(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成された溶融部分を備えた本体と、前記溶融可能材料を溶融させるために、前記本体に隣接して配置する誘導熱源を含む、溶融可能材料を溶融するための容器であって、
前記本体は、前記溶融される溶融可能材料に接触する溶融表面を形成するように配置された複数の細長いセグメントと、
前記複数の細長いセグメントのそれぞれを隣接する細長いセグメントから電気的に絶縁するための、前記複数の細長いセグメントのそれぞれの間の絶縁材料とを含み、
前記溶融表面に陥凹を形成するために、前記絶縁材料が前記溶融表面から離れている容器。
前記細長いセグメントのそれぞれが、溶融中に前記セグメントの温度を調節するために、内部を通じて液体を流すよう構成された少なくとも1つの温度調節ラインを含む、請求項1に記載の容器。
表面を有し、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成された溶融部分を備えた本体と、前記溶融部分内に受容した前記溶融可能材料を溶融するよう構成された、前記本体内に埋め込まれた誘導コイルと、前記本体に隣接し、溶融可能材料を前記本体から受容するための真空金型と、前記真空金型及び前記本体に真空を与えるための少なくとも1つの真空源とを含み、
前記本体は、複数の細長い誘電材料セグメントにより形成され、
前記セグメントは、前記溶融される溶融可能材料に接触する溶融表面を形成するように配置され、
前記本体に隣接して配置され、かつその中を通って移動可能である、前記溶融された材料を前記溶融部分から前記真空金型へ移動させるためのプランジャを備える、溶融可能材料を溶融するための容器。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法的対象語を指すために使用される。例として、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂又は2つ以上のポリマー樹脂を意味する。本明細書に記載されるいずれの範囲も、包括的である。本明細書の全体を通して使用される用語「実質的に」及び「約」は、小規模な変動を記述及び説明するために使用される。例えば、それらの用語は、±2%以下など、±1%以下など、±0.5%以下など、±0.2%以下など、±0.1%以下など、±0.05%以下などの、±5%以下を指すことができる。
【0022】
バルク凝固アモルファス合金、すなわちバルク金属ガラス(「BMG」)は、最近開発された部類の金属材料である。これらの合金は、比較的穏やかな速度で、凝固及び冷却させることができ、それらはアモルファスの、非晶質(すなわち、ガラス質)状態を室温で保持する。アモルファス合金は、それらの結晶性の対応物よりも、多くの優れた特性を有する。しかしながら、冷却速度が十分に高速ではない場合には、冷却の間にその合金の内部で結晶が形成される恐れがあり、そのため、アモルファス状態の利益が失われる恐れがある。例えば、バルクアモルファス合金部品の製造に伴う1つの重要な課題は、徐冷又は合金原料中の不純物のいずれかによる、それらの部品の部分的な結晶化である。BMG部品内では、高い程度のアモルファス化度(また反対に、低い程度の結晶化度)が望ましいため、制御された量のアモルファス化度を有するBMG部品を鋳造するための方法を開発する必要性がある。
【0023】
図1(米国特許第7,575,040号より入手)は、Liquidmetal Technologyによって製造されたZr−−Ti−−Ni−−Cu−−BeファミリーのVIT−001シリーズからの、例示的なバルク凝固アモルファス合金の粘度−温度グラフを示す。アモルファス固体の形成の間、バルク凝固アモルファス金属に関しては、明確な液体/固体変態が存在しないことに留意するべきである。この溶融合金は、ガラス転移温度近傍で固体形態に近づくまで、過冷却の増大と共に、ますます粘稠になる。したがって、バルク凝固アモルファス合金に関する凝固前面の温度は、ガラス転移温度近傍であり得、その温度近傍で、この合金は、急冷アモルファスシート製品を取り出すために、実際に固体として作用する。
【0024】
図2(米国特許第7,575,040号より入手)は、例示的なバルク凝固アモルファス合金の時間−温度−変態(TTT)冷却曲線、すなわちTTT図を示す。バルク凝固アモルファス金属は、従来の金属と同様に、冷却の際の液体/固体の結晶化変態を起こさない。その代わりに、高温で(「融解温度」Tm近傍で)見出される、流動性の高い非晶質形態の金属は、温度が低下するにつれて(ガラス転移温度Tg近傍まで)より粘稠になり、最終的に従来の固体の外面的な物理的特性を呈する。
【0025】
バルク凝固アモルファス金属に関しては、液体/結晶化変態は存在しないにも関わらず、対応する結晶相の熱力学的液相温度として、「融解温度」Tmを定義することができる。この体系の下では、バルク凝固アモルファス合金の融解温度での粘度は、約0.1ポアズ〜約10,000ポアズの範囲に、更に場合によっては、0.01ポアズ未満にあることが可能である。この「融解温度」でのより低い粘度は、BMG部品を成形するためのバルク凝固アモルファス金属による、シェル/金型の複雑な部分のより速く完全な充填をもたらす。更には、BMG部品を成形するための溶融金属の冷却速度は、冷却の間の時間−温度プロファイルが、
図2のTTT図内の結晶化領域を境界付けるノーズ形状領域を横断しないようなものでなければならない。
図2では、Tノーズは、結晶化が最も急速であり、かつ最短の時間スケールで生じる、臨界結晶化温度Txである。
【0026】
過冷却液体領域、すなわちTg〜Txの温度領域は、バルク凝固合金の結晶化に対する極度の安定性を明示するものである。この温度領域内では、バルク凝固合金は、高粘度の液体として存在し得る。この過冷却液体領域内でのバルク凝固合金の粘度は、ガラス転移温度での10
12Pa・sから、結晶化温度である過冷却液体領域の高温限界での10
5Pa・sに至るまでの間で変化し得る。そのような粘度を有する液体は、加圧力の下で、実質的な塑性歪みを経験し得る。本明細書の実施形態は、成形及び分離方法として、この過冷却液体領域内での大きい塑性成形性を利用する。
【0027】
Txについて明確にする必要がある。技術的には、TTT図に示されるノーズ形状の曲線は、Txを温度及び時間の関数として説明する。それゆえ、金属合金を加熱又は冷却する間に辿る軌跡とは関係なく、このTTT曲線に当る場合に、Txに到達している。
図1(b)では、Txは破線として示されるが、これは、Tmの近位からTgの近位まで、Txが変化し得るためである。
【0028】
図2の概略的なTTT図は、時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(1)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tm以上〜Tg未満のダイカストの加工処理方法を示す。ダイカストの間、この成形は、軌跡がTTT曲線に当ることを回避するために、実質的に急速冷却と同時に行われる。時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(2)、(3)及び(4)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tg以下からTm未満までの超塑性成形(SPF)に関する加工処理方法。SPFでは、アモルファスBMGは、過冷却液体領域内へと再加熱され、利用可能な加工処理ウインドウは、ダイカストよりも遙かに大きく、より良好なプロセスの可制御性をもたらすことが可能である。SPFプロセスは、冷却の間の結晶化を回避するための急速冷却を必要としない。また、例示的軌跡(2)、(3)、及び(4)によって示されるように、SPFの間の最高温度が、Tノーズ超又はTノーズ未満、最大約Tmとなる状態で、SPFを実施することができる。アモルファス合金の断片を昇温させつつ、TTT曲線に当ることを回避させた場合には、「Tg〜Tm」に加熱しても、Txには到達していない。
【0029】
20℃/分の加熱速度で得られる、バルク凝固アモルファス合金の典型的な示差走査熱量計(DSC)加熱曲線は、大部分は、TTTデータを横切る具体的な軌跡を説明するものであり、特定温度のTgと、DSC加熱傾斜がTTT結晶化開始と交差する場合のTxと、最終的に、同じ軌跡が融解に関する温度範囲と交差する場合の融解ピークとが認められるであろう。
図2の軌跡(2)、(3)、及び(4)の上り傾斜部分によって示されるような急速な加熱速度で、バルク凝固アモルファス合金を加熱する場合には、TTT曲線を完全に回避することが可能であり、DSCデータは、加熱の際、ガラス転移を示すが、Txは示さない。このことについての別の考察方法は、軌跡(2)、(3)、及び(4)は、結晶化曲線に当らない限り、TTT曲線のノーズ(及び更にその上方)〜Tg線の温度内の、いずれの場所にも収まることができる点である。そのことは、加工処理温度が上昇するにつれて、軌跡内の水平な平坦部が遙かに短くなり得ることを単に意味する。
相
【0030】
本明細書での用語「相」は、熱力学状態図内で見出すことができるものを指すことができる。相は、その全体にわたって、材料の全ての物理的特性が本質的に均一である、空間の領域(例えば、熱力学系)である。物理的特性の例としては、密度、屈折率、化学組成、及び格子周期性が挙げられる。相の単純な説明は、化学的に均一で、物理的に異なっており、及び/又は機械的に分離可能な材料の領域である。例えば、ガラスジャー内の、氷及び水からなる系では、その角氷が1つの相であり、水が第2の相であり、その水の上の湿り空気が第3の相である。ジャーのガラスは、別の分離相である。相は、2成分、3成分、4成分以上の溶体などの固溶体、又は金属間化合物などの化合物を指すこともある。別の例としては、アモルファス相は、結晶相とは区別ができる。
金属、遷移金属、及び非金属
【0031】
用語「金属」は、電気陽性の化学元素を指す。本明細書での用語「元素」は、一般的に周期表に見出すことができる元素を指す。物理的には、基底状態の金属原子は、占有状態に近い、空状態を有する部分的充満帯を含む。用語「遷移金属」とは、不完全な内部電子殻を有し、一連の元素内の、最も電気陽性のものと最も電気陽性ではないものとの間の遷移リンクとして役立つ、周期表の第3族〜第12族の範囲内の金属元素のうちのいずれかである。遷移金属は、複数の原子価、着色化合物、及び安定な錯イオンを形成する能力によって特徴付けられる。用語「非金属」は、電子を失って陽イオンを形成する能力を有さない化学元素を指す。
【0032】
用途に応じて、任意の好適な非金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金(又は「合金組成物」)は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の非金属元素などの複数の非金属元素を含み得る。非金属元素は、周期表内の第13族〜第17族内に見出される、いずれかの元素とすることができる。例えば、非金属元素は、F、Cl、Br、I、At、O、S、Se、Te、Po、N、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、Pb、及びBのうちの、いずれか1つとすることができる。場合により、非金属元素はまた、第13族〜第17族内の特定の半金属(例えば、B、Si、Ge、As、Sb、Te、及びPo)を指すこともある。一実施形態では、非金属元素としては、B、Si、C、P、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。したがって、例えば、その合金は、ホウ化物若しくは炭化物、又は双方を含み得る。
【0033】
遷移金属元素は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウム、及びウンウンビウムのうちのいずれかとすることができる。一実施形態では、遷移金属元素含有BMGは、Sc、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、及びHgのうちの少なくとも1つを有し得る。用途に応じて、任意の好適な遷移金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の遷移金属元素など、複数の遷移金属元素を含み得る。
【0034】
本明細書で説明される、合金又は合金「サンプル」又は「試料」合金は、任意の形状又はサイズを有し得る。例えば、合金は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの形状を有し得る、微粒子の形状を有し得る。この微粒子は、任意のサイズを有し得る。例えば、その微粒子は、約5マイクロメートル〜約80マイクロメートルなど、約10マイクロメートル〜約60マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約50マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約45マイクロメートルなど、約20マイクロメートル〜約40マイクロメートルなど、約25マイクロメートル〜約35マイクロメートルなどの、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの平均直径を有し得る。例えば、一実施形態では、微粒子の平均直径は、約25マイクロメートル〜約44マイクロメートルである。一部の実施形態では、ナノメートルの範囲のものなどの、より小さい微粒子、又は100マイクロメートルよりも大きいものなどの、より大型の微粒子を使用することができる。
【0035】
合金のサンプル又は試料はまた、遙かに大きい寸法のものにすることもできる。例えば、インゴットなどのバルク構造構成要素、電子デバイスの筺体/ケーシング、又は更にミリメートル、センチメートル、又はメートルの範囲の寸法を有する構造的構成要素の一部分とすることができる。
固溶体
【0036】
用語「固溶体」は、溶体の固体形態を指す。用語「溶体」は、固体、液体、気体、又はこれらの組み合わせとすることができる、2種以上の物質の混合物を指す。この混合物は、均質又は不均質とすることができる。用語「混合物」とは、互いに組み合わされ、一般的には分離することが可能である、2種以上の物質の組成物である。一般的には、それらの2種以上の物質は、互いに化合されない。
合金
【0037】
一部の実施形態では、本明細書で説明される合金組成物は、完全に合金化することができる。一実施形態では、「合金」とは、一方の原子が他方の原子に置き換わるか、又は原子間の格子間位置を占有する、2種以上の金属の均質な混合物又は固溶体を指すものであり、例えば、黄銅は、亜鉛及び銅の合金である。合金とは、複合材料とは対照的に、金属マトリックス中の1種以上の化合物などの、金属マトリックス中の1種以上の元素の部分的又は完全な固溶体を指すことができる。本明細書での合金という用語は、単一の固相の微細構造を呈し得る全率固溶合金、及び2つ以上の相を呈し得る部分的溶体の双方を指すことができる。本明細書で説明される合金組成物は、合金を含むもの、又は合金含有複合材料を含むものを指すことができる。
【0038】
それゆえ、完全に合金化した合金は、固溶体相であれ、化合物相であれ、又は双方であれ、その構成成分の均質な分布を有し得る。本明細書で使用される用語「完全に合金化された」は、許容誤差範囲内の僅かな変異を説明することができる。例えば、その用語は、少なくとも95%の合金化など、少なくとも99%の合金化など、少なくとも99.5%の合金化など、少なくとも99.9%の合金化などの、少なくとも90%の合金化を指すことができる。本明細書での百分率は、文脈に応じて、体積百分率又は重量百分率のいずれかを指すことができる。これらの百分率は、合金の部分ではない組成又は相の観点によるものとすることができる不純物によって均衡させることができる。
アモルファスすなわち非晶質固体
【0039】
「アモルファス」すなわち「非晶質固体」は、結晶に特徴的な格子周期性を欠く固体である。本明細書で使用するとき、「アモルファス固体」は、ガラス転移を通じて、加熱されると液体状の状態へと軟化及び変態するアモルファス固体である、「ガラス」を含む。一般的には、アモルファス材料は、結晶に特徴的な長距離秩序を欠くが、それらのアモルファス材料は、化学結合の性質による、原子の長さスケールでの何らかの短距離秩序を保有し得る。アモルファス固体と結晶性固体との区別は、X線回折及び透過型電子顕微鏡検査などの構造特性評価技術によって判定される、格子周期性に基づいて行なうことができる。
【0040】
用語「秩序」及び「無秩序」とは、多粒子系内での何らかの対称性又は相関性の有無を指示する。用語「長距離秩序」及び「短距離秩序」は、長さスケールに基づいて、材料内の秩序を区別する。
【0041】
固体における秩序の最も厳密な形態は格子周期性であり、特定のパターン(単位格子内の原子配列)が何度も繰り返され、空間の並進的な一様の空間充填を形成する。この格子周期性は、結晶の定義特性である。可能な対称性は、14種のブラベー格子及び230種の空間群に分類されている。
【0042】
格子周期性は、長距離秩序を示唆するものである。1つの単位格子のみが知られる場合には、その並進対称性によって、任意の距離での、全ての原子配置を正確に予測することが可能である。一般に逆も真であるが、ただし、例えば、完全に確定的な充填を有するが、格子周期性を保有しない、準結晶の場合は例外である。
【0043】
長距離秩序は、同じサンプルの遠隔の部分が、相関する挙動を呈する、物理系を特徴付ける。この長距離秩序は、相関関数、すなわち次のスピン−スピン相関関数として表現することができる。
【数1】
【0044】
上記の関数では、sはスピン量子数であり、xは特定の系内の距離関数である。この関数は、x=x’である場合、単位元に等しく、距離|x−x’|が増大するにつれて減少する。典型的には、この関数は、長距離で、指数関数的にゼロまで減衰し、その系は無秩序であると見なされる。しかしながら、この相関関数が大きい|x−x’|で一定値へと減衰する場合には、その系は長距離秩序を保有すると述べることができる。この関数が、距離の累乗でゼロまで減衰する場合には、準長距離秩序と呼ぶことができる。大きい値の|x−x’|を構成するものは、相対的であることに留意されたい。
【0045】
系は、その挙動を定義する一部のパラメータが、経時的に進展しないランダム変数である(すなわち、それらが急冷又は凍結される)場合、急冷無秩序、例えば、スピングラスを呈すると延べることができる。この急冷無秩序は、ランダム変数自体が進展することが可能な、焼鈍無秩序とは反対である。本明細書の実施形態は、急冷無秩序を含む系を包含する。
【0046】
本明細書で説明される合金は、結晶性、部分結晶性、アモルファス、又は実質的アモルファスとすることができる。例えば、合金サンプル/試料は、少なくともある程度の結晶化度を含み得るものであり、結晶粒/結晶は、ナノメートル及び/又はマイクロメートルの範囲のサイズを有する。あるいは、合金は、完全にアモルファスであるなどの、実質的アモルファスとすることができる。一実施形態では、合金組成物は、完全に結晶性であるなど、実質的に結晶性であり、少なくとも実質的にアモルファスではない。
【0047】
一実施形態では、他のアモルファス合金中の1種の結晶又は複数種の結晶の存在は、その合金中の「結晶相」として解釈することができる。合金の結晶化度の程度(又は一部の実施形態では、略して「結晶化度」)とは、その合金中に存在する結晶相の量を指すことができる。その程度とは、例えば、合金中に存在する結晶の分率を指すことができる。この分率は、文脈に応じて、体積分率又は重量分率を指すことができる。アモルファス合金がどの程度「アモルファス」であるかの尺度を、アモルファス化度とすることができる。アモルファス化度は、結晶化度の程度の観点により測定することができる。例えば、一実施形態では、低い程度の結晶化度を有する合金は、高い程度のアモルファス化度を有すると述べることができる。一実施形態では、例えば、60体積%の結晶相を有する合金は、40体積%のアモルファス相を有し得る。
アモルファス合金又はアモルファス金属
【0048】
「アモルファス合金」とは、50体積%超のアモルファス含有量、好ましくは90体積%超のアモルファス含有量、より好ましくは95体積%超のアモルファス含有量、最も好ましくは99体積%超〜ほぼ100体積%のアモルファス含有量を有する合金である。上述のように、アモルファス化度が高い合金は、結晶化度の程度が同等に低いことに留意されたい。「アモルファス金属」とは、無秩序な原子スケール構造を有するアモルファス金属材料である。結晶性であり、したがって高度に秩序化された原子配置を有する、殆どの金属とは対照的に、アモルファス合金は非晶質である。そのような無秩序構造が、冷却の間に液体状態から直接作り出される材料は、「ガラス」と称される場合がある。したがって、アモルファス金属は、一般に「金属ガラス」又は「ガラス金属」と称される。一実施形態では、バルク金属ガラス(「BMG」)とは、その微細構造が少なくとも部分的にアモルファスである合金を指すことができる。しかしながら、アモルファス金属を作り出すためには、極度な急速冷却の他にも、物理蒸着、固相反応、イオン照射、メルトスピニング、及び機械的合金化を含めた、幾つかの方法が存在する。アモルファス合金は、それらが調製される方法とは関係なく、単一の部類の材料とすることができる。
【0049】
アモルファス金属は、様々な急冷法を通じて作り出すことができる。例えば、アモルファス金属は、回転する金属ディスク上に溶融金属をスパッタリングすることによって、作り出すことができる。1秒当り約数百万度の急冷は、結晶が形成するには過度に高速である得るため、その金属は、ガラス状態で「固定」される。また、アモルファス金属/合金は、厚い層のアモルファス構造、例えば、バルク金属ガラスの形成を可能にするための、十分に低速な臨界冷却速度で作り出すこともできる。
【0050】
用語「バルク金属ガラス」(「BMG」)、バルクアモルファス合金(「BAA」)、及びバルク凝固アモルファス合金は、本明細書で互換的に使用される。それらの用語は、少なくともミリメートルの範囲の最小寸法を有する、アモルファス合金を指す。例えば、その寸法は、少なくとも約1mmなど、少なくとも約2mmなど、少なくとも約4mmなど、少なくとも約5mmなど、少なくとも約6mmなど、少なくとも約8mmなど、少なくとも約10mmなど、少なくとも約12mmなどの、少なくとも約0.5mmとすることができる。幾何学形状に応じて、その寸法は、直径、半径、厚さ、幅、長さなどを指すことができる。BMGはまた、少なくとも約1.0cmなど、少なくとも約2.0cmなど、少なくとも約5.0cmなど、少なくとも約10.0cmなどの、センチメートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有する、金属ガラスとすることもできる。一部の実施形態では、BMGは、少なくともメートルの範囲の、少なくとも1つの寸法を有し得る。BMGは、金属ガラスに関連する、上述の形状又は形態のうちの、いずれかを呈することができる。したがって、本明細書で説明されるBMGは、一部の実施形態では、重要な一態様での従来の堆積技術によって作製される薄膜とは異なるものとすることができ、前者のBMGは、後者の薄膜よりも遙かに大きい寸法のものとすることができる。
【0051】
アモルファス金属は、純金属ではなく、合金とすることができる。この合金は、著しく異なるサイズの原子を含有し得ることにより、溶融状態で、低い自由体積がもたらされる(またそれゆえ、他の金属及び合金よりも、桁違いとなるまでの高い粘度を有する)。この粘度は、原子が、規則格子を形成するために十分に移動することを防ぐ。この材料構造は、冷却の間の低収縮性、及び塑性変形に対する抵抗性をもたらし得る。一部の場合には結晶性材料の弱点である、この結晶粒界の不在は、例えば、磨耗及び腐食に対する、より良好な抵抗性をもたらし得る。一実施形態では、技術的にはガラスであるが、アモルファス金属はまた、酸化物ガラス及びセラミックよりも遙かに強靭であり、脆性ではないものにすることもできる。
【0052】
アモルファス材料の熱伝導率は、それらの結晶性対応物の熱伝導率よりも低いものにすることができる。より緩徐な冷却の間でも、アモルファス構造の形成を達成するために、3種以上の構成成分で合金を作製して、より高いポテンシャルエネルギー、及びより低い形成の確率を有する、複合結晶単位をもたらすことができる。アモルファス合金の形成は、以下の幾つかの因子:合金の構成成分の組成、構成成分の原子半径(好ましくは、高い押し詰め密度及び低い自由体積を達成するために、12%超の有意差を有する)、並びに結晶核生成を阻止し、溶融金属が過冷却状態に留まる時間を延長する、構成成分の組み合わせの負の混合熱によって決まり得る。しかしながら、アモルファス合金の形成は、多種多様な変数に基づくものであるため、合金組成物がアモルファス合金を形成するか否かを事前に判定することは、困難な場合がある。
【0053】
例えば、ホウ素、ケイ素、リン、及び他のガラス形成剤と、磁性金属(鉄、コバルト、ニッケル)とのアモルファス合金は、低い保磁力及び高い電気抵抗を有する、磁性のものとすることができる。この高い抵抗は、例えば、トランス用磁心として有用な特性である、交番磁界に晒された場合の渦電流による低損失をもたらす。
【0054】
アモルファス合金は、潜在的に有用な様々な特性を有し得る。具体的には、アモルファス合金は、同様の化学組成の結晶性合金よりも強固である傾向にあり、それらは結晶性合金よりも大きい可逆性(「弾性」)変形に耐え得る。アモルファス金属は、それらの強度を、それらの非晶質構造から直接導き出すものであり、この非晶質構造は、結晶性合金の強度を制限する欠陥(転位などの)を全く有し得ない。例えば、Vitreloy(商標)として知られる、1つの最新のアモルファス金属は、高級チタンのほぼ2倍の引張り強さを有する。一部の実施形態では、室温での金属ガラスは延性ではなく、張力が負荷されると突然破損するが、このことは、差し迫った破壊が明白ではないため、信頼性が重要な用途での、その材料の適用性を制限する。それゆえ、この課題を克服するために、延性の結晶性金属の樹枝状の粒子又は繊維を含有する金属ガラスマトリックスを有する、金属マトリックス複合材料を使用することができる。あるいは、障害を生じる傾向がある元素(例えば、Ni)が少ないBMGを、使用することができる。例えば、Niを含まないBMGを使用することにより、そのBMGの延性を改善することができる。
【0055】
バルクアモルファス合金の別の有用な特性は、これらが真性のガラスであり、換言すれば、加熱により軟化及び流動し得ることである。これは、ポリマーと同様に射出成形などの容易な加工処理を可能にする。結果として、アモルファス合金は、スポーツ用品、医療用デバイス、電子部品及び電子装備、並びに薄膜を作製するために使用することができる。アモルファス金属の薄膜は、高速酸素燃料技術を介して、保護コーティングとして堆積させることができる。
【0056】
材料は、アモルファス相、結晶相、又は双方を有し得る。これらのアモルファス相及び結晶相は、同じ化学組成を有し、微細構造のみが異なる(すなわち、一方はアモルファスであり、他方は結晶質である)ものとすることができる。一実施形態での微細構造は、25×以上の倍率の顕微鏡によって明らかとなるような材料の構造を指す。あるいは、これらの2つの相は、異なる化学組成及び微細構造を有し得る。例えば、組成物は、部分的アモルファス、実質的アモルファス、又は完全アモルファスとすることができる。
【0057】
上述のように、アモルファス化度の程度(また反対に結晶化度の程度)は、合金中に存在する結晶の分率によって測定することができる。その程度とは、合金中に存在する結晶相の体積分率又は重量分率を指すことができる。部分的アモルファス組成物とは、少なくとも約10体積%など、少なくとも約20体積%など、少なくとも約40体積%など、少なくとも約60体積%など、少なくとも約80体積%など、少なくとも約90体積%などの、少なくともその約5体積%がアモルファス相である組成物を指すことができる。用語「実質的に」及び「約」は、本明細書中の他の場所で定義されている。したがって、少なくとも実質的にアモルファスである組成物とは、少なくとも約95体積%など、少なくとも約98体積%など、少なくとも約99体積%など、少なくとも約99.5体積%など、少なくとも約99.8体積%など、少なくとも約99.9体積%などの、少なくともその約90体積%がアモルファスであるものを指すことができる。一実施形態では、実質的アモルファス組成物は、内部に存在する、何らかの付随的な少量の結晶相を有し得る。
【0058】
一実施形態では、アモルファス合金組成物は、アモルファス相に関して均質とすることができる。組成が均一である物質は、均質である。このことは、不均質である物質とは対照的である。用語「組成」とは、物質中の化学組成及び/又は微細構造を指す。物質は、その物質の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ組成を有する場合に均質である。例えば、微粒子懸濁液は、その微粒子懸濁液の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ体積の粒子を有する場合に均質である。しかしながら、顕微鏡下で個々の粒子を視認することが可能な場合もある。均質な物質の別の例は、空気であり、その空気中の種々の成分は等しく浮遊するが、空気中の粒子、気体、及び液体は、個別に分析することができ、又は空気から分離することもできる。
【0059】
アモルファス合金に関して均質である組成とは、その微細構造の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス相を有するものを指すことができる。換言すれば、その組成物は、組成物の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス合金を巨視的に含む。代替の実施形態では、この組成は、非アモルファス相を内部に有する、アモルファス相を有する複合材料のものとすることができる。この非アモルファス相は、1つの結晶又は複数の結晶とすることができる。それらの結晶は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの、任意の形状の微粒子の形態とすることができる。一実施形態では、結晶は、樹枝状形態を有し得る。例えば、少なくとも部分的にアモルファスの複合組成物は、アモルファス相マトリックス中に分散する樹枝状結晶の形状の結晶相を有し得るものであり、この分散は、均一又は不均一なものとすることができ、アモルファス相と結晶相とは、同じ化学組成又は異なる化学組成を有し得る一実施形態では、それらの相は実質的に同じ化学組成を有し得る。別の実施形態では、結晶相は、BMG相よりも延性とすることができる。
【0060】
本明細書で説明される方法は、任意のタイプのアモルファス合金に適用可能とすることができる。同様に、組成物又は物品の成分として、本明細書で説明されるアモルファス合金は、任意のタイプのものとすることができる。このアモルファス合金は、Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Beの元素、又はこれらの組み合わせを含み得る。すなわち、この合金は、その化学式又は化学組成中に、これらの元素のいずれかの組み合わせを含み得る。それらの元素は、種々の重量百分率又は体積百分率で存在し得る。例えば、鉄「ベース」合金とは、内部に存在する有意な重量百分率の鉄を有する、合金を指すことができ、その重量百分率は、例えば、少なくとも約40重量%など、少なくとも約50重量%など、少なくとも約60重量%など、少なくとも約80重量%などの、少なくとも約20重量%などとすることができる。あるいは、一実施形態では、上述の百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。したがって、アモルファス合金は、ジルコニウムベース、チタンベース、白金ベース、パラジウムベース、金ベース、銀ベース、銅ベース、鉄ベース、ニッケルベース、アルミニウムベース、モリブデンベースなどとすることができる。この合金はまた、特定の目的に適合するように、上述の元素のうちのいずれかを含まない場合もある。例えば、一部の実施形態では、この合金、又はこの合金を含む組成物は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、この合金又は複合材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを全く含まない。
【0061】
例えば、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu,Fe)
b(Be,A1,Si,B)
cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは30〜75の範囲であり、bは5〜60の範囲であり、cは0〜50の範囲である。あるいは、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは40〜75の範囲であり、bは5〜50の範囲であり、cは5〜50の範囲である。この合金はまた、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有し得るものでもあり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは7.5〜35の範囲であり、cは10〜37.5の範囲である。あるいは、この合金は、式(Zr)
a(Nb,Ti)
b(Ni,Cu)
c(A1)
dを有し得るものでもあり、式中、a、b、c、及びdはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは0〜10の範囲であり、cは20〜40の範囲であり、dは7.5〜15の範囲である。上述の合金系の例示的一実施形態は、Liquidmetal Technologies(CA,USA)によって製作されるような、Vitreloy−1及びVitreloy−101などの、商品名Vitreloy(商標)の、Zr−Ti−Ni−Cu−Beベースのアモルファス合金である。種々の系のアモルファス合金の一部の実施例が、表1に記載される。
【0062】
これらのアモルファス合金はまた、(Fe,Ni,Co)ベース合金などの、鉄合金とすることもできる。かかる組成物の例は、米国特許第6,325,868号、同第5,288,344号、同第5,368,659号、同第5,618,359号、及び同第5,735,975号、InoueらのAppl.Phys.Lett.,Volume 71,p 464(1997)、ShenらのMater.Trans.,JIM,Volume 42,p 2136(2001)、並びに日本特許出願第200126277号(公開番号2001303218(A))で開示されている。1つの例示的な組成物は、Fe
72Al
5Ga
2P
11C
6B
4である。別の実施例は、Fe
72Al
7Zr
10Mo
5W
2B
15である。本明細書でのコーティングに使用することができる、別の鉄ベース合金系が、米国特許出願公開第2010/0084052号で開示されており、そのアモルファス金属は、例えば、括弧内に記される組成の範囲で、マンガン(1〜3原子%)、イットリウム(0.1〜10原子%)、及びケイ素(0.3〜3.1原子%)を含有し、また括弧内に記される組成の指定範囲で以下の元素:クロム(15〜20原子%)、モリブデン(2〜15原子%)タングステン(1〜3原子%)、ホウ素(5〜16原子%)、炭素(3〜16原子%)、及び残部の鉄を含有する。
【0063】
上述のアモルファス合金系は、Nb、Cr、V、及びCoを含めた添加遷移金属元素などの、添加元素を更に含み得る。これらの添加元素は、約20重量%以下など、約10重量%以下など、約5重量%など、約30重量%以下で存在し得る。一実施形態では、この任意選択の添加元素は、コバルト、マンガン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、イットリウム、チタン、バナジウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つであり、炭化物を形成して、耐摩耗性及び耐食性を更に改善する。更なる任意選択の元素としては、融点を低下させるための、合計で最大約2%の、好ましくは1%未満のリン、ゲルマニウム、及びヒ素を挙げることができる。他の少量の不純物は、約2%未満、好ましくは0.5%未満とするべきである。
【表1】
【0064】
一部の実施形態では、アモルファス合金を有する組成物は少量の不純物を含み得る。不純物元素を意図的に添加することにより、機械的特性(例えば、硬度、強度、破壊機構など)の改善、及び/又は耐食性の改善などの、その組成物の特性を修正することができる。あるいは、それらの不純物は、加工処理及び製造の副生成物として得られるもののような、不可避の付随的な不純物として存在し得る。これらの不純物は、約5重量%など、約2重量%など、約1重量%など、約0.5重量%など、約0.1重量%などの、約10重量%以下とすることができる。一部の実施形態では、これらの百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。一実施形態では、この合金サンプル/組成物は、アモルファス合金から本質的になる(少量の付随的な不純物のみを有する)。別の実施形態では、この組成物はアモルファス合金を含む(観察可能な微量の不純物を全く有さない)。
【0065】
一実施形態では、最終部品は、バルク凝固アモルファス合金の臨界鋳造厚さを超過するものであった。
【0066】
本明細書の実施形態では、バルク凝固アモルファス合金が高粘度の液体として存在することができる過冷却液体領域の存在により、超塑性成形が可能となる。大きい塑性変形を得ることができる。過冷却液体領域内で大きく塑性変形する能力は、成形プロセス及び/又は切断プロセスに使用される。固体とは対照的に、この液体のバルク凝固合金は、局所的に変形し、このことが、切断及び成形のために必要とされるエネルギーを大幅に低下させる。切断及び成形の容易性は、合金、金型、及び切断工具の温度に応じて変化する。温度が高くなるにつれて、粘度が低下し、その結果として、切断及び成形が容易になる。
【0067】
本明細書の実施形態は、例えば、Tg〜Txで実施される、アモルファス合金を使用する熱可塑性成形プロセスを利用することができる。本明細書では、Tx及びTgは、結晶化の開始の温度、及びガラス転移の開始の温度として、典型的な加熱速度(例えば、20℃/分)での標準的なDSC測定から決定される。
【0068】
アモルファス合金構成要素は、臨界鋳造厚さを有し得るものであり、最終部品は、その臨界鋳造厚さよりも厚い厚さを有し得る。更には、加熱及び整形操作の時間並びに温度は、アモルファス合金の弾性歪み限界が、1.0%以上、好ましくは1.5%以上であることを実質的に維持し得るように選択される。本明細書の実施形態との関連では、ガラス転移近傍の温度とは、成形温度がガラス転移未満、ガラス転移温度若しくはガラス転位温度近傍、及びガラス転移温度超とすることができることを意味するが、結晶化温度T
xより低い温度であることが好ましい。冷却工程は、加熱工程での加熱速度と同様の速度で、好ましくは、加熱工程での加熱速度を超える速度で実施される。冷却工程はまた、好ましくは、形成荷重及び成形荷重が依然として維持されている間にも達成される。
電子デバイス
【0069】
本明細書の実施形態は、BMGを使用する電子デバイスの製作で有用であり得る。本明細書での電子デバイスとは、当該技術分野において既知の任意の電子デバイスを指すことができる。例えば、この電子デバイスは、携帯電話及び固定電話などの電話、あるいは、例えばiPhone(商標)を含めたスマートフォン、及び電子eメール送信/受信デバイスなどの、いずれかの通信デバイスとすることができる。この電子デバイスは、デジタルディスプレイ、TVモニタ、電子ブックリーダ、携帯ウェブブラウザ(例えば、iPad(商標))、及びコンピュータモニタなどの、ディスプレイの一部とすることができる。この電子デバイスはまた、携帯DVDプレーヤ、従来型DVDプレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ、ビデオゲームコンソール、携帯音楽プレーヤ(例えば、iPod(商標))などの音楽プレーヤなどを含めた、娯楽デバイスとすることもできる。この電子デバイスはまた、画像、ビデオ、音声のストリーミングを制御することなどの、制御を提供するデバイス(例えば、Apple TV(商標))の一部とすることもでき、又は電子デバイス用の遠隔制御装置とすることができる。この電子デバイスは、コンピュータ、あるいはハードディスクドライブタワーの筐体若しくはケーシング、ラップトップ筐体、ラップトップキーボード、ラップトップトラックパッド、デスクトップキーボード、マウス、及びスピーカなどの、コンピュータ付属品の一部とすることができる。この物品はまた、腕時計又は時計などのデバイスにも適用することができる。
【0070】
本明細書に記述される方法、技法、及び装置は、記述されている実施形態を限定することを意図したものではない。
【0071】
本明細書に開示されるように、装置又はシステム(あるいはデバイス又は機械)は、材料(例えばアモルファス合金)の溶融及び射出成形を行うよう構成され得る。この装置は、高融解温度で溶融してから、その溶融材料を金型に注入して成形を行うことにより、そのような材料又は合金を加工するよう構成される。下記で更に述べられるように、この装置の部品は互いに一線上に配置される。いくつかの実施形態により、この装置の部品(又はこのシステムへのアクセス)は、水平軸に沿っている。
【0072】
下記の実施形態は単に例示目的のためのものであり、限定することを意図するものではない。
【0073】
図3は、そのような例示的システムの概略図を示す。より具体的には、
図3は、射出成形装置又はシステム10を示す。一実施形態により、射出成形システム10は、内部に受容した溶融可能材料を溶融するよう構成された溶融ゾーン12と、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16内に射出するよう構成された少なくとも1本のプランジャロッド14とを有する。一実施形態では、少なくとも、プランジャロッド14及び溶融ゾーン12は一直線上にかつ水平軸(例えばX軸)上に設けられ、これによりプランジャロッド14は実質的に溶融ゾーン12を通って水平方向に(例えばX軸に沿って)移動し、溶融材料を金型16内に移動させる。この金型は、溶融ゾーンに隣接して配置され得る。
【0074】
溶融される材料、すなわち「溶融可能材料」は、任意の数の形状でこの溶融ゾーンに受容され得る。例えば、溶融可能材料は、インゴット(固体状態)、半固体状態、予熱されたスラリー、粉末、ペレットなどの形態で溶融ゾーン12に供給され得る。単に例示目的のため、本開示全体で、溶融可能材料は、固体状態の原材料であるインゴット25の形態であるものとして説明及び図示される。ただし、溶融される材料は、固体状態、半固体状態、予熱されたスラリー、粉末、ペレットなどの形態で、射出成形システム又は装置10内に受容されてもよく、材料の形態は限定されないことに留意されたい。いくつかの実施形態において、搭載ポート(例えばインゴット搭載ポート18の図示例)が、射出成形システム10の一部として提供され得る。搭載ポート18は、任意の数の場所で装置内に提供される別々の開口部又は領域であってもよい。一実施形態において、搭載ポート18は、装置の1つ以上の部分を通過する経路であり得る。例えば、材料(例えばインゴット)は、プランジャ14によって容器20内に水平方向に挿入することができ、あるいは、射出システム10の金型側から水平方向に挿入することができる(例えば、金型16を通って、及び/又は移送スリーブ30を通って、容器20内へ)。他の実施形態において、溶融可能材料は、他の方法及び/又は他の装置を用いて(例えば射出システムの反対側を通して)溶融ゾーン12内に供給することができる。
【0075】
溶融ゾーン12は、溶融可能材料を受容し、その材料が溶融状態に加熱された際にそれを保持するよう構成された溶融機構を有する。溶融機構は、容器20の形態であってよく、これは例えば、溶融可能材料を受容し、かつ、中にある材料を溶融するよう構成された本体を有する。本開示全体にわたって使用されている容器は、物質を高温に加熱するために採用された材料で作製された容器である。例えば、一実施形態において、この容器はるつぼであってよく、例えばボート形るつぼであり得る。一実施形態において、容器20は、真空下(例えば真空装置38又はポンプによって適用される)で溶融可能材料用に利用できるよう構成された低温炉床溶融装置である。いくつかの実施形態において、容器は温度調節された容器である。容器20はまた、本体の受容部分又は溶融部分24内に材料(例えば原材料)を投入するための入口も有し得る。いくつかの実施形態において、容器20の本体は、実質的にU字型の構造を含む。ただし、この図示されている形状は、限定を意味するものではない。容器20は、任意の数の形状又は構成を含み得る。この容器の本体は、ある長さを有し、長手かつ水平方向に延在していてよく、これにより溶融した材料がプランジャ14を用いてここから水平方向に移送される。加熱又は溶融のための材料は、容器の溶融部分24に受容することができる。溶融部分24は、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成される。例えば、溶融部分24は材料を受容するための表面を有する。容器20は、送達のための射出システムの1つ以上の装置(例えば搭載ポート及びプランジャ)を使用して溶融部分24内に材料(例えばインゴットの形態)を受容することができる。システム10に採用するための容器の実施形態に関する更なる説明は、
図4〜
図9を参照して下記に記載される。
【0076】
容器20の本体は、溶融した材料を移動させるために、プランジャロッドを、内部を通じて水平方向に受容するよう構成され得る。すなわち、一実施形態において、溶融機構はプランジャロッドと同じ軸上にあり、本体は、このプランジャロッドの少なくとも一部分を受容するような構成及び/又は寸法にすることができる。よって、プランジャロッド14は、実質的に容器20内を通じて移動することにより、溶融した材料(加熱/溶融後)を容器から金型16内に移動させるよう構成することができる。
図3に図示されているシステム10の実施形態を参照し、例えば、プランジャロッド14は、容器20を通じて、右から左に向かって水平方向に動き、溶融した材料を金型16内へと移動させて押し出す。
【0077】
溶融ゾーン12を加熱して、容器20内に受容した溶融可能材料を溶融させるために、射出システム10には、その溶融可能材料を加熱して溶融させるのに使用する熱源も含まれる。本体自体の実質的に全体ではなくとも、少なくとも容器の溶融部分24は、内部に受容した材料を溶融させるべく、加熱されるよう構成される。加熱は、例えば、溶融可能材料を溶融させるよう構成された、溶融ゾーン12内に配置された誘導源26を使用して達成される。一実施形態において、誘導源26は容器20に隣接して配置される。例えば、誘導源26は、実質的に、容器本体の一定の長さにわたってその周囲に、螺旋状に配置されたコイルの形状であり得る(
図4〜
図6も参照)。別の一実施形態において、誘導源26はコイルの形状であり、容器20の本体に埋め込まれている(
図7〜
図9の説明を参照)。したがって、容器20は、電源供給又は電源を用いて、誘導源/コイル26に電力を供給することにより、溶融部分24内の溶融可能材料(例えば挿入されたインゴット)を電磁誘導により溶融させるよう構成され得る。よって、溶融ゾーン12には誘導ゾーンが含まれ得る。誘導コイル26は、容器20を溶融させて濡らすことなしに、容器20に収容されている任意の材料を加熱し溶融させるよう構成される。誘導コイル26は、溶融部分24に向けて(及び、
図4〜
図6に示す構成の容器20に向けて)無線周波(RF)を放射する。容器の本体20とコイル26は、水平軸(例えばX軸)に沿って水平方向の長手方向に配置されるよう構成され得る。
【0078】
一実施形態において、容器20は温度調節された容器である。そのような容器は、1本以上の温度調節管を含んでもよく、これは、容器内に受容した材料の溶融中に容器20の本体の温度を調節する(例えば容器を強制的に冷やす)ために、流体(例えば水又はその他の流体)を内部に流すよう構成される。そのような強制冷却されたるつぼはまた、プランジャロッドと同じ軸上に提供され得る。冷却管は、容器20の本体自体が過熱して溶融するのを防ぐのに役立つことができる。冷却管は、容器内の液体の流れを誘導するよう構成された冷却システムに接続することができる。冷却管は、液体又は流体が内部を通じて流れるための1つ以上の入口及び出口を含み得る。この冷却管の入口及び出口は、任意の数の方法で構成することができ、限定することを意図したものではない。例えば、冷却管は、中の材料が溶融して容器温度が調節されるように(すなわち、熱が吸収され、かつ容器が冷却されるように)、溶融部分24に対して配置され得る。冷却管の数、配置及び/又は方向は限定されるべきではない。
図4〜
図6の実施形態は、容器の本体内にある冷却管48を使用する例を示す。冷却液体又は冷却流体は、誘導源26が通電されているときに、溶融可能材料の溶融中に冷却管を流れるよう構成され得る。
【0079】
材料が容器20内で溶融された後、プランジャ14を使用して、その溶融した材料を、物体、部品又は構成片へと成形するために、容器20から金型16へと押し出すことができる。溶融可能材料が合金(例えばアモルファス合金)である場合において、金型16は、成形されたバルクアモルファス合金の物体、部品又は構成片を形成するよう構成される。金型16は、それを通じて溶融した材料を受容するための入口を有する。容器20の出口と金型16の入口は、一直線上かつ水平軸上に設けることができ、これによりプランジャロッド14は、容器の本体22を通って水平方向に移動し、溶融した材料を、金型16の入口を介して金型内に射出する。
【0080】
前述のように、金属又は合金などの材料を成形するのに使用される射出成形システム10のようなシステムは、金型又はダイキャビティ内に溶融した材料を押し出す際、真空を利用することができる。射出成形システム10は、少なくとも溶融ゾーン12及び金型16に真空圧を適用するよう構成された少なくとも1つの真空源38又はポンプを更に含み得る。この真空圧は、中の材料を溶融し、移動又は移送し、成形するのに使用される射出成形システム10の少なくとも部分に適用され得る。例えば容器20、移送スリーブ30、及びプランジャロッド14は、すべて真空下であってよく、及び/又は真空チャンバ内で密閉されていてもよい。
【0081】
一実施形態において、金型16は、材料を成形する際に内部の真空圧を調節するよう構成された封入構造である真空金型である。例えば、一実施形態において、真空金型16は、互いに対して隣接して(それぞれ)配置された、第1プレート(「A」金型又は「A」プレートとも呼ばれる)、第2プレート(「B」金型又は「B」プレートとも呼ばれる)を含む。第1プレートと第2プレートはそれぞれ一般的に、それらの間で溶融した材料を成形するために、それぞれに伴う金型キャビティを有する。この金型キャビティは、注入スリーブ又は移送スリーブ30を介してその間に受容される溶融した材料を成形するよう構成される。金型キャビティは、部品を内部で形成及び成形するために、部品の金型キャビティを含んでもよい。
【0082】
一般に、第1プレートは、移送スリーブ30に接続することができる。一実施形態により、プランジャロッド14は、溶融した材料を、容器20から、移送スリーブ30を介して、金型16へと移動させるよう構成される。移送スリーブ30(時に、当該技術分野及び本明細書においてショットスリーブ、コールドスリーブ又は注入スリーブと呼ばれる)は、溶融ゾーン12と金型16との間に提供され得る。移送スリーブ30は開口部を有し、開口部は、これを通じて溶融した材料を受容し、(プランジャ14を用いて)金型16内に移送するよう構成される。この開口部は、水平軸(例えばX軸)に沿って水平方向に設置され得る。移送スリーブは、コールドチャンバである必要はない。一実施形態において、少なくともプランジャロッド14、容器20(例えばその受容部分又は溶融部分)、及び移送スリーブ30の開口部は、一直線上にかつ水平軸上に設けられ、これによりプランジャロッド14は、溶融した材料を移送スリーブ30の開口部内に移動させる(及び、その後通過させる)ために、容器20を通って水平方向に移動できる。
【0083】
溶融した材料は、移送スリーブ30を通って水平方向に押され、入口(例えば第1プレート内)を介し、第1プレートと第2プレートとの間を通って金型キャビティ内に入る。材料の成形中、少なくとも第1プレート及び第2プレートは、その間にある材料(例えばアモルファス合金)が少なくとも酸素及び窒素に曝露するのを実質的に排除するよう構成される。具体的には、プレート並びにそれらのキャビティから、大気空気が実質的に排除されるよう、真空が適用される。真空ラインに接続された少なくとも1つの真空源38を使用して、真空金型16の内部に真空圧を適用する。例えば、システムの真空又は真空レベルは、溶融及びその後の成形サイクル中において、1×10
-1〜1×10
-4Torrに保持され得る。別の一実施形態において、この真空レベルは、溶融及び成形プロセス中において、1×10
-2〜約1×10
-4Torrに維持される。当然、他の圧力レベル又は範囲、例えば、1×10
-9Torr〜1×10
-3Torr、及び/又は1×10
-3Torr〜0.1Torrも使用することができる。真空イジェクタボックス(図示なし)は、金型16の第1プレートと第2プレートとの間の金型キャビティから、成形された(アモルファス合金)材料(または溶融した部品)を取り出すよう構成される。この取り出し機構は、成形された材料又は部品を外すために、作動するよう構成された作動機構(図示なし)に関連付けられ又は接続される(例えば、少なくともプレート間の真空圧が解放された後、第1部品及び第2部品が互いからに離れるよう水平方向に動いた後に)。
【0084】
装置10には、任意の数又はタイプの金型を採用することができる。例えば、任意の数のプレートを、第1プレートと第2プレートとの間及び/又はこれらに隣接するように設けて、金型を形成することができる。例えば「A」シリーズ、「B」シリーズ、及び/又は「X」シリーズの金型として知られる金型を、射出成形システム/装置10に設けることができる。
【0085】
したがって、部品が均一に成形かつ形成される可能性は、射出成形システム10内の材料に対して実施されるプロセスに依存する。溶融可能材料を均一に加熱し、このような射出成形装置10の中にある溶融した材料の温度を維持することが、均一に成形された部品を形成するのに役立つ。容器20及び溶融ゾーン12の構成を改善して、そのような機能を提供することができる。
【0086】
例えば、
図4は、溶融可能材料を内部で溶融させるための本体42(又はベース)を含む容器40の例示的概略図を示す。容器40は、真空下(例えば真空装置38によって適用される)で溶融可能材料用に利用できるよう構成された低温炉床溶融装置である。本体42は、(例えば、
図8に示すように搭載ポートを介して)溶融する溶融可能材料を内部で受容するよう構成された溶融部分44又は領域(例えば溶融部分24など)を有する。溶融部分44は、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成される。例えば、溶融部分44は材料を受容するための表面を有する。加熱は、容器40の本体42の長さを実質的に取り巻く螺旋パターンで、本体42に隣接して配置される誘導コイル26を使用して達成される。したがって、容器40は、誘導コイル26に電力を供給することにより、溶融部分44の中で、材料(例えば金属又は合金)を誘導により溶融するよう構成される。
【0087】
図に示すように、容器40を取り巻く本体42及びコイル26は、水平方向に配置されるよう構成される。例えば、容器40は、材料を溶融して水平方向(かつ長手方向)に材料を移動させるために配置された射出成形システム内で使用されるよう構成することができる。
【0088】
好ましい一実施形態において、セグメント46は、誘導コイル26の巻きとは異なる面に提供され、例えば、セグメント46の長手方向はコイルの回転方向に対して実質的に垂直である。別の一実施形態において、端子部は、コイルの巻きと同じ面にある。
【0089】
一実施形態において、容器40の本体42は、実質的にU字形構造を含む。すなわち、セグメント46は、側壁がそれ自体から延出する底部を本体が有するよう構成及び配置される。一実施形態において、各セグメントは、実質的に丸くなった、及び/又は滑らかな表面を含み得る。例えば、溶融部分44の表面は、曲がった上面及び底面を備えた各セグメントを形成することにより、(例えば
図5に示すように)円弧状に形成することができる。ただし、本体の形状及び/又は表面は、限定することを意図したものではない。
【0090】
容器40の本体42は、複数の細長いセグメント46又は端子部から形成され、これは互いに電気的に絶縁されるよう構成される。
図5及び
図6により詳しい細部を示すように、セグメント46は互いに間隔をあけて配置され、これにより隣接するセグメントの間には隙間がある。各隙間には、絶縁材料54が提供される。この絶縁材料はセグメント46を互いに電気的に絶縁し、これにより、セグメントが溶融に使用されるとき(コイルが加熱されているとき)、電流は各セグメントに別々に生成される。最終的な結果として、容器40に吸収される全体の電力が減少する。したがって、容器40の効率が改善される。
【0091】
一実施形態により、絶縁材料54の層が容器10の1つ以上の表面に適用され、そのような改善が実施される。一実施形態において、材料54は、セグメント46の間の層の形で適用され得る。ただし、この材料54は均一である必要はなく、完全に覆う必要はなく、特定の厚さ又は寸法である必要はなく、また表面全体が端から端まで覆われている必要はないことが理解されよう。実際、セグメント46の間に提供される絶縁材料54の量は変化してもよい。一実施形態において、
図6に詳細を示すように、絶縁材料54は、溶融可能材料を受容するため、表面に陥凹52が形成されるように適用することができる。陥凹は、表面との接触を減らすよう構成された、構造表面内の空間として定義される。容器40内の陥凹は、少なくとも、溶融可能材料と溶融部分44の表面との間の接触を減少させ、これによって、熱損失及び熱移動が減少する。陥凹52の数及び位置は、所定又は不規則であり得る。例えば、陥凹の数は、セグメント46の数、又は絶縁材料54が制限されている隙間の数(すなわち、隣接するセグメント間の隙間のすべてが陥凹を有している必要はなく、むしろ、一部のものはその間に完全な層を含み得る)。容器の表面にある陥凹は、少なくとも溶融部分44の表面に沿ってその中へと延在する。この陥凹は、その全体長さに沿って互いに平行であり得る。別の一実施形態において、材料54は、各セグメント46の長さに沿って不規則に適用され得る。
【0092】
図6に戻って参照し、各陥凹52は本体42内へと延在する(例えば、外表面に向かって)。陥凹52の大きさ及び寸法は、限定することを意図しない。一実施形態において、陥凹52は、ある幅及びある深さを含む。例えば、幅は、横方向(例えば、容器40の長手方向に対して垂直)の開口部の寸法であり得る。一実施形態において、陥凹はまた、ある長さ(例えば、容器40の長手方向に対する長さ)を含み得る。陥凹52の寸法は、隣接するセグメント間の隙間の大きさによって変わり得る。一実施形態において、様々な深さの沢山の陥凹が、容器40の溶融部分44の表面に提供されてもよい。更に別の一実施形態において、陥凹52は複数の深さ又は寸法を含み得る。例えば、陥凹52は階段状形状を含んでもよく、これによって、陥凹の一部は本体内で更なる距離にわたって延在し得る。別の一例として、陥凹の列(又は溝)は、セグメント46間への絶縁材料54の適用に応じて、容器表面に沿って様々な深さで提供されてもよい。
【0093】
一実施形態において、陥凹52の幅又は直径Dは約0.01mm〜約1.5mmである。別の一実施形態において、陥凹52の幅又は直径Dは約0.01mm〜約1.0mmである。一実施形態において、陥凹52の深さ又は高さHは約0.01mm〜約4.0mmである。別の一実施形態において、陥凹52の深さ又は高さHは約0.01mm〜約2.0mmである。これらの寸法は例示的であり、限定的なものではない。
【0094】
また、容器40の1つ以上の領域に適用される際の絶縁材料54の厚さは、限定的であるべきではない。一実施形態において、材料54の厚さは、例えば材料54の配置の位置によって異なってもよい。
【0095】
任意の数及び/又はタイプの方法を使用して、容器40のセグメント46に絶縁材料54を適用することができ、この方法は限定的であるべきではない。例えば、材料54は、いくつかの実施形態において、コーティングとして適用することができる。加えて又は別の方法として、スプレーコーティング、ラミネート、シールディング、浸漬、熱溶射、フレーム溶射、若しくはプラズマ溶射(thermal, flame, or plasma spraying)、めっき、化学蒸着、物理蒸着プロセス、及び/又は他の熱若しくは化学的プロセスなどの技法を使用して、材料54をセグメント46に追加することができる。本明細書で記述される容器の任意の表面又は領域に材料を適用するのに使用されるプロセスは、一貫した及び/又は均一な被覆を含むことに限定されるべきではない。
【0096】
他の一実施形態により、絶縁材料54は、セグメント46全体を包むジャケットとして適用され得る。よって、セグメント46はそれぞれ、その側面、上面、底面に絶縁性コーティングを有し得る。
【0097】
一実施形態において、断熱特性を有する材料54(例えばセラミック)が本体42の表面に提供される場合、本体42(又はセグメント46及び/若しくは材料54)を形成するのに使用される材料は限定されない。例えば、容器40のセグメント46は、RF感受性であり得る材料で形成することができる。例えば、セグメント46が材料54などの断熱材で覆われている場合、本体42の感受性は実質的に低減され得る。また、より硬く、耐摩耗性が高く、伝導性が低い合金(例えばベリリウム銅)を使用して、材料54でコーティングすることにより、電力消費が増加し得る。
【0098】
絶縁材料54は、1つ以上の材料で形成されてよく、また材料の組み合わせで形成されてもよい。実施形態において、材料54は熱伝導性が良くない材料であり、すなわち熱伝導率が低い材料である。例えば、一実施形態において、材料54は、本体/セグメントを形成するのに使用される材料に比べ、熱を伝達する能力が3分の1未満の割合の材料であり得る。一実施形態において、材料54は磁性材料であり得る。別の一実施形態において、材料54は非磁性であり得る。
【0099】
一実施形態において、材料54はセラミック、石英、ステンレススチール、チタン、クロム、銅、銀、金、ダイヤモンド状炭素、イットリア、酸化イットリウム、及びジルコニアからなる群の少なくとも1つを含み得る。例えば、セラミックはRFエネルギー(すなわち誘導コイル26からの)に対して非伝導性であり、これは、RFエネルギーによってセラミック材料が加熱されず、温度が変化しないことを意味する。材料54のような熱伝導率の低い材料を容器40のセグメント46の間又は上に使用することによって、溶融した材料及び容器の温度を能動的に調節する。一実施形態において、セラミックは、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、又はこれらの組み合わせを含み得る。別の一実施形態において、セラミックは、イットリア、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、又はこれらの組み合わせを含む。更に別の一実施形態において、材料54は酸化イットリウムであり得る。
【0100】
実施形態において、容器に使用される絶縁材料は、コイルの形状、絶縁材料の位置、及び/又はデバイスにより加工される合金に応じて、熱伝導率が低くとも高くともよい(例えば、
図7〜
図13において後述されるもののような実施形態は、異なる絶縁体を使用し得る)。
【0101】
一実施形態により、容器40はまた、溶融部分44内に受容した溶融可能材料を溶融している間の、本体42の温度調節を支援するため、内部に流体(例えば水又はその他の流体)を流すことができるよう構成された1つ以上の温度調節ライン50を本体42内に有し得る。冷却管50は、容器42の本体40自体が過剰に加熱して溶融するのを防ぐのに役立つ。冷却管50は、液体又は流体が内部を通じて流れるための1つ以上の入口及び出口を含み得る。後述するように、この冷却管の入口及び出口は、任意の数の方法で構成することができ、限定することを意図したものではない。冷却管50は、溶融部分44に対して本体42内に配置されるよう構成される。冷却管50は、表面の材料が溶融して容器温度が調節されるように(すなわち、熱が吸収され、かつ容器が冷却されるように)、溶融部分44に対して配置され得る。例えば、ある長さを含み、長手方向に延在するボート形又はるつぼ型の容器について、その溶融部分44も、長手方向に延在し得る。一実施形態により、冷却管50は、溶融部分44に対して長手方向に配置され得る。例えば、冷却管50は、少なくとも本体42の底部に配置することができる(例えば、下側又は底面上のセグメント内)。別の一実施形態において、冷却管50は、水平方向又は横方向に配置され得る。
【0102】
別の一実施形態において、細長いセグメント46はそれぞれ、溶融中に個々のセグメントの温度を調節するための、内部を通じて液体を流すよう構成された、少なくとも1つの温度調節ライン50を含み得る。更に別の一実施形態において、冷却管50は、セグメント46を全体として冷却するよう構成され得る。例えば、各端子部の中に冷却管50を通すのではなく、冷却管を、容器本体42の周囲に提供することができる。絶縁材料54がセグメント46の複数の側面の周囲に提供される一実施形態において、冷却管50は絶縁材料54内に提供され得る。
【0103】
冷却管50の数、配置及び/又は方向は限定されるべきではない。冷却管50は、本体42の底面内及び/又は任意の側壁内に提供され、任意の数の位置及び方向で提供され得る。また、冷却管の寸法(例えば直径又は幅)は、限定的ではない。冷却管の寸法は、例えば、本体に含まれる冷却管の数によって、あるいは、含まれているセグメント又は材料の寸法によって、異なり得る。この寸法はまた、厚さ、及び/又は、望ましい冷却の量に基づき得る。
【0104】
容器の冷却管の入口と出口は、任意の数の方法で構成され得る。例えば、一実施形態において、冷却流体は、液体が一方向に流れるように、各冷却管に流入しかつ流出するよう構成することができる。他の一実施形態において、液体は互い違いの方向に流れるよう構成することができ、例えば、隣接する各ラインには、交互に入口と出口が含まれ得る。加えて、冷却管は、冷却管の間に液体を流すよう構成された1つ以上の入口/出口を有するよう構成することができる。例えば、容器が長手方向に延在する冷却管を含む一実施形態において、1つ以上の冷却管には、別の冷却管に向かって延在する1つ以上の横方向又は延在するラインが含まれ得、これによって互いに流体連通し得る。すなわち、液体は、本体に沿って長手方向に流れるだけでなく、接続された冷却管を通ってこれらの間も流れるよう、構成される。
【0105】
したがって、上述の実施形態は、容器によって吸収されるエネルギー量を低減するのに役立ち、これにより、溶融される材料に対してより大きなエネルギーが供給される。より大きなエネルギーを供給できるため、システムがより高い溶融温度を達成できる。しかしながら、これは、誘導コイル26により大きなエネルギーを印加する必要があることを必ずしも意味するものではないことに留意されたい。むしろ、本明細書で開示される容器(例えば容器40)を利用した場合、より高い溶融温度が達成できるため、より小さなエネルギー印加が可能になることによって溶融プロセスが改善される。
【0106】
加えて、合金などの溶融可能材料を溶融状態にするのは、誘導コイル(例えばコイル26)に大量の電流を通すことによって達成され得る。これにより、局所的な振動電磁場が生じる。この局所的な電磁場は、渦電流伝搬に対する合金の抵抗によって、材料/合金中にエネルギー(熱)を拡散させる。この技法を使用した場合の副作用は、コイルを通るよう強いられる電流に由来する抵抗発熱効果により、コイル材料自体(コイル26)が高温になることである。
【0107】
コイルの抵抗発熱が、コイル材料を軟化又は溶融させるのに十分なほど顕著である用途においては、何らかの形のコイル冷却を採用すべきである。よって、容器の冷却管に加えて、又は別の方法として、本明細書の実施形態に開示される誘導コイルは、冷却システム又は冷却管を伴うよう構成され得る。すなわち、加熱中又はシステム使用中に、誘導コイルを冷却するために、同じ又は別個の冷却システムを使用することができる。例えば、
図14は、誘導コイルを冷却するのに使用可能な冷却システムの概略図を示す。「冷却装置」は、例えば、
図3に示す冷却システムの一部であり得る。この冷却装置は、冷却材料、液体、流体、又は気体をシステムの1つ以上の部分(これは誘導コイルであり得る)に供給するよう構成される。冷却は、「能動的」であってよく、ここにおいて流体又は気体を使用して、コイル材料から熱を運び去る。一実施形態により、気体又は流体は、管の外に形成されたコイル、又はコイルの周囲部分を通ってポンプで押し流され、これにより熱は、能動的に冷却される地点に向かってコイルに沿って拡散される。
【0108】
いずれの場合でも、冷却流体又は気体が、コイル材料から冷却流体又は気体へとエネルギー(熱の形態で)を移送させるような温度で供給され、下流へ又はコイルから離れるよう運び去って、冷却装置により流体又は気体からこの熱エネルギーを除去し(閉ループシステム)、あるいは、流体又は気体が大気中、地中、保持タンク等へと流出するようになっている(開ループシステム)。
【0109】
単一の冷却装置が、機械の数多くの異なる構成部分へと冷却水を供給することができ、この構成部分には、本明細書で開示される誘導コイル26及び/又は容器が含まれるがこれらに限定されない。冷却装置は、冷却流体をある固定温度に戻してから、流体をコイルに戻し、これによりコイルに入る際の冷却流体の温度が既知となるようにする機能を有し得る。
【0110】
冷却流体は、冷却管内に流れ又はポンプで送り込まれるよう選択的に活性化することができる。いくつかの実施形態において、この流体又は気体は、コイルが活性化されている(すなわち加熱されている)間のみ、ポンプで送り込まれるか、あるいはコイルに隣接し得る。いくつかの実施形態において、この流体又は気体は、コイルを安全な動作温度に十分に維持するために、ポンプで送り込まれるよう構成することができる。例えば、システムは、センサ読み取り値に基づいて冷却管/システムに流体又は気体を供給するようプログラムすることができる。
【0111】
冷却管は、冷却装置/システムと冷却されるコイル(又は容器)との間の、短距離(1メートル未満)又は長距離(数メートル)にわたり得る。よって、冷却装置/システムは、射出成形システム近く又はこれに隣接して、射出成形システム内に、あるいは射出成形システムからある距離離れて(例えば別の部屋に)、配置することができる。
【0112】
図7〜
図9は、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成された溶融部分64を備えた本体62と、本体62内に埋め込まれた誘導コイル66とを有する、溶融可能材料を内部に保持して溶融させるための容器60を示す別の一実施形態を開示する。誘導コイル66は、溶融部分64内に受容した溶融可能材料を溶融するよう構成される。一実施形態により、埋め込まれた誘導コイル66は、溶融部分64を取り巻くよう構成されている。本体62は、中を通って延在する開口部を備えた管状の形状を有し、溶融部分64を形成している。開口部は、中を通るプランジャ14などのプランジャを受容するよう構成され、これにより、溶融した材料を溶融ゾーンの本体から金型へと移動させることができる。
【0113】
溶融部分64は材料を受容するための表面を有する。加熱は、溶融部分64のある長さの周りを実質的に取り巻く本体62内で、螺旋状に埋め込まれ構成された誘導コイル66を使用して達成される。コイル66は、溶融部分64を実質的に取り巻くよう構成される。したがって、システムは、誘導コイル66に電力を供給することにより、溶融部分44の中で、材料(例えば金属又は合金インゴット)を誘導により溶融するよう構成される。コイル66を本体62の材料内に埋め込むことで、合理化されたより効率的な溶融装置が形成され、溶融される材料がより大きな体積分率で容器内を満たすようにコイル66が配置される。体積分率が大きくなるほど、加熱がより効率的になり得る。例えば、アモルファス合金インゴットの外径から約1ミリメートル離れるようにコイルが配置された場合、加熱プロセスの効率が増加し得る。
【0114】
図に示すように、本体62及びコイル66は、水平方向に配置されるよう構成される。例えば、容器60は、材料を溶融して水平方向(かつ長手方向)に材料を移動させるために配置される射出成形システム10内で使用されるよう構成することができる。しかしながら、一実施形態において、容器60は垂直に配置され、垂直射出成形システムに使用することもできる。
【0115】
本体62(例えば、コイルが中に埋め込まれた状態の材料の長さ、直径、厚さ)、内部の溶融部分64(例えば直径)及び容器60のその他の部分の寸法は、システム10の溶融ゾーン12の寸法又は溶融される部品の寸法に応じて調節することができる。寸法は限定的であるべきではない。
【0116】
一実施形態において、容器60の本体62は、非伝導性の誘電体又は絶縁体材料(例えば工業用セラミック)で形成され得る。工業用セラミックを使用することにより、コイル66から生じるRF又は磁界が、本体62内を直接通過し、溶融部分64の溶融可能材料へと達することができる。したがって、セラミック材料を使用することにより、本体62の材料と溶融される溶融可能材料との間の反応を最小限に抑えることができる。また、溶融可能材料のスカル形成及び劣化も最小限に抑えることができる。一実施形態において、本体62は、窒化物セラミック(例えばcylon)から形成される。
【0117】
図10は、別の一実施形態による容器に使用するための、別のコイル構成を示す。単に例示目的のため、
図10には容器又はセグメントの本体は示されていない。しかしながら、図示されているコイルは、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成された容器の本体に埋め込まれるよう構成されていることが理解されよう。
【0118】
より具体的には、
図10は、関連付けられた容器の溶融部分に受容された溶融可能材料を溶融するよう構成された誘導コイル68を示す。一実施形態により、埋め込まれた誘導コイル68は、容器の溶融部分を取り巻くよう構成されている。この本体(図示なし)は、溶融部分を形成するよう中を通って延在する開口部を備えた管状の構成を有し得る。開口部は、中を通るプランジャ14などのプランジャを受容するよう構成され、これにより、溶融した材料を溶融ゾーンの本体から金型へと移動させることができる。図示のように、誘導コイル68は鳥かご形状で提供され、本体の各端に隣接して配置されるよう構成されたループ70及び72を含む。ループ70及び72は、細長い支柱74を介して互いに接続されている。ループと支柱は、伝導性材料で製造される。各支柱は、コイルが特定の周波数で共鳴する(例えば、コイルによってある特定の周波数で、RFエネルギーを非常に効率的に発散させる)よう調整された固有のキャパシタンスを有する。
【0119】
誘導コイル68は、誘導コイル68に電力を供給することにより、関連付けられた容器の溶融部分内で、材料(例えば金属又は合金インゴット)を誘導により溶融するよう構成される。コイル68を本体の材料内に埋め込むことで、合理化されたより効率的な溶融装置が形成され、溶融される材料がより大きな体積分率で容器内を満たすようにコイルが配置される。体積分率が大きくなるほど、加熱がより効率的になり得る。例えば、アモルファス合金インゴットの外径から約1ミリメートル離れるようにコイルが配置された場合、加熱プロセスの効率が増加し得る。
【0120】
誘導コイル68は、水平方向の長手方向に(例えばX軸に沿って)、又は垂直方向に(例えばY軸に沿って)、配置されるよう構成されている容器内に提供され得る。例えば、容器は、材料を溶融して水平方向(かつ長手方向)に材料を動かすために配置される射出成形システム10内で使用されるよう構成することができる。しかしながら、一実施形態において、容器は垂直に配置され、垂直射出成形システムに使用することもできる。
【0121】
本体(例えば、コイルが中に埋め込まれた状態の材料の長さ、直径、厚さ)、内部の溶融部分(例えば直径)及び誘導コイル68に関連付けられた容器のその他の部分の寸法は、システム10の溶融ゾーン12の寸法又は溶融される部品の寸法に応じて調節することができる。寸法は限定的であるべきではない。
【0122】
一実施形態において、コイル68が埋め込まれている容器は、非伝導性の誘電体又は絶縁体材料(例えば工業用セラミック)で形成され得る(上記で詳しく述べた螺旋状コイルと同様の方法で形成され得るため、ここでは繰り返さない)。
【0123】
図11は、更に別の一実施形態による別のコイル構成及び容器76を示す。容器76は、溶融可能材料を内部で溶融するために設計されており、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成された溶融部分80を備えた本体78と、本体78内に埋め込まれた誘導コイル82とを有し、溶融部分80内に受容した溶融可能材料を溶融するよう構成されている。一実施形態により、埋め込まれた誘導コイルは、渦巻き形状で提供される。一実施形態において、埋め込まれた誘導コイル82は、パンケーキ形状で提供される。すなわち、コイル82は、
図11に概要が示されているように、単一面内の渦巻き形状で提供される(これにより、コイルの隣接する巻きが実質的に平らである)。コイル82は、容器76の少なくとも底部分(例えば下側)の溶融部分80内に提供されるよう構成することができる。溶融部分80は、溶融可能材料がその中の表面上に配置されるよう構成された空洞を含む。コイルは材料に接触しない。むしろ、コイルの上方の局所的領域(すなわち空洞)が、最も強い場強度が生じて加熱を起こす場所となる。本体78は、溶融部分80を取り巻くよう構成された壁を有し、空洞内に溶融可能材料を含む。図中、空洞及び本体78が、実質的に多角形(例えば長方形又は正方形)の形状で示されている。ただし、溶融部分80及び本体78/容器76の壁は、円形又は丸い形状、又はその他の形状であり得ることが理解されよう。本体の形状は、インライン溶融システムに適合させることができ、これによりプランジャが、中を通って移動するよう(そして溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと移動させるよう)構成される。
【0124】
したがって、容器76は、誘導コイル82に電力を供給することにより、溶融部分80の空洞の中で、材料(例えば金属又は合金インゴット)を誘導により溶融するよう構成される。コイル82を本体78の底の中に埋め込むことにより、配置されている表面に隣接してコイル82を配置することにより、効率的な溶融装置が形成される。
【0125】
本体78(例えば、コイルが中に埋め込まれた状態の材料の長さ、直径、厚さ)、溶融部分80及び空洞、及び容器76のその他の部分の寸法は、システム10の溶融ゾーン12の寸法又は溶融される部品の寸法に応じて調節することができる。寸法は限定的であるべきではない。
【0126】
一実施形態において、容器76の本体78は、上記で詳しく述べたように、非伝導性の誘電体又は絶縁体材料(例えば工業用セラミック)で形成されてもよい。
【0127】
図12及び
図13は、本開示の他の実施形態による容器を示す。各容器は、溶融可能材料(例えばインゴット)を受容するため、空洞、コンパートメント、又は開口部を内部に含むよう構成されている。図には示されていないが、溶融した材料を容器から金型へ移動させるためのプランジャを受容するよう構成された1つ以上の他の開口部又は経路も設計され、この中に含まれるものとして考えられることが理解されよう。例えば、
図12及び
図13の各容器は、空洞又はコンパートメントを通って延在する開口部をそれぞれ含み得、及び/又は、開口部は、容器が実質的にU字形状を有するように端から端まで延在し得る。ただし、例示及び簡略化の目的のため、この経路は図示されていない。
【0128】
ここで
図12を参照して、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成された溶融部分88を備えた本体86と、本体86内に埋め込まれた誘導コイル90とを有する、溶融可能材料を中に保持して溶融させるための容器84が示されている。誘導コイル90は、溶融部分88内に受容した溶融可能材料を溶融するよう構成される。一実施形態により、埋め込まれた誘導コイル90は溶融部分88に隣接して構成される。本体86は、溶融部分88を形成するよう、少なくとも内部に延在する開口部、空洞、又はコンパートメントを有する。
【0129】
コイル90は、実質的にU字形状を含み、本明細書において「ヘアピン」形状とも呼ばれる。コイル90は、単一面内(これにより両側面が実質的に平らである)に提供される伝導性材料のU字屈曲を含む。コイル90は、容器84の少なくとも底部分(例えば下側)の溶融部分88内に提供されるよう構成することができる。屈曲のすぐ上の領域は、最も強い電磁場が生成される場所である。溶融部分88は、溶融可能材料がその中の表面上に配置されるよう構成された空洞を含む。コイルは材料に接触しない。むしろ、コイルの上方の局所的領域(すなわち空洞)が、最も強い場強度が生じて加熱を起こす場所となる。本体86は、溶融部分88を取り巻くよう構成された壁を有し、空洞内に溶融可能材料を含む。図中、空洞及び本体86が、実質的に多角形(例えば長方形又は正方形)の形状で示されている。ただし、溶融部分88及び本体86/容器84の壁は、円形又は丸い形状、又はその他の形状であり得ることが理解されよう。本体の形状は、インライン溶融システムに適合させることができ、これによりプランジャが、中を通って移動するよう(そして溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと移動させるよう)構成される。
【0130】
したがって、容器84は、誘導コイル90に電力を供給することにより、溶融部分88の空洞の中で、材料(例えば金属又は合金インゴット)を誘導により溶融するよう構成される。コイル90を本体86の底の中に埋め込むことにより、配置されている表面に隣接してコイル90を配置することにより、効率的な溶融装置が形成される。
【0131】
本体86(例えば、コイルが中に埋め込まれた状態の材料の長さ、直径、厚さ)、溶融部分88及び空洞及び容器84のその他の部分の寸法は、システム10の溶融ゾーン12の寸法又は溶融される部品の寸法に応じて調節することができる。寸法は限定的であるべきではない。
【0132】
一実施形態において、容器84の本体86は、上記で詳しく述べたように(ここでは繰り返さないが)、非伝導性の誘電体又は絶縁体材料(例えば工業用セラミック)で形成され得る。
【0133】
図13は、
図12の容器84に類似であるが、複数の誘導コイルが中に埋め込まれている容器92を示す。すなわち、容器92は、本体94の溶融部分96に隣接して配置されている複数の誘導コイルを含む。複数の誘導コイルは、本体内に配置され埋め込まれた2つ以上のコイルであってもよく、これによりコイルは、溶融部分(溶融可能材料を受容する部分)の2つ以上の側面上に提供される。
【0134】
容器92は、図示のように、容器92の底部分(例えば下側)の溶融部分96内に埋め込まれて提供される、コイル90のような誘導コイルを含む。加えて、誘導コイル97及び98も本体94内に埋め込まれている。
図13に図示された構成において、誘導コイル97及び98は更に、実質的にU字型構造又はヘアピン形状を含み、溶融部分96の側面に隣接して配置されるよう埋め込まれる。コイルは材料に接触していない。誘導コイル90、97及び98は、溶融部分96内に受容される溶融可能材料を溶融するよう構成される。
【0135】
各コイルの曲がり又は屈曲の近くの領域は、最も強い電磁場が生成される場所であり、よって誘導コイル90、97及び98は、RFの大半が溶融部分96内の材料に向けて供給されるよう配置される。溶融部分96は、溶融可能材料がその中の表面上に配置されるよう構成された空洞を含む。本体94は、溶融部分96を取り巻くよう構成された壁を有し、空洞内に溶融可能材料を含む。図中、空洞及び本体94が、実質的に多角形(例えば長方形又は正方形)の形状で示されている。ただし、溶融部分96及び本体94/容器92の壁は、円形又は丸い形状、又はその他の形状であり得ることが理解されよう。本体の形状は、インライン溶融システムに適合させることができ、これによりプランジャが、中を通って移動するよう(そして溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと動かすよう)構成される。
【0136】
したがって、容器92は、誘導コイル90、97、及び98に電力を供給することにより、溶融部分96の空洞の中で、材料(例えば金属又は合金インゴット)を誘導により溶融するよう構成される。本体94内の複数の位置に誘導コイル90、97及び98を埋め込んで溶融部分96を取り巻くことによって、より効率的な溶融装置が形成される。
【0137】
本体94(例えば、コイルが中に埋め込まれた状態の材料の長さ、直径、厚さ)、溶融部分96及び空洞、及び容器92のその他の部分の寸法は、システム10の溶融ゾーン12の寸法又は溶融される部品の寸法に応じて調節することができる。寸法は限定的であるべきではない。
【0138】
一実施形態において、容器92の本体94は、上記で詳しく述べたように(ここでも繰り返さないが)、非伝導性の誘電体又は絶縁体材料(例えば工業用セラミック)で形成され得る。
【0139】
別の一実施形態において、渦巻き又はパンケーキ形コイルを使用することができ、
図13に示すのと同様の構成で埋め込み得ることが考えられる。すなわち、渦巻き又はパンケーキ形コイルは、少なくとも2つ以上の側面で溶融部分を取り巻くよう埋め込み配置することができる。
【0140】
一実施形態により、溶融部分内に受容した溶融可能材料の溶融中の本体の温度調節を支援するため、
図7〜
図13の任意の容器が、内部に液体又は気体(例えば水、空気、又はその他の流体若しくは気体)を流せるよう構成された、本体内又は本体に隣接した、1つ以上の温度調節ラインを有し得る。冷却管は、容器の本体自体が過剰に加熱して溶融するのを防ぐのに役立つ。冷却管は、液体又は流体が内部を通じて流れるための1つ以上の入口及び出口を含み得る。この冷却管の入口及び出口は、任意の数の方法で構成することができ、限定することを意図したものではない。冷却管は、溶融部分に対して本体内に配置されるよう構成され、これによって材料が溶融し、容器温度が調節される(すなわち、熱が吸収され、容器は冷却される)。例えば、ある長さを含み、長手方向に延在するボート形又はるつぼ型の容器について、その溶融部分も、長手方向に延在し得る。一実施形態により、冷却管は、溶融部分に対して長手方向に(すなわち、X軸に平行な軸に沿って)配置され得る。例えば、冷却管は少なくとも、本体の底部に配置され得る。別の一実施形態において、冷却管は、水平方向又は横方向に配置され得る。更に別の一実施形態において、容器及び/又は冷却管は、垂直方向に配置され得る。
【0141】
図4〜
図13の任意の容器における冷却管の数、配置、及び/又は方向は、限定されるべきではない。冷却管は、管本体の底部内及び/又は任意の側壁内に提供され、任意の数の位置及び方向で提供され得る。また、冷却管の寸法(例えば直径又は幅)は、限定的ではない。
【0142】
別の一実施形態において、容器は、容器内に冷却管を有さず、また誘導コイル自体に組み込まれた冷却管も有さない。そのような場合、誘導コイルは例えば、芯が中実の伝導性金属(ワイヤ)であり得る。この実施形態は、比較的融点が低い合金に対して特に用いられる。誘導コイルはまた、芯が中空のワイヤであり得る(能動的冷却が実施されている場合)。
【0143】
本明細書に記述される容器の冷却管の入口及び出口は、任意の数の方法で構成され得る。更に、誘導コイルのための冷却管/システムの配置も限定されない。
【0144】
材料については前述されているが、本明細書に記述される任意の容器の本体が、材料の組み合わせを含む1つ以上の材料を含み得ることに留意されたい。いずれの容器の本体も、任意の数の材料(例えば銅、銀)から形成されてもよく、これには1つ以上のコーティングが挙げられ得る。例えば、容器本体(又はセグメント)は、ステンレススチール(SS)、銅、銅ベリリウム、amcolloy、セラミック、sialonセラミック、イットリア、ジルコニア、クロム、チタン、銀、及び安定化セラミックコーティングからなる群から選択されるものなど、単金属又は金属の組み合わせを含み得る。実施形態において、容器の本体は、RF非感受性(RF透過性)である1つ以上の材料から形成される。一実施形態において、容器本体を形成するのに、RF非感受性(RF透過性)材料の組み合わせが使用される。例えば、コイルは、セラミック又はセメントなどの電気的に絶縁性材料で覆うか又は包み込むことができる。一実施形態において、溶融する材料(例えば、受容した第2材料)は、アモルファス合金である。
【0145】
また、いくつかの実施形態においては図示されているが、コイルは必ずしも管状形状である必要はないことに留意されたい。むしろ、1つ以上の実施形態により、コイルは芯が中実の形状を有し得る(例えば、コイルが流体又は気体による冷却を必要としない場合)。
【0146】
上述の容器の実施形態は、アモルファス合金などの材料を溶融するための、任意の数の製造方法又はプロセスで使用することができる。容器を取得することにより(任意の図に示すように)、溶融のための方法は、搭載ポートに材料を挿入し(例えばインゴットの形態で)、これを本体の溶融部分で(例えば挿入ポートを介して)受容することにより、実施できる。材料が本体により受容された後、容器の表面ひいては材料が、容器に隣接して配置されている熱源(誘導コイル26)を活性化させることにより加熱され得る。加熱中、温度調節を支援するために(すなわち、熱が吸収され、容器が冷却される)、冷却液が容器10の冷却管を通って流れ(存在する場合)、これによって実質的に一定の温度が維持される。溶融方法の間に、真空を印加することができる。材料が溶融した後、例えば、システムの金型に移動させることができる。
【0147】
実施形態に示されているように、コイルの導線又は末端は、電源に取り付けるよう構成され、これによって電力がコイルに印加されて、容器内に受容されている材料を溶融させることができる。
【0148】
したがって、本明細書に記述されている容器の実施により、装置の全体的な性能が向上し、これには、効率、多用性、容器の潜在的な長寿命が挙げられるがこれらに限定されず、また結果として得られる成形製品又は部品の品質を向上させる。記述されている容器の実施形態は、システムの溶融における溶融及びプロセス温度並びに温度均一性を改善し、また電力消費を改善するよう設計されている。そのような実施を採用することにより、容器及び溶融した材料の温度制御が改善される。したがって、より高いエネルギー効率を達成することができる。
【0149】
上述の容器又はるつぼは、BMG(アモルファス合金)を使用することを含む製造装置及び/又はプロセスに使用することができる。BMGの優れた特性から、BMGは、様々な装置及び部品における構造的構成要素を製造することができる。前述のように、そのような装置タイプの1つが電子デバイスである。
【0150】
本開示の原理は、上述の例示的実施形態において明確にされているが、本開示の実践に使用される構造、配置、割合、要素、材料、及び構成部品に対して様々な改変を行い得ることが、当業者には明らかであろう。
【0151】
上述並びにその他の特徴及び機能、又はそれらの代替物の多くは、数多くの他の異なるシステム/装置又は用途に好適に組み合わせ得ることが、理解されよう。これらにおける現在予想できない又は予測されない様々な代替物、変更、変形形態、又は改善が、続いて当業者によりなされる可能性があり、これも下記の請求項の範囲に包含されることが意図される。