(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194007
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】触覚部制御をもたらす眼内レンズインジェクタ用のカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20170828BHJP
A61F 2/16 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
A61F9/007 200Z
A61F2/16
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-541935(P2015-541935)
(86)(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公表番号】特表2015-533616(P2015-533616A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】US2013069208
(87)【国際公開番号】WO2014074860
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年6月8日
(31)【優先権主張番号】13/673,330
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008847
【氏名又は名称】ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ,モーセ
(72)【発明者】
【氏名】ベルチャー,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ムチャラ,サスハント
(72)【発明者】
【氏名】セオ,ウィル
(72)【発明者】
【氏名】アヤガリ,マデュ
【審査官】
白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−518644(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/064275(WO,A1)
【文献】
特表平08−507457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61F 9/013
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁;
下壁であって、前記上壁および前記下壁が一緒になって一体化ユニットを形成し、近位端部から遠位端部まで延在するルーメンを規定する、下壁;
前記上壁の厚み全体を通って延在しかつ前記近位端部から延在し、前記上壁の縁部の一部によって形成された開口スロット遠位端部を有する開口スロットであって、前記上壁の縁部の一部は凸状の湾曲を有し前記スロット遠位端部を少なくとも部分的に規定し、前記湾曲が前記縁部の厚さに沿って生じ、IOLが前記近位端部において前記ルーメンに入ると、前記IOLの先端触覚部が前記開口スロットを通って前記上壁の上側に延在する、開口スロット;および
2つの隆起部であって、該2つの隆起部の各々が前記ルーメン内の前記開口スロットの左右両側に配置され、各隆起部が、前記ルーメンに面する実質的に水平な壁を有し、前記ルーメンに沿って前記開口スロットよりもさらに遠位に延在し、かつ丸みを帯びた形状のルーメンを生じるまでルーメン壁の方へ先細になる、隆起部、
を有することを特徴とする、IOLインジェクタカートリッジ。
【請求項2】
前記開口スロットの最大幅が3.0mmであることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記開口スロットが、その長さの一部分に沿って均一な幅を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記開口スロットが、実質的にその全長に沿って均一な幅を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記上壁が、前記開口スロットに隣接して触覚部制御特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記開口スロットが、前記カートリッジの中心線の片側に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
プランジャー軸に沿って可動なプランジャーを含むインジェクタ本体と組み合わせられており、前記カートリッジが、前記ルーメンの中心線に沿って縦軸を有し、前記カートリッジおよびインジェクタ本体を互いに接続して、前記プランジャー軸を前記カートリッジに対して側方に片寄らせることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
プランジャー軸に沿って可動なプランジャーを含むインジェクタ本体と組み合わせられており、前記ルーメンが前記プランジャー軸に対して傾斜され、それにより、前記プランジャーを前記ルーメンの底部の方へ片寄らせることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズ(IOL)用のインジェクタ、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズ(本明細書ではIOL、または単にレンズとも称する)は、眼の天然の水晶体が病気になるかまたは他の理由で障害があるときに、天然の水晶体に代わって使用される人工レンズである。ある状況下では、天然の水晶体は、移植されたIOLと一緒に眼内に残しておいてもよい。IOLは、眼の後眼房または前眼房のいずれかに配置され得る。
【0003】
IOLは、様々な構成および材料のものがある。眼にそのようなIOLを移植する様々な器具および方法が公知である。一般に、患者の角膜に切開が行われ、その切開の切り口を通して眼にIOLが挿入される。ある技術では、外科医は、IOLを把持して、切り口を通して眼に挿入するための対向したブレードを有する外科用鉗子を使用する。この技術は、現在でも依然として行われているが、IOLインジェクタを使用する外科医が増えてきている。IOLインジェクタの利点は、例えば、IOLを眼に挿入するときに外科医がより制御できるようにし、かつより小さな切り口を通してIOLを挿入できるようにすることにある。サイズの小さい切り口(例えば、約3mm未満)は、大きな切り口(例えば、約3.2〜5+mm)よりも好ましい。なぜなら、小さな切り口は、手術後の治癒にかかる時間を減らし、かつ乱視の誘発などの合併症を減らすことに関連するためである。
【0004】
インジェクタには多くの構成があり、例えばインジェクタは、IOLがインジェクタの本体に直接装填されるような構成とされ得る。あるいは、インジェクタは、IOLが内部に装填されるカートリッジと、IOLが内部にあるカートリッジが装填されるインジェクタ本体とを含み得る。これらカートリッジおよび/またはインジェクタ本体は、使い捨てまたは再使用可能な材料で作製され得る。
【0005】
従来のIOLカートリッジは、ノズルに接続された装填室を含む。一部の構成例では、ノズルは、IOLを眼に供給するために、眼に挿入可能な小径の遠位先端を含む。カートリッジとインジェクタ本体をかみ合わせた後、カートリッジのルーメンを通してプランジャーが平行移動されるかまたはねじ込まれて、IOLが、装填室およびノズルを通って眼まで進められてもよい。
【0006】
IOLが切開の切り口を通り抜けるようにするために、IOLは、通常、眼に入れる前(元々の折り畳まれていない/圧縮されていない形状をとっている)に、折り畳まれるおよび/または圧縮される。これら折り畳みおよび圧縮は、IOLがカートリッジに装填される前、その最中、またはその後に、(例えば、鉗子、または先細ノズルを通る動きを利用して)、生じ得る。IOLは非常に小さく、かつ繊細な製造品であるため、IOLがインジェクタに装填されるとき、および患者の眼に注入されるときの双方において、それらの取り扱いには細心の注意を払う必要がある。
【0007】
IOLは、IOLインジェクタの先端から眼内へ、無傷の状態でおよび予測可能な向きで、放出されることが重要である。IOLが損傷されるかまたはインジェクタから間違った向きで放出される場合、外科医は、IOLを取り除くか、または眼の中でさらにIOLを操作する必要があるかもしれず、眼の周囲組織に外傷を生じる可能性がある。IOLの適切な供給を達成するために、インジェクタ装置へIOLを着実に装填して、IOLを損傷する危険を最小限にすることが望まれる。
【0008】
概して、IOLは、バイアル、プラスチック製のブリスターパッケージ、またはIOLを滅菌状態に維持する他の容器などのパッケージングで、外科医に提供される。IOLはパッケージングから取り出され、患者の眼に挿入される前にカートリッジの装填室に装填される。通常、鉗子または同様の装置を用いて、パッケージングからIOLを取り出し、装填室へ移す。鉗子は、単に、IOLをカートリッジの装填室上にまたは装填室内に配置するために使用されてもよいし、または眼に挿入するための小さなサイズにIOLを折り畳んでもよい。
【0009】
カートリッジから眼内へのIOLの供給の最中に、いくつかの問題に直面し得る。例えば、カートリッジルーメンを通って移動する最中、特にノズル内部でIOLが折り畳まれたりまたは圧縮されたりする場合、視覚部および触覚部の向きを制御することは困難かもしれない。さらに、プランジャーの先端をIOLに係合させている最中に問題が生じるかもしれず、視覚部、触覚部、またはそれら双方に損傷を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を考慮して、より効果的にIOLの通過を受け入れ管理するカートリッジが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、上壁と、下壁と、スロットとを含むIOLインジェクタカートリッジであって、上壁および下壁が結合して近位端部から遠位端部まで延在するルーメンを規定し、スロットが、上壁の厚み全体に亘って延在しかつ近位端部から延在し、上壁によって形成されたスロット遠位端部を有し、少なくとも部分的にスロットを規定する上壁の縁部が、
凸状の湾曲を有し、湾曲が縁部の厚さに沿って生じる、IOLインジェクタカートリッジに関する。
【0012】
一部の実施形態では、スロットの最大幅は3.0mmである。
【0013】
一部の実施形態では、スロットは、その長さの一部分に沿って均一な幅を有する。スロットは、実質的にその全長に沿って均一な幅を有してもよい。
【0014】
一部の実施形態では、上壁は、スロットに隣接して触覚部制御特徴を有する。
【0015】
スロットは、カートリッジの中心線の片側に配置され得る。
【0016】
一部の実施形態では、カートリッジは、プランジャー軸に沿って可動なプランジャーを含むインジェクタ本体と組み合わせられており、カートリッジは、ルーメンの中心線に沿って縦軸を有し、カートリッジおよびインジェクタ本体は一緒に接続されて、プランジャー軸がカートリッジに対して側方に片寄らされる。
【0017】
一部の実施形態では、カートリッジは、プランジャー軸に沿って可動なプランジャーを含むインジェクタ本体と組み合わせられており、ルーメンはプランジャー軸に対して傾斜され、それにより、プランジャーはルーメンの底部の方へ片寄らされる。
【0018】
本発明の別の態様は、上壁および下壁を含むIOLインジェクタカートリッジであって、上壁および下壁が結合して、近位端部から遠位端部まで延在するルーメンを規定する、IOLインジェクタカートリッジに関する。上壁の厚み全体を通って延在しかつ近位端部から延在し、上壁によって形成されたスロット遠位端部を有するスロットと、スロットに近接した触覚部制御特徴とが存在する。
【0019】
一部の実施形態では、少なくとも部分的にスロットを規定する上壁の縁部は、凹状の湾曲を有し、湾曲はスロットの幅に沿って生じる。
【0020】
触覚部制御特徴は棚を含み得る。
【0021】
本発明の別の態様は、視覚部および先端触覚部を有するIOLを、スロットを内部に有する上壁によって一部分が規定されているルーメンを有するカートリッジに装填する方法に関し、この方法は、IOL、触覚部が上壁の上側に延在するときに、カートリッジの壁にあるスロット内にある先端触覚部によってIOLをルーメン内で動かすことによって、先端触覚部を折り畳むステップを含む。
【0022】
一部の実施形態では、先端触覚部は、視覚部の上側の位置に折り畳まれる。
【0023】
一部の実施形態では、IOLはさらに後方触覚部を含み、折り畳みステップは、後方触覚部が視覚部に折り重ねられる間に実施される。
【0024】
この方法は、さらに、先端触覚部が折り畳まれる間にIOLをプランジャーに係合するステップを含む。
【0025】
この方法は、さらに、先端触覚部が視覚部に折り重ねられる間にIOLをプランジャーに係合するステップを含み得る。一部の実施形態では、IOLとプランジャーの係合は、後方触覚部が視覚部に折り重ねられる間に生じる。
【0026】
本発明を説明するための非限定的な実施形態は、添付の図面を参照して、例として説明され、図面では、同じ参照符号を使用して、異なる図面において同じまたは同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の態様による眼内レンズインジェクタカートリッジの実施形態の例の概略図である。
【
図2】
図1に示すカートリッジの概略的な平面図である。
【
図3】
図1に示すカートリッジの概略的な側面図である。
【
図4】
図1に示すカートリッジの概略的な底面図である。
【
図5】本発明の態様によるカートリッジと一緒に使用するためのインジェクタ本体の実施形態の例を示す。
【
図6】
図1のカートリッジと組み合わせられた
図5のインジェクタ本体を示す。
【
図7】
図6の線7−7に沿って取ったインジェクタ本体およびカートリッジの部分的な断面図である。
【
図8A-8D】本発明の態様によるカートリッジのルーメンに挿入されているIOLを示す。
図8Bおよび
図8Cは、触覚部とリッジとの相互作用、および折り畳まれた触覚部の位置をより明瞭に示すために、上壁100aを切り欠いたカートリッジを示す。
【
図9】本発明の態様によるIOLインジェクタカートリッジの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の態様は、IOLがカートリッジに装填されるときに、カートリッジの壁にあるスロットを使用してIOLの先端触覚部を折り畳むことによって、フィラメント触覚部(filament haptic)を有するIOLを眼に注入するのを容易にすることに関する。
【0029】
本発明の態様による眼内レンズインジェクタカートリッジの実施形態を、
図1〜4を参照して下記で説明する。IOLインジェクタカートリッジ100は、上壁100aおよび下壁100bを含み、上壁および下壁は結合して、ルーメンLを規定する。下壁および上壁は、通常、成形過程によって形成されるように一体化されている;しかしながら、任意の好適な製造技術を使用してもよい、および/または複数の構成要素が本発明の態様によるカートリッジを形成してもよい。上壁は、インジェクタがレンズの眼への供給に使用されているときに、操作者に対面するカートリッジの上部を指す。ルーメンは、近位端部102から遠位端部104まで延在する。遠位端部は、通常、IOLを眼に供給するように構成される。しかしながら、カートリッジは、そのルーメンが、インジェクタの追加的な構成要素(図示せず)のルーメンと整列されるように構成されてもよく、この追加的な構成要素は、IOLを眼に供給するように構成されている。図示の実施形態では、ルーメンの断面形状は、IOLの縁部を押さえるように卵形である(下記で説明するように、隆起部103a、103bは卵形形状から逸脱している);しかしながら、ルーメンは、円形または他の好適な形状を有してもよい。カートリッジは、ルーメンの中心に沿って延びる縦軸すなわち長手方向軸LA、ならびに縦軸に垂直な、横軸TAおよび側軸すなわち左右軸LTAを有する。
【0030】
スロット110は、近位端部から上壁の厚み全体を通って延在する。スロットは、上壁によって形成された遠位端部111を有する。少なくとも部分的にスロットを規定する壁の縁部は、
凸状の湾曲Rを有し、その湾曲はその厚さに沿う。スロットは、幅Wおよび長さLを有する。湾曲を形成するために、縁部は、横軸の方向に湾曲されており、湾曲は、円形、卵形または他の丸みを帯びた形状である。下記で詳細に説明するように、スロットおよび縁部は、スロットへのIOLフィラメント触覚部の挿入、および触覚部の操作を容易にするようなサイズおよび形状にされ、かつ縁部は、触覚部を損傷させずに操作できるようにするために湾曲していることが分かる。
【0031】
操作中にフィラメント触覚部を押さえるために、スロットの最大幅(実質的に側軸LTAの方向において)は、3.0mm以下である;本発明の態様によれば、スロットの縁部の湾曲に関わらず、そのようなスロットのサイズを有するインジェクタを使用できることが分かる。操作を行い得る領域を提供するために、スロットは、その長さの一部分に沿って均一な幅を有し、また一部の実施形態では、スロットは、実質的にその全長に沿って均一な幅を有する。そのような実施形態では、例えば、スロットの遠位端部が湾曲している場合、スロットの遠位端部に多少の狭窄が発生し得ることが分かる。長さLは、操作が行われる間、触覚部を維持するのに十分な大きさに選択される(例えば、0.5〜5mm)。
【0032】
一部の実施形態では、上壁は、スロットに近接して(すなわち、4.5〜6.0mmの典型的なフィラメント触覚部が届く範囲に等しい距離内に)触覚部制御特徴106を有する。この特徴は、カートリッジへのIOLの挿入中に触覚部がスロットを通って延在するときに発生する、触覚部の操作中のIOLの先端触覚部の押さえ付けを助けるように適合されている。
図1に示すような一部の実施形態では、制御特徴は、上壁から上方へ延出する特徴を含み、それにより、湾曲したフィラメント触覚部に適合するように通常は湾曲されている側壁(例えば、側壁107)を形成する。あるいは、触覚部制御特徴は、
図9に示すように棚および壁を含み得る。棚は、上壁の高さを低くすることによって形成される。棚は、上壁の厚み全体には延在しないスロットであることが分かる。
【0033】
ルーメンの近位端部では、卵形形状から外れかつルーメン内に下向きの実質的に水平な壁を提供する隆起部103a、103bが設けられて、ルーメンの底部においてカートリッジに装填されるIOLの縁部を制御する。隆起部は、レンズを中心にかつルーメンLの底部付近に維持し、かつレンズがルーメンLを通って前進するとき、特に、触覚部がスロット110と係合するときに、IOLの回転を防止するように動作する。隆起部は、ルーメンに沿ってスロットよりももっと遠位に(例えば、ルーメンの長さの約1/4)延在し、かつ丸みを帯びた(例えば、卵形または円形)形状のルーメンを生じるまで、ルーメン壁の方へ先細になる。
【0034】
カートリッジ100は、インジェクタ本体(
図5に示す)に取り付けられるときにカートリッジを安定化させる係合特徴108を備える。インジェクタ本体へのカートリッジの取り付けを容易にするためにウィング120a、120bが設けられる。ウィングは、カートリッジをインジェクタ本体へ取り付ける取付け中に、指を置くための幅広部分124a、124b、および下記で説明するようにインジェクタ本体へ取り付けるためのウェストを含む。
【0035】
図1に示す実施形態では、スロット110は、カートリッジの中心線に沿って配置される(すなわち、カートリッジを上から見ると縦軸と一直線である)が、一部の実施形態では、スロットは、カートリッジの中心線の片側に配置される(すなわち、中心線に対して側軸LTAの方向に変位される)。
【0036】
図5は、本発明の態様によるカートリッジと一緒に使用するためのインジェクタ本体500の実施形態の一例を示す。インジェクタ本体500は、ハンドピース510およびプランジャー520を有する。インジェクタ本体は、カートリッジがインジェクタ本体に取り付けられる装填領域514を有する。装填領域の遠位端部に取付機構512が設けられる。図示の実施形態では、取付機構は、2つのプロング512a、512bを含むとして示され、それらプロングに、カートリッジのガイド用ウェスト122a、122bが摩擦係合し、カートリッジおよびインジェクタ本体は、任意の好適な取付技術(例えば、干渉、ねじ切り、磁気的)を使用するように構成できる。
【0037】
プランジャー520は、インジェクタ本体に取り付けられたカートリッジ中に存在するIOLを動かすように動作する。プランジャーは、ノブ522、シャフト524、およびIOLに係合するために任意の好適な構成を有する遠位端部526を含む。プランジャーは、プランジャー軸PAに沿って動く。図示の実施形態では、プランジャーは、ノブ522を使用して回転可能なネジタイプの挿入体として構成されるが、プランジャーは、単純なプッシュロッドまたは他の構成としてもよい。
【0038】
図6に示すように、カートリッジは、プロング512aおよび512bに近い位置においてカートリッジ受け入れ領域に挿入される。その後、カートリッジは遠位に摺動して、ウェスト122a、122bがプロング512aおよび512bの下側に入り、プロング512aおよび512bの下側で所定の位置に摩擦式にロックする。
【0039】
図7は、
図6の線7−7に沿って取ったインジェクタ本体500およびカートリッジ100の部分的な断面図であり、一部の実施形態では、下壁100bが縦軸に対してピッチすなわち勾配θを有して、カートリッジ100がインジェクタ本体500と組み立てられるとき、ルーメンがプランジャー軸PAに対して傾斜して、それにより、プランジャー520をルーメンLの底部の方へ片寄らせ、かつプランジャーが間違ってIOLに接触することを防ぐことを示す。ピッチおよびIOLの構成に依存して、そのようなピッチを使用して、IOLの視覚部の縁部または触覚部に接触できる。
【0040】
図示の実施形態では、底壁はピッチを有しているが、カートリッジおよび/またはインジェクタ本体にピッチを備えて、カートリッジがインジェクタ本体と組み立てられる際に、ルーメンがプランジャー軸に対して傾斜され、それにより、プランジャーをルーメンの底部または上部の方へ片寄らせてもよいことが分かる。片寄りの方向は、折り畳まれるときのIOLの形状、およびIOL上でのプランジャーの所望の接触位置に依存する。
【0041】
再度
図4を参照すると、プランジャーをさらに片寄らせるために(例えば、側方の片寄り)、カートリッジの底部に特徴130が設けられる。特徴130は、縦軸LAに対して側方にオフセットされ、カートリッジがインジェクタ本体と組み立てられると(
図5に示す)、カートリッジは、縦軸LAに対して側方向に沿ってオフセットされ、プランジャー(
図5に示す)が作動されると、プランジャーの先端が縦軸LAに沿って移動するのではなく、プランジャーおよびプランジャー軸がカートリッジの縦軸の横に配置される。片寄りは、インジェクタ本体に対してカートリッジを斜めにすることによっても達成でき、カートリッジがインジェクタ本体と組み立てられると、カートリッジが横軸TAまたはそれに平行な軸の周りで回転し、それにより、プランジャーの先端を側方に片寄らせることが分かる。
【0042】
図8Aは、本発明の態様によるインジェクタカートリッジ100のルーメンLの近位端部102に挿入されているIOL800の図である。IOL800は、触覚部812a、812bおよび視覚部810を含む。最初にルーメンLに入る触覚部を先端触覚部と称し、最後にルーメンLに入る触覚部を後方触覚部と称す。先端触覚部812aがスロット110を通って延在する間に、視覚部は、カートリッジ100のルーメンLに挿入される。IOLがルーメンを通って移動する際、先端触覚部は、スロットの端部においておよび/またはスロットの側面に沿ってカートリッジに接触(interfer)して、触覚部を折り畳む。触覚部は、上壁100aの半径Rの縁部に接触し、上壁100aの頂部の上側に延在する。
【0043】
図8Bに示すように、IOLが挿入体カートリッジの近位端部にさらに挿入されるとき、先端触覚部812aは、視覚部810の上側の位置に折り畳まれる。そのような構成によって、IOLがルーメンを通って眼まで前進するときに、先端触覚部が制御され保護される。
【0044】
図8Cは、近位端部からカートリッジに装填された後の、その最終位置にあるIOL800を示す。例えば、IOLは、ルーメンに最初に入ったとき(
図8Aに示す)から最終位置での配置(
図8Cに示す)まで、鉗子によって扱われ得る。IOLは、プランジャーが作動されてIOLがインジェクタの遠位端部(例えば、カートリッジの遠位端部104)から眼内に押し出されるまで、最終位置に留まる。視覚部810に折り重ねられた位置における先端触覚部812aの位置が、スロットによって折り畳まれたときから最終位置に到達するまで、維持されることが分かる。通常、折り畳み位置は、IOLがインジェクタの遠位端部から押し出されるまで、さらに維持される。
図8Cに示すように、一部の実施形態では、最終位置に到達するときに、後方触覚部812bも視覚部に折り重ねられると、好都合である。一部の実施形態では、IOLをルーメンLに入れる前に、鉗子または他の好適な装置を使用して、後方触覚部812bを折り畳み位置にする;しかしながら、後方触覚部の折り畳みは、いつ行ってもよい。図示の実施形態は2つの触覚部しか含まないが、本発明の態様と一緒に使用するIOLは、2つ以上の触覚部を有してもよい。
【0045】
図8Dは、線8D−8Dに沿って取った
図8Cのカートリッジ100およびIOLの切り欠き断面図である。IOL800の触覚部は省略して、曖昧さを避けている。
図8Dは、一部の実施形態において、上壁の内面にリッジ105が設けられ、それにより、IOLがルーメンの少なくとも一部分を通って移動するときに、IOLの縁部を受け入れ可能な位置に維持することを示す。
図1において、リッジ105の端部がカートリッジの近位端部にあることが分かる。IOLの縁部が隆起部103aおよび103bから解放された後、IOLの縁部がリッジ105によって維持されるように、リッジ105は、隆起部103a、103bよりもさらにルーメンの遠位に延在することが分かる。
【0046】
図9は、上壁900aおよび下壁900bを含む、本発明の態様によるIOLインジェクタカートリッジ900の別の実施形態を示す。上壁および下壁は結合して、近位端部902から遠位端部904まで延在するルーメンLを規定する。上壁の厚み全体を通ってスロット910が延在し、スロットは、カートリッジの近位端部から延在し、かつ上壁によって形成されたスロット遠位端部を有する。壁の縁部は、少なくとも部分的に、スロットを規定する。縁部は凹状の湾曲を有し、湾曲は縁部の幅に沿って生じる。湾曲を形成するために、縁部は、実質的に側軸LTAの方向に湾曲されており、円形、卵形または他の丸みを帯びた形状を有している。下記で詳細に説明するように、スロットおよび縁部は、スロットへのフィラメント触覚部914aの挿入、および触覚部を損傷させることのない触覚部の操作を容易にするように構成されることが分かる。スロットの近くに触覚部制御特徴が配置される;本発明の態様によれば、そのような特徴を有するインジェクタは、スロットの縁部の湾曲に関わらず存在し得ることが分かる。図示の実施形態では、触覚部制御特徴は棚を含む。
図8Cを参照して上記で説明したように、プランジャーを作動する前の最終位置において、後方触覚部914bは折り畳まれていても、または折り畳まれていなくてもよい。
【0047】
発明の概念およびいくつもの例示的な実施形態をこのように説明したが、当業者には、本発明を様々な方法で実施し得ること、および当業者には修正および改良が容易に思いつくことが明白である。それゆえ、実施形態は、限定を意図せず、例としてのみ提示される。本発明は、以下の特許請求の範囲およびその等価物によって定められるようにのみ限定される。