(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記濃縮装置および前記酸化装置と流体連結されたクメン除去/洗浄装置であって、前記濃縮装置から前記クメン生成物を受け取って、前記酸化装置用の前記クメン、および廃水を供給するように構成されたクメン除去/洗浄装置を更に備える、請求項16記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
メタノール濃度の低いアセトンを製造する方法およびシステムが、提供されている。前記方法は、クメンを酸化および開裂して粗アセトン生成物を生成することを含み得る。粗アセトン生成物は、中和装置において中和されて、中和粗アセトン生成物を生成し得る。中和粗アセトン生成物は、アセトン分留塔内で分留されて、アセトン生成物およびアセトン塔底生成物を生成し得る。メタノールは、アセトン塔底生成物から除去されて、メタノール除去生成物を生成し得る。メタノール除去生成物は、中和装置、脱フェノール装置、またはその両方に導入され得る。
【0006】
図1は、1つ以上の実施形態によってアセトンを生成するための例示的なシステム100を示している。システム100は、ライン112を経由してクメンを受け取り、またライン114を経由して酸化剤を受け取り、ライン116を経由する酸化生成物を生成するように構成された酸化装置110を、1つ以上備えてもよい。酸化装置110は、ライン112を経由して導入されるクメンに酸素を供給するのに適したシステムまたは装置であれば、どのようなものでもよい。例えば、酸化装置110は、1つ以上の(例えば、カスケード)気泡塔(図示なし)であってもよい。さらに、ライン114を経由する酸化剤は、酸素が気泡からクメンに移動するよう、気泡塔の底部に加えてもよい。ライン114を経由して酸化装置110に導入され得る例示的な酸化剤は、酸素、空気、オゾン、またはこれらの任意の組合せもしくは混合物を含み得るが、それらに限定されない。
【0007】
酸化反応は、ライン116を経由する酸化生成物中にメタノールを生成し得る。そのような反応の1つにより、クメン及び酸素がメチルフェニルケトン(ACP)およびメタノールに変換され得る。さらに、そのメタノールの一部はメチル過酸化水素(MHP)に変換され得る。これは、酸化装置110に導入されるライン112を経由するクメン中に既にあるメタノールに追加され得る。ライン116を経由する酸化生成物は、微量のメタノールを含み得る。ライン116を経由する酸化生成物は、CHPをも含み得る。例えば、ライン116を経由する酸化生成物は、最低約15wt%、約17wt%、約19wt%、または約21wt%から最高約25wt%、約27wt%、または約30wt%のCHP濃度を有し得る。
【0008】
ライン116を経由する酸化生成物は、1つ以上の濃縮装置118に導入されてもよい。濃縮装置118は、1つ以上の真空蒸留塔、熱交換器、還流ドラム、およびその他の設備を備えてもよい。前記の真空蒸留塔において、クメンは、例えば約100℃未満の温度で分離することができる。濃縮装置118はまた、ライン121を経由してクメンを受け取ることができ、そのクメンは、収率を向上させるために、1つ以上の真空蒸留塔に還流として導入されてもよい。濃縮装置118は、ライン120を経由する粗濃縮CHP生成物を生成し、ライン314を経由する剥離クメン生成物を生成し得る。ライン120を経由する濃縮CHP生成物については、実質上全てのメタノールが剥離クメン生成物とともにライン314を経由して戻るため、メタノールを非含有にし得る。
【0009】
ライン120を経由する粗濃縮CHP生成物は、1つ以上の開裂装置122に導入されてもよい。また、1以上の酸、例えば硫酸が、ライン123を経由して開裂装置122に導入されてもよい。開裂装置122は、内部に1つ以上の熱交換器を備えた逆混合槽型反応器(図示なし)および/または循環ループ型
反応器(図示なし)を備えてもよい。粗濃縮CHP生成物は、アセトンおよびフェノールを生成するため、逆混合槽型反応器および/または循環ループ型反応器に導入されてもよい。さらに、開裂反応が発熱性であるため、開裂装置122内の反応混合物の温度を制御するために、熱交換器が冷却水または他の熱交換流体を有してもよい。開裂装置122において、DMBAは一部脱水されてAMSになってもよく、AMSはフェノールと反応してクミルフェノールを生成してもよい。AMSはまた開裂装置122内で沸点の高い二量体を生成し得る。DMBAは、CHPと反応してジクミルパーオキサイド(DCP)および水を生成する。ヒドロキシアセトン、2−メチルベンゾフラン(2MBF)、ジアセトンアルコール等の更なる副生成物も生成し得る。これらの生成物は、例えば約100℃以上の温度で栓流反応器(図示なし)に供給されてもよい。栓流反応器において、DCPはAMS、フェノール、およびアセトンに変換されてもよく、CHPはフェノールおよびアセトンに開裂されてもよく、および/またはDMBAは脱水されてAMSおよび水にされてもよい。これらの生成物の少なくとも一部は、ライン124を経由して、粗生成物供給材料として開裂装置122から排出されてもよい。開裂装置の一例は、米国特許第5,371,305号において論じられ、説明されている通りであってもよい。
【0010】
開裂装置122は、少量のACPおよびメタノールを生成し得る。こうして生成されるメタノールは、ライン124を経由する粗生成物のメタノール濃度を増加させ得る。ライン124を経由する粗生成物は、1つ以上の中和装置126に導入されてもよい。中和装置126はまた、ライン128を経由して1種以上の塩溶液を受け取ってもよい。例えば、ライン128における塩溶液は、ナトリウムフェナートであってもよく、またはナトリウムフェナートを含んでいてもよい。塩溶液は、粗生成物供給材料内で継続している開裂反応を、低減または停止させ得る。したがって、中和装置126は、ライン130を経由して中和粗生成物を生成することができる。
【0011】
ライン130を経由する中和粗生成物は、アセトンおよびフェノールを含み得るものであり、1つ以上のアセトン分留システム200に導入されてもよい。アセトン分留システム200は、1つ以上の蒸留塔であってもよく、または1つ以上の蒸留塔を備えてもよい。システム200においては、アセトン生成物がライン201および202を経由して回収されてもよい。図示されてはいないが、ライン201を経由するアセトン生成物は、開裂装置122に戻され、すなわち再循環されてもよい。開裂装置122へのアセトンの追加は、ライン124を経由する粗生成物中に含まれ、粗生成物から回収されるAMSの収率を上昇すなわち増大させ得る。ライン202を経由するアセトン生成物は、貯蔵容器に向かわせてもよく、あるいは他の方法での貯蔵、輸送、および/または次なる用途のための加工をされてもよい。
【0012】
ライン202を経由するアセトン生成物は、約10ppmw(100万分の1重量部)から約100ppmwのメタノール濃度を有し得る。例えば、ライン202を経由するアセトン生成物は、最低約10ppmw、約20ppmw、約30ppmw、約40ppmw、約50ppmw、約55ppmw、または約60ppmwから、最高約65ppmw、約70ppmw、約80ppmw、約85ppmw、約90ppmw、約95ppmw、約100ppmwまでのメタノール濃度を有し得る。他の例において、ライン202を経由するアセトン生成物中のメタノール濃度は、約65ppmw、約70ppmw、約75ppmw、約80ppmw、または約85ppmwであり得る。別の例において、ライン202を経由するアセトン生成物中のメタノール濃度は、100ppmw未満、90ppmw未満、80ppm未満、70ppmw未満、60ppmw未満、または50ppmw未満であり得る。ライン201を経由するアセトン生成物の流量は、ライン202を経由するアセトン生成物の流量の最低約5wt%、約10wt%、約15wt%、または約20wt%から、最高約30wt%、約35wt%、約40wt%、または約45wt%であってもよい。
【0013】
ライン204を経由するアセトン塔底生成物は、アセトン分留システム200から回収されて、1つ以上のアセトン塔底物分離装置206に導入されてもよい。アセトン塔底物分離装置206は、1つ以上の蒸留塔、真空蒸留塔、吸着装置、サイクロン式分離装置、これらの任意の組合せ、または任意の他の分離装置であってもよく、それらを備えてもよい。アセトン塔底物分離装置206は、アセトン塔底生成物を、ライン208を経由する水性フェナート生成物と、ライン210を経由する炭化水素粗AMS生成物とに分離してもよい。ライン210を経由する粗AMS生成物または粗AMSは、1つ以上のAMS洗浄装置212内で残留苛性が洗浄され、ライン214を経由する洗浄粗AMSまたは洗浄AMSが生成されてもよい。ライン214を経由する洗浄粗AMSは、酸化装置110に再循環する目的で、AMS生成物を回収する、またはクメンを水素化するため、1つ以上のAMS分留システムおよび/または水素化システム(図示なし)内に導入されてもよい。粗AMS洗浄装置212からライン215を経由する水流、すなわち粗AMS洗浄水は、ライン208を経由する水性フェナート生成物と混合され、ライン216を経由してメタノール除去分留システム300に導入され得るプロセス水となってもよい。メタノール除去分留システム300は、1つ以上の蒸留塔すなわちメタノール除去塔(
図2)であるか、またはそれを備えてもよい。アセトン分留システム200に入るメタノールの少なくとも一部は、ライン208を経由するアセトン塔底物の水性フェナート生成物とともに出得る。残りのメタノールは、ライン210を経由する粗AMS生成物とともに出て、AMS軽油(図示なし)とともに除去され得る。例えば、アセトン塔底物分離装置206に導入されるメタノールの大部分は、ライン208を経由する水性フェナート生成物とともに除去することができ、残りのメタノールは、ライン210を経由する粗AMS生成物とともに除去することができる。
【0014】
本明細書中で用いられるように、「分留塔」及び「塔」の語は、沸点の異なる2つ以上の要素を含む混合物の選択的な分離に適した、任意のシステム、装置、またはシステムおよび/または装置の組合せを指している。このような分留塔または塔は、隔壁塔、スクラブ塔、蒸留塔、整流塔、および除去塔を含み得るが、これらに限定されない。
【0015】
ライン208を経由する水性フェナート生成物は、1つ以上のメタノール除去塔300に導入されてもよい。メタノール除去塔300が無い場合、大量のメタノール、アセトンおよび軽質炭化水素を有するフェナート生成物は、ライン213および301を経由して、中和装置126および/または脱フェノール装置304へと再循環されてもよい。メタノール除去塔300は、ライン208内の水性フェナート生成物からメタノールの少なくとも一部を除去するために、1つ以上の蒸留塔、還流ドラム、熱交換器、およびその他の設備を備えてもよい。例えば、メタノール除去塔300は、ライン208内の水性フェナート生成物からライン309を経由してメタノールまたはメタノール生成物を除去するために、メタノールの沸点温度および沸点圧力より上で稼働される蒸留塔を備えてもよい。アセトンおよび/または他の炭化水素類とともに、メタノールはライン309を経由してメタノール生成物として回収することができる。メタノール除去生成物は、ライン301を経由して除去され、および/またはライン303を経由して中和装置126に導入され、かつライン302を経由して1つ以上の脱フェノール装置304に導入されてもよい。ライン301を経由するメタノール除去生成物は、100ppmw未満、90ppmw未満、80ppmw未満、70ppmw未満、60ppmw未満、約50ppmw未満、40ppmw未満、30ppmw未満、約25ppmw未満、20ppmw未満、15ppmw未満、約10ppmw未満、約5ppmw未満、または約1ppmw未満のメタノール濃度を有し得る。
【0016】
メタノール除去塔300は、ライン202を経由するアセトン生成物のメタノール濃度を低下させるのに加えて、ライン130を経由する中和粗生成物とライン204を経由するアセトン塔底生成物のメタノール濃度を低下させることができる。例えば、ライン208を経由する水性フェナート生成物をメタノール除去塔300に導入することにより、フェナート生成物がメタノール除去塔300に導入されない場合のライン130を経由する中和粗生成物のメタノール濃度と比較して、ライン130を経由する中和粗生成物のメタノール濃度を約10wt%、約20wt%、約30wt%、または約40wt%から約50wt%、約55wt%、約60wt%または約65wt%まで低下させることができる。一例においては、ライン208を経由する水性フェナート生成物をメタノール除去塔300に導入することにより、フェナート生成物がメタノール除去塔300に導入されない場合のライン204を経由するアセトン塔底生成物のメタノール濃度と比較して、ライン204を経由するアセトン塔底生成物のメタノール濃度を、約10wt%、約20wt%、約30wt%、または約40wt%から、約50wt%、約55wt%、約60wt%または約65wt%まで低下させることができる。別の例においては、ライン208を経由する水性フェナート生成物をメタノール除去塔300に導入することにより、フェナート生成物がメタノール除去塔300に導入されない場合のライン202を経由するアセトン生成物のメタノール濃度と比較して、ライン202を経由するアセトン生成物のメタノール濃度を約10wt%、約20wt%、約30wt%、または約40wt%から約50wt%、約55wt%、約60wt%または約65wt%まで低下させることができる。
【0017】
ライン302を経由するメタノール除去生成物は、含有するフェノールの少なくとも一部を回収するために、脱フェノール装置304に導入されてもよい。脱フェノール装置304はまた、1つ以上のMHP分解装置308から、ライン306を経由して分解したMHPを受け取ってもよい。脱フェノール装置304は、当該装置に導入された1種以上の供給材料中に存在するフェノールの少なくとも一部を分離することができ、例えばライン128を経由して、ナトリウムフェナートとしてフェノールを回収することができる。上記で論じ、説明したように、ライン128を経由するナトリウムフェナートは、次に中和装置126に導入することができる。脱フェノール装置304はまた、ライン305を経由する廃水を生じ得る。ライン305を経由する廃水は、最低約0.1wt%、約0.2wt%、約0.25wt%、約0.3wt%、または約0.34wt%から最高約0.36wt%、約0.4wt%、約0.45wt%、約0.5wt%、または約0.6wt%までの範囲のメタノール濃度を有し得る。例示的な脱フェノール装置は、米国特許第6,824,687号において論じられ、説明されているようなものであってもよい。
【0018】
MHP分解装置308は、1つ以上のクメン除去/洗浄装置312からライン310を経由して廃苛性を受け取り、1つ以上の空気分離装置または使用済み空気分離装置318からライン320を経由してクメンを受け取ってもよい。MHP分解装置308は、使用済み空気分離装置318からライン320を経由した水性洗浄剤を、ライン310を経由した廃苛性と混合、配合、あるいは接触させてもよい。MHPの分解により、水素、蟻酸、ホルムアルデヒド、および水が生じ得る。MHPの分解による水性生成物は、ライン306を経由して脱フェノール化に方向付けられてもよい。
【0019】
クメン除去/洗浄装置312は、濃縮装置118からライン314を経由してクメンを受け取り、および/または使用済み空気分離装置318からライン316を経由してクメンを受け取ってもよい。クメン除去/洗浄装置312は、酸化装置110内で生じた微量のフェノールおよび蟻酸などの有機酸の少なくとも一部を除去して、酸化反応の効率性を向上させ、下流部における腐食を防止することができる。クメン除去/洗浄装置312は、1つ以上のドラム、および/またはライン314を経由するクメンを用いてクメンハイドロパーオキサイド(CHP)を抽出することができるクメン抽出塔を備えてもよい。クメン除去/洗浄装置312はまた、ライン314を経由するクメンおよび/またはライン121(図示なし)を経由するクメンから、クメンを受け取ってもよい。クメン除去/洗浄装置312は、酸化装置110に導入され得るクメンを、ライン112を経由して供給してもよく、またライン310を経由して廃苛性をMHP分解装置308に供給してもよい。例示的なクメン洗浄装置は、米国特許第5,220,103号において論じられ、説明されているようなものであってもよい。
【0020】
使用済み空気分離装置318は、酸化装置110からライン330を経由して使用済み空気を受け取ってもよい。ライン330を経由する使用済み空気は、最低約20kg/hr、約25kg/hr、約30kg/hr、約35kg/hr、または約38kg/hrから最高約40kg/hr、約45kg/hr、約50kg/hr、約55kg/hr、または約60kg/hrまでの範囲内のメタノール流量を有し得る。使用済み空気分離装置318は、ライン330を経由する使用済み空気から炭化水素類の少なくとも一部を除去するように構成された1つ以上のドラム、吸着装置、蒸留塔、サイクロン式分離装置、および/または他の構造物を備えてもよい。使用済み空気分離装置318は、ライン330を経由する使用済み空気から、クメンおよび/または他の炭化水素類を除去してもよい。ライン316を経由するクメンは、使用済み空気分離装置から取得してクメン除去/洗浄装置312に導入され、ライン320を経由する水性洗浄剤を介してクメンが取得されてもよい。ライン320を経由する水性洗浄剤を介したクメンは、MHP分解装置308に導入されてもよい。使用済み空気分離装置318はまた、ライン332を経由して、分離された使用済み空気を生じさせる。
【0021】
図2は、1つ以上の実施形態により、プロセス水から、メタノール、アセトン、および軽質炭化水素類を分留する、例示的なメタノール除去分留システム300を示している。メタノール除去分留システム300は、1つ以上の分留塔410を備えてもよい。分留塔410(すなわち「メタノール除去塔」(「MRC」))は、いかなる角度で配置された、いかなる形状の、および/またはいかなる長さ対直径(L/D)比を有する外郭構造またはハウジング411をも備えうる。説明を明確かつ簡略にするため、分留塔410は、L/D比が1を超える、垂直で円筒状の分留塔410を参照して更に説明される。
【0022】
分留塔410は、第一のすなわち「上」端部422と、第二のすなわち「底」端部424とを有してもよい。ライン216を経由するプロセス水は、塔入口部426を経由して分留塔410の内容積部412内に導入されてもよい。ライン216を経由するプロセス水は、単一の源からであっても、ライン208を経由する水性フェナート生成物とライン215を経由する粗AMS洗浄水とのような、水性プロセス流の組合せからであってもよい。ライン216を経由するプロセス水はまた、(図示なし)中和剤水性洗浄剤とライン306を経由する分解したMHPとを含んでもよい。分留塔410は、第一端部422と第二端部424との間に温度勾配が存在し得るように、加熱されてもよい。ライン216を経由するプロセス水の低沸点成分が、第一端部422に対して方向付けられる一方、プロセス水の高沸点成分は、第二端部424に対して方向付けられてもよい。高沸点成分は、メタノール、アセトン、およびアルデヒドのような軽質炭化水素類を含み得る。ライン216を経由するプロセス水の低沸点成分の少なくとも一部は、塔頂アセンブリ439を経由して回収され得る。塔頂アセンブリ439は、凝縮器442と、凝縮器442および分留塔410の近位の第一端部422と流体連結されたライン440と、を備えてもよい。プロセス水の低沸点成分は、ライン440を経由して回収され、凝縮器442に導入されてもよい。凝縮器442は、シェルアンドチューブ熱交換器、クロスフロー熱交換器等の適切なタイプの熱交換器であれば、どのようなものでもよい。凝縮器442は、ライン444を経由して冷却水を受け取り、熱媒体を提供してもよい。これにより、凝縮器442は、ライン440を経由して回収される軽質成分の少なくとも一部を凝縮させ、ライン446を経由する凝縮軽質成分を生成することができる。
【0023】
ライン446を経由する凝縮軽質成分は、次に、凝縮軽質成分用の「バッファ」貯蔵部を提供し得る1つ以上の還流ドラム448に向けられてもよい。凝縮軽質成分は、ライン451を経由して排出されてもよい。ライン451内の凝縮軽質成分は、ライン309を経由する蒸留分と、ライン454を経由する還流分とに二分するか、按分するか、またはその他のやり方で分配されてもよい。ライン452を経由して蒸留分として供給される凝縮軽質成分の量は、ライン454を経由して還流分として供給される量と比較して、同じでも異なっていてもよい。ライン454を経由する還流分は、ポンプ450を経由して汲み上げられ、収率を向上させるために、ライン456を経由して還流として内容積部412に再循環されてもよい。ライン309を経由する蒸留分は、回収プロセス(図示なし)からの他の軽質炭化水素洗浄剤と混合されてもよく、別々に処理されてもよい。分留塔410は、圧力下で稼動しても真空下で稼動してもよい。例えば、分留塔410は、約20kPa、約40kPa、または約60kPaから、約100kPa、約120kPa、または約150kPaまでの圧力下で稼動してもよい。
【0024】
ライン460を経由する塔底生成物は、分留塔410の第二端部424から回収されてもよい。ライン460を経由する塔底生成物は、ライン461を経由してリボイラ462に導入されてもよい。リボイラ462は、シェルアンドチューブ熱交換器、クロスフロー熱交換器等を含む、どのようなタイプの熱交換器であってもよい。りボイラ462はまた、ライン464を経由して熱交換流体を受け取ってもよい。例えば、ライン464を経由する熱交換流体は、いかなる他のシステムまたは装置において生じる最終生成物または副生成物として供給される蒸気であってもよい。ライン464を経由する蒸気は、ライン461を経由する塔底生成物をリボイラ462内で過熱して、ライン468を経由する再加熱された塔底生成物を生じさせ得る。ライン468を経由する再加熱された塔底生成物は、次に分留塔410に戻されて、分留塔410に熱を供給してもよい。ライン460を経由する塔底生成物の一部はまた、ライン301に向けられてもよい。
図1に示すように、ライン301を経由する塔底生成物は、ライン303を経由して中和装置126に導入され、および/またはライン302を経由して脱フェノール装置304に導入されてもよい。
【0025】
分留塔410の内容積部412は、空であっても、1つ以上の充填材(fill materials)(図示なし)により一部充填されても、完全に充填されてもよい。例示的な充填材は、トレイ、充填物(packing)、またはその組合せを含み得るが、それらに限定されない。例えば、分留装置410は、1つ以上のトレイ(4つが図示されている:414、416、418、420)を備えてもよい。トレイ414、416、418、420は、内容積部412内に配置されたより多くのトレイのうちの4つを示し得る。例えば、トレイ414は、分留装置410の第一端部すなわち「上」端部422から一番目のトレイ辺りからであってもよい。トレイ416は、2番目、3番目、4番目、5番目、10番目、15番目辺り、もしくはそれ以降、すなわち第一端部422から他の何番目のトレイをも示し得る。例えば、内容積部412内のトレイの総数は約10、約15、約20、約25、または約30であってもよい。具体的な例において、内容積部412内のトレイの総数は約24であってもよい。別の例において、内容積部412内に配置されるトレイの総数は、最低約5、約10、約15、約20、または約25から最高約30、約35、約40、約45、約50、約55、または約60の範囲にわたってもよい。トレイ418および420は、より大きい数のトレイを示し得るものであり、例えば、トレイ420は、分留装置410の第二端部すなわち「底」端部424に最も近いトレイを示し得る。
【0026】
本明細書中で用いられるように、「トレイ」の語は、分留塔410内で気相と液相との間における接触を高め得る1つ以上のタイプのトレイを含み得るが、これらに限定されない。例示的なトレイは、有孔トレイ、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、フローティングバルブトレイ、固定バルブトレイ、トンネルトレイ、カートリッジトレイ、デュアルフロートレイ、バッフルトレイ、シャワーデッキトレイ、ディスク・ドーナツ型トレイ、オービットトレイ、馬蹄型トレイ、カートリッジトレイ、スナップインバルブトレイ、チムニートレイ、スリットトレイ、またはこれらの任意の組合せを含み得るが、それらに限定されない。
【0027】
本明細書中で用いられるように、「充填材」(packing material)の語は、分留塔410内に配置された1つ以上のタイプの規則的および/または不規則な形状の材料を含み得るが、これに限定されない。充填材は、分留塔410内における有効表面積を増加させることができ、それにより分留塔410内における液相と気相との間の物質移動を向上させることができる。充填材は、例えば、金属、非金属、セラミック、ガラス、またはこれらの任意の組合せなど、あらゆる適した材料から作成することができる。市販の不規則充填材の具体的な例は、IMTP(R)、INTALOX(R)、ULTRA(R)、ラシヒリング、A−Pakリング、サドルリング、Nutter Rings
TM、I−Rings
TM、C−Rings
TM、P−Rings
TM、R−Rings
TM、またはこれらの任意の組合せを含み得るが、これらに限定されない。市販の規則充填物(structured packing)の具体的な例は、規則充填物(structured packing)、波板、波型シート、金網、格子、ワイヤーメッシュ、一枚型ハニカム構造物、またはこれらの任意の組合せを含み得るが、それらに限定されない。例えば、適した規則充填物は、FLEXIPAC(R)、FLEXIPAC(R) HC(R)、INTERLOX(R)、モンツパック、Mellapak
TM、MellapakPlus
TM、GT−PAK
TM、GT−OPTIM
TMPAK、等を含み得るが、これらに限定されない。
【0028】
充填材(fill material)(例えばトレイ414、416、418、420)は、多成分の流体の物質移動および/または分離を向上させ得る。内容積部412内の充填材および/または充填パターンは、1つ以上の規則充填材および/または不規則充填材を含み得る。内容積部412内には、2種類以上の充填材を配置してもよい。例えば、内容積部412は、供給材料導入ラインすなわち塔入口部426より下に、任意の不規則充填物を収容し、塔入口部426より上に1つ以上のトレイを収容してもよい。
【0029】
分留塔410は、分留塔410の温度、圧力、および内容物と、物理的および化学的に適合する1つ以上の金属材料および/または非金属材料で作ることができる。適切な金属材料は、カーボンおよびステンレススチールを含む鉄合金、およびニッケル、HASTELLOY(R)、INCONEL(R)、INCOLOY(R)、タンタル等のような非鉄合金を含み得るが、これらに限定されない。
【0030】
さらに、分留塔410は、ライン460を経由する塔底生成物のアセトン含量を低下させるのに十分な温度で稼動させてもよいが、そのような温度は、塔底物のメタノール含量をも低下させ得る。
【0031】
図3は、1つ以上の実施形態に従って、アセトン分留塔のライン460(
図2)を経由する塔底生成物中のアセトンと、ライン202(
図1および2)を経由するアセトン生成物中のメタノールとの関係をグラフ表示したものである。図から分かるように、ライン460を経由する塔底生成物中のアセトンの増加は、ライン202を経由するアセトン生成物中のメタノールを減少させ得る。この結果、例えば下流のBPA生成における樹脂触媒の寿命を延ばすことができる。
【0032】
図4は、アセトン分留システム200内の水の追加と、ライン202を経由するアセトン生成物中のメタノールとの関係をグラフ表示したものである。図から分かるように、ライン460を経由する塔底物として回収されるアセトンの増加は、ライン202(
図1)を経由するアセトン生成物中のメタノール濃度を低下させ得る。この結果、例えば下流のBPA生成における樹脂触媒の寿命を延ばすことができる。メタノール除去塔410は、ライン204を経由するアセトン塔底生成物中のアセトン含量が高い状態、および/またはアセトン分留システム200内のアセトン生成物塔(APC)(図示なし)に更に水を追加した状態でのアセトン分留システム200の稼動を可能にし得る。メタノール除去塔410は、経路208を経由する純水性洗浄剤からアセトン含量およびメタノール含量の両方を大幅に減らすことにより、廃棄物処理施設への下流での化学的負荷を低減することができる。
予測実施例
本発明の実施形態は、以下の予測実施例とともに更に説明し得る。2つの模擬例が提供されている。実施例1は、メタノール除去塔を用いずにクメンからアセトンを生成する従来のシステムおよび方法を対象としている。実施例2は、
図1に関して上記で説明したように、メタノール除去塔を用いてクメンからアセトンを生成するシステムおよび方法を対象としている。
【0033】
約19,930kg/hrのアセトン生成物のアセトン生成に対するメタノール流量(kg/hr)が、以下の表にまとめられている。実施例1はメタノール除去塔を備えないため、ライン208および309を備えていない。実施例2はこれらのラインを備え、それらのラインは
図1に示されている。
【0034】
【表1】
本表は、実施例2の幾つかのライン、具体的にはライン130、204、301、302および303におけるメタノール含量が、実施例2においてメタノール除去塔を備えることによって大幅に低下することを示している。さらに、アセトン生成物中のメタノールは、実施例1における約150ppmwから実施例2における約75ppmwまで低下し得る。これにより、BPAを生成するために用いられる下流の樹脂触媒の使用寿命を約50%以上延ばすことができる。
【0035】
本開示の実施形態は、さらに以下の項のいずれか1つ以上に関する。
1.アセトン中のメタノール濃度を低下させる方法であって、クメンを酸化および開裂して、粗アセトン生成物を生成することと、前記粗アセトン生成物を中和装置において中和して、中和粗アセトン生成物を生成することと、前記中和粗アセトン生成物をアセトン分留塔において分留して、アセトン生成物およびアセトン塔底生成物を生成することと、前記アセトン塔底生成物からメタノールを除去して、メタノール除去生成物を生成することと、前記メタノール除去生成物を前記中和装置、脱フェノール装置、またはその両方に導入することとを含む方法。
【0036】
2.前記アセトン塔底生成物からメタノールを除去することは、メタノール除去塔において、前記アセトン塔底生成物の少なくとも一部を分離することと、前記メタノール除去塔から、塔頂物としてのメタノール生成物および塔底物としての前記メタノール除去生成物を取り出すことと、を含む、項1に記載の方法。
【0037】
3.前記アセトン塔底生成物からメタノールを除去することは、前記アセトン塔底生成物をアセトン塔底物分離装置に導入して、水性フェナート生成物および粗AMS生成物を得ることと、前記水性フェナート生成物をメタノール除去塔に導入することと、前記メタノール除去塔から、塔頂物としてのメタノール生成物および塔底物としての前記メタノール除去生成物を取り出すこととを含む、項1または2に記載の方法。
【0038】
4.前記粗AMS生成物をAMS洗浄装置に導入して、洗浄粗AMSおよび粗AMS洗浄水を得ることを更に含み、前記アセトン塔底生成物からメタノールを除去することは、前記水性フェナートと前記粗AMS洗浄水とを混合してプロセス水を得ることと、前記プロセス水を前記メタノール除去分留塔に導入することとを更に含む、項3に記載の方法。
【0039】
5.前記メタノール除去生成物の第一の部分が前記中和装置に導入され、前記メタノール除去生成物の第二の部分が前記脱フェノール装置に導入される、項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
6.前記アセトン生成物は約10ppmwから約100ppmwのメタノール濃度を有する、項1から5のいずれか1つに記載の方法。
7.前記アセトン生成物は約50ppmwから約100ppmwのメタノール濃度を有する、項1から6のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
8.前記メタノール除去生成物は100ppmw未満のメタノール濃度を有する、項1から7のいずれか1つに記載の方法。
9.前記脱フェノール装置から約0.1wt%から約0.6wt%のメタノールを含む廃水を取り出すことを更に含む、項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
10.アセトン中のメタノール濃度を低下させる方法であって、クメンを酸化および開裂して、粗アセトン生成物を生成することと、前記粗アセトン生成物を中和装置において中和して、中和粗アセトン生成物を生成することと、前記中和粗アセトン生成物をアセトン分留塔において分留して、約50ppmwから約100ppmwのメタノール濃度のアセトン生成物およびアセトン塔底物を生成することと、前記アセトン塔底物をアセトン塔底物分離装置に導入して、水性フェナート生成物および粗AMS生成物を得ることと、前記水性フェナート生成物をメタノール除去分留塔に導入することと、前記メタノール除去塔から塔頂物としてのメタノール生成物および塔底物としてのメタノール除去生成物を取り出すことと、前記メタノール除去生成物を前記中和装置、脱フェノール装置、またはその両方に導入することとを含む方法。
【0043】
11.前記メタノール除去生成物の第一の部分が前記中和装置に導入され、前記メタノール除去生成物の第二の部分が前記脱フェノール装置に導入される、項10に記載の方法。
【0044】
12.前記メタノール除去生成物は100ppmw未満のメタノール濃度を有する、項10または11に記載の方法。
13.前記脱フェノール装置から約0.1wt%から約0.6wt%のメタノールを含む廃水を取り出すことを更に含む、項10から12のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
14.前記粗AMS生成物をAMS洗浄装置に導入して、洗浄粗AMSおよび粗AMS洗浄水を得ることと、前記水性フェナート生成物と前記粗AMS洗浄水を混合してプロセス水を得ることと、前記プロセス水を前記メタノール除去分留塔に導入することとを更に含む、項10から13のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
15.アセトンを生成するシステムであって、酸化剤およびクメンを受け取って酸化CHP生成物を生成するように構成された酸化装置と、前記酸化装置と流体連結され、前記酸化CHP生成物およびクメンを受け取って濃縮CHP生成物を生成するように構成された濃縮装置と、前記濃縮装置と流体連結され、前記濃縮装置から前記濃縮CHP生成物を受け取って粗アセトン生成物を生成するように構成された開裂装置と、前記開裂装置と流体連結され、前記粗アセトン生成物を受け取って中和粗アセトン生成物を生成するように構成された中和装置と、前記中和装置と流体連結され、前記中和粗アセトン生成物を受け取ってアセトン生成物およびアセトン塔底生成物を生成するように構成されたアセトン分留塔と、前記アセトン分留塔および前記中和装置、脱フェノール装置、またはその両方と流体連結されたメタノール除去塔であって、メタノール生成物およびメタノール除去生成物を生成するように構成されたメタノール除去塔と、前記メタノール除去生成物を前記中和装置、前記脱フェノール装置、またはその両方に導入するように構成された1つ以上のラインと、を備えるシステム。
【0047】
16.前記メタノール除去塔は、塔頂アセンブリ内の前記アセトン塔底生成物からメタノール、アセトンおよび軽質炭化水素成分を回収するように構成された、項15に記載のシステム。
【0048】
17.前記濃縮装置は、クメン生成物および前記濃縮CHP生成物を生成するように構成された、項15または16に記載のシステム。
18.前記濃縮装置および前記酸化装置と流体連結されたクメン除去/洗浄装置であって、前記濃縮装置から前記クメン生成物を受け取って、前記酸化装置用の前記クメン、および廃水を供給するように構成されたクメン除去/洗浄装置を更に備える、項17に記載のシステム。
【0049】
19.前記アセトン分留塔は、前記クメン除去/洗浄装置と流体連結されて、前記クメン除去/洗浄装置から前記廃水を受け取る、項18に記載のシステム。
20.前記アセトン生成物は約50ppmから約100ppmのメタノール濃度を有する、項15から19のいずれか1つに記載のシステム。
【0050】
ある実施形態および特徴が、一連の数値的上限および一連の数値的下限を用いて説明されてきた。当然のことながら、別段の指定がない限り、任意の下限値から任意の上限値までの範囲が考えられる。特定の下限値、上限値および範囲は、以下の1つ以上の請求項において現れる。全ての数値は、「約」または「概ね」表示された数値であり、当業者に予測され得る実験上の誤差およびばらつきを考慮されたい。
【0051】
種々の用語が上記で定義されている。請求項において用いられている用語が上記で定義されていない範囲において、その用語は、少なくとも1つの印刷物または発行された特許に反映されているように、当業者がその用語に与えてきた最も広い定義を与えられるべきである。さらに、本出願において引用された全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、それらの開示が本出願と矛盾しない限りにおいて、また参照による組み込みが許可される全ての管轄区域について、参照により全内容が組み込まれる。
【0052】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明のその他および更なる実施形態は、本発明の基本的範囲から逸脱することなく考案することが可能であり、本発明の基本的範囲は、以下の請求項により決定される。