(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の圧力センサが2次元に配列された足圧分布検出センサにより、歩行時の被検者の足圧分布が所定のサンプリング周期で計測されることで得られた計測結果を取得する取得手段と、
前記計測結果に基づいて、前記足圧分布検出センサにかかと部分が接地してからつま先が離れるまでにおける前記被検者の足の重心移動の湾曲具合を定量化することで、評価値として算出する算出手段と、
前記算出手段によって定量化された評価値について、被検者の整形疾患を引き起こすリスクを判定する判定手段とを備え、
前記算出手段は、
前記サンプリング周期に従う複数のサンプリングタイミングのそれぞれにおける足圧分布の重心位置座標を算出することによって前記複数のサンプリングタイミングにそれぞれ対応する複数の重心位置座標を得て、
前記複数の重心位置座標のうち、かかと部分が接地したサンプリングタイミングにおける重心位置座標、および、つま先が離れてゆくサンプリングタイミングにおける重心位置座標をそれぞれ始点座標、および、終点座標とする直線と、前記始点座標と前記終点座標とのそれぞれを端点とするように前記複数の重心位置座標を通る近似曲線と、を求め、
前記近似曲線と前記直線とによって囲まれた領域の面積を前記評価値として算出する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【背景技術】
【0002】
一般に高齢になるに従い、膝関節痛や股関節痛、腰痛などの整形疾患を患う人が増える傾向にある。このような整形疾患は、慢性的な痛みを伴い、ひどくなると寝たきりの状態になることから、早期に処置を施すことが重要である。
【0003】
整形疾患を引き起こすリスク因子としては、例えば、扁平足、外反母趾、O脚等が挙げられる。これらのリスク因子が進行すると、関節部分における力学的関係が崩れ、関節部分に余計な力がかかるためである。その中でも、足のアーチ崩れである扁平足は、外反母趾やO脚を引き起こす主要因とも考えられることから、扁平足の進行を早期に発見することは、整形疾患を引き起こすリスクを的確に評価するうえで重要である。
【0004】
ここで、扁平足の進行に伴うアーチ低下は、歩行時の足裏の重心移動の変化として顕在化することが知られている(例えば、下記非特許文献1参照)。これは、アーチ低下により足裏が地面につけられることによるものであると考えられており、扁平足の度合いが強いほど、歩行時の足裏の重心移動は直線的となる。
【0005】
一方で、従来より、足の状態を計測するためのシステムとして、足圧分布検出センサや重心動揺計等を用いたシステムが提案されており(例えば、下記特許文献1、2参照)、これらのシステムを用いることで、被検者の扁平足の程度や、重心位置の揺れ等を計測できることが知られている。そこで、このようなシステムを、整形疾患を引き起こすリスクの評価に適用することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる整形疾患リスク評価システムの外観構成を示す図である。
【
図2】
図2は、整形疾患リスク評価システムを構成する情報処理装置の機能構成を示す図である。
【
図3】
図3は、非歩行時の被検者について、足圧分布検出センサにおいて計測された足圧分布データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、整形疾患を引き起こすリスク因子の進行を示す指標を説明するための図である。
【
図5】
図5は、重心移動解析処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、歩行時の被検者について、足圧分布検出センサにおいて計測された足圧分布データの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、記憶部に記憶された足圧分布データの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、整形疾患を引き起こすリスク因子の進行を示す指標を算出する方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、整形疾患を引き起こすリスク因子の進行を示す指標を算出する方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、リスク判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
<1.整形疾患リスク評価システムの外観構成>
図1は、本実施形態に係る整形疾患リスク評価システム100の外観構成の一例を示す図である。
【0016】
図1において、110はセンサ部であり、複数の圧力センサが2次元に配列されて構成されており、被検者の足が載置された場合に、被検者の足裏の足圧分布を検出することが可能な足圧分布検出センサ部111が配されている。なお、足圧分布検出センサ部111は、歩行時の被検者の両方の足の足裏の足圧分布(数歩分の足圧分布)を検出できる程度の幅及び長さを有しているものとする。
【0017】
120は情報処理装置であり、足圧分布検出センサ部111において計測された足圧分布データ(計測結果)をケーブル130を介して取得する。また、取得した足圧分布データを解析し、整形疾患を引き起こすリスク因子を示す指標(評価値)を算出する。
【0018】
更に、算出した評価値を判別し、整形疾患を引き起こすリスクの判定に用いられるリスク領域を用いてリスク判定処理を行う。
【0019】
<2.整形疾患リスク評価システムの情報処理装置の機能構成>
図2は、整形疾患リスク評価システム100を構成する情報処理装置120の機能構成を示す図である。
図2に示すように、情報処理装置120は制御部201と、メモリ部202と、記憶部203と、表示部204と、入力部205と、外部機器I/F部206とを備え、各部は、バス207により接続されている。
【0020】
制御部201は、足圧分布検出センサ部111において計測され、記憶部203に格納された足圧分布データ214について、整形疾患を引き起こすリスク因子の進行を示す指標(評価値)を算出する重心移動解析部211として機能するプログラムを実行する。また、重心移動解析部211において算出された指標(評価値)を用いて、リスク判定処理を行うリスク判定部212として機能するプログラムを実行する。
【0021】
更に、リスク判定部212におけるリスク判定処理に用いられる閾値(リスク領域ともいう)を求めるために、重心移動解析部211において算出された評価値を教師データとして解析する、評価値解析部213として機能するプログラムを実行する。
【0022】
なお、ここでは、各部の機能を実現するためのプログラムを制御部(コンピュータ)が実行することで、当該各部の機能を実現する構成としたが、本発明はこれに限定されず、各部の機能は、専用のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0023】
表示部204は、足圧分布検出センサ部111において計測された足圧分布データ214を表示したり、リスク判定部212によるリスク判定の結果や評価値解析部213における解析内容を表示したりする。入力部205は、各部の機能を実現するためのプログラムを実行するにあたり、必要なデータを入力したり、指示を入力したりする。
【0024】
記憶部203は、センサ部110より送信された足圧分布データ214を記憶したり、評価値解析部213において算出されたリスク領域に関する情報を記憶する。更に、各部の機能を実現するためのプログラムを、読み出し可能に記憶する。
【0025】
<3.足圧分布データ>
図3は、被検者がセンサ部110上で直立状態となった場合において、足圧分布検出センサ部111にて計測された足圧分布データの一例を示す図である。
【0026】
図3において、3aは健常者の足圧分布データと該足圧分布データに基づいて算出される重心位置データとを表示した図であり、3bは扁平足者の足圧分布データと該足圧分布データに基づいて算出される重心位置データとを表示した図である。なお、重心位置データのうち、右側の星印は一方の足(右足)の足裏の重心位置を、左側の星印は他方の足(左足)の足裏の重心位置を示している。また、中央の十字印は、両足の足裏の重心位置を示している。
【0027】
図3から明らかなように、健常者と扁平足者とでは、足裏の接地領域が大きく異なる。つまり、健常者の場合には、足裏全体のうち、つま先側の一部とかかと側の一部のみが接地しており、中央部は接地していないのに対して、扁平足者の場合には、足裏全体のうち、つま先側の一部とかかと側の一部のみならず、中央部も接地している。
【0028】
このように、アーチが低下し足裏の中央部が接地している被検者の場合、歩行時に足裏の重心位置が直線的に移動するといった特性がある。
【0029】
図4は、歩行時の重心位置の移動軌跡を模式的に示した図である。
図4に示すように、扁平足者の歩行時の足裏の重心位置の移動軌跡(402)の方が、健常者の歩行時の足裏の重心位置の移動軌跡(401)よりも直線的になる傾向がある。したがって、扁平足者の歩行時の足裏の重心位置の移動軌跡の当該特性(重心位置の移動軌跡の直線性あるいは湾曲具合)を定量化することで、整形疾患を引き起こすリスクを評価することができる。
【0030】
<4.重心移動解析部における処理の説明>
次に、重心移動解析部211における重心位置解析処理の流れを
図5乃至
図9を用いて説明する。
【0031】
図5は、重心移動解析部211における重心移動解析処理の流れを示すフローチャートである。重心移動解析部211において重心移動解析処理が開始されると、ステップS501では、被検者の歩行時の足圧分布データが取得される。具体的には、被検者がセンサ部110上を歩行した際に、足圧分布検出センサ部111において所定のサンプリング周期(例えば、100msec)で計測された足圧分布データが取得される。
【0032】
図6は、足圧分布検出センサ部111において計測された足圧分布データの表示例であり、1歩目(左足)の足圧分布(601)と、2歩目(右足)の足圧分布(602)と、3歩目(左足)の足圧分布(603)とを便宜上同時に表示させた様子を示している。
【0033】
図7は、取得された足圧分布データ214の一例を示している。
図7に示すように、所定のサンプリング周期(
図7の例では100msec)ごとに、足圧分布検出センサ部111の各圧力センサ素子の座標に対して、各圧力センサ素子の出力が対応付けて格納される。
【0034】
ステップS502では、歩行時の重心位置の移動軌跡を解析する解析対象を特定するために、ユーザにより指定された解析領域を識別する。
図6の領域610は、ユーザにより指定された解析領域を示している。
図6の例では、2歩目(右足)の足圧分布(602)に基づいて、右足の足裏の重心位置の移動軌跡が解析される。
【0035】
なお、
図6の領域610に対応する足圧分布データは、
図7の領域610’に示すデータである。つまり、
図6の領域610に対応する位置の圧力センサ素子の出力のうち、2歩目が接地している時間内の出力(領域610’で示すデータ)が解析対象の足圧分布データである。
【0036】
ステップS503では、解析領域における各サンプリングタイミングにおける足圧分布データの重心位置座標を算出する。具体的には、領域610’の各サンプリングタイミングにおける各圧力センサ素子の出力と、各圧力センサ素子の位置座標とに基づいて、重心位置座標(711、701〜704・・・712)を算出する。
【0037】
図8の8aに示すように、一般に、歩行時においては、かかと部分が地面に接地してから、徐々に接地領域が前方へと延びていき、足裏全体で支えた状態で前方へと重心移動が行われた後、かかと部分が離れ、つま先のみが接地している状態へと移行し、最後に、つま先が離れていく。このため、
図8の8bに示すように、各サンプリングタイミング(例えば、T1〜T4)において、足圧分布領域は様々である。本実施形態では、各サンプリングタイミングごとに、それぞれ、別個に重心位置座標を算出していく。
【0038】
具体的には、
図7及び
図8の例では、時間T1の足圧分布データに対して、重心位置座標701が算出され、時間T2の足圧分布データに対して、重心位置座標702が算出される。また、時間T3、T4の足圧分布データに対して、重心位置座標703、704が算出される。
【0039】
ステップS504では、始点座標と終点座標とを算出する。具体的には、始点座標として
図7の領域610’に含まれる最初のサンプリングタイミングにおける重心位置座標711と、終点座標として、最後のサンプリングタイミングにおける重心位置座標712と、を算出する。
【0040】
ステップS505では、ステップS504で求めた始点座標及び終点座標を通り、各重心位置座標を結ぶ近似曲線L1を算出する。
図9の901はステップS505において算出された近似曲線L1の一例を示している。
【0041】
ステップS506では、ステップS504で求めた始点座標及び終点座標を結ぶ直線L2を算出する。
図9の902はステップS506において算出された直線L2の一例を示している。
【0042】
ステップS507では、近似曲線L1と直線L2とにより囲まれた領域(
図9の領域903)の面積を指標(評価値)として算出する。
【0043】
このように、本実施形態では、整形疾患を引き起こすリスク因子である扁平足の進行を表すのに有効な重心位置の移動軌跡の直線性に着目し、直線性を表す値として、近似曲線L1と直線L2とにより囲まれた領域の面積を指標(評価値)として算出している。
【0044】
<5.リスク判定処理の流れ>
次に、リスク判定部212におけるリスク判定処理の流れについて説明する。
図10はリスク判定部212におけるリスク判定処理の流れを示す図である。
【0045】
図10に示すように、ステップS1001では、重心移動解析部211における重心移動解析処理において算出された評価値を読み出す。
【0046】
ステップS1002では、ステップS1001において読み出された評価値を、閾値により判別する。更に、ステップS1003では、各閾値ごとに予め定義されたリスクを参照することで、ステップS1002において判別された評価値についてのリスクを判定する。具体的には、歩行時の重心位置の移動軌跡が直線的で、近似曲線L1と直線L2とにより囲まれた領域の面積が小さいほど、整形疾患リスクが高いと判定する。
【0047】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る整形疾患リスク評価システムでは、整形疾患を引き起こすリスク因子の進行を示す指標として、歩行時の足裏の重心位置の移動軌跡の直線性に着目し、重心位置座標の近似曲線と、該近似曲線の端点を結ぶ直線とにより囲まれる領域の面積を算出する構成とした。
【0048】
また、算出した面積を所定の閾値により判別することで、整形疾患を引き起こすリスクを判定する構成とした。
【0049】
この結果、整形疾患を引き起こすリスクを評価可能なシステムを提供することができ、予防医療に貢献することが可能となった。
【0050】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、整形疾患を引き起こすリスク因子の進行を示す指標として、面積を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、直線からの最大逸脱距離を指標としてもよい。また、面積を使用する場合は足裏サイズに影響されないよう、足の縦幅、横幅、面積などで除算し、規格化した値を使用するようにしてもよい。
【0051】
また、上記第1の実施形態では、評価値を判別するための閾値の設定方法について特に言及しなかったが、例えば、複数の扁平足者を被検者とした場合の評価値の平均値および分散値を予め算出しておき、これらを用いて閾値を設定する構成としてもよい。
【0052】
[第3の実施形態]
上記第1の実施形態では、足圧分布検出センサ部111において計測された足圧分布データを用いることとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、重心動揺計や体重計を用いる構成としてもよい。また、今回の説明では、足圧分布データを計測すべく据え置き型のセンサ部110を想定したが、それに限定されず、例えば、インソールタイプのセンサ部であってもよい。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【0054】
本願は、2012年4月12日提出の日本国特許出願特願2012−091209を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。