特許第6193793号(P6193793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6193793鋳造用耐火物、並びにそれを使用した鋳造用ノズル及びスライディングノズル用プレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193793
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】鋳造用耐火物、並びにそれを使用した鋳造用ノズル及びスライディングノズル用プレート
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/103 20060101AFI20170828BHJP
   B22D 41/32 20060101ALI20170828BHJP
   B22D 41/54 20060101ALI20170828BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20170828BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20170828BHJP
   F27D 3/14 20060101ALI20170828BHJP
   C04B 35/657 20060101ALN20170828BHJP
【FI】
   C04B35/103
   B22D41/32
   B22D41/54
   B22D11/10 330S
   F27D1/00 N
   F27D3/14 C
   !C04B35/657
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-73350(P2014-73350)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193512(P2015-193512A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤峰 経一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和男
(72)【発明者】
【氏名】牧野 太郎
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−066986(JP,A)
【文献】 特開2012−072006(JP,A)
【文献】 特開2013−053034(JP,A)
【文献】 特開2011−104596(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113972(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/031435(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/058811(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102898157(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/10 − 35/103
C04B 35/622 − 35/657
B22D 11/10
B22D 41/22 − 41/32
B22D 41/50 − 41/54
F27D 1/00
F27D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlCを15質量%以上60質量%以下、金属としてのAl成分を1.2質量%以上10.0質量%以下含有し、残部がAl、フリーのC及び他の耐火性成分からなる鋳造用耐火物において、AlC、Al及び金属としてのAl成分の合計が85質量%以上であって、AlCの含有量(AlC)と金属としてのAl成分の含有量(Al)とフリーのCの含有量(C)とが下記の式1及び式2の関係を満たすことを特徴とする、鋳造用耐火物。
1.0≦C/(AlC×0.038+Al×0.33) …式1
1.0≧C/(AlC×0.13+Al×0.67) …式2
【請求項2】
記ACの結晶の大きさが、AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で20μm以上である、請求項に記載の鋳造用耐火物。
【請求項3】
前記残部の他の耐火性成分が、MgO、SiO、正方晶又は単斜晶のZrO、SiC、BC、BN、Si及び金属Siの群から選択する1又は複数である、請求項1又は請求項2に記載の鋳造用耐火物。
【請求項4】
前記金属としてのAl成分の含有量に対する質量割合で10%以上200%以下の金属Siを含有する、請求項1から請求項のいずれかに記載の鋳造用耐火物。
【請求項5】
請求項1から請求項に記載のいずれかの鋳造用耐火物を一部又は全部に配設した、鋳造用ノズル又はスライディングノズル用プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の鋳造に使用される鋳造用耐火物、並びにその耐火物を使用した鋳造用ノズル、及び溶鋼の流量を制御するスライディングノズル装置(以下「SN装置」という。)に用いられるスライディングノズル用プレート(以下「SNプレート」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の鋳造において、取鍋やタンディッシュ等の溶鋼容器から排出される溶鋼の流路たる鋳造用ノズル及び溶鋼の流量を制御するSN装置が使用される。このSN装置には2枚又は3枚の耐火物製のノズル孔を持つSNプレートが使用される。SNプレートは拘束された条件下、重ね合わせられ、さらに面圧が付加された状態で摺動され、ノズル孔の開度を調整することで溶鋼の流量が調整される。
【0003】
このことから、SNプレートには、拘束条件下での使用に耐えうる機械的強度、鋳造時の熱応力に対する耐熱衝撃性、溶鋼中の成分やスラグなどに対する耐食性、耐酸化性、さらには、稼動面となる摺動面が損耗を受ける「面荒れ」に対する「耐面荒れ性」などの特性が要求される。
【0004】
SNプレートには、一般的に、アルミナ炭素質耐火物が使用されており、その製法から約1000℃以上の高温で焼成される高温焼成品と約1000℃未満の温度で焼成される低温焼成品とに大別される。一般に高温焼成品は、焼成時の組織変化により低温焼成品よりも気孔率が高くなることから、さらにタール、ピッチ等を含浸することで製造される。このように、高温焼成品は高温下での焼成及び含浸により緻密で強固な組織を形成し、かつ高温で焼成されていることから高温域まで熱的に安定であり、耐熱衝撃性にも優れた特徴を持つ。しかしながら、高温で焼成されることや、タールやピッチを含浸すること、さらに、使用時に発生する発煙や有害物質を予め除去するために含浸後にコーキング処理を行うなど、SNプレートを製造する上で、エネルギー的にも工程的にも非常に高コストとなり、かつ、タールやピッチ等を使用することから環境にも配慮する必要が生じる。
【0005】
これに対して、低温焼成品は、高温焼成品と比較して、エネルギーコストが低く抑えられ環境にも優しいというメリットがある。この低温焼成品としては、強度や耐酸化性を付与するために、低融点の金属アルミニウムや金属アルミニウムを含む合金が添加され、約1000℃未満のさまざまな温度域で焼成される、いわゆる軽焼品又はいわゆる不焼成品と称されるものが多く開示されている。
【0006】
例えば特許文献1には、耐火原料、フェノール系レジン、及び球状のアトマイズ粉からなる金属アルミニウム粉末の配合物を混練、成形した後、550〜650℃の温度で加熱処理する製造方法が開示されている。加熱処理温度が550℃未満では、フェノール系レジンの耐酸化性が劣ると共に分解ガスが発生し、使用時に臭気が発生し、650℃を超えると炭化アルミニウムが生成するとされている。また、炭化アルミニウムが生成すると、常温、常圧下で水と容易に反応して水酸化金属アルミニウムを生成し、体積膨張と重量増加を伴うため、保管中にプレートが崩壊してしまうことが多いとされている。
【0007】
特許文献2には、耐火性無機材料骨材90〜99.5質量%と金属アルミニウム又は金属アルミニウム合金のファイバー0.5〜10質量%からなる配合物に、フェノール樹脂を添加して、700℃、850℃、あるいは1000℃で熱処理することが開示されている。金属アルミニウム又は金属アルミニウム合金の融点(金属アルミニウムの場合は660℃)以上で熱処理することで、周囲組織の粒間に金属アルミニウムを浸透させ、耐火物の強度を飛躍的に向上させることができ、しかも耐熱衝撃性も大幅に高めることができるとされている。また、熱処理温度が1000℃ よりも高くなると、金属アルミニウム又は金属アルミニウム合金のファイバーとしての良好な特性を保持できなくなり、ファイバーと粉末との特性上の差がなくなり、しかも、金属アルミニウムの浸透が進行してファイバーの存在していた箇所に空隙が生じ、むしろ耐食性が劣化することがあるとされている。
【0008】
特許文献3には、耐火性無機原料、炭素質原料及び金属質原料からなり、それらの原料は、粒子径が0.1μm以上4000μm以下である連続粒度分布系を構成し、フェノール樹脂を加えて、非酸化性雰囲気にて800〜1500℃で焼成し、かつ含浸処理を行わない製造方法が開示されている。また、その実施例には、850℃で焼成され、見掛け気孔率が5.0%の耐火物が開示されている。
【0009】
特許文献4には、金属アルミニウム及び/又は金属アルミニウム合金を0 .5〜20質量%含有する耐火原料配合物に有機バインダーを添加し、混練後、成形し、400℃以上1000℃以下で熱処理し、その後、タール、ピッチ等の炭素質含有液状物を含浸させない耐火物であって、圧縮強度が180MPa以上、かつオートクレーブによる消化試験での重量増加率が1%以下の耐火物が開示されている。
【0010】
これら特許文献1〜4にも開示されているように、従来一般的には、鋳造用耐火物、特に高度な耐食性や耐摩耗性等を要求されるSNプレート用の耐火物(以下「プレート耐火物」という。)は、アルミナ質、マグネシア質、スピネル質、ジルコニア質等の酸化物を主たる構成材料としている。しかし、これらの酸化物は、熱膨張率が大きいので、耐熱衝撃性が不足するという問題がある。
【0011】
鋳造用耐火物、特にプレート耐火物においては、その耐熱衝撃性を向上させる手法として、ムライト等のシリカを含有する原料、又はジルコニアムライトやアルミナジルコニア等のジルコニアを含有する原料を併用する手段が多く採用されている。
【0012】
シリカを含有する原料(シリカ含有原料)、例えばムライトは、その鉱物自体がアルミナ質、マグネシア質、スピネル質、ジルコニア質等の酸化物を構成する鉱物よりも熱膨張率が小さいので、その含有量を調整することで耐火物としての熱膨張率を低下させ、耐熱衝撃性を改善することができる。
【0013】
ジルコニアを含有する原料(ジルコニア含有原料)は、アルミナ原料と比較して低熱膨張率であり、また、ジルコニア特有の相転移に伴う特異な膨張挙動から、組織内にマイクロクラック又はマイクロスペースを生成することで耐火物の弾性率を低減する効果があり、熱膨張率と弾性率を低減する効果で耐熱衝撃性が付与されると考えられている。
【0014】
これらシリカやジルコニアを含有する原料の併用により耐熱衝撃性を改善するには、例えば5.0質量%〜15.0質量%程度の比較的多量に含有させる必要がある。しかし、これら原料の多量使用は、却って耐用性を低下させることがある。
【0015】
すなわち、シリカ成分については、炭素と共存する雰囲気下では容易に還元されてSiOガスとなって消失し易くなり、耐火物組織を粗にし、鉄系酸化物やスラグ成分が組織中深くに浸潤し易くなり、また耐酸化性も低下する傾向となる。さらにシリカ成分は、溶鋼由来の鉄系酸化物や、鋼中介在物、スラグ成分と反応して低融物を生成して溶損する。したがって、ムライトやジルコニアムライト等のシリカ成分を多量に含有させた場合には耐食性、耐酸化性等の低下によって耐用性が低下する。
【0016】
ジルコニア成分については、マイクロクラックやマイクロスペース等による応力緩和効果等を利用するので、繰り返し使用回数が少ない、鋳造時間が比較的短時間等、比較的使用条件が緩やかな場合には効果的である。しかし、ジルコニア含有原料を併用する耐火物は、長時間使用や繰り返し多数回使用される条件では亀裂の拡大や組織劣化によるエッジ欠損や摺動面の磨耗等による損傷等が大きくなり、却って耐用性を低下させることになる。
【0017】
ここで繰り返し使用とは、例えば取鍋用のSNプレートで使用される場合や、タンディッシュでも熱間回転で使用される条件など、ノズル孔周りが1000℃以上の高温条件となる鋳造後にプレート自体が冷却され、次の鋳造までに約500℃以下の温度条件となる、高温加熱、冷却を繰り返す使用条件のことをいう。取鍋の場合の多数回使用は、複数ch(例えば8ch以上)使用される条件のことをいい、熱間回転タンディッシュの場合は、2cast以上使用される条件をいう。
【0018】
また、長時間使用とは、取鍋で使用される場合は鋳造時間の合計が例えば約500分以上の長時間受鋼する条件をいい、タンディッシュの熱間回転の場合は例えば800分以上の条件をいう。
【0019】
このような使用条件は、加熱冷却を繰り返し、さらに長時間、高温条件に曝されることから、プレート耐火物の組織変化をもたらす。よってプレート耐火物の損耗が大きくなる厳しい使用条件である。
【0020】
鋳造用耐火物の多くはその結合組織に炭素結合を採用している。そこで、この炭素を酸化消失から保護するために、酸素親和力の強い金属アルミニウムを代表とする金属が併用されることが多い。前記特許文献1〜4に開示された低温あるいは高温で焼成された耐火物にも、金属アルミニウムが適用されている。
【0021】
一方で、このような金属アルミニウム等の酸素親和力が強い低融点の金属を適用、含有した耐火物に、ジルコニア含有原料を併用すると、耐火物の耐用性を低下させる一要因となる。
【0022】
この要因、メカニズムは以下のように考えられる。
【0023】
鋳造用ノズルのノズル孔周りやSNプレートの摺動面などの高温に曝される条件では、耐火物の気孔内の雰囲気は、炭素を内在していることもあって還元雰囲気となる。さらに組織中に金属アルミニウムが存在する場合は、さらに酸素濃度が低下し、強還元雰囲気となる。この強還元雰囲気中では、シリカだけでなくジルコニアも容易に還元され、その後炭素と反応して炭化ジルコニウム、一酸化ジルコニウム、ジルコニウムを生成する。生成した炭化ジルコニウム、一酸化ジルコニウム、ジルコニウムは酸素親和力が高く、酸化雰囲気下では容易に酸化されジルコニアを生じる。この際、体積膨張を生じて組織内に欠陥を生じる。このように長時間の鋳造や繰り返し使用時には、耐火物の組織が劣化し、前述のようなさまざまな損傷を招来する。
【0024】
このように金属アルミニウムなどの酸素親和力が高い物質は、酸化防止剤としての効果が高い一方で耐火物の組織中にあって長時間高温条件に曝されると、耐火物中の酸化物原料を還元して変質させ、耐火物としての組織劣化ないしは耐用性を低下させるという弊害をも生じる。
【0025】
なお、マグネシウム等の他の金属も、その金属ごとに活性となる温度域等に違いがあるものの、その酸素親和力により金属アルミニウムと同様の反応を生じる。このようなことから、金属アルミニウム、マグネシウム及びこれらを含む合金を含有する耐火物に、従来の技術であるアルミナジルコニアやジルコニアムライトなどジルコニアやシリカを含有する原料を、その原料によって耐熱衝撃性を改善しようとする程度の多量で適用すると、長時間鋳造や多数回繰り返し等の、熱的に厳しい条件では耐用性改善に限界がある。
【0026】
このようなジルコニアやシリカを含有する原料と金属アルミニウム等の反応ないしは耐火物の損傷程度は、これらの相対的な含有量、存在形態によっても異なる。また、このような耐火物組成で金属アルミニウムを多量に使用すると、金属アルミニウムの反応により耐火物が緻密化すると共に高弾性率化し、耐熱衝撃性が低下するので、特に大型形状のSNプレートではその繰り返し使用は困難となる。
【0027】
一方、特許文献5には、鉱物相としてAlCを5〜95質量%含有し、熱膨張係数が8×10−6/K以下で、常温での曲げ強さが10MPa以上60MPa以下であるSNプレートが開示されている。
【0028】
AlCは低熱膨張性であり、これにより耐熱衝撃性の改善が期待される。しかし、AlCは長時間又は多数回使用される等で酸化条件に曝されるとAl化が進行して、低熱膨張性基材としての効果が減少していく。したがってAlCを含有させるだけでは、耐熱衝撃性ないし耐用性の改善効果は十分には得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2000−94121号公報
【特許文献2】特開平1−313358号公報
【特許文献3】特開平11−199328号公報
【特許文献4】国際公開第2009/119683号
【特許文献5】特開2011−104596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明が解決しようとする課題は、鋳造用耐火物、特に鋳造用ノズルやSNプレートのように長時間使用又は繰り返し使用に供される耐火物の耐用性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は次の1〜に記す鋳造用耐火物、鋳造用ノズル及びSNプレートである。
【0032】
1.
AlCを15質量%以上60質量%以下、金属としてのAl成分を1.2質量%以上10.0質量%以下含有し、残部がAl、フリーのC及び他の耐火性成分からなる鋳造用耐火物において、AlC、Al及び金属としてのAl成分の合計が85質量%以上であって、AlCの含有量(AlC)と金属としてのAl成分の含有量(Al)とフリーのCの含有量(C)とが下記の式1及び式2の関係を満たすことを特徴とする、鋳造用耐火物。
1.0≦C/(AlC×0.038+Al×0.33) …式1
1.0≧C/(AlC×0.13+Al×0.67) …式2
【0034】

記ACの結晶の大きさが、AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で20μm以上である、前記に記載の鋳造用耐火物。
【0035】

前記残部の他の耐火性成分が、MgO、SiO、正方晶又は単斜晶のZrO、SiC、BC、BN、Si及び金属Siの群から選択する1又は複数である、前記1又は前記に記載の鋳造用耐火物。
【0036】

前記金属としてのAl成分の含有量に対する質量割合で10%以上200%以下の金属Siを含有する、前記1から前記のいずれかに記載の鋳造用耐火物。
【0037】

前記1から前記4に記載のいずれかの鋳造用耐火物を一部又は全部に配設した、鋳造用ノズル又はSNプレート。
【0038】
以下本発明を詳細に説明する。
【0039】
前述のようなジルコニアやシリカを含有する原料に存在する問題点を解消するために、本発明は、AlCを耐火物の主たる構成材料とする。AlCの熱膨張率は4×10−6/K以下と、アルミナの約半分程度であって低熱膨張性である。この低熱膨張性により、耐火物に高度な耐熱衝撃性を備えることができる。しかも従来技術のアルミナジルコニア等のジルコニア含有原料よりも熱膨張率を低減する効果が高い。またAlCは高温域でもジルコニアのような相転移はせず、特異な膨張挙動は示さないことから弾性率を低減する効果はない反面、繰り返し使用でも組織劣化を生じ難い利点もある。
【0040】
AlCは850℃以上の一酸化炭素雰囲気下では、式3で示される反応により、Alを析出する。これにより、最初に稼動面に緻密なアルミナ層を形成し、このアルミナ層がAlCを保護して、AlCのさらなる酸化等による変化を抑制する。AlCは、その表面のアルミナ保護層を含め、耐火物内に低耐食性のシリカ成分を多量には含まないので、高い耐食性、耐摩耗性等を示す。
AlC+2CO=2Al+3C …式3
【0041】
なお、AlCは、雰囲気によっては窒化物、炭化物を含む変質層をも形成する。
【0042】
AlCはこのようにAlとして析出されることから、アルミナ−ジルコニア原料やジルコニアムライト原料などのジルコニア含有原料と比較して耐食性に優れており、摺動面の損耗に対して改善が期待できる。
【0043】
鉱物相としてのAlCの含有量としては、15質量%未満では熱膨張率の低減効果が小さく、耐熱衝撃性が不十分である。一方、AlCの含有量が60質量%を超えるとAlCが相対的に過多になって、フリーのCと金属としてのAl成分の含有量による調整だけでのAlCのAl化に伴う焼結を抑制することは困難になる。
【0044】
なお、プレート耐火物は一般的に焼嵌めした鉄製のバンドで外周部を拘束されるか、又は鉄製の容器内に配置されて使用されることが多い。耐火物中のAlCの含有量が多くなるのに伴って耐火物の熱膨張率は低減することから、鋳造時にその耐火物の膨張量よりも前記の鉄製バンドや鉄製容器の膨張量の方が大きくなり、鉄製バンドが耐火物から外れる又は鉄製容器との間に隙間が生じることがある。このような現象は、特に長時間の使用において耐火物自体の亀裂が拡大する原因となると共に、繰り返し使用する際に耐火物(プレート状)が脱落する原因になることがある。このような理由から、鉱物相としてのAlCの含有量は15質量%以上60質量%以下であることが必要である
【0045】
AlCは長時間又は多数回使用される等で酸化条件に曝されるとAl化が進行して、低熱膨張性基材としての効果が減少していく。また、Alの密度を3.9、Cの密度を2.0、AlCの密度を2.7とすると、前記式3の反応に伴い約3.1%の体積膨張を伴うことから、AlCのAl化の際及びその進行に伴って緻密化も進行して、また焼結の進行等により耐熱衝撃性が低下する傾向も現れる。
【0046】
したがって耐熱衝撃性を維持するための主要な耐火骨材としてのAlCは、そのAl化を抑制してAlCとしての残存させることが好ましい。
【0047】
そこで本発明では、AlCを骨材として含む耐火物に金属アルミニウムを併存させ、金属アルミニウムがAlCよりも優先的に酸素を捕捉することで、AlCを保護し、その残存量を高める。
【0048】
金属アルミニウム又は金属アルミニウム合金はその融点が660℃以下であることから、約660℃付近から鋳造温度までの広い温度域において耐酸化性効果を発現することができる。したがって、例えばSNプレートの繰り返し使用等で、そのプレート耐火物内の温度分布において低温度の部分が存在する場合等の耐酸化性強化に寄与することができる。すなわちAlCの耐酸化性が発現する約850℃以下の温度域での耐火物(炭素成分)の酸化を抑制・防止することができると共に、約850℃以上の温度域においてはAlCが酸化することを抑制・防止することができる。
【0049】
ここで、本発明の鋳造用耐火物中に含有する「金属としてのAl成分」とは、他の元素との化合物を除き、アルミニウムのみから成る原料に由来するAl成分と、アルミニウムを含む合金原料に由来するAl成分を含み、1.2質量%以上10質量%以下という含有量は、金属としてのAl成分のみに換算した量をいう。
【0050】
この金属としてのAl成分の含有量が1.2質量%未満では、耐火物組織中のC及びAlCの酸化抑制効果を得ることができない。一方、10質量%を超えると、使用時の受熱により金属アルミニウムが反応して、緻密化や焼結等が過度に進行する等により、十分な耐熱衝撃性を得ることができない。
【0051】
この金属としてのAl成分の含有量は、個別の鋳造用ノズル、SNプレートの形状や使用(操業)条件に応じて任意に調整することができる。としてのAl成分を含有する合金としては、金属アルミニウム−マグネシア合金、金属アルミニウム−シリコン合金等を使用することができる。
【0052】
これら金属アルミニウム、金属アルミニウムを含有する合金は、AlCの粒子(球状であるか板状であるかに関わらず)の周囲に分散させることが好ましい。この点から、金属アルミニウム又は金属アルミニウムを含有する合金は、0.3mm以下のアトマイズ又は繊維状であることが好ましい。
【0053】
AlCは850℃以上の一酸化炭素雰囲気中では、雰囲気と接する粒子の界面から前記式3で示される反応が進行し、AlとCを主成分とする相を生成する。よってAlCの表層がAlC、Al、SiO等の骨材原料と接している場合は容易に焼結し、ネットワークを形成する。このような反応層が形成されることによりAlCが直接雰囲気と接することを妨げ、AlCの酸化を抑制する反面、過度な反応の進行は、周囲の酸化物成分等との焼結により過度な結合ないし高弾性率化等を招来して、耐熱衝撃性を低下させることになる。
【0054】
また、金属アルミニウム又は金属アルミニウムを含有する合金は融点以上の温度条件下にさらされると溶融し、マトリックス内に浸透して金属としてのAl成分同士のネットワークを形成し、また雰囲気条件によっては、以下の式4及び式5で示される反応によりAl又はAlとCを析出して組織を緻密化すると共に高強度となる。しかしその反面著しく高弾性率ともなる。同様に超微粉のアルミナ粒子等、易焼結性の酸化物も焼結によりネットワークを形成して高強度となると共に、著しく高弾性率ともなり得る。
4Al(l)+3C(s)=Al(s) …式4
2Al+3CO=2Al+3C …式5
【0055】
Alの密度を2.7、Cの密度を2.0、Alの密度を2.36、Alの密度を3.9とすると、Alは、前記式5で示されるAlとCを析出する場合は約120%の体積膨張を伴うことから、著しく組織を緻密化する。フリーのCがマトリックス中に分散して存在する場合は、溶融した金属アルミニウムと反応し、炭化アルミニウムを生成し易い。炭化アルミニウムの生成反応による体積膨張は5.2%程度であり、組織の緻密化効果は小さく、Alを形成する場合ほどには緻密性を高めることはない。
【0056】
これらの反応による緻密化の過度な進行や弾性率の過度な上昇を抑制するために、一定量のフリーのCの存在が必要となる。フリーのCとは、非晶質又は結晶質であるかを問わず、フェノールレジンなどバインダー起因の炭素、黒鉛、コークス粉、ピッチ粉、カーボンブラック、粉末状樹脂などの、他の元素との化合物を形成していない炭素質の基材をなすC成分をいう。すなわち、AlC、SiC、BC等の化合物として存在する炭素は含まない。
【0057】
耐火物のマトリックス中、特にAlCの粒子周りにフリーのCが分散して存在することで、AlC、あるいは金属としてのAl成分の反応によるAl(及びC)の析出自体を抑制することができる。そして、この反応ないし変質に起因した他の骨材原料等との焼結等によるネットワークを遮断する効果も併せ持つ。
【0058】
長時間、又は多数回の使用に耐える特性を備えるためには、前述のAlC、あるいは金属としてのAl成分とAlその他の耐火成分との反応自体を抑制して適正化するために、AlCの含有量(AlC)、金属としてのAl成分の含有量(Al)、及びフリーのCの含有量(C)は、式1及び式2を満たすことが必要である。
1.0≦C/(AlC×0.038+Al×0.33) …式1
1.0≧C/(AlC×0.13+Al×0.67) …式2
【0059】
前述のように一酸化炭素雰囲気ではAlCは一酸化炭素との反応によりAlとCを析出し、組織を緻密化する効果が得られるが、Alは1モルで1.5モルの一酸化炭素を還元する効果があるのに対して、AlCは1モルで3モルの一酸化炭素を還元する効果がある。これはAl:1質量%に対してAlCは5.1質量%で同様の酸化防止効果があることを示している。
【0060】
AlCの反応による焼結ないしは過度な緻密化(高弾性率化等)を抑制するためには、少なくともAlC粒子の界面に生じる変質層をマトリックス中にあるフリーのCが囲繞し、前記変質層をAlなどの酸化物とできるだけ直接接触させないことが望ましい。
【0061】
図1に、AlCを含有する原料とフリーのCを含有する原料を主原料とし、AlCの含有量とフリーのCの含有量を変えて、フリーのCとAlCの体積比を変えた試料を作製し、1300℃非酸化雰囲気中で焼成した耐火物の弾性率を示す。この結果、フリーのCがAlCの体積の5.0%以上の場合に、弾性率が低減する傾向が強くなることが確認された。
【0062】
図2には、平均粒子径が0.6μmの仮焼アルミナに、一次粒子径が5nmのカーボンブラック(フリーのC)を添加し、添加量を変えて混練した後に所定の形状に成形した試料を、1500℃の非酸化雰囲気で焼成した後の線変化率を示す。Cを添加していない条件では、アルミナ粒子同士の接触面からの焼結により収縮するが、Cの添加量が多いほど収縮率は低下し、C添加量が約10体積%でほぼ収縮率がゼロとなる。このことから、仮焼アルミナの粒子の表層をカーボンブラック(C)が被覆又は囲繞してアルミナ粒子同士の接着を防ぐことで、焼結を抑制していると考えられる。
【0063】
なお、粒子間の焼結速度や程度等と粒子周りのC層の厚さの関係は、粒子の種類によりほとんど差がないと考えられること、及び焼結性を確認し易くするために、ここではAlCに変えて仮焼アルミナを用いた。
【0064】
表1(及び表1をグラフ化した図3)には、この結果からAlCの粒子の表層を被覆又は囲繞するカーボンブラックの厚みを概算している。この概算結果から、C添加量が10体積%(7.66質量%)の場合のAlC粒子周りのC層の厚さ、つまりAlC粒子を被覆又は囲繞するカーボンブラック(C)の厚みが0.02μm以上あれば、AlCの焼結を抑制できることを示している。
【0065】
【表1】
【0066】
なお、AlCの焼結による弾性率の上昇等は、前記式3によりAlとCを析出する際の体積膨張による組織の緻密化と、析出したAlと周囲のAl等酸化物成分との焼結により生じると考えられる。
【0067】
次に、表2(及び表2をグラフ化した図4)には、AlCの平均粒子径を変えて、その粒子の表層に0.02μmの厚みのフリーのCを被覆又は囲繞した場合のAlCとフリーのCとの体積比及び質量比の計算結果を示している。
【0068】
【表2】
【0069】
AlC粒子の表層に0.02μmの厚みのフリーのC層を形成すること、及び前述の図1の実験結果に基づくAlCの弾性率低減効果を得るために必要なAlC量に対するフリーのC量:5体積%の2つの条件を満たすAlC粒子の最小の大きさは、この計算結果(表2)から1.2μmとなる。すなわち、AlC粒子の大きさが1.2μm以上であってこのAlC粒子量に対してフリーのCを最低5体積%添加すれば、AlC粒子周囲又は粒子間には、弾性率を低減するのに必要かつ十分な厚さのフリーのC層を得ることができることになり、AlC粒子の大きさが大きくなるほどそのフリーのCの厚さが厚くなる。言い換えれば、AlCの平均粒子径が1.2μm以上あればフリーのCの含有体積がAlCの含有体積の5.0%以下であってもAlCの全粒子の表面をフリーの炭素が被覆又は囲繞することができる。すなわち焼結抑制効果が得られる。
【0070】
ここで、本発明の鋳造用耐火物においてAlCは、主たる構成基材又はその基材の一部として特に耐熱衝撃性を高める機能を担うものである。このような機能を発揮するための基材の大きさは、相対的に大(粗粒ともいう)ないしは中(マトリクスの微粉よりも大きい部分であって中間粒ともいう)程度とするのが技術常識である。すなわち、本発明の鋳造用耐火物中のAlCの平均粒子径は必然的に1.2μmよりも大きく、また後述のように、AlCの結晶の大きさは20μm以上であることが好ましいので、AlCの粒子の大きさも20μm以上であることが好ましい。
【0071】
このことから、本発明の鋳造用耐火物においては、少なくともフリーのCをAlC含有量に対して5.0体積%以上含有することで、上記技術常識の範囲内でAlC粒子の大きさにかかわず、AlC粒子周辺の他の耐火性成分との焼結等を抑制することが可能となることになる。
【0072】
AlCの体積の5.0体積%以上のフリーのCは、AlCの密度を2.7、フリーのCの密度を2.0としてこれを質量割合に換算すると、AlCの質量の3.8質量%以上となる。
【0073】
なお、AlCを含有する原料粒子の表層部を被覆又は囲繞して存在するフリーのCは、耐火物のマトリックスとしての結合組織自体又はその一部として存在するものであってもよい。
【0074】
金属としてのAl成分に関しても、その周りに焼結抑制のためのC層を存在させるために必要なC量を計算することができる。因みに、金属としてのAl成分から前記式5に示すようなAlを生成すること、すなわち膨張量の大きい反応を抑制し、より膨張量の小さい前記式4に示す反応を促進する方が好ましい。つまり、金属としてのAl成分が式4で示される炭化アルミニウムを生成するのに必要なフリーのC量は、Al成分1モルに対して4分の3モルのフリーのC、Al成分の33質量%以上の量が必要である。
【0075】
以上より、耐熱衝撃性を得るため、AlCを含有する原料粒子及び金属としてのAl成分の表層部を被覆又は囲繞して存在するのに必要なフリーのCの含有量は、AlC含有量の3.8質量%以上と、金属としてのAl成分含有量の33質量%以上とを合算した量以上ということになる。
【0076】
このフリーのCの含有量と、金属としてのAl成分含有量及びAlC含有量との関係は式6で表される。
C≧(AlC×0.038+Al×0.33) …式6
これを変形すると、前記式1になる。
【0077】
この式6すなわち式1を満たさない場合は、AlC及びAlの反応及び焼結による過度な緻密化の進行や過度な弾性率の上昇を抑制する効果が小さく、長時間の鋳造時に、亀裂やエッジ欠け等の損耗を生じ易い。
【0078】
一方で過剰のフリーのCが存在する場合は、特に稼動面付近等の酸化雰囲気に曝された場合は、次の反応により酸化される。
2C+O=2CO …式7
C+CO=2CO …式8
【0079】
フリーのCが酸化されると、組織劣化を招き、損耗を助長し、耐用性を低下させる要因となる。特に長時間又は繰り返し使用ではその傾向が顕著になってくる。
【0080】
前述したように、AlやAlCは、酸化されたCを、式3及び式5に示した反応により還元し、Cとしてデポジットさせ、併せて組織を緻密化させることにより酸化防止効果を得ることができる。
【0081】
Alは式5より、1モルで1.5モルの酸化されたCを再びCとして組織中にデポジットする効果があるが、1.5モルを超える酸化されたCに関しては、Cとしてデポジットすることができない。これは、Al:1質量%で0.67質量%のCの酸化を抑制する効果があることを示す。
【0082】
AlCは式4より、1モルで2モルの酸化されたCを元のCとしてデポジットする効果があるが、2モルを超える酸化されたCに関しては、Cとしてデポジットすることができない。これを質量に換算すると、AlCは1質量%で、0.13質量%のCの酸化防止効果を持つことになる。
【0083】
よって耐火物中のAlCと金属としてのAl成分がフリーのCの酸化を防止できる最大量は、これをフリーのCの質量%に換算して書き換えると、式9で表すことができる。
C≦(AlC×0.13+Al×0.67) …式9
これを変形すると、前記式2になる。
【0084】
フリーのCの含有量が前記の式9すなわち式2を満たさない場合は、含有するAlC及びAlが、含有するフリーのC全ての酸化を抑制することができないことになる。
【0085】
また、式6と式9から次の関係式を導き出すことができる。
(AlC×0.038+Al×0.33)≦C≦(AlC×0.13+Al×0.67) …式10
【0086】
前述のように、金属としてのAl成分やAlCは、酸化されたCを還元してCとしてデポジットさせ、併せて酸化物ではないフリーのCで組織を緻密化させることにより、耐熱衝撃性を低下させずに酸化防止効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0087】
本発明により、鋳造用耐火物に求められる耐酸化性、耐食性、耐摩耗性を維持しつつ耐熱衝撃性を高めることができ、長時間又は繰り返し使用が可能となる。したがって、本発明の鋳造用耐火物を使用した、鋳造用ノズルやSNプレートは長時間又は繰り返し使用に好適であり、優れた耐用性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】耐火物中のフリーのCとAlCの体積比と弾性率の関係を示す実験結果の例。
図2】カーボンブラック(フリーのC)添加量と焼成変化率の関係を示す実験例
図3】Alの平均粒子径とそのC層厚みの関係(C/AlC体積比、質量比)を示す実験結果の例(表1をグラフ化したもの)。
図4】AlCの平均粒子径とそのC層厚みの関係(C/AlC体積比、質量比)を示す実験結果の例(表2をグラフ化したもの)。
図5】本発明のAlCの含有量とフリーの炭素量との範囲(式1及び式2で規定される範囲)を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明で使用するAlCを含有する原料粒子としては、適用する耐火物の形状等、個別の条件やニーズに応じて、その粒子径の大きさ、分級と配合割合等を選択すればよい。例えば5mm〜3mm、3mm〜1mm、1mm〜0mm又は0.074mm以上に分級して、これらを任意の割合で適用することが可能である。耐火物の熱膨張率を低減する効果を高めるためには、原料自体が低膨張性であるAlCを含む原料を、相対的に大きい粒子、いわゆる粗骨材として適用することが望ましい。AlCは球状又はそれに近い形状が好ましいが、板状でもかまわない。
【0090】
Cの結晶の大きさは、AlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で20μm以上であることが好ましい。Cの結晶径が大きいほど、長時間の使用条件でもAlCのAl化をより高度に抑制して、AlCを残存させることができる。
【0091】
AlCを含有する原料粒子はアーク溶融された電融原料であって、この電融原料の主な構成成分がAlCとコランダム(Al)であることが好ましい。AlCを含有する原料は、既存の焼結法では生産性が悪く、現実的に工業化することが困難であり、また緻密でAlCの結晶径が大きい骨材となりうる原料を製造することが困難である。これに対してアーク溶融して得られた電融原料は生産性が高く、緻密で結晶径が大きい任意の粒度のAlCの骨材原料を得ることができる。このように緻密であることから高温、酸化条件下でも酸素や一酸化炭素との接触面積が小さくなりAlCの酸化、アルミナ化を抑制し、長時間、低熱膨張率を維持することが可能となる。またAlCの他の主な構成成分がコランダム(Al)であることにより、高い耐食性を維持することができる。さらに、AlCを含有する電融原料が例えば0.5mm以上の粗大な粒子を含み、また例えば約20μm以上のいわゆる中間粒、粗粒域を中心に構成することで、当該耐火物の熱膨張率の低減効果を高くすることができ、長時間、低熱膨張率という特性を持続することが可能となる。これと共に、長時間の使用条件下でのAlCのアルミナ化が進行も抑制(低速化)することができる。
【0092】
金属としてのAl成分源である金属アルミニウムの形態としては、球状の形態、フレーク状の形態又はファイバー状の形態のいずれも適用可能である。また、SiやMgなどとの合金として適用することも可能である。
【0093】
本発明の鋳造用耐火物は、660℃以上の温度域で焼成される場合は、適用する金属アルミニウムの形態としては、比表面積が小さく比較的高温域まで残存するアトマイズなどの球状の形態やファイバー状の形態が好ましく、平均粒径が0.074mm以上の粒度を、適用する金属アルミニウム量を100質量部とする場合に30質量部以上90質量部以下添加することが望ましい。
【0094】
金属アルミニウムからアルミナを生成するよりも炭化アルミニウムを生成する方が体積膨張は小さいので、金属アルミニウムの反応による緻密化、高弾性率化を抑制するためには、アルミナよりも炭化アルミニウムを生成することが好ましいことになる。含有する金属アルミニウム(金属としてのAl成分)が全量炭化アルミニウムを生成すると仮定すると、前記式4に示すようにAl:4モルに対してC:3モル、すなわちAl:1質量%に対してC:0.33質量%、すなわち1/3のフリーのCを含有すればよいことになる。
【0095】
しかし、例えば溶鋼接触面やプレート耐火物の摺動面等の重要部位が、高温状態か数百℃以下の低温状態かに関わらず、大気その他に由来する水蒸気に曝される工程を含み繰り返し使用されるような使用条件、また、耐火物中に金属アルミニウムが多量に存在する場合は特に、式11に示す炭化アルミニウムの消化が生じて、耐火物組織の破壊等を招来することがある。
Al+6HO=4Al(OH)+3CO+9/2H …式11
【0096】
一般的な単回数での使用や、長時間ではあっても炭化アルミニウムの消化が生じない条件、すなわち、耐火物の組織、構造、組成等、また耐火物の周囲の環境等によって違いがあるが、概ね約200℃以下又は水蒸気による消化反応が生じないような使用条件においては、炭化アルミニウムを生成することによる弊害はないので、炭化アルミニウムの生成自体は好ましい。
【0097】
このような条件以外の繰り返し使用等、すなわち炭化アルミニウムの消化反応が生じるような条件の場合は、前記の消化反応を抑制するために金属SiやSiO成分を少量含有させることが好ましい。炭化アルミニウム中のAlの一部をSiが置換することで、消化に対する耐性が得られる。
【0098】
このように繰り返し使用等を行う条件の場合は、本発明の耐火物には金属Siを0.5質量%以上10質量%以下、又は金属としてのAl成分に対する質量割合で10%以上200%以下含有することが望ましい。
【0099】
AlC以外の骨材としてはAlを主体とすることが望ましい。本発明の耐火物では、AlC、金属としてのAl成分及びAlの含有量の合計が85質量%以上であることが必要であって、残部はフリーのC及び炭化物、窒化物、硼化物等、あるいはシリコン、マグネシア等の金属を含む耐火性成分を主体とすることが望ましい。
【0100】
AlC、金属としてのAl成分及びAlの含有量の最小合計量85質量%及び前記式1及び2に基づくフリーのC量の残部としてのその他耐火性成分は、炭化物、硼化物、窒化物、若しくは、SiやMg等の金属、又は、マグネシア、微量のジルコニアやシリカ等の酸化物である。
【0101】
このように残部にはスラグ等に対する耐食性や耐浸潤性、耐酸化性の向上等を目的として、炭化物、硼化物、窒化物等を含有させることができる。しかし残部に炭化物、硼化物、窒化物等が多量に含まれる場合は、これら自体の酸化損耗や溶鋼への溶出による損耗が大きくなって耐火物の損耗が大きくなる。また、SiやMg等の金属が多量(例えば残部の全て)に含まれる場合は、耐火物組織の焼結が著しく進行し、弾性率の上昇等により耐熱衝撃性が低下し、亀裂や破壊などの損耗が大きくなる。ジルコニアやシリカ等の成分が多い場合はこれらが還元され組織劣化や損耗を助長する要因となる。また、マグネシアの含有量が多い場合は、マグネシアがペリクレースで存在する場合にはこれ自体の熱膨張率が大きいこと、さらには耐火物中のアルミナとの反応によるスピネル化反応が生じて、大きな膨張挙動を示すので、耐熱衝撃性の低下による亀裂や損耗が大きくなる。但し、マグネシアは既にスピネル化した原料として含有する場合はアルミナ原料と同様に取り扱ってかまわない。
【0102】
これら酸化物成分の鉱物としては、β−アルミナ、スピネル、ムライト、粘土、カオリナイト、単斜晶系のジルコニア、正方晶系のジルコニア、ガラス層、などを含有してもよい。ジルコニアは、変態に伴う特異な膨張挙動をさせない点から、単斜晶又は正方晶であることが好ましい。
【0103】
本発明の耐火物を製造する方法を、SNプレートを例に示す。本発明の耐火物を適用したSNプレートは、一般的なSNプレートの製造方法により得ることができる。
【0104】
すなわち、Alを主成分とする骨材粒子、金属アルミニウム、炭素基質骨材、残部を構成する他の耐火原料を所定の粒度構成で混和する工程、フェノール樹脂等の炭素結合を形成する有機バインダーを添加して混練する工程、所定のSNプレートの形状に成形する工程、乾燥及び熱処理を行う工程、表面等の加工工程を含む製造方法である。これらの詳細な条件は、個別の条件に応じた任意の設計により最適化することができる。熱処理は、非酸化雰囲気であって、不活性ガス雰囲気であることがより好ましい。
【実施例】
【0105】
AlCを含有する原料、アルミナ質原料、金属アルミニウム、炭素質原料及びその他の耐火性骨材に有機バインダーを加えて混練し、オイルプレスで耐火物形状に成形した後に、乾燥し、所定の温度で熱処理を行って耐火物を得た。AlCを含有する原料としては、後述する実施例D(表6)を除いて、AlCとコランダムを主成分とした電融原料粒子であって、最大粒子径(トップサイズ)が1mm、AlCの結晶サイズがAlCの結晶の断面積を円に換算したときの平均直径で50μmのものを使用した。
【0106】
得られた耐火物について以下の要領で組成を分析した。
【0107】
耐火物の組成において、AlC、Al(コランダム)、Al(金属としてのAl成分)及びSiについては、X線回折による内部標準法及び標準サンプルがない場合は、リードベルド法によるプロファイルから定量を行った。のC(F.C.)及びトータルのC(TOTAL C)については、JIS−R−2012に準じて定量化を行った。その他の成分である、ZrO、SiO及びMgOについては、JIS−R−2216に準じて蛍光X線により定量化した。
【0108】
また、得られた耐火物から所定の形状の試料を切り出し、下記評価を行った。
(1)かさ比重:JIS−R−2205に準じる。
(2)熱膨張率:JIS−R−2207に準じる。
【0109】
さらに繰り返し使用、多数回使用に対する適性の評価として、耐酸化磨耗性及び耐熱衝撃性に関する試験を、酸化雰囲気での加熱、冷却を3回繰り返す方法により行うと共に、消化(水和)試験を行った。
【0110】
具体的な評価内容を以下に記す。
【0111】
(3)耐酸化磨耗性:回転炉を用い試料を大気雰囲気下、1000℃で2時間熱処理した後冷却する操作を3回繰り返した。BS(ブリテッィシュスタンダード)磨耗法に準じて、酸化後のこの試料に砥粒をブラストし、磨耗量を定量化した。さらにこの磨耗量を、比較例6(表5参照)を100として相対的に指数化した。この指数が小さいほど、耐酸化磨耗性に優れていることを示す。
【0112】
(4)耐熱衝撃性:受熱により組織が変化した後の耐熱衝撃性評価を目的に、電気炉で非酸化雰囲気下、1400℃で3時間熱処理を行った後に、高周波誘導炉を用いて、1600℃の溶銑に3分浸漬後冷却を行う評価を3回繰り返し、評価後の試料の状態を評価した。
【0113】
(5)耐消化性:50mm×50mm×50mmの形状の試料を非酸化雰囲気下、1400℃で3時間加熱後に室温まで冷却し、その試料を学振法4で記載のマグネシアクリンカーの消化試験の方法に準じたオートクレーブを用いて、0.49MPaの加湿条件下、150℃で3時間保持し、試験後の試料の外観を評価した。
【0114】
[実施例A]
実施例Aは耐火物中のAlCの含有量について調査した例である。表3にこれら各例の構成と結果を示す。
【0115】
【表3】
【0116】
AlCを含有せずAlを主体とする比較例1を従来技術の典型例とした。AlCの含有量が増大するに伴って熱膨張率が顕著に小さくなる傾向があることがわかる。AlC含有量が14質量%の比較例2では、従来技術の比較例1よりも熱膨張率は低減するものの加熱処理を受けた後の耐熱衝撃性は十分ではない、また耐酸化磨耗性は比較例1と同等であるものの、耐熱衝撃性に関しては長時間繰り返し使用等を考慮すると十分ではない。
【0117】
AlC含有量が15〜60質量%の実施例1〜3では耐熱衝撃性も耐酸磨耗化性も改善されていて、繰り返し使用等の条件に対しては十分であることがわかる。AlC含有量が62質量%の比較例3では、従来技術の比較例1よりも耐酸化磨耗性は大幅に改善されるものの、耐熱衝撃性が低下傾向を示している。
【0118】
[実施例B]
実施例Bは耐火物中のAlC、Al及び金属としてのAl成分の合計含有量について調査した例である。表4にこれら各例の構成と結果を示す。
【0119】
【表4】
【0120】
耐火物中にZrOを7質量%含有して、前記の合計含有量が83質量%である比較例4では耐熱衝撃性試験において崩壊した。これはZrCの生成及びその消化によると考えられる。しかし、ZrOを4質量%含有して前記の合計含有量が85質量%である実施例4では崩壊はなく、繰り返し条件でも使用できることがわかる。実施例4以外の、前記の合計含有量が85質量%以上の実施例5、及び実施例1、実施例3も耐酸化磨耗性に優れており、長時間繰り返し条件でも使用することが可能である。
【0121】
[実施例C]
実施例CはフリーのC含有量にかかる、前記式1及び式2について調査した例である。表5にこれら各例の構成と結果を示す。
【0122】
【表5】
【0123】
前記式1及び式2を満足する実施例6〜12及び実施例1では耐熱衝撃性、耐酸化磨耗性共に優れている。これに対して耐熱衝撃性への影響が大きい式1を満足しない比較例5、比較例8及び比較例10は、耐酸化磨耗性は優れるものの耐熱衝撃性が低下している。一方、耐酸化磨耗性への影響が大きい式2を満足しない比較例6,比較例7及び比較例9は、耐熱衝撃性は優れるものの耐酸化磨耗性が大幅に低下している。
【0124】
[実施例D]
実施例DはAlCを含有する原料として、その原料の製造方法並びにAlC結晶の結晶サイズ及びその原料粒度(トップサイズ)の影響を調査した例である。表6にこれら各例の構成と結果を示す。なお、AlC結晶の結晶サイズ(結晶の大きさ)とは、AlC結晶の断面積を円に換算したときの平均直径をいう。言い換えれば、各AlC結晶の断面積を円に換算したときの各円の直径の平均値をいう。
【0125】
【表6】
【0126】
実施例13、16、5、17は溶融法(アーク溶融法)により製造されてトップサイズが0.21mm以上かつAlC結晶の結晶サイズが20μm以上のものを使用した例であり、実施例14は焼結法により製造されてトップサイズが0.074mmかつAlC結晶の結晶サイズが5μmのものを使用した例である。
【0127】
実施例14は焼結法で製造されたため、AlC結晶の結晶サイズが5μmと小さく、微細であることから熱膨張率の低減効果が小さく、さらに熱処理によりAl(コランダム化)が進行することから、熱膨張率及び弾性率が上昇し、AlCの含有量が20質量%であるにもかかわらず耐熱衝撃性がやや低下した。
【0128】
実施例15は、溶融法(アーク溶融法)により製造されたAlC原料を適用した例であるが、AlC結晶の結晶サイズが15μmと小さく微細であることから、熱膨張率の低減効果がやや小さく、さらに熱処理によりAl(コランダム化)が進行し易くなることから、熱膨張率ならびに弾性率が上昇し、AlCの含有量が20質量%であるのにもかかわらず耐熱衝撃性がやや低下した。
【0129】
[実施例E]
実施例Eは金属Siの影響を調査した例である。表7にこれら各例の構成と結果を示す。
【0130】
【表7】
【0131】
金属Siを含有していない実施例18は、オートクレーブ試験にて中亀裂が生じた。また、金属Siを金属としてのAl成分含有量に対して質量比で8%含有している実施例15は、オートクレーブ試験にて小亀裂が生じた。これに対して金属Siを金属としてのAl成分含有量に対して質量比で10〜200%含有している実施例20〜22は、オートクレーブ試験にて変化がなく、良好な結果となった。金属Siを金属としてのAl成分含有量に対して質量比で220%含有している実施例23は、オートクレーブ試験にて変化がなく良好ではあったものの、耐熱衝撃性がAlCの含有量が20質量%であるのにもかかわらずやや低下する結果となった。これは金属Siが強固な結合をさらに形成したためと考えられる。
【0132】
[実施例F]
実施例Fは本発明の耐火物をSNプレートに適用して実機のSN装置にて試用した例を示す。表8にこれら各例の構成と結果を示す。
【0133】
【表8】
【0134】
表8中、「実炉使用結果A」で示された使用条件は、250トンの取鍋用のSNプレートとして使用され、1chの鋳造時間の平均が40分程度で8ch以上と多数回使用される条件である。また、「実炉使用結果Aの再生使用」では、実炉使用結果Aで使用されたSNプレートを、再度加工し、リングを内挿した後、摺動面を研磨して再生された再生SNプレートを使用した結果を示す。
【0135】
一方、「実炉使用結果B」で示される使用条件は、300トンの取鍋用のSNプレートとして使用され、1chの鋳造時間の平均が120分で5ch以上の回数で使用されており、合計で500分以上の長時間鋳造される条件である。
【0136】
従来技術の耐火物であって金属Al等を含有していない比較例11は、いずれの条件で使用された場合も摺動面に大きい損耗(面荒れ)が生じた。よって良好な耐用性を得ることができなかった。また、同じく従来材質であって金属Al等を含有している比較例12は、実炉使用結果A及びBでは亀裂が大きく、エッジ欠けも生じた。よって良好な耐用を得ることができなかった。さらに、実炉使用結果Aの再生使用条件では、使用後のSNプレートを加工した際に亀裂が生じ、再生することができなかった。これは炭化アルミニウムの消化によるものと考えられる。
【0137】
これに対し、実施例24は、いずれの条件でも摺動面の損耗(面荒れ)も亀裂も軽微で良好な耐用性を示した。
図1
図2
図3
図4
図5