(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193864
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】高濃度のHF水溶液を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 7/19 20060101AFI20170828BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
C01B7/19 C
C01B7/19 D
B01D53/14 200
【請求項の数】10
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-531949(P2014-531949)
(86)(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公表番号】特表2014-531392(P2014-531392A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012056269
(87)【国際公開番号】WO2013048859
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】13/245,394
(32)【優先日】2011年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ユオン
(72)【発明者】
【氏名】ホーワス,リチャード・デュリック
(72)【発明者】
【氏名】コットレル,スティーヴン・エイ
【審査官】
飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−107570(JP,A)
【文献】
特開平05−279277(JP,A)
【文献】
特表2000−513723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 7/19
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロセス流をHF水溶液でスクラビングし、ここで当該HF水溶液の温度を150°F(66℃)以上かつ有機フルオロカーボンプロセス流中の有機物質の凝縮温度以上に維持して、それによって有機物質が前記HF水溶液中へ溶解するのを阻止し;そして
(b)工程(a)で形成されたHF水溶液を低有機含量のHF水溶液として分離する;
工程を含む、HFを有機フルオロカーボンプロセス流中のその混合物から分離して低有機含量のHF水溶液を形成する方法。
【請求項2】
低有機HF溶液が38重量%以下のHFである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低有機HF溶液が少なくとも40重量%のHFである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
低有機HF溶液が少なくとも49重量%のHFである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
分離されたHF溶液の有機含量が500ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
分離されたHF溶液の有機含量が250ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
分離されたHF溶液の有機含量が150ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
分離されたHF溶液の有機含量が100ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(a)HFを含む有機フルオロカーボンプロセス流を水性スクラバーシステムに通し;
(b)HFを含む有機フルオロカーボンプロセス流を、150°F(66℃)以上かつプロセス流中のフルオロカーボンの凝縮温度以上の温度に加熱したHF水溶液でスクラビングし;そして
(c)HFとフルオロカーボンプロセス流を分離する;
工程を含む、有機フルオロカーボンプロセス流からHFを除去してHF水溶液を形成する方法。
【請求項10】
スクラビングを2つのセクションを含むスクラバーシステム内で行い、底部セクションは、HF水溶液を用いて、有機混合物の凝縮温度よりも高い温度で運転してスクラビングし、頂部セクションは、底部セクションのHF水溶液よりも低い濃度を有するHF水溶液を用いて運転する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フルオロカーボン化合物を製造するために用いるプロセス流中にフッ化水素(HF)を存在させるフルオロカーボンプロセスにおいては、水でスクラビングすることによってプロセス流からHFを除去することによって、相当量の溶存有機物質を含むHF水溶液がしばしば得られる。
【背景技術】
【0002】
溶存有機物質の存在のために、かかるHF水溶液のその後の販売が制限される可能性がある。同様に、かかる溶液の酸性内容物及び有機内容物の両方に適合させるために特別な輸送容器が必要な可能性がある。また、かかる溶液に関するより広い販路を見出すためには、高い酸濃度、即ち35重量%より多いHFが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、(1)低い溶存有機物質含量を有するHF水溶液、及び(2)同様に低い溶存有機物質含量を有する高濃度HF溶液を製造することによってこれらの必要性を満足する。
【0004】
本発明は、フルオロカーボンを含むプロセス流からHFを除去し、それによって高いHF濃度及び低い有機含量の両方を有する単離されたHF水溶液を形成するために用いる方法及びシステムに関する。プロセス流は高温のHF水溶液でスクラビングし、ここで温度はプロセス流中の有機物質の露点以上に維持して、それによって有機物質が単離されるHF溶液中に溶解するのを阻止する。
【0005】
本明細書において用いる「低有機含量」という用語は、本発明にしたがって処理した単離されたHF水溶液中に残留する有機物質の量に関する。通常は、HF溶液の低有機含量とは、約500ppm未満、好ましくは約250ppm未満、より好ましくは約150ppm未満、最も好ましくは約100ppm未満の有機成分である。
【0006】
一態様においては、本発明は、有機混合物の露点凝縮温度よりも高い底部温度区域で運転するように設計されているスクラバーシステムを用いて有機プロセス流からHFを除去するために用いる方法及びシステムを提供する。この態様においては、スクラバーシステムは2つのセクションを含み、底部セクションはHFの予め選択された濃度を有するHF水溶液でスクラビングし、頂部セクションは底部セクションのHF溶液よりも低いHF濃度を有するHF水溶液でスクラビングする。更に、底部セクションは、スクラビングするプロセス流中の有機成分の露点凝縮温度よりも高い温度で運転する。
【0007】
他の態様においては、本発明は、再循環したHF水溶液(例えば約38重量%以下のHF)を、HFを充填した液体有機流と接触させて有機流からHF内容物を抽出する方法及びシステムを包含する。得られるHF溶液は、通常は38重量%の共沸混合物組成よりも大きいHF含量を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の1つのプロセスにおいて有用な2段階スクラバーシステムを示す。
【
図2】
図2は、本発明の1つのプロセスにおいて有用な液体抽出ユニットの運転を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本発明の一態様は、有機混合物の露点凝縮温度よりも高い底部温度区域で運転するように設計されているスクラバーシステムを用いて、有機生成物流からHFを除去するために用いる方法及びシステムに関する。
【0010】
スクラバーシステムは2つのセクションを含み、底部セクション(1)は、HF水溶液を用い、有機混合物の露点凝縮温度よりも高い温度で運転してスクラビングし、頂部セクション(2)は、底部セクションのHF溶液よりも低い濃度を有するHF水溶液を用いて運転する。
【0011】
この方法及びシステムは、高い全HF除去効率を維持しながら、溶存有機物質を実質的に含まない結果物のHF水溶液を与える。得られるHF水溶液は大きな販路を有し、酸水溶液の供給のために用いられている従来の容器を用いて輸送することができる。
【0012】
有機流が15モル%未満のHF濃度を含む通常のフルオロカーボン製造プロセスにおいては、本方法及びシステムは、一般に、ほぼこの濃度レベルにおいてHF/水共沸混合物の組成が形成されるために、得られるHF水溶液が約38重量%以下のHFに制限される。
【0013】
図2に示すように、本発明の他の態様は、低い溶存有機物質レベルをなお維持しながらHF濃度を向上させる。この濃度が向上した生成物溶液も大きな販路を有する。
本発明のこの態様は、再循環しているHF水溶液(例えば約38重量%以下のHF)を、HFを充填した液体有機流と接触させて有機流からHF内容物を抽出する方法及びシステムを包含する。得られるHF溶液は、通常は38重量%の共沸混合物組成よりも大きいHF含量を達成する。
【0014】
この方法及びシステムにおいては、HFを多段階気液平衡分離器に供給する。この装置は、HFと水の混合物を2つの蒸気流:HFと水の共沸混合物の組成の38重量%よりも大きいHF含量(例えば50重量%より多いHF)を有する第1の流れ;及び38重量%のHF共沸混合物組成に近接しているが、未だこれよりも大きいHF含量(例えば約40重量%より多いHF)を有する第2の水性HF流;に分離する。
【0015】
第2の水性HF流(38重量%のHF共沸混合物組成に近接しているがこれよりも高い)は、再循環して上記に記載のようにしてより多くのHFを抽出する。HF内容物に富み、38重量%のHFの共沸混合物組成よりも高い(例えば50重量%よりも多いHF)第1の蒸気流を、凝縮するか又は水によって吸収するか或いは凝縮蒸気によって吸収して、例えば約40重量%のHFより高い濃度を有する商業的に望ましい高濃度のHF水溶液を形成する。
【0016】
吸収工程は多段階吸収器内で行い、形成されるHF溶液を高温(例えば有機物質の露点付近か又はこれよりも高い温度)に維持して、有機物質が生成物HF溶液中に溶解するのを排除する。多段階吸収器から排出される蒸気は有機物質及び相当量のHFを含む。この有機流は再捕捉及び再循環して、上記に記載のようにHF内容物を抽出することができる。
【0017】
この方法は、有機流からの高い全HF除去効率を維持しながら、溶存有機物質を実質的に含まず、より高いHF濃度を有する結果物のHF水溶液を与える。得られるHF水溶液はより広い販路を有し、酸水溶液の供給のための従来の容器を用いて輸送することができる。
【実施例】
【0018】
第1の態様に関する実施例:
図1に示すように、90°Fの露点凝縮温度を有し、約200ポンド/時のHFを含む約2,000ポンド/時のフルオロカーボン有機混合物を、2段階スクラバーシステムの第2段階の底部セクションに供給する。
【0019】
約150°Fの38%HF溶液を、2段階スクラバーシステムの第2段階の頂部セクションに循環する。有機流中のHFの大部分は、この高温循環HF溶液によって除去される。得られる高温のHF溶液は、低いレベル、即ち約500ppm未満、好ましくは約250ppm未満、より好ましくは約150ppm未満、最も好ましくは約100ppm未満の溶存有機物質を含む。この物質は、2段階スクラバーシステムのこの段階から単離することができ、販売又は所望の他の使用のために好適である。
【0020】
2段階スクラバーの第2段階の頂部セクションから排出され、若干の残留するスクラビングされてないHFを含む有機成分は、2段階スクラバーシステムの第1段階の底部セクションに流れる。このセクションにおいては、水又は生成物溶液よりも低いHF濃度を有するHF水溶液を用いて、残留HFを有機成分からスクラビングする。これらの2つの物質は、次に2段階スクラバーシステムのこの段階から単離することができ、販売又は所望の他の使用のために好適である。
【0021】
第2の態様に関する実施例:
図2に示すように、90°Fの露点凝縮温度を有し、200ポンド/時のHFを含む約2,000ポンド/時の液体フルオロカーボン有機混合物(3)を、有機物質及びHFの少量の再循環流(27)と混合する。得られる流れ(20)を、1,500ポンド/時の39重量%再循環HF溶液(25)と混合する。これを次に50°Fより低い温度で相分離する。一般に、このシステムは液体抽出ユニット操作として知られている。抽出は、記載されているように単一段階として行うことができ、或いは多段階接触器にして抽出効率を向上させることができる。
【0022】
その抽出したHF内容物の大部分を有する液体有機混合物層(22)は、更なる精製のために低圧スクラビング(例えば
図1)に送る。この時点で44重量%のHFに富化され、未だ若干の溶存有機物質を含む可能性があるHF水溶液層(21)は、他のプロセス流を用いて熱を有効利用して温度を上昇させ、多段階流下膜式交換器に送って、そこで溶液を、86重量%のHF及び残余量の水蒸気並びに少量の有機物質を含む塔頂ガス(23)、並びに38重量%のHF/水共沸混合物組成付近であるがこれよりも高い39重量%のHFの塔底水溶液(24)に分離する。この溶液(24)は、次に熱を有効利用し、冷却し、再循環(25)して、流入液体有機流からより多くのHFを抽出する。
【0023】
塔頂蒸気ガス(23)は、場合によっては凝縮器を有する多段階吸収器に送る。水又は水蒸気(26)を吸収器の種々の位置において導入して、HFを吸収又は濃縮して50重量%溶液(28)にする。より高い濃度が所望の場合には、より少ない水又は水蒸気を加える。吸収器の塔底物は150°Fより高く維持して有機物質を取り除く。得られる高温のHF溶液生成物(28)は低いレベルの溶存有機物質を含み、冷却した後に販売のために発送することができる。
【0024】
多段階吸収器から排出される蒸気(27)は、有機物質及び相当量のHFを含む。この有機流(27)は再捕捉及び再循環してそのHF内容物を抽出することができる。
好ましい態様を参照して本発明を特に示し且つ記載したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正を行うことができることは当業者に容易に認識されるであろう。特許請求の範囲は、開示されている態様、上記で議論したこれらの代替物、及びこれらに対する全ての均等物をカバーするように解釈されると意図される。