【文献】
ISMAIL KARACAN,JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE,2011年 7月26日,V123 N1,P234-245
【文献】
POSTEMA A R,JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1990年10月 1日,V25 N10,P4216-4222
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
2010年における炭素繊維の世界生成量は40キロメトリックトン(KMT)であり、2020年で150KMTに成長すると期待されている。工業グレード炭素繊維がこの成長に大きく貢献すると予想されており、適用に関しては低コストが必須となる。従来の炭素繊維を生成する方法はポリアクリロニトリル(PAN)に依存しており、溶液から繊維状に紡糸され、酸化および炭化される。コストの約50%がポリマー自体および溶液紡糸のコストに関連している。
【0003】
低コスト工業グレード炭素繊維を生成する試みにおいて、様々なグループが代わりの前駆体ポリマーおよび炭素繊維を製造する方法を研究している。これらの試みの多くはポリエチレンのスルホン化およびスルホン化ポリエチレンを炭素繊維に転換することに向けられていた。しかしながら、この方法および結果として得られる炭素繊維は少なくとも3つの理由で不十分であった。第1に、結果として得られる炭素繊維には繊維間結合が生じる。第2に、結果として得られる炭素繊維は不十分な物理的性質を有する。第3に、そして最も重要な点として、記載されるスルホン化プロセスは長期にわたるスルホン化時間、典型的には約数時間を利用する。実現される経済的なプロセスについては、急速スルホン化技術が必要である。目標とするスルホン化時間は、理想的には1時間未満でなければならない。
【0004】
例えば、米国特許第4,070,446号ではクロロスルホン酸(実施例1および2)、硫酸(実施例3および4)、又は発煙硫酸(実施例5)を用いて高密度ポリエチレンをスルホン化するプロセスを記載している。この特許における実施例5では、25%発煙硫酸を60℃で2時間かけて高密度ポリエチレン(HDPE)をスルホン化して、続いて炭化した。発明者たちがこの方法を用いて直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)をスルホン化したときに、結果として得られた繊維にはフィラメント間結合が生じ、物理的性質が悪く、スルホン化時間が長かった。したがって、この方法は不十分と判断された。
【0005】
国際公開第WO92/03601号は第4,070,446号特許で記載される濃縮硫酸方法を用いて超高分子量(UHMW)ポリエチレン繊維を炭素繊維に変換している。この出願の実施例1では、ポリマー繊維(張力下にて)を120℃の98%硫酸浴に浸漬させ、その硫酸浴温度が30℃/時で最大温度の180℃(2時間のスルホン化)まで上昇された。スルホン化繊維は次に水で洗浄して空気乾燥されて、続いて900℃までの温度で(不完全に)炭化された。この出願の実施例2および3は予言的であり、データを含まない。この参照文献に開示されるスルホン化時間およびバッチ処理法は不十分である。
【0006】
Materials and Manufacturing Processes Vol.9,No.2,221−235,1994およびProcessing and Fabrication of Advanced Materials for High Temperature Applications−II;proceedings of a symposium,475−485,1993では、ZhangおよびBhatが硫酸のみを用いた超高分子量(UHMW)ポリエチレン繊維のスルホン化プロセスを報告した。両方の論文は共に同一の出発スペクトラ繊維および同一のスルホン化プロセスを報告している。繊維はフレーム上に包まれて130〜140℃の硫酸に浸漬させて、温度は徐々に200℃まで上昇された。成功例のスルホン化時間は1.5〜2時間の間であった。繊維は別々の間隔で取り出して水道水で洗浄し、60℃のオーブンで乾燥して1150℃の不活性雰囲気にて炭化された。この方法によって良好な炭素繊維の機械的性質は取得されたものの、高価なゲル紡糸ポリマー繊維が用いられており、スルホン化時間も不十分であった。
【0007】
Polymer Bulletin,25,405−412,1991およびJournal of Materials Science,25, 4216−4222,1990 A. J. Pennings et al.では繊維を室温のクロロスルホン酸に5〜20時間浸漬させることで直鎖状低密度ポリエチレンを炭素繊維に変換した。このプロセスは、クロロスルホン酸の高コストと長い反応時間に起因して工業的視点からは非常に費用がかかる。
【0008】
2002年に、Leon y Leon(International SAMPE Technical Conference Series,2002,Vol.34,pp.506−519)はLLDPE繊維(d=0.94g/mL)を温められた濃縮H
2SO4でスルホン化するプロセスを記載している。2段階スルホン化系もまた記載されており、「第1段階と比較して、第2スルホン化段階は:(a)類似温度でのより長い滞留時間(または単一温度でのより大きな単一段階反応装置)、または(b)より高い温度での少しだけより高い酸濃度、を伴う」。514ページを参照のこと。具体的な時間および温度は開示されていない。この参照文献では、結果として得られた炭素繊維の引張特性は従来とは異なって判断された。引張試験で使用された断面領域は「密度(ピクノメートリによって)および単位長さあたりの重量の測定から計算された」(516ページ、表3−517ページ)。しかしながら、ASTM法のD4018は、直径は顕微鏡使用によって測定されるべきであると記載している。顕微鏡によって計測された直径(表2、517ページ)を用いて報告された引張特性を調節すると、以下の新しい値が判定された。
【0009】
この参考文献に開示された方法は、不十分な引張強度および係数を有する炭素繊維を生成する。
【0010】
これらの試みにもかかわらず、ポリオレフィン系ポリマー繊維を早いスルホン化時間で炭素繊維に変換する適切な方法がいまだ求められている。したがって、本明細書中に開示するのはポリマー繊維から炭素繊維を製造する方法であって、この方法はポリマー繊維のスルホン化、次にスルホン化繊維の高温溶媒処理、それに続く繊維の炭化を含む。これらの方法は結果として、高温溶媒で処理されていないものと比較して優位の特性を有する工業グレード炭素繊維を得る。さらに、本明細書に開示される方法は任意の急速なスルホン化プロセスであり、経済的なプロセスの実現を可能にする。
【0011】
一態様では、本明細書に開示されるのは炭化ポリマーを調製するプロセスであって、そのプロセスは、
a)発煙硫酸、硫酸、クロロスルホン酸、またはそれらの組み合わせであるスルホン化剤でポリマーをスルホン化して、スルホン化ポリマーを形成することと、
b)該スルホン化ポリマーを加熱溶媒で処理することであって、その温度が少なくとも95℃である、加熱溶媒で処理することと、
c)得られた生成物を500〜3000℃の温度に加熱することで炭化することと、を含む。
【0012】
本明細書に開示される化合物およびプロセスは高分子出発材料を使用する。高分子出発材料は、織物、シート、繊維、またはそれらの組み合わせの形態であってもよい。好ましい実施形態では、高分子出発材料は繊維の形態であり、結果として得られる炭化ポリマーは炭素繊維である。
【0013】
別の態様では、本明細書に開示されるのは上記プロセスにしたがって製造された炭素繊維である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記のように、スルホン化剤は発煙硫酸、濃縮硫酸、クロロスルホン酸、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
一実施形態において、スルホン化剤はクロロスルホン酸を含む。
【0017】
一実施形態において、スルホン化剤は濃縮硫酸を含み、それは商業的に利用可能で、典型的には96+%硫酸である。
【0018】
別の、より好ましい実施形態において、スルホン化剤は発煙硫酸を含む。本明細書に使用される、発煙硫酸(「オレウム」とも呼ばれる)は濃縮硫酸とは異なり、その発煙硫酸は溶解されたSO
3を含む100%硫酸である。典型的に、発煙硫酸の濃縮は、溶液中にwt%を含まないSO
3として記述する。いくつかの商業的な発煙硫酸のグレードが入手可能であり、例えば、約15〜30%および約60〜70%のSO
3を含む。好ましい発煙硫酸は、0.1〜30%の発煙硫酸である。スルホン化反応において、発煙硫酸は著しくより反応的であるため濃縮硫酸よりも好まれ、そしてその結果、スルホン化反応がより速く起こる。
【0019】
オレウムスルホン化反応の反応温度は典型的に0℃〜140℃である。より低い反応温度を用いてもよいが、スルホン化の反応速度が著しく低下しコストが上昇する。より好ましくは、反応温度は30〜120℃である。さらにより好ましくは、温度は35〜120℃である。さらに好ましくは、45〜120℃である。
【0020】
スルホン化反応は完了するのに典型的には5分〜12時間かかる。もちろん、スルホン化反応時間が、繊維径(繊維が使用された場合)、ポリマーの%結晶度、ポリマーにおける二重結合の濃度、ポリマーの多孔性、スルホン化温度、およびオレウムの濃度によって影響されることは従来技術において周知である。スルホン化温度、濃度、ならびに反応時間の最適化は当業者の能力の範囲内である。
【0021】
スルホン化反応は通常、周囲/大気圧で行われる。しかしながら必要に応じて、周囲圧力よりも高いまたは低い圧力を用いてもよい。
【0022】
スルホン化反応時間を少なくする1つの方法は、スルホン化反応の前かその最中にポリマーを適切な溶媒で膨潤させることである。一実施形態では、ポリマーをハロゲン化された溶媒のSO
3溶液との処理の前に適切な膨潤性溶媒で処理してもよい。あるいは、ポリマーをスルホン化ステップ中にエマルジョン、溶液、またはその他の膨潤剤とスルホン化剤との組み合わせで、適切な溶媒で膨潤してもよい。スルホン化の前またはその最中に膨潤ステップを行う追加の利点としては、ポリマー中でより均一な硫黄分布を得て、それによって処理条件および性質が向上することである。
【0023】
ポリマーはスルホン化(または部分的にスルホン化)された後、加熱溶媒で処理される。許容される温度は少なくとも95℃である。より好ましくは、少なくとも100℃である。さらにより好ましくは少なくとも105℃または110℃である。さらにより好ましくは、少なくとも115℃である。最も好ましくは少なくとも120℃である。最大温度は溶媒の沸点または180℃である。一実施形態では、溶媒の温度は100〜180℃である。あるいは、溶媒の温度は120〜180℃である。120℃未満の温度のものも使用可能ではあるものの、反応速度が遅くなり、これによって反応のスループットが低下することで非経済的である。
【0024】
一実施形態では、好ましい溶媒は極性および/またはプロトン性である。プロトン性溶媒の例としては、鉱酸、水、および蒸気が挙げられる。H
2SO
4は好ましいプロトン性溶媒である。一実施形態では、加熱溶媒は100〜180℃の温度のH
2SO
4である。さらにより好ましくは、加熱溶媒は120〜160℃の温度のH
2SO
4である。
【0025】
あるいは、加熱溶媒は極性溶媒であってもよい。適切な極性溶媒の例としては、DMSO、DMF、NMP、適切な沸点を有するハロゲン性溶媒またはその組み合わせが挙げられる。好ましくは、加熱溶媒は120〜160℃の温度の極性溶媒である。
【0026】
なお、ポリマー繊維が用いられる場合、ポリマー繊維の性質、その直径、トウの大きさ、ならびに繊維の%結晶度が、用いられる反応条件に強い影響を与えることを理解するであろう。同様に、加熱溶媒処理に用いられる加熱溶媒の温度およびH
2SO
4の濃度(H
2SO
4が用いられる場合)もまた、ポリマー繊維の性質、その直径、トウの大きさ、および繊維の%結晶度に依存する。
【0027】
スルホン化反応が完了する(つまりポリマーの1%〜100%がスルホン化される)と、繊維を任意選択的に1つ以上の溶媒で洗浄してもよい。熱重量分析(TGA)を使用してスルホン化反応の完了を判断することができ、適切な洗浄状態はすすぐ、スプレーする、水中に沈める、または繊維をその他の溶媒または溶媒の組み合わせと接触させることを含む。好ましい溶媒は水、C
1−C
4アルコール、アセトン、希酸(硫酸など)、ハロゲン化された溶媒およびその組み合わせが挙げられる。一実施形態では、繊維は水、続いてアセトンで洗浄される。別の実施形態では、繊維は水とアセトンの混合物で洗浄される。さらに別の実施形態では、繊維は水、希硫酸、またはその両方で洗浄される。繊維が洗浄された後に、拭き取り乾燥、空気乾燥、熱源を用いた加熱(従来のオーブン、電子レンジ、または加熱ガスを繊維に吹き付けるなど)、またはその組み合わせを行ってもよい。
【0028】
ここで用いられるポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリブタジエンから作成されるホモポリマーからなるか、エチレン、プロピレン、スチレンおよび/またはブタジエンのコポリマーを備える。好ましいコポリマーは、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、プロピレン/オクテンコポリマー、プロピレン/ヘキセンコポリマー、プロピレン/ブテンコポリマー、プロピレン/スチレンコポリマー、プロピレンブタジエンコポリマー、スチレン/オクテンコポリマー、スチレン/ヘキセンコポリマー、スチレン/ブテンコポリマー、スチレン/プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、ブタジエン/オクテンコポリマー、ブタジエン/ヘキセンコポリマー、ブタジエン/ブテンコポリマー、ブタジエン/プロピレンコポリマー、ブタジエン/スチレンコポリマー、またはその2つ以上の組み合わせを含む。エチレンのホモポリマーおよびエチレンを含むコポリマーが好ましい。
【0029】
なお、加熱溶媒での洗浄が本明細書に開示される発明にとってきわめて重要である。以下に示すように、結果として得られる炭素繊維の物理的性質は、加熱溶媒処理によって、加熱溶媒で処理されなかった炭素繊維と比べて著しく向上する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、加熱溶媒処理によって繊維が架橋することが可能になり、これによって、繊維の溶融するまたは繊維間結合を行うことを阻止しながらも物理的性質が向上すると考えられる。
【0030】
前述のように、いくつかの実施形態では、スルホン化反応は完了まで行われない。むしろ、反応が1〜99%で完成(または好ましくは40〜99%完成)した後に、スルホン化反応を停止させて、その後スルホン化は高温溶媒処理ステップで完了させられる(高温溶媒が鉱酸である場合、濃縮硫酸など)。
【0031】
特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、スルホン化ポリエチレンポリマー内のスルホン酸基は熱反応が約145℃で起き(始まりは120〜130℃で発生)、ポリマー内で新たな炭素−炭素結合を生成しながらSO
2およびH
2Oを生成物として発生させると考えられる。これはX線吸収端近傍微細構造(NEXAFS)分光法を用いて確認され、スルホン化ポリエチレン繊維を加熱することでC=C結合の減少およびC−C単一結合の増加を結果として得ることが示された。溶媒の添加は個別のフィラメントを分けて、繊維溶融を防止する。プロセス全体において起きる一般的な化学的変換を図示する以下のスキームを参照のこと。当業者は、全てのステップで存在する他の機能基の種類および複雑さは、明確化のためにここでは省かれていることを理解するであろう。さらに、当業者は、鎖間架橋反応の装置がスキームで図示されるより低い温度で起こることが可能であることを理解するであろう。
【化1】
【0032】
スキーム1.炭化水素をSO
3で反応させてスルホン酸基を有する高共役ポリマーを生成し、それに続く個々のポリマー鎖を架橋する熱プロセス、および上昇された温度での脱水素によって、望ましい炭化ポリマーを得る一般的な化学的プロセス。
【0033】
なお、単にスルホン化繊維をオーブンで加熱するだけでは結果として繊維溶融が高くなってしまい、異なる繊維であれば溶融するか凝結することを強調しなければならない。このような溶融繊維は非常にもろく、低い機械的特性を有する傾向がある。対照的に、スルホン化ポリマー繊維を加熱溶媒で処理することで、著しく低い繊維溶融を有する繊維となる。このような繊維は向上した引張強度およびより高い引張破壊伸び(ひずみ)値を有する。溶媒の役割は表面スルホン酸基間の繊維間水素結合相互作用を最小限に抑え、それによって高温溶媒処理ステップ中における繊維架橋および繊維溶融を防止することであると考えられる。代わりの仮定は加熱溶媒を採用し、低分子量スルホン化ポリマーをポリマー繊維から除去する。この繊維間副生成物(すなわち、低分子量スルホン化ポリマー)を除去しないことには、熱処理は同様の架橋を行わせてしまい、最終的に繊維の溶融を発生させてしまう。
【0034】
スルホン化反応が完了まで至らない可能性もあり、繊維が出発材料として使用される場合、結果として(従来技術において周知のように)中空糸を得ることになる。このような場合、(かつ上記のように)高温溶媒処理にて高温硫酸を用いることで、熱反応が発生しながらもスルホン化反応が継続され、完了まで駆動される。この発明の一実施形態では、非溶融繊維を生成する利点を保持しながらも、このプロセスによってスルホン化チャンバ、高温硫酸浴またはその両方における時間を減少させて中空炭素繊維を生成することを可能とする。必要に応じて、スルホン化反応および高温溶媒処理で行われるスルホン化の相対量を調節することを利用することで結果として得られる炭素繊維の物理的性質を調整してもよい。
【0035】
必要に応じて、スルホン化、加熱溶媒との処理および/または炭化は、ポリマーが張力下にあるときに行われてもよい。以下の記載はポリマー繊維(「トウ」とも呼ばれる)の使用に基づいている。従来の炭素繊維技術において、張力を維持することは繊維の収縮を制御する助けになることが知られている。また、スルホン化反応の間の収縮を最小限に抑えることで、結果として得られる炭素繊維の係数を上昇させることが提案されている。
【0036】
スルホン化反応を行うのにオレウムを用いる際、ポリマー繊維が0〜60MPaの張力(好ましくは0〜35.5または0〜16.8MPaまでの張力)下に保持可能であること、加熱溶媒との処理をポリマー繊維が0〜25MPaの張力下にあるときに実施可能であること、および炭化をポリマー繊維が0〜14MPaの張力(好ましくは0〜8.8または0〜5.3MPaまでの張力)下にあるときに実施可能であることが発見された。一実施形態では、プロセスは上記ステップの少なくとも1つが張力下で行われたところで実施された。より好ましい実施形態では、スルホン化、加熱溶媒との処理、および炭化はポリマー繊維が1MPaより高い張力下で行われる。容易に理解されるように、様々なステップを様々な張力で実行させることができる。したがって、一実施形態では、炭化ステップ中の張力はスルホン化ステップにおけるものと異なっている。また、各ステップの張力はポリマーの性質および大きさ、およびポリマー繊維の引張強さに依存すると理解されるべきである。したがって、当業者が認識するように、上記張力は、繊維の性質および大きさが変化すると変化する可能性があるガイドラインである。
【0037】
炭化ステップはスルホン化されて熱処理された繊維を加熱することで行われる。典型的に、繊維は500〜3000℃の温度のチューブオーブンを通り抜ける。より好ましくは、炭化温度は少なくとも600℃である。一実施形態では、炭化反応は700〜1,500℃の範囲内の温度で行われる。炭化ステップはチューブオーブンにて、不活性ガスまたは真空の雰囲気内で行われてもよい。当業者は、必要に応じて、本明細書に開示されている方法を用いて活性化された炭素繊維を調製してもよいことを理解するであろう。
【0038】
好ましい一実施形態では、プロセスは、
ポリマーを含むポリエチレンを発煙硫酸でスルホン化することであって、該スルホン化反応が、スルホン化ポリマーを形成するように35〜140℃の温度で行われる、スルホン化することと、
該スルホン化ポリマーをプロトン性溶媒で処理することであって、該プロトン性溶媒の温度が100〜180℃である、処理することと、
得られた生成物を500〜3,000℃の温度に加熱することで炭化することと、を含み、
ステップa)、b)、およびc)のうちの少なくとも1つが、ポリマーが張力下にある間に行われる。
【0039】
この好ましい実施形態では、プロトン性溶媒は鉱酸であり、および/またはポリマー繊維を含有するポリエチレンは、ポリエチレンホモポリマー、またはエチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマーを含むポリエチレンコポリマー、1つ以上のホモポリマーおよび1つ以上のポリエチレンコポリマーの混合物、または2つ以上のポリエチレンホモポリマーの組み合わせであり、および/またはプロトン性溶媒は115〜160℃の温度の濃縮硫酸であり、および/またはステップa)、b)、およびc)は、ポリマー(好ましくはポリマー繊維)が1MPaより高い張力下にある間に行われる。
【0040】
本明細書にさらに開示されているのは、任意の上記プロセスにしたがって作製された炭素繊維である。
【0041】
繊維をスルホン化するプロセスに関して、バッチまたは連続法を用いることができる。バッチ法を行うのに用いられる装置の例を
図2に示し、反応槽10はガラスビュレットと形状が類似しており、ただし槽10の内壁により画定される空間に配置される任意の取り外し可能なガラスロッド50を備える。ガラスロッド50は切欠された取付ブラケット30を有し、ブラケット30はガラスロッド50の上端53に取り外し可能もしくは取り外し不可な状態で取り付けられている。車輪80は軸シャフト20を介して切欠された取付ブラケット30に組み込む。ガラスロッド50および取り付けられた取付ブラケット30および関連部品は、反応槽10の頂部に配置される。ガラスロッド50が定位置にある場合、槽10の内側は大気に開放されている。ガラスロッド50の遠位端部55には非反応性材料60(PTFEまたはその他のフッ素化炭化水素など)があり、ポリマー繊維90のためのガイドの役割を果たす。反応槽10は、再循環加熱液、加熱テープまたは従来周知の他のあらゆる加熱方法で被覆され得る加熱要素40を介して加熱される。
【0042】
ポリマー繊維90は、ガラスロッド50の片側を下方向に導かれ、非反応性端60を周って、ガラスロッド50の他方側を上に戻る。ポリマー繊維90の両端は縛られるか、またはノット110で炭素繊維またはワイヤ(またはオレウムと反応しない他のあらゆる屈曲性のある繊維またはワイヤ)トウ120に取り付けられる。炭素繊維トウ120は車輪80の上に導かれる。炭素繊維トウ120に1つ以上の重量100を追加することで繊維90に張力が与えられる。液体の追加(オレウムなど)(液体は図式せず)は任意の漏斗130で直接液体を頂部へ注ぐことによって達成される。液体を追加する他の方法は、弁70を介して槽10にスルホン化剤を揚水することを含む。液体は槽10を満たし、ポリマー繊維90は液体に浸漬される。ポリマー繊維90は望ましい反応時間および望ましい温度で液体中に保たれる。必要に応じて、液体は弁70を介して反応槽から廃棄される。
【0043】
連続的なスルホン化方法を実行し得る装置の例は、
図3で参照し得る。
図3では、反応槽10は、1つ以上の追加の反応槽(10Aおよび10B)および最終洗浄槽40の組み合わせであり、ポリマー繊維30は反応槽10を通過してクリール20に配置された繊維スプール21から、続いて10Aおよび10B、そして最後に槽40を通過してクリール150に配置されたスプール151へ給送される。追加槽またはより少ない槽が使用され得、各槽は独立して反応(スルホン化反応など)を実施するために、または繊維(溶媒とともに)を洗浄するために使用され得ることが理解される。各槽10または40は、液体を保持でき、典型的に形状が円筒形である密閉空間を定める。各槽はまた、クリール20からクリール150へ移動するようにポリマー繊維30の出入口を確保するよう設計される。
【0044】
槽10、10A、10Bおよび40は、槽の頂部に固定された蓋80を備える。他の使用の中では、蓋80は反応槽の中に異物が落ち込むことを防ぎ、かつ内容物が不活性雰囲気の下に置かれることを可能にする。蓋80上に配置されるのは繊維通過90、不活性ガス吸気口50および排気口60、および熱電対110である。蓋80の底側には2本の非反応性シャフト120があり、
図3には1本のシャフト120がもう1本のシャフト120の真後ろにあるためこの図では見ることができない。2本より多い非反応性シャフト120を有する連続的な反応槽10を設計することは可能であり、そのようにして一度に2つより多いポリマー繊維30を収容できることに留意すべきである。シャフトは蓋80に取り外し可能もしくは取り外し不可な状態で取り付けられている。シャフトはガラス含浸型PTFEまたは同類の非反応性材料であることが好ましい。シャフト120の遠位端部は車輪130であり、軸140によってシャフト120の末端に取り付けられている。軸140はポリマー繊維30を受け入れかつ導くために設計される。すべての接液部品(110、120、130、140、および180)は、PTFE、ガラスまたは高品質のステンレス鋼などの非反応性材料から作製される。各反応槽10、10A、10Bおよび40の内側には磁気撹拌子180(PTFEなどの材料で作製される)があり、底部に位置し槽の内容物を混合するために使用される。従来技術において周知のように、他の方法も撹拌子180の代わりとしてまたは組み合わせで使用し得る。反応槽10、10A、10Bおよび40は、再循環加熱液、加熱テープまたは従来周知の他のあらゆる加熱方法で被覆され得る加熱要素70を介して加熱され得る。
【0045】
ポリマー繊維30はクリール20に配置された繊維スプール21から給送され、最終的にクリール150に配置された巻取スプール151で終わる。任意に、複数の追加のクリール170は反応槽10、10Aなどの間で使用でき、反応槽10、10Aなどの間でポリマー繊維の張力および/または収縮を供給する。構造的に、洗浄槽40は吸水口160および排水口190を有することを除けば、反応槽10、10Aなどと類似している。水、非水溶媒またはそれらの組み合わせはポンプ(図示されない)を介して洗浄槽40に周知の割合で供給される。
【0046】
クリール20、150、および170は張力制御または速度制御のいずれかが可能である。クリール20、150、および170が速度制御の場合、収縮が直接制御される。現在の実施例においては、クリール170および150が定速のクリールであるのに対し、クリール20は一定の定速度電動機である。この実施形態では、繊維上の張力は張力計200を使用して直接制御されかつ記録される。
【0047】
ポリマー繊維の連続的なスルホン化方法を実行するために、反応槽10、10Aおよび10Bをスルホン化液体、プロトン性溶媒および/または極性溶媒および望ましい温度への加熱(望ましければ)で満たす。異なる槽、10、10Aなどおよび40は同じかまたは異なる温度であってよい。ポリマー繊維30は連続的に周知の速度でクリール20から繊維スプール21へ給送される。ポリマー繊維30は続いて通過90を通って反応槽10に入り、任意に加熱液体に入る(図示せず)。そこでは繊維30は加熱液体に浸水する。繊維は続いて車輪130の周り、そして異なる通過90を介して反応槽10の外へと導かれる。第1の反応装置10を出ると同時に、繊維30は、クリール170(別々の張力が槽10および10A、10Bおよび40の間で適用されることを可能にする)に置かれるスプール171の上へ、任意の張力計200を通して車輪100(または従来周知の他のどの手段も)を介して向け直され、最終的に第2の反応槽10Aに、車輪100の周りで向け直される。上記プロセス1)反応槽10に入ること、2)任意に加熱したスルホン化液体、プロトン性溶媒および/または極地溶媒に浸水されること、3)車輪130の周り、そして異なる通過90を介して反応槽10の外へと導かれることは、必要とみなされる数だけ繰り返される。最後の反応槽10Bを出ると同時に、繊維30は車輪100を介して洗浄槽40に導かれ、そこではポリマー繊維30が真水に浸漬される。脱イオン水が好ましいが、例えばアルコール類などの他の溶媒が可能なように、非脱イオン水でも作用する。洗浄槽40を出ると同時に、繊維30は、それに続く炭化実験のために最終的に取り除かれるまで、それが残るクリール150上で収集される。
【0048】
前述のように、
図3に示される3つの槽、10、10Aおよび10Bより多くの(またはより少しの)ものを使用することができる。たとえば、5つの槽を利用している連続反応装置、10、10A、10B、10Cおよび40が、使用可能である。そのようなシステムでは、槽10はポリマー繊維30を膨潤させるために用いられる溶媒を含むことができ、10Aはスルホン化試薬(20%のオレウムなど)を含むことができ、10Bは熱溶媒洗浄(96%のH
2SO
4など)を含むことができ、10Cは第2の熱溶媒洗浄(96%のH
2SO
4など)を含むことができ、40は洗浄溶媒(水など)を含むことができる。当業者によって理解されるように、様々な槽の順序を変更するか、または1つ以上の槽を追加したり/取り外したりすることが可能である。あるいは、2つ以上の槽10A、10Bまたは10Cは、水、およびアルコール、またはその組合せなどの洗浄溶媒を含むことができる。
【0049】
以下の実施例では、単一フィラメント(繊維)の引張特性(ヤング係数、引張強度、%ひずみ(%引張破壊伸び))を、デュアルカラムインストロンモデル5965を用いてASTM法のC1557に記載の手順に沿って判定した。繊維径は光学顕微鏡法および破壊前回折の両方によって判定された。
【0050】
実施例1:比較実施例
エチレンのコポリマーおよびM
w=58,800g/molを有しM
w/M
n=2.5である0.33モル%の1−オクテン(1.3重量%)を紡績してフィラメントの連続トウを得た。フィラメントは直径が15〜16ミクロン、引張強さが2g/デニール、および結晶度が約57%であった。3300フィラメントの1メートルサンプルをガラス装置に結びとおし、200g張力下(約3MPa)に置いた。繊維は続いて、2.5時間75℃で20%の発煙硫酸で処理された。繊維を続いて取り出し、50%の硫酸および脱イオン水で洗浄した。スルホン化繊維トウを続いて100g(約1.6MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が41.7GPa、引張強度が0.45GPa、引張破壊伸びが1.06%、および直径が17.3ミクロンであった。炭素繊維のSEM画像は繊維間融合を示し、引張試験のために分離可能であった繊維の表面で欠陥につながる。
【0051】
実施例2:
実施例1と同一の繊維および反応装置が用いられた。3300フィラメントの1メートルサンプルをガラス装置に結びとおし、400g張力下(約7MPa)に置いた。繊維は続いて1時間50℃で20%の発煙硫酸で処理され、その後2時間98℃で96%の硫酸で処理し、それから4時間120℃まで同じ酸で加熱された。繊維を続いて取り出し、50%の硫酸および脱イオン水で洗浄した。スルホン化繊維トウを続いて100g(約2MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が68GPa、引張強度が1.08GPa、引張破壊伸びが1.57%、および直径が12.9ミクロンであった。
【0052】
実施例3:
実施例2で生成されたスルホン化繊維は200g(約3MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が62GPa、引張強度が1.08GPa、引張破壊伸びが1.74%、および直径が13.2ミクロンであった。
【0053】
実施例4:
実施例1と同一の繊維および反応装置が用いられた。3300フィラメントの1メートルサンプルをガラス装置に結びとおし、400g張力下(約7MPa)に置いた。繊維は続いて、1時間50℃で20%の発煙硫酸で処理された。張力は続いて200g(約3.5MPa)に変えられ、繊維は2時間98℃で96%の硫酸で処理され、それから4時間120℃まで同じ酸で加熱された。繊維を続いて取り出し、50%の硫酸および脱イオン水で洗浄した。スルホン化繊維トウを続いて100g(約2MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が65GPa、引張強度が1.05GPa、引張破壊伸びが1.60%、および直径が12.5ミクロンであった。
【0054】
実施例5:
実施例4で生成されたスルホン化繊維は200g(約3.5MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が55GPa、引張強度が0.86GPa、引張破壊伸びが1.60%、および直径が14.0ミクロンであった。
【0055】
実施例6:
実施例1と同一の繊維および反応装置が用いられた。3300フィラメントの1メートルサンプルをガラス装置に結びとおし、600g張力下(約10MPa)に置いた。繊維は続いて、1時間50℃で20%の発煙硫酸で処理された。張力は続いて200g(約3MPa)に変えられ、繊維は2時間98℃で96%の硫酸で処理され、それから4時間120℃まで同じ酸で加熱された。繊維を続いて取り出し、50%の硫酸および脱イオン水で洗浄した。スルホン化繊維トウを続いて100g(約2MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が71GPa、引張強度が1.00GPa、引張破壊伸びが1.40%、および直径が13.0ミクロンであった。
【0056】
実施例7:
エチレンのコポリマーおよびM
w=60,500g/molを有しM
w/M
n=2.7である3.6モル%の1−ブテン(7重量%)を紡績してフィラメントの連続トウを得た。フィラメントは直径が約16ミクロン、引張強さが約1.8g/デニール、および結晶度が約45%であった。3300フィラメントの1メートルサンプルをガラス装置に結びとおし、400g張力下(約6MPa)に置いた。繊維は続いて30分75℃で20%の発煙硫酸で処理され、その後約16時間118℃で96%の硫酸で処理した。繊維を続いて取り出し、50%の硫酸および脱イオン水で洗浄した。スルホン化繊維トウを次に1000g(約15MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1000℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が64GPa、引張強度が0.96GPa、引張破壊伸びが1.50%、および直径が15.7ミクロンであった。
【0057】
実施例8:
エチレンのコポリマーおよびM
w=116,260g/molを有しM
w/M
n=4.7である3.6モル%の1−オクテン(11.1重量%)を紡績してフィラメントの連続トウを得た。フィラメントは直径が約15ミクロン、引張強さが5.5g/デニール、および結晶度が約40%であった。1088フィラメントを含むスプールを連続的なスルホン化装置(
図3に記載される)を通して給送し、第1の反応装置では350g張力下(約18MPa)、それに続く反応装置では100g張力下(約5MPa)に置いた。第1の反応装置は、20%発煙硫酸を50℃で含み、第2は96%硫酸を100℃で含み、第3は96%硫酸を120℃で含んだ。最終的な洗浄反応装置に脱イオン水の流れを室温で供給した。ポリエステル繊維は一定の給送率で一連の反応装置を通して連続的に給送され、各反応装置滞留時間は約60分(収縮を除く)であった。完了と同時に繊維トウをアンスプールし、50g(約2.5MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が48GPa、引張強度が0.58GPa、引張破壊伸びが1.19%、および直径が16.7ミクロンであった。
【0058】
実施例9:
実施例8と同じ実験において、第3の反応装置浴を同じ96%の酸を含む130℃で加熱した。完了と同時に繊維トウをアンスプールし、50g(約2.5MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が48GPa、引張強度が0.85GPa、引張破壊伸びが1.77%、および直径が17.0ミクロンであった。
【0059】
実施例10:
実施例8と同じ実験において、第3の反応装置浴を同じ96%の酸を含む160℃で加熱した。完了と同時に繊維トウをアンスプールし、50g(約2.5MPa)張力下の管状炉に置き、窒素下にて5時間にわたって1150℃に加熱した。このトウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均は、ヤング係数が43GPa、引張強度が0.76GPa、引張破壊伸びが1.77%、および直径が15.1ミクロンであった。
【0060】
実施例11〜14:
エチレンのコポリマーおよびM
w=58,800g/molを有しM
w/M
n=2.5である0.33モル%の1−オクテン(1.3重量%)を紡績してフィラメントの連続トウを得た。フィラメントは直径が約11.3ミクロン、引張強さが3.9g/デニール、および結晶度が約55%であった。1753フィラメントを含むスプールを連続的なスルホン化装置を通して給送し、第1の反応装置では191g張力下(約10.5MPa)、それに続く反応装置では110g張力下(約6MPa)に置いた。第1の反応装置は、6%発煙硫酸を90℃で含み、第2は1%発煙硫酸を120℃で含み、第3は96%硫酸を140℃で含んだ。最終的な洗浄反応装置に脱イオン水の流れを室温で供給した。ポリエステル繊維は一定の給送率で一連の反応装置を通して連続的に給送され、各反応装置滞留時間は約15分(収縮を除く)であった。完了と同時に繊維トウをアンスプールし、スルホン化繊維は2.8MPa張力下で1150℃の窒素大気を含む管状炉を通過した。ホットゾーンでの滞留時間は14分であった。低温度炭化に続いて、2.8MPa張力下で2400℃の窒素大気を含む別々の管状炉でそれに続く高温炭化を実行した。ホットゾーンでの滞留時間は2.2分であった。各トウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。15のフィラメントの平均特性を表1に示す。
【0062】
実施例15〜19:
エチレンのコポリマーおよびM
w=44,115g/molを有しM
w/M
n=3.5である0.91モル%の1−オクテン(3.5重量%)を紡績してフィラメントの連続トウを得た。フィラメントは直径が約10.6ミクロン、引張強さが3.63g/デニール、および結晶度が約47%であった。1500フィラメントを含むスプールを連続的なスルホン化装置を通して給送し、第1の反応装置では245g張力下(約18MPa)、それに続く反応装置では150g張力下(約11MPa)に置いた。第1の反応装置は、6%発煙硫酸を100℃で含み、第2は1%発煙硫酸を120℃で含み、第3は96%硫酸を140℃で含んだ。最終的な洗浄反応装置に脱イオン水の流れを室温で供給した。ポリエステル繊維は一定の給送率で一連の反応装置を通して連続的に給送され、各反応装置滞留時間は約10分(収縮を除く)であった。完了と同時に繊維トウをアンスプールし、スルホン化繊維は3.7MPa張力下で1150℃の窒素大気を含む管状炉を通過した。ホットゾーンでの滞留時間は14分であった。低温度炭化に続いて、3.7MPa張力下で2400℃の窒素大気を含む別々の管状炉でそれに続く高温炭化を実行した。ホットゾーンでの滞留時間は2.2分であった。各トウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。表2で示す結果を提供する15のフィラメントの平均。
【0064】
実施例20〜23:
エチレンのコポリマーおよびM
w=44,115g/molを有しM
w/Mn=3.5である0.91モル%の1−オクテン(3.5重量%)を紡績してフィラメントの連続トウを得た。フィラメントは直径が約10.1ミクロン、引張強さが3.9g/デニール、および結晶度が約47%であった。1753フィラメントを含むスプールを連続的なスルホン化装置を通して給送し、第1の反応装置では227g張力下(約15.8MPa)、それに続く反応装置では127g張力下(約8.8MPa)に置いた。第1の反応装置は、6%発煙硫酸を110℃で含み、第2は1%発煙硫酸を120℃で含み、第3は96%硫酸を140℃で含んだ。最終的な洗浄反応装置に脱イオン水の流れを室温で供給した。ポリエステル繊維は一定の給送率で一連の反応装置を通して連続的に給送され、各反応装置滞留時間は約10分(収縮を除く)であった。完了と同時に繊維トウをアンスプールし、スルホン化繊維は3.5MPa張力下で1150℃の窒素大気を含む管状炉を通過した。ホットゾーンでの滞留時間は14分であった。低温度炭化に続いて、3.5MPa張力下で2400℃の窒素大気を含む別々の管状炉でそれに続く高温炭化を実行した。ホットゾーンでの滞留時間は2.2分であった。各トウからの個別のフィラメントに対して引張試験を行った。表3で示す結果を提供する15のフィラメントの平均。
【0066】
上記データが示すように、発煙硫酸、続いて熱溶媒洗浄(高温硫酸)を使用して作製された繊維の、結果として得られる炭素繊維の物理的性質は、発煙硫酸のみを使用して作製された炭素繊維と比べて著しく向上する。
【0067】
濃硫酸と比べてオレウム/熱溶媒洗浄方法の利点はより速い反応時間を含む。例えば、スルホン化反応に60%などのより濃縮したオレウムを使用すると、20%のオレウムよりもさらに速く、濃硫酸よりも反応が速く進む。より速い反応時間でスループット率が上昇し、費用効果性が上昇する。同様に、より高いスルホン化温度は、類似した影響を有する。
【0068】
他の利点は、加熱溶媒処理に基づき、1)加熱溶媒処理を利用しない方法を使用して作製された繊維と比べた場合の引張破壊伸びの増加、2)加熱溶媒処理を利用しない方法を使用して作製された繊維と比べた場合のより高い係数を有し、3)繊維溶融しないか、または凝結しない(または、5%未満である)炭素繊維をもたらす。これらの結果は驚くべきで、予想外であった。
【0069】
実施例8、9、および10では、高温溶媒処理(上記場合、濃硫酸)の温度上昇が係数の減少を引き起こすことを示す。しかし、それはまた強度および引張%を増加させる。しかしながら、温度上昇が過度、すなわち130℃〜160℃の場合、係数及び強度の両方で統計的に著しい減少を招くが、引張パーセントは減少しない。このデータから、加熱溶媒処理のために加熱しなければならない至適温度があると結論することは安全である。もちろん、加熱溶媒(酸の場合その濃縮)の性質と同様に、繊維の大きさ、引張強さおよび化学的構造は至適温度に強い影響を与える。しかし、特定の繊維のために最適な温度および加熱溶媒濃縮を確認することは、当業者の能力の範囲内である。
【0070】
実施例11〜23は、減少したスルホン化プロセス時間で良好な炭素繊維特性を保持するための最適化した方法を示す。発煙硫酸および加熱溶媒浴温および濃縮(濃硫酸)を迅速な安定化を達成するために修正した。比較実施例1と比較する場合、スルホン化時間の劇的な減少およびこのプロセスの改善された特性は自明である。
本開示は以下も包含する。
[1]
炭化ポリマーを調製するプロセスであって、
a)発煙硫酸、硫酸、クロロスルホン酸、またはそれらの組み合わせであるスルホン化剤でポリマーを処理して、スルホン化ポリマーを形成することと、
b)前記スルホン化ポリマーを加熱溶媒であって、その温度が少なくとも95℃である、加熱溶媒で処理することと、
c)得られた生成物を500〜3000℃の温度に加熱することによって炭化することと、を含む、プロセス。
[2]
前記スルホン化剤がクロロスルホン酸を含む、上記態様1に記載のプロセス。
[3]
前記スルホン化剤が発煙硫酸を含む、上記態様1または2に記載のプロセス。
[4]
前記発煙硫酸が、0.1〜70%の発煙硫酸である、上記態様3に記載のプロセス。
[5]
前記ポリマーがポリエチレンからなるか、またはエチレンのコポリマーを含む、上記態様1〜4のいずれかに記載のプロセス。
[6]
前記エチレンのコポリマーが、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合わせである、上記態様5に記載のプロセス。
[7]
前記加熱溶媒が、少なくとも100℃の温度である、上記態様1〜6のいずれかに記載のプロセス。
[8]
前記加熱溶媒が、100〜180℃の硫酸である、上記態様1〜7のいずれかに記載のプロセス。
[9]
前記スルホン化反応が、0〜140℃の温度で行われる、上記態様1〜8のいずれかに記載のプロセス。
[10]
前記スルホン化が、前記ポリマーがポリマー繊維であり、かつ前記ポリマー繊維が0〜35.5MPaの張力下にある間に実施されるか、加熱溶媒での前記処理が、前記ポリマー繊維が0〜25MPaの張力下にある間に実施されるか、または炭化が、前記ポリマー繊維が0〜8.8MPaの張力下にある間に実施される、上記態様1〜9のいずれかに記載のプロセス。
[11]
前記スルホン化、前記加熱溶媒での処理、および前記炭化が、前記ポリマーが1MPaよりも大きい張力下にある間に行われる、上記態様1〜10のいずれかに記載のプロセス。
[12]
前記炭化ステップ中の前記張力が、前記スルホン化ステップ中のものとは異なる、上記態様10または11に記載のプロセス。
[13]
前記炭化ステップが、700〜1,500℃の温度で行われる、上記態様1〜12のいずれかに記載のプロセス。
[14]
a)ポリエチレンを含むポリマーを、発煙硫酸でスルホン化することであって、前記スルホン化反応が、スルホン化ポリマーを形成するように35〜140℃の温度で行われる、スルホン化することと、
b)前記スルホン化ポリマーを、プロトン性および/または極性溶媒であって、その温度が100〜180℃である、溶媒で処理することと、
c)得られた生成物を500〜3000℃の温度に加熱することによって炭化することと、を含み、ステップa)、b)、およびc)のうちの少なくとも1つが、前記ポリマーが張力下にある間に行われる、上記態様1〜13に記載のプロセス。
[15]
前記プロトン性および/または極性溶媒が、鉱酸である、上記態様14に記載のプロセス。
[16]
前記ポリエチレンを含むポリマーが、ポリエチレンホモポリマー、またはエチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマーを含むポリエチレンコポリマー、1つ以上のホモポリマーおよび1つ以上のポリエチレンコポリマーの混合物、または2つ以上のポリエチレンホモポリマーの組み合わせである、上記態様14または15に記載のプロセス。
[17]
前記プロトン性および/または極性溶媒が、115〜160℃の温度の硫酸である、上記態様14〜16に記載のプロセス。
[18]
ステップa)、b)、およびc)が、前記ポリマーが1MPaを超える張力下にある間に行われる、上記態様14〜17に記載のプロセス。
[19]
上記態様1〜18に記載のプロセスによって作成される、炭素繊維。