特許第6193844号(P6193844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6193844選択可能な知覚空間的な音源の位置決めを備える聴覚装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193844
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】選択可能な知覚空間的な音源の位置決めを備える聴覚装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20170828BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20170828BHJP
   H04S 1/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H04R25/00 Z
   H04R25/00 N
   H04S7/00 400
   H04S1/00 500
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-252338(P2014-252338)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-136100(P2015-136100A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】PA201370793
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】DK
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ダム ペダーセン
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−090963(JP,A)
【文献】 特開2013−017175(JP,A)
【文献】 特開2000−059893(JP,A)
【文献】 特開平09−093700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H04S 1/00
H04S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補聴器システムであって:
第1のスピーカを収容する第1のハウジングを備える第1の補聴器と、第2のスピーカを収容する第2のハウジングを備える第2の補聴器であって、前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカからユーザのそれぞれの耳に向けて音声を放射するために、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングが、前記ユーザの前記それぞれの耳に装着されるように構成されている、第1の補聴器および第2の補聴器と;
入力信号を有しており、前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカに接続されたバイノーラルフィルタであって、前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカにバイノーラル信号を提供するために指向性伝達関数を有しており、それによって前記入力信号が前記指向性伝達関数によって定義される方向に位置する音源によって放射されたものと前記ユーザに知覚されるようにするバイノーラルフィルタと;
前記補聴器システムを制御するように構成された制御装置であって、
前記ユーザに対する少なくとも1つの音源の位置を示す少なくとも1つの移動可能なシンボルを表示するディスプレイと、
前記ディスプレイを制御するように接続されたプロセッサと、
前記ディスプレイ上で前記少なくとも1つのシンボルを前記ユーザが位置決めするためのユーザインタフェースを備える制御装置と;
を備えており、
前記プロセッサが、前記ディスプレイ上の前記少なくとも1つの移動可能なシンボルの位置に少なくとも部分的に基づいて、前記バイノーラルフィルタの前記指向性伝達関数を決定するように構成されており、
前記入力信号が、スパウスマイクロフォンによって生成される、補聴器システム。
【請求項2】
前記バイノーラルフィルタが、入力信号をそれぞれ異なる値で位相シフトしたものに等しい出力信号を提供するように構成されている、請求項1の補聴器システム。
【請求項3】
前記バイノーラルフィルタが、入力信号にそれぞれ異なるゲインを乗算したものに等しい出力信号を提供するように構成されている、請求項1の補聴器システム。
【請求項4】
前記指向性伝達関数が、頭部伝達関数である、請求項1の補聴器システム。
【請求項5】
それぞれ異なる指向性伝達関数を備える複数のバイノーラルフィルタを備えており、そのうちの1つが前記バイノーラルフィルタである、請求項1の補聴器システム。
【請求項6】
前記入力信号が、スパウスマイクロフォン、メディアプレーヤ、ヒアリングループシステム、テレビ会議システム、ラジオ、テレビ、電話、場内放送、アラーム付き機器からなるグループから選択された装置によって生成される、請求項1の補聴器システム。
【請求項7】
前記第1のハウジングおよび前記第2のハウジングの一方が、前記バイノーラルフィルタを収容している、請求項1の補聴器システム。
【請求項8】
前記入力信号を生成する装置が、前記バイノーラルフィルタを備えている、請求項1の補聴器システム。
【請求項9】
前記ユーザの頭部の姿勢を検知する姿勢センサユニットをさらに備えており、
前記少なくとも1つの音源が固定された位置に留まっていると前記ユーザが知覚するように、前記プロセッサが、検知された前記ユーザの前記頭部の前記姿勢に少なくとも部分的に基づいて、前記バイノーラルフィルタの別の指向性伝達関数を決定するように構成されている、請求項1の補聴器システム。
【請求項10】
前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカが、バイノーラル補聴器の一部である、請求項1の補聴器システム。
【請求項11】
前記バイノーラル補聴器が、前記入力信号としてテレコイル出力信号を提供するように構成されているテレコイルを備えている、請求項10の補聴器システム。
【請求項12】
請求項1の補聴器システム前記ユーザに、前記スパウスマイクロフォンの位置の知覚を与える方法であって:
前記ディスプレイ上で前記ユーザに対する前記スパウスマイクロフォンの前記位置を示す前記少なくとも1つの移動可能なシンボルを表示するステップと;
前記スパウスマイクロフォンの知覚方向を選択するために、前記少なくとも1つの移動可能なシンボルを所望の位置へ移動させるステップと;
前記スパウスマイクロフォンの前記選択された知覚方向に対応する前記指向性伝達関数を備える前記バイノーラルフィルタを選択するステップと;
前記指向性伝達関数を備える前記選択されたバイノーラルフィルタに基づいて、前記ユーザの耳にバイノーラル音声信号を放射するステップであって、それによって前記音声信号が前記選択された知覚方向に位置する前記スパウスマイクロフォンから放射されたものと前記ユーザが知覚するステップを備えている方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、聴覚装置およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新規な聴覚装置システムが、本明細書に開示される。聴覚装置システムは、聴覚装置と、聴覚装置に向けて送信された、選択された音声信号の到来の知覚方向をユーザが選択することを可能にする制御装置を備えている。
【0003】
聴覚装置は、ヘッドセット、ヘッドフォン、イヤフォン、イヤディフェンダ、およびイヤマフ等であってよく、それらは、耳かけ型、インイヤ型、オンイヤ型、耳を覆うタイプ、首の後ろを回すタイプ、ヘルメット型、ヘッドガード型等のいずれのタイプでもよい。
【0004】
聴覚装置は、バイノーラル補聴器であってもよい。バイノーラル補聴器の補聴器としては、耳かけ(BTE)型、レシーバ挿入(RIE)型、耳あな(ITE型)、外耳道挿入(ITC)型、完全外耳道挿入(CIC)型等のタイプのものであってもよい。
【0005】
制御装置は、コンピュータ、例えばPC、例えば据置型PC、携帯型PCなど、あるいはハンドヘルド機器、例えばタブレットPC、例えばIPAD(登録商標)などや、スマートフォン、例えばIphone(登録商標)、Android(登録商標)フォン、windows(登録商標)フォンなどであってもよい。
【0006】
聴覚障害者は、少なくとも2つの明確な問題を経験することが多い。1)聴力閾値レベルの上昇である難聴と、2)正常聴覚者と比較して騒音下で会話を理解する能力の喪失とである。ほとんどの聴力障害患者にとって、騒音下会話明瞭度検査におけるパフォーマンスは、入ってくる音の可聴性が増幅によって復元される時でさえ、正常聴覚者のパフォーマンスに劣る。語音聴取閾値(SRT)は、会話を理解する能力の喪失に関するパフォーマンスの尺度であり、騒音下聴力試験において50%の正しい単語認識を達成するために提示された信号において必要とされる信号対雑音比として定義される。
【0007】
難聴を補正するためには、現在のデジタル補聴器は、一般的に、マルチチャネルおよび圧縮信号処理を利用して、聴覚障害者の音の可聴性を復元する。このようにして、以前は聞き取れなかった会話キューを聞き取れるようにすることにより、患者の聴力が改善する。
【0008】
しかしながら、複数の話者のいる環境での会話を含む、騒音下で会話を理解する能力の喪失は、依然として、ほとんどの補聴器ユーザの大きな問題である。
【0009】
ある特定の話者から発せられる会話の信号対雑音比を増加させるために補聴器ユーザが利用可能なツールの1つは、対象とする話者からの会話を、話者に近接することにより、高信号対雑音比で拾うマイクロフォン(スパウスマイクロフォンと呼ばれることが多い)を対象とする話者に装着することである。スパウスマイクロフォンは、会話を高信号対雑音比の対応するオーディオ信号へと変換し、好ましくは無線で、難聴補正を行う補聴器にこの信号を送信する。このようにして、会話信号は、対象とするユーザのSRTを優に上回る信号対雑音比でユーザに提供される。
【0010】
例えば教会、講堂、劇場、映画館等の公共の場で、または、駅、空港、ショッピングモール等において場内放送を用いて、大勢の人々に話している話者等の、補聴器ユーザが耳を傾けたい話者からの会話の信号対雑音比を増加させる別の方法は、テレコイルを使用することにより、例えば、電話、FMシステム(ネックループを用いる)、および誘導ループシステム(「ヒアリングループ」とも呼ばれる」)によって生成されたオーディオ信号を磁気的にピックアップすることである。
【0011】
このようにして、補聴器ユーザのSRTを優に上回る高信号対雑音比で、音声を補聴器に送信することができる。
【0012】
しかしながら、従来のバイノーラル補聴器または他のタイプの聴覚装置のユーザが上述のモノラルオーディオ信号源の2つ以上を同時に聞きたい状況においては、ユーザは、1つの信号源を別の信号源から分離することが難しいと感じるであろう。
【0013】
米国特許第8,208,642号には、モノラル信号源を聞く際の両耳(バイノーラル)での聴き取りの利点を得るために、単一のモノラル信号源からの音声がバイノーラル補聴器を装着したユーザの両耳に提示されるバイノーラル補聴器のための方法および装置が開示されている。一方の耳に提示される音声は、他方の耳に提示される音声に対して位相シフトされ、さらに、一方の耳に提示される音声は、他方の耳に提示される音声に対して異なるレベルに設定することもできる。このようにして、モノラル信号の偏倚(lateralization)および音量が制御される。例えば電話信号は、通話の両耳での受信の恩恵を受けるために、例えば、電話をかけてきた人の声の音声を適切に偏倚させるための適切な位相およびレベルにおいてではあるが、電話をかけてきた人の声を電話が向けられていない耳に伝えることによって、両耳に提示されてもよい。
【0014】
補聴器は、一般的に、音源が頭部内に位置付けられているとユーザが知覚するように音声を再生する。音声は、外在化されるのではなく、内在化されていると言える。
【0015】
「騒々しい中で会話を聞くこと」に関する補聴器ユーザの共通の不満は、たとえ信号対雑音比(SNR)が必要とされる会話明瞭度の提供に十分なものであったとしても、言われていることを理解することが非常に困難であるという点である。この事実に対する大きな寄与因子は、補聴器が内在化された音場を再生するという点である。これにより、補聴器ユーザの認知的負荷が増大し、聴き取りによる疲労が生じ、最終的には、ユーザが1つまたは複数の補聴器を取り外してしまう結果となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、音源の位置付けを改善した新規な聴覚装置システムに対するニーズが存在する、すなわち、聴覚装置システムの装着者に対する各音源の方向および場合によっては距離の知覚空間情報を与えることが可能な新規な聴覚装置システムに対するニーズが存在する。
【0017】
通常の聴力を有する人も、聴覚装置を利用し、外在化された音源を備える再生された音声を楽しむことによって、音源の外在化および位置付けの改善の利点を経験するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下では、人間の音環境内における所望の知覚空間的な方向または位置における音源の位置付けの方法が開示される。
【0019】
新規な方法は、人間の聴覚系の、音環境内の異なる空間的な方向または位置に配置された音源を区別する能力、および空間的に分離された音源の内の選択された1つまたは複数に集中する能力を利用する。
【0020】
新規な方法を使用した新規な聴覚装置システムも開示される。
【0021】
新規な方法によれば、人間の音環境内で音源が異なる空間的な位置または方向に位置すると人間が知覚するように、異なる音源からの信号が人間の耳に提示される。このようにして、人間の聴覚系のバイノーラル信号処理を利用して、異なる音源からの信号を分離し、彼または彼女が音源の所望の1つを聞くことに集中する、あるいは音源の2つ以上を同時に聞いて理解する、ユーザの能力を向上させる。
【0022】
会話信号が、人間の両耳において、逆位相、すなわち、互いに対して180°シフトした位相で提示されると、信号の具体的な到来方向は知覚されないが、多くのユーザが、逆位相で提示された会話信号が他の音源から分離し易く、理解し易いと感じることも分かっている。この効果は、150°以上かつ210°以下の範囲の位相シフトによって得ることができる。
【0023】
人間は、人間の持つバイノーラル音声の位置付け能力を利用して、3次元空間で音源の検出および位置付けを行う。
【0024】
聴覚への入力は、2つの信号、つまり、以下ではバイノーラル音声信号と称する、各鼓膜における音圧から成る。従って、ある空間的音場によって発生した鼓膜における音圧が、正確に鼓膜で再現されると、人の聴覚系は、再生された音声と、空間的音場自体によって発生した実際の音声とを区別できない。
【0025】
聞き手の左耳および右耳に対してある方向および距離に位置する音源からの音波の伝達は、音色変化、両耳間時間差、および両耳間スペクトル差等の何らかの直線歪みを含む、2つの伝達関数(一方は左耳用で、他方は右耳用)の形で表現される。一方が左耳用で、他方が右耳用であるこのような2つの伝達関数のセットは、頭部伝達関数(HRTF)と呼ばれる。HRTFの各伝達関数は、基準に対する、関係する外耳道内またはその付近の特定点において平面波によって発生した音圧p(左の外耳道ではpであり、右の外耳道ではpである)の比として定義される。従来的に選択される基準は、聞き手が不在の状態で、頭部のちょうど真ん中の位置で平面波によって発生するであろう音圧pである。
【0026】
HRTFは、頭部の周囲の回折、肩からの反射、外耳道内の反射等を含む、聞き手の耳への音伝達に関連する全ての情報を含み、従って、HRTFは、各人ごとに異なる。
【0027】
以下では、便宜上、HRTFの伝達関数の一方も、HRTFと称する。
【0028】
HRTFは、聞き手の両耳に対する音源の方向および距離と共に変化する。どのような方向および距離に関しても、HRTFの測定が可能であり、例えば電子的に、例えばフィルタを用いて、HRTFをシミュレーションすることが可能である。このようなフィルタが、マイクロフォン等のオーディオ信号源と、聞き手のそれぞれの耳に向けて音声を放射するための聞き手が装着するスピーカとの間の信号経路に挿入される場合、聞き手は、耳の中の音圧が実際通りに再現されるので、スピーカによって生成された音声が、対象とするHRTFをシミュレートするフィルタの伝達関数によって定義される距離および方向に位置する音源からのものであると知覚することができる。
【0029】
空間的に符号化された情報を解釈する際の脳によるバイノーラル処理により、幾つかのプラスの効果、つまり、改善された信号源分離、改善された到来方向(DOA)推定、および改善された奥行き/距離知覚が生じる。
【0030】
人間の聴覚系が音源に対する距離および方向に関する情報をどのように引き出すかは完全に分かってはいないが、人間の聴覚系が、この決定において多数のキューを使用することは分かっている。それらのキューの中には、スペクトルキュー、残響キュー、両耳間時間差(ITD)、両耳間位相差(IPD)、および両耳間レベル差(ILD)がある。
【0031】
バイノーラル処理において最も重要なキューは、両耳間時間差(ITD)および両耳間レベル差(ILD)である。ITDは、音源から両耳への距離の差から生じる。このキューは、主に、約1.5kHzまで有用で、この周波数を超えると、聴覚系は、もはやITDキューを分析することができない。
【0032】
レベル差は、回折の結果であり、音源と比較した両耳の相対位置によって決定される。このキューは、2kHzより上で優位であるが、聴覚系は、全スペクトルにわたってILDの変化に等しく敏感である。
【0033】
難聴は低周波数になる程軽くなる傾向があるので、聴覚障害者は、ITDキューから最も恩恵を受けると主張されてきた。
【0034】
指向性伝達関数は、頭部伝達関数または頭部伝達関数の近似である。頭部伝達関数の近似は、指向性伝達関数を備えるバイノーラルフィルタの出力信号に基づくバイノーラル音声信号を聴き取る人間が、方向キューによって定義される方向に存在する音源から音声が放射されたと知覚するように、入力信号に方向キューを付与したものである。
【0035】
人間に音源の方向または位置の知覚を与える新規な方法が提供される。その方法は、
ユーザに対する前記音源の位置を示す少なくとも1つの移動可能なシンボルをディスプレイに表示するステップと、
前記音源の知覚方向を選択するために、前記少なくとも1つの移動可能なシンボルを所望の位置に移動させるステップと、
前記選択された前記音源の知覚方向に対応する指向性伝達関数を備えるバイノーラルフィルタを選択するステップと、
前記選択された指向性伝達関数を備える前記バイノーラルフィルタの出力信号に基づいて、前記人間の耳にバイノーラル音声信号を放射するステップであって、それによって前記音声信号が前記選択された方向に位置する前記音源から放射されたものと前記人間が知覚するようにするステップを備えている。
【0036】
新規な方法によれば、スパウスマイクロフォン、メディアプレーヤ、ヒアリングループシステム、テレビ会議システム、ラジオ、テレビ、電話、アラーム付き機器等からのモノラルオーディオ信号等の、特定の音源によって放射されたモノラルオーディオ信号が、バイノーラルフィルタを用いてフィルタリングされて、聞き受けたモノラルオーディオ信号が、選択された空間における方向に位置するそれぞれの音源によって放射されたものと人間によって知覚される。
【0037】
さらに、新規な聴覚装置システムが提供される。その聴覚装置システムは、
第1のスピーカを収容する第1のハウジングと、第2のスピーカを収容する第2のハウジングを備える聴覚装置であって、前記第1および第2のスピーカから前記聴覚装置システムのユーザのそれぞれの耳へ向けて音声を放射するために、前記第1および第2のハウジングが前記ユーザの前記それぞれの耳に装着されるように構成された聴覚装置と、
入力信号を有しており、前記第1および第2のスピーカに接続されており、前記第1および第2のスピーカにバイノーラル信号を提供するための指向性伝達関数を有するバイノーラルフィルタであって、それによって前記入力信号が前記指向性伝達関数によって定義される方向に位置する音源から放射されたものと前記ユーザによって知覚されるバイノーラルフィルタと、
前記聴覚装置システムを制御するように構成された制御装置であって、
前記ユーザに対する少なくとも1つの音源の位置を示す少なくとも1つの移動可能なシンボルを表示するように構成されたディスプレイと、
前記ディスプレイを制御するように接続されたプロセッサと、
前記ディスプレイ上の前記少なくとも1つの移動可能なシンボルをユーザが位置決めするためのユーザインタフェースを備えており、
前記プロセッサがさらに、前記ディスプレイ上の前記少なくとも1つの移動可能なシンボルの位置に少なくとも部分的に基づいて、前記バイノーラルフィルタの前記指向性伝達関数の選択を制御するように構成されている制御装置を備える。
【0038】
第1および第2のスピーカは、バイノーラル補聴器の一部であってもよい。すなわち、バイノーラル補聴器の左耳および右耳のレシーバが、それぞれ第1および第2のスピーカを構成してもよい。
【0039】
バイノーラルフィルタは、入力信号に等しいものの、位相がそれぞれ異なる量だけシフトされており、それによって位相が相互にシフトしている出力信号を提供するように構成されていてもよい。
【0040】
バイノーラルフィルタは、代替的または追加的に、入力信号に等しいものの、それぞれ異なるゲインが乗算された出力信号を提供するように構成されていてもよい。
【0041】
バイノーラルフィルタは、頭部伝達関数を有していてもよい。
【0042】
聴覚装置システムは、異なる信号源から到来する異なる入力信号に適用される異なる指向性伝達関数を備える複数のバイノーラルフィルタを有していてもよい。それらのバイノーラルフィルタのうちの1つが、上記のバイノーラルフィルタである。
【0043】
入力信号を生成する信号源を備える装置は、スパウスマイクロフォン、メディアプレーヤ、ヒアリングループシステム、テレビ会議システム、ラジオ、テレビ、電話、場内放送、アラーム付き機器等であってもよい。
【0044】
バイノーラルフィルタの1つまたは複数が、第1のおよび/または第2のハウジングに収容されていてもよい。
【0045】
信号源を備える装置が、バイノーラルフィルタを備えていてもよい。
【0046】
聴覚装置は、制御装置からのデータを送信するためのデータインタフェースを備えていてもよい。
【0047】
データインタフェースは、有線インタフェース、たとえばUSBインタフェースであってよく、または、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)インタフェース、たとえば低エネルギーのブルートゥース(Bluetooth Low Energy)インタフェースなどの無線インタフェースであってよい。
【0048】
聴覚装置は、入力信号を提供するために、制御装置、または聴覚装置にオーディオ信号を送信可能な信号源を備える他の装置からオーディオ信号を受信するためのオーディオインタフェースを備えていてもよい。
【0049】
オーディオインタフェースは、有線インタフェースであってもよいし、無線インタフェースであってもよい。
【0050】
データインタフェースおよびオーディオインタフェースは、例えばUSBインタフェースや、ブルートゥースインタフェースなどの、単一のインタフェースに組み込まれていてもよい。
【0051】
聴覚装置は、たとえば、聴覚装置と制御装置の間で制御データを交換するための低エネルギーのブルートゥースデータインタフェースと、聴覚装置、制御装置および信号源を備える他の装置の間でオーディオデータを交換するための有線オーディオインタフェースを有していてもよい。
【0052】
制御装置と、信号源を備えるいくつかのまたは全ての装置がそれぞれ、聴覚装置のバイノーラルフィルタの制御と同様の手法で制御装置によって制御可能な指向性伝達関数を備えるバイノーラルフィルタを有していてもよい。制御装置と、信号源を備えるいくつかのまたは全ての装置のバイノーラルフィルタによって出力されるバイノーラルオーディオ信号は、聴覚装置に送信される。これによって、バイノーラルフィルタは、これらの信号のために聴覚装置の内部で必要とされることがなく、それによって聴覚装置内の電力および信号処理のリソースが節約される。
【0053】
異なる信号源の知覚空間分離は、聴覚装置システムのユーザがそれらの信号源から放射されたモノラルオーディオ信号の会話を理解し、ユーザがオーディオ信号の所望の1つを聞くことに集中することを助ける。
【0054】
例えば、第1のバイノーラルフィルタは、それによって対応する第1の音源の知覚位置が頭部の外側へと、聴覚装置システムのユーザに対して横方向にシフトされる第1の両耳間時間差を導入するために、互いに対して位相シフトされた聴覚装置システムのユーザの右耳用および左耳用の信号を出力するように構成されてもよい。
【0055】
右耳用および左耳用の出力信号が互いに対して180°位相シフトされると、方向感覚は失われるが、多くの人間は、互いに対して180°位相シフトされた会話信号が他の信号源から分離し易く、理解し易いと感じる。
【0056】
さらなるバイノーラルフィルタを設けることによって、第2のスパウスマイクロフォン、メディアプレーヤ、ヒアリングループシステム、テレビ会議システム、ラジオ、テレビ、電話、アラーム付き機器等から受信した第2のモノラル信号等の他のモノラル信号を、受信した第2のモノラルオーディオ信号が、他の選択された知覚位置および知覚方向とは異なる、第2の位置に位置する音源によって放射されている、および/または空間における第2の方向から到来しているとユーザが知覚するように第2のバイノーラルフィルタを用いてフィルタリングし、音源のさらなる分離が得られてもよい。
【0057】
例えば、それによって第2の音源の対応する位置が、聴覚装置システムのユーザに対して横方向、好ましくは、第1の音源の反対方向にシフトされる第2の両耳間時間差を導入するために、第2のバイノーラルフィルタは、互いに対して位相シフトされた聴覚装置システムのユーザの右耳用および左耳用の信号を出力するように構成されてもよい。
【0058】
代替的または追加的に、それによって対応する第1の音源の知覚位置が、聴覚装置システムのユーザに対して横方向にシフトされる第1の両耳間レベル差を得るために、第1のオーディオ入力信号に第1の右ゲインおよび第1の左ゲインをそれぞれ乗じたものに等しい、聴覚装置システムのユーザの右耳用および左耳用の信号を出力するように第1のバイノーラルフィルタを構成してもよい。
【0059】
代替的または追加的に、それによって対応する第2の音源の知覚位置が、聴覚装置システムのユーザに対して横方向、好ましくは、第1の音源の反対方向にシフトされる第2の両耳間レベル差を得るために、第2のオーディオ入力信号に第2の右ゲインおよび第2の左ゲインをそれぞれ乗じたものに等しい、聴覚装置システムのユーザの右耳用および左耳用の信号を出力するように第2のバイノーラルフィルタを構成してもよい。
【0060】
新規な聴覚装置システムのユーザが、周囲の異なる位置に第1のオーディオ信号源および第2のオーディオ信号源が位置すると知覚するためには、第1の両耳間時間差および第1の両耳間レベル差のペアが、第2の両耳間時間差および第2の両耳間レベル差のペアと異なっている必要がある、例えば、第1および第2の両耳間レベル差は、第1および第2の両耳間時間差が異なっていれば同一でもよく、その逆でもよい。
【0061】
共にユーザの頭部の外に位置すると知覚されるオーディオ信号の知覚信号源の知覚空間分離は、ユーザが第1および第2のモノラルオーディオ信号の会話を理解し、ユーザが第1および第2のモノラルオーディオ信号の所望の1つを聞くことに集中することを助ける。
【0062】
指向性伝達関数は、頭部伝達関数、または頭部伝達関数の近似であってもよい。
【0063】
例えば、頭部伝達関数は、KEMAR等のマネキンを用いて決定されてもよい。このようにして、聴覚装置システムのユーザが聴覚装置を装着している時の方向感覚を維持するのに十分な正確さのものとなり得る、各人ごとの頭部伝達関数の近似が提供される。
【0064】
方位角は、ユーザの前方視方向を基準として水平面に投影された音源に対する知覚方位角度である。前方視方向は、ユーザの頭部の中心およびユーザの鼻の中心を通って引かれた仮想線によって定義される。従って、前方視方向に位置する音源は、0°の方位角値を有し、正反対の方向に位置する音源は、180°の方位角値を有する。ユーザの前方視方向に対して垂直な垂直面の左側に位置する音源は、−90°の方位角値を有し、ユーザの前方視方向に対して垂直な垂直面の右側に位置する音源は、+90°の方位角値を有する。
【0065】
本開示の全体を通して、一方の信号が他方の信号の関数である場合、例えば、一方の信号は、他方の信号のアナログ−デジタル変換またはデジタル−アナログ変換によって形成されてもよく、または一方の信号は、電子信号への音響信号の変換またはその逆によって形成されてもよく、または一方の信号は、他方の信号のアナログまたはデジタルフィルタリングまたはミキシングによって形成されてもよく、または一方の信号は、他方の信号の周波数変換等の変換によって形成されてもよい、等の場合、この一方の信号は、他方の信号を表すと言われる。
【0066】
さらに、特定の回路によって、例えば信号プロセッサにおいて処理される信号は、問題の回路の入力から回路の出力までの問題の信号の信号経路の一部を形成するアナログまたはデジタル信号を特定するために使用され得る名前で特定されてもよい。例えば、マイクロフォンの出力信号、すなわちマイクロフォンオーディオ信号(処理済みマイクロフォンオーディオ信号を含む)は、マイクロフォンの出力からスピーカの入力までの信号経路の一部を形成するアナログまたはデジタル信号の特定に使用されてもよい。
【0067】
新規な聴覚装置システムは、各周波数チャネルにおいて入力信号の少なくとも一部を個々に処理する複数の周波数チャネルへと入力信号を分配するマルチチャネルの第1および/または第2の補聴器を備えるバイノーラル補聴器を備えていてもよい。
【0068】
複数の周波数チャネルは、歪曲周波数チャネルを含んでいてもよく、例えば、周波数チャネルの全てが歪曲周波数チャネルでもよい。
【0069】
バイノーラル補聴器は、異なるタイプの音環境に応じて適切に新規な回路または他の従来の回路を作動させるために選択できるように、難聴補正の他の従来の方法に応じて使用される回路を追加的に設けてもよい。異なる音環境には、会話、ガヤガヤと話す会話、レストランの騒々しさ、音楽、交通騒音等が含まれてもよい。
【0070】
バイノーラル補聴器は、例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含んでいてもよく、これの処理は、実際に行われる信号処理の調整を行うための様々なパラメータを各々有する選択可能な信号処理アルゴリズムによって制御される。マルチチャネル補聴器の各周波数チャネルにおけるゲインは、そのようなパラメータの例である。
【0071】
選択可能な信号処理アルゴリズムの1つは、新規な方法に従って動作する。
【0072】
例えば、様々なアルゴリズムは、従来の雑音抑制、すなわち、不要な信号の減衰および所望の信号の増幅のために提供されてもよい。
【0073】
異なる音環境から得られたマイクロフォン出力信号は、非常に異なる特性、例えば、平均および最大音圧レベル(SPL)および/または周波数成分を有していてもよい。従って、信号処理アルゴリズムのアルゴリズムパラメータの特定の設定が特定の音環境において最適な信号品質を持つ処理済み音声を提供する特定のプログラムと各タイプの音環境を関連付けてもよい。このようなパラメータのセットは、一般的に、広帯域ゲイン、周波数選択性フィルタアルゴリズムのコーナー周波数または傾きに関連するパラメータ、および例えば自動ゲイン制御(AGC)アルゴリズムのニーポイントおよび圧縮率を制御するパラメータを含んでいてもよい。
【0074】
各アルゴリズムの信号処理特性は、補聴器ディスペンサのオフィスでの初回のフィッティング時に決定され、バイノーラル補聴器の不揮発性メモリ領域にプログラムされてもよい。
【0075】
バイノーラル補聴器は、バイノーラル補聴器のユーザが対象とする音環境において所望の難聴補正を得るために利用可能な信号処理アルゴリズムの1つを選択できるように、例えば、補聴器ハウジングまたはリモコン装置のボタン、トグルスイッチ等のユーザインタフェースを有していてもよい。
【0076】
一方または両方の補聴器は、テレコイルを備えていてもよい。テレコイルは、テレコイルにおける磁場を、対応するアナログオーディオ信号に変換する。そのオーディオ信号の瞬時電圧は、テレコイルにおける磁場の強度とともに連続的に変化する。テレコイルは、例えば教会、講堂、劇場、映画館等の公共の場で、または、駅、空港、ショッピングモール等において場内放送を用いて、大勢の人々に話している話者からの会話の信号対雑音比を増加させる。話者からの会話は、誘導ループシステム(「ヒアリングループ」とも呼ばれる)を用いて磁場に変換され、テレコイルは磁気的に送信された会話信号を磁気的にピックアップするために使用される。
【0077】
テレコイルの出力オーディオ信号は、制御装置によって選択された指向性伝達関数を備えるバイノーラルフィルタに入力されてもよい。それによって、ユーザの耳で再生されるテレコイル信号が、指向性伝達関数によって定義される方向に位置する音源から放射されたものとユーザによって知覚されるように、テレコイル信号の到来の知覚方向をユーザが選択することができる。
【0078】
一方または両方の補聴器は、1つまたは複数のマイクロフォンと、テレコイルと、例えば無指向性のマイクロフォン信号、または指向性のマイクロフォン信号、またはテレコイル信号を、単独でまたは任意の組み合わせで、オーディオ信号として選択するためのスイッチを備えていてもよい。
【0079】
典型的には、アナログオーディオ信号は、アナログ−デジタル変換器における対応するデジタルオーディオ信号への変換によって、デジタル信号処理に適したものとされ、それによってアナログオーディオ信号の振幅が二進数で表現される。このように、デジタル値のシーケンスの形式の離散時間離散振幅のデジタルオーディオ信号が、連続時間連続振幅のアナログオーディオ信号を表現する。
【0080】
制御装置のプロセッサは、聴覚装置にオーディオ信号を送信可能な様々な装置を表現する識別可能なシンボルを表示するように、制御装置のディスプレイを制御するように構成されている。したがって、聴覚装置にオーディオ信号を送信可能なそれぞれの装置は、他の装置を表現するシンボルとは異なるシンボルによって表現することができる。1つのシンボルはユーザを表現する。
【0081】
ユーザは、制御装置のユーザインタフェースを使用して、ディスプレイ上の所望の位置にシンボルを移動させることができる。例えば、スマートフォンの技術分野で周知であるように、ディスプレイは、ユーザがタッチしたシンボルをドラッグすることによりシンボルを移動させることを可能にする、タッチセンシティブディスプレイであってもよい。
【0082】
シンボルがディスプレイ上の所望の位置に移動されると、プロセッサは、ユーザを表現するシンボルに対する音源を表現するシンボルのディスプレイ上の位置に対応した指向性伝達関数を選択するために、対応するバイノーラルフィルタをシンボルによって表現される音源からのそれぞれの入力信号に接続するように制御する。それによって、ユーザは、ディスプレイ上のそれぞれのシンボルの位置によって示される方向に、あるいは位置に、音源が位置しているものと知覚する。
【0083】
好ましくは、ディスプレイ上のそれぞれのシンボルの位置によって示される方向は、ユーザの前方視方向を基準にして示されている。
【0084】
聴覚装置は、ユーザが聴覚装置をユーザの頭部上のその意図された動作位置に装着したときに、ユーザの頭部の姿勢を検知するための姿勢センサユニットを含んでいてもよく、プロセッサは、さらに、検知されたユーザの頭部の姿勢に少なくとも部分的に基づいて、バイノーラルフィルタの指向性伝達関数の選択を調整するように構成されていてもよい。
【0085】
このようにして、少なくとも1つの音源が、バイノーラルフィルタの指向性伝達関数の選択の後のユーザの頭部の姿勢の変化に関わりなく、ユーザの環境に対して固定されたままとなるように知覚されるであろう。従って、ユーザが自分の頭部を左に30°回転した場合、プロセッサは、ユーザが少なくとも1つの音源が音環境内で固定された位置に留まっていると知覚するように、すなわち、知覚方向の変化速度がユーザの頭部の姿勢の変化速度と対応するように、対応する少なくとも1つの音源の知覚方向が右に30°回転するような指向性伝達関数を選択するように構成されていてもよい。
【0086】
ユーザの頭部の姿勢は、環境に対して固定された基準座標系に対するユーザの現在の位置において鉛直方向軸と2つの水平方向軸を有する頭部座標系の向きとして定義してもよい。
【0087】
頭部座標系は、その中心がユーザの頭部の中心に位置するように定義される。ユーザの頭部の中心は、ユーザの左右の耳の鼓膜のそれぞれの中心間を結んだ線の中点として定義される。
【0088】
頭部座標系のX軸は、ユーザの鼻の中心を通って前方を指しており、Y軸は、左耳の鼓膜の中心を通って左耳の方を指しており、Z軸は、上方を指している。
【0089】
頭部のヨーは、ユーザの位置における水平面への現在のX軸の投影と、水平方向の基準方向、例えば、指向性伝達関数の選択がなされるときの前方視方向、あるいは磁北または真北との間の角度である。頭部のピッチは、現在のX軸と水平面との間の角度である。頭部のロールは、Y軸と水平面との間の角度である。頭部座標系のX軸、Y軸およびZ軸は、頭部X軸、頭部Y軸および頭部Z軸とも表記される。
【0090】
姿勢センサユニットは、聴覚装置の姿勢を決定するための加速度計を備えていてもよい。姿勢センサユニットは、ユーザが聴覚装置を身に着けているときに、同じ水平方向の変位を検出するための間隔を置いて配置された2つの加速度計の個々の変位の決定に基づいて、頭部のヨーを決定することができる。ヨー値が変化している間に、頭部のピッチおよび頭部のロールが変化しない場合には、このような決定は正確である。
【0091】
代替的に、あるいは追加的に、姿勢センサユニットは、水平方向の基準方向に対するユーザの位置における水平面への頭部X軸の投影の回転を検知するために配置された、第1のジャイロスコープ、例えばソリッドステートまたはMEMSのジャイロスコープを使用して、頭部のヨーを決定してもよい。
【0092】
同様に、姿勢センサユニットは、ユーザが聴覚装置をユーザの頭部上の意図された動作位置に装着したときに、頭部のピッチおよび/または頭部のヨーを決定するための、さらなる加速度計および/またはさらなるジャイロスコープを有していてもよい。
【0093】
例えば地球の真北または磁北に対する頭部のヨーの決定を容易にするために、姿勢センサユニットは、更に、磁力計などのコンパスを含んでいてもよい。
【0094】
従って、姿勢センサユニットは、頭部のヨー、または頭部のヨーおよび頭部のピッチ、または頭部のヨー、頭部のピッチおよび頭部のロールの情報をそれぞれ提供する、1軸、2軸または3軸のセンサを有していてもよい。
【0095】
従って、聴覚装置は、3軸全てについてソリッドステートまたはMEMSのジャイロスコープ、加速度計および磁力計の何れかを有する、ユーザの頭部の姿勢を決定するための、完全な姿勢方位基準装置(AHRS)を備えていてもよい。AHRSのプロセッサは、センサデータに基づいて、頭部のヨー、頭部のピッチおよび頭部のロールのデジタル値を提供する。
【0096】
従って、プロセッサは、ユーザが少なくとも1つの音源が音環境内において固定された位置に留まっていると知覚するように、ユーザの頭部の姿勢のヨーの変化を補償する、知覚方向のヨーが変化した指向性伝達関数を選択するように構成されていてもよい。
【0097】
同様に、プロセッサは、ユーザが少なくとも1つの音源が音環境内において固定された位置に留まっていると知覚するように、ユーザの頭部の姿勢のピッチの変化を補償する、知覚方向のピッチが変化した指向性伝達関数を選択するように構成されていてもよい。
【0098】
同様に、プロセッサは、ユーザが少なくとも1つの音源が音環境内において固定された位置に留まっていると知覚するように、ユーザの頭部の姿勢のロールの変化を補償する、知覚方向のロールが変化した指向性伝達関数を選択するように構成されていてもよい。
【0099】
バイノーラルフィルタの指向性伝達関数の選択は、例えばディスプレイ上の選択シンボルをタッチすることによって、あるいは移動可能なシンボルを所定の期間、例えば5秒間にわたって移動させないことによって、あるいは別の適切な方法によって、ユーザがユーザインタフェースを用いて特定のユーザコマンドを入力したときに、実行されてもよい。
【0100】
スマートフォンの技術分野で周知であるように、シンボルをディスプレイの端までドラッグすることで、シンボルをディスプレイから削除することができる。スマートフォンの技術分野で周知であるように、ディスプレイの端から選択可能なシンボルのパレットをドラッグして、パレットから選択されたシンボルをディスプレイ上にドラッグすることにより、新しいシンボルをディスプレイに追加することができる。
【0101】
本開示を通して、「オーディオ信号」という用語は、マイクロフォンまたはテレコイルまたは他の入力信号の出力からプロセッサの入力までの信号経路の一部を形成する、任意のアナログまたはデジタル信号を識別するために使用され得る。
【0102】
本開示を通して、「難聴補正済オーディオ信号」という用語は、信号プロセッサの出力から出力トランスデューサの入力までの信号経路の一部を形成する、任意のアナログまたはデジタル信号を識別するために使用され得る。バイノーラル補聴器は、会話、ガヤガヤと話す会話、レストランの騒々しさ、音楽、交通騒音等の多数の音環境カテゴリの1つにユーザの音環境を自動的に分類可能であってもよく、それに応じて、当該分野で公知のように、適切な信号処理アルゴリズムを自動的に選択してもよい。
【0103】
新規な聴覚装置システムにおける信号処理は、専用のハードウェアによって実行されてもよく、または1つまたは複数の信号プロセッサにおいて実行されてもよく、または専用のハードウェアと1つまたは複数の信号プロセッサとを組み合わせて実行されてもよい。
【0104】
本明細書において使用される、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「制御装置」、「システム」等の用語は、ハードウェア、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、または実行中のソフトウェアのいずれかの、CPU関連の構成要素を指すように意図されたものである。
【0105】
たとえば、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「制御装置」、「システム」等は、プロセッサで実行中のプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行スレッド、および/またはプログラムでもよいが、それらに限定されることはない。
【0106】
例として、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「制御装置」、「システム」等の用語は、プロセッサで実行中のアプリケーションおよびハードウェアプロセッサの両方を指す。1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「制御装置」、「システム」等、またはそれらのどのような組み合わせも、プロセスおよび/または実行スレッド内に存在してもよく、1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「制御装置」、「システム」等、またはそれらのどのような組み合わせも、1つのハードウェアプロセッサ上に、場合によっては、他のハードウェア回路との組み合わせで局在してもよく、および/または2つ以上のハードウェアプロセッサ間で、場合によっては、他のハードウェア回路との組み合わせで分配されてもよい。
【0107】
また、プロセッサ(または同様の用語)は、信号処理を実行することができるどんな構成要素でも、またはそのような複数の構成要素のどんな組み合わせでもよい。たとえば、信号プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)プロセッサ、汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路要素、または集積回路であってよい。
【0108】
聴覚装置システムは、第1のスピーカを収容する第1のハウジングと、第2のスピーカを収容する第2のハウジングを備える聴覚装置であって、前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカからユーザのそれぞれの耳に向けて音声を放射するために、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングが、前記ユーザの前記それぞれの耳に装着されるように構成されている聴覚装置と;入力信号を有しており、前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカに接続されたバイノーラルフィルタであって、前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカにバイノーラル信号を提供するために指向性伝達関数を有しており、それによって前記入力信号が前記指向性伝達関数によって定義される方向に位置する音源によって放射されたものと前記ユーザに知覚されるようにするバイノーラルフィルタと;前記聴覚装置システムを制御するように構成された制御装置であって、前記ユーザに対する少なくとも1つの音源の位置を示す少なくとも1つの移動可能なシンボルを表示するディスプレイと、プロセッサと、前記ディスプレイ上で前記少なくとも1つのシンボルを前記ユーザが位置決めするためのユーザインタフェースを備える制御装置と;を備えており、前記プロセッサが、前記ディスプレイ上の前記少なくとも1つの移動可能なシンボルの位置に少なくとも部分的に基づいて、前記バイノーラルフィルタの前記指向性伝達関数を決定するように構成されている。
【0109】
場合によっては、前記バイノーラルフィルタは、入力信号をそれぞれ異なる値で位相シフトしたものに等しい出力信号を提供するように構成されている。
【0110】
場合によっては、前記バイノーラルフィルタは、入力信号にそれぞれ異なるゲインを乗算したものに等しい出力信号を提供するように構成されている。
【0111】
場合によっては、前記指向性伝達関数は、頭部伝達関数である。
【0112】
場合によっては、前記聴覚装置システムは、それぞれ異なる指向性伝達関数を備える複数のバイノーラルフィルタを備えており、そのうちの1つが前記バイノーラルフィルタである。
【0113】
場合によっては、前記入力信号は、スパウスマイクロフォン、メディアプレーヤ、ヒアリングループシステム、テレビ会議システム、ラジオ、テレビ、電話、場内放送、アラーム付き機器からなるグループから選択された装置によって生成される。
【0114】
場合によっては、前記第1の補聴器ハウジングおよび前記第2の補聴器ハウジングの一方が、前記バイノーラルフィルタを収容している。
【0115】
場合によっては、前記バイノーラルフィルタが、前記入力信号を生成するように構成されている。
【0116】
場合によっては、前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカは、バイノーラル補聴器の一部である。
【0117】
場合によっては、前記バイノーラル補聴器は、前記入力信号としてテレコイル出力信号を提供するように構成されているテレコイルを備えている。
【0118】
聴覚装置のユーザに音源の位置の知覚を与える方法は:ディスプレイ上で前記ユーザに対する前記音源の位置を示す少なくとも1つの移動可能なシンボルを表示するステップと;前記音源の知覚方向を選択するために、前記少なくとも1つの移動可能なシンボルを所望の位置へ移動させるステップと;前記音源の前記選択された知覚方向に対応する指向性伝達関数を備えるバイノーラルフィルタを選択するステップと;前記指向性伝達関数を備える前記選択されたバイノーラルフィルタに基づいて、前記ユーザの耳にバイノーラル音声信号を放射するステップであって、それによって前記音声信号が前記選択された知覚方向に位置する前記音源から放射されたものと前記ユーザが知覚するステップを備えている。
【0119】
上記および他の態様および特徴は、以下の詳細な説明を読むことで明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0120】
以下では、図面を参照し、実施形態をより詳細に説明する。
【0121】
図1】ユーザの状況の一例を概略的に示す。
図2】新規な聴覚装置システムの一例を概略的に示す。
図3】新規な聴覚装置システムの一例を概略的に示す。
図4】新規な聴覚装置システムの一例を概略的に示す。
図5】新規な聴覚装置システムの一例を概略的に示す。
図6】新規な聴覚装置システムの一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0122】
様々な実施形態について、図面を参照して以下に説明する。図面は、実施形態の説明を容易にすることのみを意図していることに留意すべきである。それらは、本発明の網羅的な説明として、または本発明の範囲を限定することを意図するものではない。また、説明される実施形態は、示されるすべての態様または利点を有している必要はない。特定の実施形態に関連して説明した態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、説明してない、またはそのように明記されていない場合であっても、任意の他の実施形態にも適用することができる。
【0123】
新規な聴覚装置システムの様々な例を示す添付の図面を参照して、以下に、新規な方法および聴覚装置システムのより完全な説明を行う。しかしながら、この新規な方法および聴覚装置システムは、異なる形態で実施可能であり、本明細書に記載の例に限定されると見なされるものではない。
【0124】
同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を示す。従って、各図面の説明に関して、同様の要素の詳細な説明は行わない。
【0125】
図1の上部は、会議の様子を模式的に示しており、1人の参加者100が、バイノーラル補聴器(図示せず)と、バイノーラル補聴器を制御する彼または彼女のスマートフォン110を備える、新規な聴覚装置システム(図示せず)を使用している。スマートフォン110は、図1の下部に図示されている。会議の他の参加者102,104、106は、それぞれの会議参加者から参加者100のバイノーラル補聴器へ会話を送信する、スパウスマイクロフォン(図示せず)を装着している。さらに、遠隔地にいる参加者も、テレビ会議システム(図示せず)を使用して、会議に参加している。
【0126】
参加者100のスマートフォン110は、プロセッサ(図示せず)によって制御されており、少なくとも1つの移動可能なシンボルである、移動可能なシンボル100’、102’、104’、106’、108’、110’を表示するためのディスプレイ120を有している。それぞれのシンボル100’、102’、104’、106’、108’、110’のディスプレイ120上の位置は、ユーザ、すなわち参加者100に対する、対応する参加者102,104,106および装置、すなわちテレビ会議システム108(図示せず)およびスマートフォン110の、所望の知覚位置を示している。
【0127】
ユーザ100は、スマートフォンの分野で周知の方法で、対象とするシンボルを指先でタッチし、指先をディスプレイ120上の所望の位置まで移動させ、ディスプレイ120から指先を離すことによって、ディスプレイ120のあちらこちらにそれぞれのシンボル100’、102’、104’、106’、108’、110’を移動させることができる。
【0128】
スマートフォンの技術分野で周知であるように、シンボルをディスプレイの端までドラッグすることで、シンボルをディスプレイから削除することができる。スマートフォンの当技術分野で周知であるように、ディスプレイ120の端から選択可能なシンボルのパレットをドラッグして、パレットから選択されたシンボルをディスプレイ120上にドラッグすることによって、新しいシンボルを追加することができる。
【0129】
図1では、ユーザ100は、参加者102、104、106からの会話が、それぞれの参加者102、104、106の現実の方向から到来したものとユーザ100が知覚するように、会議におけるテーブルの周りの参加者の相対的な位置に対応した、ユーザ100のシンボル100’に対する位置に、他の参加者102、104、106のシンボル102’、104’、106を配置している。
【0130】
さらに、ユーザ100は、テレビ会議システムを使用する遠隔地の参加者(図示せず)からの会話が、参加者106の(ユーザから見て)右側に着席している人物から到来したものとユーザ100が知覚するように、テレビ会議システム108(図示せず)のシンボル108’を、参加者106のシンボル106’の右側に配置している。
【0131】
最後に、ユーザ100は、彼または彼女のスマートフォン110からのメッセージが、会議のテーブルでユーザ100の右側に位置する人物から到来しているかのように聴き取るように、彼または彼女のスマートフォン110のシンボル110’を右側に配置している。
【0132】
シンボル102’、104’、106’、108’、110’に関連付けられた参加者102、104、106および装置108、110からのそれぞれの音声信号が、対応するそれぞれのシンボル102’、104’、106’、108’、110’のユーザのシンボル100’に対するディスプレイ120上での相対的な位置に対応する指向性伝達関数を有するバイノーラルフィルタによってフィルタリングされるように、スマートフォン110は、ユーザ100のバイノーラル補聴器の補聴器(図示せず)に、ディスプレイ上のユーザのシンボル100’に対する移動可能なシンボル102’、104’、106’、108’、110’の位置に対応する指向性伝達関数を有する補聴器内のバイノーラルフィルタを選択するための制御信号を送信するための低エネルギーのブルートゥース無線データインタフェースを用いて接続されている。従って、ディスプレイ120は、図示された参加者および装置からの音声の、ユーザ100によって知覚される到来方向を示す、参加者および装置のマップを示している。
【0133】
図2は、新規な聴覚装置システム10の実施例を模式的に示す。聴覚装置システム10は、右耳用の第1の補聴器10Aと左耳用の第2の補聴器10Bを備えるバイノーラル補聴器と、データインタフェースを介してバイノーラル補聴器10A、10Bを制御するために、およびオーディオインタフェースを介してオーディオ信号を送信するために、バイノーラル補聴器10A、10Bと相互接続された、制御装置、すなわちスマートフォン110を備えている。図示された聴覚装置システム10は、ユーザへのメッセージおよび指示を発するための音声合成を使用してもよいし、ユーザからの口頭でのコマンドを受信するための音声認識が使用されてもよい。
【0134】
第1の補聴器10Aは、第1のマイクロフォン12Aで受信した音声に応じて第1のマイクロフォンオーディオ信号14Aを提供するための第1のマイクロフォン12Aを含む。マイクロフォンオーディオ信号14Aは、当該分野で周知の第1のプレフィルタ16Aにおいてプレフィルタリングが行なわれ、信号プロセッサ18に入力されてもよい。
【0135】
第1のマイクロフォン12Aは、マイクロフォン信号をマイクロフォンオーディオ信号14Aへと結合するための信号処理回路を備えた2つ以上のマイクロフォンを含み得る。例えば、第1の補聴器10Aは、2つのマイクロフォンと、補聴器の分野で周知のように、所望の指向性パターンを持つマイクロフォンオーディオ信号14Aへとマイクロフォン信号を結合するためのビームフォーマとを有していてもよい。
【0136】
第1の補聴器10Aは、第1の補聴器10Aの一部ではない第1の音源(図示していない)により出力され、第1の入力20Aで受信される音声を表す第1のオーディオ入力信号24Aを提供するための第1の入力20Aも含む。
【0137】
第1の音源は、補聴器のユーザが耳を傾けたい人物102,104,106によって携行されるスパウスマイクロフォン(図示せず)でもよい。スパウスマイクロフォンの出力信号は、無線または有線データ送信を用いて第1の補聴器10Aに送信するために符号化される。スパウスマイクロフォンオーディオ信号を表す送信データは、第1のオーディオ入力信号24Aへと復号するためのレシーバおよびデコーダ22Aによって受信される。
【0138】
第2の補聴器10Bは、第2のマイクロフォン12Bで受信した音声に応じて第2のマイクロフォンオーディオ信号14Bを提供するための第2のマイクロフォン12Bを含む。マイクロフォンオーディオ信号14Bは、当該分野で周知の第2のプレフィルタ16Bにおいてプレフィルタリングが行なわれ、信号プロセッサ18に入力されてもよい。
【0139】
第2のマイクロフォン12Bは、マイクロフォン信号をマイクロフォンオーディオ信号14Bへと結合するための信号処理回路を備えた2つ以上のマイクロフォンを含み得る。例えば、第2の補聴器10Bは、2つのマイクロフォンと、補聴器の分野で周知のように、所望の指向性パターンを持つマイクロフォンオーディオ信号14Bへとマイクロフォン信号を結合するためのビームフォーマとを有していてもよい。
【0140】
バイノーラル補聴器10A、10Bは、第2の音源(図示していない)により出力され、第2の入力26で受信される音声を表す第2のオーディオ入力信号30を提供するための第2の入力26も含む。
【0141】
第2の音源は、補聴器のユーザが耳を傾けたい第2の人物102,104,106によって携行される第2のスパウスマイクロフォン(図示せず)でもよい。第2のスパウスマイクロフォンの出力信号は、無線または有線データ送信を用いてバイノーラル補聴器10A、10Bに送信するために符号化される。スパウスマイクロフォンオーディオ信号を表す送信データは、第2のオーディオ入力信号30へと復号するためのレシーバおよびデコーダ28によって受信される。
【0142】
第2の入力26と、レシーバおよびデコーダ28は、第1の補聴器10A内または第2の補聴器10B内に収容してもよい。
【0143】
バイノーラル補聴器10A、10Bは、第2の入力26と同様に、第1および第2の補聴器10A、10Bの一部を形成しないさらなる音源(図示せず)によって出力された音声を表現するさらなるオーディオ入力信号を提供するための、さらなる入力(図示せず)を備えていてもよい。
【0144】
さらなる入力および受信機およびデコーダが、第1の補聴器10A内に、または第2の補聴器10B内に、収容されていてもよい。
【0145】
受信された信号20A、26は、補聴器の分野で周知のように、難聴補正され、信号源について知覚空間的な分離が受信された信号に付与される。すなわち、聴覚システム10のユーザが、対応する信号源が外在化されている、すなわちユーザの頭部の中心から離れて、彼または彼女の環境内の異なる位置に配置されていると知覚するように、オーディオ入力信号24A、30は、バイノーラルフィルタ32A−R、32A−L、34−R、34−Lを用いてフィルタリングされる。
【0146】
その結果生じる音源の知覚空間的な分離により、ユーザの聴覚系のバイノーラル信号処理の、音声信号を分離して彼または彼女が音声信号の所望の1つに集中する能力、あるいは2つ以上の音声信号を同時に聞いて理解する能力が向上する。本明細書において、「信号」(例えば、「バイノーラル信号」または「バイノーラル音声信号」など)という用語は、1つまたは複数の信号(例えば、それぞれの耳への異なる信号)を意味する。
【0147】
1つの音声信号を逆位相で提示することも可能である。会話信号が、ユーザの2つの耳において、逆位相、すなわち、互いに対して180°シフトした位相で提示されると、会話信号の具体的な到来方向は知覚されないが、多くのユーザが、逆位相で提示された会話信号が他の信号から分離し易く、理解し易いと感じることも分かっている。
【0148】
図示した新規なバイノーラル補聴器10A、10Bでは、2つのフィルタ32A−R、32A−Lのセット、2つのフィルタ34−R、34−Lのセットには、それぞれ、各自のレシーバおよびデコーダ22A、28の出力24A、30にそれぞれ接続された入力と、出力36A−R、36A−L、および、出力38−R、38−L(これらの内の一方36A−R、38−Rは、右耳に出力信号を提供し、他方36A−L、38−Lは、左耳に出力信号を提供する)とが与えられる。2つのフィルタ32A−R、32A−L、34−R、34−Lのセットは、選択された知覚される到来方向を第1および第2の音源に与える指向性伝達関数、例えばHRTF32A、HRTF34を、それぞれ有する。図2では、関連する回路を備える2つのオーディオ入力20A、26のみが示されているが、補聴器10A、10Bには、同様の回路(図示せず)を備えるさらなる同様のオーディオ入力(図示せず)が含まれている。
【0149】
フィルタ32A−R、32A−L、34−R、34−Lの出力は、難聴補正を行うための信号プロセッサ18で処理され、右耳へと送信されることを意図したプロセッサ出力信号40Aは、バイノーラル補聴器10A、10Bのユーザの右耳の鼓膜へと送信される音響信号へと変換するために第1の補聴器10Aの第1のレシーバ42Aに接続され、左耳へと送信されることを意図したプロセッサ出力信号40Bは、バイノーラル補聴器10A、10Bのユーザの左耳の鼓膜へと送信される音響信号へと変換するために第2の補聴器10Bの第2のレシーバ42Bに接続される。
【0150】
バイノーラルフィルタの指向性伝達関数は、聴覚装置システム10のユーザに対して各人ごとに決定してもよく、これにより、HRTFは、異なるユーザ間のHRTFのばらつきを生じさせる頭部の周囲の回折、肩からの反射、外耳道内の反射等を含む、ユーザの耳への音伝達に関連する全ての情報を含むので、ユーザの様々な音源102,104、106,108、110の方向の知覚外在化および方向感覚が明確となる。
【0151】
良好な方向感覚は、KEMARヘッド等のマネキンに対して決定されたHRTF等の、各人ごとに決定されるHRTFへの近似によっても得ることができる。同様に、近似は、各人ごとのHRTFの対応する類似点につながる特定の身体的類似点を持つ人々(例えば、同じ年齢または同じ年齢層の人々、同じ人種の人々、耳介サイズの類似した人々等)の選択グループ内の人々の各人ごとのHRTFの平均として決定されたHRTFによって構成されてもよい。
【0152】
良好な方向感覚は、1つまたは複数の方向キュー、例えば両耳間時間差(ITD)および/または両耳間レベル差(ILD)のみを入力信号に付与した指向性伝達関数を備えるバイノーラルフィルタによって構成された、各人ごとに決定されたHRTFへの近似によっても得ることができる。
【0153】
図2に示すバイノーラル補聴器10A、10Bは、図3図6に示すバイノーラル補聴器を含む、別のタイプの聴覚装置によって構成されていてもよいことに留意すべきである。
【0154】
また、図2に示すバイノーラル補聴器10A、10Bは、耳かけ型、インナーイヤ型、オンイヤ型、耳を覆うタイプ、首の後ろを回すタイプ、ヘルメット型、およびヘッドガード型等や、ヘッドセット、ヘッドフォン、イヤフォン、イヤディフェンダ、およびイヤマフ等の、別のタイプの聴覚装置で構成されていてもよいことに留意すべきである。
【0155】
図示されたバイノーラル補聴器10A、10Bは、任意のタイプの補聴器であってもよく、たとえば、耳かけ(BTE)型、レシーバ挿入(RIE)型、耳あな(ITE)型、外耳道挿入(ITC)型、完全外耳道挿入(CIC)型等の補聴器であってよい。また、図示されたバイノーラル補聴器は、ユーザの両耳のうちの一方に装着する、単一のモノラル補聴器によって構成されていてもよい。その場合には、もう一方の耳における音声は、自然な音声であって、そのユーザの個人ごとのHRTFの特徴を、本来的に含んでいる。
【0156】
図示されたバイノーラル補聴器10A、10Bは、たとえば、従来の補聴器でも知られている押しボタンやダイヤルを伴うような、ユーザインタフェース(図示しない)を有している。このユーザインタフェースにより、ユーザは、バイノーラル補聴器10A、10Bを制御および調整し、そして恐らくは、バイノーラル補聴器10A、10Bに相互接続されたスマートフォン110を、たとえば再生すべきメディアを選択する等、制御および調整する。
【0157】
さらに、バイノーラル補聴器10A、10Bのマイクロフォンは、ユーザによる音声コマンドを受けるために用いてよい。音声コマンドは、スマートフォン110のプロセッサ130で音声認識するために、音声コマンドを復号するために、およびそれぞれの音声コマンドによって定義されるアクションを実行させるように聴覚装置システム10を制御するために、スマートフォン110に送信される(図示せず)。
【0158】
スマートフォン110は、図1に関連してすでに説明したように、移動可能なシンボルを表示するようにプロセッサ130によって制御される、タッチスクリーン120を有している。
【0159】
タッチスクリーン上での移動可能なシンボルの配置に応じて、プロセッサ130は、タッチスクリーン120上でのシンボルの相対的な位置に対応した指向性特性を備えるバイノーラルフィルタ32A−R、32A−L、34−R、34−L等を選択するために、制御信号140を、データインタフェースを介して、バイノーラル補聴器10へ送信する。
【0160】
データインタフェースは、有線インタフェース、例えばUSBインタフェースであってもよいし、無線インタフェース、例えばブルートゥースインタフェース、例えば低エネルギーのブルートゥースインタフェースであってもよい。
【0161】
バイノーラルフィルタ32A−R、32A−L、34−R、34−L等の全てまたはいくつかは、生成されるオーディオ信号がバイノーラルオーディオ信号としてバイノーラル補聴器10にそのオーディオインタフェースを介して送信され、プロセッサからの対応する制御信号が対象とするバイノーラルフィルタを備える装置に送信されるように、バイノーラル補聴器10への送信のためにオーディオ信号を生成する装置の内部にあってもよい。
【0162】
同様に、プロセッサ130は、ユーザ100’(図1参照)に対するスマートフォン110’のシンボルの相対的な位置に対応する、指向性特性、好ましくは頭部伝達関数とともにスマートフォン110に収容された、バイノーラルフィルタ150、すなわちフィルタの組150−L、150−Rを選択し、バイノーラルフィルタ150の左耳用のバイノーラル出力信号160−Lと、右耳用のバイノーラル出力信号160−Rを、音響バイノーラル信号への変換と、ユーザのそれぞれの耳への放射のために、オーディオインタフェースを介して、バイノーラル補聴器10のプロセッサ18に送信する。
【0163】
スマートフォン110は、例えばオーディオブックやラジオ等からの会話や、音楽、トーンシーケンス等の、任意のタイプの音声を表現するオーディオ信号を出力してもよい。
【0164】
ユーザは、例えば歩行中にラジオ放送局を聴くことを決めてもよく、スマートフォン110は、所望のラジオ放送局から発信された信号を再生したバイノーラルオーディオ信号160−L、160−Rを出力する。バイノーラルオーディオ信号160−L、160−Rは、ユーザが選択されたHRTFに対応する方向から所望のラジオ放送局を聴いていると知覚するように、タッチスクリーン120を用いてユーザが特定したHRTFを備えるバイノーラルフィルタ150によって、すなわちフィルタの組150−L、150−Rによって、フィルタリングがされている。
【0165】
オーディオインタフェースは、有線インタフェースであってもよいし、無線インタフェースであってもよい。
【0166】
データインタフェースおよびオーディオインタフェースは、単一のインタフェース、例えばUSBインタフェース、ブルートゥースインタフェース等に組み込まれていてもよい。
【0167】
バイノーラル補聴器は、例えば、聴覚装置と装置の間で制御データを交換する低エネルギーのブルートゥースデータインタフェースと、聴覚装置と装置の間でオーディオ信号を交換する有線オーディオインタフェースを有していてもよい。
【0168】
図示されるスマートフォン110は、GPS受信機、携帯電話、およびWiFi(登録商標)インタフェース170を有していてもよい。
【0169】
図3は、第1のレシーバおよびデコーダ22Aからユーザの一方の耳への信号経路において所望の方位角の到来方向のITDに等しい遅延を導入することによって、第1の音源と第2の音源との間の十分な知覚空間分離が得られるという事実を除いては、図2に示す聴覚装置システムに類似する新規な聴覚装置システム10の別の例を示す。図示例では、フィルタ32A−Rが、その入力信号24Aおよびユーザの右耳用の出力信号36A−R間に時間遅延を導入するが、図2に示されたフィルタ32A−Lは、図3の入力24Aおよび出力36A−L間の直接接続によって構成される。
【0170】
受信されるオーディオ信号の到来について異なる知覚方位を導入する、同様の関連する回路(図示せず)を備える、オーディオ入力20Aと同様のさらなるオーディオ入力(図示せず)が、補聴器10A、10Bの一方または両方に設けられている。
【0171】
このようにして、第1の音源の到来方向の知覚方位角は、例えば−45°にシフトされるが、第2の音源からの信号は、ユーザの耳にモノラルで提示される、すなわち、レシーバおよびデコーダ28の出力30は、モノラル信号として信号プロセッサ18に入力され、ユーザの両耳に出力される。従って、第1の音源は遅延器32A−Rによって決定された方向、例えば45°の方位角に位置すると知覚されるが、第2の音源は、ユーザの頭部内の中心に位置すると知覚されるので、第1の音源と第2の音源との知覚空間分離が得られる。
【0172】
図4は、第2のレシーバおよびデコーダ28からユーザの一方の耳への信号経路において所望の第2の方位角の到来方向のITDに等しいさらなる遅延を導入することによって、第1の音源と第2の音源との間の向上した知覚空間分離が得られるという事実を除いては、図3に示した例に類似する新規な聴覚装置システム10の別の例を示す。例えば、フィルタ34−Lは、その入力信号30およびユーザの左耳用の出力信号38−L間に時間遅延を導入するが、図1に示したフィルタ34−Rは、入力30および出力38−R間の短絡によって構成される。
【0173】
このようにして、第2の音源の到来方向の知覚方位角は、例えば+45°にシフトされるが、第1の音源の到来方向の知覚方位角は、例えば−45°にシフトされたままである。従って、第1の音源は、遅延器32A−Rによって決定された方向、例えば−45°の方位角に位置すると知覚されるが、第2の音源は、遅延器34−Lによって決定された方向、例えば+45°の方位角に位置すると知覚されるので、第1の音源と第2の音源との向上した知覚空間分離が得られる。
【0174】
図2図3および図4では、点線は、バイノーラル補聴器10A、10Bの構成要素を収容する第1および第2の補聴器10A、10Bのハウジングを示す。それぞれのハウジングは、各補聴器10A、10Bが難聴補正を行うことを意図したユーザの各耳において音声の受信を行う1つまたは複数のマイクロフォン12A、12Bと、ユーザの右耳および左耳の各鼓膜に向けて送信される音響信号へと信号プロセッサ18の各出力信号40A、40Bの変換を行う各レシーバ42A、42Bとを収容する。
【0175】
残りの回路は、聴覚装置システム10の設計者が行う設計上の選択に応じて2つの補聴器ハウジング間で任意に分配すればよい。図2図3、および図4に示されたバイノーラル補聴器におけるそれぞれの信号は、信号送信の分野で周知の方法で、補聴器10A、10B間で有線または無線送信で送信してもよい。
【0176】
図5は、第2の補聴器10Bが信号プロセッサ18を持たず、かつ、第1の音源および第2の音源のそれぞれからの音声を表す第1のオーディオ入力信号および第2のオーディオ入力信号を提供するための入力を持たない、図2に示した新規な聴覚装置システム10の別の例を示す。第2の補聴器10Bは、1つまたは複数の第2のマイクロフォン12Bと、第2のレシーバ42Bと、第1の補聴器10Aにおける信号処理のためにマイクロフォンオーディオ信号14Bを送信するために必要とされるエンコーダおよびトランスミッタ(不図示)と、信号プロセッサ18Aの出力信号40Bの受信を行うためのレシーバおよびデコーダ(不図示)とのみを有する。図1に示された残りの回路は、第1の補聴器10Aのハウジング内に収容される。
【0177】
図6は、第1の補聴器10Aおよび第2の補聴器10Bが共に、マイクロフォンと、レシーバと、補聴器プロセッサとを含む図2に示した新規な聴覚装置システム10の別の例を示す。
【0178】
従って、図示した新規なバイノーラル補聴器10A、10Bは、
第1の音源によって出力され、第1の入力20Aにおいて受信される音声を表す第1のオーディオ入力信号24Aを提供するための第1の入力20Aと、
第1のオーディオ入力信号24Aをフィルタリングするための、第1のオーディオ入力信号に第1の右ゲインおよび第1の右ゲインとは異なる第1の左ゲインをそれぞれ乗じたものに等しい、および/または互いに対して結果として第1の位相シフトとなるように別々に位相シフトされた、右耳用の第1の右耳信号36A−Rおよび左耳用の第1の左耳信号36A−Lを出力するように構成された第1のバイノーラルフィルタ32A−R、32A−Lと、
バイノーラル補聴器10A、10Bのユーザの第1の耳の鼓膜に向けて送信するための音響信号へと第1の耳レシーバ入力信号40Aの変換を行うための第1の耳レシーバ42Aと、
第2の音源によって出力され、第2の入力26Bにおいて受信される音声を表す第2のオーディオ入力信号30Bを提供するための第2の入力26Bと、
第2のオーディオ入力信号30Bをフィルタリングするための、第2のオーディオ入力信号に第2の右ゲインおよび第2の右ゲインとは異なる第2の左ゲインをそれぞれ乗じたものに等しい、および/または互いに対して結果として第1の位相シフトとは異なる第2の位相シフトとなるように別々に位相シフトされた、右耳用の第2の右耳信号38B−Rおよび左耳用の第2の左耳信号38B−Lを出力するように構成された第2のバイノーラルフィルタ34B−R、34B−Lと、
を含む第1の補聴器10Aを含み、
第1および第2の右耳信号36A−R、38B−Rは、第1の耳レシーバ入力40Aに提供され、
第1および第2の左耳信号36A−L、38B−Lは、第2の耳レシーバ入力40Bに提供される。
【0179】
特定の実施形態が示され、説明されたが、それらが特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図するものではないことが理解されるであろうし、特許請求の範囲に記載された発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更や修正がなされ得ることは当業者には明らかであろう。従って、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示として捉えられるべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、代替形態、変更形態、および均等形態を包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6