特許第6194012号(P6194012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194012
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両の車体フレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62K 11/04 20060101AFI20170828BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20170828BHJP
   B62K 11/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B62K11/04 C
   B62J99/00 L
   B62K11/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-546161(P2015-546161)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2013006570
(87)【国際公開番号】WO2015068190
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】山本 智
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 大輔
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−347450(JP,A)
【文献】 特開昭63−269792(JP,A)
【文献】 特開平01−101282(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/111395(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 11/00−11/04
B62J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと接続されるステアリングシャフトが挿通されるヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから車幅方向に分かれて後方に延びる一対のメインフレームとを備え、
前記メインフレームは、前記ヘッドパイプの上部から後方に延びる上側フレームと、前記ヘッドパイプの下部から後方に延びる下側フレームと、を有し、
前記上側フレームと前記下側フレームとの間に、旋回操作状態のハンドルの端部から車幅方向内方に窪む退避空間が形成され
前記上側フレームは、前記ヘッドパイプの上端を通過して前記ステアリングシャフトの回転軸線に垂直な仮想平面よりも上方に突出するようにして車長方向に延び、前記旋回操作状態の前記ハンドルの前記端部が、側面視で前記上側フレームと前記下側フレームとの間に配置される、鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項2】
前記上側フレームを前記下側フレームと車長方向に連結する連結フレームを有し、前記連結フレームは前記退避空間を避けた位置に配置される、請求項に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項3】
前記上側フレームは、前記退避空間に隣接する部分で、前記下側フレームよりも車幅方向中央寄りに配置される、請求項1又は2に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項4】
前記メインフレームは、前記ヘッドパイプから連続するトレリス部と、前記トレリス部から後方に延びる非トレリス部とを有し、前記トレリス部は、前記上側フレーム、前記下側フレーム及び前記上側フレームと前記下側フレームとの間を接続する連結フレームによって構成され、前記非トレリス部が、前記上側フレームから連続して線状に形成される、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項5】
前記非トレリス部の下方に配置され、前記非トレリス部から車幅方向外方に突出する装備品が配置される、請求項に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項6】
前記装備品は、前記メインフレームの外側から前記メインフレームの内側に延びて配置される吸気ダクトである、請求項に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項7】
前記装備品は、前記上側フレームの下方に配置されて前記メインフレームの内側から前記メインフレームの外側に部分的に突出する過給機ユニットである、請求項に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項8】
前記上側フレーム及び前記下側フレームのうち一方は、その終端が他方の終端よりも前方に位置し、
前記一方の終端よりも後方であり且つ前記上側フレーム及び前記下側フレームのうち前記他方同士の車幅方向間に装備品が収容される、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項9】
ハンドルと接続されるステアリングシャフトが挿通されるヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから車幅方向に分かれて後方に延びる一対のメインフレームとを備え、
前記メインフレームの前部上面は前端から後方に進むにつれて前記ヘッドパイプの上端を通過して前記ヘッドパイプの回転軸線に垂直な仮想平面よりも上方に突出して延び、
前記メインフレームの外側面は車幅方向外側部分に旋回操作状態のハンドル端部から車幅方向内方に窪む退避空間が形成される、鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【請求項10】
中立状態の前記ハンドルの前記端部が、側面視で前記一対のメインフレームと重なる、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の車体フレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のような鞍乗型車両の車体フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、鞍乗型車両は、ヘッドパイプから車幅方向に分かれて後方に延びるメインフレームを有し、そのメインフレームには、燃料タンクなどの各種部品が組み付けられる。メインフレームは、複数の棒状フレームを連結することでトレリス状(格子状)に形成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公報第1382521号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に例示されるメインフレームでは、ヘッドパイプ付近ではハンドルとの干渉を防ぐため、車体フレームの設計の自由度が低くなる。
【0005】
そこで本発明は操舵操作性を保ちつつ、車体フレームの設計の自由度を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鞍乗型車両の車体フレーム構造は、ハンドルと接続されるステアリングシャフトが挿通されるヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから車幅方向に分かれて後方に延びる一対のメインフレームとを備え、前記各メインフレームは、前記ヘッドパイプの上部から後方に延びる上側フレームと、前記ヘッドパイプの下部から後方に延びる下側フレームと、を有し、車高方向において前記上側フレームと前記下側フレームとの間に旋回操作状態のハンドル端部から車幅方向内方に窪む退避空間が形成される。
【0007】
前記構成によれば、旋回操作状態のハンドル及びハンドルを把持する拳と、上側フレームとが干渉することを防いで、上側フレーム及び下側フレーム各々の延在方向について選択肢を増やすことができる。よって、ハンドル上にもフレームを配置することができ、車体フレームの設計自由度が向上する。
【0008】
前記上側フレームは、前記ヘッドパイプとの接続部分を通過して前記ステアリングシャフトの回転軸線に垂直な仮想平面よりも上方に突出して、後方へ延びていてもよい。
【0009】
前記構成によれば、ハンドルとメインフレームとの干渉を防ぎながら、上側フレームを上方に向けて延在させることで、上側フレームの下面を上方に位置させてその下方の空間を大きくすることができる。例えばこの空間を利用して装備品を配置するなど、装備品のレイアウト自由度が向上する。
【0010】
前記上側フレームを前記下側フレームと車長方向に連結する連結フレームを有し、前記連結フレームは前記退避空間を避けた位置に配置されてもよい。
【0011】
前記構成によれば、連結フレームとハンドルとが干渉するのを防ぐことができる。
【0012】
前記上側フレームは、前記退避空間に隣接する部分で、前記下側フレームよりも車幅方向中央寄りに配置されてもよい。
【0013】
前記構成によれば、平面視において、下側フレームの上方で上側フレームの車幅方向外側の領域に拳を配置しやすく、旋回操作時に運転者の拳が上側フレームに近接するのを防ぎ、窮屈な姿勢になりにくい。
【0014】
前記メインフレームは、前記ヘッドパイプから連続するトレリス部と、前記トレリス部から後方に延びる非トレリス部とを有し、前記トレリス部は、前記上側フレーム、前記下側フレーム及び前記上側フレームと前記下側フレームとの間を接続する連結フレームによって構成され、前記非トレリス部が、前記上側フレームから連続して線状に形成されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、非トレリス部を上方に配置でき、装備品を配置しやすい。
【0016】
前記非トレリス部の下方に配置され、前記非トレリス部から車幅方向外方に突出する装備品が配置されてもよい。
【0017】
前記構成によれば、上方に配置された非トレリス部を利用して装備品を配置することができる。
【0018】
前記装備品は、前記メインフレームの外側から前記メインフレームの内側に延びて配置される吸気ダクトであってもよい。
【0019】
前記構成によれば、上側フレームが上方に位置するのでダクトを配置しやすい。
【0020】
前記装備品は、前記上側フレームの下方に配置されて前記メインフレームの内側から前記メインフレームの外側に部分的に突出する過給機ユニットであってもよい。
【0021】
前記上側フレーム及び前記下側フレームのうち一方は、その終端が他方の終端よりも前方に位置し、前記一方の終端よりも後方であり且つ前記上側フレーム及び前記下側フレームのうち前記他方同士の車幅方向間に補器が収容されてもよい。
【0022】
本発明に係る鞍乗型車両の車体フレーム構造は、ハンドルと接続されるステアリングシャフトが挿通されるヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから車幅方向に分かれて後方に延びる一対のメインフレームとを備え、前記メインフレーム上面は前端から後方に進むにつれて前記ヘッドパイプとの接続部分を通過して前記ヘッドパイプの回転軸線に垂直な仮想平面よりも上方に突出して延び、前記各メインフレーム外側面は、車幅方向外側部分に旋回操作状態のハンドル端部から車幅方向内方に窪む退避空間が形成される。
【0023】
前記構成によれば、退避空間を利用した操舵操作性の確保と、車体フレームの設計自由度の向上とを両立できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、操舵操作性を保ちつつ、車体フレームの設計自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る車体フレーム構造を適用した鞍乗型車両の一例として示す自動二輪車の左側面図である。
図2】ヘッドパイプ及びメインフレームの斜視図である。
図3図1に示す車体フレーム構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。同一の又は対応する要素については、全図を通じて同一符号を付して重複説明を省略する。方向は、車体フレーム構造を適用した鞍乗型車両の搭乗者から見る方向を基準とする。車高方向、車長方向及び車幅方向は、上下方向、前後方向及び左右方向に対応する。車幅方向外側及び外方は、車幅中心から遠ざかる側及び方向である。車幅方向内側及び内方は、車幅中心に近づく側及び方向である。
【0027】
前輪101は、ステアリングシャフト105等の操舵系部品を介して操舵軸線A1周りに転向可能に車体フレーム1に支持される。操舵軸線A1は、概略上向きに延び、キャスター角を形成するように後傾する。本実施形態の操舵系部品はフロントフォーク106を含み、フロントフォーク106は、その下端部で前輪101の前車軸101aを回転可能に支持する。
【0028】
後輪102は、スイングアーム107を介して揺動軸線A2周りに揺動可能に車体フレーム1に支持される。揺動軸線A2は車幅方向に延びる。後輪102は、車体フレーム1よりも後方に配置される。スイングアーム107は、その前端部で車体フレーム1に揺動可能に支持され、その後端部で後輪102の後車軸102aを回転可能に両持ち支持する。車体フレーム1及びスイングアーム107の間にはリアサスペンション108が架け渡される。
【0029】
後輪102は駆動輪である。駆動ユニット103は回転出力を発生する駆動源を有し、動力伝達機構104は駆動源からの回転出力を後車軸102aに伝達する。これにより後輪102が駆動源により発生された回転出力で回転駆動される。駆動ユニット103のケーシング部材103aは車体フレーム1に支持される。
【0030】
駆動ユニット103は、駆動源の一例としてエンジン110を有し、ケーシング部材103aの一例としてクランクケース111及びシリンダアセンブリ112を有する。シリンダアセンブリ112は、シリンダブロック113、シリンダヘッド114及びヘッドカバー115を含む。クランクケース111は、クランクシャフトを回転可能に支持する。シリンダアセンブリ112は、ピストンや動弁機構を収容して燃焼室を形成する。シリンダブロック113は、クランクケース112に結合され、ピストンをシリンダ軸線A3方向に往復動可能に収容する。シリンダヘッド114は、シリンダ軸線A3方向においてクランクケース112とは反対側でシリンダブロック113に結合され、燃焼室を形成する。ヘッドカバー115は、シリンダ軸線A3方向においてシリンダブロック113とは反対側でシリンダヘッド114を覆い、シリンダヘッド114と共に動弁機構を収容する。
【0031】
エンジン110は横置き型であり、クランクシャフトが車幅方向に延びる。エンジン110はL型であり、単一のシリンダアセンブリ112がクランクケース111の前上部に結合され、シリンダ軸線A3が当該前上部から上向きに(詳細には僅かに前傾しつつ)延びる。エンジン110は並列多気筒型であり、各気筒のシリンダ軸線A3同士が側面視で重なり、シリンダアセンブリ112が車幅方向に比較的長寸である。
【0032】
駆動ユニット103は、駆動源とユニット化されて駆動源からの回転出力を後輪102に伝達するための装置の一例として、変速機を有する。クランクケース111は、シリンダアセンブリ112から見て後方に突出し、その後部で変速機を収容する変速機ケース117を形成する。変速機は、駆動源からの回転出力を変速して変速機出力軸118に出力する。変速機出力軸118の車幅方向一端部(例えば、左端部)は、変速機ケース117の車幅方向一方側の側壁(例えば、左側壁)から車幅外方へ突出する。
【0033】
動力伝達機構104は、変速機出力軸118の車幅方向一端部(例えば、左端部)と、後車軸102bの車幅方向一端部(例えば、左端部)とに係合する。動力伝達機構104は、駆動ユニット103から後輪102に向けて車長方向に延び、車幅中心線から見て車幅方向一方側(例えば、左側)に配置される。動力伝達機構104は、例えばチェーン伝動機構である。
【0034】
次に、上記構成の自動二輪車100に好適に適用される本実施形態に係る車体フレーム構造について説明する。図1に示すように、車体フレーム1は、ヘッドパイプ2、メインフレーム3及びリアフレーム4を備える。
【0035】
ヘッドパイプ2は、両端で開放される金属(例えば鉄系金属)製の円筒状であり、車体フレーム1の前端部に位置する。前述のステアリングシャフト105は、ハンドル121と接続され、ヘッドパイプ2に挿通される。ステアリングシャフト105はヘッドパイプ2と同軸上に配置され、その共通軸線が前述の操舵軸線A1を成し、ヘッドパイプ2に操舵軸線A1周りに回転可能に支持される。ステアリングシャフト105の上端は、ブラケット122の下面に連結され、ハンドル121は、このブラケット122の上面に取り付けられる。ハンドル121は、左方及び右方それぞれに突出した一対のグリップ121a,121b(右グリップ121bは図3参照)を有する。運転者がグリップ121a,121bを把持してハンドル121を回動すると、ステアリングシャフト105が操舵軸線A1を回転軸線として回転し、前輪101が転向する。グリップ121a,121bは、先端に向かうにつれ、下方且つ後方へと延びる。グリップ121a,121bの先端は側面視でメインフレーム3と重なる。
【0036】
メインフレーム3はヘッドパイプ2から後方へ延びる。リアフレーム4はメインフレーム3に接続されてメインフレーム3から後方へ延びる。本実施形態では、メインフレーム3及びリアフレーム4がどちらも車幅方向に対を成している。メインフレーム3上にはハンドル121の後方に配置される燃料タンク123が設置され、リアフレーム4上には燃料タンク123の後方に配置されるシート124が設置される。
【0037】
一対のメインフレーム3は、ヘッドパイプ2に溶接され、ヘッドパイプ2から車幅方向に分かれて後方へ延びる。各メインフレーム3は、ヘッドパイプ2から後方へ延びる後方延在部と、この後方延在部の後端に位置する屈曲部6と、屈曲部6から下方に延びる下方延在部7とを有する。後方延在部は、駆動ユニット103が取り付けられる前後のユニットマウント部10a,10bを含む前フレーム部8と、前フレーム部8よりも後方の後フレーム部9とを含む。屈曲部6は後フレーム部9の後端部に設けられる。
【0038】
後ユニットマウント部10aには、シリンダアセンブリ112(例えば、シリンダヘッド114)の側壁後端部がボルト等の締結具81を用いて結合され、前ユニットマウント部10bには、シリンダアセンブリ112(例えば、シリンダブロック113)の側壁前端部がボルト等の締結具82を用いて結合される。締結具81,82は、マウント部10a,10bの車幅方向外側から内向きに挿入され、シリンダアセンブリ112に係合する。
【0039】
一対の下方延在部7の間にはブラケット30が配置され、ブラケット30はボルト等の締結具85を用いて一対の下方延在部7に結合される。ブラケット30は、右の下方延在部7(図2参照)の下端部にも、ボルト等の締結具(図示せず)を用いて結合される。各下方延在部7のうち締結具85が挿通される部位は、ジョイント部材24で構成され、右の下方延在部7のうち締結具が挿通される下端部はジョイント部材26R(図2参照)で構成される。
【0040】
ブラケット30は、概略矩形板状に形成されており、2つの面を前及び後に向けた状態とされる。ブラケット30は、左縁部にて左の下方延在部7に結合され、右縁部にて右の下方延在部7(図2参照)に結合される。ケーシング部材103aの後部(クランクケース112の後部、変速機ケース117)はブラケット30にボルト等の締結具(図示せず)を用いて結合される。ケーシング部材103a(クランクケース112、変速機ケース117)の後面はブラケット30の前面と対向している。締結具は、ブラケット30の後方から前向きに挿入され、ケーシング部材103の後部に係合される。
【0041】
左の下方延在部7は、その下端部で、ボルト等の締結具87を用いてサイドスタンド127を揺動可能に支持するスタンドブラケット126と連結される。左の下方延在部7のうち締結具87が挿通される部位は、ジョイント部材26Lで構成される。スタンドブラケット126は、前方に突出してケーシング103の下後部と側面視で重ねられる前方突出部126aを有する。前方突出部126aに車幅方向外側からボルト等の締結具88を内向きに挿し込むことで、ケーシング部材103aがスタンドブラケット126にも締結される。
【0042】
ブラケット30は駆動ユニット103だけでなく、自動二輪車100の後部に配置される各種部品の支持又は取付けに利用される。ブラケット30は、スイングアーム107を揺動可能に支持して車幅方向に延びるピボットシャフト(図示せず)を取り付けており、このピボットシャフトは、左右端部にてボルト等の締結具84を用いて一対の下方延在部それぞれに結合される。ピボットシャフトの中心軸線が前述した揺動軸線A2を成し、各下方延在部7のうち締結具84が挿通される部位は、ジョイント部材24で構成される。ブラケット30の上縁部には、リアサスペンション108の上端部を車幅方向の軸線周りに揺動可能に支持するサスペンション取付部38が設けられている。リアフレーム4の前端下部は、締結具84を用いてブラケット30と共に下方延在部7に共締めされる。なお、屈曲ジョイント部材21にはナット22が設けられており、リアフレーム4の前端上部は締結具83をナット22に螺合させることで、屈曲部6に締結される。
【0043】
下方延在部7は、屈曲ジョイント部材21よりも下方で車高方向に離れて配置された前述のジョイント部材24〜26を有する。また、屈曲ジョイント部材21とジョイント部材23、ジョイント部材24とジョイント部材25、ジョイント部材25とジョイント部材26は、パイプ部材によって車高方向に接続されている。
【0044】
このように、メインフレーム3は複数のパイプ部材及びジョイント部材を連結することで構成され、この連結には典型的には溶接が用いられる。一対のメインフレーム3は、ヘッドパイプ2を介して剛結合される。換言すれば、メインフレーム3は、後方延在部同士、屈曲部6同士又は下方延在部7同士を車幅方向に剛結合するクロスメンバを備えていない。このため、溶接歪などによって寸法誤差が生じても、メインフレーム3を容易に矯正することができる。例えば、シリンダアセンブリ112に設定された計4つの締結点を対応するユニットマウント部と車幅方向に重なるようにメインフレーム3を容易に矯正することができる。駆動ユニット103以外の部品も同様である。このため、自動二輪車100を容易に組み立てることができる。
【0045】
図2は、ヘッドパイプ2及びメインフレーム3の斜視図である。図2に示すように、前フレーム部8は、ヘッドパイプ2の上部から後方に延びる上側フレーム11と、ヘッドパイプ2の下部から後方に延びる下側フレーム12とを有する。上側フレーム11も下側フレーム12もパイプ部材で構成される。
【0046】
上側フレーム11及び下側フレーム12のうち一方は、その終端が他方よりも前方に位置する。本実施形態では、下側フレーム12は上側フレーム11よりも前側で終端する。後フレーム部9は、上側フレーム11から連続して後方へ延びている。上側フレーム11を構成するパイプ部材は、後フレーム部9も構成しており、上側フレーム11及び後フレーム部9は同一部品で一体化されている。当該パイプ部材は、その後端部にて屈曲ジョイント部材21の外周面に溶接されている。
【0047】
下側フレーム12の後端には、後エンジンマウント部10bが設けられている。すなわち、下側フレーム12を構成するパイプ部材は、その後端部にて前述したジョイント部材13の外周面に溶接されている。ジョイント部材13には上ガセットフレーム14も溶接されている。上ガセットフレーム14はジョイント部材13から後上方に延び、上側フレーム11又は後フレーム部9(すなわち、これらを構成するパイプ部材)に下側から溶接される。
【0048】
前フレーム部8は、下側フレーム12の前端部から下後方へ延びるアームフレーム15を有し、このアームフレーム15の後端には、前ユニットマウント部10bが設けられている。すなわち、アームフレーム15を構成するパイプ部材は、その後端部にて前述したジョイント部材16の外周面に溶接されている。ジョイント部材13には下ガセットフレーム17も溶接されている。下ガセットフレーム17はジョイント部材13から前下方に延び、アームフレーム15の後端部に上側から溶接される。
【0049】
前フレーム部8は、上側フレーム11を下側フレーム12に接続する連結フレーム18a〜18e,下側フレーム12を上側フレーム11に接続する連結フレーム18gを有する。各連結フレームは、車高方向に離れた2フレームを接続すべく車高方向に延びる。また、連結フレームは車長方向にも延び、車高方向に離れた2フレームを車長方向に接続している。すなわち、各連結フレームにおいては、一端側の溶接継手が、他端側の溶接継手と車長方向に離れている。かかる連結フレームの存在により、前フレーム部8は、複数の三角形が、上側フレーム11及び下側フレーム12の間又は下側フレーム12及びアームフレーム15の間で、車長方向に並ぶように構成される。これにより、一対の前フレーム部8は、クロスメンバ無しで一定の柔軟性を確保しながらも、駆動ユニット103(図1参照)を取り付けるために必要な剛性を確保することもできる。剛性向上をトレリス構造によって実現するので、軽量化を図ることもできる。
【0050】
前フレーム部8がこのように構成されることで、メインフレーム3は、ヘッドパイプ2から連続するトレリス部51と、トレリス部51から後方に延びる非トレリス部52とを有する。トレリス部51は、前フレーム部8によって構成され、ヘッドパイプ2から上下のガセットフレーム14,17まで後方へ延びている。非トレリス部52は、上側フレーム11及び後フレーム部9を成す1本のパイプ部材で構成されている。非トレリス部52は、格子状に形成されておらず、上ガセットフレーム14の上側溶接継手(すなわち、トレリス部51の後上端)から線状に後方へ延びている。
【0051】
トレリス部51は、トレリス構造(格子構造)を実現している。換言すると、一対の前フレーム部8は、ヘッドパイプ2から車幅方向に分かれた一対の仮想面に沿って異なる向きに配置された複数のパイプ部材を互いに連結してなる。一つ一つのパイプ部材は互いに連結されることで仮想面上に格子を成す。仮想面は、概略車高方向及び車長方向に延びる。仮想面は、平面でもよいし、車高方向、車長方向、車幅方向又はこれらに傾斜する方向の軸線周りに捩じられた曲面でもよい。
【0052】
本実施形態では、仮想面は下方に向かうに連れて車幅方向外方に張り出している。この張出しのため、仮想面は下方に向かうに連れて車幅方向外方に向かうように傾斜する。あるいは、上部が下部よりも車幅方向内方に向くように車長方向軸線周りに捩じられる。また、仮想面は後方に向かうに連れて車幅方向外方に張り出している。この張出しのため、仮想面は前方に向かうに連れて車幅方向外方に向かうように傾斜する。あるいは、前部が後部よりも車幅内方に向くように車高方向軸線周りに捩じられる。各パイプ部材は、このような仮想面に沿って配置されるので、直線状である必要はなく適宜湾曲していてもよい。なお、図2は、トレリス部51を構成するパイプ部材をR線と共に図示しており、このR線は仮想面を定義している。
【0053】
ヘッドパイプ2はトレリス部51の前辺を規定する。アームフレーム15(及び下側フレーム12の前端部)はトレリス部51の下辺を規定する。上下ガセットフレーム14,17はトレリス部51の後辺を規定する。上側フレーム11はトレリス部51の上辺を規定する。上側フレーム11と一体化された後フレーム部9は、非トレリス部52を規定しており、非トレリス部52は、トレリス部51の上辺及び後辺の交差部位から上辺を後方へ延長することで形成されている。
【0054】
非トレリス部52の下方には、側方に広く開放された装備品空間20が形成される。車体フレーム1の自動二輪車100への適用状態において、装備品空間20は、クランクケース111(図1参照)の上方且つシリンダアセンブリ112(図1参照)の後方に位置する。装備品空間20は、非トレリス部52、トレリス部51の後辺(特に、上ガセットフレーム14)及び下方延在部7(特に、屈曲ジョイント部材21とジョイント部材23との間を接続するパイプ部材)で規定された開口を介し、側方に広く開放される。この装備品空間20には、どのような装備品が設置されてもいが、長尺の配管を要する装備品の設置や、車幅方向に長尺の装備品の設置に特に有益である。広い開口を活用して、このような配管を装備品空間の外から内に進入させたり内から外へと退出させたりすることができる。また、装備品の車幅方向端部を突出して配置することが許容される。
【0055】
図3図1に示す車体フレーム構造の平面図である。図1及び図3に示すように、本実施形態では、装備品の一例としての過給機ユニット130が装備品空間20内に設置される。過給機ユニット130は、エアを過給する過給機131を有する。過給機は装備品空間の前述の開口を介して車幅方向端部が装備品空間内から外へと突出している。また、自動二輪車100は、エアを過給機131に供給するエア供給ダクト132を備える。エア供給ダクト132の上流端は例えば自動二輪車100の前部に配置され、走行風を利用して外気からエアを取り込みやすい。エア供給ダクト132は、前部フレーム部8の車幅方向外方を車長方向に延在しており、非トレリス部52(後フレーム部9)の下方で装備品空間20内へと進入している。エア供給ダクト132の下流端は、過給機131に接続される。
【0056】
なお、過給機ユニット130は、過給されたエア(給気)を取り入れる給気チャンバ133と、過給機131からの給気を給気チャンバ133に送る上流給気通路134(図3参照)とを有する。給気チャンバ133は、給気を清浄化するフィルタエレメント(図示せず)を内蔵し、いわゆるエアクリーナボックスとしても機能する。給気チャンバ133のクリーン側は、下流給気通路135を介して前述した燃焼室に連通する。下流給気通路135はシリンダヘッド114の後壁を介してケーシング部材103a内へと向かう。下流給気通路135内及び/又は給気チャンバ133のクリーン側内には、インジェクタ(図示せず)からの燃料が噴射される。
【0057】
なお、排気管140(図1参照)は、シリンダヘッド114の前壁から下方へ延び、最終的に自動二輪車100の後部に配置されたマフラ(図示せず)に接続される。過給機131がクランクシャフトで駆動される機械式過給機であると、排気管140の取回しが複雑化せず、また、装備品空間20の周辺が排熱の影響を受けにくい。
【0058】
装備品空間20には、過給機ユニット130の他、ABSユニットを設置することもできる。ABSユニットはブレーキ油を通流させる1以上の配管と接続されるケーシングを有する。このケーシングが装備品空間20に配置される場合、後フレーム部9の下方の開放領域を活用して、当該配管が装備品空間20の外から内へと進入し又は内から外へと退出することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、下側フレーム12が上側フレームよりも前方で終端するので、上側フレーム11を延長することで非トレリス部52又は後フレーム部9が構成され、装備品空間20は、下側フレーム12の終端よりも後方であり上側フレーム及びこれを延長した後フレーム部9の車幅方向間に装備品が収容される。しかし、上側フレーム11が下側フレーム12よりも前方で終端してもよい。その場合、上側フレーム11の終端よりも後方であって下側フレームの車幅方向間に装備品が収容されてもよい。また、下側フレーム11の上方で装備品空間20が側方に開放されていてもよい。
【0060】
本実施形態では、上側フレーム11が、ヘッドパイプ2との接続部分を通過して操舵軸線A1に垂直な仮想平面VP1(図1参照)よりも上方に突出するようにして、車長方向に延びる。上側フレーム11はトレリス部51の上辺を規定しており、非トレリス部52はこの上辺(上側フレーム11)を後方へ延長することで形成される。このため、装備品空間20の周辺において、一対のメインフレーム3で囲まれる領域を車高方向に拡大することができる。よって、高背の装備品であっても一対のメインフレーム3で車幅方向に保護することができる。また、装備品空間20の側方開口を上方へ広げることができ、装備品及び配管の配置自由度を向上することができる。
【0061】
図3では、ハンドル121が、車両を真っ直ぐ進行させる中立状態で図示されている。ハンドル121が中立状態にあれば、平面視において、グリップ121a,121bは、ヘッドパイプ2を通過する車幅中心線WCを基準に左方及び右方にそれぞれ対称に延在し、そのため、どちらのグリップ121a,121bの端部もメインフレーム3から比較的遠ざかる。
【0062】
車両を左旋回させたいとき、運転者はハンドル121を矢印LTの方向(平面視反時計回り方向)に回動させる必要がある。このとき、右グリップ121bはメインフレーム3から前方へ更に遠ざかる一方、左グリップ121aは、中立状態から後方且つ車幅方向内方へ移動し、そのため、左メインフレーム3、特に前フレーム部8及びトレリス部51に近づいていく。
【0063】
前述したように、グリップ121a,121bはブラケット122から下方且つ後方へ延在しており、車高方向においてメインフレーム3から離れておらず側面視でメインフレーム3と重ねられている(図1参照)。メインフレーム3は、前述のように車高方向にも延在する仮想面上に配置される複数のパイプ部材で構成されたトレリス部51を有し、その上辺を規定する上側フレーム11は仮想平面VP1よりも上方へ突出する。そのためハンドル121とメインフレーム3との側面視オーバーラップが生じやすい。このようなことから、本実施形態では、左グリップ121aの端部のメインフレーム3との干渉、又は左グリップ121aを把持する拳のメインフレーム3との干渉を避けるようにして、車両の最大舵角を設定する必要がある。
【0064】
左右のグリップ121a,121bは中立状態で車幅中心線WCに対して対称であり、一対のメインフレーム3は車幅中心線WCに対して概略対称に形成される。このため、車両を右旋回させるべくハンドル121を矢印RTの方向(平面視時計回り)に回動させる場合も、左旋回の場合と同様である。以下、左旋回すべくハンドル121が中立状態を基準として回動されている状態、右旋回すべくハンドル121が中立状態を基準として回動されている状態を纏めて「旋回操作状態」と称する。
【0065】
上側フレーム11と下側フレーム12との間には、旋回操作状態のハンドル121の端部から車幅方向内方に窪む退避空間53が形成される。旋回操作状態のハンドル121は、退避空間53内に収められる。上側フレーム11及び下側フレーム12は、前述のとおり前フレーム部8及びトレリス部51を構成しており、退避空間53は、前フレーム部8又はトレリス部51に形成されているともいえる。
【0066】
前述のとおり、トレリス部51は下方に向かうに連れて車幅方向に張り出した仮想面上に設けられ、また、上側フレーム11はトレリス部51の上辺を定義する。すると、上側フレーム11は、下側フレーム12よりも車幅方向内方でヘッドパイプ2から後方へ延びる。一対のメインフレーム3は車幅方向に分かれて後方へ延びるところ、上側フレーム12の前端部は、車幅中心線WCに対して傾斜角θUだけ車幅方向外方へ傾斜しながら、ヘッドパイプ2から後方へ延びている。一方、下側フレーム12の前端部は、車幅中心線WCに対して傾斜角θLだけ車幅方向外方へ傾斜しながら、ヘッドパイプ2から後方へ延びる。傾斜角θLはθUよりも大きく、下側フレーム12は上側フレーム11から車幅方向外方に離れてヘッドパイプ2から後方へと延びる。退避空間53はこのようなトレリス部51に形成され、下側フレーム12よりも上方且つ車幅方向内方に位置する。
【0067】
上側フレーム11と下側フレーム12との間には、連結フレーム18a〜eが設けられる。連結フレーム18a〜eは、退避空間53を避けた位置に配置される。すなわち、連結フレーム18a〜eは、旋回操作状態のハンドル121(グリップ121a,121b)の端部と側面視で重ならないような位置に配置される。逆にいえば、連結フレーム18〜eは退避空間53の周囲に配置され、その一部は退避空間53を規定する。
【0068】
図2に戻り、連結フレーム18a〜eは後から符号の順で配置される。連結フレーム18a,18c,18eは、下側フレーム12から前上方へ延びて上側フレーム11に溶接されている。連結フレーム18aは、下側フレーム12の後端部に溶接されており、上側フレーム11及び上ガセットフレーム14と共に逆三角形を形成する。連結フレーム18cは、連結フレーム18a,18c間に設けられ、連結フレーム18aからの距離が相対的に長くなるように配置される。連結フレーム18bは、連結フレーム18cから後上方へ延びて上側フレーム11に溶接され、上端溶接継手は連結フレーム18aよりも後方に設定される。連結フレーム18dは、連結フレーム18eから後上方へ延びて連結フレーム18dの上端部に溶接される。連結フレーム18b〜18eは、トレリス部51の前部で、車長方向に密に並んだ複数の三角形を形成する。中央の連結フレーム18b,18cは、最後方の連結フレーム18aと比較的離れて配置されている。そのため、連結フレーム18a〜cは、上側フレーム18a及び下側フレーム18bと共に、車長方向に比較的大きい多角形状(図示例では五角形状)の開口54を形成する。
【0069】
図3に戻り、ハンドル121が旋回操作状態にあると、ハンドル121(グリップ121a,121b)の端部が開口54に近づいていく。この開口54の周囲が退避空間53であり、連結フレーム18a〜cは退避空間53を規定している。連結フレーム18aと連結フレーム18又は18cとは、旋回操作状態のハンドル121の端部が開口54に近づいてその周囲の退避空間53に収まることができるように、車長方向に互いに離れて配置されている。
【0070】
以上のとおり、本実施形態に係る車体フレーム構造は、ハンドル121と接続されるステアリングシャフト105が挿通されるヘッドパイプ2と、ヘッドパイプ2から車幅方向に分かれて後方に延びる一対のメインフレーム3とを備える。各メインフレーム3は、ヘッドパイプ2の上部から後方に延びる上側フレーム11と、ヘッドパイプ2の下部から後方に延びる下側フレーム12と、を有する。車高方向において上側フレーム11と下側フレーム12との間に旋回操作状態のハンドル121の端部から車幅方向内方に窪む退避空間53が形成されている。
【0071】
これにより、旋回操作状態のハンドル121及びハンドル121(グリップ121a,121b)を把持する拳が、上側フレーム11と干渉するのを防ぐことができ、操舵操作性を向上することができる。退避空間53の存在により干渉を防止するので、最大舵角を大きくとることが許容される。また、上側フレーム11及び下側フレーム12各々の延在方向について選択肢が増え、車体フレーム1の設計自由度が向上する。
【0072】
上側フレーム11は、ヘッドパイプ2との接続部分を通過してステアリングシャフト105の回転軸線(操舵軸線A1)に垂直な仮想平面VP1よりも上方に突出して、車長方向へ延びている。このようにすると、上側フレーム11の下面を上方に位置させてその下方の空間を大きくすることができる。これにより、過給機ユニット130などの装備品の配置自由度が向上する。このように装備品の配置便宜を図るべく上側フレーム11を上方に配置することで、旋回操作状態のハンドル121とメインフレーム3とが側面視で重なりやすくなるところ、前述のように退避空間53を設けている。このように本実施形態では、操舵操作性の向上、最大舵角の確保、車体フレームの設計自由度向上と併せて、装備品配置自由度の向上を同時に達成することができる。
【0073】
車体フレーム構造が上側フレーム11を下側フレーム12と車長方向に連結する連結フレーム18a〜eを有し、連結フレーム18a〜eは退避空間53を避けた位置に配置される。こうすることで、連結フレームで車体フレームの剛性を確保しながら、その連結フレームがハンドル121と干渉するのを防止し、操舵操作性が向上する。
【0074】
上側フレーム11は、退避空間53に隣接する部分で下側フレーム12よりも車幅方向中央寄りに配置される。こうすると、下側フレーム12の上方で上側フレーム11の車幅方向外側の領域に拳を配置しやすくなる。旋回操作時に運転者の拳が上側フレーム11に近接するのを防ぎ、運転者は窮屈な姿勢をとらずとも旋回走行可能になる。
【0075】
メインフレーム3は、ヘッドパイプ2から連続するトレリス部51と、トレリス部51から後方に延びる非トレリス部52とを有し、トレリス部51は、上側フレーム11、下側フレーム12及び上側フレーム11と下側フレーム12との間を接続する連結フレーム18a〜eにより構成され、非トレリス部52が、上側フレーム11から連続して線状に形成される。こうすると、非トレリス部52も上方に配置することができ、装備品を配置しやすくなる。
【0076】
少なくとも上側フレーム11と下側フレーム12の前部、より具体的には退避空間53に対向する部分は、カウルで覆われずに露出することが好ましい。これにより、カウルで退避空間53が埋められたり小さくなったりするのを防ぐことができる。よって、ハンドル121と車体フレーム1との干渉を防ぎながら、ハンドル121が通過しうる領域よりも上方に車体フレーム1の一部を配置することができる。
【0077】
車体フレーム1は、退避空間53よりも前方且つ上方の位置でトレリス構造を構成する。これにより軽量化を図りながら、力がかかりやすいヘッドパイプ2周りでの剛性低下を防ぐことができる。
【0078】
退避空間53に形成される開口54は、退避空間53よりも前方で、フレーム間に形成される開口54よりも大きく形成される。具体的には退避空間53よりも前方でフレーム間に形成される開口54よりも側面視において仮想平面VP1が延びる方向の寸法が大きく形成される。また、退避空間53は、側面視において仮想平面VP1の上方に上端が位置し、仮想平面VP1の下方に下端が位置することで、運転者の拳がフレームに干渉するのをより確実に防ぐことができる。
【0079】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、操舵操作性を保ちつつ、車体フレームの設計自由度を向上することができるとの作用効果を奏し、自動二輪車やATVなど鞍乗型車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 車体フレーム
2 ヘッドパイプ
3 メインフレーム
11 上側フレーム
12 下側フレーム
18a〜f 連結フレーム
51 トレリス部
52 非トレリス部
53 退避空間
100 自動二輪車
105 ステアリングシャフト
121 ハンドル
130 過給機ユニット
131 過給機
132 エア供給ダクト
A1 操舵軸線
VP1 仮想平面
図1
図2
図3