(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路の少なくとも一方は、前記熱交換部よりも上流側において、前記汚染物質を吸着するトラップユニットを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.燃料電池1の概略構成
燃料電池1の概略構成を、
図1〜
図3に基づき説明する。燃料電池1は、固体酸化物形燃料電池であり、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気)との供給を受けて発電を行う装置である。
【0015】
この燃料電池1は、発電単位である板状の単セル3が複数段(例えば8段)積層された燃料電池スタック5と、燃料電池スタック5を積層方向(
図2、
図3の上下方向)に貫く複数のボルト11〜18と、各ボルト11〜18の両端に螺合する各ナット19(総称)とを備えている。
【0016】
燃料電池スタック5のうち、
図2、
図3における上側の4段の単セル3を含む部分を上燃料電池スタック5aとし、
図2、
図3における下側の4段の単セル3を含む部分を下燃料電池スタック5bとする。燃料電池1は、上燃料電池スタック5aと、下燃料電池スタック5bとの間に、平板状の熱交換器7を備え、一対のエンドプレート6、8に挟まれて固定される。すなわち、熱交換器7は、上燃料電池スタック5aにおける最も下側の単セル3と、下燃料電池スタック5bにおける最も上側の単セル3との間(隣接する2つの単セル3の間)に設けられている。
【0017】
尚、
図2、
図3における上側のエンドプレート6は、
図2、
図3における最も上側の単セル3の外側に位置し、最も上側の単セル3に接触している。また、
図2、
図3における下側のエンドプレート8は、
図2、
図3における最も下側の単セル3の外側に位置し、最も下側の単セル3に接触している。
【0018】
また、ボルト11〜18のうち、ボルト11、12、16の内部には、それぞれ、燃料ガスの流路となる燃料ガス管21、22、23が形成されている。また、ボルト13、14、18には、それぞれ、空気の流路となる空気管24、25、26が形成されている。ボルト15、17は、燃料電池スタック5の固定のみに使用される。
【0019】
2.単セル3の構成
単セル3の構成を
図4、
図5に基づき説明する。単セル3は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの板状の発電セルであり、電解質層35と、電解質層35を隔てて(該電解質層35を間に挟むように)配置された空気極37及び燃料極33とを有している。単セル3において、燃料ガス流路31側には、板状の燃料極(アノード)33が配置されるとともに、燃料極33の
図4上側の表面には、電解質層35が形成されている。電解質層35は、薄膜の固体電解質体である。その電解質層35の空気流路39側の表面には、薄膜の空気極(カソード)37が形成されている。なお、燃料極33と電解質層35と空気極37とをセル本体41と称する。なお、燃料極33は燃料極層の一実施形態であり、空気極37は空気極層の一実施形態である。
【0020】
また、この単セル3は、上下一対のインターコネクタ43、43の間に、空気極37側の板形状のガスシール部45と、セル本体41の外縁部の上面に接合して空気流路39と燃料ガス流路31との間を遮断するセパレータ47と、燃料ガス流路31側に配置された燃料極フレーム49と、(燃料極フレーム49より外側(
図4下方)に配置された)燃料極33側の板形状のガスシール部51とを備えており、それらが積層されて一体に構成されている。
【0021】
更に、単セル3内には、燃料極33と
図4下側のインターコネクタ43との間に、燃料極側集電体53が配置され、各インターコネクタ43の一方(
図4下方)の表面には、空気極側集電体55が一体に形成されている。
【0022】
なお、前記燃料電池スタック5は、複数個の単セル3が電気的に直列に接続されたものである。また、単セル3内の空気流路39においては、
図4の左右方向に空気が供給され、燃料ガス流路31においては、
図4の紙面方向に燃料ガスが供給される。
【0023】
ここで、電解質層35としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。また、燃料極33としては、Niとセラミックとのサーメットが使用でき、空気極37としては、ペロブスカイト系酸化物(La
1-xSr
xCoO
3系複合酸化物、La
1-xSr
xFeO
3系複合酸化物、La
1-xSr
xCo
1-yFe
yO
3系複合酸化物、La
1-xSr
xMnO
3系複合酸化物、Pr
1-xBa
xCoO
3系複合酸化物、Sm
1-xSr
xCoO
3系複合酸化物)等が使用できる。
【0024】
次に、単セル3を構成する各部材について、
図5に基づいて更に詳細に説明する。なお、
図5では、熱交換器7の一方の側の単一の単セル3のみを示しているが、実際には、熱交換器7の両側(
図5の上下方向)に複数の単セル3が積層されている。
【0025】
図5に分解して示す様に、インターコネクタ43は、例えばフェライト系ステンレスからなる板材であり、その外縁部には、ボルト11〜18が貫挿される丸孔である挿通孔61〜68が、等間隔に形成されている。つまり、インターコネクタ43の四隅と各辺の中点に対応する位置に、8箇所の挿通孔61〜68(なお、各部材における挿通孔には同じ番号を付す:以下同様)が形成されている。
【0026】
また、前記空気極37側のガスシール部45は、例えばマイカ又はバーミキュライトからなり、中心に正方形の開口部75を有する枠状の板材であり、その四隅の角部及び右辺の縁部には、前記ボルト11、13、15、17が貫挿される各挿通孔61、63、65、67が形成されている。
【0027】
このガスシール部45の4辺の縁部には、各挿通孔62、64、66、68と連通するように、その辺に沿って、ガスの流路となる略長方形状の貫通長孔71〜74が形成されている。つまり、各貫通長孔71〜74は、積層方向から見た場合、各挿通孔62、66、68、64を含むように形成されている。
【0028】
ここで、貫通長孔72は、燃料ガスを外部より燃料電池スタック5内に導入するために用いられる流路であり、貫通長孔71は、発電後の燃料ガスを燃料電池スタック5外に排出するために用いられる流路であり、貫通長孔73は、空気を外部から燃料電池スタック5内に導入し、さらには開口部75に導入するために用いられる流路であり、貫通長孔74は、発電後の空気を燃料電池スタック5外に排出するために用いられる流路である。
【0029】
なお、ガスシール部45には、開口部75と貫通長孔73とを連通するように、ガスシール部45の枠部分に、細径のガス流路となる長方形の切り欠き77が複数本形成されている。また、ガスシール部45には、開口部75と貫通長孔74と連通するように、ガスシール部45の枠部分に、細径のガス流路となる長方形の切り欠き78が複数本形成されている。
【0030】
この切り欠き77、78は、貫通孔ではなく、ガスシール部45の一方の表面(
図5の上方)を掘って形成された溝であり、レーザやプレス加工によって形成することができる。
【0031】
また、セパレータ47は、例えばフェライト系ステンレスからなる枠状の板状であり、その中心の正方形の開口部79には、開口部79を閉塞するようにセル本体41が接合されている。
【0032】
このセパレータ47においては、各挿通孔61、63、64、65、67が形成されるとともに、3辺に沿って各貫通長孔81〜83が形成されている。
更に、燃料極フレーム49は、中心に開口部85を備えた例えばフェライト系ステンレスからなる枠状の板材であり、セパレータ47と同様に、各挿通孔61、63、64、65、67が形成されるとともに、3辺に沿って各貫通長孔91〜93が形成されている。
【0033】
また、燃料極33側のガスシール部51は、空気極37側のガスシール部45と同様に、中心に開口部95を備えた例えばマイカ又はバーミキュライトからなる枠状の板材であり、各挿通孔61、63、64、65、67が形成されるとともに、3辺に沿って各貫通長孔101〜103が形成されている。
【0034】
このガスシール部51にも、対向する各枠部分に、開口部95と貫通長孔101、102とを連通するように、細径のガス流路となる切り欠き105a、105bが、それぞれ複数本設けられている。
【0035】
なお、上燃料電池スタック5aの各単セル3は、各インターコネクタ43によって(
図5の上下方向に)電気的に接続され、同様に、下燃料電池スタック5bの各単セル3は、各インターコネクタ43によって電気的に接続されており、上燃料電池スタック5aと下燃料電池スタック5bとは、熱交換器7によって、電気的に接続されている。
【0036】
3.熱交換器7の構成
熱交換器7の構成を、
図6、
図7に基づき説明する。熱交換器7は、板状の空気用部材267と、板状の燃料ガス用部材271とを積層したものである。空気用部材267のうち、燃料ガス用部材271に対向する面267Aには、空気の流路となる第1溝265が形成されている。また、面267Aのうち、第1溝265の周囲には、第1溝265よりも板厚が厚い部分である枠部277が設けられており、その枠部277には、挿通孔61〜68が形成されている。
【0037】
第1溝265は、面267Aの中央に形成された矩形の中央溝265Aと、中央溝265Aと挿通孔63とを連通する第1導入溝265Bと、中央溝265Aと挿通孔68とを連通する第1排出溝265Cとから成る。
【0038】
なお、中央溝265Aには、中央溝265Aが隣接する部材で埋まらないように、平面視で長方形形状の突出部266が多数形成されている。この突出部266は、空気の流れを挿通孔68側に導くように、
図7Bの左右方向に長手方向が揃うように配列されている。
【0039】
空気用部材267と燃料ガス用部材271とを積層したとき、
図6に示すように、第1溝265は、燃料ガス用部材271によって蓋をされる。その結果、挿通孔63から、第1導入溝265B、中央溝265A、及び第1排出溝265Cを経て、挿通孔68に至る、空気の流路が形成される。
【0040】
図6、
図7Bに示すように、中央溝265Aのうち、第1導入溝265B側の一部(空気の流れに関する上流側)に、トラップ部301が設けられている。トラップ部301は、空気用部材267の板厚方向において、中央溝265Aの底面から、燃料ガス用部材271まで隙間なく充填されている。また、トラップ部301は、第1導入溝265Bの出口を全てカバーしている。そのため、第1導入溝265Bから導入された空気は、必ずトラップ部301を通過する。
【0041】
トラップ部301の材料は、空気極37の材料又は電解質層35の材料を含み、当該材料を焼結して多孔質バルク状としたものである。
すなわち、トラップ部35の材料としては、電解質層35の材料であるYSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等の材料や、空気極37の材料であるペロブスカイト系酸化物(La
1-xSr
xCoO
3系複合酸化物、La
1-xSr
xFeO
3系複合酸化物、La
1-xSr
xCo
1-yFe
yO3系複合酸化物、La
1-xSr
xMnO
3系複合酸化物、Pr
1-xBa
xCoO
3系複合酸化物、Sm
1-xSr
xCoO
3系複合酸化物)等を含む材料等が使用できる。
【0042】
燃料ガス用部材271のうち、空気用部材267とは反対側の面271Aには、燃料ガスの流路となる第2溝269が形成されている。また、面271Aのうち、第2溝269の周囲には、第2溝269よりも板厚が厚い部分である枠部278が設けられており、その枠部278には、挿通孔61〜68が形成されている。
【0043】
第2溝269は、面269Aの中央に形成された矩形の中央溝269Aと、中央溝269Aと挿通孔61とを連通する第2導入溝269Bと、中央溝269Aと挿通孔66とを連通する第2排出溝269Cとから成る。
【0044】
なお、中央溝269Aには、中央溝269Aが隣接する部材で埋まらないように、平面視で長方形形状の突出部270が多数形成されている。この突出部270は、燃料ガスの流れを挿通孔66側に導くように、
図7Dの上下方向に長手方向が揃うように配列されている。
【0045】
燃料ガス用部材271における面271Aは、
図6に示すように、隣接する単セル3のインターコネクタ43に当接するので、第2溝269は、隣接する単セル3のインターコネクタ43によって蓋をされる。その結果、挿通孔61から、第2導入溝269B、中央溝269A、及び第2排出溝269Cを経て、挿通孔66に至る、燃料ガスの流路が形成される。
【0046】
図6、
図7Bに示すように、中央溝269Aのうち、第2導入溝269B側の一部(燃料ガスの流れに関する上流側)に、トラップ部302が設けられている。トラップ部302は、燃料ガス用部材271の板厚方向において、中央溝269Aの底面から、隣接する単セル3まで隙間なく充填されている。また、トラップ部302は、第2導入溝269Bの出口を全てカバーしている。そのため、第2導入溝269Bから導入された燃料ガスは、必ずトラップ部302を通過する。
【0047】
トラップ部302の材料は、燃料極33の材料又は電解質層35の材料を含み、当該材料を焼結して多孔質バルク状としたものである。
すなわち、トラップ部35の材料としては、電解質層35の材料であるYSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等の材料や、燃料極33の材料であるNiとセラミックとのサーメットなどを含む材料等が使用できる。
【0048】
なお、トラップ部301、302の材料は、汚染物質を吸着する機能を有するものであれば、上記以外の材料であってもよい。例えば、La、Sr、Sm、Gd、Pr、Nd、Co、及びFeより成る群から選択される少なくとも1種を含む酸化物が挙げられる。この酸化物としては、例えば、La
1-xSr
xCo
1-yFe
yO
3等が挙げられる(x、yは、独立して、0〜1の数)。
【0049】
トラップ部301、302は、ガスを透過させる機能を有する限り、開気孔率、形状などを適宜設計できる。トラップ部301、302の開気孔率は10%以上が好ましく、10〜50%がさらに好ましい。この開気孔率は、アルキメデス法で測定できる値である。
【0050】
トラップ部301、302でトラップできる汚染物質としては、例えば、硫黄化合物、塩素、アルカリ金属、P、Cr、カーボン、Si、B等が挙げられる。
4.ガスの流路
本実施形態におけるガスの流路について、
図1〜
図3、
図8、
図9に基づいて説明する。
【0051】
(4−1)空気の流路
図1、
図2に示すように、空気は、空気管24内に導入される。導入された空気は、空気管24内を、燃料電池スタック5の積層方向(
図2における下方向)に流れ、熱交換器7に至る。空気管24は、空気用部材267の挿通孔63内で、図示しない開口部を有しており、空気管24内の空気は、その開口部から、挿通孔63、第1導入溝265Bを経て、中央溝265Aに導入される。上述したように、中央溝265Aのうち、第1導入溝265B側の一部には、トラップ部301が設けられているので、中央溝265Aに導入される空気は、トラップ部301を通過する。
【0052】
中央溝265Aに導入された空気は、上燃料電池スタック5a(特に下端の単セル3)と熱交換を行う。つまり、中央溝265A内の空気は、熱交換器7に隣接する単セル3によって加熱されて温度が上昇し、逆に、熱交換器7に隣接する単セル3は、冷却されて温度が低下する。
【0053】
そして、熱交換によって温度が上昇した空気は、第1排出溝265C、挿通孔68を経て、空気管26に導入される。なお、空気管26は、空気用部材267の挿通孔68内で、図示しない開口部を有しており、第1排出溝265C、挿通孔68を経た空気は、その開口部から、空気管26に導入される。
【0054】
空気管26に導入された空気は、空気管26に沿って積層方向の両側(
図2の上下方向)に分岐して案内され、それぞれ、上燃料電池スタック5a及び下燃料電池スタック5bの各単セル3の空気流路39に導入される。
【0055】
詳しくは、
図5に示す様に、空気極37側のガスシール部45の貫通長孔73に到達した空気は、切り欠き77に導かれて、開口部75(即ち空気流路39)内に導入され、空気極37にて発電のために利用される。
【0056】
そして、発電後の空気は、開口部75から、切り欠き78を通り、貫通長孔74に導入される。
その後、この貫通長孔74に案内された空気は、空気管25を通って、
図5の上方に導かれ、外部に排出される。
【0057】
なお、ここでは、空気管24、熱交換器7(特に中央溝265A)、空気管26、単セル3の空気流路39、及び空気管25を空気が順次流れる経路が酸化剤ガス流路の一実施形態であり、そのうち、熱交換器7内の部分が、熱交換部内流路の一実施形態である。
【0058】
(4−2)燃料ガスの流路
図1、
図3に示すように、燃料ガスは、燃料ガス管21に導入される。導入された燃料ガスは、燃料ガス管21内を、燃料電池スタック5の積層方向(
図3における下方向)に流れ、熱交換器7に至る。燃料ガス管21は、燃料ガス用部材271の挿通孔61内で、図示しない開口部を有しており、燃料ガス管21内の燃料ガスは、その開口部から、挿通孔61、第2導入溝269Bを経て、中央溝269Aに導入される。上述したように、中央溝269Aのうち、第2導入溝269B側の一部には、トラップ部302が設けられているので、中央溝269Aに導入される燃料ガスは、トラップ部302を通過する。
【0059】
中央溝269Aに導入された燃料ガスは、下燃料電池スタック5b(特に上端の単セル3)と熱交換を行う。つまり、中央溝269A内の燃料ガスは、熱交換器7に隣接する単セル3によって加熱されて温度が上昇し、逆に、熱交換器7に隣接する単セル3は、冷却されて温度が低下する。
【0060】
そして、熱交換によって温度が上昇した燃料ガスは、第2排出溝269C、挿通孔66を経て、燃料ガス管23に導入される。なお、燃料ガス管23は、燃料ガス用部材271の挿通孔66内で、図示しない開口部を有しており、第2排出溝269C、挿通孔66を経た燃料ガスは、その開口部から、燃料ガス管23に導入される。
【0061】
燃料ガス管23に導入された燃料ガスは、燃料ガス管23に沿って積層方向の両側(
図3の上下方向)に分岐して案内され、それぞれ、上燃料電池スタック5a及び下燃料電池スタック5bの各単セル3の燃料ガス流路31に導入される。
【0062】
詳しくは、
図5に示す様に、燃料極33側のガスシール部51の貫通長孔102に到達した燃料ガスは、切り欠き105bに導かれて、開口部95(即ち燃料ガス流路31)内に導入され、燃料極33にて発電のために利用される。
【0063】
そして、単セル3内にて発電に寄与した残余の発電後の燃料ガスは、開口部95から、切り欠き105aを通り、貫通長孔101に導入される。
その後、この貫通長孔101に案内された燃料ガスは、燃料ガス管22を通って、
図5の上方に導かれ、外部に排出される。
【0064】
なお、ここでは、燃料ガス管21、熱交換器7(特に中央溝269A)、燃料ガス管23、単セル3の燃料ガス流路31、及び燃料ガス管22を燃料ガスが順次流れる経路が燃料ガス流路の一実施形態であり、そのうち、熱交換器7内の部分が、熱交換部内流路の一実施形態である。
【0065】
5.燃料電池1が奏する効果
(1)燃料電池1は、単セル3に空気を供給する酸化剤ガス流路のうち、単セル3よりも上流側にトラップ部301を備える。そのため、空気中に含まれる汚染物質をトラップ部301でトラップし、単セル3の空気極37における汚染を抑制できる。
【0066】
(2)熱交換器7の温度は、燃料電池1の運転温度に近く、運転温度よりもわずかに低い。トラップ部301は熱交換器7内に設けられているので、その温度は、燃料電池1の運転温度に近く、運転温度よりもわずかに低い。そのことにより、トラップ部301が空気中に含まれる汚染物質をトラップする効果が一層高い。
【0067】
(3)トラップ部301の材料は、空気極37の材料、電解質層35の材料、又はその両方の材料を含む。そのため、空気極37や三相界面を汚染する可能性がある物質を一層効果的にトラップできる。
【0068】
(4)トラップ部301は、中央溝265Aのうち、上流側の部分に充填されている。そのため、熱交換器7の他の部分に設ける場合よりも、トラップ部301の温度が低くなり、空気中に含まれる汚染物質を物理吸着によりトラップする効果が一層高い。また、中央溝265A全体にトラップ部301を充填する場合と比べて、空気供給経路の差圧を小さくすることができる。
【0069】
(5)燃料電池1は、単セル3に燃料ガスを供給する燃料ガス流路のうち、単セル3よりも上流側にトラップ部302を備える。そのため、燃料ガス中に含まれる汚染物質をトラップ部302でトラップし、単セル3の燃料極33や三相界面における汚染を抑制できる。
【0070】
(6)熱交換器7の温度は、燃料電池1の運転温度に近く、運転温度よりもわずかに低い。トラップ部302は熱交換器7内に設けられているので、その温度は、燃料電池1の運転温度に近く、運転温度よりもわずかに低い。そのことにより、トラップ部302が燃料ガス中に含まれる汚染物質をトラップする効果が一層高い。
【0071】
(7)トラップ部302の材質は、燃料極33の材料、電解質層35の材料、又はその両方の材料を含む。そのため、燃料極33や三相界面を汚染する可能性がある物質を一層効果的にトラップできる。
【0072】
(8)トラップ部302は、中央溝269Aのうち、上流側の部分に充填されている。そのため、熱交換器7の他の部分に設ける場合よりも、トラップ部302の温度が低くなり、燃料ガス中に含まれる汚染物質を物理吸着によりトラップする効果が一層高い。また、中央溝269A全体にトラップ部302を充填する場合と比べて、燃料ガス供給経路の差圧を小さくすることができる。
【0073】
(9)燃料電池1は、トラップ部301、302を熱交換器7内に備えている。そのため、燃料電池1をコンパクト化することができる。
6.燃料電池1の製造方法
燃料電池1の製造方法を説明する。まず、フェライト系ステンレスの板材から上述した形状のインターコネクタ43、セパレータ47、及び燃料極フレーム49を形成する。また、マイカ又はバーミュライトで、上述した形状のガスシール部45を形成する。
【0074】
次に、周知の方法で、セル本体41を形成する。具体的には、燃料極33となるグリーンシート上に固体電解質体(電解質層35)となるグリーンシートを積層し、焼成する。さらに、前記固体電解質体上に空気極37の形成材料を印刷した後、焼成することで、セル本体41を形成する。このセル本体41を、セパレータ47の開口部79を閉塞するように、セパレータ47に接合する。セル本体41とセパレータ47との接合はロウ付け等により行う。
【0075】
次に、インターコネクタ43、ガスシール部45、セル本体41を接合済みのセパレータ47、燃料極フレーム49、ガスシール部51、及びインターコネクタ43を積層して一体化することで、発電セル(単セル3)が完成する。
【0076】
そして、複数の発電セル、熱交換器7、エンドプレート6、8を
図2、
図3に示す順番で積層し、孔にボルト11〜18を差し込み、ボルト11〜18の両端にナット19を螺合することで、燃料電池1が完成する。
<第2の実施形態>
1.燃料電池1の構成
本実施形態の燃料電池1の構成は、基本的には前記第1の実施形態と同様であるが、熱交換器7の構成において相違する。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0077】
図10、
図11Bに示すように、熱交換器7における中央溝265Aの表面全体に、トラップ層401が設けられている。トラップ層401は、中央溝265Aの内壁に形成された一定の膜厚を有する層であり、その膜厚は、中央溝265Aの深さよりも小さい。そのため、
図10に示すように、燃料ガス用部材271における空気用部材267側の面271Bと、トラップ層401との間には、隙間が存在し、その隙間を空気が流れることができる。トラップ層401の材質は、空気極37の材質と同じである。
【0078】
また、
図10、
図11Cに示すように、燃料ガス用部材271の面271Bのうち、中央溝265Aに対向する領域には、トラップ層402が形成されている。よって、空気用部材267と燃料ガス用部材271とを積層したとき、
図10に示すように、中央溝265Aの上側にはトラップ層401が存在し、下側にはトラップ層402が存在する。トラップ層402の材質は、空気極37の材質と同じである。
【0079】
また、
図10、
図11Dに示すように、中央溝269Aの表面全体に、トラップ層403が設けられている。トラップ層403は、中央溝269Aの内壁に形成された一定の膜厚を有する層であり、その膜厚は、中央溝269Aの深さよりも小さい。そのため、
図10に示すように、隣接する単セル3と、トラップ層403との間には、隙間が存在し、その隙間を燃料ガスが流れることができる。トラップ層403の材質は、燃料極33の材質と同じである。
【0080】
また、
図10に示すように、隣接する単セル3のインターコネクタ43のうち、中央溝269Aに対向する領域には、トラップ層404が形成されている。よって、燃料ガス用部材271を隣接する単セル3上に積層したとき、
図10に示すように、中央溝269Aの上側にはトラップ層403が存在し、下側にはトラップ層404が存在する。トラップ層404の材質は、燃料極33の材質と同じである。
【0081】
2.燃料電池1が奏する効果
(1)本実施形態の燃料電池1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏する。
(2)本実施形態では、トラップ層401〜404を用いることにより、酸化剤ガス流路及び燃料ガス流路の差圧を小さくすることができる。
<第3の実施形態>
1.燃料電池1の構成
本実施形態の燃料電池1の構成は、基本的には前記第1の実施形態と同様であるが、熱交換器7の構成において相違する。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0082】
図12、
図13Bに示すように、トラップ部301は、中央溝265Aの全体をカバーしている。また、
図12、
図13Dに示すように、トラップ部302は、中央溝269Aの全体をカバーしている。
【0083】
2.燃料電池1が奏する効果
(1)本実施形態の燃料電池1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏する。
(2)本実施形態では、トラップ部301が中央溝265Aの全体をカバーすることにより、空気中に含まれる汚染物質をトラップする効果が一層高い。
【0084】
(3)本実施形態では、トラップ部302が中央溝269Aの全体をカバーすることにより、燃料ガス中に含まれる汚染物質をトラップする効果が一層高い。
<第4の実施形態>
1.燃料電池1の構成
本実施形態の燃料電池1の構成は、基本的には前記第1の実施形態と同様であるが、熱交換器7の構成において相違する。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0085】
本実施形態では、燃料電池1とは別体のトラップユニットを備える。空気は、そのトラップユニットを通ってから、燃料電池1の空気管24に導入される。また、燃料ガスも、上記のトラップユニットを通ってから、燃料ガス管21に導入される。トラップユニットは、空気及び燃料ガス中の汚染物質のトラップを行う機能を有する。
【0086】
2.燃料電池1が奏する効果
(1)本実施形態の燃料電池1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏する。
(2)本実施形態では、トラップユニットを備えることにより、空気及び燃料ガスに含まれる汚染物質をトラップする効果が一層高い。
<その他の実施形態>
(1)前記第1〜第4の実施形態において、トラップ部(トラップ層)は、空気流路(中央溝265A内)のみに設けてもよいし、燃料ガス流路(中央溝269A)のみに設けてもよい。
【0087】
(2)前記第1〜第4の実施形態において、空気流路(中央溝265A内)のトラップ部(トラップ層)の材質は、空気極37の材質と、他の物質との混合物であってもよいし、他の物質のみであってもよい。
【0088】
また、燃料ガス流路(中央溝269A)のトラップ部(トラップ層)の材質は、燃料極33の材質と、他の物質との混合物であってもよいし、他の物質のみであってもよい。
(3)前記第1の実施形態において、トラップ部301、302の位置は、他の位置であってもよい。例えば、トラップ部301の位置は、中央溝265Aのうち、第1排出溝265C側の位置であってもよい。また、トラップ部302の位置は、中央溝269Aのうち、第2排出溝269C側の位置であってもよい。
【0089】
(4)前記第1〜第4の実施形態において、燃料電池1は、他のタイプ(例えば、MCFC(溶融炭酸塩形燃料電池))でもよい。
(5)前記第1〜第4の実施形態における構成の全部又は一部を適宜組み合わせてもよい。
【0090】
(6)前記第1〜第4の実施形態の燃料電池1が備える単セル3の数は、上記の個数に限定されず、適宜設定することができる。また、燃料電池1が備える熱交換器7の数は、上記個数に限定されず、適宜設定することができる。
【0091】
(7)前記第1〜第4の実施形態の燃料電池1において、熱交換器7の積層方向における位置は、燃料電池1の中央であってもよいし、端部寄りであってもよい。
(8)前記第1〜第4の実施形態の燃料電池1において、熱交換部7の位置は、燃料電池スタックにおける端部(エンドプレート6と図面上最も上側の単セル3との間、又は、エンドプレート8と図面上最も下側の単セル3との間)であってもよいし、単セル3のスタックにおける中央付近であってもよい。
【0092】
(9)前記各実施形態では、燃料電池1の燃料ガス流路は、ボルトの内部に形成された空洞(中空ボルト)としたが、これに限ることはない。燃料ガス流路は、中実ボルト(内部に空洞が無いボルト)の外表面の外側に形成してもよい。また、燃料電池1に中実ボルトと、中空ボルトとを、併設してもよい。