(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主本体(10)と、閉位置と開位置との間を回転移動可能なように主本体(10)に装着される少なくとも1つのカバー部材(11、12)と、を備える流動体ディスペンサー装置であって、
1ドーズ分の粉末などの流動体を収容する少なくとも1つの個別貯蔵容器と、
自装置が駆動される毎に、個別貯蔵容器を開封する開封手段(80)と、
自装置が駆動される毎に個別貯蔵容器を前記開封手段(80)に対向する位置に移動させる移動支持手段(50)と、を備え、
前記移動支持手段(50)は、非投与位置と投与位置との間を移動可能であり、前記移動支持手段(50)は、バネなどの弾性手段(70)の作用により投与位置への移動が促進され、ユーザーの吸入動作に応じて移動ブロック状態が解除されるブロック手段により非投与位置に保持され、
前記流動体ディスペンサー装置は、前記弾性手段(70)及び前記移動支持手段(50)上に形成されるカム面(51)とそれぞれ接触して協働する打ち金部材(800)を備え、
前記打ち金部材(800)は、前記少なくとも1つのカバー部材(11、12)とともに前記主本体(10)に対して回転移動可能に構成されており、
前記カム面(51)には、傾斜度が異なる少なくとも3つのカム部分として、前記弾性手段(70)を付勢する少なくとも1つのローダー部(511;511')、前記少なくとも1つのカバー部材(11、12)が開位置及び/又は閉位置にある状態において打ち金部材(800)の移動をブロックする少なくとも1つのエンド部(515、515')、少なくとも1つのローダー部(511;511')を少なくとも1つのエンド部(515、515')と相互に連結させる少なくとも1つのセーフティ部(513;513')があり、前記セーフティ部(513;513')は、前記打ち金部材(800)の回転移動中心を中心とし、前記打ち金部材(800)の回転移動半径に相当する半径を有する円弧形状の面であり、前記打ち金部材は、前記弾性手段(70)からうける付勢力を加減させることなく、前記セーフティ部(513;513')上を移動することが可能なように構成されていること
を特徴とする流動体ディスペンサー装置。
前記カム面(51)は、前記閉位置を起点とした場合に、ローダー部(511)、セーフティ部(513)、エンド部(515)の順に前記打ち金部材(800)と接触するように構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の流動体ディスペンサー装置。
吸入トリガー機構(60)を備え、当該吸入トリガー機構(60)は、吸入ピース(200)と協働する可変エアチャンバー(61)と、前記吸入ピース(200)から吸入がされている間、前記可変エアチャンバー(61)が変形するように前記可変エアチャンバー(61)と協働するトリガー部材(600)とを有し、前記トリガー部材(600)は前記吸入ピース(200)から吸入がされている間、貯蔵容器が前記開封手段によって開封されるように前記開封手段(80)を駆動させる
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の流動体ディスペンサー装置。
前記開封手段(80)は、前記主本体(10)に対して静止状態の穿孔要素を含み、当該穿孔要素は、前記個別貯蔵容器の封止壁を切断し、切断した前記封止壁の一又は複数の部分が、形成された開口部を塞がないように構成されている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の流動体ディスペンサー装置。
【背景技術】
【0002】
吸入器(inhalers)は、周知の技術であり、種々のタイプの吸入器が利用されている。第1のタイプの吸入器としては、多数ドーズ(dose:1回分の投与量)分の粉末を収容する貯蔵容器から、吸入動作に応じて1ドーズ分の粉末を計り取り、計りとった粉末を放出管へ導いてユーザーに投与することが可能な計量手段を備えるものがある。
又、吸入器には、例えば、カプセルのように複数の個別貯蔵容器を備え、使用直前にそれらの貯蔵容器が吸入器に搭載されるタイプのものもある。このタイプの利点は、全ドーズ分の粉末を予め貯蔵容器に収容しておく必要がなく、吸入器具のサイズをコンパクトなものにすることができるという点である。
【0003】
しかしながら、このタイプの吸入器の場合、使用前にその都度カプセルを吸入器に搭載しなければならないので、ユーザーにとって使い勝手がよくない。
又、別のタイプの吸入器として、予めドーズ毎に粉末を個別に小分けして個別貯蔵容器に密封した状態で収容しておき、ユーザーが吸入器を駆動する毎に、1ドーズ分の粉末を収容している個別貯蔵容器を開封して投与するタイプのものがある。
【0004】
上記のような投与方法の場合、投与すべき粉末を投与開始直前まで粉末を封止された状態で保持することができるので、個別貯蔵容器内の粉末を投与開始まで個別貯蔵容器内により効果的に封入しておくことができる。
このような個別貯蔵容器を作る技術として種々の技術が既に提案されてきている。例えば、ブリスターを備えた細長い帯状部材(elongate blister strip)や複数のブリスターを回転式円形ディスクに配置する方法等がある。
【0005】
上述したタイプのものを含む既存の吸入器には、その構造と動作様式に起因する長所と短所がある。具体的には、吸入器によっては各駆動時における計量の正確性や再現性に問題があるものや、投与効果、すなわち、投与ドーズがユーザーの肺に到達して治療効果を発揮するように効果的な投与が行われないものが存在する。
上記のような問題を解決する方法として、患者の吸入動作に同期させて投与ドーズを放させる方法がとられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の解決方法を用いた場合においても、問題が生じ得る。特に、吸入動作の前に投与すべきドーズがまず、放出管に放出され、その後吸入動作が行われて、吸入動作に同期して放出管内からドーズが放出されて投与が行われるタイプの吸入器において上記の問題が生じやすい。
すなわち、上記のタイプの吸入器において、ユーザーが(多数ドーズを収容する貯蔵容器又は個別貯蔵容器の何れかから)放出管内に投与ドーズを供給してから、ユーザーが吸入動作を開始するまでの間に、ユーザーが吸入器を落としたり、揺さぶったり、望ましくない或いは、不適切な操作方法で操作した場合に、投与ドーズの一部又は全部が吸入器の容器内に散らばり、放出管内から失われてしまう事態が生じ得る。
【0008】
このような事態が生じると、次に当該吸入器が服用のために使用される場合に、投与量が過剰になる危険性が生じる。すなわち、放出管内への投与ドーズの供給が完了していないことに気づいたユーザーは、新たな投与ドーズを放出管内に供給して放出管内に残存している一部のドーズが、吸入動作中に新たに供給されたドーズとともに放出管から放出されてしまい、その結果、過剰投与を引き起こしてしまうことになる。
【0009】
薬剤治療の観点から、このような過剰投与が起こることは、ユーザーの体に非常に有害な作用を及ぼす結果となるので、各国の医療権威者からは、このような過剰投与のリスクをできる限り低減するように今までにない厳しい要請がなされている。
又、生じ得る別の問題として、吸入器の駆動中に大きな応力を必然的に受けるいくつかの部品、特に可動部品の組立に関して発生する問題がある。このような部品に関しては誤作動が生じないように特に組立を確実に行う必要があるが、サイズが小さいいくつかの部品の場合には、組立の確実度を保証することが難しい。
【0010】
吸入投与の準備動作が行われる吸入器の場合、例えば、容器が開かれることにより、投与準備が完了し、その後、吸入動作が行われることにより、投与が実行される吸入器の場合、吸入力が弱いユーザーでは、達成が困難な吸引力で吸引動作を行わないと投与が実行されないように構成することなく、投与準備が完了した後、吸入動作によらず、偶発的に投与が開始される危険性を回避し、或いは、そのような危険性を低くするようにすることは、重要である。
【0011】
本発明の目的は、上述したような問題を生じることがない流動体ディスペンサー装置、特に、乾燥粉末吸入器を提供することである。特に本発明の目的は、製造及び組立てを簡易で安価に行うことができ、各投与の投与量の計量を正確かつ再現性よく行うことができる信頼度の高い吸入器であって、投与開始直前まで、薬剤を密封して無傷の状態に維持しつつ、サイズが非常にコンパクトな吸入器を提供することである。
【0012】
その結果として、治療を要する領域、特に、肺に、薬剤が過剰に投与されるリスクをなくし、実質的に必要な投与量の薬剤を安全かつ効果的に投与することができ、最適な治療効果をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る流動体ディスペンサー装置は、主本体と、閉位置と開位置との間を回転移動可能なように主本体に装着される少なくとも1つのカバー部材と、を備える流動体ディスペンサー装置であって、1ドーズ分の粉末などの流動体を収容する少なくとも1つの個別貯蔵容器と、自装置が駆動される毎に、個別貯蔵容器を開封する開封手段と、自装置が駆動される毎に個別貯蔵容器を前記開封手段に対向する位置に移動させる移動支持手段と、を備え、前記移動支持手段は、非投与位置と投与位置との間を移動可能であり、前記移動支持手段は、バネなどの弾性手段の作用により投与位置への移動が促進され、ユーザーの吸入動作に応じて移動ブロック状態が解除されるブロッキング手段により非投与位置に保持され、
前記流動体ディスペンサー装置は、前記弾性手段及び前記移動支持手段上に形成されるカム面とそれぞれ接触して協働する打ち金部材(cocking member)を備え、
前記打ち金部材は、前記少なくとも1つのカバー部材とともに前記主本体に対して回転移動可能に構成されており、前記カム面には、傾斜度が異なる少なくとも3つのカム部分として、前記弾性手段を付勢する少なくとも1つのローダー部(loader portion)、前記少なくとも1つのカバー部材が開位置及び/又は閉位置にある状態において打ち金部材の移動をブロックする少なくとも1つのエンド部(end portion)、少なくとも1つのローダー部を少なくとも1つのエンド部と相互に連結させる少なくとも1つのセーフティ部(safety portion)があり、
前記セーフティ部は、前記打ち金部材の回転移動中心を中心とし、前記打ち金部材の回転移動半径に相当する半径を有する円弧形状の面であり、前記打ち金部材は、前記弾性手段からうける付勢力を加減させることなく、前記セーフティ部上を移動することが可能なように構成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに有利な構成として前記少なくとも1つのローダー部は、平らで直線的な形状であることとすることができる。又、別の有利な構成として前記少なくとも1つのセーフティ部は、前記打ち金部材と協働している間、前記打ち金部材に横向きの力が働かないように円弧形状であることとすることができる。
又、別の有利な構成として前記少なくとも1つのエンド部は、平ら又はV字型の形状であることとすることができる。又、別の有利な構成として前記カム面は、前記閉位置を起点とした場合に、ローダー部、セーフティ部、エンド部の順に前記打ち金部材と接触するように構成されていることとすることができる。
【0015】
又、別の有利な構成として、前記流動体ディスペンサー装置は、吸入トリガー機構を備え、当該吸入トリガー機構は、吸入ピースと協働する可変エアチャンバーと、前記吸入ピースから吸入がされている間、前記可変エアチャンバーが変形するように前記可変エアチャンバーと協働するトリガー部材とを有し、前記トリガー部材は前記吸入ピースから吸入がされている間、貯蔵容器が前記開封手段によって開封されるように前記開封手段を駆動させることとすることができる。
【0016】
又、別の有利な構成として前記開封手段は、前記主本体に対して静止状態の穿孔要素を含み、当該穿孔要素は、前記個別貯蔵容器の封止壁を切断し、切断した前記封止壁の一又は複数の部分が、形成された開口部を塞がないように構成されていることとすることができる。
本発明の特徴及び有利な点等については、具体的な実施例を示しながら、添付図面を参照して以下に詳述することにより明示することとする。但し、本発明の構成がこれらの実施例に限定されないことは、勿論のことである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び
図2は、本実施の形態に係る乾燥粉末吸入器の有利な構成を示す。本吸入器は、主本体10を備え、主本体10には、吸入器が開いて投与可能な状態になるように、カバー部材11、12がスライド移動可能なように装着されている。主本体10は、両図に示されているように、やや丸みを帯びた形状をしているが、主本体10は、他の適切な形状であってもよい。
【0019】
上体101は、主本体10に組み込まれ、マウスピース200は、上体101に装着されている。マウスピース200には、吸入器の駆動時にユーザーが吸入動作を行う投与開口部5が設けられている。投与開口部5は、マウスピース200のほぼ中央部に配置されるのが一般的である。
カバー部材11、12は、共通の回転軸の周りを回転させることにより、或いは、平行な2つの軸の周りをかみ合うように回転させることにより開くことができるように構成されている。吸入器を開く他の手段としては、他の開手段を用いることとしてもよい。
例えば、変形例として2つのカバー部材を用いる代わりにカバー部材を1つだけにすることとしてもよい。
【0020】
主本体10の内部には、説明を簡素化するため図示しないが、ブリスター(blisters)として知られている個別貯蔵容器が複数配置された帯状部材が設けられている。上記の帯状部材は、細長い形状で、その上に周知の方法でブリスターが並んで配置されている(以下、このような帯状部材のことを「ブリスターストリップ(blister strip)」という。)。
【0021】
ブリスターストリップは、有利な構成として、投与すべき粉末の各ドーズを受容する孔を形成するベース層又はベース壁と、各ブリスターをシールで封止する封止層又は封止壁とから構成される。ブリスターストリップは、使用前の状態では、巻き取られた状態で主本体10内部、好ましくは貯蔵部に配置される。
巻き取られたブリスターストリップを漸次広げて前進させる手段として、第1移動手段40、特に回転手段が設けられている。
【0022】
又、吸入器が駆動される毎に、ブリスターを開封可能な投与位置まで運ぶ手段として、第2移動手段50、特に主本体10に回転可能に装着される手段が設けられている。上記第2移動手段は、ブリスターの開封ができない非投与位置と、開封手段と接触して協働することが可能な投与位置との間を回転移動可能なように装着される構成とするのが好ましい。
【0023】
又、開封後の空のブリスターを含むブリスターストリップの部分は、主本体10の別の位置、望ましくは後で詳細に説明するように空ブリスター受入部で巻き取られるように構成することが好ましい。
又、吸入器は、説明を簡素化するため、略図で示されるブリスター開封手段80を備える。ブリスター開封手段80は、ブリスターの封止層に穴をあけるか、又は、当該封止層を切断する穿孔器及び/又は切断針(cutter needle)から構成されることが好ましい。上記開封手段は、主本体10及び上体101に対して静止した状態に維持され、吸入器が駆動される毎に上記第2移動手段により、各ブリスターが対向する位置に運ばれる穿孔要素80を備える構成とすることが望ましい。
【0024】
これにより、ユーザーの吸入動作に応じて上記穿孔要素によりブリスターの封止層に穴が開けられてブリスター内に収容された粉末を放出させることができる。
又、上記穿孔要素としては、切断した封止壁の一又は複数の部分が、切断により形成された開口部を塞がないように、上記貯蔵容器の封止壁を切断するのに適した構成のものを用いるのが好ましい。
【0025】
このようなブリスター開封手段については、国際公開第2006/079750号及び国際公開第2009/007640号の各特許文献に記載されている。ここでは、上記各特許文献を参照文献として、それらの記載内容を本実施の形態の記載内容に含めることとする。
第1移動手段40は、ユーザーの吸入動作毎にブリスターストリップを前進させる。第2移動手段50は、各吸入動作の前にブリスターを、上記の開封手段が開封動作を行うことにより、ブリスターに収容される粉末が全て放出されてブリスターを空にすることができるように、上記開封手段と対向する位置へ移動させる。又、当該第2移動手段は、吸入器が開状態にあるときに当該第2移動手段に圧縮応力を加えるのに適したバネ又はバネと同等の弾性力を有する弾性部材70により、付勢されている。
【0026】
第1移動手段40としては、ブリスターストリップを保持して案内することが可能な割り送りホイールを用いることが好ましい。以下、この割り送りホイール40を用いた場合について説明する。
割り送りホイール40を回転させることにより、ブリスターストリップを前進させる。これにより、各吸入動作が開始される前に、未開封状態のブリスターが常に上記の開封手段80と対向する位置にある状態になる。
【0027】
第2移動手段50には、回転軸の周りを回転する回転部材が装着されており、割り送りホイール40は、回転自在な状態でこの回転部材に取り付けられていることが望ましい。
吸入器の駆動サイクルは、以下に示すように実行される。吸入器は、開状態に移行する場合に、カバーを形成する2つの外側部11、12が互いに離隔する方向に主本体の周りを回転移動し、これにより吸入器が開状態になり、バネにより付勢された状態になる。
【0028】
この開位置では、第2移動手段50は、適切なブロッキング手段(説明を簡素化するため図示されていない。)により動かないように保持されているので、割り送りホイール40は、穿孔要素80に向かって移動することができない。
上記ブロッキング手段については、国際公開第2009/077700号及び国際公開第2009/136098の各特許文献に記載されている。ここでは、上記各特許文献を参照文献として、それらの記載内容を本実施の形態の記載内容として含めることとする。
【0029】
そして、ユーザーがマウスピースから吸入動作を行うことにより、上記のブロッキング手段による保持状態が解除され、それに伴い上記の割り送りホイール50が上記の穿孔要素80の切断針と対向する位置に向かって移動して当該ホイールに保持されているブリスターの1つが開封される。
上述したように、上記開封手段は、ユーザーの吸入動作に応じて駆動されることが望ましい。吸入動作に応じて上記開封手段の駆動を開始させるために、吸入に応じて変形し、それに伴い上記ブロッキング手段による上記保持状態を解除することが可能なエアチャンバー61を有する吸入トリガー機構60を備える構成とすることが好ましい。エアチャンバー61としては、以下に述べるような機能を有するものが好ましい。
【0030】
ユーザーの吸入動作に応じて変形し、それにより、上記ブロッキング手段による上記保持状態を解除させ、上記第2移動手段が移動できるようにし、その結果、未開封のブリスターを開封位置に向かって移動させることが可能なものであることが好ましい。これにより、ブリスターは、吸入動作が行われた時にのみ開封されて、当該ブリスター内の中味が全て放出されるようにすることができる。その結果、ブリスターが開封されてから吸入動作によりブリスターの中味が空になるまでの間において、投与ドーズがブリスターから流出しないようにすることができる。
【0031】
上記吸入器は、さらに、ブリスターが開封される毎に、当該ブリスターから放出される粉末ドーズを収容する分散チャンバー90を備える。上記チャンバー90の内部には、当該内部において自在に移動可能な少なくとも1つ、好ましくは、複数のビーズを収容しておくことが望ましい。このようにすることにより、当該チャンバー内において空気中への粉末ドーズの分散が促進され、当該吸入器の有効性を高めることができる。
【0032】
又、開封手段、特に上記穿孔要素は、上記分散チャンバーに直接接続されるように構成することが好ましい。例えば、上記チャンバー90に通じる通路を介して、直接接続されるように構成することが好ましい。
そして、吸入動作を終了した後、ユーザーが吸入器を閉じると、当該吸入器内の構成要素は全て初期の休止位置に戻り、当該吸入器は、新たな駆動サイクルが開始されるのを待つ待機状態に移行する。
【0033】
又、上記吸入器の好ましい形態として、複数の各ブリスターが形状をフレキシブルに変更可能なブリスターストリップ上に形成され、当該ブリスターストリップは、初期状態において、上記吸入器の主本体10の内部の格納ケースにロール状の形態で主に収容される。
上記のロール状に巻き取られたブリスターストリップでは、後端(上記ブリスターストリップの前進方向と逆方向の上記ブリスターストリップの端)を主本体10に対して固定することなく、上記格納ケースの内壁によって保持させることができるので、当該ロール状のブリスターストリップを容易に上記吸入器内に配置でき、装置の組立を容易にすることができる。
【0034】
割り送りホイール40は、ブリスターを内部に嵌め込めるように、ブリスターの形状に対応する形状の少なくとも1つ、望ましくは複数の凹部を有する構成とすることが好ましい。この構成により、ブリスターストリップを割り送りホイール40によって移動させることができる。上記のように構成することで、割り送りホイール40が回転するのに応じてブリスターストリップを前進させることができる。
【0035】
変形例として或いは追加の構成として、ブリスターストリップを前進させる手段は、上記以外の他の手段を用いることができるのは、勿論のことである。例えば、ブリスターストリップの縦方向及び横方向の端部を駆動手段と係合可能な形状とし、駆動手段と当該端部とを係合させた状態で駆動手段を駆動させてブリスターストリップを前進させるように構成することができる。さらに、ブリスターストリップの横方向の端部にスプロケットホイールの歯と係合する穴を形成し、当該穴とスプロケットホイールの歯とを係合させた状態でスプロケットホイールを駆動させてブリスターストリップを前進させるように構成することもできる。
【0036】
ブリスターが1つ以上開封された後は、開封された空のブリスターが配置されているブリスターストリップの部分は、駆動動作の妨害とならないように上記吸入器内部に簡易に、かつ、スペースをとらないように収容されなければならない。そのため、開封後のブリスターストリップは、自動的に巻き取られて、再びロール状になるように構成することが好ましい。
【0037】
又、上記吸入器の別の形態として、ドーズカウンター又はドーズ数の表示装置(ここでは、説明を簡素化するために図示されていない)を備える構成とすることができる。当該構成として、ブリスターストリップに直接、数字や記号の印をつけ、上記吸入器の主本体10に当該印を視認することが可能な窓を設けた構成の吸入器を用いることができる。
又、上記構成の変形例として、少なくとも1つ以上の回転可能な、数字や記号がつけられたディスク部材やリング部材を備えるカウンターを用いる構成も考えられる。このようなカウンターについては、国際公開第2008/012458号及び国際公開第2011/154659号の各特許文献に記載されている。ここでは、上記各特許文献を参照文献として、それらの記載内容を本実施の形態の記載内容として含めることとする。
【0038】
本発明の目的は、操作エラーや操作が不完全に行われた場合等、実際には投与がおこなわれなかったドーズ分が、投与済みのドーズとしてカウントされるのを防止することである。本実施の形態では、吸入動作によってはじめてブリスターが開封され、ブリスターの内部に収容されていた粉末ドーズが投与されるので、上記カウンターや表示装置は、ユーザーが吸入動作を実行した時にのみ駆動されるように構成されることが望ましい。
【0039】
従って、上記カウンターは、吸入動作が終了し、ユーザーが上記吸入器を閉じるときに駆動されるように構成することが好ましい。
可動カバー部材12は、適切な軸受内で摺動することが可能なように打ち金部材800に係合されている。このように、打ち金部材800は、可動カバー部材12とともに主本体10に対して回動することが可能なように構成されることが好ましい。打ち金部材800は、内部に配置されるバネ70、好ましくは、コイルバネからの付勢力に抗するように移動できる構成とすることが好ましい。
【0040】
打ち金部材800は、このように、一方の端部がバネ70に接続し、他方の端部において上記第2移動手段、特に主本体10に回転可能に装着され、割り送りホイール40がその上に回転可能に固定されている回転部材50と接触して協動可能なように構成されている。
可動カバー部材12が開状態になると、打ち金部材800は、そのハウジング内を移動し、バネ70を圧縮する。このとき、第2移動手段の回転部材50は、上述したブロッキング手段により移動が抑止され、吸入動作が行われることによりはじめて当該抑止が解除される。従って、開状態の位置で吸入動作を行うことなく、カバー部材11、12が閉じられたとしても打ち金部材800は、休止位置に戻ってバネ70の圧縮状態が解除されることになるだけである。
【0041】
このように、ユーザーが上記吸入器を開くことにより、当該吸入器の投与機構が起動され、当該吸入器は吸入動作により投与可能な状態になる。そして、ユーザーが吸入動作を行うことなく、上記吸入器を閉じると、当該吸入器は、ブリスターストリップを移動させたり、上記抑止の解除のためにブロッキング手段を移動させたりすることなく、初期位置に戻る。
【0042】
従って、ユーザーが上記吸入器を開いてから閉じるまでの間に不作為又は作為的に吸入動作を行わなかったとしても、その間にブリスター内に収容されている有効成分の流出が起こらない。このように、ブリスターの開封及びそれによる中味の粉末の放出、放出された粉末のユーザーの肺への投与、未開封状態の新たなブリスターを上記開封手段と対向する位置への移送、及びドーズカウントの各動作は、ユーザーが吸入動作を行ったときのみ可能となるように構成されている。
【0043】
上記第2移動手段、特に打ち金部材と協働する上記回転部材の移動を抑止する上記ブロッキング手段は、ユーザーの吸入動作に応じて変形する、弾性変形可能なエアチャンバー61にトリガー部材600を介して接続されている。この構成をとることにより、ユーザーが吸入動作を実行している間、上記弾性変形可能なエアチャンバーが変形してトリガー部材600が回転し、それにより、上記ブロッキング手段がトリガー部材600から切り離されて上記抑止が解除される。
【0044】
これにより、上記第2移動手段は、打ち金部材800に当接して付勢力により回転部材50を押し上げる圧縮バネ70の作用により、投与位置に向かって移動する。そして、この移動により、未開封のブリスターが開封されて、1ドーズ分の粉末が投与される。
移動支持手段50には、打ち金部材800が摺動するためのカム面51が形成されている。これにより、打ち金部材800は、カバー部材12が開状態のときに上記バネ70を圧縮させ、カバー部材12が閉状態のときに上記バネ70の圧縮を解除させることができる。
【0045】
上記カム面51上において打ち金部材800が摺動しやすくするために、打ち金部材800は、丸い部分801を有することが好ましく、当該部分801において上記カム面51と接触するように構成するのが好ましい。
本実施の形態では、上記移動支持手段は、回転軸の周りに回転可能に主本体10に装着される部材50により構成される。そして、上述のカム面51は、上記回転部材50上に形成されているので、可動蓋部材12が開かれ、バネ70が付勢された状態になると、上記回転部材50は、打ち金部材800の作用により投与位置に向かって弾性付勢された状態になり、バネ70は圧縮された状態になる。
【0046】
吸入動作後、すなわち、投与位置においては、上記ブロッキング手段による移動支持手段50の移動抑止が解除された状態になり、当該移動支持手段50は、圧縮状態のバネ70の作用により、上方向へ移動した状態になる。
上記2つのカバー部材11、12は、左右対称に開閉可能なようにギアを介して噛み合うように構成されることが好ましい。例えば、回転軸16、17の近傍において噛み合うように構成することができる。
【0047】
本発明では、カム面51は、傾斜が異なる少なくとも3つのカム部分から構成されている。1つは、その部分を打ち金部材800が摺動すると、バネ70が付勢された状態になるローダー部であり、当該ローダー部は、少なくとも1つ以上設けられる。別の1つは、開位置及び/又は閉位置で、打ち金部材800の移動を抑止するエンド部であり、当該エンド部は、少なくとも1つ以上設けられる。又、別の1つは、エンド部の直前及び/又は直後に配置され、打ち金部材800の移動動作を確実に行わせるためのセーフティ部であり、当該セーフティ部は、少なくとも1つ以上設けられる。セーフティ部では、打ち金部材800は、バネ70からうける付勢力を加減させることなく移動することができる。
【0048】
図1〜
図5は、第1の実施形態を示す。本実施形態では、上記カム面は、実質的に直線面のローダー部511を備える。セーフティ部513は、最初の頂点部512において上記ローダー部と繋がっている。セーフティ部513は、円弧形状であるあることが好ましく、2つ目の頂点部514で上記エンド部に繋がっている。
図1の閉状態の位置を起点としてユーザーがカバー部材11、12を開くと、打ち金部材800は、最初にローダー部511上を摺動する。その結果、打ち金部材800は、バネ70を付勢するようにハウジング内を摺動する。
【0049】
そして、上記打ち金部材が
図3に示すように最初の頂点部512に到達して上記バネが付勢され、当該バネが圧縮された状態になる。この位置は、カバー部材11、12が半開き状態の第1の中間位置に相当する。
さらに上記カバー部材が開かれると、打ち金部材800は、セーフティ部513上を摺動する。セーフティ部513は
、上記カバー部材が開くときの打ち金部材800の回転移動半径に相当する半径の円弧形状の面であることが好ましい。これにより、打ち金部材800がセーフティ部513上を移動している間、打ち金部材800に横向きの力が働かないようにすることができる。打ち金部材800には、
図4の矢印で示すように、付勢されたバネ70からの付勢力に対する応力のみが、縦軸Aに沿って打ち金部材800に働く。
【0050】
そして、上記カバー部材の開閉動作がセーフティ部513、例えば、
図4に示す第2中間位置で停止した場合には、上記吸入器は、安定した位置で停止することになる。さらに、セーフティ部513の形状が円弧形状であるため、打ち金部材800が当該セーフティ部を移動しているときに打ち金部材800は上記縦軸方向には移動しない。バネ70は、ローダー部511の終端部である最初の頂点部512において打ち金部材800への付勢が完了した状態になる。
【0051】
このように、開動作においてセーフティ部513からエンド部515まで打ち金部材800が移動している間は、バネ70から打ち金部材800へはたらく付勢力は、加減されないので、移動を容易に行うことができる。
そして、上記カバー部材が完全に開いた状態になると、上記打ち金部材は、エンド部515に当接した状態になる。上記エンド部は、
図5に示すように平面部で構成することとしてもよいが、V字型の形状とし、打ち金部材800の移動を少なくとも軽く抑止できるように構成することとしてもよい。このようにすることで、開位置でカバー部材11、12が動くのを抑止することができる。
【0052】
開位置での動きを抑止するようにした場合においても、駆動中に大きな力が働くと、打ち金部材800が、予期しないタイミングで、或いは、不必要にエンド部515からはずれてしまう場合がある。このような場合においても、セーフティ部513が上記吸入器を安定な状態に保持し、当該吸入器が確実に駆動できるようにすることができる。これに対し、上記エンド部とローダー部511とが直接に繋げられる構成とした場合には、上記のような効果を得ることができない。
【0053】
図6〜
図10は、カム面の構成の第2の実施の形態を示し、当該実施形態では、実質的に上記各部の配置が
図1〜
図5に示す第1の実施の形態の場合と逆になっている。実施の形態2の場合には、エンド部515'が、カバー開動作におけるカム面51の起点となり、その後、当該エンド部は、頂点部514'でセーフティ部513'に繋がり、当該セーフティ部は、もう1つの頂点部512'でローダー部511'に繋がるようにカム面が構成されている。
【0054】
そして、ローダー部511'は、
図10に示すように、平面又は円弧形状のファイナル部(final portion)517'に繋がっている。第2の実施の形態では、
図8に示すように、エンド部515'は、V字型形状であるが、略平面形状とすることもできる。
このように、動作は、第1の実施の形態の場合と同様であるが、移動順は逆になる。すなわち、第1の実施形態では、エンド部515'は、開位置において打ち金部材800の移動を抑止するが、第2の実施の形態では、エンド部515'は、閉位置でカバー部材が動かないように安定性よく保持されるようにする。
【0055】
図11、
図12は、
図1〜
図5に示す第1の実施の形態の構成と
図6〜
図10に示す第2の実施の形態の構成とを組み合わせた第3の実施の形態の構成を示す。第3の実施の形態では、カバー部材の閉位置、及び開位置の両位置がそれぞれエンド部と対応付けられ、ほぼ中央に位置するローダー部は、セーフティ部を介して各エンド部に繋げられている。第3の実施の形態では、第1及び第2の各実施の形態の有利な構成が組み合わされている。
【0056】
本発明では、以下の特徴を有する乾燥粉末吸入器を提供することができる。:
・ロール状に巻き取られたブリスターストリップを備え、当該ブリスターストリップが有する封止された各ブリスター内には、複数ドーズ分、例えば、30又は60ドーズ分の粉末が、1ドーズ分ずつ収容されている。;
・上記粉末は、ユーザーの吸入動作に応じて実行される穿孔動作によりブリスターが開封されて放出されること、そして、上記の穿孔動作は、圧縮応力が付加された状態を解除する機構に連結されている吸入検知機構が作動することにより、実行されてブリスターが、開封されること;
・ブリスターと係合可能な適切な形状を有し、各吸入動作に応じてブリスターストリップを移動させ、適当な開封手段により開封可能な位置に未開封のブリスターを移動させる駆動手段を備えること;
・吸入器が開状態で、吸入動作が行われていない場合に、粉末ドーズの流出を防止する手段を備えること;
・吸入動作が行われた場合のみ、ドーズ数をカウントするように構成されたドーズ数表示装置;
本発明に係る吸入器は、上述したように他の特徴も備えている。
【0057】
上記吸入器が同時に備えているとして記載された様々な特徴は、別々に実行されることとしてもよい。具体的には、上記吸入トリガー機構は、貯蔵容器開封手段のタイプやドーズ数表示装置の使用の有無やのブリスターの配置方法等に関わらず適用することができる。又、打ち金手段や吸入トリガー機構は、他の手段により実現することも可能である。上記吸入器の他の構成要素についても同様である。
【0058】
また、当業者であれば、添付の請求の範囲に定義されている本発明の範囲から逸脱しな
い形で、様々な変更を加えることができる。特に、図面を参照しながら説明した上記吸入器の様々な特徴や機能は、適宜組み合わせることができる。