(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハブと前記円筒部材との間に設けられ、前記少なくとも一つの主軸受の単独による前記ハブの支持が可能な荷重を超える大荷重が前記ハブに作用したときに限って前記少なくとも一つの主軸受を補助して前記ハブを前記円筒部材に支持するように構成された少なくとも一つの補助軸受をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記少なくとも一つの補助軸受は、前記ハブに作用する荷重が前記大荷重以下であるとき前記ハブおよび前記円筒部材の一方とは非接触状態にあり、前記大荷重が前記ハブに作用したときに限って前記ハブおよび前記円筒部材の前記一方に接触するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記少なくとも一つの補助軸受における摺動面は、低摩擦材料または耐摩耗性材料で形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記ハブの前記油圧ポンプ側の端部には、前記ナセルに向かって凹んだ陥没部が設けられており、該陥没部に前記第1貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記陥没部は、前記ロータの重心に対応する軸方向位置に前記少なくとも一つの主軸受が配置されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記少なくとも一つの主軸受は、転動体としての円錐ころの中心軸が前記少なくとも一つの主軸受の軸方向に対してなす角度が40度以上50度以下である1個の複列円錐ころ軸受であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記ロータ部は、内周側に空洞部を有する円筒形状であり、前記ハブの前記油圧ポンプ側の端部に固定され、該端部を起点として前記ハブから離れる方向に前記円筒部材の軸方向に沿って延在しており、
前記ステータ部は、前記ロータ部の周りに配置されて前記ロータ部とともに圧油生成機構が収容されるポンプ内部空間を形成するステータ本体部と、前記ロータ部の内周側の前記空洞部内を通って前記円筒部材の前記ナセルとは反対側の端部に前記ステータ本体部を支持するステータ支持部とを含むことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記ハブと前記ロータ部の間に設けられ、前記ハブから前記ロータ部に作用する荷重のうち、前記ロータ部の回転軸まわりのモーメントを選択的に前記ロータ部に伝達するトルク伝達部を含むことを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記被駆動部の下端部と前記ナセル台板との間に鉛直方向における空間が形成されるよう、前記直交方向において前記被駆動部が前記ナセル台板とオーバーラップしていることを特徴とする請求項15又は16に記載の再生エネルギー型発電装置。
前記少なくとも一本のブレードが再生エネルギー源としての風から受け取った風力エネルギーを利用して電力を生成する発電機を備えた風力発電装置であることを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の再生エネルギー型発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、風力発電装置に代表される再生エネルギー型発電装置は発電量向上の観点から大型化が進んでおり、再生エネルギー型発電装置のドライブトレインパートは、大トルクを伝達するためにサイズ及び重量が大きくなる傾向にある。そのため、ドライブトレインパートを支持するナセル台板が大型化し、ナセル重量増加に伴い、再生エネルギー型発電装置の製造コストが嵩むという問題が生じる。
【0007】
また、一般的な再生エネルギー型発電装置では、ハブの回転エネルギーを伝達するためのドライブトレインパートが、ブレードの曲げモーメントに起因した荷重をナセル台板に伝達するためのロードキャリパート(Load Carry Part)と分離されていない。そのため、各々のパートの構造設計を最適化しようとすると、互いに影響を及ぼし合ってしまう。よって、各々のパートの最適軽量化が妨げられ、ナセル重量を軽減することが難しい。
【0008】
この点、特許文献1には、ナセルを軽量化するためのドライブトレインパート及びロードキャリパートの構成について何ら開示がない。また、特許文献2〜4は、そもそも油圧ポンプ及び油圧モータを含むドライブトレインパートを備えた風力発電装置に関するものではない。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態の目的は、ナセルの重量を軽減しうる再生エネルギー型発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態に係る再生エネルギー型発電装置は、
少なくとも一本のブレードと、
前記少なくとも一本のブレードが取り付けられるハブと、
前記少なくとも一本のブレード及び前記ハブで構成されるロータの回転面に対する直交方向に沿って、前記ハブを貫通して延在する円筒部材と、
前記ハブと前記円筒部材との間に設けられ、前記ハブを前記円筒部材に回転自在に支持する少なくとも一つの主軸受と、
前記円筒部材を支持するナセル台板を含むナセルと、
前記ハブを挟んで前記ナセルとは反対側に配置され、前記ハブに固定されるロータ部と、
前記円筒部材に固定されるステータ部とを含む油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記円筒部材を貫通するように前記油圧ポンプと前記油圧モータとの間に設けられる油配管と、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記再生エネルギー型発電装置では、ドライブトレインパートを構成する油圧ポンプと油圧モータを分離し、ハブを挟んでナセルとは反対側に油圧ポンプを配置している。そのため、ナセル内部に油圧ポンプの設置スペースを設ける必要がなく、ナセルを小型化してナセル重量を軽減できる。なお、こうした油圧ポンプの配置が可能であるのは、ハブを貫通する円筒部材を介して油圧ポンプのステータ部をナセル台板に支持させるとともに、油圧ポンプと油圧モータとの間の油配管を円筒部材の内部を貫通するように設けたためである。
【0012】
また、上記再生エネルギー型発電装置では、ブレードの曲げモーメントに起因した荷重は、ハブ、主軸受、円筒部材、ナセル台板の順に伝達される。すなわち、上記再生エネルギー型発電装置におけるロードキャリパートは、ハブ、主軸受、円筒部材及びナセル台板を含んで構成される。これに対し、ハブの回転エネルギーは、ハブ、油圧ポンプ、油配管、油圧モータの順に発電機側に伝達される。すなわち、上記再生エネルギー型発電装置におけるドライブトレインパートは、ハブ、油圧ポンプ、油配管及び油圧モータを含んで構成される。このように、ドライブトレインパートとロードキャリパートという役割が異なる2つのパートを分離したことで、各々のパートの最適軽量化が可能になり、ナセル重量をさらに軽減できる。なお、各々のパートの分離が可能であるのは、ドライブトレインパートの一部である油圧ポンプにおいてハブの回転エネルギーを一旦油圧エネルギーに変換し、ロードキャリパートの一部である円筒部材を貫通する油配管を介して油圧エネルギーを油圧モータに供給するようにしたためである。
【0013】
さらに、ハブを挟んでナセルとは反対側に配置される油圧ポンプは、ナセル台板のような取り外し困難な干渉物が下方に存在しないため、クレーンでの搬送作業が容易になる。よって、油圧ポンプのメンテナンス性が向上する。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記ハブと前記円筒部材との間に設けられ、前記少なくとも一つの主軸受の単独による前記ハブの支持が可能な荷重を超える大荷重が前記ハブに作用したときに限って前記少なくとも一つの主軸受を補助して前記ハブを前記円筒部材に支持するように構成された少なくとも一つの補助軸受をさらに備える。
【0015】
これにより、例えば翼の曲げモーメントに起因して突発的に生じた大荷重がハブに作用しても、補助軸受が主軸受を補助してハブを支持することができる。そのため、基本的には、主としてロータの自重に起因した疲労荷重のみを考慮して主軸受を設計することができ、主軸受を小型化することができる。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも一つの補助軸受は、前記ハブに作用する荷重が大荷重以下であるとき前記ハブおよび前記円筒部材の一方とは非接触状態にあり、前記大荷重が前記ハブに作用したときに限って前記ハブおよび前記円筒部材の前記一方に接触するように構成されている。
【0017】
これにより、主としてロータの自重に起因した疲労荷重のみがロータに作用しているとき、補助軸受はハブ及び円筒部材の一方と非接触状態にあり、補助軸受における摩擦損失は生じない。よって、補助軸受の追加による再生エネルギー型発電装置の運転効率低下を回避できる。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも一つの補助軸受における摺動面は、低摩擦材料または耐摩耗性材料で形成されている。これにより、補助軸受はさらに大きな荷重を支持することができる。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記ハブは、前記円筒部材が貫通する第1貫通穴及び第2貫通穴を、それぞれ、前記油圧ポンプ側と前記ナセル側とに有し、前記少なくとも一つの主軸受は、前記第1貫通穴の内周面と、該第1貫通穴の内周面に対向する前記円筒部材の外周面との間に設けられ、前記少なくとも一つの補助軸受は、前記第2貫通穴の内周面と、該第2貫通穴の内周面に対向する前記円筒部材の外周面との間に設けられる。
【0020】
再生エネルギー型発電装置のブレードはコーン角が設定されたものが多く、この場合、ロータ全体としての重心は第2貫通穴に比べて第1貫通穴の近くに位置する。また、上述のように、ハブを挟んでナセルとは反対側に油圧ポンプを配置する場合、ロータ全体としての重心はさらに第1貫通穴に近づく。そこで、ロータ全体としての重心に近い第1貫通穴に主軸受を配置することで、ロータの自重に起因した主軸受の疲労荷重を軽減し、主軸受の小型化を図ることができる。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記ハブの前記油圧ポンプ側の端部には、前記ナセルに向かって凹んだ陥没部が設けられており、該陥没部に前記第1貫通穴が形成されている。
【0022】
これにより、主軸受が、ブレードとハブにより構成されるロータの重心に近づくため、主軸受の疲労荷重を効果的に軽減し、主軸受の小型化をより一層図ることができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記陥没部は、前記ロータの重心に対応する軸方向位置に前記少なくとも一つの主軸受が配置されるように構成されている。
【0024】
これにより、主軸受の疲労荷重を概ね最小化することができる。
【0025】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも一つの主軸受は、転動体としての円錐ころの中心軸が前記少なくとも一つの主軸受の軸方向に対してなす角度接触角が40度以上50度以下である1個の複列円錐ころ軸受である。
【0026】
これにより、主軸受(複列円錐ころ軸受)からずれた軸方向位置に加わった外力に起因した曲げモーメント(回転力)に対抗し、複列円錐ころ軸受によってハブを円筒部材に支持できる。
【0027】
幾つかの実施形態において、前記円筒部材は、前記ナセル台板と一体成形された鋳物で構成される。
【0028】
幾つかの実施形態において、前記ロータ部は、内周側に空洞部を有する円筒形状であり、前記ハブの前記油圧ポンプ側の端部に固定され、該端部を起点として前記ハブから離れる方向に前記円筒部材の軸方向に沿って延在しており、前記ステータ部は、前記ロータ部の周りに配置されて前記ロータ部とともに圧油生成機構が収容されるポンプ内部空間を形成するステータ本体部と、前記ロータ部の内周側の前記空洞部内を通って前記円筒部材の前記ナセルとは反対側の端部に前記ステータ本体部を支持するステータ支持部とを含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、前記圧油生成機構は、周方向に並ぶ多数の凹凸を有し、前記ロータ部の外周面上に設けられて前記ロータ部とともに回転するように構成された少なくとも一つのリングカムと、前記ステータ部側に設けられ、前記少なくとも一つのリングカムの周りに放射状に配置される複数のシリンダと、前記少なくとも一つのリングカムの前記凹凸によって駆動されて各シリンダ内に摺動するように構成された複数のピストンと、各シリンダと該シリンダ内に設けられるピストンとで画定される油圧室に対して作動油を供給および排出するための低圧弁および高圧弁とを含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記ロータ部は、前記ハブの前記油圧ポンプ側の端部に固定され、該端部を起点として前記ハブから離れる方向に前記円筒部材の軸方向に沿って延在しており、前記ステータ部は、前記ロータ部の内周側に配置されて前記ロータ部とともに圧油生成機構が収容されるポンプ内部空間を形成するとともに、前記円筒部材の前記ナセルとは反対側の端部に支持される。
【0031】
幾つかの実施形態において、前記圧油生成機構は、周方向に並ぶ多数の凹凸を有し、前記ロータ部の内周面上に設けられて前記ロータ部とともに回転するように構成された少なくとも一つのリングカムと、前記ステータ部側に設けられ、前記少なくとも一つのリングカムの内周側に放射状に配置される複数のシリンダと、前記少なくとも一つのリングカムの前記凹凸によって駆動されて各シリンダ内に摺動するように構成された複数のピストンと、各シリンダと該シリンダ内に設けられるピストンとで画定される油圧室に対して作動油を供給および排出するための低圧弁および高圧弁とを含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、前記再生エネルギー型発電装置は、前記ハブと前記ロータ部の間に設けられ、前記ハブから前記ロータ部に作用する荷重のうち、前記ロータ部の回転軸まわりのモーメントを選択的に前記ロータ部に伝達するトルク伝達部を含む。
【0033】
これにより、ドライブトレインパートの一部としての油圧ポンプのロータ部にハブから前記ロータ部に作用する荷重のうち、前記ロータ部の回転軸まわりのトルクのみを選択的に伝達することができるから、油圧ポンプの構造設計が容易になり、油圧ポンプを軽量化することができる。
【0034】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る再生エネルギー型発電装置は、
少なくとも一本のブレードと、
前記少なくとも一本のブレードが取り付けられるハブと、
前記少なくとも一本のブレード及び前記ハブで構成されるロータの回転面に対する直交方向に沿って、前記ハブを貫通して延在する固定軸と、
前記ハブと前記固定軸との間に設けられ、前記ハブを前記固定軸に回転自在に支持する一対の主軸受と、
前記固定軸を支持するナセル台板を含むナセルと、
前記ハブに固定されるロータ部と、該ロータ部の内周側又は外周側に配置されるステータ部とを含む被駆動部とを備え、
前記ハブは、前記固定軸が貫通する第1貫通穴及び第2貫通穴を有し、前記第1貫通穴は前記第2貫通穴よりも前記ナセルから遠くに位置し、
前記一対の主軸受は、
前記第1貫通穴の内周面と、該第1貫通穴の内周面に対向する前記固定軸の外周面との間に設けられる第1主軸受と、
前記第2貫通穴の内周面と、該第2貫通穴の内周面に対向する前記固定軸の外周面との間に設けられる第2主軸受とを含むことを特徴とする。
【0035】
上記再生エネルギー型発電装置によれば、ハブの第1貫通穴及び第2貫通穴の位置に第1主軸受及び第2主軸受が設けられるので、ロータに対する荷重(ロータの自重に起因した重力荷重や風荷重)が作用する荷重負荷点の両側に第1主軸受と第2主軸受が位置することになる。よって、軸受荷重が低減され、軸受のコンパクト化及び軽量化が可能となる。
【0036】
また、上記再生エネルギー型発電装置では、ブレードの曲げモーメントに起因した荷重は、ハブ、主軸受、固定軸、ナセル台板の順に伝達される。すなわち、上記再生エネルギー型発電装置におけるロードキャリパートは、ハブ、主軸受、固定軸及びナセル台板を含んで構成される。これに対し、ハブの回転エネルギーは、ハブ、被駆動部の順に伝達される。すなわち、上記再生エネルギー型発電装置におけるドライブトレインパートは、ハブ及び被駆動部を含んで構成される。このように、ドライブトレインパートとロードキャリパートという役割が異なる2つのパートを分離したことで、各々のパートの最適軽量化が可能になり、ナセル重量を軽減できる。
【0037】
幾つかの実施形態において、前記再生エネルギー型発電装置は、前記少なくとも一本のブレードが再生エネルギー源としての風から受け取った風力エネルギーを利用して前記発電機にて電力を生成する風力発電装置である。
【発明の効果】
【0038】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ドライブトレインパートを構成する油圧ポンプと油圧モータを分離し、ハブを挟んでナセルとは反対側に油圧ポンプを配置したので、ナセル内部に油圧ポンプの設置スペースを設ける必要がなく、ナセルを小型化してナセル重量を軽減できる。
【0039】
また、ハブ、主軸受、円筒部材及びナセル台板を含んで構成されるロードキャリパートと、ハブ、油圧ポンプ、油配管及び油圧モータを含んで構成されるドライブトレインパートという役割が異なる2つのパートを互いに分離したことで、各々のパートの最適軽量化が可能になり、ナセル重量をさらに軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0042】
まず、一実施形態に係る再生エネルギー型発電装置について説明する。なお、ここでは、再生エネルギー型発電装置の一例として風力発電装置について述べるが、本発明の実施形態に係る軸系の組立て方法は潮流発電装置、海流発電装置、河流発電装置等の他の再生エネルギー型発電装置にも適用できる。
【0043】
図1は、一実施形態に係る風力発電装置2の全体構成の概略を示す図である。同図に示すように、風力発電装置2は、主として、風力エネルギーによって回転するロータ7と、電力を生成する発電機30と、ロータ7の回転エネルギーを発電機30に伝えるドライブトレインパート9とを備える。なお、発電機30は、ナセル14内に配置されていてもよい。
【0044】
ロータ7は、少なくとも一本のブレード4と、ブレード4が取り付けられるハブ6とで構成される。ブレード4は、ハブ6を中心として放射状に延在するようにハブ6に取り付けられる。
【0045】
ドライブトレインパート9は、ハブ6の回転によって駆動される油圧ポンプ20と、油圧ポンプ20で生成される圧油によって駆動される油圧モータ22と、油圧ポンプ20と油圧モータ22との間に設けられる油配管(高圧油配管24及び低圧油配管26)とを含む。
【0046】
図2は、一実施形態に係る風力発電装置2の油圧ポンプ20とハブ6の構成例を示す断面図である。同図に示すように、風力発電装置2はさらに、ロータ7の回転面に対する直交方向に沿ってハブ6を貫通してナセル14の外部に延在している円筒部材8と、ハブ6と円筒部材8の間に設けられる少なくとも一つの主軸受10とを含む。
【0047】
一実施形態では、ハブ6を円筒部材8に回転自在に支持するための少なくとも一つの主軸受10は、転動体としての円錐ころ40の中心軸が主軸受10の軸方向に対してなす角度が40度以上50度以下(例えば45度)である1個の複列円錐ころ軸受を含む。
【0048】
一般的に、軸受が一つのみでは、軸受からずれた軸方向位置に加わった外力に起因した曲げモーメント(回転力)を支持することが難しい。しかし、円錐ころ40の中心軸が主軸受10の軸方向に対してなす角度が40度以上50度以下であるような1個の複列円錐ころ軸受を主軸受10として用いれば、主軸受(複列円錐ころ軸受)10からずれた軸方向位置に加わった外力に起因した曲げモーメント(回転力)に対抗でき、複列円錐ころ軸受10によってハブ6を円筒部材8に支持することが可能となる。
【0049】
幾つかの実施形態では、風力発電装置2は、ハブ6と円筒部材8との間に設けられる補助軸受32をさらに備える。補助軸受32は、主軸受10単独によるハブ6の支持が可能な荷重を超える大荷重がハブ6に作用したときに限って、主軸受10を補助してハブ6を円筒部材8に支持するように構成されている。
【0050】
これにより、例えば翼の曲げモーメントに起因して突発的に生じた大荷重がハブ6に作用しても、補助軸受32が主軸受10を補助してハブ6を支持することができる。そのため、基本的には、主軸受10の設計は、主としてロータ7の自重に起因した疲労荷重のみを考慮して行うことができ、主軸受10を小型化することができる。
【0051】
一実施形態では、補助軸受32は、ハブ6に作用する荷重が大荷重以下であるときハブ6および円筒部材8の一方とは非接触状態にあり、大荷重が前記ハブ6に作用したときに限ってハブ6および円筒部材8の前記一方に接触するように構成されている。
【0052】
これにより、主としてロータ7の自重に起因した疲労荷重のみがロータ7に作用しているとき、補助軸受32はハブ6及び円筒部材8の一方と非接触状態にあり、補助軸受32における摩擦損失は生じない。よって、補助軸受32の追加による再生エネルギー型発電装置の運転効率低下を回避できる。
【0053】
一実施形態では、補助軸受32は、
図2に示すように、ハブ6に取り付けられており、上記大荷重がハブ6に作用したときに円筒部材8の外周面と接触する摺動面(軸受面)32Aを有する。他の実施形態では、補助軸受32は、円筒部材8に取り付けられ、上記大荷重がハブ6に作用したときにハブ6と接触する摺動面(軸受面)を有する。
【0054】
なお、補助軸受32は、円筒部材8の全周に亘って連続した環状部材であってもよいし、円筒部材8の周りに配置される複数の断面円弧形状の部材であってもよい。なお、補助軸受32における摺動面32Aは、低摩擦材料または耐摩耗性材料で形成されていてもよい。さらに別の実施形態では、補助軸受32は、玉やころ等の転動体を有する転がり軸受であってもよい。
【0055】
図2に示すように、ハブ6は円筒部材8が貫通する第1貫通穴34及び第2貫通穴36を、それぞれ、油圧ポンプ20側とナセル14側とに有している。一実施形態では、主軸受10は、第1貫通穴34の内周面と、第1貫通穴34の内周面に対向する円筒部材8の外周面との間に設けられ、補助軸受32は、第2貫通穴36の内周面と、第2貫通穴36の内周面に対向する円筒部材8の外周面との間に設けられている。
【0056】
風力発電装置2のブレード4はコーン角が設定されたものが多く、この場合、ロータ7全体としての重心Gは第2貫通穴36に比べて第1貫通穴34の近くに位置する。また、後述のように、ハブ6を挟んでナセル14とは反対側に油圧ポンプ20を配置する場合、ロータ7全体としての重心Gはさらに第1貫通穴34に近づく。
【0057】
そこで、ロータ7全体としての重心Gにより近い第1貫通穴34に主軸受10を配置することで、ロータ7の自重に起因した主軸受10の疲労荷重を軽減し、主軸受10の小型化を図ることができる。
【0058】
一実施形態では、ハブ6の油圧ポンプ20側の端部には、ナセル14に向かって凹んだ陥没部38が設けられており、陥没部38に第1貫通穴34が形成される。これにより、主軸受10が、ブレード4とハブ6により構成されるロータ7の重心Gに近づくため、主軸受10の疲労荷重を効果的に軽減し、主軸受10の小型化をより一層図ることができる。
【0059】
なお、陥没部38は、ロータ7の重心Gに対応する軸方向位置(X方向位置)に主軸受10が配置されるように構成してもよい。すなわち、ロータ7の重心Gと主軸受10との軸方向位置(X方向位置)が一致するように、陥没部38の陥没深さを決定してもよい。これにより、主軸受10の疲労荷重を概ね最小化することができる。
【0060】
また、
図2に示すように、油圧ポンプ20は、ハブ6を挟んでナセル14と反対側(ナセル14の外部)に配設され、ハブ6に固定されるロータ部16と、円筒部材8に固定されるステータ部18とを含む。
【0061】
ナセル14は円筒部材8を支持するナセル台板12を含み、円筒部材8はナセル台板12と一体成形された鋳物で構成されていてもよい。この場合、
図1に示すように、円筒部材8とナセル台板12との間に湾曲部を介在させてもよい。すなわち、円筒部材8の油圧ポンプ20とは反対側の端部とナセル台板12との間には、エルボ状の湾曲部を設けてもよい。
【0062】
なお、
図1に示すように、ナセル14はタワー3の上に配設されており、ナセル台板12とタワー3の間にヨー旋回座軸受78が配設されている。ヨーモータ(不図示)にはピニオンギア(不図示)が取り付けており、このピニオンギアに噛み合うリンクギア(不図示)がタワー3に設けられている。ヨーモータを駆動してピニオンギアを回転させると、ヨー旋回座軸受78を介してタワー3に支持されたナセル台板12を旋回することができる。
【0063】
図3と
図4はそれぞれ、
図2に示す風力発電装置2の油圧ポンプ20の軸方向に沿った油圧ポンプ20周辺の断面図及び
図2に示す風力発電装置2の油圧ポンプ20の半径方向に沿った油圧ポンプ20周辺の断面図である。両図に示すように、一実施形態に係る風力発電装置2では、ロータ部16は、内周側に空洞部を有する円筒形状であり、ハブ6の油圧ポンプ20側の端部に固定され、該端部を起点としてハブ6から離れる方向に円筒部材8の軸方向に沿って延在している。なお、ロータ部16の円筒形状は、おおよそ円筒とみなせる部分を有していれば足り、必ずしも幾何学的な意味において“円筒”である必要はない。
【0064】
ステータ部18は、ステータ本体部18A及びステータ支持部18Bを含む。ステータ本体部18Aは、ロータ部16の周りに配置され、圧油生成機構42が収容される油圧ポンプ20の内部空間をロータ部16とともに形成する。すなわち、油圧ポンプ20の内部空間が、ステータ本体部18Aとロータ部16との間に形成される。ステータ支持部18Bは、ロータ部16の内周側の空洞部内を通ってステータ本体部18Aを円筒部材8に支持するように構成されている。
【0065】
一実施形態では、圧油生成機構42は、リングカム48、複数のシリンダ50、複数のピストン52、低圧弁56及び高圧弁58を含む。リングカム48は、周方向に並ぶ多数の凹凸(ローブ)を有し、ロータ部16の外周面上に設けられてロータ部16とともに回転するように構成されている。複数のシリンダ50は、ステータ本体部18A側に設けられ、リングカム48の周りに放射状に配置されている。
【0066】
複数のピストン52は、リングカム48の凹凸によって駆動されて各シリンダ50内を摺動するように構成されている。各シリンダ50とシリンダ50内に設けられるピストン52とにより作動室54(油圧室)が画定されている。ピストン52はピストン本体53とローラ60を含む。作動室54に対して作動油を供給および排出するための低圧弁56及び高圧弁58が作動室54に連通可能に設けられている。
【0067】
図4に示すように、各作動室54は、シリンダブロック82の内部に設けられた高圧連通路76を介して高圧油配管24に接続されるとともに、シリンダブロック82の外周に設けられた低圧連通路62を介して低圧油配管26に接続されている。
【0068】
なお、
図3に示すように、一対のエンドプレート66,68がシリンダブロック82の両端面を覆うようにステータ部18の両端に設けられている。ハブ6から遠い第1エンドプレート66は、第1ポンプ軸受72を介して、ロータ部16の外周に支持されている。ハブ6に近い第2エンドプレート68は、第2ポンプ軸受74を介して、ロータ部16の外周に支持されている。また、第1エンドプレート66と第2エンドプレート68とは、シリンダブロック82を貫通するダイボルト64によって互いに締結されている。
【0069】
第1エンドプレート66には、作動室54で生成された高圧油が高圧油配管24に向かって流れる内部流路70が設けられている。内部流路70は、高圧連通路76を介して作動室54に連通している。
【0070】
風がブレード4に当たると、ブレード4に加わる揚力によってX軸周りのモーメント成分(トルク)が生じ、このモーメント成分がブレード4を回転させる作用をする(
図1参照)。ブレード4が回転すると、ブレード4が取り付けられたハブ6も回転する。ハブ6の回転により、ハブ6に取り付けられた油圧ポンプ20のロータ部16が回転する(
図3参照)。ロータ部16の回転により、ロータ部16の外周面に取り付けられたリングカム48が回転する。
【0071】
リングカム48が回転することにより、リングカム48の多数の凹凸(ローブ)によってローラ60が押圧され、ピストン本体53がシリンダ50の軸方向に往復運動を繰り返す。
【0072】
ピストン本体53の往復運動により、ピストン本体53とシリンダ50により形成される作動室54の容積が周期的に変化する。作動室54の容積が減少するとき、作動室54の中の作動油が圧縮され、圧縮された作動油が高圧油になって、高圧油配管24に吐出される(圧縮工程)。作動室54の容積が増大するとき、作動室54の中に作動油が吸入される(吸入工程)。
【0073】
円筒部材8の内部を貫通するように配設された高圧油配管24に高圧油が吐出されると、高圧油は高圧油配管24を介して、油圧モータ22に供給される。高圧油の油圧により油圧モータ22が駆動されて、油圧モータ22の出力軸23は回転する。油圧モータ22の出力軸23の回転が発電機30の回転シャフトに伝達され、発電機30の回転シャフトが回転する。発電機30は回転シャフトの運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、電力を生成する。
【0074】
高圧油は油圧モータ22に対して仕事をすると、油圧が低下し低圧油となる。低圧油は円筒部材8の内部を貫通するように配設された低圧油配管26を介して、油圧モータ22から油圧ポンプ20に供給される。油圧ポンプ20に供給された低圧油は油圧ポンプ20により、再度油圧が高められ高圧油となって、再び油圧モータ22に供給される。
【0075】
一方、ロータ7に作用する荷重のうち、X軸周りのモーメント成分(トルク)以外の成分は発電に寄与せず、それらの荷重は、ハブ6、主軸受10、円筒部材8、ナセル台板12、タワー3の順に伝達される。
【0076】
次に、他の一実施形態に係る風力発電装置2について説明する。
図5は、一実施形態に係る風力発電装置2の油圧ポンプ20とハブ6の構成例を示す断面図である。
図2に示す例示的な実施形態に係る風力発電装置2と構成が共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、主として一実施形態に係る風力発電装置2と構成が異なる部分について以下説明する。
【0077】
円筒部材8にステータ部18の一端が取り付けられており、ステータ部18の内部(ステータ部18の他の一端の近傍)に内部流路70が配設されている。内部流路70の位置に対応するステータ部18の内周面上には、内部流路70と連通する高圧油配管24が接続されるポートが設けられている。一方、ステータ部18の中央部の内周面上には、低圧連通路62に連通する低圧油配管26が接続されるポートが設けられている。
【0078】
ステータ部18の両端の外周面上に第1ポンプ軸受72と第2ポンプ軸受74が配設されている。第1ポンプ軸受72と第2ポンプ軸受74を介して、ロータ部16がステータ部18に支持されている。ステータ部18とロータ部16の間に一対のシール部材86が配設されている。
【0079】
つまり、
図2に示した例示的な実施形態ではロータ部16がステータ部18(ステータ本体部18A)の内周側に位置するのに対し、
図5に示す例示的な実施形態ではロータ部16はステータ部18の外周側に位置する。
【0080】
図6及び
図7はそれぞれ、
図5に示す風力発電装置2の油圧ポンプ20の軸方向に沿った油圧ポンプ20周辺の断面図及び
図5に示す風力発電装置2の油圧ポンプ20の半径方向に沿った油圧ポンプ20周辺の断面図である。
【0081】
両図に示すように、他の実施形態に係る風力発電装置2では、ロータ部16は、ハブ6の油圧ポンプ20側の端部に固定され、該端部を起点としてハブ6から離れる方向に円筒部材8の軸方向に沿って延在するように構成されている。ステータ部18は、ロータ部16の内周側に配置され、円筒部材8に支持されるように構成されている。ステータ部18とロータ部16により圧油生成機構42が収容される油圧ポンプ20の内部空間が形成される。
【0082】
一実施形態では、圧油生成機構42は、リングカム48、シリンダ50、ピストン52、低圧弁56及び高圧弁58を含む。リングカム48は周方向に並ぶ多数の凹凸(ローブ)を有し、ロータ部16の内周面上に設けられてロータ部16とともに回転するように構成されている。
【0083】
シリンダ50はステータ部18側に設けられ、リングカム48の内周側に放射状に配置されている。ピストン52はリングカム48の凹凸によって駆動されて各シリンダ50内を摺動するように構成されている。ピストン52はピストン本体53とローラ60を含む。
【0084】
シリンダ50とシリンダ50内に設けられるピストン52により作動室54(油圧室)が画定されている。作動室54に対して作動油を供給および排出するための低圧弁56および高圧弁58が作動室54に連通可能に設けられている(
図7参照)。
【0085】
風がブレード4に当たると、ブレード4に加わる揚力によってX軸周りのモーメント成分(トルク)が生じ、このモーメント成分がブレード4を回転させる作用をする。ブレード4が回転すると、ブレード4が取り付けられたハブ6も回転する。ハブ6の回転により、ハブ6に取り付けられた油圧ポンプ20のロータ部16が回転する(
図6参照)。ロータ部16の回転により、ロータ部16の内周面に取り付けられたリングカム48が回転する。
【0086】
リングカム48が回転することにより、リングカム48の多数の凹凸(ローブ)によってローラ60が押圧され、ピストン本体53がシリンダ50の軸方向に往復運動を繰り返す(
図7参照)。
【0087】
ピストン本体53の往復運動により、ピストン本体53とシリンダ50により形成される作動室54の容積が周期的に変化する。作動室54の容積が減少するとき、作動室54の中の作動油が圧縮され、圧縮された作動油が高圧油になって、高圧油配管24に吐出される(圧縮工程)。作動室54の容積が増大するとき、作動室54の中に作動油が吸入される(吸入工程)。
【0088】
円筒部材8の内部を貫通するように配設された高圧油配管24に高圧油が吐出されると、高圧油は高圧油配管24を介して、油圧モータ22に供給される。高圧油の油圧により油圧モータ22が駆動されて、油圧モータ22の出力軸23は回転する。油圧モータ22の出力軸23の回転が発電機30の回転シャフトに伝達され、発電機30の回転シャフトが回転する。発電機30は回転シャフトの運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、電力を生成する。
【0089】
高圧油は油圧モータ22に対して仕事をすると、油圧が低下し低圧油となる。低圧油は円筒部材8の内部を貫通するように配設された低圧油配管26を介して、油圧モータ22から油圧ポンプ20に供給される。油圧ポンプ20に供給された低圧油は油圧ポンプ20により、再度油圧が高められ、高圧油となって、再び油圧モータ22に供給される。
【0090】
一方、ロータ7に作用する荷重のうち、X軸周りのモーメント成分(トルク)以外の成分は発電に寄与せず、それらの荷重は、ハブ6、主軸受10、円筒部材8、ナセル台板12、タワー3の順に伝達される。
【0091】
幾つかの実施形態では、ハブ6とロータ部16の間に、ハブ6からロータ部16に作用する荷重のうち、ロータ部16の回転軸まわりのモーメントを選択的にロータ部16に伝達するトルク伝達部を設ける。これにより、ドライブトレインパート9の一部としての油圧ポンプ20のロータ部16にハブ6からのトルクのみを選択的に伝達することができるから、油圧ポンプ20の構造設計が容易になり、油圧ポンプ20を軽量化することができる。トルク伝達部として、後述する油圧式サポート88やギヤカップリングなどを用いることができる。
【0092】
図8は、トルクに対する油圧式サポート88の動作原理を説明する図である。同図に示すように、油圧ポンプ20のロータ部16に、第1アーム部90Aと第2アーム部90Bが設けられている。なお、風力発電装置2が2枚翼風車である場合、第1アーム部90A及び第2アーム部90Bは、互いに対向して配置される一対のブレード4が設けられていない角度位置(アジマス角)に設けられていてもよい。
【0093】
油圧式サポート88は、第1アーム部90Aを挟んでその上下に設けられた第1油室91および第2油室92と、第2アーム部90Bを挟んでその上下に設けられた第3油室93および第4油室94と、第1油室91と第4油室94とを接続する第1配管96と、第2油室92および第3油室93を接続する第2配管98とからなる。これらの油室および配管は、非圧縮性流体であるオイル(油)で満たされている。各油室91〜94は、第1、第2アーム部90A、90Bの上下方向位置によって容積が変化するようになっている。
【0094】
図中矢印a方向のトルクがハブ6からロータ部16に加えられると、第1アーム部90Aから第2油室92へ矢印b方向の荷重が加わり、第2アーム部90Bから第3油室93へ矢印c方向の荷重が加わる。
【0095】
これにより、第2配管98で連通する第2油室92および第3油室93内の油はいずれも加圧される。そして、加圧された油によって、第1アーム部90Aには矢印b方向の反対方向に、第2アーム部90Bには矢印c方向の反対方向に、それぞれ反力が与えられる。よって、ハブ6からロータ部16に作用する荷重のうち、ロータ部16の回転軸まわりのモーメント(トルク)は油圧式サポート88を介してロータ部16に伝達される。
【0096】
図9は、直交方向の荷重に対する油圧式サポート88の動作原理を説明する図である。同図に示すように、ロータ部16を直交方向に変位させる力(図中矢印d方向)がロータ部16に加えられると、第1アーム部90Aから第1油室91へ矢印e方向の荷重が加わり、第2アーム部90Bから第3油室93へ矢印f方向の荷重が加わる。
【0097】
これにより、第1油室91内のオイルは、第1アーム部90Aの上方への移動量に応じた分だけ押し出され、第1配管96を介して第4油室94に流れ込む。同様に、第3油室93内のオイルは、第2アーム部90Bの上方への移動量に応じた分だけ押し出され、第2配管98を介して第2油室92に流れ込む。
【0098】
このように、ロータ部16を直交方向に変位させる力(図中矢印d方向)がロータ部16に加えられた場合、各配管96,98を介して連通する油室間でオイルが移動する。よって、ハブ6からロータ部16に作用する荷重のうち、ロータ部16の回転軸まわりのモーメント(トルク)以外の荷重成分(ここではd方向の力)は、基本的には油圧式サポート88の作用によってロータ部16に伝達されない。なお、油圧ポンプ20のロータ部16に伝達されない荷重成分は、主軸受10を介して円筒部材8に伝達される。
【0099】
上述のように、油圧式サポート88を設けることにより、ハブ6からロータ部16に作用する荷重のうち、ロータ部16の回転軸まわりのモーメントを選択的にロータ部16に伝達することができる。
【0100】
なお、油圧式サポート88とともに、あるいは油圧式サポート88に替えて、ギヤカップリングを用いてもよい。
【0101】
以上説明したように、上記再生可能エネルギー型発電装置では、ドライブトレインパート9を構成する油圧ポンプ20と油圧モータ22を分離し、ハブ6を挟んでナセル14とは反対側に油圧ポンプ20を配置している。そのため、ナセル14内部に油圧ポンプ20の設置スペースを設ける必要がなく、ナセル14を小型化してナセル重量を軽減できる。なお、こうした油圧ポンプ20の配置が可能であるのは、ハブ6を貫通する円筒部材8を介して油圧ポンプ20のステータ部18をナセル台板12に支持させるとともに、油圧ポンプ20と油圧モータ22との間の油配管24、26を円筒部材8の内部を貫通するように設けたためである。
【0102】
また、上記再生エネルギー型発電装置では、ブレード4の曲げモーメントに起因した荷重は、ハブ6、主軸受10、円筒部材8、ナセル台板12の順に伝達される。すなわち、上記再生エネルギー型発電装置におけるロードキャリパート11(
図1参照)は、ハブ6、主軸受10、円筒部材8及びナセル台板12を含んで構成される。
【0103】
これに対し、ハブ6の回転エネルギーは、ハブ6、油圧ポンプ20、油配管24,26、油圧モータ22の順に発電機30側に伝達される。すなわち、上記再生エネルギー型発電装置におけるドライブトレインパート9は、ハブ6、油圧ポンプ20、油配管24,26及び油圧モータ22を含んで構成される。
【0104】
このように、ドライブトレインパート9とロードキャリパート11という役割が異なる2つのパートを分離したことで、各々のパートの最適軽量化が可能になり、ナセル重量をさらに軽減できる。なお、各々のパートの分離が可能であるのは、ドライブトレインパート9の一部である油圧ポンプ20においてハブ6の回転エネルギーを油圧エネルギーに変換し、ロードキャリパート11の一部である円筒部材8を貫通する油配管24、26を介して油圧エネルギーを油圧モータ22に供給するようにしたためである。
【0105】
さらに、上記再生エネルギー型発電装置では、ハブ6を挟んでナセル14とは反対側に配置される油圧ポンプ20は、ナセル台板12のような取り外し困難な干渉物が下方に存在しないため、クレーンでの搬送作業が容易になる。よって、油圧ポンプ20のメンテナンス性が向上する。
【0106】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。上述した実施形態のうち複数を適宜組み合わせてもよい。
【0107】
例えば、
図2及び5に示す例示的な実施形態では、ドライブトレインパート9の一部を構成する油圧ポンプ20がハブ6を挟んでナセル14の反対側に配置されるが、他の実施形態では、油圧ポンプ20はナセル14側に配置される。
【0108】
図10は、一実施形態に係るハブ6及び油圧ポンプ20の断面図である。
図11は、
図10のA−A断面図である。
図12は、他の実施形態に係るハブ6及び油圧ポンプ20の断面図である。
【0109】
図10及び12に示すように、幾つかの実施形態では、ハブ6及びハブ6に取り付けられるブレード4で構成されるロータ7(
図1参照)の回転面に対する直交方向に沿って、ハブ6を貫通して延在する固定軸100が設けられる。固定軸100は、ナセル14のナセル台板12によって支持される。一実施形態では、固定軸100は、湾曲部102を有し、固定軸100のうちハブ6とは反対側の端部104まで連続している。固定軸100の端部104は、ナセル台板12に立設される。固定軸100は、中空構造であってもよいし、中実構造であってもよい。固定軸100とハブ6との間には、ハブ6を固定軸100に回転自在に支持するための一対の主軸受110A,110Bが設けられる。
【0110】
ハブ6には、固定軸100が貫通する第1貫通穴34及び第2貫通穴36が形成されている。第1貫通穴34は、第2貫通穴36よりもナセル14から遠くに位置する。主軸受110Aは、第1貫通穴34の内周面と、該内周面に対向する固定軸100の外周面との間に設けられる。同様に、主軸受110Bは、第2貫通穴36の内周面と、該内周面に対向する固定軸100の外周面との間に設けられる。
【0111】
ハブ6には、油圧ポンプ20のロータ部16が固定される。また、ロータ部16の内周側又は外周側には、油圧ポンプ20のステータ部18が配置される。
【0112】
図10に示す例示的な実施形態では、固定軸100に固定されてシリンダブロック82を含むステータ部18が、ハブ6に固定されてカム(リングカム48)を含むロータ部16の内周側に配置される。これに対し、
図12に示す例示的な実施形態では、固定軸100又はナセル台板12に固定されてシリンダブロック82を含むステータ部18が、ハブ6に固定されてカム(リングカム48)を含むロータ部16の外周側に配置される。なお、
図12には、ステータ部18が、第1サポート部材106を介してナセル台板12に固定され、且つ、第2サポート部材108を介して固定軸100に固定された例を示している。
【0113】
図10及び11に示すように、幾つかの実施形態では、シリンダブロック82は固定軸100の外周に設けられ、シリンダブロック82に設けられた複数のシリンダ50内をピストン52のピストン本体53が摺動するようになっている。ピストン52は、ピストン本体53に取り付けられたローラ60を介してリングカム48によって押圧され、シリンダ50によって案内されながらシリンダ50の軸方向に往復運動する。リングカム48の内周面には複数のローブ(凹凸)が設けられており、リングカム48の内周面にローラ60が当接するようになっている。シリンダブロック82を含むステータ部18と、リングカム48を含むロータ部16との間にはポンプ軸受72,74が設けられており、ステータ部18に対するロータ部16の相対的な回転運動が可能になっている。なお、第2貫通穴36に位置する主軸受110Bと、この主軸受110Bに近いポンプ軸受72とを共通化し、1個の軸受としてもよい。
図10及び11に示す実施形態では、シリンダブロック82が固定された固定軸100をナセル台板12に支持するようにしたので、油圧ポンプ20の支持構造が簡素化される。
【0114】
他の実施形態では、
図12に示すように、シリンダブロック82は、リングカム48を含むロータ部16の外周側に設けられ、シリンダブロック82に設けられた複数のシリンダ50内をピストン52のピストン本体53が摺動するようになっている。ピストン52は、ピストン本体53に取り付けられたローラ60を介してリングカム48によって押圧され、シリンダ50によって案内されながら往復運動する。リングカム48の外周面には複数のローブ(凹凸)が設けられており、リングカム48の外周面にローラ60が当接するようになっている。シリンダブロック82を含むステータ部18と、リングカム48を含むロータ部16との間にはポンプ軸受72,74が設けられており、ステータ部18に対するロータ部16の相対的な回転運動が可能になっている。
【0115】
図10及び12に示す実施形態によれば、ハブ6の第1貫通穴34及び第2貫通穴36の位置に第1主軸受110A及び第2主軸受110Bがそれぞれ設けられるので、ロータ7に対する荷重(ロータ7の自重に起因した重力荷重や風荷重)が作用する荷重負荷点200の両側に第1主軸受110Aと第2主軸受110Bが位置することになる。よって、軸受荷重が低減され、主軸受110A,110Bのコンパクト化及び軽量化が可能となる。主軸受110A,110Bは、製造設備及び製造技術に関する制約上、製造可能な軸受のサイズに限界がある。よって、主軸受110A,110Bのコンパクト化は、発電量がより一層大きい再生エネルギー型発電装置の実現を可能にするために有益である。
【0116】
また、ブレード4の曲げモーメントに起因した荷重は、ハブ6、主軸受110(110A,110B)、固定軸100、ナセル台板12の順に伝達される。すなわち、
図10及び12において、ロードキャリパートは、ハブ6、主軸受110(110A,110B)、固定軸100及びナセル台板12を含んで構成される。これに対し、ハブ6の回転エネルギーは、ハブ6、油圧ポンプ20の順に伝達される。すなわち、
図10及び12において、ドライブトレインパートは、ハブ6及び油圧ポンプ20を含んで構成される。このように、ドライブトレインパートとロードキャリパートという役割が異なる2つのパートを分離したことで、各々のパートの最適軽量化が可能になり、ナセル重量をさらに軽減できる。
【0117】
なお、
図10〜12に示す例示的な実施形態では、ハブ6に固定されるロータ部16と、ロータ部18の外周側又は内周側に配置されるステータ部18とを含む油圧ポンプ20が設けられるが、他の実施形態では、油圧ポンプ20に替えて、ハブ6によって駆動される任意の被駆動部が設けられる。被駆動部は、ハブ6によって駆動される発電機であってもよい。