【実施例】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0031】
図1は、石膏ボードのエッジ部の各種形態を例示する石膏ボードの部分断面図である。
【0032】
板厚tの石膏ボードBは、石膏スラリーの硬化体からなる石膏コアCを上下の石膏ボード原紙、即ち、下紙原紙1及び上紙原紙2によって被覆した構造を有する。
図1(A)には、スクエアエッジを有する石膏ボードBが示されている。石膏ボードBのエッジ部Eは、直角に設定されたエッジ角度αを有する。下紙原紙1は角部e1、e2において折り曲げられる。糊を塗布又は塗着した上紙原紙2の裏面縁部(
図1において下面縁部)が下紙原紙1の縁部上面に重ねられ、糊付け部Gが形成される。
図1(B)には、ベベルエッジを有する石膏ボードBが示されている。下紙原紙1は、角部e3、e4、e5において折り曲げられ、糊を塗布又は塗着した上紙原紙2の裏面縁部が下紙原紙1の縁部上面に重ねられ、糊付け部Gが形成される。
図1(C)には、テーパーエッジを有する石膏ボードBが示されている。下紙原紙1は、e6、e7、e8において折り曲げられ、糊を塗布又は塗着した上紙原紙2の裏面縁部が下紙原紙1の縁部上面に重ねられ、糊付け部Gが形成される。
【0033】
図2及び
図3は、石膏ボードの製造工程を部分的且つ概略的に示す石膏ボード製造装置の部分断面図及び部分平面図である。
【0034】
下紙スタンドの原紙ロール(図示せず)から繰り出された下紙原紙1が、石膏ボード製造装置の給紙テーブル9上に供給され、製造ライン上を矢印方向に搬送される。下紙原紙1には、スコーリング装置又は研削装置(図示せず)によって折れ線(スコア)が刻設される。例えば、スクエアエッジの場合、折れ線は、角部e1、e2に相応する位置に形成される。混合攪拌機(ミキサー)3が、下紙搬送ラインの上方に配置され、焼石膏、接着助剤、硬化促進剤、添加剤、混和材等の粉体原料P、泡F及び液体原料(水)Qが混合攪拌機3に供給される。混合攪拌機3は、これらの原料を混練し、管路4(4a、4b、4c)を介してスラリー(焼石膏スラリー)Sを下紙原紙1上に吐出する。管路4aは、下紙原紙1の幅方向中央領域に比較的低比重のスラリーSを吐出し、管路4b、4cは、下紙原紙1の両側の縁部分(エッジ領域)に比較的高比重のスラリーSを夫々吐出する。下紙原紙1は、スラリーSとともに製造ライン上を走行し、下紙原紙1の両側の縁部分は、ガイド部材5によって上側に折り曲げられる。
【0035】
上紙スタンドの原紙ロール(図示せず)から繰り出された上紙原紙2が、供給ローラ7を介してスラリーS上に給紙される。上紙原紙2の両側の縁部に所定量の糊を塗布又は塗着するための糊付け装置20が、供給ローラ7の近傍に配置される。糊付け装置20は、上紙原紙2の裏面縁部に上側から糊を連続供給する糊供給装置21を有する。糊供給装置21には、糊供給管23が接続され、糊供給管23は、糊供給源(図示せず)に接続される。
【0036】
下紙原紙1、スラリーS及び上紙原紙2は、上下の定盤8によって積層され、3層構造の連続積層体Wとして、石膏ボード成型装置30を通過する。成型装置30は、上下の水平プレート31、32を備える。下側プレート32は、下紙原紙1を水平に搬送するように石膏ボード製造装置の機枠(図示せず)に水平に固定される。昇降駆動装置33が上側プレート31の上側に間隔を隔てて配置され、上側プレート31に連結される。上側プレート31のレベルは、昇降駆動装置33によって微調整され、プレート31、32の間に形成される成型ゲート34の高さ寸法(ゲート寸法)Jは、下紙原紙1、スラリーS及び上紙原紙2の連続積層体Wに適切な成型圧力が作用するように厳密に管理される。連続積層体Wは、成型ゲート34を通過し、所望の板厚t(
図1)を有する連続帯状の板体に成型される。
【0037】
成型装置30通過した連続積層体Wは、ベルトコンベア装置を構成する成型ベルト40の上側走行帯41により、後続工程(粗切断工程)に向かって搬送され、スラリーSの硬化反応が成型ベルト40上で進行する。粗切断ローラ45、46は、スラリー硬化反応が進行した連続帯状の積層体を粗切断し、これにより、石膏を主体とする芯部(コア)を石膏ボード用原紙で被覆してなる板状体、即ち、石膏ボードの原板が形成される。石膏ボードの原板は、乾燥機(
図2及び
図3に矢印Rで示す)に通され、強制乾燥され、しかる後、所定の製品長に切断され、かくして、石膏ボード製品が製造される。
【0038】
糊付け不良検出システム50を構成する製造ライン上流側及び下流側の投光レーザーセンサ51、52及び受光レーザーセンサ53、54が、成型ベルト40の外側に配置される。成型装置30と粗切断ローラ45、46とは、距離D1、離間する。上流側の投光レーザーセンサ51及び受光レーザーセンサ53は、対をなして配置され、センサ対51、53は、成型装置30から下流側に延在する距離D2の範囲内(D2=D1/4)の領域(以下、「上流域」という。)に配置される。下流側の投光レーザーセンサ52及び受光レーザーセンサ54は、対をなして配置され、センサ対52、54は、粗切断ローラ45、46から上流側に延在する距離D3の範囲内(D3=D1/4)の領域(以下、「下流域」という。)に配置される。上流域のセンサ対51、53と、下流域のセンサ対52、54とは、搬送方向に距離X、離間する。
【0039】
図4は、上流域の投光レーザーセンサ51及び受光レーザーセンサ53と、連続積層体Wとの位置関係を示す石膏ボード製造装置の断面図である。なお、
図4に括弧書き符号で示すように、下流域の投光レーザーセンサ52及び受光レーザーセンサ54は、上流域のセンサ51、53と実質的に同じ構成を有する。
【0040】
石膏ボード製造装置の機枠60を構成する左右の横架材61には、軸受62、63が取付けられる。軸受62、63は、ベルトコンベア装置の上下の従動ローラ43、44を回転可能に支持する。成型ベルト40は、上側走行帯41及び下側走行帯42を構成する無端ベルトからなる。成型ベルト40は、多数の従動ローラ43、44及び駆動ローラ(図示せず)からなるローラ群に巻掛けられる。ベルトコンベア装置は、駆動装置(図示せず)を有し、駆動装置は、駆動ローラを回転駆動し、上側走行帯41を搬送方向に走行させ且つ下側走行帯42を逆走させる。
【0041】
センサ支持基台65を有するブラケット64が、各横架材61の上面に配設される。投光レーザーセンサ51が、片側(
図4において左側)の基台65上に取付けられ、受光レーザーセンサ53が、反対側(
図4において右側)の基台65上に取付けられる。センサ51は、所定高さHの可視光半導体レーザービームβを照射する。レーザービームβは、連続積層体Wの搬送方向と直交する水平光軸を有する。センサ53は、センサ51の発光部と対向する受光部を備える。連続積層体Wが上側走行帯41上に存在しない場合、センサ53は、所定高さHを有する細幅且つ縦長の薄い帯状レーザービームβをそのまま受光する。本例において、レーザービームβの下縁は、上側走行帯41の上面と同一レベルに位置し、レーザービームβの高さHは、30mmに設定される。なお、レーザービームβは、平面視(
図3)においては、幅寸法(連続積層体Wの搬送方向におけるレーザービームβの寸法)を無視し得る細い直線状の光線である。
【0042】
センサ51、53は、制御信号線L1、L2を介してプログラマブルロジックコントローラ(PLC)等の制御ユニット70に接続される。制御ユニット70は、制御・演算部、記憶部、比較判定部及び駆動部を有する。制御・演算部は、センサ51〜54の作動を制御するとともに、センサ53、54の出力(検出信号)を受信する。記憶部は、正常時におけるセンサ53、54の受光量を基準値として記憶するとともに、センサ53、54が検出した受光量を測定値として記憶する。記憶部は又、正常時におけるセンサ53、54の受光量(基準値)の90%の受光量を判定しきい値として記憶する。比較判定部は、測定値及び基準値を判定しきい値に基づいて比較し、糊付け不良発生の有無を判定する。駆動部は、HMI(Human-Machine Interfaces) を構成するタッチパネル表示器71及び電子音警報器72等の作動を制御する。
【0043】
制御ユニット70は、制御信号線L3を介してタッチパネル表示器71に接続される。表示器71は、制御信号線L4を介して電子音警報器72に接続される。なお、
図4に括弧書き符号で示すとおり、下流域のセンサ52、54も又、制御信号線L1"、L2"によって制御ユニット70に接続される。制御ユニット70、表示器71及び警報器72は、糊付け不良検出システム50の制御装置又は制御系を構成する。
【0044】
図5及び
図6は、糊付け不良検出システム50の原理を説明するための概略断面図である。
【0045】
図5(A)には、板厚t=9.5mmの石膏ボードを製造するための連続積層体Wを上側走行帯41上に載せた状態が示されており、
図6(A)には、板厚t=12.5mmの石膏ボードを製造するための連続積層体Wを上側走行帯41上に載せた状態が示されている。糊付け部G(
図1)を適正に糊付けした正常な連続積層体Wにおいては、連続積層体Wの高さh1は、石膏ボードの板厚tと一致する。レーザービームβの高さHを30mmに設定した場合、センサ53の受光部が受光するレーザービームβの高さh2は、理論的には、h2=H−h1=20.5mm(
図5(A))又は17.5mm(
図6(A))である(但し、計測誤差の範囲は、無視する)。制御ユニット70の記憶部は、このような正常時におけるセンサ53(54)の受光量を基準値として記憶する。
【0046】
これに対し、糊付け部Gの糊付け不良が発生した場合、上紙原紙2の縁部は、
図5(B)、
図6(B)及び
図12(B)(C)に示す如く浮き上がり、レーザービームβは、部分的に遮られる。即ち、センサ51(52)の発光部から見た連続積層体Wの高さは、見掛け上、隆起した糊付け部Gの高さを含む高さh3であり、センサ53(54)の受光部は、寸法Δh=h3−h1だけ高さh2の値が低減又は縮小したレーザービームβを受光する。従って、センサ53の受光部に入射するレーザービームβの高さh2は、20.5mm(
図5(A))又は17.5mm(
図6(A))よりもΔhだけ小さく、センサ53(54)の受光量は、正常時に比べ、Δh/[H−h1]の割合で低減する。制御ユニット70の記憶部は、このように変化したセンサ53(54)の受光量を測定値として記憶する。
【0047】
本例においては、連続積層体Wの規定高さ又は目標高さh1(=石膏ボードの板厚t)の約10%の値が、高さ低減値Δh=h3−h1の異常(従って、糊付け不良の発生)を示す基準として設定される。即ち、制御ユニット7は、Δh≧h1×約0.10(約10%)の条件が成立したとき(即ち、レーザービームβの高さ低減値Δhが約0.95mm(
図5(B))又は約1.25mm(
図6(B))以上の値に達したとき)、糊付け不良が発生したと判定するように設定される。このため、制御ユニット70は、正常時におけるセンサ53(54)の受光量(基準値)の90%の受光量を判定しきい値として設定し、この受光量を記憶部に記憶し、制御ユニット70の比較判定部は、センサ53の受光量が90%以下に低下したとき、糊付け不良が発生したと判定する。
【0048】
図7〜
図11は、レーザービームβの受光量の変化を例示する線図(タイムチャート)であり、
図7〜
図11に示す線図は、タッチパネル表示器71(
図4)の画面に表示される。
図7〜
図11において、縦軸は、センサ53、54の受光部によって検出されたレーザービームβの受光率(又は受光割合)η及び遮蔽率(又は遮蔽割合)λを示す指標である。受光率ηは、測定値/基準値の値であり、遮蔽率λは、[1−測定値]/基準値の値である。これらの数値は、Δhの値と密接に関連する。また、
図7〜
図11において、横軸は、時間軸である。上流側のセンサ51、53と下流側のセンサ52、54とは、搬送方向に距離Xだけ離間しているので、上流側のセンサ51、53が連続積層体Wの或る部位を検出する時刻T1と、下流側のセンサ52、54が同一部位を検出する時刻T2との時間差ΔTは、ベルトコンベア装置40の搬送速度と上記距離Xとによって定まる。
【0049】
図7には、連続積層体Wに糊付け不良が全く発生していない正常状態、即ち、基準値に相当する受光量がセンサ53、54によって検出された状態が示されている。この状態は、Δh=0の状態であり、連続積層体Wに糊付け異常が全く発生していない状態である。このような状態では、制御ユニット70は、電子音警報器72を起動させず、従って、電子音警報器72は警報音を発生しない。
【0050】
図8には、連続積層体Wの縁部に不陸又は凹凸等が若干発生しているが、計測誤差の範囲内、或いは、許容範囲内であって、実質的な糊付け不良が発生していないと見做される状態が示されている。これは、正規の石膏ボード製品が継続的に製造されている状態である。即ち、センサ53、54は、基準値×0.9を超える受光量(受光率η>0.9(90%))を検出しており、Δh<h1×約0.10の条件が維持されていると判断し得る。このような状態では、制御ユニット70の比較判定部は、糊付け不良が発生したと判定せず、従って、制御ユニット70は、電子音警報器72を起動させず、電子音警報器72は警報音を発生しない。
【0051】
図9には、センサ53が基準値×0.9以下の受光量(受光率η≦0.9(90%))を検出し、センサ54が基準値×0.9を超える受光量(受光率η>0.9(90%))を検出した状態が示されている。このように異なる受光量が検出される現象は、剥離部K(
図12)が糊付け直後に発生した後、剥離部Kの隆起がスラリーSの乾燥・硬化に伴って縮小する場合に観られる。このような状態では、糊付け直後にΔh≧h1×約0.10の状態が発生し、従って、連続積層体Wに糊付け不良が発生していると判断し得るので、制御ユニット70は、電子音警報器72を起動し、電子音警報器72は、糊付け不良発生を作業員等に知らせる警報音を発生する。なお、このような受光量の変化が観られる場合、糊付け直後に発生した糊付け不良が自然に解消したものとして、糊付け不良が発生していないと判定することも可能である。
【0052】
図10には、センサ54が基準値×0.9以下の受光量(受光率η≦0.9(90%))を検出し、センサ53が基準値×0.9を超える受光量(受光率η>0.9(90%))を検出した状態が示されている。このように異なる受光量が検出される現象は、糊付け直後には正常な糊付け状態であるが、スラリーSの乾燥・硬化時に剥離部K(
図12)が発生した場合や、糊付け直後に発生した微小な剥離部Kの隆起がスラリーSの乾燥・硬化に伴って増大した場合に観られる。このような状態では、成型ベルト40上でΔh≧h1×約0.10の状態が発生し、従って、連続積層体Wに糊付け不良が発生していると判断し得るので、制御ユニット70は、電子音警報器72を起動し、電子音警報器72は、糊付け不良発生を作業員等に知らせる警報音を発生する。
【0053】
図11には、剥離部K(
図12)が糊付け直後に発生した後、スラリーSの乾燥・硬化時においても縮小せずに残留するといった典型的な糊付け不良の形態が示されている。即ち、
図11に示す検出結果においては、センサ53、54の双方が基準値×0.9以下の受光量(受光率η≦0.9(90%))を検出している。制御ユニット70は、電子音警報器72を起動し、電子音警報器72は、糊付け不良発生を作業員等に知らせる警報音を発生する。
【0054】
制御ユニット70は、
図7〜
図11に示すセンサ53、54の検出結果をタッチパネル表示器71の画面に常時表示し、作業員等は、糊付け不良の発生を電子音警報器72の警報音により発生直後に認識することができる。作業員は、警報音発生を認識すると、タッチパネル表示器71の画面表示により糊付け不良の形態及び程度を確認し、糊付け不良の状態を解消すべく、糊付け装置20の糊供給装置21の糊供給量等を調節する。
【0055】
なお、投光レーザーセンサ51として、例えば、株式会社キーエンス製のデジタルレーザーセンサーLV−300Hを好適に使用し得る。また、受光レーザーセンサ53として、例えば、株式会社キーエンス製のデジタルレーザーセンサーLV−300Hを好適に使用し得る。更に、制御ユニット70を構成するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)として、例えば、三菱電機株式会社製のMELSEC−Qシリーズのシーケンサを好適に使用し得る。また、タッチパネル表示器71として、例えば、株式会社キーエンス製のVT−3シリーズのタッチパネルディスプレイを好適に使用し、電子音警報器72として、例えば、株式会社パトライト製のシグナルホンを好適に使用し得る。
【0056】
次に、上記構成の糊付け不良検出システム50を備えた石膏ボード製造装置の作動について説明する。
【0057】
図2及び
図3に示す如く、下紙原紙1は、ベルトコンベア装置40の搬送方向に連続的に供給され、混合攪拌機3は、スラリーSを下紙原紙1上に連続的に吐出する。スコーリング装置(図示せず)によって折れ線(スコア)を刻設した下紙原紙1の左右の縁部は、ガイド部材5によって上側に折り曲げられる。糊付け装置20によって左右の縁部に糊を塗布又は塗着した上紙原紙2は、下紙原紙1及びスラリーSの上に重ねられる。原紙1、2及びスラリーSは、定盤8及び成型装置30によって押圧・賦形されて3層構造の連続積層体Wに成形される。成型装置30の成型ゲート34を通過した連続積層体Wは、成型ベルト40の上側走行帯41によって連続搬送され、スラリーSの硬化反応が搬送中に進行する。連続積層体Wは、粗切断ローラ45、46によって粗切断され、後続する乾燥工程及び切断工程により、石膏ボード製品として最終加工される。
【0058】
糊付け不良検出システム50は、このような石膏ボード製造中に常時作動され、投光レーザーセンサ51、52は、連続積層体Wを横断するレーザービームβを常時照射する。受光レーザーセンサ53、54は、レーザービームβを常時受光し、レーザービームβの受光量検出値を制御ユニット70の制御・演算部に継続的に出力する。制御ユニット70は、センサ53、54の検出値に基づいて受光率η(及び遮蔽率λ)の数値及びグラフをタッチパネル表示器71の画面に表示する。
【0059】
制御ユニット70は、センサ53、54の検出値より得られた受光率η(又は遮蔽率λ)に基づいて糊付け不良の発生を所定の時間間隔(制御サイクル時間相当の時間間隔)で判定する。
【0060】
制御ユニット70は、糊付け不良が発生したと判定すると、電子音警報器72を起動し、電子音警報器72は、糊付け不良発生を作業員等に知らせる警報音を発生する。作業員は、警報音発生を認識して、タッチパネル表示器71の画面表示により糊付け不良の形態及び程度を確認するとともに、糊付け不良の状態を解消すべく、糊付け装置20の糊供給装置21の糊供給量等を調節する。
【0061】
このような糊付け不良検出システム50によれば、連続積層体Wの搬送方向に離間した複数の位置において糊付け不良発生の有無を検出することができるので、成型ベルト40上で糊付け部の剥離等が発生する形態の糊付け不良をも検出することができ、従って、糊付け不良を確実に検出することができる。また、上記構成の糊付け不良検出システム50によれば、センサ51〜54を製造ラインの適所に配置することにより、個々の製造プロセスに適した任意の位置において糊付け不良を検出することができ、しかも、センサの個数を増大して3箇所以上の多数箇所において糊付け不良を検出することも可能であるので、実用的且つ経済的に極めて有利である。
【0062】
更に、検出位置及び検出箇所数の最適化により、糊付け状態の不具合を確実且つ早期に発見することが可能となり、これにより、製造歩留りを向上して製造ロスを低減することが可能となる。本発明者等の実用化試験によれば、糊付け不良と関連した格外比率(一定期間内に製造された製品数中の格外品の比率)を糊付け不良検出システム50の採用により約1/100に低減し、歩留り率を大幅に向上することが可能となった。従って、上記構成の糊付け不良検出システム50の採用は、石膏ボードの生産性を向上する上で極めて有益である。
【0063】
また、近年において比較的需要が増大している高比重石膏ボード又は軽量石膏ボードの製造においては、紙厚が厚く且つ坪量が大きい紙が下紙原紙1として使用される。例えば、標準的な石膏ボードでは、下紙原紙1の紙厚及び坪量は、約0.19mm〜約0.21mm、約100〜約200g/m
2であるのに対し、高比重石膏ボード又は軽量石膏ボードの製造に使用される下紙原紙1の紙厚及び坪量は、約0.34〜約0.36mm、約170〜約300g/m
2、好ましくは約200〜約300g/m
2、更に好ましくは、約230〜約250g/m
2である。このため、このような石膏ボードの製造に使用される下紙原紙は、反り易い性質を有する。また、高比重の石膏ボードの製造においては、高比重の未硬化スラリーが下紙原紙1の折り曲げ部を押し上げ、これに伴って、上紙原紙2が押し上げられる現象が発生し易い。このような高比重石膏ボード特有の紙質や、高比重スラリーの挙動又は性状等のために、高比重石膏ボードの製造においては、糊付け不良のトラブルが発生し易い。本発明者の調査によれば、高比重石膏ボード又は軽量石膏ボードの製造時に発生する糊付け不良の形態は、多くの場合、糊付け直後に上紙原紙及び下紙原紙が過渡的に接着した後、成型ベルト40による搬送中に糊付け部の剥離が発生する形態のものである。このような糊付け不良の形態は、従来の糊付け不良検出システムでは検出できなかった。これに対し、上記構成の糊付け不良検出システム50によれば、このような形態の糊付け不良を
図10に示す如く確実に検出することができるので、極めて有利である。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態又は実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0065】
例えば、上記実施例では、受光率=0.9(90%)を糊付け不良判定の判定しきい値として採用したが、判定しきい値は、石膏ボード製造装置の構造や、石膏ボードの種類等に相応して適宜設定変更することができる。
【0066】
また、上記実施例においては、上流側のセンサ53が基準値×0.9以下の受光量(受光率η≦0.9(90%))を検出し、下流側のセンサ54が基準値×0.9を超える受光量(受光率η>0.9(90%))を検出した状態においても、糊付け不良が発生したと判定しているが、このような場合には、糊付け不良がスラリーSの乾燥・硬化に伴って自然に解消したものとして、糊付け不良が発生していないと判定することも可能である。
【0067】
更に、上記実施例では、上流域及び下流域の2箇所において検出装置系(投光レーザーセンサ及び受光レーザーセンサ)を石膏ボード製造装置に配設しているが、3箇所以上の検出装置系を石膏ボード製造装置に配設しても良い。
【0068】
また、上記実施例においては、受光率に基づいて糊付不良を判定するように構成された制御系について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、異常値を一定値に固定し、様々な板厚のボードの糊付け不良を共通のしきい値を用いて検知し又は判定するようにすることも可能である。例えば、センサ53、54が受光するレーザービームβの高さh2の低減値Δhを測定し、低減値Δhの許容最大値Δh
maxを共通のしきい値として設定し、低減値Δh>Δh
maxが検出されたときに、糊付け不良の発生を判定することも可能である。
【0069】
加えて、上記実施例においては、糊付け不良検出システム50は、搬送方向に直交する水平光軸を有するレーザービームβを用いた構成のものであるが、レーザービームは、搬送方向に対して所定角度に傾斜した方向に配向することも可能である。
【0070】
更に、上記実施例においては、厚さ9.5mm及び12.5mmの石膏ボードの製造について例示的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、6mm、15mm、18mm、21mm、25mmの各板厚の石膏ボードの如く、様々な厚さの石膏ボードの製造に適用することができる。