(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193875
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】光学評価のための方法およびシステム、ならびに光学検出器
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20170828BHJP
G01N 29/26 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
G01H9/00 A
G01N29/26
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-543976(P2014-543976)
(86)(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公表番号】特表2015-505362(P2015-505362A)
(43)【公表日】2015年2月19日
(86)【国際出願番号】GB2012052965
(87)【国際公開番号】WO2013079960
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】1120774.3
(32)【優先日】2011年12月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511093498
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノッティンガム
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シャープレス ステフン
(72)【発明者】
【氏名】ライト ローガー
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特表平04−502367(JP,A)
【文献】
特開平07−270323(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0062720(US,A1)
【文献】
特開2010−071888(JP,A)
【文献】
山脇 寿,レーザ超音波と非接触材料評価,溶接学会誌,1995年,第64巻 第2号,P.24−28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00−17/00
G01N 29/00−29/52
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ超音波システム用のナイフエッジ光学検出器であって、複数のピクセルと、第1出力と、第2出力と、を備え、各ピクセルは、そのピクセルに入射する光を検出し、その光の強度を示す信号を発生するように動作可能なフォトダイオードを備え、前記複数のピクセルは、複数のピクセルペアを備え、前記ピクセルペアの夫々は、隣接するピクセルのペアで構成され、前記光学検出器は、コンフィギュレーションモードにおいて、ピクセルペア毎に、前記ピクセルペアの第1ピクセルにより生じた前記信号を前記ピクセルペアの第2ピクセルにより生じた前記信号と比較し、前記第1ピクセルにより生じた前記強度を示す前記信号を、前記比較の結果に応じて前記第1出力または前記第2出力のいずれかに連絡するように構成される光学検出器。
【請求項2】
前記比較は、前記ピクセルペアの前記第1ピクセルに入射する光の強度が前記ピクセルペアの前記第2ピクセルに入射する光の強度より高いかどうかを判定するために用いられる請求項1に記載の光学検出器。
【請求項3】
前記複数のピクセルは、アレイを備え、前記アレイのアクティブ領域内の各ピクセルにより生じた前記強度を示す前記信号は、前記第1出力または前記第2出力のいずれかに連絡される請求項1に記載の光学検出器。
【請求項4】
実験モードでは、前記第1出力で受け取られる前記強度を示す前記信号を合計して、第1複合強度信号を生成し、前記第2出力で受け取られる前記強度を示す前記信号を合計して、第2複合強度信号を生成する請求項3に記載の光学検出器。
【請求項5】
前記実験モードにおいて、前記第2複合強度信号は、前記第1複合強度信号から差し引かれる、または、前記第1複合強度信号は、前記第2複合強度信号から差し引かれる請求項4に記載の光学検出器。
【請求項6】
前記コンフィギュレーションモードにおいて、前記比較は、前記複数のピクセルペアに亘って同時に平行して実行される請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光学検出器。
【請求項7】
前記ピクセルペアの配置は、前記ピクセルペアの夫々の前記第1ピクセルがそのピクセルペアの前記第2ピクセルに対して同じ空間関係を常に有するように周期的である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学検出器。
【請求項8】
一つのペアにおける前記第1ピクセルが、隣接ペアにおける前記第2ピクセルを構成するように、前記ピクセルペアはオーバーラップしている請求項1または請求項7に記載の光学検出器。
【請求項9】
前記複数のピクセルは、第1軸と前記第1軸に垂直な第2軸とを有する規則的な平面アレイ内に設けられ、前記比較は、前記第1軸または前記第2軸に沿って配置されたピクセルペアに基づいて行われる請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の光学検出器。
【請求項10】
前記比較は、前記第1軸に沿って配置されたピクセルペアに基づく比較と、前記第2軸に沿って配置されたピクセルペアに基づく比較との間で切り替えられるように実行される請求項9に記載の光学検出器。
【請求項11】
前記比較は、それぞれのピクセルペアの前記第1および第2ピクセル間に連結された比較手段により達成される請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の光学検出器。
【請求項12】
前記比較手段は、第1ピクセルと複数の近隣ピクセルとの間に設けられ、前記第1ピクセルの前記強度を示す前記信号は、前記複数の近隣ピクセルのうちのいずれか1つの前記強度を示す前記信号と比較される請求項11に記載の光学検出器。
【請求項13】
前記比較は、それぞれのピクセルペアの前記第1および第2ピクセルのフォトダイオードにより生じた電流の比較を含む請求項11または請求項12に記載の光学検出器。
【請求項14】
前記複数のピクセルは、アクティブ領域およびダミー領域を有するアレイを備え、前記ダミー領域のピクセルは、それらの光の強度を示す信号を前記第1または第2出力に連絡しない請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の光学検出器。
【請求項15】
光源と、光学系と、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の光学検出器とを備え、前記光学系は、前記光源からの光がサンプルを介して前記光学検出器に伝播する光路を形成する光学評価システム。
【請求項16】
テスト下のサンプル中に音波を発生させるように動作可能な励起光源を更に備える請求項15に記載の光学評価システム。
【請求項17】
前記励起光源により生じた光放射を整形するための、光学イメージング手段または空間光変調器を更に備える請求項16に記載の光学評価システム。
【請求項18】
前記光学イメージング手段または前記空間光変調器は、前記音波が焦点に集まるように前記光放射を整形するように動作可能である請求項17に記載の光学評価システム。
【請求項19】
複数のピクセルと、第1出力と、第2出力と、を有し、各ピクセルが、そのピクセルに入射する光を検出し、その光の強度を示す信号を発生するように動作可能なフォトダイオードを備えるレーザ超音波システム用のナイフエッジ光学検出器、を動作させる方法であって、前記方法は、複数ピクセルをペアにグループ分けする手順と、コンフィギュレーションモードにおいて、前記ペアの第1ピクセルにより生じた前記信号を前記ペアの第2ピクセルにより生じた前記信号と比較する手順と、前記比較の結果に応じて、前記第1ピクセルにより生じた前記強度を示す前記信号を、前記光学検出器が備える前記第1出力または前記第2出力のいずれかに連絡する手順と、を含み、前記ペアの夫々は、隣接するピクセルのペアで構成される方法。
【請求項20】
前記比較を用いて、前記ペアの前記第1ピクセルに入射する光の強度が前記ペアの前記第2ピクセルに入射する光の強度より高いかどうかを判定する手順を更に含む請求項19に記載の光学検出器を動作させる方法。
【請求項21】
前記第1出力で受け取られる前記強度を示す前記信号を合計して、第1複合強度信号を生成する手順と、前記第2出力で受け取られる前記強度を示す前記信号を合計して、第2複合強度信号を生成する手順とを更に含む請求項19又は請求項20に記載の光学検出器を動作させる方法。
【請求項22】
前記第2複合強度信号を前記第1複合強度信号から差し引く手順、または、前記第1複合強度信号を前記第2複合強度信号から差し引く手順を更に含む請求項19〜請求項21のいずれか1項に記載の光学検出器を動作させる方法。
【請求項23】
前記比較は、前記複数のピクセルペアに亘って同時に平行して行われる請求項19〜請求項22のいずれか1項に記載の光学検出器を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、光学評価のための方法およびシステムに関し、そのような方法およびシステムで使用される光学検出器にも関する。限定されるものではないが、本発明は、材料表面上の超音波の光学的検出に関する。
【0002】
超音波は、欠陥、摩耗、亀裂等に関して材料をテストするために広く利用されており、光学的に不透明な材料の検査を可能にするという重要な長所を有する。従来の(非レーザ)超音波に関する問題は、超音波を発生させて検知するためにトランスデューサとの接触が必要であるということである。これは、アクセス不能または危険な環境に対して、この方法が不適当であることを意味する。レーザ超音波は、音波を発生させ検出するためにレーザを使用して、これらの問題を解決している。一つのレーザは、熱膨張を引き起こすサンプルを加熱することにより、音を発生させる。熱膨張は、次々に音波を発生し、これは、典型的にはテスト下の材料の表面を横切って進む表面弾性波(SAW)を含む。そのような音波は、別のレーザシステムで検出することができ、このレーザシステムは、音波が表面の下を通過する時、表面形状の小さな変化を測定する。
【0003】
しかしながら、レーザ超音波は、それ自体問題がないわけではではなく、主たる一つの問題は、検査したいサンプルが多くのエンジニアリング部品のように「粗い」場合(ここでの粗いとは十分に磨かれておらず良い鏡ではないことのみを意味する)、光は無作為に散乱し、従来の光学技術では、光学ビームの下で通過している音波の存在が検出されないということである。
【0004】
滑らかな表面および粗い表面のレーザ超音波評価で使用される光学検出器を、本発明者らはここに提案する。この光学検出器は、他の状況での使用にも適用可能である。
本発明の第1の態様によれば、光学検出器であって、複数のピクセルを備え、各ピクセルが、そのピクセルに入射する光を検出し、その光の強度を示す信号を発生するように動作可能なフォトダイオードを備え、前記複数のピクセルが複数のピクセルペアを備え、前記検出器が、コンフィギュレーションモードにおいて、ピクセルペア毎に、そのペアの第1ピクセルにより生じた信号を前記ペアの第2ピクセルにより生じた信号と比較するように構成される光学検出器が提供される。
【0005】
前記光学検出器は、前記比較を用いて、前記ペアの第1ピクセルに入射する光の強度が前記ペアの第2ピクセルに入射する光の強度より高いか(低いか)どうかを判定するように動作可能であってもよい。
【0006】
前記検出器は、第1出力と第2出力とを備えていてもよく、前記第1ピクセルにより生じた強度を示す信号は、前記比較の結果に応じて前記第1出力または前記第2出力のいずれかに連絡されてもよい。例えば、第1強度信号が第2強度信号より高い場合、前記第1ピクセルからの前記信号は前記第1出力に連絡されてもよい。反対に、前記第1強度信号が前記第2強度信号より低い場合、前記第1ピクセルからの前記信号は前記第2出力に連絡されてもよい。
【0007】
前記比較は、前記複数ペアに亘って同時に平行して行われてもよい。
前記複数のピクセルは、アレイを備えてもよく、使用中、前記アレイのアクティブ領域内の各ピクセルにより生じた強度を示す前記信号は前記第1出力または前記第2出力のいずれかに連絡されてもよい。
【0008】
更に、前記光学検出器は、実験モードを備えていてもよく、実験モードにおいて、前記第1出力で受け取られる強度を示す前記信号は、第1複合強度信号を生成するように合計され、前記第2出力で受け取られる強度を示す前記信号は、第2複合強度信号を生成するように合計されてもよい。
【0009】
前記第2複合強度信号は、前記第1複合強度信号から差し引かれてもよい(またはその逆であってもよい)。
各ピクセルペアは、隣接したピクセルのペアで構成されていてもよい。前記ペアの配置は、各ペアの前記第1ピクセルがそのペアの前記第2ピクセルに対して同じ空間関係を常に有するように、周期的なものであってもよい。
【0010】
一つのペアにおける前記第1ピクセルが、隣接ペアにおける前記第2ピクセルを構成するように、前記ペアはオーバーラップしていてもよい。
前記複数のピクセルは、第1軸と前記第1軸に垂直な第2軸とを有する規則的な平面アレイ内に設けられてもよい。前記比較は、前記第1軸または前記第2軸に沿って配置されたペアに基づいて行われてもよい。前記比較は、前記第1軸におけるペアの比較と、前記第2軸におけるペアの比較との間で切り替え可能/切り替えられるように実行可能であってもよい。
【0011】
前記比較は、それぞれのペアの前記第1および第2ピクセル間に連結された比較手段により達成されてもよい。比較手段は、前記第1ピクセルと複数の近隣ピクセルとの間に設けられてもよく、前記第1ピクセルの強度信号が前記複数の近隣ピクセルのうちのいずれか1つの強度信号と比較されてもよい。
【0012】
前記比較は、それぞれのペアの前記第1および第2ピクセルのフォトダイオードにより生じた電流の比較を含んでいてもよい。
前記複数のピクセルは、アクティブ領域およびダミー領域を有するアレイを備えていてもよく、前記ダミー領域のピクセルは、それらの強度信号を前記第1または第2出力に連絡しなくてもよい。
【0013】
前記検出器は、コンフィギュレーションモードと実験モードとの間で、例えば規則的な頻度で、規則的に切り替えられてもよい。
本発明の第2の態様によれば、光学検出器であって、複数のピクセルを備え、各ピクセルが、そのピクセルに入射する光を検出し、その光の強度を示す信号を発生するように動作可能なフォトダイオードを備え、前記検出器が、第1出力と第2出力とを備え、前記検出器が、各ピクセルにより生じた強度を示す前記信号を前記第1出力または前記第2出力のいずれかに連絡するように動作可能であり、前記第1出力で受け取られる強度を示す信号が第1複合強度信号を生成するように合計され、前記第2出力で受け取られる強度を示す信号が第2複合強度信号を生成するように合計される、光学検出器が提供される。
【0014】
前記第2複合強度信号は、前記第1複合強度信号から差し引かれてもよい(またはその逆であってもよい)。
各ピクセルが接続される前記出力は、ユーザにより選択されてもよい(例えば、プログラムされてもよい)。各ピクセルが接続される前記出力は、本発明の第1の態様に関して上述したように、前記複数ピクセルの内の別のピクセルとの比較に基づき選択されてもよい。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、検出光源と、検出光学系と、本発明の第1もしくは第2の態様、または、従属節のいずれかに関して上述された光学検出器と、を備える光学評価システムが提供される。
【0016】
前記光学評価システムは、テスト下のサンプル中に音波を発生させるように動作可能な励起光源を更に備えていてもよく、また更に、前記励起光源により生じた光放射を整形するための、空間光変調器等の光学イメージング手段を備えていてもよい。前記光学イメージング手段は、前記音波が焦点に集まるように前記光放射を整形するように動作可能であってもよい。
【0017】
本発明の更なる態様によれば、複数のピクセルを有し、各ピクセルが、そのピクセルに入射する光を検出し、その光の強度を示す信号を発生するように動作可能なフォトダイオードを備える光学検出器を動作させる方法であって、前記方法は、複数ピクセルをペアにグループ分けする手順と、コンフィギュレーションモードにおいて、前記ペアの第1ピクセルにより生じた前記信号を前記ペアの第2ピクセルにより生じた前記信号と比較する手順と、を含む方法が提供される。
【0018】
前記方法は、前記比較を用いて、前記ペアの前記第1ピクセルに入射する光の強度が前記ペアの前記第2ピクセルに入射する光の強度より高いかどうかを判定する手順を更に含んでいてもよい。
【0019】
前記方法は、前記比較の結果に応じて、前記第1ピクセルにより生じた強度を示す前記信号を、第1検出器出力または第2検出器出力のいずれかに連絡する手順を更に含んでいてもよい。
【0020】
前記方法は、その第1出力で受け取られる強度を示す前記信号を合計して、第1複合強度信号を生成する手順と、その第2出力で受け取られる強度を示す前記信号を合計して、第2複合強度信号を生成する手順とを更に含んでいてもよく、前記第2複合強度信号を前記第1複合強度信号から差し引く(またはその逆の)手順を更に含んでいてもよい。
【0021】
前記比較は、前記複数のピクセルペアに亘って同時に平行して行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
次の図面を参照しつつ、本発明の実施形態を、単なる例として以下に説明する。
【
図1】
図1は、光学評価システム、特にレーザ超音波評価システムを概略的に示す。
【
図2】
図2は、
図1のシステムにおける超音波(SAW)発生を概略的に示す。
【
図3】
図3は、A.滑らかな表面およびB.粗い表面に対する、従来技術のナイフエッジ検出器に入射する反射光を概略的に示す。
【
図4】
図4は、A.光学検出器の概略図、B.光学検出器チップのレイアウト、および、C.画像Bに示す光学検出器チップの単一ピクセルのレイアウトを示す。
【
図5】
図5は、粗い表面の分析中に使用される光学検出器を示す。
【
図6】
図6は、滑らかな表面の分析中に使用される光学検出器を示す。
【
図8】
図8は、(1)従来技術のナイフエッジデバイスにより生成された粗いサンプルのスキャン(画像A)と、本明細書に記載されたタイプの光学検出器により生成された同一の粗いサンプルのスキャン(画像B)との比較、および、(2)テスト下のサンプルが機械的振動に晒された場合の同様の比較を示す(画像Cは、従来技術のナイフエッジデバイスであり、画像Dは、本明細書に記載されるような光学センサである)。
【
図9】
図9は、ピクセルのより詳細な回路図である。
【
図10】
図10は、光学検出器のコンフィギュレーション時間がどのように決定され得るかを図示する。
【
図11】
図11は、適合と測定と間の最小時間がどのように決定され得るかを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
レーザによる超音波検出のための最も単純で最も効果的な検出器の1つは、ナイフエッジ検出器である。ナイフエッジ検出器は、サンプルの表面を横切って通過する音波がサンプルの表面を動かすという事実をうまく利用している。光学ビームが表面上に向けられた場合、ビーム光は、その表面から反射され、そして音波の通過時小さな角度だけ偏向させられる。レンズアレイの形状をした光学素子は、その偏向を通過音波と同期するビームの水平運動に変換し、この水平運動は、その後、感光検出器により検出される。従来のナイフエッジ、または、
図3に示されるような分離したフォトダイオード2のいずれかを使用して、ビーム偏向を検知することが可能である。
【0024】
滑らかな表面の場合、反射光は、
図3の左側画像(画像A)に示すディスク4の形状を有する輪郭のはっきりした鏡面反射部に集中する。音波が通過する際に、光のディスクは、検出器を横切って垂直に移動する。「分離」検出器2は、ボトムフォトダイオード8からの信号から、トップフォトダイオード6からの信号を差し引く。従って、ビームがトップからボトムへ移動する際、正の信号が得られ、移動がボトムからトップである場合、負の信号が得られる。従って、サンプルが滑らかな場合、揺れるビームにより音波の移動は、単純且つ効果的な方法で追跡される。
【0025】
しかしながら、サンプルが粗い場合、光は、もはやきれいなディスク状ではなく、
図3の画像Bで示すような斑点状である。ここで使用されるような「斑点状である」とは、反射光が、明部10と暗部12のパッチのグループを形成することを意味する。超音波がサンプルの表面を横断するにつれ、明暗パッチが共に移動する。これは、ビームが
図3に示されるフォトダイオードのトップからボトムに移動する際、幾つかの部分のトップ/ボトム減算は、正の数をもたらし、他の部分は、負の数をもたらし、その結果、平均では信号が全くなくなってしまうため、二等分間の単純な減算は、有用な信号をもたらさないことを意味する。
【0026】
ここでいう「粗い」表面とは、よいミラーとして機能するために十分に磨くということがなされていない表面を通常意味する。従って、産業上使用される部品の大部分は「粗い」表面を含んでいる。粗いまたは滑らかな表面が機械的振動に晒される時、斑点および/または不規則なビーム偏向に関する同様の問題が生じる場合がある。
【0027】
上記問題に取り組むことを目的とした光学評価システム100が
図1および2に示されている。
システム100は、テスト20下のサンプル表面上で表面弾性波(SAW)を引き起こすために、光学放射ビーム16を生成するように動作可能な励起光源14を備える。適切な励起光源としてはNd:YAGレーザ(ネオジムでドープされたイットリウムアルミニウムガーネットレーザ)等の励起レーザが挙げられる。
【0028】
システムは、更に検出システム26を含み、検出システムは、
図1の差込図に一層完全に示されている。検出システムは、このケースでは検出レーザ28である検出光源を備え、この光源は、使用時にSAWの期待される経路における適切な位置でサンプル20の表面上に光学放射ビームを向けるように動作可能である。検出ビームは、サンプル表面から光検出器30上に反射するように配置される。検出ビームの経路およびその反射は、検出光学系32により制御される。
【0029】
使用時、励起源は、任意の適切な方法で(例えば、膨張を引き起こすために表面を加熱することにより、または、アブレーションにより)テスト下のサンプル中に表面弾性波(SAW)を発生させるように使用される。その後、SAWは、検出レーザの反射を通じて光検出器30で検知される。SAWの進行は、その後、反射点でのテスト下のサンプル表面に関する情報を得るために分析されてもよい。サンプル表面の画像は、従来の方法で、その表面をラスタ走査することにより構築されてもよい。
【0030】
必要に応じて、励起レーザ14により発生する光学放射ビームは、空間光変調器(SLM)22のような適切な結像(イメージング)手段を使用して、所定形状のSAWを生成するために整形されてもよい。示された例では、SLM22は、任意間隔の規則的な格子を結像するように配置される。必要に応じて格子間隔は、作動中に調節可能である。私たちは、格子間隔をSAWの波長にできるだけぴったり整合させることが望ましいと分かった。SAWが所定位置24で集中するように、格子を配置することが望ましいことも分かった。そして、検出レーザ28は、最大偏向が生じる焦点でSAWを画像化するように、配置され得る。SAW発生を支援するために使用される光イルミネーションパターンは、
図2において18で示されている。
【0031】
光学検出器30が
図4の画像Aにおいて概略的に示されている。光学検出器30は、複数のピクセル34を備える。各ピクセルは、フォトダイオード36(例えば
図4画像C参照)を備え、フォトダイオード36は、そのピクセルに入射する光を検出するように、および、その光の強度を示す電気信号を発生するように動作可能である。
【0032】
光学検波器は、インタラクティブに設定可能であるように配置され、この構成において、各ピクセルに入射する光に依存して、光学検出器の体系を変更することができる。具体的に、各ピクセルにより発生した信号は、複数出力のうちの1つに向けられ得る。どの出力が選択されるかは、ピクセルが理解する自身の光学状態に依存する。ピクセルが理解する自身の光学状態は、別のピクセルアレイを参照して判定される。従って、複数のピクセルが複数のピクセルペア38にグループ化される。ペア毎に、ペアの第1ピクセルに入射する光の強さとペアの第2ピクセルに入射する光の強さとの間の比較が行われる。この比較は、第1ピクセルの出力選択に影響を及ぼす。
【0033】
詳細を後述するように、検出器が設定可能であるので、ペアの配置は、必要に応じてユーザにより選択されてもよい。ここでいう「ペア」が物理的構造でもなければ2つのピクセル間を関連付けるものでもないことは理解されるであろう。
【0034】
典型的なピクセルペアの配置は、任意のペアにおける第1および第2ピクセルが互いに隣接する複数ペアを含む。本明細書で述べる超音波の例において、我々は、複数ペアが隣接して、周期的に(つまり、同じ空間配向に、すなわち、水平または垂直であり得る同軸内に全て)配置される場合、最良の結果が達成されるということが分かった。1つのペアの第1ピクセルが隣接するペアの第2ピクセルであるように、近隣するペアがオーバーラップする場合、検出器は、最も効果的に働く。従って、第2ピクセルがその強度信号を向ける出力は、第1ピクセルとは異なるピクセルとの比較に基づき決定され、また異なるペアのグループ分けに関して決定される。
【0035】
ピクセル間の強度比較は、一例において、互いに実質的に同時に(即ち、平行して)行われる。これは連続して比較を行うことより効率的である。ピクセル強度間の比較は、ピクセル間に結合されたコンパレータにより、例えば比較電子機器の形態で行われる。各ピクセルは、コンパレータにより1つ以上の他のピクセルにリンクされてもよい。なぜならば、そのピクセルが1つ以上のペアの一部を形成することを可能にするからである。例えば、ピクセルは、例えばx軸およびy軸等の互いに垂直な2つの軸を有する長方形アレイ等の、規則的な平面配列で配置されてもよい。従って、アレイの各ピクセルは、そのピクセルに隣接する4つのピクセル、X軸において2つ、Y軸において2つを有する(この場合対角線を除外する)。比較電子機器が中心ピクセルと4つの周囲ピクセルとの間に提供される場合、ユーザは、X軸に沿って、または、Y軸に沿ってペアを配置するように選択することができる。必要に応じて、ユーザは、ペアのグループ分けを変更してもよいし、一方の軸から他方の軸に切り替えてもよい。4つのペアの選択肢を提供することは、大幅な汎用性を、過度の複雑さを伴うことなく可能にする。しかしながら、必要に応じて、更なるペアの選択肢が設けられてもよい(例えば、1つのピクセルと対角線上に隣接した複数のピクセルとの間で比較手段が提供されてもよい)。
【0036】
典型的には、検出器は、当該検出器に入射する光放射に基づき、選択されたピクセルペアの配置を使用して検出器の体系が設定されるコンフィギュレーションモードと、コンフィギュレーションモードで設定されたように検出器が動作する実験モードと、を備える。コンフィギュレーションモードでは、任意のピクセルペアの各ピクセルにより生じた信号が、例えば検出器上にある電気回路40により、検出器内で比較される。その比較は、1つのペアの第1ピクセル上に入射する光の強度が、そのペアの第2ピクセル上に入射する光の強度より高いかどうかを判定するために使用される。第1ピクセルに入射する光の強度が第2ピクセルに入射する光の強度より高い場合、第1ピクセルからの信号は第1出力に向けられる。第1ピクセルに入射する光の強度が第2ピクセルに入射する光の強度より低い場合、第1ピクセルからの信号は異なる第2出力に向けられる。
【0037】
従って、検出器は、ピクセルアレイを横切る複数地点で(即ち、ピクセルペア間で)光勾配に敏感である。変化する光学状況を考慮して、例えばユーザの指示で、または、予めプログラムされた間隔で、検出器は規則的に再設定され得る。
【0038】
ここで
図5を参照すると、設定可能な光学検出器のより詳細な例が記載されている。
図5に示す検出器は、斑点ナイフエッジ検出器(SKED)と時々本明細書で呼ばれ、32×32のアクティブフォトダイオードピクセルのアレイ(それらの全てが図に表れているわけではない)を含んでいる。より詳細に後述されるように、検出器は、更にアレイの各エッジに沿ったダミーピクセルの列を含んでいる。
【0039】
光学検出器50は、
コンフィギュレーション(設定
)および実験の2つの動作モードを有し、これら2つのモードは、外部デジタル入力により選択可能である。
コンフィギュレーションモードにおいて、全てのフォトダイオード出力は(光強度に比例した電流に関して)互いに分離している。2つのピクセルのうち、どちらにより多くの光が入射するかを判定するために、複数のピクセルペア(このケースでは、これらのペアは、水平に配置されておりオーバーラップする)に入射する光の相対強度は、電流コンパレータを使用して判定される。採り得る各ペアの水平に隣接したピクセル間にコンパレータがある。
【0040】
検出器50は、検出器アレイを横断して光強度の変化を測定するように配置される。隣接するピクセルペアの間において、チップは、左側または右側のどちらに、より多くの光が入射しているかを算出する(左および右の矢印により表わされている)。より多くの光が右側に入射している場合、右側ピクセルからの信号は、第1出力に送られる(暗い矢印52により示されている)。より多くの光が左側に入射している場合、右側ピクセルからの信号は、第2の異なる出力に送られる(明るい矢印54により示されている)。左側ピクセルに対する出力選択は、同じ方法で、しかし左側ピクセルを参照することにより判定される。
【0041】
全てのピクセルペアの比較は、平行して行われ、正勾配の「暗い矢印」ピクセルからの全ての信号は第1出力に送られ合計されると同時に、負勾配の「明るい矢印」ピクセルからの全ての信号は第2出力に送られ合計される。特に、各コンパレータの出力は、電子スイッチのセッティングを決定し、その出力が実験モードになった時点で、電子スイッチ自体は、2つの出力コネクタの内どちらに、即ち、AまたはBのどちらにフォトダイオードの各ペアの第1ピクセルを接続するかを決定する。
【0042】
従って、実験モードにおいては、多数のピクセルが出力Aに接続され、また別の多数のピクセルが出力Bに接続される。出力Aに接続されるピクセルは、入射光強度がコンフィギュレーション中において右側にあるピクセルより低いものであり、出力Bに接続されるピクセルは、入射光強度が右側にあるピクセルより高いものである。アレイのエッジで比較を行うことができるように、ピクセルアレイのエッジには、ノーマルピクセルと同一であるがそれらの出力を決してAまたはB出力に連絡しない「ダミー」ピクセルの追加行(横列)および追加列(縦列)がある。
【0043】
実験モード中の結果は、全ての明るい矢印ピクセル54の合計から全ての暗い矢印ピクセル52の合計が差し引かれることにより得られる。これは、検出器を横断する斑点の水平運動に比例した信号を結果として生じさせる。従来のナイフエッジ検出器の出力に類似した出力を発生させるために検出器はこのように斑点を分解する。このように、強度変化の測定は、粗いサンプルから反射された光を使用することを可能にし、それをあたかも滑らかな表面からの反射であるようにふるまう光のように再編成することを可能にする。
【0044】
コンフィギュレーションモードおよび実験モード間での切り替えは、1000回/秒以上(即ち1kHz以上)の速度で、例えば50kHz以上の速度で可能である。チップが光学斑点に適合するコンフィギュレーションは、5マイクロ秒未満、例えば約1マイクロ秒または0.1マイクロ秒で行うことができる。
【0045】
検出器の切り替え速度、即ち、その適合速度は、(a)電子コンパレータが、どれくらい速く斑点を追跡することができるか、(b)デバイスが正確に斑点を記録するためにコンフィギュレーションモードに入らなければならない最短時間、および(c)超音波が測定される前にどれくらい時間的に短くコンフィギュレーションが行われ得るか、に依存する。
【0046】
図10は、どのようにコンフィギュレーション時間が確立され得るかを示している。「モード選択」トレース60(最上部のトレース)は、検出器が光学斑点に適合中であるか(即ち、コンフィギュレーションモード中であるか)、それとも超音波を測定中であるか(即ち、実験モード中であるか)を決定する。トレースが高い時(この場合、約100ns)、検出器はコンフィギュレーションモード中である。トレースが低い時(残り時間の間)、検出器は実験モード中である。
【0047】
図10において、超音波信号は左側に示されていて、中央に示されたモード状態変化からバーストしたノイズの形をしている。トレース0は、設定(configure)前であることを示す。トレース1は、第1設定スロット(ライン0)後であることを示す。トレース2は、第2設定スロット(ライン1)後であることを示し、以下トレース9まで同様である。図に示すように、100nsのコンフィギュレーション時間は、検出器が適切に再設定を行うのに十分である。
【0048】
図11は、コンフィギュレーションと測定との間の最小時間がどのように決定され得るかを示している。このケースでは、モード選択トレース60は、1.4マイクロ秒のコンフィギュレーション時間を示している。超音波信号は、左側のモード選択状態の変化からバーストしたノイズの形で右側に示されている。トレース0は、全てのピクセルを一方向(無信号)に設定した後の、初回の設定であることを示している。超音波の到着時間ジッタは(前回事象を誘発した)トリガジッタに起因する。
【0049】
各測定トレースの期間は、500ns未満であり、コンフィギュレーションおよび測定は、500ns未満の間隔で行われ得ることが分かる。
図6は、光学検出器50が、滑らかな表面(ディスク状の鏡面反射56に注目)を撮像するために使用される状況を示している。暗い矢印52により示されるように左側ピクセルが全て同じ出力に向けられている一方、明るい矢印54により示されるように右側ピクセルが全て他方の異なる出力に向けられていることが理解できる。従って、滑らかな表面を評価する場合、SKEDは、従来のナイフエッジ検出器と同一の方法で挙動する。
【0050】
図7は、1つのペアにおける2つの隣接ピクセルの入射光強度を示す信号がどのように比較されるかについての簡素化された回路図を示す。各ピクセルは、そのピクセルに入射する光の強度に比例する信号、即ち、電流を発生させるように動作するフォトダイオードを含んでいる。第1の、この場合右側のフォトダイオードの電流(I
Rightとして示されている)は、図示される2つのカレントミラー回路を使用して、2度ミラーリングされている。これにより、フォトダイオード中の電流が複製され、同量の電流がトランジスタの隣接ペアを流れる。第2の、この場合左側の、フォトダイオードの電流(I
Leftとして示されている)は、1度ミラーリングされている。「合成電流」と示された線路では、左右の電流がトランジスタM1およびM2を通じて共に結合される。ここで端子Outは高インピーダンスであるので、M1およびM2内の電流が流れるところは他にどこにもないということに注目することが重要である。右側フォトダイオード中の電流がより大きい場合、M2は、M1が供給するよりも多くの電流を吸い込こもうとするであろう。従って、Out端子の電圧は低い電圧に下がるであろう。左側の光電流の方が高い場合、Out端子の電圧は、高い電圧に上がるであろう。両方の光電流が全く等しい場合、Out端子にある電圧は電圧レール間の中間点になるであろう。この回路の出力は、電圧コンパレータへの入力として提供される。従って、電圧コンパレータへの第2入力(参照用)を、電圧レール間の中間点に設定することにより、コンパレータの出力は、どちらのフォトダイオードの電流がより高いか示す。
【0051】
完全なピクセル用の回路が
図9に示されている。
図9に示される回路は、電流比較回路の形をとった比較手段を含み、この回路は、例えば上述したようなxおよびy軸である2つの軸を有する検出器において使用するのに適しており、いずれか一方の軸(または両方)において比較を行うことができる。既に述べたように、ピクセルは、第1および第2出力、即ち、AおよびB間を切り替わるように動作可能であり、また検出器は、設定および実験の2つのモードを有する。
【0052】
コンフィギュレーションモード中、各ピクセルは、その光強度を隣接したピクセルと比較する。第1ピクセルにおける強度の方がより高い場合、第1ピクセルは、その出力をAに設定する。隣接したピクセルにおける光強度の方がより高い場合、第1ピクセルは、その出力をBに設定する。
【0053】
実験モード中において、全てのピクセル出力Aは、共に結合され、また全てのピクセル出力Bも、共に結合される。これは、チップ出力Aおよびチップ出力Bが、それぞれ、「A」ピクセルおよび「B」ピクセルのそれぞれからの光強度または光電流の合計を表しているということを意味する。
【0054】
ピクセルは、それぞれフォトダイオードを含み、それはピクセルにおける感光素子である。動作中、フォトダイオードは、3つの伝送ゲート(スイッチ)によりコントロールされるような3形態のうちの1つで接続される。(「Measure」として
図9に示された)ピクセルへの「モード」デジタル入力がハイに保持される場合、ピクセルは
コンフィギュレーションモードに入り、フォトダイオードは比較回路に接続される。
【0055】
比較回路は、2つのアーム中で光電流を複製するカレントミラーから成る。これらのアームの一方では、光電流が再度複製され、他方のアームが電流ソースとして機能している状態で、電流シンクとして作用する。これらの2つのミラーの出力は伝送ゲートを通って2つの隣接したピクセルに接続される。1つのアームは、比較対象の「次の」フォトダイオードに行き、別のアームは「前の」フォトダイオードに行く。この配置により、比較がチップを横切って平行に行われることが可能になる。「Axis(軸)」デジタル入力により、比較対象のフォトダイオードが選択可能になる。「Axis」デジタル入力がハイである場合、比較が第1軸、この場合には水平軸において起きる。「Axis」デジタル入力がロウである場合、比較は第2軸、この場合には垂直(perpendicular)、縦(vertical)軸において起きる。この特徴により、検出器の移動を必要とすることなく両軸における比較が可能になる。隣接ピクセル間の比較は、隣接ピクセルの電流シンク出力との比較を行っているピクセルの電流ソース出力を、両方、選択された軸用のそれぞれの伝送ゲートを通じて接続することにより行われる。これら2つのカレントミラー間のポイントは、電圧コンパレータの入力に接続される。ソースおよびシンクの両者において電流が同一の場合、電圧コンパレータ入力において、供給電圧の半分の電圧が期待される。ソース電流がより高ければ電圧は増加し、ソース電流がより低ければ電圧は減少する。(チップ中の全てのピクセルに対してグローバルな)基準電圧は、第2コンパレータ入力に供給される。
【0056】
コンパレータの出力は、デジタルラッチに接続される。ピクセルが実験モードに置かれると、デジタルラッチはコンパレータの値を保持する。フォトダイオードはまた比較回路から切断され、デジタルラッチの値に依存して出力AまたはB(図中、「ResLeft」および「ResRight」により示される)のいずれかに接続される。
【0057】
「ピクセルロジック」ブロック内には、記憶されたデジタルロジックが更にある。これにより、各ピクセルでのデジタルラッチの値を読んでチップからそれを取り出す能力と共に、各ピクセルでのラッチ用の値をチップの外からプログラムする能力が得られる。これらは両方とも、設計に対して役立つ追加機能である。コンフィギュレーションデータは例えばセンサ上の光を指し示すので、コンフィグレーションデータを見ることができることは、実験環境において役立つ。コンフィギュレーションデータをプログラムすることができることにより、センサを、標準ナイフエッジ検出器として、または他のパターンとしてプログラムすることができる。コンフィギュレーションデータは「Force」をハイに設定し、「Select_n」をロウに設定し、「Direction」上で所望のコンフィギュレーション値を設定し、次に「ForceSet_n」を少しの間ロウに設定することによりプログラムすることができる。コンフィギュレーションデータは、「Force」をロウに設定し、「Select_n」をロウに設定し、「Direction」からコンフィギュレーションデータを読むことにより得られる。
【0058】
いくつかの実験的な特性評価が行われ、約100MHzの帯域幅をここに記載されたタイプの検出器で達成できることが分かった。この設計の将来のバージョンにおいては、これを例えば200MHzに増加させることが可能かもしれない。
【0059】
図8は、多くのレーザ超音波アプリケーションに十分である約20MHzの帯域幅を有する実験用光学検知器を使用して達成された幾つかの実験結果を示す。
発生レーザが82MHzの周波数で表面弾性波を励起させるO−SAM(全光学走査超音波顕微鏡)と呼ばれるレーザ超音波システムを使用して、実験用検出器はテストされた。実験用検出器は、光学上粗いアルミニウム表面に関して標準ナイフエッジ検出器(KED)と比較された。
図8のパネル(1)におけるグラフの組は、サンプルが2mmの距離に亘ってスキャンされた時の82MHzの規格化された振幅を示す。左側の画像Aは、従来のKEDの出力を示し、斑点の変化に起因して顕著に変動している状態を示している。幾つかのサンプル位置では、とても小さい信号が存在するだけである。右側の画像Bでは、実験用光学検出器の出力が示されている。SKEDが各サンプル位置で光学斑点に適合するので、信号がはるかにより一定であるということが分かる。理想的な挙動は、1の高さでの平なラインであろう。
【0060】
同様に画像Cにおいて右側にKEDを有し、画像Dにおいて左側に実験用光学検出器を有する
図8のパネル(2)に示すように、斑点パターンをも変化させる周辺の機械的振動に機器が晒される場合、同様の比較挙動が観察される。この場合も、新しい検出器が改善された結果を提供することは理解される。前述同様に理想的な挙動は、1の高さを有する平なラインであろう。
【0061】
ここに記載された光学検出器は、従来のナイフエッジ検出器の当座の代替として動作可能であるが、この光学検出器は、滑らかな表面上および粗い表面上での測定を得るように動作可能である。検出器の体系(例えば、複数出力のうちのどれにピクセル信号が向けられる/連絡されるか)は、局部照明状態に応じて、アレイの別のピクセルを参照しつつインタラクティブに設定される。ピクセルペアを横切る強度勾配が、コンフィグレーション中に比較される。検出器は、例えば予めプログラムされた間隔(例えば、0.001秒、0.01秒、0.05秒毎に、または0.1秒毎に)で規則的に、またはユーザの指令に応じて再設定され得る。
【0062】
従来のナイフエッジ検出器は、単一軸においてビームの偏りを測定するが、ここに記載された設定可能な検出器は、ユーザ制御可能な入力に基づいて、垂直および水平軸の両方においてビームの偏りを検出することができる。これは、両方の軸における測定を、物理的に装置を移動させずにすることができるということを意味している。また、装置からコンフィギュレーションデータを読み取ることも可能である。これは、ユーザがそれらのサンプル表面の粗さに関する情報を得て、照明および検出器が正確に位置調整されているかを判断することを可能にする。コンフィギュレーションデータは保存することができ、また入力することもできる。これは、ユーザが、例えば前回の設定や、従来のナイフエッジ等の所定パターンに応じて動作するように、必要に応じて、検出器の体系を直接プログラムすることを可能にする。
【0063】
光学検出器は主としてレーザ超音波用途に関して本明細書で説明されたが、そのようなセンサは、他の用途においても役立つことが理解されよう。例えば検出器チップの感度を速く安くコントロールできることが望ましいということを、変化する光レベルが意味する状況において役立つことが理解されよう。