特許第6193763号(P6193763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6193763筒状ストレッチラベル及びラベル付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193763
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】筒状ストレッチラベル及びラベル付き容器
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/06 20060101AFI20170828BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20170828BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   G09F3/06
   B65D23/00 H
   B65D25/20 Q
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-551862(P2013-551862)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2012084140
(87)【国際公開番号】WO2013100141
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-290268(P2011-290268)
(32)【優先日】2011年12月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀尾 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】梅田 英明
(72)【発明者】
【氏名】疋田 英司
(72)【発明者】
【氏名】永島 崇平
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−047959(JP,A)
【文献】 特表2009−511292(JP,A)
【文献】 特開2005−221982(JP,A)
【文献】 特開2004−195900(JP,A)
【文献】 特開平09−109256(JP,A)
【文献】 特開2002−127332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00 − 3/20
B65D 23/00 − 25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に成形されたフィルム基材と、
フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された印刷層と、
を備え、少なくとも周方向に対して60%以上の伸張が可能であり、周方向に対して60%伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下である筒状ストレッチラベルであって、
フィルム基材は、
密度が0.880〜0.930g/cm3である線状低密度ポリエチレンを、当該フィルム基材を構成する樹脂の総重量に対して70重量%以上含有し
高さ方向の屈折率が、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ1.507〜1.528であることを特徴とする筒状ストレッチラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の筒状ストレッチラベルにおいて、
フィルム基材の周方向の屈折率は、高さ方向の屈折率と同等又は高さ方向の屈折率よりも小さく、且つ1.500〜1.528であることを特徴とする筒状ストレッチラベル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の筒状ストレッチラベルにおいて、
周方向に対して10%伸張させたときの引っ張り応力(F10値)が1〜10N/mm2であることを特徴とする筒状ストレッチラベル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒状ストレッチラベルにおいて、
引っ張り応力が4.3N/mm2であるときの高さ方向の伸び(50mm/分)が9%以下であることを特徴とする筒状ストレッチラベル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の筒状ストレッチラベルにおいて、
周方向に対して60%伸張後の瞬間歪み(6000mm/分)が30%以下であることを特徴とする筒状ストレッチラベル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒状ストレッチラベルと、容器と、を備え、
筒状ストレッチラベルが周方向に伸張した状態で容器に装着されていることを特徴とするラベル付き容器。
【請求項7】
請求項6に記載のラベル付き容器において、
容器は、筒状ストレッチラベルが装着される部分の最小径部に対する最大径部の比率が、1.05〜1.75であり、
筒状ストレッチラベルは、該最大径部及び該最小径部に追従して装着されていることを特徴とするラベル付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状ストレッチラベル及びラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレッチラベルは、シュリンクラベルと同様に、筒状体の形態で容器に装着される。筒状ストレッチラベルは、周方向に引っ張られて伸張した状態で容器に被嵌され、その後、引っ張り力が取り除かれると収縮して容器に追従する。このため、筒状ストレッチラベルには、伸張性及び復元性(ストレッチ性とも称する)に優れることが要求される。
【0003】
本発明に関連する技術として、特許文献1には、シングルサイト系メタロセン触媒を用いて重合された、密度が0.905〜0.940g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さが30〜150μmのフィルムであって、横方向に300mm/分の速度で変形させ、25%以下のヒステリシス曲線の測定により得られる応力0歪みが7%を超えず、さらに永久歪みが1.5%を超えないフィルムから形成されたストレッチラベル用フィルムが開示されている。
【0004】
なお、引用文献1では、筒状ストレッチラベルが容器の円筒状胴部に装着された様子が図示されている。このように、従来の筒状ストレッチラベルは、容器の径差のない部分にしか装着することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9‐297539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、筒状ストレッチラベルでは、筒状に成形される前の長尺体の状態で、該長尺体の少なくとも一方の面に印刷層が形成される。印刷層は、長尺体を長手方向に搬送しながら連続的に形成されるが、搬送過程で長尺体が長手方向に大きく伸縮すると印刷層を適切な位置に形成することが困難になる。
【0007】
つまり、本発明は、ストレッチ性に優れると共に、良好なデザインと製造適性を有する筒状ストレッチラベル、及び当該ストレッチラベルを装着したラベル付き容器を提供することを目的とするものである。
また、より好ましくは、容器の径差のある部分に装着できる筒状ストレッチラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る筒状ストレッチラベルは、筒状に成形されたフィルム基材と、フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された印刷層とを備え、少なくとも周方向に対して60%以上の伸張が可能であり、周方向に対して60%伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下である筒状ストレッチラベルであって、フィルム基材は、密度が0.880〜0.930g/cm3である線状低密度ポリエチレンを、当該フィルム基材を構成する樹脂の総重量に対して70重量%以上含有し、高さ方向の屈折率が、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ1.507〜1.528であることを特徴とする。

【0009】
上記構成によれば、伸び易く且つ元の形状を復元し易い、優れたストレッチ性を発現できる。さらに、フィルム基材の高さ方向の屈折率を厚み方向の屈折率よりも大きくし、且つ1.507〜1.528の範囲内に調整することにより、優れたストレッチ性を維持しながら、印刷等の製造適性が良好なものとなり、良好なデザインのストレッチラベルを得ることができる。
【0010】
また、本発明に係る筒状ストレッチラベルにおいて、フィルム基材の周方向の屈折率は、高さ方向の屈折率と同等又は高さ方向の屈折率よりも小さく、且つ1.500〜1.528であることが好適である。
当該構成によれば、ラベルの周方向に対する優れたストレッチ性を維持しながら印刷等の製造適性を改良することがさらに容易となり、例えば、容器に対する装着性と、製造適性とをより高度に両立することができる。
【0011】
また、本発明に係る筒状ストレッチラベルは、以下のストレッチ特性を有することが好適である。
(1)周方向に対して10%伸張させたときの引っ張り応力(F10値)が1〜10N/mm2である。
(2)引っ張り応力が4.3N/mm2であるときの高さ方向の伸び(50mm/分)が9%以下である。
(3)周方向に対して60%伸張後の瞬間歪み(6000mm/分)が30%以下である。
【0012】
本発明に係るラベル付き容器は、上記筒状ストレッチラベルと、容器と、を備え、筒状ストレッチラベルが周方向に伸張した状態で容器に装着されていることを特徴とする。
また、容器は、筒状ストレッチラベルが装着される部分の最小径部に対する最大径部の比率が、1.05〜1.75であり、筒状ストレッチラベルは、該最大径部及び該最小径部に追従して装着可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る筒状ストレッチラベルは、ストレッチ性に優れると共に、良好なデザインと製造適性を有する。本筒状ストレッチラベルは、例えば、径差が大きな容器であっても、その形状に追従した良好な装着性を実現し、位置ズレのない印刷層を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である筒状ストレッチラベルを示す斜視図である。
図2図1のAA線断面図である。
図3】本発明の一実施形態であるラベル付き容器を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態である筒状ストレッチラベルにおいて、シール部の第1の変形例を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態である筒状ストレッチラベルにおいて、シール部の第2の変形例を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態である筒状ストレッチラベルにおいて、シール部の第3の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を用いて、本発明の一実施形態である筒状ストレッチラベル10につき、以下詳細に説明する。また、本発明の一実施形態であるラベル付き容器20につき、以下詳細に説明する。
【0016】
まず、図1及び図2を参照し、筒状ストレッチラベル10の構成について詳説する。
【0017】
図1及び図2は、筒状に成形されたフィルム基材11と、フィルム基材11の少なくとも一方の面に形成された印刷層12とを備え、フィルム基材11は、密度が0.880〜0.930g/cm3である線状低密度ポリエチレンを主成分として構成され、その高さ方向の屈折率が、その厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ1.507〜1.528である筒状ストレッチラベル10を示す図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、筒状ストレッチラベル10は、筒状に成形されたフィルム基材11と、印刷層12とを備える。つまり、筒状ストレッチラベル10は、印刷層12が形成されたフィルム基材11の筒状体といえる。筒状ストレッチラベル10では、フィルム基材11の面のうち筒状体の内側に向いた面上に印刷層12が形成されている。以下、フィルム基材11の筒状体の内側に向いた面を「内面」とし、筒状体の外側に向いた面を「外面」とする。
【0019】
なお、筒状ストレッチラベル10及びフィルム基材11について、「高さ方向」、「周方向」、及び「厚み方向」等の方向を示す用語を使用する。「高さ方向」とは、上記筒状体の一端側開口と他端側開口とを結ぶ方向(軸方向)を意味する。「周方向」とは、高さ方向に直交する平面において上記筒状体の外周(内周でも同じ)に沿った方向を意味し、厚み方向とは、当該外周及び内周に直交する方向を意味する。
【0020】
筒状ストレッチラベル10は、フィルム基材11の端縁同士を重ね合わせて接合し、シール部13(センターシール部)を形成することで筒状体とされる。シール部13は、フィルム基材11を筒状にして端縁同士を重ね合わせたときに、筒状体の外側に位置するフィルム基材11の内面と、筒状体の内側に位置するフィルム基材11の外面とをヒートシールすることで形成できる。ヒートシールの代わりに、レーザーによるシールや、超音波によるシール、接着剤によるシール等も可能である。
【0021】
図2に示す例では、筒状体の内側に位置するフィルム基材11の端縁にシール部13から非接合部が延設している。筒状体の外側に位置するフィルム基材11の端縁には、かかる非接合部は存在せず、端部までヒートシールされている。なお、非接合部は、筒状体の外側に位置するフィルム基材11側にのみ設けられている形態としてもよく、内側及び外側の両方から延設した形態、即ち重なり合うフィルム基材11の端縁同士の幅方向中央部にシール部13を形成した形態としてもよい。
【0022】
フィルム基材11は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主成分として構成される。フィルム基材11は、複数種の線状低密度ポリエチレンを用いて積層構造とすることもできる。また、一種の線状低密度ポリエチレンを用いて形成される単層構造であってもよい。フィルム基材11の厚みとしては、特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは15〜80μm、特に好ましくは20〜60μm、最も好ましくは25〜50μmである。
【0023】
上記線状低密度ポリエチレンは、エチレンと、αオレフィンとの共重合体であることが好ましい。αオレフィンとしては、炭素数が3〜20のαオレフィンであることが好ましく、炭素数が4〜8のαオレフィン(例えば、1‐ブテン、1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテンなど)であることが特に好ましい。αオレフィン成分の含有量は、単量体成分の全重量に対して、好ましくは1〜20重量%であり、より好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは5〜10重量%である。また、線状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒を用いて重合されたものが特に好適である。これら線状低密度ポリエチレンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
フィルム基材11中における上記線状低密度ポリエチレンの含有率は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95%重量以上であることが特に好ましい。
【0025】
線状低密度ポリエチレンの密度は、上記のように、0.880〜0.930g/cm3である。密度がこの範囲内であれば、良好なストレッチ特性が得られる。なお、線状低密度ポリエチレンの密度は、0.890〜0.925g/cm3であることがより好ましく、0.900〜0.920g/cm3であることが特に好ましく、0.905〜0.915g/cm3であることが最も好ましい。
【0026】
線状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2.16kg)は、1〜30g/10分であることが好ましい。MFRがこの範囲内であれば、生産性が良好になる。なお、線状低密度ポリエチレンのMFRは、1〜20g/10分であることがより好ましく、1〜10g/10分であることが特に好ましい。
【0027】
線状低密度ポリエチレンは、市販品を用いることができる。適用可能な市販品としては、例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット(登録商標)715FT,1540F,0540F」が例示できる。
【0028】
線状低密度ポリエチレンは、エチレン及び上記αオレフィン以外の単量体成分、例えば、酢酸ビニル(VA)等のカルボン酸ビニル、アクリル酸(AA)等の不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル(MMA)等の(メタ)アクリル酸エステルなどを含有していてもよい。また、「主成分」とは、本発明の目的を損なわない範囲で上記線状低密度ポリエチレン以外の樹脂や添加剤(例えば、滑剤や帯電防止剤等)などを含んでもよいという意味であって、例えば、フィルム基材11を構成する樹脂の総重量に対して上記線状低密度ポリエチレンが70重量%(70重量%以上)であってもよい。特に好ましくは、上記線状低密度ポリエチレンが90重量%以上含有される。
【0029】
さらに、フィルム基材11は、高さ方向の屈折率が、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ1.507〜1.528である。高さ方向の屈折率は、好ましくは1.510〜1.525である。また、フィルム基材11の周方向の屈折率は、高さ方向の屈折率と同等又は高さ方向の屈折率よりも小さく、且つ1.500〜1.528であることが好適であり、より好ましくは1.503〜1.520である。そして、フィルム基材11の周方向の屈折率は、厚み方向の屈折率と同等又は厚み方向の屈折率よりも大きいことが好ましい。フィルム基材11の厚み方向の屈折率は、1.500〜1.515が好ましく、1.500〜1.510がより好ましい。
【0030】
特に、フィルム基材11の伸張性(ストレッチ特性)を損なうことなく、且つ伸張させたときに部分的なフィルム基材11の歪みを防ぐために、フィルム基材11の周方向の屈折率は、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ高さ方向の屈折率と同等又は高さ方向の屈折率よりも小さいことが好ましい。
【0031】
また、フィルム基材11の厚み方向の屈折率(Rtとする)に対する高さ方向の屈折率(Rhとする)の比率(Rh/Rt)は、1.001〜1.030が好ましく、1.002〜1.020がより好ましく、1.003〜1.015が特に好ましい。
フィルム基材11の厚み方向の屈折率(Rt)に対する周方向の屈折率(Rcとする)の比率(Rc/Rt)は、1.000〜1.030が好ましく、1.001〜1.020がより好ましく、1.002〜1.015が特に好ましい。
フィルム基材11の高さ方向の屈折率(Rh)に対する周方向の屈折率(Rc)の比率(Rc/Rh)は、0.980〜1.005が好ましく、0.985〜1.000がより好ましく、0.990〜0.999が特に好ましい。
【0032】
フィルム基材11の上記屈折率は、フィルム基材11の主成分である上記線状低密度ポリエチレンの組成、及びフィルム基材11の延伸を制御することにより実現できる。特に、高さ方向、周方向、及び厚み方向における屈折率の差は、フィルム基材11の延伸方向及び延伸倍率を制御することにより実現できる。
【0033】
フィルム基材11の熱収縮率(80℃の温水に10秒間浸漬)は、周方向に対して−5%以上10%未満(マイナスは膨張を意味する)であることが好ましく、−3%〜8%がより好ましく、−2%〜5%が特に好ましい。また、高さ方向に対して、−5%以上10%未満であることが好ましく、−1〜8%がより好ましく、0%を超え6%以下であることが特に好ましい。
【0034】
印刷層12は、例えば、商品名やイラスト、使用上の注意等を表示するための層であって、上記のように、フィルム基材11の内面に形成される。印刷層12は、シール部13の接着性を考慮して、シール部13を除く内面全域に設けられている。印刷層12の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10μmである。なお、印刷層12は、フィルム基材11の外面に設けられてもよく、例えば、この場合もシール部13を除く全域に設けられる。また、印刷層12は、内面又は外面の少なくとも一方に設けられるが、シール部13を除く全域だけでなく、部分的に設けられてもよい。また、シール部13の接着性が損なわれなければ、シール部13を含む内面又は外面の少なくとも一方の全域に印刷層12を設けてもよい。印刷層12は、内面と外面の両面に設けられていてもよい。
【0035】
印刷層12は、フィルム基材11を筒状に成形する前に、筒状体の内面となる面上に印刷インキを塗布し、乾燥やUV照射によって固化することで形成される。印刷層12の形成には、所望の顔料や染料等の色材、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂等のバインダ樹脂、有機溶剤、及び各種添加剤(例えば、可塑剤、滑剤、ワックス、帯電防止剤)等を含む溶剤型インキ、或いは所望の色材、アクリル系樹脂など光重合性樹脂、光重合開始剤、及び上記各種添加剤等を含む紫外線硬化型インキなどが印刷インキとして用いられる。そして、この印刷インキを用いて、グラビア印刷、フレキソ印刷、又は凸版輪転印刷等を行なうことで印刷層12を形成することができる。
【0036】
なお、筒状ストレッチラベル10には、ストレッチ性等に影響を与えない範囲で、印刷層12以外の層を設けてもよい。例えば、印刷層12の内面側に保護層を設けてもよい。また、フィルム基材11の外面に印刷層12を形成したときには、かかる印刷層12の保護層を外面側に設けてもよい。また、フィルム基材11の外面上には、シール部13を除いて、滑り性の付与や傷付き防止等を目的として透明なオーバーコート層を設けてもよい。保護層やオーバーコート層は、周知慣用のインキを用いて印刷によって形成でき、例えば、印刷層12の構成材料から色材を除いたインキ、又は透明性を損なわない色材を含有するインキを用いて形成できる。
【0037】
ここで、筒状ストレッチラベル10の製造方法を例示する。
【0038】
筒状ストレッチラベル10の一連の製造工程は、上記線状低密度ポリエチレンを主成分とする第1の製造中間体である第1長尺体を作製する工程(以下、工程(a)とする)、第1長尺体を延伸して第2の製造中間体である第2長尺体を作製する工程(以下、工程(b)とする)、第2長尺体に印刷層12を形成して第3の製造中間体である第3長尺体を作製するする工程(以下、工程(c)とする)と、及び第3長尺体を筒状に成形し、個々のラベルサイズにカットして筒状ストレッチラベル10を作製する工程(以下、工程(d)とする)とを含む。第2長尺体は、換言すると、筒状に成形される前のフィルム基材11の長尺体である。
【0039】
まず初めに、工程(a)について説明する。
第1長尺体は、溶融押出し法により作製できる。溶融押出し法では、上記線状低密度ポリエチレンを主成分とする原料を押出機に投入して溶融し、溶融した樹脂をTダイに供給し、薄膜状の溶融樹脂をダイスリットから冷却したキャスティングドラム上に押出して冷却固化しフィルム化する。押出し温度は、特に限定されないが、180℃〜240℃程度が好ましく、200℃〜220℃がより好ましい。こうして、第1長尺体が作製される。
【0040】
工程(a)において、上記原料として複数種の線状低密度ポリエチレンを用いることにより積層タイプのフィルム基材11を作製することもできる。積層方式としては、例えば、Tダイの直前にフィードブロックを設置して各溶融樹脂を層流状態でTダイに供給するフィードブロック法、多層のマニホールドを用いるマルチマニホールド法のいずれを適用してもよい。
【0041】
次に、工程(b)について説明する。
工程(b)では、工程(a)で作製された未延伸状態の第1長尺体を延伸する。第1長尺体は、少なくとも長尺体の長手方向(以下、MD方向とする)に延伸される。好ましくは、MD方向に直交する長尺体の幅方向(以下、TD方向とする)にも延伸される。つまり、工程(b)では、第1長尺体を少なくともMD方向に一軸延伸し、好ましくはMD方向及びTD方向に二軸延伸する。以下では、二軸延伸する場合を例示する。延伸方式としては、ロール方式、テンター方式等を適用することができる。なお、MD方向は、筒状ストレッチラベル10の高さ方向に相当し、TD方向は、筒状ストレッチラベル10の周方向に相当する。
【0042】
工程(b)では、第1長尺体をMD方向に延伸してから、TD方向に延伸することができる。例えば、第1長尺体を、MD方向の下流に設置された巻き取り機により巻き取りながら、MD方向及びTD方向に延伸することで、二軸延伸された第2長尺体を作製する。なお、延伸の手順は、特に限定されず、逐次的に行ってもよいし、同時に行ってもよい。また、TD方向に延伸した後、MD方向に延伸してもよい。
【0043】
延伸倍率は、ストレッチ特性及び製造適性の両立の観点から、筒状ストレッチラベル10の高さ方向(MD方向)、周方向(TD方向)ともに、1.01〜1.40倍であり、好ましくは1.03〜1.35倍、特に好ましくは1.05〜1.30倍である。筒状ストレッチラベル10は、周方向に延伸されていなくてもよいが、高さ方向と同等以下の倍率で延伸されていることが好適である。特に、延伸倍率が1.05〜1.30倍の範囲において、周方向及び高さ方向に対して同等の倍率で延伸されていることが好適である。
【0044】
また、延伸処理時には、第1長尺体を加熱することが好ましい。延伸時の温度(延伸温度)は、第1長尺体を構成する樹脂組成物の融点未満であって、45℃以上が好ましく、50℃以上が特に好ましい。MD方向の加熱延伸時とTD方向の加熱延伸時とで温度を同程度に設定してもよいが、逐次的に延伸処理する場合には、MD方向よりもTD方向の延伸温度を高く設定することが好ましい。
【0045】
次に、工程(c)について説明する。
工程(c)では、加熱延伸された第2長尺体をロールの形態で印刷機等に供給してMD方向に連続搬送しながら、第2長尺体の一方の面に印刷層12を形成する。印刷層12は、上記のように、グラビア印刷法等により形成できる。このようにして、延伸された第2長尺体の一方の面に、印刷層12が形成された第3長尺体を作製する。
【0046】
工程(c)では、搬送過程で第3長尺体が大きく伸張することなく、印刷層12を安定して形成することができる。つまり、印刷層12を適切な位置に形成することが容易である。この良好な印刷適性は、第1長尺体をMD方向に延伸して第1長尺体のストレッチ性を調整したことに起因する。
【0047】
次に、工程(d)について説明する。
工程(d)では、まず、印刷層12が形成された第3長尺体を筒状に成形する。筒状の第3長尺体は、TD方向が周方向となるようにTD方向両端同士を重ね合わせてシール部13を形成することで作製される。シール部13は、例えば、ヒートシールにより形成できる。本実施形態では、印刷層12が筒状体の内側を向くようにしてシール部13を形成する。
【0048】
最後に、筒状に成形された第3長尺体を個々のラベルサイズにカットして筒状ストレッチラベル10を作製する。筒状の第3長尺体は、MD方向に連続搬送されながら、個々のラベルサイズにカットされるが、カット工程においても良好なカット適性を発現する。なお、筒状ストレッチラベル10には、慣用の方法でミシン目線を形成してもよい。
【0049】
ここで、筒状ストレッチラベル10のストレッチ特性について説明する。
【0050】
筒状ストレッチラベル10のストレッチ特性は、引っ張り試験における引っ張り応力、及び瞬間歪みにより表すことができる。引っ張り応力とは、評価サンプルを所定の速度で引っ張って伸張させたときに、引っ張り試験機に作用する力である。即ち、伸張に抵抗する力であり、引っ張り応力が小さいほど、ラベルは伸ばし易く伸張性が高いことを意味する。瞬間歪み(%)は、引っ張り試験後に評価サンプルが元の長さに戻らずに変形した度合いを示し、荷重を取り除いた直後に測定される。なお、引っ張り試験における評価サンプルを引っ張って伸張させる速度は、「50mm/分」又は「6000mm/分」である(以下、速度を明示しない場合は「50mm/分」である)。
瞬間歪みが小さいほど、ラベルの復元性が高いことを意味する。つまり、引っ張り応力、瞬間歪みともに小さい方が、ストレッチ特性に優れる。
【0051】
筒状ストレッチラベル10は、少なくとも周方向に対して60%以上の伸張が可能であり、好ましいものは75%以上の伸張が可能である。そして、筒状ストレッチラベル10は、周方向に60%伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下であり、好ましくは11.5%以下、より好ましくは10.5%以下、最も好ましいものは10%以下である。また、周方向に60%伸張後の瞬間歪み(6000mm/分)は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、18%以下がさらに好ましく、15%以下が特に好ましい。
【0052】
さらに、筒状ストレッチラベル10は、周方向に75%伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下であることが好ましく、より好ましくは11.5%以下、さらに好ましくは10.5%以下、最も好ましいものは10%以下である。周方向に75%伸張後の瞬間歪み(6000mm/分)は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、18%以下がさらに好ましく、15%以下が特に好ましい。
【0053】
筒状ストレッチラベル10の瞬間歪みの下限は、理論上では零であるが、実際に零という場合は少ない。このため、筒状ストレッチラベル10の瞬間歪みの下限値は、0%を超え、好ましくは1%以上である。
【0054】
また、筒状ストレッチラベル10のストレッチ特性は、永久歪みによっても表すことができる。永久歪み(%)は、瞬間歪みと同様に、引っ張り試験後に評価サンプルが元の長さに戻らずに変形した度合いを示すが、荷重を取り除いた4週間後に測定する点で瞬間歪みと異なる。永久歪みを測定するときの引っ張り試験における評価サンプルの伸張速度は、「50mm/分」である。
永久歪みが小さいほど、ラベルの復元性が高く、ストレッチ特性に優れる。周方向に60%伸張後の永久歪み(50mm/分)は、11%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、7%以下がさらに好ましく、6%以下が特に好ましい。
【0055】
また、印刷層12を位置ずれなく形成するためには、高さ方向の引っ張り試験における引っ張り応力が4.3N/mm2であるときの高さ方向の伸び(50mm/分)が、9%以下(例えば、1〜9%)であることが好ましく、4〜9%であることがより好ましく、5〜8%であることが特に好ましい。
【0056】
また、筒状ストレッチラベル10は、少なくとも周方向に対して10%伸張させたときの引っ張り応力(以下、F10値とする)が、好ましくは1〜10N/mm2、より好ましくは2〜8N/mm2、特に好ましくは3〜7N/mm2である。また、少なくとも周方向に対して60%伸張させたときの引っ張り応力(以下、F60値とする)は、好ましくは1〜12N/mm2、より好ましくは2〜10N/mm2、特に好ましくは3〜9N/mm2である。なお、F10値及びF60値の下限値が低すぎると伸張した状態で容器の締め付け力が弱くなりすぎ、見栄えの良い装着状態が得られない場合がある。
【0057】
上記のように、筒状ストレッチラベル10は、周方向の伸張率が60%以上と高く、且つ周方向に60%伸張後の瞬間歪み(50mm/分)が13%以下、周方向のF10値が10N/mm2以下といずれも小さな値を示す。つまり、筒状ストレッチラベル10は、従来のストレッチラベルにはない優れたストレッチ特性を有している。さらに、筒状ストレッチラベル10は、優れたストレッチ特性を有しながら、上記のように、良好な製造適性を有する。
【0058】
次に、図3を参照して、ラベル付き容器20の構成について詳説する。
【0059】
図3は、上記構成を備えた筒状ストレッチラベル10と、容器21とを備え、筒状ストレッチラベル10が周方向に伸張した状態で容器21に装着されているラベル付き容器20を示す斜視図である。
【0060】
図3に示すように、ラベル付き容器20は、筒状ストレッチラベル10と、容器21とで構成される。筒状ストレッチラベル10は、周方向に伸張した状態で容器21に追従して装着されている。つまり、容器21に装着する前の筒状ストレッチラベル10の周長は、筒状ストレッチラベル10が装着される部分の容器21の周長よりも小さくなるように設定され、ラベルが伸張した状態で装着されている。
【0061】
容器21は、径方向に切断した断面が略円形状の胴部22と、胴部22よりも直径が小さな首部23と、胴部22と首部23との間に位置し、首部23に向かって縮径する部分である肩部24と、首部23に取り付けられるキャップ部25とを含む容器である。容器21は、例えば、飲料が充填される所謂ペットボトルである。なお、筒状ストレッチラベル10は、図3に例示するペットボトル等の飲料容器に限られず、調味料容器、シャンプー等のサニタリー容器、洗剤容器、化粧品容器、医薬品容器など多岐に渡り装着可能である。
【0062】
胴部22には、複数のリブ26a,26bが形成されている。リブ26aは、胴部22の上部に形成され、リブ26bは、胴部22の下部に形成されている。当該リブ26a,26bは、胴部22の周方向にリング状に形成された凹部であり、胴部22の剛性を高める機能を有する。また、胴部22は、その上下方向中央部がくびれた形状を呈しており、くびれ部分の上下に分かれて、胴部22において周長が最大となる最大胴部dmが存在する。なお、当該くびれ部分が胴部22において周長が最小となる最小胴部dsとなる。
【0063】
ラベル付き容器20では、最大胴部dm、最小胴部dsを含んで胴部22の上端(胴部22と肩部24との境界位置)からリブ26bと胴部22の下端との中間位置付近までを覆って筒状ストレッチラベル10が装着されている。本実施形態では、ラベル付き容器20における筒状ストレッチラベル10は、上記のように装着されているため、最大胴部dmにおいて最大周長、最小胴部dsにおいて最小周長を示している。ここで、筒状ストレッチラベル10が装着されている部分において、周長が最大となる部分を最大径部Dm、周長が最小となる部分を最小径部Dsと定義すると、本実施形態では、最大胴部dmに装着された部分が最大径部Dmであり、最小胴部dsに装着された部分が最小径部Dsとなる。なお、本実施形態では、最大胴部dmと最大径部Dmが一致し、最小胴部dsと最小径部Dsとが一致しているが、筒状ストレッチラベル10の装着形態はこれに限定されない。例えば、筒状ストレッチラベル10を肩部24を含めて装着し、その肩部24が最小径部Dsとなる構成であってもよい。
【0064】
筒状ストレッチラベル10は、従来のストレッチラベルでは見栄え良く装着することができない、径差がある部分を含むようにラベルを装着しても、その形状に追従して見栄え良く装着できる。ラベル付き容器20は、例えば、最小径部Dsに対する最大径部Dmの周長の比率(Dm/Ds)が、1.05〜1.75、又は1.10〜1.60、又は1.20〜1.50であっても、図3に示すように筒状ストレッチラベル10が見栄え良く装着された形態となる。
【0065】
筒状ストレッチラベル10は、径差がない部分に対しても勿論に好適に使用できる。筒状ストレッチラベル10は、周方向に伸張した状態で装着されるため、ストレッチ特性に優れるほど大きく伸張した状態で容器に装着できる。このため、ストレッチ特性に優れたラベルほど、周長の小さな筒状ストレッチラベル10を用いてラベル付き容器を製造できるため、材料コストを低減することができる。したがって、径差のない部分(例えば、径差のない容器胴部)に筒状ストレッチラベル10を装着する場合、周方向に1.2倍以上伸張した状態で装着されることが好ましい。もっとも、これに限定されるわけではなく、1.01〜1.05倍程度に伸張した状態で装着させてもよい。
【0066】
また、ラベル付き容器20では、上記の通り筒状ストレッチラベル10が伸張した状態で装着されているため、容器21を締め付ける応力が発生する。かかる応力により容器全体を締め付けることで外力による容器変形が防止され、容器の補強効果が発現する。他にも、スクイーズ容器、チューブ容器のような内容物が押し出される容器に筒状ストレッチラベル10を装着すれば、例えば内容物の量が減少した場合であってもラベルが容器形状に追従し、良好な一体性を確保できるという効果が認められる。特に、熱膨張し易いオレフィン系容器に対して有効である。さらに、容器本体とキャップとに跨って筒状ストレッチラベル10を装着すれば、筒状ストレッチラベル10を装着した状態でキャップが取り外していたずら等をしようとすると、キャップのあった空間にラベルが縮径して入り込み、再びキャップを取り付けることが困難になるタンパー効果が認められる。
【0067】
筒状ストレッチラベル10は、例えば、ストレッチラベラーを用いて容器21に装着される。ストレッチラベラーは、筒状ストレッチラベル10を周方向に引っ張って伸張させた状態で容器21に外嵌する。筒状ストレッチラベル10を容器21に外嵌して引っ張り力を取り除くと、ラベルが弾性的に収縮し容器21に追従して装着される。なお、筒状ストレッチラベル10は、少なくとも2%程度周方向に伸張した状態で装着されていることが好適であり、60%程度伸張した状態で装着することもできる。
【0068】
筒状ストレッチラベル10は、シュリンクラベルと異なり非加熱で装着可能であり、装着時に容器の熱変形が発生しないため容器の軽量化が可能であったり、熱による内容物の分解、分離といった内容物への影響も抑制可能である。
【0069】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で設計変更することができる。以下では、ヒートシールにより形成されたシール部13の変形形態を例示するが、これ以外にも適宜設計変更できる。例えば、筒状ストレッチラベル10の高さ方向の両端を任意のパターン(例えば、波形や三角形など)にカットした形態としてもよい。また、1つの筒状ストレッチラベル10を複数の容器の集合体に装着して集積包装体を形成してもよい。筒状ストレッチラベル10は、複数の容器同士を強く結束することができ、集積販売用途にも好適である。
【0070】
図4〜6は、それぞれ異なった接合形態を有するシール部13x,13y,13zを示す断面図である。図4〜6では、上記実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0071】
図4に例示するシール部13xは、筒状ストレッチラベル10xの外側に位置する端縁10xaの内面と、内側に位置する端縁10xbの外面とを接着剤14により接合した所謂封筒貼りの接合形態である。接着剤14は、特に限定されず、熱可塑性樹脂系やエラストマー系の接着剤を適用できる。筒状ストレッチラベル10xは、接着剤14を用いてシールされるため、印刷層12をフィルム基材11の内面全域に形成することができる。
【0072】
図4に例示する形態では、筒状体の外側に位置する端縁10xaの端部に、端縁10xbと接合されない非接合部がシール部13xより延設され摘み部15が設けられている。一方、筒状体の内側に位置する端縁10xbには、かかる非接合部は存在しない。摘み部15は、筒状ストレッチラベル10xを容器21から剥離する際に利用される部分であって、少なくとも指先で摘むことができる程度のサイズを有する。筒状ストレッチラベル10xの剥離手段として摘み部15を有する当該構成によれば、剥離手段としてミシン目線を設けなくてもよいため、装着過程や流通過程でラベルが破断し難く、廃棄時には筒状ストレッチラベル10xを容器21から容易に剥離することができる。
【0073】
シール部13xは、摘み部15を除いて端縁10xaと端縁10xbとの重なり部分の全域が接合される形態であってもよいが、ラベル装着時など応力がかかったときに剥離しない範囲で、接着剤14を所定のパターン(例えば、ストライプ状、格子状、ドット状など)で塗工して接着強度を弱くしてもよい。或いは、接着強度を弱くするために、シリコーン系樹脂等を含む糊抑え用インキを接着剤14からなる層上に所定のパターンで塗工してもよい。シール部13xは、摘み部15を摘んで筒状ストレッチラベル10xを剥離する際に破断されるが、このように適度に接着強度を抑えることでラベルの剥離性がさらに向上する。
【0074】
図5に例示するシール部13yは、筒状ストレッチラベル10yの一方の端縁10ya及び他方の端縁10ybの内面同士を接合した所謂合掌貼りの接合形態である。シール部13yは、当該内面同士がヒートシールにより接合されている。このため、シール部13yには、ヒートシール性を確保するため、印刷層12が形成されていない。
【0075】
図6に例示するシール部13zは、筒状ストレッチラベル10zの一方の端縁10za及び他方の端縁10zbの外面同士を接合した所謂合掌貼りの接合形態である。シール部13zは、シール部13yと同様にヒートシールにより形成されるが、外面同士のヒートシールであるため、シール部13zを含むフィルム基材11の内面全域に印刷層12を形成できる。このため、印刷層12が着色性を有していれば、フィルム基材11が透明なものであってもクリア部分が見えない。
なお、シール部13y,13zは、接着剤14を用いて形成してもよい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例・比較例のストレッチラベルを構成する樹脂、フィルム基材の延伸倍率、及び得られたストレッチラベルの評価結果等を表1,2に示した。
【0077】
<実施例1>
表1に示すように、フィルム基材を構成する樹脂成分として、線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット715FT」)を使用した。フィルム基材の作製には、合流方式がフィードブロック2種3層型の押出し機を用いた。210℃に加熱した押出し機に上記線状低密度ポリエチレンを投入し、溶融した樹脂をTダイに供給して、そのスリットから25℃に冷却したキャスティングドラム上に1種3層で押出して急冷固化し、単層の未延伸フィルム基材の長尺体を得た。
次に、上記未延伸フィルム基材の長尺体を、MD方向に対して延伸倍率1.06倍、延伸温度52℃で加熱延伸し、続いて、TD方向に対して延伸倍率1.06倍、延伸温度85℃で加熱延伸して、厚みが50μmの二軸延伸フィルム基材の長尺体を得た。延伸方式は、MD方向はロール方式、TD方向はテンター方式とした。
上記二軸延伸フィルム基材の長尺体の一方の面に、該長尺体をMD方向に搬送しながら溶剤型インキを用いたグラビア印刷により、黒、藍、赤、黄、白の5色を用いて厚みが5μmの印刷層を形成した。印刷層を形成した長尺体を筒状にしてシールすることにより筒状長尺体を得て、これを個々のラベルサイズにカットすることで筒状ストレッチラベルを得た。なお、シール部は、フィルム基材を筒状にして端縁同士を重ね合わせたときに、筒状体の外側に位置するフィルム基材の内面と、筒状体の内側に位置するフィルム基材の外面とをヒートシールすることで形成される。
【0078】
上記筒状ストレッチラベルについて、以下の測定方法により、ストレッチ特性、印刷適性、及び屈折率の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0079】
<ストレッチ特性の評価>
上記筒状ストレッチラベルから高さ方向に長さ15±0.1mm、周方向に長さ200mm(標線間距離100±2mm)の長方形のサンプル片を作製した。このサンプル片の長辺方向(筒状ストレッチラベルの周方向)を測定方向として、60%の引っ張り試験を行い、瞬間歪み(%)を測定した。60%の引っ張り試験とは、クロスヘッド速度一定型又は振子型引張試験機(試験速度:50±5mm/分)を用いて、所定の荷重(N)を加えてサンプル片の標線間距離が60%となるまで伸ばす試験であり、該試験後に荷重を除去して0(N)に戻したときの標線間距離を読み取って、以下の計算式で瞬間歪み(%)を算出した。
瞬間歪み(%)=100×ΔL2/L2
L2:試験前のサンプル片の標線間距離(mm)
ΔL2:試験後のサンプル片の標線間距離の増加(mm)
なお、永久歪み(%)は、上記60%の引っ張り試験後、試験機から取り外し、23℃の恒温槽で4週間保管した後に上記標線間距離を読み取って算出した。実施例1では、永久歪みは4.0%であった。
【0080】
上記引っ張り試験において、引っ張り応力とサンプル片の伸び(歪み)との関係を示す応力歪み曲線が得られる。得られた応力歪み曲線から、サンプル片が10%伸びたときの引っ張り応力であるF10値、サンプル片が60%伸びたときの引っ張り応力であるF60値を求めた。
また、上記60%引っ張り試験における試験速度を6000±600mm/分として、瞬間歪み(%)を測定した。
【0081】
表1に示すストレッチ特性の評価は、上記60%伸張時の瞬間歪み(50±5mm/分(条件1とする)、及び6000±600mm/分(条件2とする))を用いて行った。◎、○、△、×の評価は、下記の基準に基づく。
◎;周方向に60%以上伸張し、且つ条件1の瞬間歪みが13%以下、
条件2の瞬間歪みが7%未満
○;周方向に60%以上伸張し、且つ条件1の瞬間歪みが13%以下、
条件2の瞬間歪みが7%以上14%未満
△;周方向に60%以上伸張し、且つ条件1の瞬間歪みが13%以下、
条件2の瞬間歪みが14%以上21%未満
×;周方向に60%以上伸張できない、若しくは条件1の瞬間歪みが
13%以上又は条件2の瞬間歪みが21%以上
【0082】
<印刷適性の評価>
表1に示す印刷適性の評価は、印刷層によって形成されたデザインを観察することにより行なった。○、△、×の評価は、下記の基準に基づく。
○;印刷スピード50mm/分で位置ずれなく印刷できた。
△;印刷スピード50mm/分では位置ずれなく印刷することは困難
であるが、50mm/分より低速条件で位置ずれなく印刷できた。
×;印刷スピードを調整しても位置ずれが解消できなかった。
【0083】
また、上記筒状ストレッチラベルから周方向に長さ15±0.1mm、高さ方向に長さ200mm(標線間距離100±2mm)の長方形のサンプル片を作製し、このサンプル片の長辺方向(筒状ストレッチラベルの高さ方向)を測定方向として引っ張り試験(50±5mm/分)を行い、試験により得られる応力歪み曲線から引っ張り応力が4.3Nのときのサンプル片の伸び(%)を測定した。
【0084】
<屈折率の評価>
上記印刷層を形成前のフィルム基材を用いて、JIS K 7105,7142に準拠して屈折率を測定した。屈折率は、当該フィルム基材を筒状体としたときに高さ方向、周方向、厚み方向となる方向について、偏光フィルタを用いてそれぞれ測定した。詳細を下記する。
試験方法;JIS K 7142のA法に準拠
測定装置;アッべ屈折計((株)アタゴ製の「アッべ屈折計NAR−2T」)
光源;Na白色光源(589nm)
【0085】
<実施例2>
実施例1において、MD方向に対して延伸倍率1.30倍、延伸温度75℃で加熱延伸し、続いて、TD方向に対して延伸倍率1.30倍、延伸温度88℃で加熱延伸した以外は、実施例1と同様にして筒状ストレッチラベルを得た。そして、実施例1と同様にしてストレッチ特性等の評価を行った(以下同様)。
【0086】
<実施例3>
フィルム基材を構成する樹脂成分として、2種類の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット715FT」(Aとする)、及び「ユメリット0540F」(Bとする))を使用し、各層の厚みの比率(層比)が1/13/1のA/B/Aの層構造を有する筒状ストレッチラベルを得た。延伸条件は、実施例2と同じである。
【0087】
<実施例4>
フィルム基材を構成する樹脂成分として、線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット1540F」)を使用した以外は、実施例1と同様にして筒状ストレッチラベルを得た。
【0088】
<実施例5>
フィルム基材を構成する樹脂成分として、線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット0540F」)を使用した以外は、実施例1と同様にして筒状ストレッチラベルを得た。
【0089】
<実施例6>
フィルム基材を構成する樹脂成分として、2種類の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット2540F」(Aとする)、及び「ユメリット715FT」(Bとする))を使用し、層比が1/13/1のA/B/Aの層構造を有する筒状ストレッチラベルを得た。延伸条件は、実施例1と同じである。
【0090】
<実施例7>
フィルム基材を構成する樹脂成分として、2種類の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット2540F」(Aとする)、及び「ユメリット0540F」(Bとする))を使用し、層比が1/13/1のA/B/Aの層構造を有する筒状ストレッチラベルを得た。延伸条件は、実施例1と同じである。
【0091】
<実施例8>
フィルム基材を構成する樹脂成分として、A層として線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット2540F」)、B層として2種類の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット2540F」と「ユメリット715FT」との混合物(重量比で前者:後者=7:3))を使用し、層比が1/13/1のA/B/Aの層構造を有する筒状ストレッチラベルを得た。フィルム基材の厚みは30μmとした。延伸条件は、実施例1と同じである。
【0092】
<実施例9>
フィルム基材を構成する樹脂成分として、A層として線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット3540F」)、B層として2種類の線状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製の「ユメリット3540F」と「ユメリット715FT」との混合物(重量比で前者:後者=2:8))を使用し、層比が1/13/1のA/B/Aの層構造を有する筒状ストレッチラベルを得た。フィルム基材の厚みは30μmとした。延伸条件は、実施例1と同じである。
【0093】
<比較例1>
実施例1において、フィルム基材を延伸しなかったこと以外は、実施例1と同様にして筒状ストレッチラベルを得た。
【0094】
<比較例2>
MD方向に対する延伸倍率を1.50倍とした以外は、実施例1と同様にして筒状ストレッチラベルを得た。
【0095】
<比較例3>
フィルム基材(ストレッチフィルム)の長尺体として、厚み60μmの酢酸ビニル系ストレッチフィルム(アイセロ化学(株)社製「スズロンL E−800F」)を使用した以外は、実施例1と同様にして筒状ストレッチラベルを得た。
【0096】
<比較例4>
フィルム基材(ストレッチフィルム)の長尺体として、厚み80μmの酢酸ビニル系ストレッチフィルム(アイセロ化学(株)社製の「スズロンL E−800F」)を使用した以外は、実施例1と同様にして筒状ストレッチラベルを得た。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表1に示すように、実施例の筒状ストレッチラベルは、いずれも、60%以上伸張し、F10値が6.4N/mm2以下、F60値が8.8N/mm2以下、60%伸張時の瞬間歪み(50mm/min)が10.3%以下及び60%伸張時の瞬間歪み(6000mm/min)が13.9%以下であり、優れたストレッチ特性を示した。また、印刷層の位置ズレは確認できず、印刷適性も良好であった。
【0100】
これに対して、表2に示すように、比較例2〜4の筒状ストレッチラベルは、60%伸張時の瞬間歪み(6000mm/min)が32.3%以上であり、実施例のラベルに比べてストレッチ性が劣る。また、比較例1のラベルでは、ストレッチ特性は良好であるが印刷適性が不良であった。
【0101】
つまり、密度が0.880〜0.930g/cm3である線状低密度ポリエチレンを主成分として構成され、高さ方向の屈折率が、厚み方向の屈折率よりも大きく、且つ1.507〜1.528であるフィルム基材を用いることで、優れたストレッチ特性を有する柔軟性の高いフィルム材質でも、良好な印刷適性を実現することができる。
【符号の説明】
【0102】
10 筒状ストレッチラベル、11 フィルム基材、12 印刷層、13,13x,13y,13z シール部、14 接着剤、15 摘み部、20 ラベル付き容器、21 容器、22 胴部、23 首部、24 肩部、25 キャップ部、26a,26b リブ、dm 最大胴部、ds 最小胴部、Dm 最大径部、Ds 最小径部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6