特許第6193821号(P6193821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193821
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/08 20060101AFI20170828BHJP
   A01G 13/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   A01C7/08 310P
   A01G13/00 301A
   A01G13/00 303
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-163165(P2014-163165)
(22)【出願日】2014年8月8日
(62)【分割の表示】特願2011-179012(P2011-179012)の分割
【原出願日】2011年8月18日
(65)【公開番号】特開2014-204742(P2014-204742A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年8月8日
【審判番号】不服2015-21253(P2015-21253/J1)
【審判請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183967
【氏名又は名称】鋤柄農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 喜孝
(72)【発明者】
【氏名】鋤柄 忠良
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光男
【合議体】
【審判長】 前川 慎喜
【審判官】 住田 秀弘
【審判官】 小野 忠悦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−91402(JP,A)
【文献】 特開2011−46(JP,A)
【文献】 特開2011−179012(JP,A)
【文献】 特開2013−39086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00- 7/20
A01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の溝堀りをして埋め戻された溝に沿って種子を播き、畝を成型する作業機であって、
埋め戻された溝に嵌まることで前記埋め戻された溝の土を鎮圧する鎮圧手段と、
前記鎮圧された溝の外側を耕耘した土を溝側へと寄せて、鎮圧された部分の上方に耕耘された土を被せる耕耘装置と、
前記耕耘装置の後方から、前記鎮圧された溝に位置するように種子を播く播種装置と、
前記播種された種子に覆土しながら畝を成型する畝成型器とを備え、
前記鎮圧手段を前記耕耘装置の前方の左右中央部に配置するとともに、
前記鎮圧された溝の左右外側の非耕耘土を前記耕耘装置の爪によって耕耘しながら作業する構成とした
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記鎮圧手段を前記耕耘装置の前方で上下方向に移動可能に設けたことを特徴とする請求項記載の作業機。
【請求項3】
前記鎮圧手段を鎮圧輪にて構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種と同時に畝立てを行う作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に畝を形成しながら種子を播く作業機は、様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す作業機は、畝成型板と、畝成型板の直後にシードテープを畝中に埋設するシードテープガイド筒と、シードテープ筒の後方の畝上にフィルム筒と、フィルム筒から繰り出されるフィルムを押圧する鎮圧ロールと、敷設されたフィルムに切れ目を入れるカットディスクとを備えるものである。このように構成することで、畝を形成しながら畝中にシードテープを埋設し、畝上に供給されるフィルム(マルチシート)を鎮圧ロールで押圧しながら敷設し、さらにフィルムに切り目をいれることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−148220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す作業機は、播種後に鎮圧ロールで押圧するため、種子の上に覆土された土は硬くなり、その土が抵抗となって発芽がしづらくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、圃場の状態を作物が適正に生育できるように整えながら、適正な位置に播種して畝立てができる作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、圃場の溝堀りをして埋め戻された溝に沿って種子を播き、畝を成型する作業機であって、埋め戻された溝に嵌まることで前記埋め戻された溝の土を鎮圧する鎮圧手段と、前記鎮圧された溝の外側を耕耘した土を溝側へと寄せて、鎮圧された部分の上方に耕耘された土を被せる耕耘装置と、前記耕耘装置の後方から、前記鎮圧された溝に位置するように種子を播く播種装置と、前記播種された種子に覆土しながら畝を成型する畝成型器とを備え、前記鎮圧手段を前記耕耘装置の前方の左右中央部に配置するとともに、前記鎮圧された溝の左右外側の非耕耘土を前記耕耘装置の爪によって耕耘しながら作業する構成としたものである。
【0009】
請求項2においては、前記鎮圧手段を前記耕耘装置の前方で上下方向に移動可能に設けたものである。
【0010】
請求項3においては、前記鎮圧手段を鎮圧輪にて構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
本発明によれば、鎮圧された溝の土が圧縮されて土粒間の間隙が小さくなり、毛細管現象により水を吸い上げ、水分を多く保持することができ、根が吸水し易くなるので、発芽率を高めることができ、発芽後の生育途中の倒れを防止することができる。
また、鎮圧手段が溝に嵌まることによって、鎮圧手段がガイドのはたらきをするので、播種位置が溝からずれることがなくなり、適正な位置に播種することできる。
そして、圃場の状態を作物が適正に生育できるように整えながら、適正な位置に播種して畝立てができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るゴボウ播種成型機の全体的な構成を示した左側からみた側 面図。
図2】同じく右側からみた側面図。
図3】同じく前側からみた側面図。
図4図1の各矢印の地点での圃場の状態を示す簡略断面図。
図5】ゴボウの成長状態を示す簡略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、作業機の一実施形態であるゴボウ播種成型機1について図1から図3を用いて説明する。なお、説明において図中の矢印Fの方向を前方向と定義し、矢印F方向に合わせて上下左右方向を定義して説明を行う。
【0015】
ゴボウ播種成型機1は、ゴボウGを播種する場合について説明する。播種作業の前の圃場には、予め播種する条の中央に溝を掘り起こし、その溝には土が埋め戻されている。そして、トラクタ等の走行部(走行車両)の後部に播種機が牽引され、シードテープ2を溝Tに沿って敷設しながら播種および畝立てを行う。
【0016】
ゴボウ播種成型機1は、図示しない走行部であるトラクタの3点リンク等の作業機装着装置に連結され、そのトラクタによって牽引されながら、シードテープ2を圃場へと敷設するものである。なお、本実施形態の走行部はトラクタとしているが、ゴボウ播種成型機1を牽引することが可能であれば管理機などの走行車両であっても、エンジンなどの駆動部を有する独自の走行装置としてもよい。ゴボウ播種成型機1は、主として、ロータリ耕耘装置(取付フレームと、動力伝達装置と、耕耘装置30)と、鎮圧装置40と、畝成型器50と、テープ敷設装置60と、耕深調節装置70と、によって構成される。
【0017】
ロータリ耕耘装置は、センタードライブ式の耕耘装置であり、動力伝達装置を左右中央に配置し、動力伝達装置の上部に取付フレームを配置し、動力伝達装置の下部両側に耕耘装置を配置している。取付フレームは、マスト11と、横フレーム12と、ロアリンクブラケット13と、によって構成される。マスト11は、前方からみると、板材をU字状に屈曲することで形成される。マスト11の前上部には、トラクタの三点リンクの一部を構成するトップリンクと連結されるトップリンクヒッチピン14が横設される。マスト11の後上部には、後述する耕深調節部75を回動可能に軸支するための支持軸15・15が設けられる。取付フレームの下部には、動力伝達装置の一部を構成する伝動ケース21が上下方向を長手方向として配置される。伝動ケース21の上部の左右側面には、横フレーム12・12が外側へと突設される。横フレーム12・12の外側端部には、それぞれ板状のロアリンクブラケット13・13が固設される。ロアリンクブラケット13・13の前部外面側には、トラクタの三点リンクの一部を構成するロアリンクと連結されるロアリンクヒッチピン16・16がそれぞれ突設される。
【0018】
動力伝達装置は、主として、伝動ケース21、入力軸22、種々のスプロケット、チェーン等によって構成され、トラクタのPTO軸からユニバーサルジョイントを介して入力軸22に動力が伝達され、PTO軸の回転を変速して耕耘軸31へと伝達するものである。
【0019】
伝動ケース21の上部前面から前方に入力軸22が突出され、下部両側面から耕耘軸31・31が側方に突出される。伝動ケース21の内部には、動力を変速及び伝達するための種々のギヤや軸やチェーン等が配置され、入力軸22から耕耘軸31・31に動力が伝達可能とされる。
【0020】
入力軸22は、伝動ケース21の上部から前方へと突設される。入力軸22は、トラクタのPTO軸とユニバーサルジョイントを介して連結され、PTO軸の回転が伝動ケース21内の種々のスプロケット及びチェーン等によって変速され、耕耘軸31へと伝達される。
【0021】
耕耘装置30は、主として、耕耘軸31・31と、耕耘爪と、ロータリカバー33と、によって構成され、耕耘爪を回転させることで土壌を砕くものである。
【0022】
耕耘軸31・31は、伝動ケース21の下部の左右両面から外側に向けて突出される。耕耘爪は、耕耘軸31・31上に固定され、本実施形態ではナタ爪32a・・・とプラウ爪32bとを有する。ナタ爪32a・・・は、耕耘用の爪であり、プラウ爪32bは、所定の傾斜を有した土寄せ用の爪である。ナタ爪32a・・・は、各耕耘軸31・31の内側に所定の間隔を隔てて固定される。プラウ爪32bは、耕耘軸31・31の外側の両端部に固定される。
【0023】
ロータリカバー33は、耕耘爪(ナタ爪32a・・・、プラウ爪32b・32b)の回転軌跡の上方を覆うものである。ロータリカバー33は、耕耘爪の回転軌跡に沿うように上方から後方および左右両側に形成され、伝動ケース21及びロアリンクブラケット13・13に固定される。ロータリカバー33の後部の左右中央は、耕耘した土が伝動ケース21の後部に接触しない部分である切り欠き部が形成される。
【0024】
鎮圧装置40は、予め、播種する条の中央が掘り起こされて溝Tが形成され、その溝Tは埋め戻されて、その土(以下、単に戻し土S1とする)を鎮圧するものである。鎮圧装置40は、耕耘装置30の前方に配置され、主として、鎮圧手段である鎮圧ガイド輪41、鎮圧ガイド輪用アーム42・42、鎮圧調節部43によって構成される。
【0025】
鎮圧ガイド輪41は、戻し土S1を鎮圧するものであって、耕耘装置30の前方の左右中央部に配置される。
【0026】
鎮圧ガイド輪用アーム42・42は、前部で鎮圧ガイド輪41を回転自在に支持し、後部は伝動ケース21に回動自在に支持されるものである。つまり、左右一対の鎮圧ガイド輪用アーム42・42の前端部が鎮圧ガイド輪41を挟むようにして軸支し、後方へ延設されて、鎮圧ガイド輪用アーム42・42の後端は、伝動ケース21の下部に上下回動可能に軸支される。
【0027】
鎮圧調節部43は、鎮圧ガイド輪41と耕耘装置30との相対高さを調節するためのものであって、右側の鎮圧ガイド輪用アーム42と右側のロアリンクブラケット13間に配置される。鎮圧調節部43は、支持部43aと、鎮圧深調節ロッド43bとを有する。支持部43aは、パイプ状に構成されて鎮圧深調節ロッド43bが摺動自在に挿通される。支持部43aの上部は右側のロアリンクブラケット13の前部にブラケットを介して上下回動可能に軸支される。鎮圧深調節ロッド43bの下部は、支持ブラケット43cを介して、右側の鎮圧ガイド輪用アーム42に回転可能に軸支される。
【0028】
さらに、支持部43a及び鎮圧深調節ロッド43bには、所定の間隔を隔てて、複数の調節孔43d・・・43e・・・が設けられ、何れかの調節孔43dと調節孔43eを一致させて押さえボルト43gを挿入することにより、相対高さを調節して固定できる。つまり、鎮圧深調節ロッド43bの上端には、操作ハンドル43fが設けられており、押さえボルト43gを抜いた状態で操作ハンドル43fを上下方向に移動し、鎮圧深調節ロッド43bの突出する長さを調節し、さらに、支持部43aの側面から押さえボルト43gを調節孔43d・43eに挿入する。このように構成することで、鎮圧深調節ロッド43bが支持部43aに昇降不能に固定され、押さえボルト43gが挿入される調節孔43d・43eを適宜変更することで、鎮圧ガイド輪41と耕耘装置30との相対高さを段階的に変更することができる。
【0029】
畝成型器50は、耕耘装置30により耕耘した土を盛り上げて畝を形成するためのものである。畝成型器50は、耕耘装置30の後方に配置され、支持部と畝立て部とで構成される。支持部は、主として、成型器左右フレーム51、成型器前後フレーム52・52と、成型器上下フレーム53・53、成型器ブラケット54・54によって構成される。成型器左右フレーム51は、耕耘装置30の後方に左右方向を長手方向として配置される。成型器左右フレーム51には、中央に所定の間隔を隔てて左右対称に成型器前後フレーム52・52が前方へと延設される。成型器前後フレーム52・52の前端部は、ロアリンクブラケット13の後部に固定される。成型器左右フレーム51には、中央に所定の間隔を隔てて、成型器上下フレーム53・53が下方に延設される。成型器上下フレーム53・53の下端部には、それぞれに成型器ブラケット54・54が後方へと延設されている。成型器上下フレーム53・53間には、ロータリカバー33の後側の開口部(左右中央にある)を閉塞するように、カバー55が横設される。成型器ブラケット54・54には、後方からみて、サイドシート56・56が「ハ」の字状になるように固定される。均平板57は、カバー55の後側に上下回動可能に軸支されながら後方へと延設される。均平板57は、サイドシート56・56間に配設される。均平板57の上部には、図示しない角度調節部が配置されており、カバー55と均平板57とのなす角度を調節し、畝の上面の高さを調節することができる。
【0030】
テープ敷設装置60は、本実施形態の播種装置となるものであり、主として、シードテープ2が巻回されたリール61と、リール61から引き出されたシードテープ2を耕耘装置30の後部の左右中央へと導くガイドノズル62と、によって構成される。なお、播種装置をテープ敷設装置60として構成しているが、シードテープ2を用いずに、所定の量の種子を圃場へと繰り出ながら、圃場に所定の間隔を隔てて播種する播種装置としてもよい。リール61は、成型器左右フレーム51の左右中途部から上方へと延設されるリール支持杵61aに支持され、シードテープ2が巻回できるように構成される。ガイドノズル62は、リール61に巻回されたシードテープ2を畝中に案内するためのものであり、畝成型器50のカバー55と耕耘装置30との間で、機体の左右中央に配置される。ガイドノズル62は、上下方向を長手方向とし、図示しないブラケットによって成型器左右フレーム51に上端が固定され、下端部が後方に延設するように屈曲されている。そして、シードテープ2は、リール61に巻回された状態からリール61から繰り出されて、ガイドノズル62内を通り、圃場へと案内される。
【0031】
耕深調節装置70は、耕耘装置30の圃場面に対する位置を調節し、耕耘装置30による耕耘深さを調節するものである。耕深調節装置70は、主として、耕深調節フレーム71・71と、ゲージ輪フレーム72と、ゲージ輪アーム73・73と、ゲージ輪74・74と、耕深調節部75とによって構成される。
【0032】
耕深調節フレーム71・71は、ロアリンクブラケット13・13に上下回動可能に軸支され、後方に延設される。ゲージ輪フレーム72は、左右方向を長手方向とし、耕深調節フレーム71・71の後端に固設される。ゲージ輪アーム73・73は、上下方向を長手方向とし、それらの上端がゲージ輪フレーム72に所定の間隔を隔てて固設される。ゲージ輪74・74は、ゲージ輪アーム73・73の下部で回動可能に軸支される。一方、耕深調節部75は、マスト11とゲージ輪フレーム72との間に連結され、それらの間の長さを調節することで耕耘装置30の耕深を調節するためのものである。
【0033】
耕深調節部75は、マスト11に上下回動可能に軸支された筒状の支持部75aと、支持部75aにスライド可能に挿入されるとともに後端部が支持ブラケット75bを介してゲージ輪フレーム72に回動可能に軸支される可動杆75cと、支持部75aに挿入されるとともに可動杆75cと螺合するネジ杆75dとで構成される。ネジ杆75dの上端には、操作ハンドル75eが設けられており、操作ハンドル75eを回動操作することで、ネジ杆75dを軸心回りに回動させて支持軸15から下方の可動杆75cの長さを伸縮させるように構成されている。
【0034】
次に、ゴボウ播種成型機1が圃場に播種する過程の状態について説明する。
【0035】
図1の矢印a地点]
ゴボウ播種成型機1は、播種する条の中央の土を掘り起こして予め溝Tを形成し、その溝Tへ土を埋め戻した圃場に、走行部に牽引されながら種子が封入されたシードテープ2を溝Tに沿って敷設することによって播種するものである。つまり、トレンチャーなどの溝堀装置によって、図4の(a)に示すように、圃場の土を掘り起すことでゴボウGの生育に適当な深さの溝Tを形成し、さらに、その溝Tに土を埋め戻すことで、播種する条を予め用意しておく。図1の矢印a地点の圃場は、耕耘されていない土である非耕耘土S0に、溝Tが形成され、さらに、掘り起された土(戻し土S1)または他の場所から持ち込まれた土が、溝Tに補填されている。ここで、戻し土S1は、非耕耘土S0よりも間隙が大きいため軟らかい。
【0036】
図1の矢印b地点]
作業者は、条の左右中心である戻し土S1を走行目標として走行部であるトラクタを運転することで、鎮圧ガイド輪41が溝Tに嵌まる状態つまり、溝Tに鎮圧ガイド輪41がガイドされた状態で走行する。したがって、図1の矢印bの地点において、図4の(b)に示すように、溝Tの左右両側部にある耕耘されていない非耕耘土S0は、耕耘された戻し土S1よりも硬いため、鎮圧ガイド輪41は、溝Tの左右側部のどちらか一方又は両方にガイドされ、その左右位置が溝Tの上部を通る。したがって、溝Tの上方及び上部にある戻し土S1は鎮圧ガイド輪41によって鎮圧される。すると、戻し土S1が鎮圧された部分である鎮圧部S2が形成される。ここで、鎮圧部S2は、鎮圧ガイド輪41によって鎮圧されているため、周りの戻し土S1の土粒間隙よりも小さくなり硬くなっている。
【0037】
図1の矢印c地点]
そのあと、耕耘装置30のナタ爪32a・・・によって、溝Tの左右外側の非耕耘土S0が耕耘されながら、最も外側のプラウ爪32b・32bによって、ナタ爪32a・・・によって耕耘された土(以下において単に耕耘土S3という)が溝T側(機体の左右中央部)へと寄せられる。そうすると、図4の(c)に示すように、鎮圧部S2の上方には耕耘土S3が被さり、耕耘土S3による二つの緩やかな山が形成される。
【0038】
図1の矢印d地点]
さらに、ゴボウ播種成型機1が作業しながら進むと、耕耘装置30のロータリカバー33の後側の左右が耕耘土S3に接触するが、中央部は耕耘土S3と接触しないため、耕耘土S3のうち、左右の外側が押されるようにしてさらに機体中央(溝T側)へと寄せられる。そのあと、耕耘装置30と畝成型器50の間に配置されたガイドノズル62の下先端からシードテープ2が溝Tの上方の耕耘土S3の上面に敷設される。このとき、ゴボウ播種成型機1の前部に設けられた鎮圧ガイド輪41が、溝Tにガイドされている状態であるため、条から外れることなく、シードテープ2を溝Tの上方に敷設することができる。さらに、耕耘装置30がセンタードライブ式であるため、溝Tの左右上部の非耕耘土S0を耕耘することなく、硬い土のままとすることができる。
【0039】
図1の矢印e地点]
さらに、耕耘装置30の後方の畝成型器50によって、耕耘装置30によって耕耘された耕耘土S3をサイドシート56・56及び均平板57によって均すことで畝が形成される。このとき、均平板57によって畝の上部が均されることで、シードテープ2の上方の土が均一な状態で覆土されることとなる。また、シードテープ2の上方に被される耕耘土S3は、作業者が、予め畝成型器50の調節部を操作することで覆土の深さは調節することができる。
【0040】
このような段階を踏んで、圃場へと播種された種子(ゴボウG)は、シードテープ2の周囲が柔らかな耕耘土S3であるため、発芽及び発根し易い。さらに、ゴボウGの生育が進むと、図5の(a)に示すように、下方へと根を伸ばし、鎮圧部S2まで達する。
【0041】
ここで鎮圧部S2は、周りの戻し土(S1)よりも間隙が小さく硬い部分であるため、戻し土S1では、地下へと流れてしまう水も、間隙が小さいことで毛管水として保持することができる。つまり、鎮圧部S2は、戻し土S1よりも、ゴボウGが吸収できる水を多く保持することができる。言い換えれば、鎮圧部S2は、戻し土S1よりも保水性が高くなっている。
【0042】
加えて、鎮圧部S2を形成せずに、耕耘土S3及び戻し土S1のみの状態とすると、風などによって葉に負荷が係ると、根の周りの土が軟らかいため支えきれずに倒れてしまう。しかし、鎮圧部S2は、その周囲の戻し土S1及び耕耘土S3よりも硬いため、ゴボウGの発芽後の転倒を防止することができる。つまり、鎮圧部S2は、非耕耘土S0よりも軟らかく、戻し土S1及び耕耘土S3よりも硬いため、図5の(b)に示す溝Tに沿うように、溝T内を真っ直ぐに根が伸びるとともに、生育途中で根が鎮圧部S2を設けずに戻し土S1のみの場合と比べて、ゴボウGが発芽後に転倒することを防止することができる。したがって、商品価値の高いゴボウGを得ることができる。
【0043】
以上の如く、ゴボウ播種成型機1は、予め播種する条の中央の土を掘り起こして溝Tを形成し、当該溝Tへ土(S1)を埋め戻した圃場に、走行部に牽引されながら前記溝に沿って、種子を播くゴボウ播種成型機1であって、圃場を耕耘する耕耘装置30と、前記耕耘装置30の前方に配置され前記溝Tに沿いながら前記溝Tに埋め戻された土(S1)を鎮圧する鎮圧ガイド輪41を有する鎮圧装置40と、前記耕耘装置30の後方から前記鎮圧された圃場に種子を播く播種装置(テープ敷設装置60)と、前記耕耘装置30の後部に連設されて、種子が播かれた圃場に覆土しながら畝を成型する畝成型器50と、前記耕耘装置30の耕耘高さを調節する耕深調節装置70と、を備えるものである。
【0044】
このように構成することで、溝Tに埋め戻された土(S1)が鎮圧ガイド輪41によって鎮圧されることで、鎮圧された土(S1)は、圧縮されて土粒間の間隙が小さくなる。したがって、鎮圧された部分(鎮圧部S2)は、毛細管現象により水を吸い上げ、根が吸水し易くなり、水分を多く保持することができるとともに、種子から根が伸びて、鎮圧された部分に根が張ることによって、生育途中の倒れを防止することができる。播種された位置よりも上方は畝成型器50により覆土され、その覆土(S3)は柔らかいため、発芽の成長の妨げとならず発芽率を高めることができるため、ゴボウが適正に生育できる圃場の状態を整えることができる。加えて、鎮圧ガイド輪41が播種作業中に溝Tにガイドされながらゴボウ播種成型機1が走行するため、溝Tからずれることなく、適正な位置に播種することが可能となる。
【0045】
前記播種装置(テープ敷設装置60)は、種子が封入されたシードテープ2を前記圃場に敷設することで播種するものである。
【0046】
種子が封入されたシードテープ2により圃場へ播種するため、風などの外部要因による影響を受けづらいとともに、種子が予め同じ間隔で封入されているので、圃場に同じ間隔を隔てて、さらに適正な位置に播種することができる。
【0047】
前記耕耘装置30はセンタードライブ式のロータリ耕耘装置により構成され、前記鎮圧ガイド輪41は、前記耕耘装置30の左右中央に配置される伝動ケース21の前方に、前記耕耘装置30との相対高さを調節可能に構成される。
【0048】
センタードライブ式の耕耘装置30の伝動ケース21に鎮圧ガイド輪41が耕耘装置30との相対高さを調節可能に設けられているため、強固に支持されて、耕耘装置30は条に沿って位置がずれることなく耕耘しながら播種でき、ゴボウが適正な位置に生育できる圃場の状態を整えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ゴボウ播種成型機
2 シードテープ
21 伝動ケース
30 耕耘装置
40 鎮圧装置
41 鎮圧ガイド輪
50 畝成型器
60 テープ敷設装置(播種装置)
70 耕深調節装置
S2 鎮圧部
T 溝
図1
図2
図3
図4
図5