【実施例】
【0016】
(ピラーガーニッシュ)
実施例のピラーガーニッシュ40は、基本的には
図10〜
図13に例示した従来のピラーガーニッシュ20と同じく、車体のフロントピラー10を被覆し得る所要形状に形成されて車室内へ露出するガーニッシュ本体41と、このガーニッシュ本体41の裏面所要位置に形成され、該ガーニッシュ本体41をフロントピラー10に取り付ける前記クリップ30が装着される支持台部42とを備えている。ピラーガーニッシュ40は、例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等の樹脂材料からインジェクション成形されたもので、支持台部42がガーニッシュ本体41に一体に形成されている。ガーニッシュ本体41は、フロントピラー10の全体を被覆し得る長さおよび幅に形成されると共に、長手方向と直交する短手方向において湾曲した形状となっている(
図5参照)。また、支持台部42は、ガーニッシュ本体41の大きさに応じて複数設けられている。
【0017】
(クリップ)
ピラーガーニッシュ40の支持台部42について説明する前に、該ピラーガーニッシュ40をフロントピラー10へ取り付けるためのクリップ30について、
図4を引用して説明する。クリップ30は、
図11〜
図14に示す従来のクリップ30と同じものである。すなわち、クリップ30は、フランジ部33を境として、このフランジ部33の一方の側に車体係止部31が設けられると共に、該フランジ部33の他方の側に部材係合部32が設けられ、車体係止部31と部材係合部32とが直列に並んで設けられている。そして、クリップ30は、ポリアセタール(POM)やナイロン(PA)等の樹脂材料から全体が一体に形成された単一の部材であり、車体係止部31の係止片34aおよび部材係合部32の脚部37が、後述するように弾性変形が可能となっている。なお、以降の説明において、クリップ30における車体係止部31および部材係合部32の並び方向をクリップ30の「軸方向」、この軸方向と直交する方向において、第1係合部36の突出方向(
図4(b)における左右方向)を「第1幅方向」、第1係合部36の突出方向と直交する方向(
図4(a)おける左右方向)を「第2幅方向」と指称する場合がある。
【0018】
(車体係止部)
車体係止部31は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、フロントピラー10の係止孔部12へ挿入して、容易な離脱が困難に係止される係止突部34と、フロントピラー10に当接する当接板部35とからなる。係止突部34は、クリップ30の軸方向と交差する幅方向での断面形状が略長方形をなすブロック状をなし、第1幅方向において互いに近接・離間するよう弾性変形が可能な一対の係止片34a,34aを備えている。係止突部34は、両係止片34a,34aが近接するよう弾性変形することで、係止孔部12への挿入が許容されるようになっている。そして、各係止片34a,34aは、係止突部34が係止孔部12からフロントピラー10の裏側へ挿入されると共に、当接板部35がフロントピラー10の表側に当接した状態で、元の状態に弾性復帰するようになっている。当接板部35は、吸盤状をなして適宜弾性変形が可能となっており、フロントピラー10に面接触するようになっている。従って、クリップ30は、当接板部35と係止突部34の各係止片34a,34aとがフロントピラー10を表裏方向から挟むことで、エアバッグ装置15の作動時においても係止孔部12へ挿入した状態でフロントピラー10から脱抜不能に係止固定される。
【0019】
(部材係合部)
部材係合部32は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、フランジ部33に連設された基部39と、該基部39のフランジ部33と反対側に形成された第1係合部36と、該第1係合部36から車体係止部31と反対方向へ延びた脚部37と、該脚部37の端に形成された第2係合部38とからなっている。部材係合部32は、脚部37の非変形時における基部39のフランジ部33側の端から第2係合部38の先端までの軸方向の全長Lが、支持台部42の突出高さH(ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから支持台部42における頂壁部48の上面までの高さ(
図3参照))より長く形成されている。
【0020】
基部39は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、クリップ30の軸方向から見た形状が長方形をなすブロック状に形成され、第1幅方向の幅より第2幅方向の幅が大きくなっている。そして、基部39は、その第1幅方向における幅Waが、支持台部42の頂壁部48に開設された後述する装着部49の係止開口端間の係止幅G(
図5参照)と同じかまたは僅かに小さく設定されている。また、基部39は、
図1および
図2に示すように、軸方向における長さが、支持台部42の頂壁部48の厚みと同じに設定されている。
【0021】
第1係合部36は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、クリップ30の軸方向から見た形状が長方形をなすブロック状に形成され、第1幅方向の幅より第2幅方向の幅が大きくなっている。そして、第1係合部36は、その第1幅方向における幅Wbが、基部39の第1幅方向における幅Waより大きくなっている。すなわち、第1係合部36は、第1幅方向において、基部39の両側へ突出して該基部39よりも幅広となっている。また、第1係合部36は、第2幅方向における幅は、基部39の第2幅方向における幅と同じである。そして、第1係合部36は、エアバッグ装置15の作動前(通常時)に、開口状に形成された装着部49の一対の係止開口端に係止するようになっている(
図1、
図2参照)。
【0022】
脚部37は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、クリップ30の軸方向に長く、かつ第1幅方向における幅よりも第2幅方向における幅が大きい平板状を呈している。また、脚部37は、第2幅方向において、第1係合部36側よりも第2係合部38側が幅狭に形成されている。従って、脚部37は、その第2係合部38側が、第1係合部36側に対して第1幅方向へ変位するよう弾性変形が可能であり、第1幅方向に曲がり得るようになっている。但し、脚部37は、その第2係合部38側が第2幅方向へ変位する弾性変形はしないようになっている。
【0023】
第2係合部38は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、第2幅方向における幅R2より、第1幅方向における幅R1が大きくなっている。また、第2係合部38は、第1幅方向において、第1係合部36よりも幅広に形成されていると共に、第2幅方向において、第1係合部36よりも幅狭に形成されている。また、第2係合部38は、第1幅方向において、支持台部42の装着部49における係止幅Gより幅広に形成されている(
図1、
図5参照)。これにより、第1係合部36と装着部49との係合が解除されて該第1係合部36および脚部37が装着部49から支持台部42の外方へ移動した際に、第2係合部38は、装着部49の係止開口縁49a(
図1参照)に係止されるようになり、該装着部49からの脱抜が不能となっている。なお、第2係合部38は、第2幅方向から見た形状が、脚部37側から先端に行くにつれて第1幅方向へ広がる略扇形状をなすと共に、先端が曲面状に形成されている。従って、第2係合部38は、脚部37が曲がった際に、支持台部42に設けられた後述する当接部58(
図6参照)や、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aに対し、一定の幅で当接し得るようになっている。
【0024】
前述のように構成されたクリップ30は、
図6および
図7に示すように、支持台部42へ装着する際に、部材係合部32を、支持台部42に開設された挿入部50を介して収容部43へ挿入した後、該挿入部50から装着部49側へ移動して第1係合部36を該支持台部42の装着部49へ係合することで、支持台部42に装着されるようになっている。また、第1係合部36と装着部49との係合が解除されると、第1係合部36および脚部37が装着部49を通過して支持台部42の外方へ移動して、第2係合部38が装着部49の係止開口縁49aに係止する位置まで、該支持台部42に対して移動が可能となっている。
【0025】
(支持台部)
次に、前述したクリップ30を装着する支持台部42の構成について説明する。ここで、
図5に示すように、支持台部42において、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aと離間して対向配置される頂壁部48と該裏壁面41aとの離間方向を「上下方向」、頂壁部48の面方向において
図1の左右方向を「第1面方向」、
図2における左右方向を第1面方向と直交する「第2面方向」と指称する。すなわち、装着部49にクリップ30を取り付けた際に、軸方向にピラーガーニッシュ40とフロントピラー10とが対向し、面方向にガーニッシュ本体41の裏壁面41aが延在している。なお、実施例では、支持台部42の第1面方向が、ピラーガーニッシュ40の短手方向と一致しており、該支持台部42の第2面方向が、ピラーガーニッシュ40の長手方向と一致する関係となっている。
【0026】
支持台部42は、
図1〜
図3および
図5に示すように、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから突出した箱体状をなしており、該支持台部42の内部に、クリップ30の部材係合部32が収容される収容部43が画成されている。支持台部42が、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから突設されていることで、
図8に示すように、該支持台部42に装着したクリップ30をフロントピラー10に係止して固定した際に、ガーニッシュ本体41が、フロントピラー10から車室内へ離間した位置で保持される。これにより、フロントピラー10とガーニッシュ本体41の裏壁面41aとの間に、エアバッグ装置15やワイヤーハーネスWH等を配設し得る空間Sが画成される。
【0027】
支持台部42は、
図1〜
図3および
図5〜
図7に示すように、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから上方へ離間した頂壁部48と、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから立ち上がり、頂壁部48の外縁に連なる複数の縦壁部とを備える。支持台部42は、縦壁部として、頂壁部48に開設した装着部49を挟んで第1面方向に離間する第1縦壁部44および第2縦壁部45を備えている。また、支持台部42は、縦壁部として、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから立ち上がり、第2面方向における第1縦壁部44の一方の縁と、第2面方向における第2縦壁部45の一方の縁と、頂壁部48の一縁とに夫々連なる第3縦壁部46を備えている。更に、支持台部42は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから立ち上がり、第2面方向における第2縦壁部45の他方の縁および頂壁部48の一縁に連なる第4縦壁部47を備えている。すなわち、支持台部42は、周囲4方向のうちの略3方向が第1〜第4縦壁部44,45,46,47で囲まれ、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから離間した頂壁部48で上部が覆われると共に、周囲4方向のうちの残りの1方向に台部開口42aが形成された所謂「やぐら」形状をなしている。
【0028】
実施例の支持台部42では、第1〜第4縦壁部44,45,46,47および頂壁部48が、次のように形成されている。すなわち、
図1〜
図3、
図5および
図6に示すように、第1縦壁部44は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから垂直に立ち上がり、一方の縁側から他方の縁側にいくにつれて第1面方向へ変位して、第2面方向へ長手となる装着部49の長手方向と交差する向きに延在している。第2縦壁部45は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから垂直に立ち上がり、装着部49の長手方向と平行に延在している。第3縦壁部46は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから上縁にいくにつれて装着部49側へ変位する傾斜状に立ち上がり、該装着部49の短手方向である第1面方向に延在している。第3縦壁部46の上縁と頂壁部48とは曲面で連なっており、第3縦壁部46から頂壁部48に亘り連続する面構成となっている。第4縦壁部47は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから垂直に立ち上がり、第2縦壁部45と連なる一方の側から他方の縁側にいくにつれて第1面方向へ変位して、装着部49の長手方向と交差する向きに延在している。なお、第1縦壁部44と第4縦壁部47とは、平行になっている。
【0029】
頂壁部48は、第1〜第4縦壁部44,45,46,47の配置関係により、略五角形で平坦状に形成されている。そして、支持台部42は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aから頂壁部48の上面まで突出高さH(
図3参照)が、クリップ30の部材係合部32の全長Lより小さくなっている。また、支持台部42の側方に形成された台部開口42aは、支持台部42をガーニッシュ本体41と一体にインジェクション成形するスライド型(図示せず)の離脱方向に開口しており、第1縦壁部44と第4縦壁部47の延在方向が、スライド型の離脱方向となっている。なお、ピラーガーニッシュ40に複数の支持台部42が設けられている場合は、各支持台部42の突出高さHが異なる場合もある。
【0030】
実施例の支持台部42は、
図5に示すように、頂壁部48の略中央に、クリップ30を装着する装着部49が開設されている。また、支持台部42は、クリップ30の部材係合部32を収容部43へ挿入する挿入部50を備えている。すなわち、挿入部50は、頂壁部48に開設した装着部49とは別の位置に開設されている。実施例では、支持台部42の前壁を構成する第3縦壁部46におけるガーニッシュ本体41の裏壁面41aに隣接する部位に、挿入部50が設けられている。更に、支持台部42は、挿入部50と装着部49とを連通するよう開設されて、挿入部50から装着部49へのクリップ30の移動を許容する案内部54を備えている。案内部54は、第3縦壁部46から頂壁部48に亘り延在するように設けられている。すなわち、実施例の支持台部42は、
図5〜
図7に示すように、クリップ30を後述する横向きの挿入姿勢としたもとで、部材係合部32を挿入部50を介して収容部43へ挿入し、該クリップ30を案内部54に沿って移動させながら縦向き姿勢に変更させた後、該クリップ30の第1係合部36を装着部49に係合して縦向きの装着姿勢とするよう構成されている。
【0031】
(装着部)
装着部49は、
図1〜3および
図5に示すように、支持台部42の第2面方向に長手となる長方形の開口領域である。そして、装着部49において、第2面方向に延在して第1面方向で対向する開口縁が、一対の係止開口縁49a,49aとして、クリップ30の第1係合部36と係合するようになっている。ここで、装着部49における係止開口縁49a,49aの第1面方向での係止幅Gは、クリップ30における基部39の幅Wa(
図4(b)参照)と同じか僅かに大きく設定されると共に、該第1係合部36の幅Wb(
図4(b)参照)よりも小さく設定されている。また、装着部49の係止開口縁49aにおける第2面方向の長さは、クリップ30における基部39の第2面方向の幅と同じか僅かに大きく設定されている。従って、案内部54から移動させたクリップ30を後方へ移動させることで、基部39が、装着部19の係止開口端間に挿入されると共に、第1係合部36が、収容部43内に位置して該装着部49の係止開口縁49aに上下方向で係合するようになり、該第1係合部36が取付台部42から容易に抜け出ることが規制される。すなわち、クリップ30は、装着部49に第1係合部36を係合させることで、該クリップ30の第1幅方向が支持台部42の第1面方向に揃うと共に第2幅方向が該支持台部42の第2面方向に揃う向きで支持台部42に装着される。
【0032】
そして、第1係合部36は、エアバッグ装置15の作動により膨張するエアバッグ16の押圧力がガーニッシュ本体41の裏壁面41aに作用したエアバッグ作動時に、第1係合部36と装着部49との係合が解除されて、第1係合部36が挿着部49を通過するようになっている。すなわち、装着部49の係止幅Gと、第1係合部36の幅Wbとは、通常時においては第1係合部36との係合解除を規制すると共に、エアバッグ作動時においては、該第1係合部36との係合解除を許容する寸法関係に設定されている。
【0033】
(挿入部)
第3縦壁部46に開設された挿入部50は、第1係合部36、脚部37および第2係合部38よりも大きく開設され、
図1および
図5に示すように、該第1係合部36、脚部37および第2係合部38を、第2面方向において挿入可能な開口形状に形成されている。そして、挿入部50は、装着部49に係合する第1係合部36の軸周りの装着向きと同じクリップ30の軸周りの向きで、クリップ30の軸方向に並ぶ第1係合部36、脚部37および第2係合部38の当該支持台部42内への挿入を許容するようになっている。
【0034】
実施例の挿入部50は、
図1および
図5に示すように、クリップ30の第2係合部38が挿通可能な形状に開口した第1挿入開口51と、該クリップ30の脚部37および第1係合部36が挿通可能な形状に開口した第2挿入開口52とからなる。そして、第1挿入開口51は、クリップ30を後述する挿入姿勢とすることで、収容部43へ部材係合部32を挿入する際に、第2係合部38が挿通可能な開口形状となっている。また、第2挿入開口52は、クリップ30を挿入姿勢とすることで、収容部43へ部材係合部32を挿入する際に、脚部37および第1係合部36が挿通可能な開口形状となっている。ここで、クリップ30の挿入姿勢とは、
図5、
図6(a)、
図7(a)に示すように、クリップ30の軸方向が第2面方向に揃う横向き姿勢で、かつ該クリップ30の第1幅方向が支持台部42の第1面方向に揃うと共に、該クリップ30の第2幅方向が支持台部42の上下方向に揃った姿勢である。
【0035】
従って、挿入部50の第1挿入開口51は、
図1および
図5に示すように、クリップ30の挿入姿勢において第1面方向が長手となる第2係合部38の姿勢に基づき、第1面方向が長手となる長方形の開口に形成される。また、挿入部50の第2挿入開口52は、クリップ30の挿入姿勢において上下方向が長手となる第1係合部36の姿勢に基づき、上下方向が長手となる長方形の開口に形成されている。そして、挿入部50は、第1挿入開口51の右部と第2挿入開口52の下部とが連なっており、クリップ30を挿入する前側から見て「逆L字形」をなす開口形状となっている。従って、クリップ30を挿入姿勢とすることで、該クリップ30は装着部49に係合する第1係合部36の軸周りの装着向きと同じ軸周りの向きとなり、挿入部50に対する部材係合部32の挿入が許容される。
【0036】
(案内部)
案内部54は、挿入部50に挿入したクリップ30の軸周りの向きのままで該挿入部50から装着部49への移動を許容する。また、案内部54は、挿入部50から装着部49に移動したクリップ30の第1係合部36が装着部49に係合するように形成されている。案内部54は、
図1および
図6に示すように、挿入部50と装着部49との間に亘り、第3縦壁部46および頂壁部48に開設したスリット状の開口である。案内部54における左右に離間した一対の縁部の挿入部50側は、第2挿入開口52の前後に離間する開口縁に連なり、一対の縁部の装着部49側は、装着部49の各係止開口縁49a,49aに連なるようになっている。案内部54の縁部の開口幅は、クリップ30の基部39の幅Waより大きく、かつ第1係合部36の幅Wbより小さく設定されている。また、案内部54は、挿入部50側より装着部49側が幅狭となるように形成されている。実施例の案内部54は、挿入部50側の開口幅が最大で装着部49側の開口幅が最小となっており、挿入部50側から装着部49側にいくにつれて徐々に開口幅が小さくなるテーパ状に形成されている。従って、挿入部50に部材係合部32を挿入したクリップ30は、該挿入部50から装着部49に向けて移動させる際に、基部39が案内部54の縁部間を移動すると共に、該第1係合部36が案内部54の縁部に係合した状態となる。これにより案内部54は、クリップ30を該案内部54に沿って移動させる際に、該クリップ30が支持台部42から抜け出て外れるのを防止し得る。また、案内部54は、基部39が該案内部54の縁部に接触することで、挿入部50に挿入したクリップ30が軸周りに回転することも規制する。
【0037】
(規制部)
装着部49における案内部54(挿入部50)側の境界部には、該装着部49が画成する開口内側に向け突出する規制部56,56が設けられている。規制部56,56の第1面方向での間隔は、基部39の幅Waより僅かに小さく設定されている。従って、装着部49に装着したクリップ30は、基部39に規制部56,56が当接することで、案内部54側へ移動することが規制され、装着姿勢において頂壁部48に安定的に保持される。なお、規制部56,56の間隔が、基部39の幅Waより僅かに小さく設定されているので、案内部54から装着部49へクリップ30を移動させる際には、該クリップ30を装着部49に向けて押すだけで基部39が規制部56,56間を通過可能である。
【0038】
(当接部)
支持台部42には、
図6および
図7に示すように、第3縦壁部46と離間して対向する位置に、裏壁面41aから立ち上がる当接部58が設けられている。当接部58は、挿入部50から第2係合部38の挿入方向に斜めに交差するように形成されると共に、該第2係合部38に当接する位置に設けられており、第2係合部38に当接して脚部37を曲げるように該第2係合部38を案内するようになっている。すなわち当接部58は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aに沿う方向において、第2係合部38の挿入方向と斜めに交差するよう形成されている。実施例では、当接部58が、裏壁面41aから鉛直に立ち上がると共に、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aに沿う方向において、第2縦壁部45の内面から台部開口42aに向けて延在するよう形成されて、第2係合部38の挿入方向に斜めに交差している。すなわち、実施例の当接部58は、第2縦壁部45側から台部開口42a側に向かうにつれて挿入部50から遠ざかるように配置されており、第4縦壁部47と平行となる向きに延在している。従って、
図6(b)に示すように、挿入部50から挿入された第2係合部38は、フランジ部33が第3縦壁部46に当接する前に当接部58に当接し、更にクリップ30が挿入方向へ移動することで、第2縦壁部45から遠ざかって台部開口42aの方向へ移動するようになる。これにより脚部37が、第2縦壁部45から遠ざかる方向へ曲がるようになる(
図6(c))。
【0039】
すなわち、実施例の支持台部42は、クリップ30の第2係合部38がガーニッシュ本体41の裏壁面41aに接触することなく、脚部37を「略く字形」に曲げることが可能な構成となっている。そして、
図7(b)および
図7(c)に示すように、クリップ30を案内部54に沿って移動させる過程で、第2係合部38は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41a側へ移動して該裏壁面41aに接触するようになる。換言すると、第2係合部38は、脚部37が既に曲がっている状態でガーニッシュ本体41の裏壁面41aに接触するようになり、該脚部37が弾性変形することで裏壁面41aに強く押し付けられない。なお、当接部58は、ガーニッシュ本体41の裏壁面41a、第2縦壁部45の内面および頂壁部48の内面に夫々連ねて設けられており、支持台部42の剛性を高める補強部材としても機能している。
【0040】
クリップ30が支持台部42に装着されたピラーガーニッシュ40は、
図8に示すように、クリップ30における車体係止部31の係止突部34を、フロントピラー10の係止孔部12へ挿入して、係止突部34の各係止片34a,34aと当接板部35とでフロントピラー10を挟持することで、空間Sを画成した状態で該フロントピラー10に装着される。そして、エアバッグ装置15の作動前においては、空間S内に配設された該エアバッグ装置15のエアバッグ16、エアバッグ支持部材17およびワイヤーハーネスWHを、ガーニッシュ本体41で隠すようになる。一方、エアバッグ装置15が作動して、膨張するエアバッグ16によりガーニッシュ本体41が押された際には、
図9に示すように、クリップ30の第1係合部36と支持台部42の装着部49との係合が解除され、ピラーガーニッシュ40は、クリップ30の第2係合部38が支持台部42の頂壁部48に当接するまで、フロントピラー10から離間する方向へ移動する。これにより、ピラーガーニッシュ40のガーニッシュ本体41とウェザーストリップ14との間に隙間Dが画成され、エアバッグ16およびエアバッグ支持部材17が、該隙間Dを介してサイドガラス13の車室側へ膨張することが許容される。
【0041】
実施例のピラーガーニッシュ40によれば、支持台部42の第3縦壁部46に挿入部50を開設すると共に、頂壁部48に開設した装着部49と該挿入部50との間に延在する案内部54を開設したことにより、第1係合部32が装着部49に係合するクリップ30の軸周りの装着向きと同じ向きで、該クリップ30の部材係合部32(第1係合部32、脚部37および第2係合部38)を、第3縦壁部46に形成された挿入部50に挿入することができる。これにより、挿入部50から部材係合部32を支持台部42内に挿入したクリップ30を、挿入部50に挿入した軸周りの向きのままで案内部54を介して装着部49へ移動させるだけで、第1係合部36を装着部49に係合することができる。従って、クリップ30を支持台部42に装着する際に、該クリップ30を軸周りに回転させる面倒で煩わしい作業がなくなるので、クリップ30の装着作業に係る作業者の負担を軽減することができる。
【0042】
そして、挿入部50は、クリップ30の部材係合部32における第1係合部36、脚部37および第2係合部38よりも大きく開設されているので、クリップ30を支持台部42に向けて強く押すことなく、第1係合部36、脚部37および第2係合部38を支持台部42内へ収容することができる。また、第1係合部36は、装着部49への係合前に支持台部42内に収容されているので、クリップ30を装着部に向けて強く押すことなく、第1係合部36を該装着部49に係合することができる。従って、クリップ30を支持台部42に対して僅かな力で装着することができるので、クリップ30の装着作業に係る作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0043】
また、クリップ30の部材係合部32を、挿入部50から支持台部42へ挿入する際に、該部材係合部32の第2係合部38に当接部58が当接するため、クリップ30の挿入時に該部材係合部32の脚部37を曲げることができる。すなわち、クリップ30を装着部49に装着する前において、ガーニッシュ本体41の裏壁面41aに部材係合部32の第2係合部38を接触させずに、該部材係合部32の脚部37を曲げるようにすることができる。これにより、クリップ30の装着に際して、第2係合部38をガーニッシュ本体41の裏壁面41aに押し付けた状態で脚部37を曲げるものではないので、第2係合部38の押し付けによるガーニッシュ本体41の表壁面の白化を防止でき、ピラーガーニッシュ40の質感低下を防止し得ると共に美観を損ねることがない。しかも、当接部58は、クリップ30の挿入方向に対して斜めに交差するよう傾斜して形成されているので、挿入部50からクリップ30を挿入する際に第2係合部38が当接部58へ当接しながら側方へ移動するようになり、収容部43内での該脚部37の変形をスムーズに進行させ得る。
【0044】
また、装着部49における案内部54との境界部に規制部56を設けたことにより、装着部49に装着したクリップ30が、案内部54側へ移動することが規制され、該クリップ30を支持台部42に対して安定した姿勢で保持することができる。
【0045】
更に、挿入部50と装着部49との間に亘って開設した案内部54は、挿入部50側よりも装着部49側が幅狭となるよう形成されているので、挿入部50から部材係合部32を挿入したクリップ30は、案内部54に沿って移動させることで、装着部49に対する位置決めがなされる。従って、クリップ30は、案内部54に沿って移動させるだけで、装着部49に対してスムーズかつ適切に装着することができる。そして、挿入部50に挿入したクリップ30を案内部54に沿って移動させる際に、該クリップ30の軸周りの回転を規制するので、挿入部50に挿入したクリップ30の軸周りの向きのままで、該クリップ30を装着部に装着することができる。しかも、案内部54に沿ってクリップ30を移動させる際に、第1係合部36が案内部54の縁部に係合するので、該クリップ30が支持台部42から抜け出ることも防止し得る。
【0046】
(変更例)
本発明は、前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)支持台部42の形状は、実施例で例示したものに限るものではなく、縦壁部の配置数、配置位置および配置向きや、頂壁部の形状等は、様々に変更可能である。
(2)装着部と挿入部とを隣接した位置に並べて形成すると共に、該装着部と挿入部とを直接連通した構造として、案内部を省略するようにしてもよい。
(3)挿入部は、第3縦壁部以外の縦壁部に設けるようにしてもよい。
(4)支持台部は、その突出高さが、クリップの部材係合部の全長より大きいものであってもよい。
(5)挿入部は、クリップの第1係合部、脚部および第2係合部よりも大きく開設する場合に、第1係合部が装着部に係合するクリップの軸周りの装着向きと同じ向きで該第1係合部、脚部および第2係合部の挿入を許容し、かつフランジ部の挿入を規制する開口形状であればよく、例えば円形、楕円形または多角形等であってもよい。
(6)挿入部における第1係合部が挿入される部分は、装着部における第1係合部が引っ掛かる一対の係止開口縁に連なる縁部間の幅を、第1係合部における該係止開口縁に引っ掛かる部分の突出方向の幅より大きく、かつ該第1係合部における該係止開口縁に引っ掛かる部分の突出方向と直交する方向の幅より小さく設定する。これにより、挿入部における第1係合部が挿入される部分は、第1係合部が装着部に係合するクリップの軸周りの装着向きと同じ向きで、該第1係合部の挿入を許容するものの、当該装着向きから軸周りにずれた姿勢での第1係合部の挿入を規制する。
(7)挿入部における第1係合部が挿入される部分は、装着部における第1係合部が引っ掛かる一対の係止開口縁に連なる縁部間の幅を、第1係合部における該係止開口縁に引っ掛かる部分の突出方向の幅と同じに設定する。これにより、挿入部における第1係合部が挿入される部分は、第1係合部が装着部に係合するクリップの軸周りの装着向きと同じ向きでのみ、該第1係合部の挿入を許容するものの、当該装着向きから軸周りに僅かにずれた姿勢となると第1係合部の挿入を規制する。
(8)第2係合部は、第1係合部における装着部の対向する係止開口縁に引っ掛かる部位の突出方向において、該第1係合部よりも長辺を幅広に形成する。また、挿入部における第2係合部が挿入される部分は、長手を、第2係合部の長辺に合わせて幅広に形成すると共に、短手を、第2係合部の短辺の挿入を許容すると共に、第1係合部における装着部の対向する係止開口縁に引っ掛かる部位の厚みよりも小さく設定する。これにより、挿入部における第2係合部が挿入される部分は、第1係合部が装着部に係合するクリップの軸周りの装着向きと同じ向きでの第2係合部の挿入を許容するものの、当該装着向きから軸周りにずれた姿勢での第1係合部の挿入を規制し得る。
(9)当接部は、支持台部の縦壁部により構成するようにしてもよい。
(10)当接部は、実施例で例示した平坦な板状に限らず、クリップの挿入方向と交差する方向において湾曲する形態のものや、挿入方向と交差する方向へ階段状に延在する形態等であってもよい。
(11)当接部は、ガーニッシュ本体の裏壁面に沿う方向において第2係合部の挿入方向に斜めの交差するものに限らず、裏壁面からの立ち上がり方向が第2係合部の挿入方向に斜めの交差するものであってもよい。
(12)案内部は、挿入部と装着部との間の中途部分に、該挿入部側より装着部側が幅狭となるテーパ部を設けてもよい。
(13)実施例では、車両内装部材として、車体のフロントピラーに対してクリップを利用して取り付けられるピラーガーニッシュを例示したが、本願が対象とする車両内装部材はこれに限定されるものではなく、前述したルーフサイドに取り付けられるルーフサイドガーニッシュや、リアピラーに取り付けられるピラーガーニッシュ等、エアバッグ装置の作動時に移動させる車両内装部材が対象とされる。