特許第6193852号(P6193852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6193852-害虫防除剤 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193852
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】害虫防除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 29/02 20060101AFI20170828BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20170828BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   A01N29/02
   A01N25/06
   A01P7/04
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-520065(P2014-520065)
(86)(22)【出願日】2013年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2013065796
(87)【国際公開番号】WO2013183754
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2012-131329(P2012-131329)
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】新 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 晶
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−077035(JP,A)
【文献】 特開2010−077034(JP,A)
【文献】 特開2010−077033(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/069867(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/092085(WO,A1)
【文献】 特開2010−106021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 29/02
A01N 25/06
A01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有効成分としたことを特徴とする害虫防除剤。
【請求項2】
さらに噴射剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の害虫防除剤。
【請求項3】
前記噴射剤がジメチルエーテル、液化石油ガスおよび1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の害虫防除剤。
【請求項4】
エアゾール剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の害虫防除剤。
【請求項5】
(a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
【請求項6】
前記適用する工程が害虫に前記害虫防除剤を噴霧することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記害虫防除剤が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有効成分として含有し、ジメチルエーテル、液化石油ガスおよび1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種を噴射剤として含有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記害虫防除剤がエアゾール剤であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記用意する工程が内容物を噴霧するためのノズルを有する容器内に前記害虫防除剤を用意することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記容器が耐圧容器であり、前記害虫防除剤が前記容器から前記害虫防除剤を噴出するための噴射剤をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記噴射剤が、ジメチルエーテル、液化石油ガス、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記適用する工程が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有効成分とする害虫防除剤を、害虫に付着させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記害虫防除剤を、液滴状で害虫に付着させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)容器;(b)前記容器内にあり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び少なくとも1種の追加の殺虫剤を含む有効成分を含む害虫防除剤;及び(c)前記害虫防除剤を害虫に適用するための前記容器に取り付けられた手段を含む害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫する装置。
【請求項15】
前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンがトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除剤及び害虫を防除する方法及び害虫を防除する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫防除剤の有効成分としては、ピレスロイド系化合物、カーバメイト系化合物、有機リン系化合物等の化学合成殺虫剤が用いられているが、人体等に対してより安全性の高いものが望まれている中、新たな有効成分を用いた害虫防除剤が種々検討されている。
【0003】
例えば、害虫防除剤の新たな有効成分として、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなどの炭化水素類から選ばれた少なくとも1種を用いて、麻酔作用により害虫をノックダウン、致死させる害虫駆除剤(例えば、特許文献1参照)、フロン22、フロン123等の常温揮散性のフッ素化アルカン類を気化ガス状又は液体微粒子状として密閉空間内で用いることで、ダニ、家ダニなどを駆除する殺ダニ剤(例えば、特許文献2参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−120003号公報(第1−8頁)
【特許文献2】特開平4−321603号公報(第1−10頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペンタン類等の炭化水素類ではある種の用途に不利がある。即ち、炭化水素類は十分な殺虫効果を示さないし、多くの場合においてそのような材料は引火及び爆発の可能性が高いという本質的な欠陥を有し、これは特に室内での使用に不利に働く。また、常温揮散性のフッ素化アルカンは、オゾン層を破壊することが指摘され、その結果、使用が制限されるうえ、そのような化合物の駆除対象がダニ類に限られていた。
【0006】
そこで、本発明は、爆発や引火の危険が低く又は無く及び/又は環境に優しいことなどによる従来使用された害虫防除剤を超える利点を与える新たな害虫防除剤、害虫防除装置、及び害虫防除方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来使用されていた害虫防除剤を改良するために鋭意検討した結果、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤によって有利な効果が達成でき、そのような害虫防除剤が害虫の動きを止め、及び/又は殺虫する装置及び方法において使用できることができることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は以下の(1)〜(17)によって達成されるものである。
(1)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有効成分としたことを特徴とする害虫防除剤。
(2)さらに噴射剤を含むことを特徴とする上記(1)に記載の害虫防除剤。
(3)前記噴射剤がジメチルエーテル、液化石油ガスおよび1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種であることを特徴とする上記(2)に記載の害虫防除剤。
(4)エアゾール剤であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の害虫防除剤。
(5)ヨウ化メチルを含む共沸混合物又は共沸混合物様組成物を含まないことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の害虫防除剤。
(6)(a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
(7)前記用意する工程が害虫に前記害虫防除剤を噴霧することを含む、上記(6)に記載の方法。
(8)前記害虫防除剤が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有効成分として含有し、ジメチルエーテル、液化石油ガスおよび1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種を噴射剤として含有する、上記(7)に記載の方法。
(9)前記害虫防除剤がエアゾール剤であることを特徴とする(8)に記載の方法。
(10)前記用意する工程が内容物を噴霧するためのノズルを有する容器内に前記害虫防除剤を用意することを含む、上記(7)に記載の方法。
(11)前記容器が耐圧容器であり、前記害虫防除剤が前記容器から前記害虫防除剤を噴出するための噴射剤をさらに含む、上記(10)に記載の方法。
(12)前記噴射剤が、ジメチルエーテル、液化石油ガス、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種である、上記(11)に記載の方法。
(13)前記適用する工程が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを有効成分とする害虫防除剤を、害虫に付着させることを含む、上記(6)に記載の方法。
(14)前記害虫防除剤を、液滴状で害虫に付着させることを特徴とする上記(13)に記載の方法。
(15)前記害虫防除剤がヨウ化メチルを含む共沸混合物又は共沸混合物様組成物を含まないことを特徴とする上記(6)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)(a)容器;(b)前記容器内にあり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び少なくとも1種の追加の殺虫剤を含む有効成分を含む害虫防除剤;及び(c)前記害虫防除剤を害虫に適用するための前記容器に取り付けられた手段を含む害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫する装置。
(17)前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンがトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む、上記(16)に記載の装置。
【0009】
尚、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、害虫の動きを瞬時に止め、殺虫することができることは新たな知見であり、該成分は、従来、生物学的活性化合物(国際出願PCT/US2006/024886)及び鉱油の抽出/溶剤、冷媒、発泡剤組成物、電子部品や精密機械部品などの洗浄剤やヨウ化メチル燻蒸剤などの溶剤等として検討されていたに過ぎない(例えば、特開2011−37912号公報、特開2011−46688号公報、特開2008−133438号公報、特開2010−106021号公報、特表2011−510119号公報等参照)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の害虫防除剤、装置及び方法によって、害虫を無能力にし、動きを止め、殺虫することができ、好ましくはこれらを非常に速く行うことができ、より好ましくは本発明の害虫防除剤を害虫にかけると実質的に瞬時にこれらを行うことができる。そのため好適な態様において、行動が俊敏なゴキブリ等の害虫に対しても、一回の害虫防除剤の適用(例えば、噴霧)で害虫を無能力にし、動きを止め、及び/又は殺虫することができ、害虫を追いかけて二回目の害虫防除剤の噴霧を行う必要がない。それゆえに、好適な態様において、本発明の害虫防除剤の適用によって、好ましくは一回の適用によって、好ましくは本明細書に記載の発明に従った量の害虫防除剤の適用によって、害虫を無能力にし、動きを止め、及び/又は殺虫することができ、好ましくはこれら3つの全てを行うことができる。ある好適な態様において、本明細書に記載の望ましい効果が本害虫防除剤を害虫に適用することによって達成され、それによってその床面に実質的に液体残渣を残すことがない。
【0011】
また好ましい害虫防除剤、装置及び方法は、合成殺虫剤に対して抵抗性をもつ害虫も無能力にし、動きを止め、及び/又は殺虫することができる。さらに本発明の害虫防除剤、装置及び方法は、爆発や引火の恐れやオゾン層の破壊もなく、安全に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】試験方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の害虫防除剤について詳細に説明する。
【0014】
尚、本発明において、「有効成分」とは、害虫を無能力にし、動きを止め、及び/又は殺虫し、排除する効果に関して有効で、少なくともその効果に関係しており、好ましくはその効果の原因となっている成分を意味する。
【0015】
本発明の害虫防除剤は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFCH=CHCl:HFO−1233zd)を含み、好ましくは重量基準で主要成分として含み、より好ましくはある態様においてHFO−1233zdから本質的になる有効成分を含む。1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、公知の化合物であり、雰囲気条件下で無色透明の液体であり、毒性もなく、不燃性である。また、溶剤等の他の成分に対する溶解性に優れ、安定性も高く、乾燥も早いため取り扱いが容易である。
【0016】
本発明で使用する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、シス体、トランス体のいずれかの異性体が存在するが、どちらか一方であっても、両者の混合物であってもよい。多くの態様において、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(trans-HFO−1233zd)を少なくとも約99重量%含むHFO−1233zdを使用することが好ましく、本質的に100重量%のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(trans-HFO−1233zd)からなるHFO−1233zdを使用することがより好ましい。これは、素早く、好ましくは実質的に瞬間的に害虫を無能力にし、及び/又は動きを止めることに関して、本発明によれば非常に効果的であり、好ましい装置及び方法の態様においても効果的である。
【0017】
本発明の好適な態様において、本発明の害虫防除剤、方法及び装置は、オゾン層破壊係数(ODP)が0.5未満、より好ましくは0.1未満、さらにより好ましくは約ゼロである材料を環境に放出することを達成するように構成される。本発明に従ってtrans-HFO−1233zdを使用することは、このものが平均オゾン層破壊係数(ODP)が約ゼロであるからこの点で非常に有益である。ある化学化合物のオゾン層破壊係数(ODP)は、オゾン層に対してそれが引き起こしうる相対的分解量であり、トリクロロフルオロメタン(R−11)がODP 1.0に固定されている。例えば、クロロジフルオロメタン(R−22)は、0.05のODPを有する。
【0018】
さらに本発明の好適な態様において、本発明の害虫防除剤、方法及び装置は、地球温暖化係数(GWP)が約150未満、より好ましくは約75未満である材料を環境に放出することを達成するように構成される。trans-HFO−1233zdを使用することは、このものが100年地球温暖化係数(GWP)が7未満であるからこの点で非常に有益である。地球温暖化係数(GWP)は、所定質量の温室効果ガスがどのくらい地球温暖化に寄与しているかの尺度である。これは、問題のガスを同じ質量の二酸化炭素と比べた相対尺度で、二酸化炭素のGWPは定義により1とされている。GWPは特定の期間にわたって計算され、この値はGWPを引用するときはいつでも記載されなければならない。今日使用されている最も一般的な期間は100年である。
【0019】
ある態様において、本発明の害虫防除剤は、有効成分のみを含み、上述したようにある好適な態様において、本発明の有効成分はHFO−1233zdから本質的になり、より好ましくはtrans-HFO−1233zdから本質的になる。ある態様において害虫防除剤は有効成分に加えて1以上のその他の成分を含み、以下に説明するように害虫防除剤の所望の特性を達成する。しかし、本害虫防除剤は、人間又は他の動物に有害である危険性を示す成分を含まないことが一般に望ましい。例えば、本発明の害虫防除剤、装置及び方法はヨウ化メチルを含まず、導入せず、利用しないことが非常に好ましい。
【0020】
本発明の方法の面によれば、本発明の害虫防除剤は、害虫に対して適用し、好ましくは害虫に直接付着するよう適用するのがよい。いくつかの態様において、適用工程は、本発明の害虫防除剤が液滴状で害虫に付着するように、液剤、乳剤等として注ぎかけたり滴下することを含む。ある好ましい態様において、本方法は、蓄圧噴霧器を用いてスプレーしたり、耐圧容器を含む装置に入れて、容器から本害虫防除剤を害虫に噴射して、好ましくはエアゾール剤として害虫に本害虫防除剤を噴霧することを含む。
【0021】
出願人は特別な操作理論によることを意図しないが、本発明の好適な形の非常に有益で即効性のある効果は、少なくとも部分的には、HFO−1233zd、好ましくはtrans−HFO−1233zdが体表の油などの昆虫に必須の物質を速やかに除去するために達成されること、及び、これら物質の迅速な除去は、速やかに害虫を無能力にし、動きを止め、及び/又は殺虫すること、が信じられる。さらに、好適な態様において本発明は優れたそして速い作用に寄与する二重の作用を与える。より特定的には、以下に詳しく説明する好適な態様において、本害虫防除剤はHFO−1233zdに加えて液化ガスの形態の噴射剤、好ましくはHFO−1234zeを含む。これは有効成分を害虫に運ぶために使用する。そのような好ましい態様において、噴射剤は、噴射剤が蒸発することによる昆虫の実質的な体温を迅速に奪うことに寄与する。この効果はHFO−1233zdの作用と相乗効果的に作用し、本明細書に報告するように例外的で予想外の効果を達成する。
【0022】
ある態様において、それゆえに、害虫防除剤は有効成分に加えて、有効成分を幅広い範囲に速やかに適用可能にする噴射剤又はエアゾール剤を含み、そのような態様は特に行動が俊敏なゴキブリ等の害虫を本発明の方法の対象とする場合には、好ましい。一般に、本害虫防除剤が2以上の成分を含む場合には、そのような成分の混合物は共沸混合物又は共沸混合物様組成物の形態ではない。
【0023】
液剤やエアゾール剤等の製剤形態とする場合、前記有効成分の配合量は、製剤中好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0024】
液剤やエアゾールの原液を調整するに際しては、HFO−1233zdとともに溶剤を用いることができる。溶剤の配合量は、製剤中好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0025】
エアゾールとする場合、液化ガス、圧縮ガス(二酸化炭素ガス、窒素ガスなど)などのいずれかの噴射剤をHFO−1233zdと共に使用してもよい。液化ガス噴射剤の配合量は、製剤中好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。製剤の原液と共に使用できる圧縮ガス噴射剤の圧力は、好ましくは0.3〜1MPaである。液化ガス噴射剤と圧縮ガス噴射剤とは組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明の害虫防除剤をエアゾール剤とするには、有効成分を容器に導入し、圧力下で有効成分を容器から排出する手段又は機構を与えることによる。ある態様において、これはスプレーポンプを備えた容器を用意することを含む。他の態様において、害虫防除剤は有効成分と噴射剤との組み合わせを含み、これらは噴射手段又はノズルを備えた耐圧容器に充填される。有効成分と噴射剤の代表的な割合としては、例えば、液化ガスの場合には10〜90:90〜10(容積比)が挙げられる。
【0027】
本害虫防除剤は、有効成分に加えて、溶剤、噴射剤、他の成分等の他の材料を含んでもよい。ある態様において、噴射剤は、存在する場合には、害虫防除剤に関して利用できると当業者に知られているいかなる材料でもよい。ある態様において、それは、例えば、プロパン,プロピレン,n−ブタン,イソブタンなどの液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス、HFC−152a、HFC−134a、HFO−1234yf(GWP=4)、HFO−1234ze(GWP=6)、好ましくはtrans-HFO−1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上から選ばれる。ある態様において、噴射剤は、本発明のHFO−1233zdとの共同によりノックダウンおよび殺虫効果に寄与するジメチルエーテル、液化石油ガスおよびHFO−1234zeの少なくとも1種を含み、特にジメチルエーテルが、害虫を瞬時に無能力にし、止め、殺虫する効果をとくに高めることができるので好ましい。
また、エアゾール剤の内圧が低い場合は、圧縮ガスによる加圧により内圧を調整してもよい。
【0028】
さらに有効成分と噴射剤との割合、圧力、噴射手段の仕様等を調整して、エアゾール剤の噴射量が約1〜10g/秒となるように調整して用いるのがよい。
【0029】
本発明の害虫防除剤を製剤形態とするための他の成分としては、例えば、水、イソプロピルアルコール、エタノール、変性アルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、イソペンタン、ノルマルペンタン等のペンタン類、イソパラフィン、ノルマルパラフィン等のパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等、灯油等の石油類、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類等の溶剤;乳酸エステル、アルキルピロリドン、ポリビニルピロリドン、炭酸エステル、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性系界面活性剤等の溶解助剤等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの溶剤、溶剤助剤は、本発明の効果を損ねない範囲で含有することができる。
【0030】
さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、共力剤、消臭剤、芳香剤等の1種又は2種以上の添加剤を用いてもよい。添加剤は本発明の効果を損ねない範囲で含めることができ、その量は、製剤の全質量に関して、好ましくは5質量%以下、特に0.1〜1質量%である。
【0031】
殺菌剤や防腐剤としては、例えば、クロロキシレノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、チモール等のフェノール系化合物;塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム系化合物;3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト、フェノキシエタノール、トリクロサン、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N´,N´−ジメチル−N−フェニルスルファミド等が挙げられる。
【0032】
消臭剤としては、例えば、茶抽出物、カテキン、植物ポリフェノール等の植物抽出物;ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチル酸アセトフエノン、パラメチルアセトフエノンベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0033】
芳香剤としては、例えば、じゃ香、ベルガモット油、シンナモン油、シトロネラ油、レモン油、レモングラス油等の天然香料;ピネン、リモネン、リナロール、メントール、ボルネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ゲラニオール等の人工香料等が挙げられる。
【0034】
共力剤としては、例えば、ピペロニルブトキシド、オクタクロロジプロピルエーテル、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0035】
また、本発明の害虫防除剤において、殺虫成分や忌避成分を含むことは必ずしも必要とはしないが、所望により、殺虫成分(殺虫剤)や忌避成分(忌避剤)を用いてもよい。しかしながら、環境問題の観点から、本害虫防除剤はヨウ化メチルを含まない。殺虫成分や忌避成分は、本発明の効果を損ねない範囲で含めることができ、その量は、本組成物の全質量に関して、例えば、10質量%以下、特に0.01〜5質量%である。
【0036】
殺虫剤、忌避剤としては、例えば、天然ピレトリン、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、プラレトリン、テラレスリン、フタルスリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、トランスフルスリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エンペントリン、イミプロトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系化合物;プロポクサー、カルバリル等のカーバメイト系化合物;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;ジノテフラン、イミダクロプリド、アセタミプリド等のネオニコチノイド系化合物;メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御剤;フィプロニル、ピリプロール等のフェニルピラゾール系化合物;クロルフェナピル等のピロール系化合物;アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物;フィットンチッド、ハッカ油、オレンジ油、桂皮油、丁子油等の殺虫性、忌避性の精油類が挙げられる。
【0037】
本害虫防除剤の組成物の例を以下に挙げる。
【0038】
組成物の全量を100質量%として、
(a)好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下のHFO−1233zd、特にtrans-HFO−1233zd;
(b)場合によって含まれてもよい、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下の溶剤、特に灯油、
(c)場合によって含まれてもよい、10質量%以下、好ましくは0.01〜5質量%の殺虫成分及び忌避成分の少なくとも1種;及び
(d)場合によって含まれてもよい、5質量%以下、好ましくは0.1〜1質量%の他の添加剤の少なくとも1種
を含む組成物。
【0039】
液化ガス噴射剤が使用される場合に、本害虫防除剤のエアゾール組成物の例を以下に挙げる。
【0040】
組成物の全量を100質量%として、
(a)好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下のHFO−1233zd、特にtrans-HFO−1233zd;
(b)好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下の液化ガス噴射剤、特に、ジメチルエーテル、液化石油ガスおよび1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)の少なくとも1種;
(c)場合によって含まれてもよい、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下の溶剤、特に灯油、
(d)場合によって含まれてもよい、10質量%以下、好ましくは0.01〜5質量%の殺虫成分及び忌避成分の少なくとも1種;及び
(e)場合によって含まれてもよい、5質量%以下、好ましくは0.1〜1質量%の他の添加剤の少なくとも1種
を含むエアゾール組成物。
【0041】
圧縮ガス噴射剤が使用されてエアゾール組成物が形成される場合、エアゾール組成物は原液及び圧縮ガス噴射剤を含む。本害虫防除剤のエアゾール組成物の例を以下に挙げる。
(i)原液の全量を100質量%として、
(a)好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下のHFO−1233zd、特にtrans-HFO−1233zd;
(b)場合によって含まれてもよい、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下の液化ガス噴射剤、特に、ジメチルエーテル、液化石油ガスおよび1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)の少なくとも1種;
(c)場合によって含まれてもよい、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下の溶剤、特に灯油、
(d)場合によって含まれてもよい、10質量%以下、好ましくは0.01〜5質量%の殺虫成分及び忌避成分の少なくとも1種;及び
(e)場合によって含まれてもよい、5質量%以下、好ましくは0.1〜1質量%の他の添加剤の少なくとも1種;並びに
(ii)好ましくは0.3〜1MPaの圧力を有する圧縮ガス噴射剤
を含むエアゾール組成物。
【0042】
本発明の害虫防除剤の対象害虫としては、発明の効果を奏する限り特に制限されないが、例えば、ゴキブリ、ムカデ、ヤスデ、ゲジゲジ、ダンゴムシ、ワラジムシ、アミメアリ等のアリ、セアカゴケグモ等のクモ、ハエ、蚊、ハチ、蛾、ユスリカ、ヨコバイ、カメムシ、ダニ、ケムシ、シロアリ、ショウジョウバエ、チョウバエ、トコジラミ等が挙げられる。とくに動きが俊敏なゴキブリ、刺咬により人体に害を及ぼすクモ、アリ、トコジラミを対象とするのに適している。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
以下の実施例で使用した材料の比重は次のとおりである。
(比重)
trans-HFO−1233zd 1.30 g/cm/20℃
GALDEN SV80 1.70 g/cm/25℃
アサヒクリンAC2000 1.67 g/cm/25℃
ジメチルエーテル 0.66 g/cm/20℃
液化石油ガス(3Kg) 0.56 g/cm/20℃
HFO−1234ze 1.19 g/cm/20℃
灯油 0.756 g/cm/20℃
【0045】
<引火点の測定>
トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンにエタノールをそれぞれ20、30、35、40質量%となるように混合した溶液を調製し、タグ密閉法引火点試験器(JIS K2265−1)を用いて引火点の測定を行った。
【0046】
その結果、測定時に引火がなく、いずれも引火点なしという結果となり、消防法でいう「非危険物」に該当するものであった。
【0047】
<効力試験1:原液滴下試験>
(1)試験方法
容量860mlの上部が開放したプラスチックカップを用意し、その内側上部にバターを塗布した。次に供試虫としてクロゴキブリ雌1頭を、前記プラスチックカップの底部に腹を上にして静かに置いた。
【0048】
供試虫が仰向けになっているのを確認し、表1に示した供試薬剤0.5mLをピペットで胸から腹部にかけて滴下し、動きが完全に停止するまでの時間(秒)を測定した。
【0049】
その後、供試虫を別のプラスチックカップに移して、室温20℃、湿度26%の部屋に放置し、24時間後の致死数を調べた。試験は5回繰り返して行い、その平均から致死率(%)を算出した。試験の結果は表2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
(2)試験結果
表2に示したとおり、実施例1は、供試虫の動きが停止するまでに平均で1.4秒であり、比較例1及び2と比べて、供試虫の動きが停止するまでの時間が著しく短かった。この結果から、本発明の成分は供試虫の動きを瞬時に止めることができる速効性に優れることがわかった。また、実施例1は、24時間経過後の致死率(%)も高く、害虫防除効果にも優れることがわかった。
【0053】
<効力試験2:エアゾール効力試験>
(1)試験検体
表3に示す処方に従い、原液としての有効成分および噴射剤としてのジメチルエーテル、液化石油ガス及びtrans-HFO−1234zeを、噴射装置(ステム孔径0.6mm、アンダータップ孔径2.2mm、ボタン噴孔径1.5mm×4孔)を備えたエアゾール用耐圧缶(容量300ml)に充填して、エアゾール剤の形態の試験検体を得た。各エアゾール剤は約4g/秒の噴射量とした。
【0054】
【表3】
【0055】
(2)試験方法
図1に示すように、供試虫3(クロゴキブリ雌1頭)を入れたプラスチックカップ1(容量860mlの上部が開放したプラスチックカップであり、その内側上部にバターを塗布したもの)を用意し、傾斜角45°の台5に、前記プラスチックカップ1をエアゾール剤(試験検体)7の噴霧線上となるように取り付けた。前記プラスチックカップ1の底部中央から約70cmの距離から、前記プラスチックカップ1の中心に向けてエアゾール剤7を2秒間噴霧した。
【0056】
噴霧直後に供試虫3を別のプラスチックカップに移し、ノックダウンするまでの時間(秒)を測定した。その後、試供虫を室温20℃、湿度26%の部屋に放置し、24時間経過後の致死数を調べた。試験は5回繰り返して行い、その平均から致死率(%)を算出した。なお、5分以上ノックダウンしない場合は、「ノックダウンせず」と判断した。試験の結果は表4に示した。
【0057】
【表4】
【0058】
(3)試験結果
表4に示したとおり、実施例2、2−1及び2−2は全て1秒未満でノックダウンしており、非常に高い速効性を有することがわかった。また、24時間後の致死率(%)も100%であり、致死効果も十分にあることがわかった。一方、比較例3及び4は、ノックダウン及び24時間後の致死はみられなかった。
【0059】
このことから、本発明の成分は、エアゾール剤として用いた場合に、優れたノックダウン効果を有し、また致死効果も発揮するものであることがわかった。
【0060】
<効力試験3>
(1)試験検体
表5に示す処方に従い、原液(有効成分、溶剤)および噴射剤(ジメチルエーテル、炭酸ガス、液化石油ガス及びtrans-HFO−1234ze)を、噴射装置(ステム孔径0.6mm、アンダータップ孔径2.2mm、ボタン噴孔径1.5mm×4孔)を備えたエアゾール用耐圧缶(容量300ml)に充填して、エアゾール剤の形態の試験検体を得た。実施例3〜5のエアゾール剤は約5g/秒の噴射量とし、実施例6、7のエアゾール剤は約4g/秒の噴射量とし、実施例8、8−1、8−2及び9のエアゾール剤は約3g/秒の噴射量とした。
【0061】
【表5】
【0062】
(2)試験方法
供試虫(クロゴキブリ雌1頭)を試験室(約8畳空間、室温26℃、湿度56%)に放ち、約70cmの距離から供試虫に向けて試験検体をノックダウンするまで噴霧した。
【0063】
そして供試虫がノックダウンするまでの時間を測定し、同時に、試験検体を処理した試験室の床面の濡れの有無を確認した。いずれの試験も3回繰り返して行い、その評価結果を表6に示した。
【0064】
ノックダウンの評価は、3回とも供試虫が5秒以内に全てがノックダウンしたものを「○」、10秒以内にノックダウンしたものを「△」とした。
【0065】
また濡れ評価は、噴霧箇所での試験検体による濡れがほとんど見られない場合を「○」、濡れがわずかに見られる場合を「△」で評価した。
【0066】
【表6】
【0067】
(3)試験結果
表6に示したとおり、本発明のエアゾール剤である実施例3〜9はいずれも10秒以内にノックダウンしており、速効性が高いことがわかった。特に、実施例3〜8、8−1及び8−2は5秒以内にノックダウンしており、速効性が非常に高かった。また、床面の濡れは、濡れがわずかに見られるかほとんど濡れがなく、使用感にも優れていると評価できた。
【0068】
<効力試験4>
(1)試験検体
表7に示す処方に従い、原液(トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)および噴射剤(ジメチルエーテル)を、噴射装置(ステム孔径0.6mm、アンダータップ孔径2.2mm、ボタン噴孔径1.5mm×4孔)を備えたエアゾール用耐圧缶(容量300ml)に充填して、エアゾール剤の形態の試験検体を得た。エアゾール剤は約4g/秒の噴射量とした。
【0069】
【表7】
【0070】
(2)試験方法
図1に示すように、表8に記載の供試虫3を入れたプラスチックカップ1(容量860mlの上部が開放したプラスチックカップであり、その内側上部にバターを塗布したもの)を用意し、傾斜角45°の台5に、前記プラスチックカップ1をエアゾール剤(試験検体)7の噴霧線上となるように取り付けた。前記プラスチックカップ1の底部中央から約70cmの距離から、前記プラスチックカップ1の中心に向けてエアゾール剤7を1秒間噴霧した。
【0071】
噴霧直後に供試虫3を別のプラスチックカップに移し、ノックダウンするまでの時間(秒)を測定した。その後、試供虫を室温20℃、湿度26%の部屋に放置し、24時間経過後の致死数を調べた。試験は3回繰り返して行った。
【0072】
【表8】
【0073】
(3)試験結果
全ての供試虫が3回とも1秒未満でノックダウン(アミメアリについては5頭全てが1秒未満でノックダウン)しており、速効性が高いことがわかった。また、全ての供試虫が3回とも24時間以内に致死(アミメアリについては5頭全てが24時間以内に致死)であった。
【0074】
(発明の態様)
本発明は以下の態様を含む。
[1] (a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[2] 前記用意する工程が害虫に前記害虫防除剤を噴霧することを含む、上記[1]に記載の方法。
[3] 前記用意する工程が内容物を噴霧するためのノズルを有する容器内に前記害虫防除剤を用意することを含む、上記[2]に記載の方法。
[4] 前記容器が耐圧容器であり、前記害虫防除剤が前記容器から前記害虫防除剤を噴出するための噴射剤をさらに含む、上記[3]に記載の方法。
[5] 前記噴射剤がHFO−1234zeを含む、上記[4]に記載の方法。
[6] 前記HFO−1234zeが液化ガスの形態で容器中に存在する、上記[5]に記載の方法。
[7] 前記適用する工程が実質的に瞬時に害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め及び/又は殺虫するために有効である、上記[1]に記載の方法。
[8] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で適用することを含む、上記[7]に記載の方法。
[9] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含む、上記[7]に記載の方法。
[10] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含み、害虫が適用工程の後約10秒以内に動きを止める、上記[7]に記載の方法。
[11] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含み、害虫が適用工程の後約2秒以内に動きを止める、上記[7]に記載の方法。
[12] 前記適用する工程が前記害虫防除剤を約1〜約10g/秒の割合で噴霧することを含み、害虫が適用工程の後約1秒以内に動きを止める、上記[7]に記載の方法。
[13] 前記害虫防除剤が共沸混合物又は共沸混合物様組成物ではない、上記[1]に記載の方法。
[14] 前記害虫防除剤がヨウ化メチルを含む共沸混合物又は共沸混合物様組成物ではない、上記[1]に記載の方法。
[15] 前記噴射剤がジメチルエーテル、液化石油ガス、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及びこれらの組み合わせの少なくとも1種である、上記[4]に記載の方法。
[16] 前記害虫防除剤がエアゾールの形態で適用される、上記[1]〜[15]のいずれかの方法。
[17] 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの害虫防除剤における有効成分としての使用。
[18] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンがトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む、上記[17]に記載の使用。
[19] (a)容器;(b)前記容器内にあり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び少なくとも1種の追加の殺虫剤を含む有効成分を含む害虫防除剤;及び(c)前記害虫防除剤を害虫に適用するための前記容器に取り付けられた手段を含む害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫する装置。
[20] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンがトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む、上記[19]に記載の装置。
[21] (a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含みヨウ化メチルを含まない害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[22] (a)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む非共沸混合物を含む有効成分を含みヨウ化メチルの実質的な量を含まない害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[23] (a)共沸混合物の一部でなくそして共沸混合物のような挙動をする混合物の一部でない形態で1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤を用意し、そして(b)害虫を無能力にし、及び/又は動きを止め、及び/又は殺虫するのに効果的な量及び条件で害虫に害虫防除剤を適用することを含む害虫を防除する方法。
[24] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが約5〜約70重量%のヨウ化メチル、又は約15〜約60重量%のヨウ化メチル、又は約25〜約50重量%のヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[23]の方法。
[25] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが14.5psiaで約8℃〜約14.5℃、又は約8℃〜約13.8℃、又は約8℃〜約12.7℃の範囲で沸騰するヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[23]の方法。
[26]1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含みヨウ化メチルの実質的な量を含まない害虫防除剤。
[27]1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む非共沸混合物を含む有効成分を含みヨウ化メチルの実質的な量を含まない害虫防除剤。
[28] 共沸混合物の一部でなくそして共沸混合物のような挙動をする混合物の一部でない形態で1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む有効成分を含む害虫防除剤。
[29] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが約5〜約70重量%のヨウ化メチル、又は約15〜約60重量%のヨウ化メチル、又は約25〜約50重量%のヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[28]の害虫防除剤。
[30] 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが14.5psiaで約8℃〜約14.5℃、又は約8℃〜約13.8℃、又は約8℃〜約12.7℃の範囲で沸騰するヨウ化メチルとの混合物中に存在しない、上記[28]の害虫防除剤。
【符号の説明】
【0075】
1 プラスチックカップ
3 試供虫
5 台
7 エアゾール剤
図1