【文献】
Enkeleda DERVISHI, et al.,Versatile Catalytic System for the Large-Scale and Controlled Synthesis of Single-Wall, Double-Wall, Multi-Wall, and Graphene Carbon Nanostructures,Chemistry of Materials,2009年10月20日,Vol.21 No.22,pp 5491-5498
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気分解石炭を基板上に堆積させることが、前記電気分解石炭をキャリア中に分散させて、ガス噴霧器を用いて前記キャリア中の電気分解石炭を前記基板上に分配して、前記キャリアを蒸発させることを備える、請求項4又は5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、石炭を電気分解して、グラフェン製造用のチャー、つまり電気分解した石炭粒子(電気分解石炭粒子)を生成するのに用いられる装置10の概略図を示す。
図1に示されるように、装置10は電気分解槽11を含み、その電気分解槽11には、ナフィオン(登録商標)膜やポリエチレン膜によって分離されたカソード12及びアノード14が組み込まれている。
【0010】
アノード溶液を含有する容器16は、ポンプ17に繋がり、そのポンプ17は、アノード溶液を、電気分解槽11のアノード側にポンピングする。図示されるように、アノード溶液は、ライン23を通り、アクリルブロック22のチャネル21を通って流れる。アノード流体はチャネル21を通過して、ライン24を通って容器16に戻る。流体内に発生するガス(二酸化炭素)は、容器から放出されて、ガス収集装置26に送られる。温度制御装置27が容器16内に配置される。
【0011】
反対側において、容器30が、カソード溶液を含み、そのカソード溶液は、電気分解槽11のカソード側に繋がるポンプ32に送られる。この場合も、カソード溶液は、ライン33を通って、アクリルブロック34内のチャネル(図示せず)を通過する。アクリルブロック34はカソード12との接触部を提供する。そして、流体は、チャネルからライン36を通って、容器30に戻る。発生するガス(水素)は、ガス収集装置40に送られる。この場合も、温度制御装置42が容器30内に配置される。
【0012】
図2は、電気分解槽11の分解図を示す。アクリルブロック22及び34は互いの鏡像である。アノード14及び12はセパレーター13の両側に位置する。不活性セパレーター44、46によって、アクリルブロック22、34と、カソード12、アノード14との間の分離部が設けられる。セパレーターは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ナフィオン(登録商標)、ポリエチレンである。
【0013】
カソード12は、電気分解槽11内の酸性条件に耐える任意の物質であり得る。そうした物質として、炭素、ニッケル、貴金属(プラチナ、イリジウム、ロジウム等)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0014】
アノード14は任意の導体であり得るが、典型的には、アノード14は、基板又は支持体上に電気めっき、つまり堆積された貴金属含有電気分解触媒を備える。電気分解触媒は、一元、二元、又は三元金属であり得て、石炭の電気分解に活性な少なくとも一種の貴金属と、一種以上の他の金属とを備える。その他の金属も貴金属であり得るが、必ずしもそうではない。一部実施形態では、電気分解触媒は、支持体上の一元貴金属を備え得る。
【0015】
支持体は、多数の既知の支持体から選択され得る。適切な支持体として、貴金属のメッシュ及び箔、例えば、プラチナメッシュ、プラチナ箔、チタンメッシュ、ハステロイメッシュ、金メッシュ、金箔、タンタルメッシュ、タンタル箔が挙げられ、また、プラチナ又はイリジウムのスポンジも挙げられる。基板としてメッシュが用いられる場合、メッシュサイズは、メッシュが電気分解触媒で適切に電気めっき可能であるように選択され、その電気分解触媒は、基板上に電気めっきされる二元又は三元金属触媒であるか、又は、基板上に電気めっきされる二元又は三元金属/ラネー金属触媒である。列挙された具体的な基板とは別に、当業者には、他の適切な支持体も認識されるものである。一部実施形態では、電極は、支持体上に直接電気めっきした二元又は三元金属電気分解触媒である。
【0016】
二元及び三元金属触媒用の適切な金属は、プラチナ、イリジウム、ルテニウム、レニウム、パラジウム、金、銀、ニッケル、及び鉄から選択される。例えば、一実施形態では、電極は、プラチナメッシュ上に電気めっきされたプラチナ・イリジウム電気分解触媒である。
【0017】
石炭の電気分解については、特許文献1に更に記載されていて、その開示は参照として本願に組み込まれる。本願では、燃料として石炭に言及する。石炭とは、炭素系生成物(石炭、木炭の亜炭、グラファイト等)のことを称するものである。
【0018】
チャー、つまり電気分解した石炭を形成するため、石炭を1μmから249μmの間の粒径にすり潰して、石炭スラリーを作製する。プロトンキャリア(例えば、H
2SO
4、H
3PO
4等)及び触媒塩(例えば、鉄塩、セリウム塩)を含有する電解質と、粉炭を混合する。典型的には、効率的な反応のために鉄が必要とされる。鉄の濃度は、最大10000ppmとなり得る。
【0019】
電気分解プロセスに印加可能な電流密度は、30mA/cm
2から最大200mA/cm
2となり得る。少なくとも90mA/cm
2以上の電流密度を用いることが好ましい。電気分解プロセスに印加可能な温度は、80℃以上であり得る。石炭スラリーは、アノード溶液として石炭電気分解槽に導入される。電気分解中に、石炭の脱水素化が生じて、電気分解槽のカソード室において純粋な水素を生じさせる。石炭は、二酸化炭素(電気分解槽のアノード室で収集される)と、石炭粒子をコーティングする大型の炭化水素構造体とに酸化される。電気分解後、電気分解されたチャースラリーが濾過されて、溶液から電解質が分離される。電解質及び触媒塩は、石炭電気分解槽において再利用可能である。
【0020】
石炭が電気分解される機構は多段階プロセスである。溶液中のFe(III)イオンが、石炭粒子の表面に吸着される。吸着されたC‐Fe(III)
ads構造体が、強制流動によって、電極表面に向けて流れる。C‐Fe(III)
ads構造体がアノード電極に接触して、石炭上のFe(III)
adsが石炭と電極との間のブリッジとして機能する。立体効果及び/又は静電電荷によって、Fe(III)が石炭粒子からアノード電極へと脱着吸着して、その後、石炭の酸化が生じるのと同時に、Fe(III)がFe(II)に還元される。このプロセス中に、石炭が、CO
2及び/又は他の長鎖炭化水素に酸化され得る。Fe(II)イオンは、電気分解槽のアノードで酸化されて、Fe(III)イオンを再発生させる。石炭が酸化すると、石炭粒子の表面上にゼラチン様フィルムが成長し、石炭の酸化を最終的には防止する。
【0021】
このようにして、石炭スラリーは、
図1に示される装置10を通過して、繰り返し容器16に循環されて電気分解槽11に通される。最終的には、石炭粒子がゼラチン様物質でコーティングされて、電気分解における更なる利用が防止される。こうした粒子を、ライン44を通して溶媒抽出器48に送ることができて、石炭粒子を、エタノール、イソプロパノール、ピリジン、アセトン等の有機溶媒に接触させる。
【0022】
必要であれば、高温の溶媒が、ゼラチン様コーティングを石炭粒子から除去する。濾過によって溶媒が粒子から分離されて、粒子を、ライン49を通してアノード溶液に戻して、更に電気分解することができる。石炭粒子がもはや電気分解されなくなるまで(つまり、水素の生成が顕著に低下するまで)、これらのステップを繰り返すことができる。この時点において、ゼラチン様コーティングでコーティングされた石炭粒子を、グラフェンの形成に用いることができる。石炭粒子を、電気分解中の任意のサイクルにおいてグラフェンの形成用に用いることができるが、この原料を、水素生成が顕著に低下した際にグラフェン生成用に用いるのが好ましい。
【0023】
石炭粒子をグラフェンの形成に用いることを決めると、石炭粒子を濾過して、再利用可能な電解質を分離する。そして、ゼラチン様コーティングを備えた粒子を乾燥させる。
【0024】
乾燥させたチャー、つまりゼラチン様フィルムを備えて電気分解した石炭粒子から、ゼラチン様フィルムから、又はゼラチン様フィルムを備えない粒子から、グラフェンを形成することができる。ゼラチン様フィルムでコーティングされた粒子から形成する場合、上述のように、チャーが電解質から簡単に分離される。上述のように、この電気分解した石炭を乾燥させて、水を蒸発させて、支持体又は基板50(銅フィルム等)上にコーティングする。電気分解した石炭を、液体アルコール、アルケン、トーン等のキャリアに分散させて、基板50上に噴霧する。一実施形態では、ガス噴霧器を用いて、基板50上に電気分解した石炭を分散させることができる。そして、キャリアを蒸発させる。代わりに、乾燥させてすり潰した粒子を、薄いコーティングとして、基板50上に適用することができる。基板50に電気分解した石炭の非常に薄いコーティングを得ることが好ましい。基板上に電気分解した石炭を分散させるのにキャリアを用いることによって、これを促進する。
【0025】
第二の方法では、電気分解した石炭粒子から分離したゼラチン様物質を、抽出溶媒を除去することによって濃縮させる。これによって、濃い炭素質シロップを生成して、基板50上にコーティングする。これも、後で蒸発させるキャリアを用いて適用可能であり、又は直接基板50上に適用される。
【0026】
第三の方法では、ゼラチン様物質から分離した電気分解石炭粒子を、グラフェン形成用の炭素源として用いることができる。この実施形態を用いる場合、電気分解した石炭を、電解質から分離して乾燥させる。ゼラチン様物質を除去して、乾燥させた電気分解炭素粒子を残す。その粒子をキャリア内に分散させて、超音波処理して、溶液中に粒子を分散させる。そして、粒子を基板50上に噴霧して乾燥させることができる。代わりに、乾燥させてすり潰した粒子を薄いコーティングとして基板50上に適用することができる。これら全ての実施形態では、グラフェンの製造を促進するために、基板50上に可能な限り薄いコーティングを有することが好ましい。
【0027】
電気分解した石炭の堆積に先立って、基板50をアセトン又はイソプロパノール(IPA)ですすいで、或る期間、例えば10〜15分間にわたって超音波処理する。次に、基板50を、略800℃の温度で30分間にわたって炉の中で予熱し得る。
【0028】
図3は、グラフェンを製造するのに用いられる装置60の概略図を示す。図示されるように、この装置60はガス源62を含む。ガス源62は、例えば、水素と、アルゴン等の不活性キャリアとを含み得る。電気分解した石炭生成物でコーティングされた基板50(銅箔等)を含む石英管加熱素子64に、ガスを導入する。石英管64内には、コーティングされていない基板又は表面66も配置されて、その上にグラフェンが製造される。ナノ構造体合成をサポートするための表面66は、銅箔、シリコンウェーハ、又は反応条件に耐えることができる任意の他の物質であり得る。石英管64は、グラフェン形成が行われる管炉68の加熱領域に挿入される。
【0029】
化学気相堆積(CVD)を用いて、高温で、コーティングされた基板50上に還元ガスを流すことによって、グラフェンを形成する。任意の市販の化学気相堆積装置が適切であり、グラフェン形成を大気圧で行うことができる。
【0030】
高温がグラフェンの製造を促進する。略400℃等の低温では、グラフェンではない炭素フィルムが製造される。従って、少なくとも490℃以上、最大略1100℃の高温を用いるのが好ましい。700℃から1000℃等の高温を用いることもできて、典型的には、800℃から1000℃が用いられる。こうした温度が、還元ガスの存在下においてグラフェンの生成を生じさせる。還元ガスの流れが、表面66上にグラフェンを堆積させる。
【0031】
基板50上の電気分解石炭と共に、アルゴン等の不活性ガスを、例えば600sccm等の流量で装置60に導入して、反応性ガスの系をパージする。このパージ期間は、例えば20分間持続し得る。そして、例えば、40分間の期間にわたって、炉内の温度を、典型的には800℃の反応条件に上昇させる。そして、還元ガス、特に水素をアルゴンと共に系に導入して、典型的にはアルゴンについては600sccmの流量、水素については100sccmの流量である。ガスの厳密な割合は重要ではない。この時点において、グラフェンの成長が生じる。グラフェンの成長期間は必要な限り続行し得る。典型的には、その時間は、数分間から1時間又はそれ以上となり得る。一例として、グラフェンの成長期間は30分間の持続時間を有し得る。必要に応じて、水素の導入を中断して、炉68を室温に急速冷却することによって、反応を停止させる。電気分解した石炭からのグラフェンの製造は、以下の例1〜5を参照して更に理解されるものである。
【0032】
[例1]
一例では、略44μmの石炭粒子を有するスラリーを、略0.04g/mlの濃度で懸濁させた。スラリーは、略40mMの鉄濃度を有していた。石炭スラリーを、104℃の温度及び100mA/cm
2の電流で電気分解した。
【0033】
電気分解サイクルを複数回繰り返した後、電気分解した石炭粒子をグラフェン合成に用いた。略2cm×1cmの寸法を有する銅箔を、アセトンですすいで前処理した。略10mgの電気分解した石炭を銅箔上に堆積させた。電気分解した石炭を堆積させた銅箔と、クリーンな銅箔(つまり、電気分解した石炭が堆積していない)を、直径1/4インチの石英管内に配置した。そして、石英管を炉の内部に移した。
【0034】
600sccmのアルゴンを20分間にわたってウェーハ上に流して、不活性雰囲気を生じさせた。そして、600sccmのアルゴン及び100sccmの水素の流れで、炉を40分で1000℃に昇温させた。1000℃の温度を30分間にわたって維持して、その間にグラフェンの成長が生じた。そして、ウェーハを炉の外に出して冷却した。ウェーハをはじめ急速冷却して、3時間の期間にわたって室温にまで完全に冷却して、その期間において、アルゴン・水素の流れをウェーハ上に流し続けた。
【0035】
グラフェンの成長サイクル及び冷却に続いて、電気分解した石炭が堆積した銅箔を、マーブル試薬内に入れて、銅箔を溶かした。この時点において、グラフェンフィルムが試薬内に漂って残されて、そのフィルムをチタン箔に移した。グラフェンフィルムのラマン分光法は、通常の石炭よりも顕著に少ない欠陥を示した。制限視野電子回折(SAED,selected area electron diffraction)パターンは、単結晶グラフェンの六方格子を示した。
【0036】
[例2]
他の例では、シリコンウェーハを前処理して、電気分解した石炭ではなくて、IPAをウェーハ上に堆積させた。ウェーハを炉内において、1slpmの流量のアルゴンで20分間にわたってパージした。そして、アルゴンを流して、炉を30分間で800℃に昇温させた。0.8slpmの水素・窒素の流れで、800℃の温度を30分間にわたって維持した。そして、1slpmのアルゴン流で、系を室温に冷却した。
【0037】
この例では、ウェーハ上にグラフェンは合成されなかった。この例は、IPAそれ自体はグラフェンの合成に寄与していないことを示唆している。
【0038】
[例3]
更に他の例では、略0.04g/mlの濃度で懸濁させた略210〜249μmの石炭粒子を有するスラリーを作製した。スラリーは略40mMの鉄濃度を有していた。石炭スラリーを104℃の温度、100mA/cm
2の電流で電気分解した。結果物の電気分解石炭をグラフェン合成に用いた。
【0039】
一つの基板について、略6mgの電気分解した石炭を6mlのIPAで希釈した。溶液を5分間にわたって超音波処理した。その後、溶液を、IPAを用いて30倍に希釈して、再び超音波処理した。25mlの溶液をシリコンウェーハ上に堆積させて、IPAを蒸発させた。同じ前処理プロセスを用いて、第二のシリコンウェーハ基板の上に、210〜249μmの範囲内の未加工の石炭粒子を堆積させた。
【0040】
個別の反応において、電気分解した石炭を備えたウェーハと、未加工の石炭を備えたウェーハとを炉の中に移した。各ウェーハを、20分間にわたって1slpmのアルゴンでパージした。各ウェーハについて、0.8slpmの水素・窒素混合物の流れで、30分間で800℃に炉を昇温させた。その後、1slpmのアルゴン流で、系を室温に冷却した。
【0041】
処理された二つウェーハを比較すると、電気分解した石炭を備えたウェーハの上にグラフェンが合成された。他方、未加工の石炭を有するウェーハ上にナノ構造体が成長したが、そのナノ構造体のトポグラフィは、グラフェンについて予測されるトポグラフィとは異なっていた。従って、この例は、未加工の石炭単独では、グラフェン合成に寄与しないことを示唆している。
【0042】
[例4]
更に他の例では、異なる条件で電気分解した石炭のサンプル、また未加工の石炭を用いて合成を行った。これらの条件を表1にまとめる。
【0044】
各サンプルについて、6mgの石炭、6mlのIPAでスラリーを作製した。その後、溶液を5分間にわたって超音波処理した。その後、スラリーを、IPAを用いて20倍に希釈して、再び超音波処理した。各サンプルについて、25mlのスラリーをシリコンウェーハ上に堆積させて、溶媒を蒸発させた。
【0045】
各ウェーハを炉に移した。1slpmのアルゴンで20分間にわたってウェーハをパージした。アルゴン流で、30分間で炉を800℃に昇温させた。その後、0.8slpmの水素・窒素混合物の流れで、30分間にわたって炉を800℃に維持した。その後、1slpmのアルゴン流で、系を室温に冷却した。
【0046】
上記例3では、未加工の石炭を有するウェーハからナノ構造体が成長したが、そのナノ構造体のトポグラフィは、グラフェンについて予測されるトポグラフィに従わなかった。サンプルA〜Cを備えたウェーハでは、グラフェンのトポグラフィを示すナノ構造体が成長した。サンプルCでは、最大量のナノ構造体が成長し、サンプルAでは、最小量のナノ構造体が成長した。従って、この例は、より高温(具体的には、104℃対80℃)で電気分解させた石炭がより多くのグラフェン合成をもたらし、より高い電流密度(具体的には、100mA/cm
2対30mA/cm
2)で電気分解させた石炭がより多くのグラフェン合成をもたらすことを示唆している。
【0047】
[例5]
更に他の例では、5.8mgの電気分解石炭、6mlのイソプロパノールでスラリーを作製した。スラリーを5分間超音波処理して、20倍に希釈した。シリコンウェーハをアセトン及び蒸留水で洗浄して、100μlのスラリーをウェーハ上に堆積させた。同じ前処理プロセスを用いて、未加工の石炭粒子を堆積させた第二のシリコンウェーハも作製した。
【0048】
乾燥後、ウェーハを石英管の中心に置いた。1000sccmのアルゴンで20分間にわたってウェーハをパージした。その後、炉を、1000sccmのアルゴン流で30分間で800℃に昇温させた。100SCCMの水素・窒素流(1:9)で、更に30分間にわたって、系の温度を800℃に保持した。その後、1000sccmのアルゴン流で系を室温に冷却した。
【0049】
MFP‐3D顕微鏡(カリフォルニア州サンタバーバラのAsylum Research製)をACモードで用いて、大気条件下で、グラフェンシートの原子間力顕微鏡法(AFM,atomic force microscopy)画像を撮った。AFMの高度画像及び3次元画像は、グラフェンシートのモルフォルジーを示した。画像及び高度測定は、厚さが略1nmであり、二次元シートがグラフェン単層であることを示していた。大規模走査は、グラフェンの横方向寸法が、最大数百ナノメートルであることを示していた。
【0050】
これらの例は、電気分解した石炭が高温で分解してグラフェン化することを実証している。水素は、還元剤及びキャリアガスの両方として機能し、高温においてグラファイト化した石炭と反応して、炭化水素又は他の反応中間生成物を生じさせる。炭化水素及び反応中間生成物は、銅箔上にグラフェンを合成するための前駆体として機能する。この方法は、特に有効であり、商業的に高品質グラフェンを形成するためのコストを顕著に低減する。
【0051】
以上、本発明を実施するための好ましい方法で、本発明を説明してきた。しかしながら、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ定められるものである。