に形成されるミクロンオーダーの粗面によって被切断対象物が上刃の刃表面で確実に保持され、前後にずれることがなく、上刃で確実に保持された状態で下刃の刃先で確実に綺麗に切断できる。しかも、下刃は請求項1で述べたように上刃の刃先と下刃の刃先の挟角が従来の剪刀よりも一層狭い状態で、かつ長い交叉距離が確保され、切断作業もスム−ズに行われる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例を示す医療用剪刀の拡大正面図である。
図2】従来の医療用剪刀と本発明の医療用剪刀の下刃と上刃の開き角(仰角)を比較した拡大正面図であり、(a)が本発明に係る医療用剪刀の仰角αで(b)が従来の医療用剪刀の仰角βを示す。
図3】本発明の一実施例を示す医療用剪刀を少し閉じた状態を示す拡大正面図である。
図4】本発明に係る医療用剪刀の拡大平面図である。
図5】(a)本発明に係る医療用剪刀の上刃を7枚積層した鍛造前の拡大端面図である。(b)本発明に係る医療用剪刀の上刃を7枚積層した鍛造後の拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の医療用剪刀について、マイクロ剪刀を例にとり説明するが、他の医療用剪刀についても適用される。
マイクロ剪刀1は刃が交差側に向けて湾曲形状に形成された動刃(以下、下刃2という)と、刃線が直線的又は直線に近似した曲率形状に形成された静刃(以下、上刃3という)とが、下刃2と上刃3の首部4の内側と外側のそれぞれが内側に向けて彎曲している。従来の首部4は内側と外側の各湾曲形状は同じ曲率で形成されていたが、本発明では少なくとも下刃2の首部4の外側と首部4の内側の各曲率を変え、特に内側の首部4の曲率を従来よりも小さく形成(半径Rを大きく形成)した点に特徴を有する。下刃2の内側の首部4の曲率を小さくする(すなわち、下刃2の内側に彎曲する曲線の半径を下刃2の外側に彎曲する曲線の半径よりも大きく形成する)ことにより、上刃3の直線刃3aと下刃2の外側に反った彎曲刃2aとの仰角αが同じ位置では本発明の方がより小さくなるために被切断対象物を刃の基部寄りで切断でき、切断作業を行う医師の負担を小さくでき、切断作業も小さな力で済む。
【0016】
なお、図中、5はハンドルで、6はハンドル5の先端部を下刃2と上刃3が交差して被切断対象物を切断する支軸となるピン(ネジであってもよい)を示す。本発明はハンドル5の全体形状は省略しているが、操作し易い形状で有れば特に形状や構造は限定されない。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の下刃2の硬度と耐食性を備えた高炭素ステンレス鋼であって、例えば硬度がHRC56〜63以上のステンレス鋼材であることを特徴とする請求項1記載の医療用剪刀である。
下刃2に使用される鋼材としては、強さと錆を考慮に入れると例えば13%Cr(マルテンサイト系)のステンレス鋼が用いられる。13%Crステンレス鋼は熱処理によって、硬さ、機械的性質、強さが得られること、耐食性も兼ねているので医療用器具、刃物類として好適である。しかし、硬さ、機械的性質、強さが得られること、耐食性も兼ねている材料であれば、上記ステンレス鋼に限定されない。
【0018】
下刃2の首部4のうち上刃3と交差する内側の彎曲線の半径は例えば従来が70mmとすると、それよりも半径を大きく取り、例えば半径94mmとなるように曲率を小さく形成する(半径Rを大きくする)ことが肝要である。下刃2の首部4のうち内側に位置する彎曲した端末と下刃の彎曲刃2aの基部がなめらかに連続的に連なっている。
【0019】
また本発明の、請求項1又は請求項2記載の上刃3がステンレス系刃物鋼の多層積層材で形成されている。本例では厚さが0.2mmの7枚のステンレス鋼板を積層した場合を示すが、その積層枚数及び厚さは用途に応じて適宜変更されるもので、上記数値に限定されるものではない。使用目的によりそれよりも少なくすることも多くすることも可能である。積層板は加熱処理又は冷間処理後、板厚方向及び被切断対象物を保持する刃側の端面をそれぞれ鍛造処理して含有元素の構造に変化を与え、成分元素の変動や層間移動を行い、被切断対象物を保持する上刃3の刃端面が構成元素の移動等により表面が波状に形成されたり層間移動等により粗面化するために、下刃の彎曲刃2aで切断する時に、被切断対象物を上刃3の刃端面で確実に保持された状態で切断できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、外科、脳外科、血管外科等の各種医療分野における手術用として使用されるマイクロ剪刀等の医療用剪刀であって、脳外科等における手術において迅速な手術が必要となる中、医師が手術部位の切除に際し、短時間で、確実に、きれいに切断処理等が行われる器具であるので、医療メーカー、販売業者及び医師等への需要が喚起される。
【符号の説明】
【0021】
1 マイクロ剪刀
2 下刃
2a 下刃の彎曲刃
3 上刃
3a 上刃の直線刃
4 首部
5 ハンドル
6 ピン
α 仰角
β 仰角
図1
図2
図3
図4
図5