(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
眼科用レンズ(20)を固定する手段(202、203)、前記眼科用レンズ(20)を機械加工する工具(210、222、223)および前記機械加工工具により前記眼科用レンズ(20)に加えられる力が変化すると変化する力を測定するように適合された力センサー(234)を備える機械加工装置(200)を使用して前記眼科用レンズ(20)をトリミングするプロセスであって、
前記眼科用レンズ(20)を前記固定手段(202、203)中に固定するステップと、
前記機械加工工具(210、222,223)を使用して前記眼科用レンズ(20)をトリミングするステップであって、このステップにおいては、前記力の負荷値が測定され、かつ、前記眼科用レンズ(20)の初期輪郭(10)を異なる形状の最終輪郭に到達させるために前記機械加工工具(210、222,223)が測定された前記負荷値に応じて前記固定手段(202、203)との関係において制御されるステップと、を含み、
かつ、前記プロセスが、前記機械加工工具(210、222,223)が前記眼科用レンズ(20)の円周沿いに接触することなく前記初期輪郭(10)から推定される経路に従って進むように前記固定手段(202、203)に対して制御され、かつ、前記力センサー(234)により測定される前記力の無負荷値であって、作動時の摩擦力および慣性力を考慮したときに前記機械加工工具(210、222、223)を自由空間において前記固定手段(202、203)に対して移動させるために必要な力に関係する無負荷値が記録される少なくとも1つの中間ステップを前記固定ステップと前記トリミング・ステップの間に含むことと、前記トリミング・ステップにおいて、前記機械加工工具(210、222、223)が前記記録無負荷値に応じて制御されることとを特徴とするトリミング・プロセス。
前記トリミング・ステップが粗削りステップにより先行される仕上げステップであり、かつ、このステップ中において前記中間ステップが前記粗削りステップと前記仕上げステップの間で行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載のトリミング・プロセス。
前記トリミング・ステップにおいて、前記機械加工工具(210,222、223)により前記眼科用レンズ(20)に加えられる前記力であって、測定された前記負荷値と対応する前記記録無負荷値の間の差異から推定される力が所定の定数にほぼ等しいままとなるように前記機械加工工具(210,222、223)が前記固定手段(202、203)に対して制御される請求項1〜7のいずれか一項に記載のトリミング・プロセス。
前記トリミング・ステップにおいて、このトリミング・ステップを実行するサイクル時間が所定の時間長に等しくなるように前記機械加工工具(210,222、223)が前記固定手段(202、203)に対して制御される請求項7に記載のトリミング・プロセス。
前記差異が設定時間長の間に所定の閾値を超えた場合に、このトリミング・ステップを実行するサイクル時間が前記所定時間長を超えるように前記機械加工工具(210,222、223)が、前記固定手段(202、203)に対して、測定された前記負荷値と対応する前記記録無負荷値の間の差異に応じて、制御される請求項9に記載のトリミング・プロセス。
前記トリミング・ステップの終了時に、前記トリミング・ステップにおいて前記機械加工工具(210,222、223)により前記眼科用レンズ(20)に加えられた前記力の特性指標であって、少なくとも1つの測定された負荷値と対応する記録無負荷値の間の差異に依存する特性指標が決定され、かつ、前記機械加工工具(210、222、223)が作動に適する状態にあることを検証するために前記指標が閾値と比較される監視ステップが備えられる請求項9〜11のいずれか一項に記載のトリミング・プロセス。
前記トリミング・ステップの終了時に、前記トリミング・ステップにおいて前記機械加工工具(210,222、223)により前記眼科用レンズ(20)に加えられた前記力の特性指標であって、少なくとも1つの測定された負荷値と対応する記録無負荷値の間の差異に依存する特性指標がメモリに格納され、かつ、前記指標の変動を監視する監視ステップが備えられる請求項9〜12のいずれか一項に記載のトリミング・プロセス。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
先行技術の前述の欠点を是正することを目的として、本発明は、測定された値から寄生要素を除去するために測定値を処理することを提案する。
【0013】
より具体的には、本発明は、序文で定義したトリミング・プロセスを提供する。このプロセスでは、前記固定ステップと前記トリミング・ステップ間に少なくとも1つの中間ステップを設ける。この中間ステップでは、前記機械加工工具を前記固定手段との関係において制御することにより前記初期輪郭から推定される経路に沿って前記眼科用レンズの外周に触れることなく周回させ、さらにこの中間ステップでは、機械工作力の無負荷値を測定する。さらに、このプロセスでは、トリミング・ステップにおいて前記機械工作工具を機械加工力の無負荷値に応じて制御する。
【0014】
中間ステップにおいて、機械加工工具は、したがって、自由空間において、支持手段中にあらかじめ固定されているレンズの周りをトリミング・ステップにおいて遭遇するであろう状態と類似する状態の下で通過するように制御される。
【0015】
したがって、この中間ステップは、それが機械工作力の無負荷値を測定することを可能にするので、機械加工工具がレンズの周りを通過するときに装置の諸要素に働く摩擦力の変動の測定を可能にする。
【0016】
この測定は、特に、レンズを固定手段に固定してから行われるので、レンズに加わる固定力、レンズの重量等々が考慮される。
【0017】
それは、さらに、レンズの初期輪郭にたどりながら行う。その結果、工具がトリミング・ステップで遭遇する状況と非常によく似た状況の下で行われることとなる。
【0018】
次に、測定した負荷値からこの無負荷値を控除することにより、機械加工工具により実際にレンズに加わる力に非常に近い近似値を得ることができる。
【0019】
この近似により、機械加工工具がレンズに許容閾値に近い力を加えるようにそれを制御することが可能となり、機械加工作業の品質およびこの機械加工作業の実行の速度が向上する。
【0020】
それから機械加工工具の摩耗の近似値を推定し、必要に応じて、摩耗度が許容値を超えている場合に眼鏡技師に警告を発することもできる。
【0021】
レンズの機械加工中にたとえばトリミング対象のレンズの材料の誤挿入のような欠陥または問題を検知することもでき、必要に応じて眼鏡技師に警告を発することもできる。
【0022】
測定した値を利用して、機械加工装置を絶え間なく較正するために、測定された摩擦の変動を分析することも可能である。
【0023】
以下は、本発明によるトリミング・プロセスのその他の長所および非制限的特徴である:
− 前記経路は、前記初期輪郭をたどり、かつ、それからせいぜい5ミリメートルの距離だけ離隔している。
− 前記経路は、前記初期輪郭の相似変換または前記輪郭への定数加算である。
− 前記トリミング・ステップは、粗削りステップである。
− 前記トリミング・ステップは、粗削りステップに続く仕上げステップであり、このステップ中に前記中間ステップが粗削りステップと仕上げステップの間に置かれている。
− 前記仕上げステップは、溝切り工程、ミリング工程、ベベル工程および/または面取り工程および/または研磨工程を含む。
− レンズ角度位置を一定の増分だけインクリメントすることによりレンズを回転させるように適合されている前記固定手段。
− 中間ステップにおいて、前記機械加工力の無負荷値を固定手段の各増分について測定する。
− トリミング・ステップにおいて、前記機械加工力の負荷値を固定手段の各増分について測定する。
− トリミング・ステップにおける各増分について、その先行増分について測定された無負荷値と中間ステップにおいて対応する増分について測定された無負荷値の間の差異に応じて前記機械加工工具を制御する。
− トリミング・ステップにおいて、前記機械加工工具を前記固定手段との関係において制御して、前記機械加工工具により眼科用レンズに加えられる力(この力は、測定された負荷値と対応する記録無負荷値の間の差異から推定される)が所定の定数にほぼ等しい状態を保つようにする。
− トリミング・ステップにおいて、このトリミング・ステップを実行するサイクル時間が所定の時間長に等しくなるように前記機械加工工具を前記固定手段との関係において制御する。
− 前記差異が所定時間長の間に所定閾値を超えた場合、測定された負荷値と対応する記録無負荷値の間の差異に応じて前記機械加工工具を前記固定手段との関係において制御して、このトリミング・ステップを実行するサイクル時間が前記の所定時間長を超えるようにする。
− 前記差異の導関数が所定の閾値を超えた場合、測定された負荷値と対応する記録無負荷値の間の差異に応じて前記機械加工工具を前記固定手段との関係において制御して、このトリミング・ステップを実行するサイクル時間が前記の所定時間長を超えるようにする。
− 前記トリミング・ステップの終了時に、トリミング・ステップにおいて前記機械加工工具により眼科用レンズに加えられた力の特性指標を決定する。この指標は、少なくとも1つの測定された負荷値と対応する記録無負荷値の間の差異に依存する。機械加工工具が作動に適する状態にあることを検証するために前記指標を閾値と比較する監視ステップを設ける。
− 前記トリミング・ステップの終了時に、トリミング・ステップにおいて前記機械加工工具により眼科用レンズに加えられた力の特性指標をメモリに格納する。この指標は、少なくとも1つの測定された負荷値と対応する記録無負荷値の間の差異に依存する。前記指標の変化を監視する監視ステップを設ける。
【0024】
本発明は、序論で定義した眼科用レンズを機械加工する装置にも関する。この装置では、前記制御装置は、上述のトリミング・プロセスの中間ステップおよびトリミング・ステップを実行するように適合される。
【0025】
有利には、力センサーは、1個の一方向歪みゲージ、または2個の一方向歪みゲージ、または1個の二方向歪みゲージを含む。
【0026】
添付図面とともに示す以下の記述は、非制限的な例示として、本発明の内容およびその実施方法の理解を可能とするであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、眼科用レンズ20を機械加工する装置200を示す。この装置は、以下を含む:
− 眼科用レンズ20を固定する手段202、203
− 眼科用レンズ20を機械加工する少なくとも1個の工具210、222、223
− 機械加工工具210、222、223により眼科用レンズ20に加えられる力に関する力を測定するように適合されている力センサー234、および
− 各機械加工工具210、222、223を固定手段202、203との関係において制御する装置251
【0029】
この機械加工装置200は、眼科用レンズ20の輪郭を変更してそれを選択された眼鏡フレームの対応するリムの輪郭に適合させるために材料を切除または取り除ける任意の機械の形態をとることができる。
【0030】
図1に大まかに示されている例では、機械加工装置200は、それ自体よく知られているように、一般的にデジタル・グラインダと呼ばれている自動グラインダ200から構成されている。この場合、このグラインダは、以下を含んでいる:
− ロッカー201。これは、基準軸A5(実際には水平軸)の周りで自由に回転できるように台座(図示せず)上に搭載されており、機械加工される眼科用レンズ20を支持する。
− 少なくとも1個の砥石車210。これは、基準軸A5に平行な砥石車軸A6上に回転に対して固定されており、かつ、モーター(図示せず)によりしかるべく駆動されて回転する。
− 仕上げモジュール220。砥石車軸A6の周りで回転するように取り付けられており、かつ、眼科用レンズ20を仕上げする工具222、223を備えている。
【0031】
基準軸の周りのロッカー201の旋回運動性は、後退運動性ESCと呼ばれている。それは、眼科用レンズ20が砥石車210に接触するまで眼科用レンズ20を砥石車210に近づける。
【0032】
このロッカー201は、機械加工される眼科用レンズ20を固定するとともにそれを駆動して回転させる2本のシャフト202、203を備えている。これらのシャフト202、203は、前述の「固定手段」に対応する。
【0033】
これらの2本のシャフト202、203は、軸A5に平行な固定軸A7に沿ってお互いに整列している。これらのシャフト202、203のそれぞれは、相手と向き合っており、かつ、眼科用レンズ20を固定するヘッドを備える自由端をもっている。
【0034】
2本のシャフトのうちの第1シャフト202は、固定軸A7沿いの並進方向に関して固定されている。対照的に、2本の軸のうちの第2シャフト203は、固定軸A7沿いの並進方向に移動可能であり、眼科用レンズ20に圧力をかけて2個の固定ヘッド間に軸的に固定することができる。
【0035】
図1に大まかに示されているグラインダ200は、ただ1個の砥石車210を含んでいる。
【0036】
実際には、それは、むしろ、砥石車軸A6に同軸上に搭載されている多数の砥石車のバンクを含んでおり、各砥石車は、機械加工される眼科用レンズ20の特定のトリミング工程のために作業に使用される。
【0037】
したがって、レンズの粗削りのために、粗削りシリンダ砥石車を使用する。
【0038】
レンズの端面に沿ってリブを機械加工するレンズのベベリングのために、成形砥石車(または「ベベル加工砥石車」)を使用する。この砥石車は、二面断面ベベル加工溝を含んでいる。
【0039】
レンズの研磨のために、上述の2個の砥石車と同じ形状をもつシリンダ砥石車および成形砥石車を使用する。これらの研磨砥石車の粒径は、特に小さい。
【0040】
砥石車のバンクは、スライド(図示せず)により支持されおり、砥石車軸A6に沿って並進的に移動することができる。砥石車を支持しているスライドの並進運動は、「トランスファ」TRAと呼ばれる。
【0041】
砥石車とレンズの間の相対運動を引き起こす必要があることがここで分かるが、そのための1つの方法としてレンズを軸方向に移動し、砥石車を静止させることができる。
【0042】
グラインダ200は、さらに、リンク・ロッド230を含んでいるが、その一端は、基準軸A5の周りに旋回できるように台座に対してヒンジ接続されており、また、その他端は基準軸A5に平行な軸A8の周りで旋回できるようにナット231に対してヒンジ接続されている。
【0043】
ナット231は、それ自体、基準軸A5に垂直な復帰軸A9に沿って並進運動できるように搭載されている。
図6に大まかに示されているように、ナット231は、復帰軸A9と整列されていてモーター233により駆動されて回転するねじ付きシャンク232とねじ結合するねじ溝付きナットである。
【0044】
リンク・ロッド230は、さらに、力センサー234を含んでいる。それは、この場合、ロッカー201に固定されているストッパ204と相互作用する単一方向歪みゲージから構成されている。
【0045】
2本のシャフト202、203の間に正しく固定した後、機械加工対象の眼科用レンズ20を砥石車210の1つに接触させる。レンズから実質的に材料を除去して行き、それによりロッカー201のストッパ204がリンク・ロッド230に突き当たり、それに力を及ぼすようにする。これにより、歪みゲージ234に働くこの力が歪みゲージにより正しく検知・測定される。
【0046】
この場合、歪みゲージ234は、ほぼ垂直方向の機械加工力を測定するように配置される。この力は、眼科用レンズ20により使用砥石車210または使用仕上げ工具222,223に働く力の半径方向成分に対応する。
【0047】
眼科用レンズ20を所与の輪郭に沿って機械加工するためには、したがって、一方において復帰運動RESを制御するためにナット231を復帰軸A9に沿ってモーター233の制御の下に適切に移動し、他方において、支持シャフト202、203をともに固定軸A7の周りに旋回させるだけで十分である。復帰運動(および、ひいては、ロッカー201の後退運動)およびシャフト202、203の回転運動は、この目的のために正しくプログラムされている制御装置251により制御・調整され、その結果、眼科用レンズ20の輪郭のすべての点が次々に正しい直径上の点となる。
【0048】
本発明によると、前記後退運動は、具体的には、歪みゲージ234により測定される機械加工力に応じて制御され、この力が一定の閾値を超えないようになっている。この閾値は、それを超えた場合、レンズ20がシャフト202、203間から滑り落ちるか、または使用された工具が破損する恐れがある値である。
【0049】
仕上げモジュール220に関しては、それは、砥石車軸A6の周りの旋回運動性をもっている。この運動性は,PIVにより示されている。要するに、仕上げモジュール220は、歯付きコグ(図示せず)を備えている。それは、砥石車を支持しているスライドにしっかり固定されている電気モーターのシャフトに設けられているピニオンと噛み合う。この運動性は、仕上げモジュールを眼科用レンズ20に近づけたり、遠ざけたりすることを可能にする。
【0050】
仕上げモジュール220に設けられている仕上げ工具222、223は、ここでは特に眼科用レンズ20の端面に沿って溝を作るように適合されている溝切りディスク222および眼科用レンズ20の鋭い端部を面取りするよう適合されているミリング・カッタ223を含んでいる。
【0051】
これらの仕上げ工具222,223は、所定の軸の周りで回転するように搭載され、基部224に収容されているモーターにより駆動されて回転する。基部224は、それ自体、砥石車軸A6に垂直な軸A10の周りで回転するように仕上げモジュール220上に搭載されている。仕上げ運動性FINと呼ばれる基部224の軸A10の周りのこの旋回運動性は、工具222、223をレンズとの関係において最善の位置におくことを可能にする。
【0052】
制御装置251は、電子および/または計算装置であり、それは、特に下記の制御を可能にする:
− 第2シャフト203を駆動して並進させるモーター
− 2つのシャフト202、203を駆動して回転させるモーター
― 砥石車を支持しているスライドを駆動してそのトランスファ運動性TRAにより並進させるモーター
− ナット231を駆動してその復帰運動性RESにより並進させるモーター233
− 仕上げモジュール220を駆動してその旋回運動性PIVにより回転させるモーター
− 仕上げ工具222、223の基部224を駆動してその仕上げ運動性FINにより回転させるモーター。
【0053】
最後に、グラインダ200は、ここでは制御装置251と通信するように適合されている表示画面253、キーボード254およびマウス255を含むヒューマン・マシン・インターフェース252を含んでいる。このHMIインターフェース252は、ユーザーがレンズの材料のような数値を表示画面253上に入力することを可能にし、その結果、グラインダ200の工具を適切に制御することができる。
【0054】
図1において、制御装置は、グラインダ200に接続されたデスクトップ・コンピュータ上に実現されている。もちろん、別案として、このグラインダのソフトウェア部分は、このグラインダの電子回路上に直接実現することも可能である。それは、たとえばIP(インターネット通信プロトコルを使用してプライベート・ネットワークまたはパブリック・ネットワーク経由でグラインダと通信する遠隔コンピュータ上に実現することもできる。
【0055】
眼科用レンズ20を受け入れるための眼鏡フレームは、この明細書の以下の部分では、全周リム付きフレーム、すなわちブリッジにより相互に接続された2個のリムを含むフレームとする。これらのリムのそれぞれは、「ベゼル」呼ばれ、レンズのはめ込まれる内部溝をもっている。
【0056】
図2は、このリムのベゼルの底部の輪郭10の投射を示す(実線)。
【0057】
図2は、この輪郭10の「ボックスで囲む」ボックス11も示す(鎖線)。
【0058】
特に、ボックスで囲むボックス11が輪郭10の投影の周りに描かれた矩形であり、その2辺が水平線に対して平行であることに注意する。
【0059】
次に、このボックスで囲むボックス11の中心Oが極座標系ρ、θの原点を形成する。
【0060】
眼科用レンズ20のトリミングを行う前に、制御装置251は、輪郭10の形状を取得する。
【0061】
この取得される輪郭10は、たとえば、この輪郭10の形状を特徴付ける複数の点の円筒座標に対応する一連の三つ組(ρ
i, θ
i, z
i)の形態をとることができる。
【0062】
好ましくは、これらの三つ組は、眼鏡技師が利用するデータベースの集まりから取得する。眼鏡フレーム・メーカーまたは眼科用レンズ・メーカーまたは眼鏡技師自身により定期的に更新されるこのデータベースの集まりは、この目的のために、それぞれ眼鏡フレーム・モデルに関する複数のレコードを含んでいる。したがって、各レコードは、そのレコードの関係する眼鏡フレームのモデルを識別する識別子およびこの眼鏡フレーム・モデルの各リムのベゼルの底部の形状を特徴付ける一連の360個の三つ組を含んでいる。
【0063】
別案として、輪郭10は、画像取得手段および画像処理手段を含む撮像装置を使用して取得することもできる。この撮像装置のおかげで、眼鏡フレームとともに納入されるサンプル・レンズの写真を撮ることにより輪郭10の形状を特徴付ける点の2次元座標を取得し、次にこの写真を処理することによりこの写真上でその端面上に位置する360個の点を正確に指定することができる。
【0064】
もちろん、輪郭10の形状を特徴付ける360個の点の三つ組(ρ
i,θ
i,z
i)は、他の方法により、たとえば、各リムのベゼルの底部の接触形状測定により取得することもできる。
【0065】
次にレンズの芯出し操作、その次に固定操作を行う。これらの2つの操作は、先行技術の当業者によりよく知られており、本発明の主題事項の一部を形成しない。したがって、これらについては簡単に触れるのみとする。
【0066】
心出し操作中、レンズ上にマークされるかまたは刻まれるマーカーの位置を決定し、かつ、レンズの輪郭10のために必要な位置(この輪郭に従ってレンズのトリミングを行い、選択されたフレームに取り付けた後に、その光心を眼鏡着用者の対応する眼に対して正しく位置づけるようにする)をそれらから推定する。
【0067】
固定操作中、ボックスで囲むボックス11の中心O上の中心位置において、グリップ・アクセサリーをレンズに接着接合する。次に、このグリップ・アクセサリーを介して機械加工装置200のシャフト202、203の間にレンズを固定し、中心Oが固定軸A7上の中心に来るようにする。
【0068】
次に2段階の操作、すなわち、粗削り工程および仕上げ工程によりトリミングを行う。
【0069】
レンズの粗削りでは、シリンダ砥石車を使用してレンズの半径を粗く低減して輪郭10の形状に近い形状とする。より詳しくは、シリンダ砥石車およびロッカー201は、ここでは、相互の位置に関して制御され、それにより、固定軸A7の周りのレンズの各角度位置θ
iについて、レンズの半径が輪郭10の半径ρ
iに等しい長さになるように低減される。
【0070】
レンズを仕上げるために、成形砥石車を使用して、レンズの端面上に、取り付けリブ、すなわち「ベベル」を作成する。その先端は、輪郭10の形状に類似する形状の経路に沿って長手方向に伸びる。より詳しくは、シリンダ砥石車およびロッカー201は、ここでは、相互の位置に関して制御され、それにより、固定軸A7の周りのレンズの各角度位置θ
iについて、レンズのベベルの先端の半径がρ
i−k
1に等しい長さになるように低減される。ここで、k
1は、ベベルの先端がベゼルの底に接触せず、そこから少し離れることを考慮した所定の定数である。
【0071】
この仕上げ工程中、眼科用レンズ20は、砥石車軸A6との関係において、輪郭10の形状から推定される経路をたどることが分かるであろう。
【0072】
もちろん、レンズをハーフリム眼鏡フレームに取り付ける場合には、溝切りディスク222を使用してレンズを仕上げる。この場合、より詳しくは、基部224、仕上げモジュール220、およびロッカー201は、相互の関係において、制御され、それにより、固定軸A7の周りのレンズの各角度位置θ
iについて、レンズの端面に削り溝が形成される。この溝の底は、固定軸A7からρ
i−k
2に等しい距離だけ離隔される。ここで、k
2は、この溝の所望深さに依存する所定の定数である。
【0073】
本発明によれば、中間工程は、固定工程とトリミング工程の1つの間、ここでは、より正確には、粗削り工程と仕上げ工程の間で行われる。
【0074】
全体として、この中間工程は、グラインダ200の種々の要素に、それらが仕上げ工程中に眼科用レンズ20を機械加工するときにそれらがたどる経路に非常に近い経路を、しかし無負荷で、すなわち、レンズがこれらの工具の1つに触れることなく、たどらせることにより、作用する摩擦力および慣性力のために自由空間においてこれらの要素を動かすために必要な力の無負荷値を測定することから構成される。
【0075】
より正確には、この中間工程は、一方では、レンズが自分自身を軸にしてその端面が選択工具から若干の距離を保つ軌道に従って完全な1回転を行うようにシャフト202、203の回転、ロッカー201の後退運動性ESCおよび砥石車210のバンクのトランスファTRAを制御すること、他方では、固定軸A7の周りのレンズの各角度位置θ
iについて歪みゲージ234により測定される機械加工力の無負荷値を測定し、かつ、メモリに格納することからなる。
【0076】
この方法により、仕上げ工程中に、工具上に眼科用レンズ20により実際に及ぼされる力を踏まえて(それは、機械工作力の測定値から前もって測定した無負荷値を控除した値に対応する)これらの要素、および特にロッカー201の後退運動性ESCを制御することができる。
【0077】
これから、この中間工程の実行について詳細に説明する。
【0078】
制御装置251は、まず、眼科用レンズ20の端面が成形砥石車から若干の距離を保つためにレンズがたどらなければならない成形砥石車との関係における経路を計算する。
【0079】
上述したように、トリミング・プロセスのこの段階において、レンズの端面は、レンズの各角度位置θ
iについて、固定軸A7から距離ρ
iに位置付けられている。
【0080】
次に、成形砥石車が、レンズの各角度位置θ
iについて、固定軸A7から距離ρ’
i(それは、ρ
iより厳密に大きい)の点を通過するようにグラインダ200の諸要素を制御することが望ましい。
【0081】
次に、
図2が示すように、二つ組(ρ’
i,θ
i)により輪郭10より大きい中間輪郭12を定義する。この輪郭12は、成形砥石車の作動面が眼科用レンズ20の端面との関係においてたどる経路に対応する。
【0082】
この場合、距離ρ’
iは、中間輪郭12がすべての点において輪郭10から5ミリメートルより小さい非ゼロ距離だけ離隔するように選択される。
【0083】
より正確には、ここでは、これらの距離は、次の関係を利用して計算する:
ρ’
i=h.ρ
i
ここで、hは、所定の定数であり、ここでは1.1に等しい。
【0084】
したがって、中間輪郭12は、中心Oおよび比hによる輪郭10の相似変換である。
【0085】
もちろん、別案として、これらの距離ρ’
iは、他の方法により計算することもできる。たとえば、
図3に示すように、中間輪郭12’を輪郭10’に対する定数加算により計算し、両輪郭間の離隔dを一定とすることができる。
【0086】
いずれにせよ、次に、ロッカー201の後退運動性ESC、シャフト202、203の回転および砥石車210のバンクのトランスファTRAは、固定軸A7の周りのレンズの各角度位置θ
iについて、成形砥石車が固定軸A7から距離ρ’
iの点に位置するように制御される。
【0087】
次にレンズの各角度位置θ
iについて、歪みゲージ234により測定される機械加工力の無負荷値F
0iを測定し、制御装置251の特別データベース中のメモリに格納する。
【0088】
次に、仕上げステップにおいて、機械加工力の負荷値F
liを次にレンズの各角度位置θ
iについて測定し、続いて直前に測定した負荷値F
l i-1と中間ステップ中に測定した無負荷値F
0iの差異ΔF
iに応じてロッカー201の後退ESCを制御する。
【0089】
ここで、この差異ΔF
iは、レンズにより成形砥石車に実際に加えられる力に、一定の係数の範囲内で、対応していることが分かるであろう。
【0090】
レンズの仕上げの最初の実行においては、ロッカー201は、力を使用して制御される。
【0091】
このモードでは、ロッカー201の後退ESCは、この差異ΔF
iが所定の閾値に常に等しい状態を保つように、より正確に制御される。この閾値は、それを超えると、眼科用レンズ20がシャフト202、203間から滑り落ちたり、成形砥石車またはレンズが破損したりする恐れが生ずる値として定義される。
【0092】
この方法により、最適の迅速性をもってレンズのベベルが形成される。
【0093】
この工程中、レンズのベベルの形成に要する時間の長さを考慮して、それから成形砥石歯車の摩耗の近似値を推定することができる。
【0094】
次に所定の摩耗程度を超えた場合に画面253経由で警告メッセージを出してユーザーに警告するように制御装置をプログラムすることができる。
【0095】
この工程中、レンズの機械加工速度を考慮して、たとえば、トリミング対象のレンズの材料のユーザーによる誤挿入のようなレンズの機械加工中の故障または問題を検知することもできる。
【0096】
次に、ここで再び、画面253経由で警告メッセージを出してユーザーに警告するように制御装置をプログラムすることができる。眼鏡技師の作業を容易にするために、この故障または問題の原因を探す規定を特に設け、それを表示することもできる。
【0097】
精密仕上げ工程と呼ばれる最後の工程中、眼科用レンズ20は、研磨砥石車を使用して研磨され、次にミリング・カッタ223を使用して面取りされる。
【0098】
この工程中、先行工程中と同様に、機械加工力の負荷値F
2iをレンズの各角度位置θ
iについて測定し、それにより、レンズにより研磨砥石車またはミリング・カッタ上に実際に加わる力に応じてロッカー201の後退ESCを制御できるようにする(この力は、直前に測定された負荷値F
2i-1と中間ステップ中に測定された無負荷値F
0iの差異ΔF’
iから推定される)。
【0099】
研磨では、この差異ΔF’
iが特に小さくなるように、ロッカー201の後退ESCは、より正確に制御され、それによりレンズの端面の滑らかな研磨を確保する。ここで、レンズにより研磨砥石車に実際に加わる力を決定する精度により、この滑らかな研磨が可能となることが分かるであろう。
【0100】
トリミング、面取りおよび研磨の後、レンズは、最後に、第2シャフト203の並進運動性を使用してグラインダ200から取り出され、次に選択された眼鏡フレームの対応するリムにはめ込まれる。
【0101】
レンズの仕上げステップの第2の実施形態では、速度を使用してグラインダの種々の要素を制御し、サイクル時間が所定の時間長ΔTに等しくなるようにする。
【0102】
したがって、1つのレンズから他のレンズへ、グラインダは、特に成形砥石車の摩耗に関係なく、同じ長さの時間をかけてレンズを仕上げる。
【0103】
本発明では、レンズのこの不変制御モードに2つの例外を設ける。
【0104】
第1の例外は、差異ΔF
iが所定時間長の間に所定閾値を超えた場合(それにより、たとえば、成形砥石車が摩耗していることを示す)、もはや速度によらず、力を使用してグラインダを制御し、この差異ΔF
iを所定の閾値に一致させることから構成される。したがって、こういう状況であるから、この仕上げステップの実行のサイクル時間が前記所定時間長ΔTを超えることが分かる。
【0105】
第2の例外は、差異ΔF
iの時間に関する導関数が所定の閾値を超えた場合(それにより、機械加工力が何らかの種類の問題のために急激に変化したことを示す)、レンズの加工速度を低減することから構成される。この場合にも、この仕上げステップを実行するサイクル時間が前記所定時間長ΔTを超えることが分かる。
【0106】
本発明のこの実施形態では、各レンズを仕上げるステップの後に、このレンズの仕上げ中に砥石車によりレンズに加えられた力の特性指標を決定する規定を設けることができる。
【0107】
たとえば、仕上げステップ中に観察された最大差異ΔF
iを記録することにより、この力により到達された最大値をメモリ中に格納する規定を設けることができる。別案として、この力の平均を記録することもできる。
【0108】
次に監視ステップにおいて、この指標を所定の閾値と比較することができる。
【0109】
したがって、この指標が閾値を超えた場合、成形砥石車の摩耗が進行していること、かつ、それを交換しない場合には少なくとも特に硬い材料製のレンズの機械加工を控える必要がある旨を画面253経由でユーザーに警告するように制御装置をプログラムする。
【0110】
この監視ステップでは、制御装置は、前記指標の変動を監視し、特にこの変動が通常の変動であるか否か検証することもできる。この変動が通常の変動でない場合にユーザーに問題の存在を通知するために画面253上に警告メッセージを表示することによりユーザーに警告を与える規定を設けることもできる。
【0111】
制御装置は、この変動に応じて、成形砥石車の残存寿命を計算し、交換する必要が生ずる前に成形砥石車がまだ実行できると思われるサイクルの回数を画面上に表示することもできる。
【0112】
もちろん、この残存サイクル回数を直接技師に送付することにより、ユーザーはもはや技師に連絡する必要がなく、その代わりに成形砥石歯車が摩耗したときに技師が来てそれを交換するような規定を設けることもできる。
【0113】
成形砥石車の摩耗を考慮するために、この変動に応じて、制御装置がその種々の装置の位置を再較正する規定を設けることもできる。
【0114】
本発明は、決して、説明・図示した実施形態に制限されるものではなく、また、当業者は本発明の範囲から逸脱することなくそれの変形を作成することができる。
【0115】
特に、シャフト202、203を駆動するモータに供給される電流の大きさを測定することにより機械加工力の測定を可能にする電流計により歪みゲージを置き換える規定を設けることができる。
【0116】
レンズにより工具に加えられる機械加工力の半径方向成分のみならず、この力の接線成分も測定するために、両方向歪みゲージにより(または2個の単一方向歪みゲージにより)単一方向歪みゲージを置き換えることもできる。
【0117】
さらに、レンズの粗削り工程の前に、このレンズがまだ円形輪郭もっているときに、中間工程を行う規定を設けることもできる。
【0118】
この変形の長所は、レンズが粗削り砥石車に許容閾値に近い力を加えるようにロッカーを制御することにより、粗削り工程の継続時間を最小化することができることである。
【0119】
しかし、その短所は、機械加工力の無負荷値がグラインダの諸要素を輪郭10から遠く離れた経路に沿って制御することにより測定され、そのために、この無負荷値が仕上げ工程および精密仕上げ工程中にグラインダの諸要素に実際に働く摩擦力および慣性力を正確に表さないようになることである。この欠点を除去するために、粗削り工程と仕上げ工程の間に2回目として中間ステップを繰り返すことは、もちろん、可能である。この場合には、グラインダの諸要素は、輪郭10に近い経路に沿って制御されることになる。
【0120】
レンズの粗削りを数回に分けて行い、各回において中間ステップを繰り返すことも可能である。
【0121】
もう1つの変形として、先行レンズ(n)のトリミングを行う前に自由空間において測定した力の無負荷値に応じてレンズ(n+1)のトリミングを行う規定を設けることができる。
【0122】
特に、前後してトリミングされる2つのレンズが同じである場合、同一のトリミング設定点をそれらの両方に適用することが可能である。