(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193890
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】マルチエリアネットワークにおける改善された最短パスブリッジング
(51)【国際特許分類】
H04L 12/46 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
H04L12/46 100B
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-555343(P2014-555343)
(86)(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公表番号】特表2015-509346(P2015-509346A)
(43)【公表日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】IB2013050240
(87)【国際公開番号】WO2013114229
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】61/592,388
(32)【優先日】2012年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/442,139
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】アラン、デイビッド イアン
(72)【発明者】
【氏名】ファルカス、ヤノス
(72)【発明者】
【氏名】サルチディス、パナジオティス
(72)【発明者】
【氏名】ユリエン、マルティン
【審査官】
谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0020797(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0286541(US,A1)
【文献】
特開2005−252368(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/048697(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0212595(US,A1)
【文献】
IEEE P802.1aq/D4.4,2011年12月,p.294-337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のルーティングエリアを含むルーティング型イーサネットネットワーク内のエリアボーダブリッジ(ABB)により実行される方法であって、前記エリアの各々におけるマルチパス実装は、前記エリアの各々における最適なネットワーク設計を可能とするために他のエリアから互いに独立しており、前記ネットワークは、前記エリア間でフレームを送信するために、最短パスブリッジングメディアアクセス制御(SPBM)プロトコルを実装し、前記エリアは、複数のABBを介してレベル1(L1)ルーティングエリアへ連結されるレベル2(L2)ルーティングエリアを含み、前記L1ルーティングエリアは、それぞれのL1バックボーンVLAN識別子(B−VID)により識別される複数のL1マルチパスインスタンスを介して前記ABBへ連結されるバックボーンエッジブリッジ(BEB)を含み、各L1マルチパスインスタンスは、前記BEBから前記L2ルーティングエリアを表現する仮想化ノードへの最短パスを、前記複数のABBのそれぞれ1つを通過することにより提供し、
前記ABBにより、BEB識別子のセットを示す広告を前記BEBから受信するステップと、当該識別子の各々は、前記BEBを識別し及び前記L1 B−VIDのそれぞれ1つに関連付けられることと、各BEB識別子は一意であることと、前記広告は、前記BEB識別子のうちの所与の1つが所与のL1 B−VID及びサービス識別子に関連付けられていることをさらに示すことと、前記所与のL1 B−VIDは、通過ABBを介して前記L2ルーティングエリアへ進入する、前記L1マルチパスインスタンスのうちの所与の1つを識別することと、
前記通過ABBにより、前記L2ルーティングエリア内へ、前記所与のBEB識別子が前記サービス識別子とL2マルチパスインスタンスを識別するL2 B−VIDとに関連付けられていることを示すように広告するステップと、それにより、前記所与のL1マルチパスインスタンスを介して前記BEBへ宛てられたフレームが前記通過ABBへ転送されることが可能とされることと、前記所与のBEB識別子は、前記複数のABBの中で前記通過ABBによってのみ広告されることと、
前記通過ABBにより、前記L1ルーティングエリアから前記L2ルーティングエリアへ進入するデータフレームについて、前記所与のL1 B−VIDを前記L2 B−VIDへ、前記サービス識別子に基づいて変換するステップと、
前記通過ABBにより、前記L2ルーティングエリアから前記L1ルーティングエリアへ進入するデータフレームについて、前記L2 B−VIDを前記所与のL1 B−VIDへ、前記サービス識別子に基づいて変換するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記L1ルーティングエリア内のマルチパスインスタンスの数は、前記L2ルーティングエリア内のマルチパスインスタンスの数から独立している、請求項1の方法。
【請求項3】
前記BEB識別子の各々は、バックボーンメディアアクセス制御(B−MAC)アドレスである、請求項1の方法。
【請求項4】
前記L2ルーティングエリアと前記L1ルーティングエリアとの間のABBの数は、前記L2ルーティングエリア内及び前記L1ルーティングエリア内のマルチパスインスタンスのそれぞれの数から独立している、請求項1の方法。
【請求項5】
前記広告は、IS−IS(Intermediate System to Intermediate System)プロトコルに基づく、請求項1の方法。
【請求項6】
前記L2ルーティングエリアへ進入すべき第1のフレームを、前記所与のL1マルチパスインスタンスを介して受信するステップと、前記第1のフレームは前記サービス識別子を含むことと、
前記L1ルーティングエリアから前記L2ルーティングエリアへ進入するフレームに固有の変換テーブル内で前記サービス識別子をルックアップして、前記L2マルチパスインスタンスを識別する前記L2 B−VIDを見つけ出すステップと、
前記第1のフレーム内で前記所与のL1 B−VIDを前記L2 B−VIDに置換するステップと、
前記第1のフレームを、前記L2マルチパスインスタンスを介して前記L2ルーティングエリア内へ送信するステップと、
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記BEBを宛て先とする第2のフレームを、前記L2マルチパスインスタンスを介して受信するステップと、前記第2のフレームは前記サービス識別子を含むことと、
前記L2ルーティングエリアから前記L1ルーティングエリアへ進入するフレームに固有の変換テーブル内で前記サービス識別子をルックアップして、前記所与のL1マルチパスインスタンスを識別する前記所与のL1 B−VIDを見つけ出すステップと、
前記第2のフレーム内で前記L2 B−VIDを前記所与のL1 B−VIDに置換するステップと、
前記第2のフレームを、前記所与のL1マルチパスインスタンスを介して前記BEBへ送信するステップと、
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
各BEB識別子の下位ビットは、前記L2ルーティングエリア内へのマルチパスインスタンスを符号化するために使用され、
前記方法は、
前記L2ルーティングエリアから前記L1ルーティングエリアへ進入するすべてのユニキャストフレームについて、それらのそれぞれのMACアドレスの最下位nビットをゼロにするステップと、
前記L1ルーティングエリアから前記L2ルーティングエリアへ進入するすべてのユニキャストフレームについて、それらのそれぞれのMACアドレスの最下位nビットの中にVLAN ID(VID)情報を挿入して、前記フレームにL2ルーティングエリアにおける一意の識別子を提供するステップと、
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記方法は、フレームのロスなく、サービスを異なるマルチパスインスタンスへ再割り当てすることを可能にするように強化され、
管理システムにより、前記ルーティングエリアのうちの所与の1つにおけるサービスのレシーバを、B−VID Aの広告とB−VID Bの広告とをリッスンするように設定するステップと、B−VID A及びB−VID Bの各々は、前記所与のルーティングエリア内のマルチパスインスタンスを識別することと、
前記管理システムにより、前記所与のルーティングエリア内の前記サービスのトランスミッタを、前記B−VID A及び前記B−VID Bにより識別される両方のマルチパスインスタンス上での送信について、前記B−VID Aをアクティブに及び前記B−VID Bをスタンバイに設定するステップと、
前記所与のルーティングエリア内の前記サービスの前記トランスミッタを、前記B−VID A及び前記B−VID Bにより識別される両方のマルチパスインスタンス上での送信について、前記B−VID Bをアクティブに及び前記B−VID Aをスタンバイに設定するステップと、
前記サービスが送信中に通過する前記ABBに、それらの変換テーブルを、前記サービスが前記所与のルーティングエリア内で前記B−VID Bへ移行したことを示すように更新させるステップと、
前記サービスに関連付けられている前記B−VID Aのすべてのインスタンスを削除するステップと、それにより、前記B−VID Aから前記B−VID Bへの前記サービスの移行が完了させられることと、
を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記所与のルーティングエリアは、前記L1ルーティングエリア又は前記L2ルーティングエリアである、請求項9の方法。
【請求項11】
複数のルーティングエリアを含むルーティング型イーサネットネットワーク内のネットワークエレメントであって、前記エリアの各々におけるマルチパス実装は、前記エリアの各々における最適なネットワーク設計を可能とするために他のエリアから互いに独立しており、前記ネットワークは、前記エリア間でフレームを送信するために、最短パスブリッジングメディアアクセス制御(SPBM)プロトコルを実装し、前記エリアは、複数のエリアボーダブリッジ(ABB)を介してレベル1(L1)ルーティングエリアへ連結されるレベル2(L2)ルーティングエリアを含み、前記L1ルーティングエリアは、それぞれのL1バックボーンVLAN識別子(B−VID)により識別される複数のL1マルチパスインスタンスを介して前記ABBへ連結されるバックボーンエッジブリッジ(BEB)を含み、各L1マルチパスインスタンスは、前記BEBから前記L2ルーティングエリアを表現する仮想化ノードへの最短パスを、前記複数のABBのそれぞれ1つを通過することにより提供し、
前記ネットワークエレメントは、
BEB識別子のセットを示す広告を前記BEBから受信するよう構成された受信インターフェイス、を含み、当該識別子の各々は、前記BEBを識別し及び前記L1 B−VIDのそれぞれ1つに関連付けられ、各BEB識別子は一意であり、前記広告は、前記BEB識別子のうちの所与の1つが所与のL1 B−VID及びサービス識別子に関連付けられていることをさらに示し、前記所与のL1 B−VIDは、通過ABBを介して前記L2ルーティングエリアへ進入する前記L1マルチパスインスタンスのうちの所与の1つを識別し、
前記ネットワークエレメントは、
前記L2ルーティングエリア内へ、前記所与のBEB識別子が前記サービス識別子とL2マルチパスインスタンスを識別するL2 B−VIDとに関連付けられていることを示すように広告するよう構成された送信インターフェイス、をさらに含み、それにより、前記所与のL1マルチパスインスタンスを介して前記BEBへ宛てられたフレームが前記通過ABBへ転送されることが可能とされ、前記所与のBEB識別子は、前記複数のABBの中で前記通過ABBによってのみ広告され、
前記ネットワークエレメントは、
前記受信インターフェイス及び前記送信インターフェイスに連結されて、サービス識別子によりインデックス付けされる変換テーブルを記憶するメモリと、
前記メモリに連結されたプロセッサと、
をさらに含み、前記プロセッサは、前記L1ルーティングエリアから前記L2ルーティングエリアへ進入するデータフレームについて、前記所与のL1 B−VIDを前記L2 B−VIDへ、前記サービス識別子に基づいて変換するように、及び、前記L2ルーティングエリアから前記L1ルーティングエリアへ進入するデータフレームについて、前記L2 B−VIDを前記所与のL1 B−VIDへ、前記サービス識別子に基づいて変換するように構成される、
ネットワークエレメント。
【請求項12】
前記L1ルーティングエリア内のマルチパスインスタンスの数は、前記L2ルーティングエリア内のマルチパスインスタンスの数から独立している、請求項11のネットワークエレメント。
【請求項13】
前記BEB識別子の各々は、バックボーンメディアアクセス制御(B−MAC)アドレスである、請求項11のネットワークエレメント。
【請求項14】
前記L2ルーティングエリアと前記L1ルーティングエリアとの間のABBの数は、前記L2ルーティングエリア内及び前記L1ルーティングエリア内のマルチパスインスタンスのそれぞれの数から独立している、請求項11のネットワークエレメント。
【請求項15】
前記広告は、IS−IS(Intermediate System to Intermediate System)プロトコルに基づく、請求項11のネットワークエレメント。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記L2ルーティングエリアへ進入すべき前記サービス識別子を含む第1のフレームを、前記所与のL1マルチパスインスタンスを介して受信し、
前記L1ルーティングエリアから前記L2ルーティングエリアへ進入するフレームに固有の前記変換テーブル内で前記サービス識別子をルックアップして、前記L2マルチパスインスタンスを識別する前記L2 B−VIDを見つけ出し、
前記第1のフレーム内で前記所与のL1 B−VIDを前記L2 B−VIDに置換し、
前記第1のフレームを、前記L2マルチパスインスタンスを介して前記L2ルーティングエリア内へ送信する、
ようにさらに構成される、請求項11のネットワークエレメント。
【請求項17】
前記プロセッサは、
前記BEBを宛て先とする前記サービス識別子を含む第2のフレームを、前記L2マルチパスインスタンスを介して受信し、
前記L2ルーティングエリアから前記L1ルーティングエリアへ進入するフレームに固有の前記変換テーブル内で前記サービス識別子をルックアップして、前記所与のL1マルチパスインスタンスを識別する前記所与のL1 B−VIDを見つけ出し、
前記第2のフレーム内で前記L2 B−VIDを前記所与のL1 B−VIDに置換し、
前記第2のフレームを、前記所与のL1マルチパスインスタンスを介して前記BEBへ送信する、
ようにさらに構成される、請求項11のネットワークエレメント。
【請求項18】
各BEB識別子の下位ビットは、前記L2ルーティングエリア内へのマルチパスインスタンスを符号化するために使用され、
前記プロセッサは、
前記L2ルーティングエリアから前記L1ルーティングエリアへ進入するすべてのユニキャストフレームについて、それらのそれぞれのMACアドレスの最下位nビットをゼロにし、
前記L1ルーティングエリアから前記L2ルーティングエリアへ進入するすべてのユニキャストフレームについて、それらのそれぞれのMACアドレスの最下位nビットの中にVLAN ID(VID)情報を挿入して、前記フレームにL2ルーティングエリアにおける一意の識別子を提供する、
ようにさらに構成される、請求項11のネットワークエレメント。
【請求項19】
前記ネットワークエレメントは、フレームのロスなく、サービスを異なるマルチパスインスタンスへ再割り当てすることを可能にするように強化され、前記ネットワークエレメントは、管理システムに連結され、前記管理システムは、
前記管理システムにより、前記ルーティングエリアのうちの所与の1つにおけるサービスのレシーバを、B−VID Aの広告とB−VID Bの広告とをリッスンするように設定するように構成され、B−VID A及びB−VID Bの各々は、前記所与のルーティングエリア内のマルチパスインスタンスを識別し、
前記管理システムは、
前記管理システムにより、前記所与のルーティングエリア内の前記サービスのトランスミッタを、前記B−VID A及び前記B−VID Bにより識別される両方のマルチパスインスタンス上での送信について、前記B−VID Aをアクティブに及び前記B−VID Bをスタンバイに設定し、
前記所与のルーティングエリア内の前記サービスの前記トランスミッタを、前記B−VID A及び前記B−VID Bにより識別される両方のマルチパスインスタンス上での送信について、前記B−VID Bをアクティブに及び前記B−VID Aをスタンバイに設定し、
前記サービスが送信中に通過する前記ABBに、それらの変換テーブルを、前記サービスが前記所与のルーティングエリア内で前記B−VID Bへ移行したことを示すように更新させ、
前記サービスに関連付けられている前記B−VID Aのすべてのインスタンスを削除する、
ようにさらに構成され、それにより、前記B−VID Aから前記B−VID Bへの前記サービスの移行が完了させられる、
請求項11のネットワークエレメント。
【請求項20】
前記所与のルーティングエリアは、前記L1ルーティングエリア又は前記L2ルーティングエリアである、請求項19のネットワークエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2012年1月30日に提出された米国仮特許出願第61/592,388号からの優先権を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明の実施形態は、イーサネットネットワークの分野に関し、より具体的には、マルチエリアネットワークにおける改善された最短パスブリッジングに関する。
【背景技術】
【0003】
イーサネットは、当初、ローカルエリアネットワーク(LAN)等の受動的な共有の媒体にネットワーク接続性を提供するために開発された。時が経つにつれて、イーサネットは、ブリッジングを提供し及びそのブリッジングされたネットワークセグメントにわたってエンドポイントの場所を見つける、能動的にスイッチングされるネットワークへと進化していった。複数のブリッジを使用してネットワークセグメントを相互接続する場合、同じ宛て先へ到達する可能性のある複数のパスがしばしば存在する。このマルチパスアーキテクチャの利点は、ブリッジ間にパス冗長性を提供すること、及び追加リンクの形でネットワークに容量を追加できることである。ループの形成を防止するために、データフレームのための転送パスとして、通常、スパニングツリーが使用されたが、それにより、ネットワーク上でのトラフィックのブロードキャストのされ方が制限された。基礎となる転送原理は、宛て先が不明ならばあらゆる場所に転送する、というものであり、宛て先の到達可能性はデータフレームのソースアドレスから学習される。そのため、学習は、ブロードキャストされたフレームへの応答に基づく。要求と応答の両方がスパニングツリーを辿るので、トラフィックのすべてが、そのスパニングツリーの一部をなすリンクを辿ることになる。これは多くの場合、そのスパニングツリー上にあるリンクが過剰に利用され、そのスパニングツリーの一部でないリンクが無駄になる、という状況をもたらした。
【0004】
最短パスブリッジング(Shortest Path Bridging(SPB))は、イーサネットに、スパニングツリープロトコルの代替として、リンクステートルーティングを導入する。SPBは、単一の又は少数のスパニングツリーの代わりに、最短パスツリーのセットを使用する。SPBという用語は、SPB−VID(SPBV)モード及びSPB−MAC(SPBM)モードの、2つの動作モードを対象として含む。ここで、MACは、メディアアクセス制御を表す。2012年に発行されたIEEE 802.1aq規格は、PB(2005年発行のIEEE 802.1adプロバイダブリッジ(Provider Bridges)、Q−in−Qとしても知られる)又はPBB(2008年発行のIEEE 802.1ahプロバイダバックボーンブリッジ(Provider Backbone Bridges)、MAC−in−MACとしても知られる)に適用可能なイーサネットのためのルーティングソリューションを定義している。現在、IEEE 802.1aq規格は、PB又はPBBネットワークのための単一のルーティングエリアを定義している。
【0005】
SPBは、IS−IS(Intermediate System to Intermediate System)ルーティングプロトコルを使用する。IS−ISについては、例えば、ISO 10589及びIETF RFC 1195に記載されており、SPBの拡張機能については、RFC 6329に文書化されている。IS−ISは、複数のプラットフォーム間で情報の共通リポジトリを同期するのに使用することができる。すべてのSPBの制御及び構成を、単一の制御プロトコル、すなわちISIS−SPBプロトコルに凝縮させることは実用的である。このような統合が可能なのは、プロバイダのB−MAC、SPBV用の仮想LAN識別子(Virtual LAN Identifier(VID))、SPBM用のバックボーン(Backbone)VID(B−VID)、及びI−SIDの形のサービス識別子(Service Identifier)情報が、すべて、ネットワークにとってグローバルだからである。接続性は、IS−IS分散ルーティングシステムを使用して構築されることができる。当該システムでは、各ノードが独立して、転送パスを計算し、ルーティングシステムデータベース内の情報に基づいてローカルフィルタリングデータベース(FDB)にデータを投入する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ネットワークのサイズが大きくなり、ネットワークに含まれるノードの数が増えると、そのネットワークを2つ以上のより小さなエリアに分割するのが望ましいかもしれない。そうすれば、制御プレーンを2つ以上のインスタンスに分離することが可能になるので、ルーティングの更新はそのより小さなルーティングエリア内に留められ、1つのエリア内の変更が、隣接するエリアに影響を及ぼさないようにすることができるかもしれない。さらに、計算の複雑性(これはネットワークのサイズに対して指数関数的に増加する傾向がある)は、ネットワークをより小さなエリアに分割することにより、恩恵を受けられる。しかしながら、現在のマルチエリアネットワークは、802.1aqで用いられているような、トラフィックを複数の等コストツリー(Equal Cost Tree)セットにエッジベースで割り当てるというマルチパス化の概念を、現在のところ具現化していない。そのため、ネットワークの異なるエリア内におけるネットワーク設計を互いに切り離すことは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ルーティング型(routed)イーサネットネットワークは、複数のルーティングエリアを含み得る。ここで、エリアの各々におけるマルチパス実装は、エリアの各々における最適なネットワーク設計を可能としかつエリア間の動作的な切り離しを最大化するために、他のエリアから互いに独立していることが望ましい。ネットワークは、エリア間でフレームを送信するために、最短パスブリッジングメディアアクセス制御(SPBM)モードを実装する。エリアは、複数のエリアボーダブリッジ(ABB)を介して1又は複数のレベル1(L1)ルーティングエリアへ連結されるレベル2(L2)ルーティングエリアを含む。L1ルーティングエリアは、それぞれのバックボーンVLAN識別子(B−VID)により識別される複数のL1マルチパスインスタンスを介してABBへ連結されるバックボーンエッジブリッジ(BEB)を含む。各L1マルチパスインスタンスは、BEBからL2ルーティングエリアを表現する仮想化ノードへの最短パスを、複数のABBのそれぞれ1つを通過することにより提供する。L1においてL2をどのようにモデル化するか、及び所与のBEB−BEBパスのための通過ABBをどのように選択するかに関して、他の実施形態を構想することも可能であるが、L2及びその他の対向するL1エリアを単一の仮想ノードとしてモデル化するのが、好ましい実施形態である。
【0008】
1つの実施形態において、方法は、ABBが、BEB識別子のセットを示す広告をBEBから受信するステップを含む。当該識別子の各々は、BEBを識別し、また、B−VIDのそれぞれ1つに関連付けられている。各BEB識別子は一意である。当該広告は、BEB識別子のうちの所与の1つが、所与のL1 B−VID及び1又は複数のサービス識別子(I−SID)に関連付けられていることをさらに示し、当該所与のL1 B−VIDは、通過ABBを介してL2ルーティングエリアへ進入するL1マルチパスインスタンスのうちの所与の1つを識別する。当該方法は、所与のBEB識別子がサービス識別子とL2マルチパスインスタンスを識別するL2 B−VIDとに関連付けられていることを示すように通過ABBがL2ルーティングエリア内へ広告するステップ、をさらに含む。この広告により、所与のL1マルチパスインスタンスを介してBEBへ宛てられたフレームが通過ABBへ転送されることが可能とされる。当該ABBは、BEBとL2を表現する仮想ノードとの間の好適な最短パスの計算を、BEBにより広告されるB−MAC/B−VIDの組み合わせのための通過ノードの役割を自己選択する手段として使用する。その後、所与のBEB識別子が複数のABBの中の通過ABBによってのみ広告される。
【0009】
上記方法は、通過ABBが、L1ルーティングエリアからL2ルーティングエリアへ進入するフレームについて、所与のL1 B−VIDをL2 B−VIDへ、I−SIDサービス識別子に基づいて変換するステップと、L2ルーティングエリアからL1ルーティングエリアへ進入するフレームについて、L2 B−VIDを所与のL1 B−VIDへ、サービス識別子に基づいて変換するステップと、をさらに含む。
【0010】
1つの実施形態において、ネットワークエレメントは、BEB識別子のセットを示す第1の広告をBEBから受信するよう構成された受信インターフェイスを含み、当該識別子の各々は、BEBを識別し、また、B−VIDのそれぞれ1つに関連付けられており、各BEB識別子は一意である。第1の広告は、BEB識別子の所与の1つが、所与のL1 B−VIDとサービス識別子とに関連付けられていることをさらに示し、当該所与のL1 B−VIDは、通過ABBを介してL2ルーティングエリアへ進入するL1マルチパスインスタンスのうちの所与の1つを識別する。当該ABBは、所与のBEB識別子がサービス識別子とL2マルチパスインスタンスを識別するL2 B−VIDとに関連付けられていることを示す第2の広告を、L2ルーティングエリア内へ送信する、送信インターフェイスもまた含む。この広告により、所与のL1マルチパスインスタンスを介してBEBへ宛てられたフレームが通過ABBへ転送されることが可能とされる。所与のBEB識別子は、複数のABBの中の通過ABBによってのみ広告される。
【0011】
上記ネットワークエレメントは、上記受信インターフェイス及び上記送信インターフェイスに連結されるメモリをさらに含み、当該メモリは、サービス識別子によりインデックス付けされる変換テーブルを記憶する。上記ネットワークエレメントは、上記メモリに連結されるプロセッサをさらに含み、当該プロセッサは、L1ルーティングエリアからL2ルーティングエリアへ進入するフレームについては、所与のL1 B−VIDをL2 B−VIDへ、サービス識別子に基づいて変換するように構成され、L2ルーティングエリアからL1ルーティングエリアへ進入するフレームについては、L2 B−VIDを所与のL1 B−VIDへ、サービス識別子に基づいて変換するように構成される。
【0012】
各エリアにおいてサービス識別子をB−VIDへマッピングするためのテーブルは、手作業で準備されてもよいし、アルゴリズムにより導出されてもよい。ただし、サービスからVIDへのマッピングが、各ルーティングエリアにわたって共通であり同期されることを条件とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明を添付図面の図に示すが、それらは例示のためのものであって、本発明を限定するものではない。図中、同様の参照符号は同様の要素を示す。なお、本開示における「一」実施形態又は「1つの」実施形態についての異なる言及は、必ずしも同じ実施形態を指すものではなく、それらの言及は、少なくとも1つの実施形態を意味することに留意されたい。また、一実施形態に関連して特定の特性、構造、又は特徴が説明される場合、他の実施形態に関連してもそのような特性、構造、又は特徴を実現し得ることは、明示されているか否かに係わらず、当業者の知識の範囲内であることを提示しておく。
【0014】
【
図1】本発明の実施形態がその中で動作し得るマルチエリアルーティング型イーサネットネットワークを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るL1ルーティングエリアから見た概念図である。
【
図3】ローカルマルチパスインスタンスごとに一意の識別子がBEBに割り当てられる、マルチエリアルーティング型イーサネットネットワークの一実施形態を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る1つのシナリオにおいて1つのBEBについて複数の一意の識別子を使用する様子を示す図である。
【
図5】1つのノードに対してローカルマルチパスインスタンスごとに一意の識別情報を与えるための方法の一実施形態を示すフロー図である。
【
図6】定常状態のマルチエリアルーティング型イーサネットネットワークの一実施形態を示す図である。
【
図7】ルーティングエリア内で1つのマルチパスインスタンスから別のマルチパスインスタンスへサービスを移動させるための動作のシーケンスを示す図である。
【
図8】ルーティングエリア内で1つのマルチパスインスタンスから別のマルチパスインスタンスへサービスを移動させるための動作のシーケンスを示す図である。
【
図9】ルーティングエリア内で1つのマルチパスインスタンスから別のマルチパスインスタンスへサービスを移動させるための動作のシーケンスを示す図である。
【
図10】ルーティングエリア内で1つのマルチパスインスタンスから別のマルチパスインスタンスへサービスを移動させるための動作のシーケンスを示す図である。
【
図11】ルーティングエリア内で1つのマルチパスインスタンスから別のマルチパスインスタンスへサービスを移動させるための方法の一実施形態を示すフロー図である。
【
図12】本発明の1つの実施形態に係る管理システムに連結されたネットワークエレメントを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明で、多くの具体的な詳細を述べるが、本発明の実施形態が、それらの具体的な詳細がなくとも実施され得ることは理解される。他の例では、本明細書の説明の理解を曖昧にすることのないように、周知の回路、構造、及び技術については詳細を示していないが、そのような具体的な詳細がなくとも本発明が実施され得ることは、当業者には明らかであろう。本明細書に含まれる説明を読めば、当業者は、過度の実験をすることなく、適切な機能性を実現することができるであろう。
【0016】
本明細書で説明するマルチエリアネットワーク構造は階層的である。これは、異なるエリア内のノード間にループのない対称的接続性を提供するタスクを簡素化する。イーサネットのための転送パスにループがあると、その転送パスがマルチキャストパスである場合には破局的(catastrophic)となることがある。そのため、複数のピアネットワークのメッシュ状の相互接続に比して、ルーティング階層を使用することは、ルーティングポリシーが存在する場合にも確実にループを含まないようにするという課題が簡素化されるので、有利である。1つの実施形態において、ネットワーク構造は、レベル1(L1)ルーティングエリアとレベル2(L2)ルーティングエリアとの、2レベル階層を含む。ここで、L1はネットワークエッジ、L2はバックボーン、と考えることができる。1つのL1ルーティングエリアから発信されるフレームは、そのL2ルーティングエリアを通じてのみ、他のL1ルーティングエリアに到達することができる。L2のネットワークは、さらに、マルチエリアネットワーク構造が再帰し得るように、第2層のL1/L2/L1ネットワークとして形成されてもよい。マルチエリアネットワーク構造の再帰は、上位層(レイヤーX+1)のネットワークとして参照されるネットワーク層のセットL1/L2/L1として下位層(レイヤーX)のL2ネットワーク層が形成されるようになされる。このような性質の再帰が複数回行われて、階層的なネットワーク構造の展開が可能とされてもよい。
【0017】
1つのシナリオでは、L1ネットワークは1つのデータセンター又は企業サイト内の接続を表し、L2ネットワークは応じて、異なるデータセンター/サイト間の接続を表し得る。本発明の実施形態に従えば、異なるL1ネットワークは、異なるマルチパス化構成を採用してもよく、それらのマルチパス化構成は、L2ネットワークのマルチパス化構成とも異なってもよい。そこで、本発明の実施形態は、ルーティングエリアの各々におけるネットワーク設計(例えば、マルチパス化構成)が、互いに切り離されることを可能にする。その結果、各エリア内のネットワーク設計を、そのエリアの要求及び制約に合わせて細かく調整することができ、また、ネットワークのその他のエリアとは独立して最適化することができる。
【0018】
以下では、SPBM(IEEE 802.1ahのカプセル化を用いるIEEE 802.1aq)を中心に説明する。というのも、マルチエリアネットワークにおいてはSPBVよりも潜在的にSPBMの方が(例えば、1桁以上)より良好にスケーリングできるからである。SPBMでは、参加ノード(participating nodes)のバックボーンMAC(B−MAC)アドレスがISIS−SPBにより配布される。トポロジーデータは、計算エンジンに入力される。計算エンジンは、各参加ノードから他のすべての参加ノードへの、最小コストに基づいた対称的な最短パスツリーを計算する。顧客のトラフィックがSPBMを実装するプロバイダネットワークに入ると、顧客MACアドレス(C−MAC)がプロバイダ(バックボーン)MACアドレス(B−MAC)へと解決されることで、プロバイダがプロバイダネットワーク上でプロバイダMACアドレス空間を使ってトラフィックを転送できるようにされる。加えて、プロバイダネットワーク上のネットワークエレメントは、同じ宛先アドレスに宛てられるが異なるB−VIDを有する異なるフレームが、ネットワークを通じて、異なるパス(「マルチパスインスタンス」と称する)上で転送されるように、バックボーン仮想LAN ID(B−VID)に基づいてトラフィックを転送するよう構成される。SPBMに従ったフレームはヘッダを含み、ヘッダは別個のサービス識別子(I−SID)及びB−VIDを有する。このように別個にしておくことで、サービスをネットワークトポロジーとは独立してスケーリングすることが可能になる。そのため、B−VIDは、マルチパスインスタンスの識別子として排他的に使用されることができる。I−SIDは、B−VIDにより識別されるマルチパスインスタンスによって提供される特定のサービスを識別する。I−SIDは、一意であり、SPBMネットワーク内で不変である。
【0019】
本明細書では、規格の特定のバージョンについて説明するが、本発明の実施形態は規格の現行のバージョンに基づく実装に限定されるものではない。それらは、規格の将来開発されるバージョンでも動作するよう構成され得るからである。同様に、本発明の実施形態は、本明細書に記載される具体的なプロトコルのうちの1つに関連して動作する実装に限定されるものではない。イーサネットマルチエリアルーティングネットワークにおいて他のプロトコルも同様に使用され得るからである。
【0020】
従来のマルチエリアネットワークにおいては、等コストツリー(ECT)セットという概念はない。ルーティング型ネットワークにおけるマルチパスは、典型的に、ホップバイホップ方式であり、ユニキャスト−マルチキャスト及び順方向−逆方向トラフィックの対称合同性の要件はない。SPBMをデータセンターへ適用できることは、そのネットワーク設計に合わせて細かく調整される16通り又はそれ以上のマルチパス化を含むネットワーク設計につながる。現在規定されている最新技術の範囲内には、異なるマルチパス化構成を有する複数のSPBM「ドメイン」を相互接続することを可能にする解決策は、現在のところ存在しない。
【0021】
本明細書で説明する1つの基本概念は、各ドメイン(エリアと等価である)内で、顧客サービスインスタンス単位のマルチパスインスタンスへの割り当てを可能にすることである。エリア境界においてバックボーンVLANへサービスを任意に再マッピングすることに伴う潜在的な課題が識別され、解決策が提案される。最後に、各エリア内で隔離して、マルチパスインスタンス間で顧客サービスインスタンスを移行(migrate)させるための動作手続について説明する。
【0022】
本明細書で説明する技術の1つの利点は、各エリアが動作的に隔離されており、いずれのピアドメインからも独立して設計できることである。このようにドメイン間のマルチパス化を再マッピングできることで、他の制御プロトコル及びワイドエリアネットワーク(WAN)技術とのインターワーキング、例えば、SPBM、IEEE 802.1Qbp、及びIETF規格のTRILL(Transparent Interconnect of Lots of Links)の間のインターワーキング、が容易になる。
【0023】
図1は、複数のリンクステートプロトコル制御されたエリアがエリアボーダブリッジ(ABB)11を介して相互接続される、ルーティング型イーサネットネットワーク100の一例を示す。具体的には、ネットワーク100は、リンクステートプロトコル制御されたルーティングエリアL1−A及びL1−B(「L1ルーティングエリア」とも称する)の第1のセットを含む。この、リンクステートプロトコル制御されたエリアの第1のセットは、例えば、メトロポリタンエリアネットワーク又はデータセンター内のネットワークであり得るが、本発明はこれらの具体例に限定されない。エリアL1−A及びL1−Bは、別のリンクステートプロトコル制御されたルーティングエリアL2によって相互接続される。L2ルーティングエリアは、例えば、L1ルーティングエリアを相互接続するよう構成されたプロバイダコアネットワークであり得る。
【0024】
顧客は、ネットワークに、バックボーンエッジブリッジ(BEB)12を介して接続する。各ルーティングエリア内では、バックボーンコアブリッジ(BCB)(図示せず)を介して接続性を確立することができる。ブリッジ(例えば、ABB 11、BEB 12、及びBCB)の各々は、ネットワーク管理システム110により構成されることができる。1つの実施形態において、ネットワーク管理システムは、ネットワーク100を介してABB 11及びBEB 12に連結される1又は複数のサーバコンピュータとすることができる。
【0025】
図1に示すように、BEB−Aを介してL1−Aに接続する顧客装置40が、BEB−B1を介してL1−Bに接続する顧客装置42との通信を望んでいるとする。この通信を可能にするには、顧客装置40と顧客装置42との間に、ルーティングエリアL1−A、L2、及びL1−Bを介して1つの経路を確立する必要がある。
【0026】
この例を説明する目的で、ルーティングエリアL1及びL2が共にリンクステートプロトコル制御されたルーティングエリアであって、その各々が自身のリンクステートルーティングプロトコルインスタンスを実装しているものとする。したがって、ルーティング情報は、通常、それら異なるルーティングエリア内に格納され、ルーティング情報のうちの限られた又は要約された量の情報のみがエリア間でやりとりされる。本明細書でより詳細に説明するように、ABB 11は、I−SID等のサービス識別子及びいくらかの関連付けられるBEBの情報がルーティングエリア間でリークされることを可能にし得るので、2つ以上のエリアを通じて、共通のI−SIDを有するBEBに関連付けられた複数の経路が確立され得る。具体的には、I−SIDに対する関心(interest)がネットワークの境界を越えてリークされ得るので、共同で1つのマルチエリア経路を形成する経路セグメントが、そのI−SIDについて複数のルーティングエリアの各々において確立され得る。I−SIDは、管理システム110の介在なしにリークされ得るので、エリア間経路は、複数のルーティングエリアの制御プレーンによって自動的に確立され得る。1つの実施形態において、制御プレーンは分散され、情報のやりとりはIS−ISプロトコルを使用して行われる。
【0027】
双方向の通信を可能にするために、2つのルーティングエリア間の境界上のABB 11は、L1ルーティングシステムがL2及びその他のL1ルーティングエリアに関する簡略化された知識を有するように、また、L2が、対向するL1ルーティングエリアに関する簡略化された知識を有するように、要約されたネットワークエンドシステム情報(典型的には、BEB及びBCBのアドレスならびに関連付けられるサービスインスタンス)を広告する。そこで、例えば
図1で、ABB−a1及びABB−a2は各々、ルーティングエリアL1−AとL2との間の境界上に位置する。したがって、ABB−a1及びABB−a2の各々は、ルーティングエリアL1−B及びL2内の宛て先に到達可能であることを、ルーティングエリアL1−A内で広告することができ、ルーティングエリアL1−A内の宛て先に到達可能であることを、ルーティングエリアL2内で広告することができる。同様に、ABB−bは、ルーティングエリアL1−A及びL2内の宛て先に到達可能であることを、ルーティングエリアL1−B内で広告することができ、ルーティングエリアL1−B内の宛て先に到達可能であることを、ルーティングエリアL2内で広告することができる。
【0028】
1つの実施形態において、ABB 11は、ルーティングエリアL2を、各L1ルーティングエリアにアタッチされかつABBを介して到達可能な単一の仮想ノードとして表現し、対向するL1内へ広告し得る。より具体的には、L2は、各L1に対して、当該L1以外の対向するL1エリアにおいて他のすべてのノード(例えば、BEB 12)をホスティングする単一の仮想BEBとして、広告される。このため、単一のノードが、(BEB 12を表す)B−MACアドレスのセットを、ローカルで終端されるものとして広告することができ、それにより、トラフィックの内部での逆多重化が促進される。その仮想ノードに関連付けられた単一のノードニックネームが、L2からのすべてのマルチキャストトラフィックのために使用される。
図2の例に示すように、L1−AからL2を見た抽象的な視点では、(BEB−L2 22で表される)仮想BEBが、BEB−B1とBEB−B2とをホスティングしているであろう。
【0029】
あるBEBから(L2を表す)仮想ノードへの最短パスは、L2への通過点のABBを決定する。このABBを、そのパスのための「通過ABB」とも称する。
図1の例では、ABB−a1及びABB−a2が、(B−VID1(B1)及びB−VID2(B2)で表される)2つの異なるマルチパスインスタンスを介してBEB−Aに最も近い。B1及びB2は、等コストの2つの異なるマルチパスインスタンス(「パス」とも称する)を表し、各マルチパスインスタンスは、BEB−AとL2を表す仮想BEBとの間の最短パスである。1つのシナリオにおいて、BEB−Aからの第1の経路(B1)は、ABB−a1を介してL2に入ることができ、BEB−Aからの第2の経路(B2)は、ABB−a2を介してL2に入ることができる。L2によって表現される仮想ノードへの最短パスが1つのみ存在するようにBEBがL1内で位置付けられることも可能であり、この場合、そのBEBについて、マルチパスインスタンスB1及びB2は、単一のABB(例えば、ABB−a1)を通過するはずである。
【0030】
本発明の実施形態は、異なるルーティングエリアにおいて異なる数のB−VID(したがって、異なる数のECTセット)を使用することを可能にする。例えば、L1ルーティングエリア及びL2ルーティングエリアは、異なる数のB−VIDを有することができる。そのため、L1(例えば、L1−A又はL1−B)内のB−VIDとL2内のB−VIDとの間に、1対1の対応はない。しかしながら、同じBEB(例えばBEB−A)が、単一のB−MACアドレスとして、L2内で異なるABB(例えば、ABB−a1及びABB−a2)上に同時に存在することはできない。なぜなら、そのように存在することは、1つのMACアドレスが2つのポイントに同時に存在することを暗に示すことになり、イーサネットのルーティングプロトコル及び物理的実装の違反になるからである。本発明の1つの実施形態に従えば、あるL1におけるあるBEBには、そのL1内でそのBEBに接続する各マルチパスインスタンスについて、一意のBEB識別子が提供される。すなわち、(各々が異なるB−VIDで識別される)複数のマルチパスインスタンスに接続する1つのBEBに、複数の一意のBEB識別子が、具体的にはB−VIDごとに(又は、B−VIDごとにかつPIP(プロバイダインスタンスポートごとに)1つの一意のBEB識別子が、与えられる。1つの実施形態において、BEB識別子はB−MACアドレスである。同じBEBのために複数のBEB識別子を実装することは、専用の(proprietary)ファブリック内に隠蔽され得る。したがって、IS−ISの変更は不要である。
【0031】
代替の実施形態に従えば、BEBのB−MACアドレスの下位ビットを、L2内へのマルチパスインスタンスを符号化するのに使用してもよい。これらのビットは、定義上、すべてのユニキャストMACアドレスについて、L1内でゼロである。L2からL1内へ入るすべてのユニキャストフレームについて最下位nビットをゼロにする、ブラインドのネットワークアドレス変換(Network Address Translation(NAT))機能を実現することができる。加えて、L1からL2内へ入るすべてのユニキャストフレームについて、最下位nビット内にVLAN ID(VID)情報を挿入して、それらのフレームにL2内の一意のIDを提供する、同等のNAT機能を実現することができる。しかしながら、このようなマルチパス符号化は、ネットワーク実装をより複雑にするものと思われる。
【0032】
ABBがエリア間で情報をどのようにリークするかに関しては特定の規則がある。I−SIDがL2内のB−VIDに関連付けられるよう構成されている場合(これはI−SIDに関心を持っている他のL1が存在することを示唆する)、L1内でBEBに最も近いABBが、そのL1エリアに関連付けられているI−SID及びBEB MACアドレスを、L2内へ(リンクステート広告を介して、又は他のメッセージを使って)広告する。
【0033】
図3は、BEB 31がL1内の複数のI−SID(I10及びI11)ならびに複数のB−VID(B2及びB5)に関連付けられている、本発明の一実施形態をさらに示す図である。
図3の例において、濃色の三角(34、35、36)は各々、複数のノード(例えば、BEB 31、ABB−1、ABB−2)のうちの1つに関連付けられたIS−ISスピーカを表す。IS−ISスピーカ34〜36は各々、それに関連付けられたノードに代わって、ネットワーク情報を広告する。当該三角に隣接する矩形のブロックは、その広告の内容を示し、(BEB識別子、I−SID、B−VID、ならびに、送信インジケータ(T)及び受信インジケータ(R)により表されるそのI−SIDについてのマルチキャストの関心)の1又は複数のセットを含む。ここで、BEB識別子は、広告されるI−SIDに関心を持っているBEBを識別する。送信インジケータ(T)及び受信インジケータ(R)は、それぞれ、関連付けられたノードがそのI−SIDのためのマルチキャストフレームを送信するか及び受信するかを示す。例えば、(T=1,R=1)は、ノードが送信及び受信することを示し、(T=1,R=0)は、ノードが送信はするが受信はしないことを示し、(T=0,R=1)は、ノードが受信はするが送信はしないことを示す。これらのバリエーションは、LANサービスやルーテッドマルチポイント(rooted multipoint)等、接続性の異なる構造体を作成するのに使用される。
【0034】
同じB−MACアドレス(例えば、BEB 31を表すB−MAC)が、(この例では、L2内の同じB−VID(B8)で識別される)同じL2マルチパスインスタンス上にある複数のABBからの広告の中に現れるのを防ぐために、BEB 31には、L1内のB−VIDごとに1つずつ(すなわち、L1内のマルチパスインスタンスごとに1つずつ)の、複数の一意のBEB識別子(例えば、BEB−1及びBEB−2)が与えられる。
【0035】
上述したように、L2は、パスが計算されたとき、仮想ノード(VN 37)で表現される。本発明の1つの実施形態に従えば、複数のABBは、L2内へ、L1 BEBをどのABBが代表するのかを自動選出(auto-elect)する。この自動選出は、ABBへデュアル(またはそれ以上)ホーム接続されているL2を表現する仮想ノードとBEBとの間の最短パスに基づいて、及びマルチパスインスタンス間でどのようにタイブレーキングが行われるかに基づいて、行われる。802.1aqに定義されたメカニズムは、マルチパスインスタンスにおける個々のパスのルーティングについてすべてのノードが同意することを保証するであろう。選出されたABBは、自身が代表するBEB 31に関連付けられたI−SID及びB−MACを、L2内へ広告する。
図3の例では、BEB 31に関連付けられたI−SID及びB−MACが、L2内へ、ABB−1及びABB−2によって広告される。というのも、それらの両方が、BEB 31とVN 37との間の最短パス上にあるためである。すなわち、ABB−1は、B−VID 5で識別されるマルチパスインスタンスについての最短パス上にあると判断され、ABB−2は、B−VID 2で識別されるマルチパスインスタンスについての最短パス上にあると判断される。
【0036】
L2において、BVID 2及びBVID 5で識別されるマルチパスインスタンスがBVID 8で表される単一のマルチパスインスタンスに集約される(collapsed)。BEB 31を、L1内のB_VIDごとに別個の識別子と関連付けるということは、L2における転送テーブルを、B−VID 8において正しく構築できることを意味する。BVID 2とBVID 5との両方でBEB 31について共通のB−MACアドレスを使ったとしたら、これは不可能だったであろう。その共通のアドレスが、L2内で複数の宛て先(ABB−1及びABB−2)と関連付けられてしまったであろう。
【0037】
図3には示していないが、ABBは、L2からL1内へ広告するよう構成されている場合には、そのような広告も行う。しかしながら、L2は、L1内へは共通ノード(すなわち、VN)で表現されているので、1つのB−MACが複数のABBにルート(root)を有するように見える課題が生じることはない。
【0038】
1つの実施形態において、I−SIDとB−VIDとのバインディングは、各L1ルーティングエリア内で局所的に課せられる。そのため、ABBは、I−SIDがどのB−VIDに割り当てられたかを、BEBからの広告から推断することができる。L2で使用されるB−VIDのセットが、いずれのピアL1内のB−VIDのセットともオーバラップしない場合、I−SIDとB−VIDとのバインディングは、各L2ルーティングエリア内でも局所的に課せられる。L1ルーティングエリア及びL2ルーティングエリアにおけるI−SIDとB−VIDとのバインディングは、明示的な管理アクションにより達成されることができる。
【0039】
本発明の実施形態は、各エリア境界において、I−SID及びB−VIDを異なる数のB−VIDへと、制限なしに再マッピングする能力を提供する。
図3の例では、ABB−1及びABB−2は、L1内の2つのB−VID(B2及びB5)を、L2内の1つのB−VID(B8)に再マッピングする。1つの実施形態において、ABBは、L1からL2へのパス及びL2からL1へのパスについて、I−SIDによりインデックス付けされる一方向B−VID書き換え機能を実装する。例えば、ABB−1及びABB−2は各々、変換テーブル内に、L1からL2へ進むフレームに固有の第1の部分と、L2からL1へ進むフレームに固有の第2の部分と、を含み得る。1つの実施形態において、変換テーブルは、I−SIDによりインデックス付けされる。実施形態によっては、変換テーブルは、I−SID及びT属性(送信インジケータ)によりインデックス付けされ、また、既存の値を上書きするのに使用されるB−VID値を格納する。
【0040】
図3の例において、ABB−1の変換テーブルは、ABB−1に到着する、I−SIDがI11のフレームが、マルチパスインスタンスB8上でL2内へ送られることを示し得る(
図3中、IS−ISスピーカ35の下の矢印で示される)。同様に、ABB−2の変換テーブルは、ABB−2に到着する、I−SIDがI10のフレームが、マルチパスインスタンスB8上でL2内へ送られることを示し得る(
図3中、IS−ISスピーカ36の下の矢印で示される)。ABB−1及びABB−2の変換テーブルは、L2からL1へと進むフレームについて、類似のB−VID書き換え機能を実装し得る。1つの実施形態において、ABB内の変換テーブルには、管理アクションによりデータが投入され得る。
図3には示さないが、各ABBにおける変換テーブルは、すべてのI−SID及び関連するB−VIDが各ABBにおけるテーブル内に存在し、かつ各ABBにおけるテーブルが同じ内容を有する、という意味で、完全であり同一である。1つのABBが2つ以上の対向するL1エリアを有するというシナリオでは、例えば、第1のL1からL2へ及びその逆の場合につき1セット、また、第2のL1からL2へ及びその逆の場合につき1セット、というように、一対のエリア関係ごとに、変換テーブルの一意のセットが存在することになる。
【0041】
図4は、1つのエリアの1つのマルチパスインスタンスにおけるI−SIDが、別のエリア内の異なるマルチパスインスタンスに行き着くように、マルチパスインスタンスの数が経時変化する(例えば、増減する)シナリオの一例を示す図である。この例を用いて、1つのBEB(例えばBEB 31)に(L1−Aの)各ローカルB−VIDにおいて一意のBEB識別子が与えられる本発明の1つの実施形態に従えば、このシナリオが何の問題も生じることはない、ということを示す。
【0042】
図4の例で、BEB 31のIS−ISスピーカ34は、少なくとも部分的に、「BEB1、I10、B1」、「BEB2、I11、B2」、「BEB1、I11、B1」、及び「BEB2、I12、B2」を、L1−Aルーティングエリア内へ広告する。ここで、BEB1及びBEB2は、BEB 31の2つのBEB識別子を表し、I10及びI11は、2つのI−SIDを表し、B1及びB2は、2つのB−VIDを表す。(マルチパスインスタンスB1上にある)ABB−1のIS−ISスピーカ35は、少なくとも部分的に、「BEB1、I10、B3」及び「BEB1、I11、B4」を、最短パス計算の結果として、L2ルーティングエリア内へ広告する。(マルチパスインスタンスB2上にある)ABB−2のIS−ISスピーカ36は、少なくとも部分的に、「BEB2、I11、B4」及び「BEB2、I12、B3」を、L2ルーティングエリア内へ広告する。
【0043】
この例は、L2がL1よりも少ない数のマルチパスインスタンスを有することが問題ではないことを示している。なぜなら、複数のBEB識別子(例えば、BEB1及びBEB2)が、L2内で、同じB−VID(例えば、B3及びB4)であって但し異なるノードにルートを有するB−VIDに出現することができるからである。また、L2がL1よりも多い数のマルチパスインスタンスを有することも問題ではない。なぜなら、1つのBEB識別子が、L2内で、2つ以上のB−VIDに出現することができるからである。さらに、L2からL1へのすべてのトラフィックが単一のルート(root)を有するので、競合は起こりえない。これが機能するのは、I−SIDではなくB−VIDに関連付けられたL1マルチパスが、通過ABBを選ぶ(pick)ためである。(B−VIDごとの)1つのBEB識別子が複数のABBを通過することはできないので、(BEBが設置されたL1内で)B−VIDにつきBEB識別子が一意でありさえすれば、既存のイーサネット実装と一貫性のある転送テーブルが確実に正しく構築されるようにするのに、十分である。
【0044】
図5は、複数のルーティングエリアを含むルーティング型イーサネットネットワークのための方法500の一実施形態を示すフロー図である。ここで、エリアの各々におけるマルチパス実装は、エリアの各々における最適なネットワーク設計を可能にするために、互いのエリアから独立している。ネットワークは、エリア間でフレームを送信するために、SPBMプロトコルを実装する。L1ルーティングエリアは、それぞれのB−VIDにより識別される複数のL1マルチパスインスタンスを介して複数のABBへ連結されるBEBを含む。各L1マルチパスインスタンスは、BEBからL2ルーティングエリアを表現する仮想化ノードへの最短パスを、ABBのそれぞれ1つを通過することにより提供する。1つの実施形態において、当該方法は、
図12に示すABB等の、ネットワークエレメントにより実行されることができる。
【0045】
1つの実施形態において、方法500は、以下のステップを含む。ABBが、BEB識別子のセットを示す広告をBEBから受信する(ブロック510)。当該識別子の各々は、そのBEBを識別し及びL1 B−VIDのそれぞれ1つに関連付けられており、各BEB識別子は一意である。当該広告は、BEB識別子のうちの所与の1つが、所与のL1 B−VID及びサービス識別子(例えば、I−SID)に関連付けられることをさらに示し、当該所与のL1 B−VIDは、通過ABBを介してL2ルーティングエリアへ進入するL1マルチパスインスタンスのうちの所与の1つを識別する。通過ABBは、L2ルーティングエリア内へ、所与のBEB識別子がサービス識別子と、L2マルチパスインスタンスを識別するL2 B−VIDと、に関連付けられていることを示すように広告する(ブロック520)。この広告により、所与のL1マルチパスインスタンスを介してBEBへ宛てられたフレームが、通過ABBへ転送されることが可能とされる。所与のBEB識別子は、複数のABBの中の通過ABBによってのみ広告される。
【0046】
通過ABBは、L1ルーティングエリアからL2ルーティングエリアへ進入するデータフレームについては、所与のL1 B−VIDをL2 B−VIDへとサービス識別子に基づいて変換する(ブロック530)よう、自身の変換テーブルを設定する。通過ABBは、L2ルーティングエリアからL1ルーティングエリアへ進入するデータフレームについては、L2 B−VIDを所与のL1 B−VIDへとサービス識別子に基づいて変換する(ブロック540)よう、自身の変換テーブルを設定する。
【0047】
したがって、通過ABBは、(サービス識別子及び所与のL1 B−VIDにより識別される)データフレームを受信すると、自身の持つ、L1からL2へ進入するフレームに固有の変換テーブル内でそのサービス識別子をルックアップして、L2マルチパスインスタンスを識別するL2 B−VIDを見つけ出す。通過ABBは、データフレーム内で所与のL1 B−VIDをL2 B−VIDに置換し、そのデータフレームを、L2マルチパスインスタンスを介してL2内へ送信する。同様に、通過ABBは、BEBを宛て先とする(サービス識別子及びL2 B−VIDにより識別される)データフレームを受信すると、自身の持つ、L2からL1へ進入するフレームに固有の変換テーブル内でそのサービス識別子をルックアップして、所与のL1マルチパスインスタンスを識別する所与のL1 B−VIDを見つけ出す。通過ABBは、データフレーム内でL2 B−VIDを所与のL1 B−VIDに置換し、そのデータフレームを、所与のL1マルチパスインスタンスを介してL1内へ送信する。
【0048】
上述の実施形態に従えば、方法500は、マルチエリアネットワーク内の個々のどのエリアにおいても、そのファブリックのためのマルチパス化の設計を独立してそのローカルトポロジーのために最適化することができるように、それら個々のエリアの動作を互いに切り離すことを可能にする。実施形態に従えば、ノード(例えばBEB)は、ローカルマルチパスインスタンスごとに一意のアイデンティティを有するので、マルチパスの再マッピングが、面倒な接続性の問題を引き起こすことはない。
【0049】
以下に、所与のルーティングエリア内で、隣接するルーティングエリアに影響を及ぼすことなく、I−SIDをB−VIDの1つのセット(1つのECTセット)から別のセットへと、独立してかつヒットレスに(すなわち、フレームを損失することなく)移動させる能力を提供する、本発明の一実施形態について説明する。これは結果的に、ABBにおけるB−VID変換機能の複雑さを最小化することができる。ABBの変換テーブルに加えられる変更を調整するI−SID移行(migration)手続について、以下に説明する。
【0050】
図6から
図10は、L1ルーティングエリア内の1つのB−VIDから別のB−VIDへとI−SIDが移動される、マルチエリアネットワークの一例を示す一連の図である。
図6は、定常状態の挙動を示す。L2内へのI−SID広告に関連付けられる(T,R)属性は、L1内におけるそのI−SIDについての広告のセットの(T,R)属性の論理和である。
【0051】
図6の例は、I−SID 10(I10)が、L1−A内の1つのBVID(B5)から別のBVID(B2)へ移動させられる場合を示す。丸で囲んだブロックは、アクションがどこで発生しつつあるかを示す。第1のステップで、L1−A内のすべてのI−SID 10のレシーバが、B2及びB5の両方をリッスンするよう設定される(
図7)。この例で、L1−A内のI−SID 10のレシーバとは、ABB 61のためのIS−ISレシーバ62のことである。第2のステップで、すべてのI−SID 10のトランスミッタが、パスB2及びB5上での送信について、B2上の送信を「スタンバイ」に設定される−−L1−Aは、両方のB−VIDにおいてI10のためのマルチキャストツリーを構築する(
図8)。第3のステップで、すべてのI−SID 10のトランスミッタが、パスB2及びB5上での送信について、B5上の送信を「スタンバイ」に、及びB2をアクティブに設定される。この例で、L1−A内のI−SID 10のトランスミッタとは、IS−ISトランスミッタ62、63、及び64のことである。スタンバイモードとアクティブモードとを変更しながら、ABB 61は、ABB 61に到着するすべてのI−SID 10のトラフィックがB2へ転送されるように、L2からL1−AへのためのB−VID変換テーブルもまた変更する(
図9)。第4のステップで、I−SID 10についてのすべてのB5インスタンスが廃止(decommission)される(
図10)。
【0052】
同様の手続(図示せず)を使用して、L2内のI−SID 10を1つのBVID(B8)から別のBVID(B9)へ移動させることができる。第1のステップで、すべてのI−SID 10のレシーバは、B8及びB9の両方をリッスンするように設定される。第2のステップで、すべてのI−SID 10のトランスミッタは、B8及びB9の両方の送信について、B9を「スタンバイ」に設定される。L2は、必要なマルチキャストツリーを構築する。第3のステップで、すべてのI−SID 10のトランスミッタが、「B8でアクティブ」から「B9でアクティブ」に切り換えられ、L1からL2への変換テーブルが同時に更新される。その後、I−SID10についてのすべてのB8インスタンス廃止ことができる。
【0053】
図11は、マルチエリアルーティング型イーサネットネットワーク内のルーティングエリアにおいて、1つのマルチパスインスタンスから別のマルチパスインスタンスへサービスを移動させるための方法1100の一実施形態を示す。1つの実施形態において、方法1100は、
図5の方法500を強化したものであり、サービスを異なるマルチパスインスタンスへ再割り当てすることを可能にする。1つの実施形態において、方法1100は、
図1のネットワーク100における管理システム110等の、管理システムによって実行することができる。
【0054】
1つの実施形態において、方法1100は、管理システムが、L1ルーティングエリア内のサービスのレシーバを、B−VID Aの広告及びB−VID Bの広告をリッスンするように設定すること(ブロック1110)から開始する。管理システムは、また、L1ルーティングエリア内のそのサービスのトランスミッタを、B−VID A及びB−VID Bにより識別される両方のマルチパスインスタンス上での送信について、B−VID Aをアクティブに、及びB−VID Bをスタンバイに設定する(ブロック1120)。その後、管理システムは、L1ルーティングエリア内のそのサービスのトランスミッタを、B−VID A及びB−VID Bにより識別される両方のマルチパスインスタンス上での送信について、B−VID Bをアクティブに、及びB−VID Aをスタンバイに設定する(ブロック1130)。これらの設定は、そのサービスが送信中に通過するABBに、そのサービスがL1ルーティングエリア内のB−VID Bへ移行したことを示すように、自身の変換テーブルを更新させる(ブロック1140)。その後、管理システムは、そのサービスに関連付けられたB−VID Aのすべてのインスタンスを削除して、B−VID AからB−VID Bへのサービスの移行を完了させる(ブロック1150)。
【0055】
図12は、本発明の一実施形態を実現するのに使用され得るネットワークエレメント210の一例を示す。
図12に示されるように、ネットワークエレメント210は、スイッチングファブリック230と、複数のデータカード235と、受信(Rx)インターフェイス240と、送信(Tx)インターフェイス250と、を含むデータプレーンを含む。Rxインターフェイス240及びTxインターフェイス250は、ネットワーク上のリンクとインターフェイスし、データカード235は、インターフェイス240及び250を通じて受信されたデータに対して機能を実行し、スイッチングファブリック230は、データカード/I/Oカード間でデータをスイッチングする。ネットワークエレメント210は、制御プレーンもまた含み、制御プレーンは、L1リンクステートルーティングプロセス及びL2リンクステートルーティングプロセスを実現するよう構成された制御ロジックを含有する1又は複数のプロセッサ215を含む。他のプロセスもまた、制御ロジックで実現されてもよい。ネットワークエレメント210は、メモリ220もまた含み、当該メモリは、ルーティングソフトウェア222と、プロトコルスタック224と、1又は複数の変換テーブル226と、を記憶する。ルーティングソフトウェア222は、L1リンクステートルーティングプロセス及びL2リンクステートルーティングプロセスに関連付けられたデータ及び命令を含有し得る。プロトコルスタック224は、ネットワークエレメント210により実現されるネットワークプロトコル群を記憶する。変換テーブル226は、上述のB−VID書き換え機能を実現する。ネットワークエレメント210は、上述の機能を自ら実行できるように、また、通信ネットワーク上のネットワークエレメントで通常実現される他の機能を自ら実行できるように、他のソフトウェア、プロセス、及び情報の記憶装置を含有してもよい。1つの実施形態において、ネットワークエレメント210は、上述のABBであり得る。
【0056】
図12の実施形態は、ネットワークエレメント210が、
図1の管理システム110等の、管理システムに連結されることもまた示している。1つの実施形態において、管理システム110は、メモリ270に連結された1又は複数のプロセッサ260を含む。プロセッサ260は、
図11に関連して上述した動作等の、ネットワークエレメント210の動作を制御するロジックを含む。
【0057】
上述の機能は、コンピュータ読み取り可能なメモリに記憶されてネットワークエレメントに関連付けられたコンピュータプラットフォーム上の1又は複数のプロセッサ上で実行される、プログラム命令のセットとして実現され得る。しかしながら、本明細書に記載するすべてのロジックを、複数の個別の構成要素、特定用途向け集積回路(ASIC)等の集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくはマイクロプロセッサ等のプログラマブルロジックデバイスと一緒に使用されるプログラマブルロジック、ステートマシーン、又は、それらのいずれの組み合わせをも含む他のいずれの装置を使用しても具現化することができることは、当業者には明らかであろう。プログラマブルロジックは、読み取り専用メモリチップ、コンピュータメモリ、ディスク、又は他の記憶媒体等の有形の媒体に、一時的に又は永久的に固定されることができる。また、プログラマブルロジックは、搬送波で具現化されるコンピュータデータ信号内に固定されることもでき、その場合、プログラマブルロジックを、コンピュータバス又は通信ネットワーク等のインターフェイスを通じて送信することが可能になる。このようなすべての実施形態は、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0058】
図5及び
図11のフロー図の動作を、
図12の例示の実施形態を参照して説明した。しかしながら、
図5及び
図11のフロー図に示す動作が、
図12を参照して説明した実施形態以外の本発明の実施形態によっても実行することができること、また、
図12を参照して説明した実施形態が、
図5及び
図11のフロー図を参照して説明した動作とは異なる動作を実行することができること、を理解されたい。
図5及び
図11のフロー図は、本発明の特定の実施形態によって実行される動作の具体的な順番を示しているが、この順番は例示であること(例えば、代替の実施形態では、動作が異なる順番で行われ得ること、いくつかの動作が組み合わせられ得ること、いくつかの動作が一部重複され得ること、等)を理解されたい。
【0059】
本発明の多様な実施形態は、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又はハードウェアの多様な組み合わせを使用して実現されてよい。したがって、図示する技術は、1又は複数の電子装置(例えば、エンドステーション、ネットワークエレメント)に記憶されかつそこで実行されるコード及びデータを使用して実現されることができる。そのような電子装置は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスク、ランダムアクセスメモリ、読出し専用メモリ、フラッシュメモリデバイス、相変化メモリ)及び一時的なコンピュータ読み取り可能な伝送媒体(例えば、電気、光、音響、その他の形の伝搬信号−−搬送波、赤外信号、デジタル信号等)を含むコンピュータ読み取り可能な媒体を使用して、コード及びデータを記憶したり(内部で及び/又はネットワークを通じて他の電子装置との間で)通信したりする。加えて、そのような電子装置は、典型的に、1又は複数の記憶装置(非一時的な機械読み取り可能な記憶媒体)、ユーザ入/出力装置(例えば、キーボード、タッチスクリーン、及び/又はディスプレイ)、及びネットワーク接続等の、1又は複数の他の構成要素に連結された1又は複数のプロセッサのセットを含む。そのプロセッサのセットと他の構成要素との連結は、典型的に、1又は複数のバス及びブリッジ(「バスコントローラ」とも呼ばれる)を通じて行われる。したがって、所与の電子装置の記憶装置は、典型的に、その電子装置の1又は複数のプロセッサのセット上で実行するためのコード及び/又はデータを記憶する。
【0060】
本明細書において「ネットワークエレメント」(例えば、ルータ、スイッチ、ブリッジ、コントローラ)とは、ネットワーク上の他の機器(例えば、他のネットワークエレメント、エンドステーション)を通信可能に相互に接続する、ハードウェア及びソフトウェアを含む、1台のネットワーキング機器のことである。いくつかのネットワークエレメントは、「複数サービスのネットワークエレメント」であり、これらは、複数のネットワーキング機能(例えば、ルーティング、ブリッジング、スイッチング、レイヤ2統合、セッションボーダ制御、サービス品質(Quality of Service)、及び/又は加入者管理)についてのサポートを提供し、及び/又は、複数のアプリケーションサービス(例えば、データ、音声、及びビデオ)についてのサポートを提供する。加入者エンドステーション(例えば、サーバ、ワークステーション、ラップトップ、ネットブック、パームトップ、携帯電話、スマートフォン、マルチメディアフォン、VOIP(Voice Over Internet Protocol)フォン、ユーザ機器、端末、携帯型メディアプレーヤ、GPSユニット、ゲームシステム、セットトップボックス)は、インターネットを通じて提供されるコンテンツ/サービス、及び/又は、インターネットにオーバレイされる(例えば、インターネット経由でトンネリングされる)仮想プライベートネットワーク(VPN)上で提供されるコンテンツ/サービスにアクセスする。それらのコンテンツ及び/又はサービスは、典型的に、サービスプロバイダ又はコンテンツプロバイダに属する1又は複数のエンドステーション(例えば、サーバエンドステーション)により、又はピアツーピアサービスに参加するエンドステーションにより提供され、例えば、パブリックウェブページ(例えば、無料コンテンツ、ストアフロント、検索サービス)、プライベートウェブページ(例えば、eメールサービスを提供する、ユーザ名/パスワードによりアクセスされるウェブページ)、及び/又は、VPN上の企業ネットワークを含み得る。典型的に、加入者エンドステーションは、(例えば、アクセスネットワークに(有線又は無線で)連結された顧客構内機器(customer premise equipment)を通じて)エッジネットワークエレメントに連結され、それらエッジネットワークエレメントは、(例えば、1又は複数のコアネットワークエレメントを通じて)他のエッジネットワークエレメントに連結され、それら他のエッジネットワークエレメントは、他のエンドステーション(例えば、サーバエンドステーション)に連結される。
【0061】
本発明をいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明が上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の各請求項の思想および範囲内で変形及び変更を加えて実施されることができることは、当業者には理解されるであろう。したがって、上記の説明は、限定ではなく例示と捉えられるべきである。