【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
以下の実施例で使用した材料の比重は次のとおりである。
(比重)
trans-HFO−1233zd 1.30 g/cm
3/20℃
GALDEN SV80 1.70 g/cm
3/25℃
アサヒクリンAC2000 1.67 g/cm
3/25℃
ジメチルエーテル 0.66 g/cm
3/20℃
液化石油ガス(3Kg) 0.56 g/cm
3/20℃
HFO−1234ze 1.19 g/cm
3/20℃
灯油 0.756 g/cm
3/20℃
【0045】
<引火点の測定>
トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンにエタノールをそれぞれ20、30、35、40質量%となるように混合した溶液を調製し、タグ密閉法引火点試験器(JIS K2265−1)を用いて引火点の測定を行った。
【0046】
その結果、測定時に引火がなく、いずれも引火点なしという結果となり、消防法でいう「非危険物」に該当するものであった。
【0047】
<効力試験1:原液滴下試験>
(1)試験方法
容量860mlの上部が開放したプラスチックカップを用意し、その内側上部にバターを塗布した。次に供試虫としてクロゴキブリ雌1頭を、前記プラスチックカップの底部に腹を上にして静かに置いた。
【0048】
供試虫が仰向けになっているのを確認し、表1に示した供試薬剤0.5mLをピペットで胸から腹部にかけて滴下し、動きが完全に停止するまでの時間(秒)を測定した。
【0049】
その後、供試虫を別のプラスチックカップに移して、室温20℃、湿度26%の部屋に放置し、24時間後の致死数を調べた。試験は5回繰り返して行い、その平均から致死率(%)を算出した。試験の結果は表2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
(2)試験結果
表2に示したとおり、実施例1は、供試虫の動きが停止するまでに平均で1.4秒であり、比較例1及び2と比べて、供試虫の動きが停止するまでの時間が著しく短かった。この結果から、本発明の成分は供試虫の動きを瞬時に止めることができる速効性に優れることがわかった。また、実施例1は、24時間経過後の致死率(%)も高く、害虫防除効果にも優れることがわかった。
【0053】
<効力試験2:エアゾール効力試験>
(1)試験検体
表3に示す処方に従い、原液としての有効成分および噴射剤としてのジメチルエーテル、液化石油ガス及びtrans-HFO−1234zeを、噴射装置(ステム孔径0.6mm、アンダータップ孔径2.2mm、ボタン噴孔径1.5mm×4孔)を備えたエアゾール用耐圧缶(容量300ml)に充填して、エアゾール剤の形態の試験検体を得た。各エアゾール剤は約4g/秒の噴射量とした。
【0054】
【表3】
【0055】
(2)試験方法
図1に示すように、供試虫3(クロゴキブリ雌1頭)を入れたプラスチックカップ1(容量860mlの上部が開放したプラスチックカップであり、その内側上部にバターを塗布したもの)を用意し、傾斜角45°の台5に、前記プラスチックカップ1をエアゾール剤(試験検体)7の噴霧線上となるように取り付けた。前記プラスチックカップ1の底部中央から約70cmの距離から、前記プラスチックカップ1の中心に向けてエアゾール剤7を2秒間噴霧した。
【0056】
噴霧直後に供試虫3を別のプラスチックカップに移し、ノックダウンするまでの時間(秒)を測定した。その後、試供虫を室温20℃、湿度26%の部屋に放置し、24時間経過後の致死数を調べた。試験は5回繰り返して行い、その平均から致死率(%)を算出した。なお、5分以上ノックダウンしない場合は、「ノックダウンせず」と判断した。試験の結果は表4に示した。
【0057】
【表4】
【0058】
(3)試験結果
表4に示したとおり、実施例2、2−1及び2−2は全て1秒未満でノックダウンしており、非常に高い速効性を有することがわかった。また、24時間後の致死率(%)も100%であり、致死効果も十分にあることがわかった。一方、比較例3及び4は、ノックダウン及び24時間後の致死はみられなかった。
【0059】
このことから、本発明の成分は、エアゾール剤として用いた場合に、優れたノックダウン効果を有し、また致死効果も発揮するものであることがわかった。
【0060】
<効力試験3>
(1)試験検体
表5に示す処方に従い、原液(有効成分、溶剤)および噴射剤(ジメチルエーテル、炭酸ガス、液化石油ガス及びtrans-HFO−1234ze)を、噴射装置(ステム孔径0.6mm、アンダータップ孔径2.2mm、ボタン噴孔径1.5mm×4孔)を備えたエアゾール用耐圧缶(容量300ml)に充填して、エアゾール剤の形態の試験検体を得た。実施例3〜5のエアゾール剤は約5g/秒の噴射量とし、実施例6、7のエアゾール剤は約4g/秒の噴射量とし、実施例8、8−1、8−2及び9のエアゾール剤は約3g/秒の噴射量とした。
【0061】
【表5】
【0062】
(2)試験方法
供試虫(クロゴキブリ雌1頭)を試験室(約8畳空間、室温26℃、湿度56%)に放ち、約70cmの距離から供試虫に向けて試験検体をノックダウンするまで噴霧した。
【0063】
そして供試虫がノックダウンするまでの時間を測定し、同時に、試験検体を処理した試験室の床面の濡れの有無を確認した。いずれの試験も3回繰り返して行い、その評価結果を表6に示した。
【0064】
ノックダウンの評価は、3回とも供試虫が5秒以内に全てがノックダウンしたものを「○」、10秒以内にノックダウンしたものを「△」とした。
【0065】
また濡れ評価は、噴霧箇所での試験検体による濡れがほとんど見られない場合を「○」、濡れがわずかに見られる場合を「△」で評価した。
【0066】
【表6】
【0067】
(3)試験結果
表6に示したとおり、本発明のエアゾール剤である実施例3〜9はいずれも10秒以内にノックダウンしており、速効性が高いことがわかった。特に、実施例3〜8、8−1及び8−2は5秒以内にノックダウンしており、速効性が非常に高かった。また、床面の濡れは、濡れがわずかに見られるかほとんど濡れがなく、使用感にも優れていると評価できた。
【0068】
<効力試験4>
(1)試験検体
表7に示す処方に従い、原液(トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)および噴射剤(ジメチルエーテル)を、噴射装置(ステム孔径0.6mm、アンダータップ孔径2.2mm、ボタン噴孔径1.5mm×4孔)を備えたエアゾール用耐圧缶(容量300ml)に充填して、エアゾール剤の形態の試験検体を得た。エアゾール剤は約4g/秒の噴射量とした。
【0069】
【表7】
【0070】
(2)試験方法
図1に示すように、表8に記載の供試虫3を入れたプラスチックカップ1(容量860mlの上部が開放したプラスチックカップであり、その内側上部にバターを塗布したもの)を用意し、傾斜角45°の台5に、前記プラスチックカップ1をエアゾール剤(試験検体)7の噴霧線上となるように取り付けた。前記プラスチックカップ1の底部中央から約70cmの距離から、前記プラスチックカップ1の中心に向けてエアゾール剤7を1秒間噴霧した。
【0071】
噴霧直後に供試虫3を別のプラスチックカップに移し、ノックダウンするまでの時間(秒)を測定した。その後、試供虫を室温20℃、湿度26%の部屋に放置し、24時間経過後の致死数を調べた。試験は3回繰り返して行った。
【0072】
【表8】
【0073】
(3)試験結果
全ての供試虫が3回とも1秒未満でノックダウン(アミメアリについては5頭全てが1秒未満でノックダウン)しており、速効性が高いことがわかった。また、全ての供試虫が3回とも24時間以内に致死(アミメアリについては5頭全てが24時間以内に致死)であった。
【0074】
(発明の態様)
本発明は以下の態様を含む。
[1] (a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[2] 前記用意する工程が害虫に前記害虫防除剤を噴霧することを含む、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記用意する工程が内容物を噴霧するためのノズルを有する容器内に前記害虫防除剤を用意することを含む、上記[2]に記載の方法。
[4] 前記容器が耐圧容器であり、前記害虫防除剤が前記容器から前記害虫防除剤を噴出するための噴射剤をさらに含む、上記[3]に記載の方法。
[5] 前記噴射剤がHFO−1234zeを含む、上記[4]に記載の方法。
[6] 前記HFO−1234zeが液化ガスの形態で容器中に存在する、上記[5]に記載の方法。
[7] 前記適用する工程が実質的に瞬時に害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め及び/又は殺虫するために有効である、上記[1]に記載の方法。
[8] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で適用することを含む、上記[7]に記載の方法。
[9] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含む、上記[7]に記載の方法。
[10] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含み、害虫が適用工程の後約10秒以内に動きを止める、上記[7]に記載の方法。
[11] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含み、害虫が適用工程の後約2秒以内に動きを止める、上記[7]に記載の方法。
[12] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含み、害虫が適用工程の後約1秒以内に動きを止める、上記[7]に記載の方法。
[13] 前記害虫防除剤が共沸混合物又は共沸混合物様組成物ではない、上記[1]に記載の方法。
[14] 前記害虫防除剤がヨウ化メチルを含む共沸混合物又は共沸混合物様組成物ではない、上記[1]に記載の方法。
[15] 前記噴射剤がジメチルエーテル、液化石油ガス、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種である、上記[4]に記載の方法。
[16] 前記害虫防除剤がエアゾールの形態で適用される、上記[1]〜[15]のいずれかの方法。
[17] 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの害虫防除剤における有効成分としての使用。
[18] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンがトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む、上記[17]に記載の使用。
[19] (a)容器;(b)前記容器内にあり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び少なくとも1種の追加の殺虫剤を含む有効成分を含む害虫防除剤;及び(c)前記害虫防除剤を害虫に適用するための前記容器に取り付けられた手段を含む害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫する装置。
[20] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンがトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む、上記[19]に記載の装置。
[21] (a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含みヨウ化メチルを含まない害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[22] (a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む非共沸混合物を含む有効成分を含みヨウ化メチルの実質的な量を含まない害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[23] (a)共沸混合物の一部でなくそして共沸混合物のような挙動をする混合物の一部でない形態で1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[24] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが約5〜約70重量%のヨウ化メチル、又は約15〜約60重量%のヨウ化メチル、又は約25〜約50重量%のヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[23]の方法。
[25] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが14.5psiaで約8℃〜約14.5℃、又は約8℃〜約13.8℃、又は約8℃〜約12.7℃の範囲で沸騰するヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[23]の方法。
[26]1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含みヨウ化メチルの実質的な量を含まない害虫防除剤。
[27]1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む非共沸混合物を含む有効成分を含みヨウ化メチルの実質的な量を含まない害虫防除剤。
[28] 共沸混合物の一部でなくそして共沸混合物のような挙動をする混合物の一部でない形態で1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤。
[29] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが約5〜約70重量%のヨウ化メチル、又は約15〜約60重量%のヨウ化メチル、又は約25〜約50重量%のヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[28]の害虫防除剤。
[30] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが14.5psiaで約8℃〜約14.5℃、又は約8℃〜約13.8℃、又は約8℃〜約12.7℃の範囲で沸騰するヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[28]の害虫防除剤。