(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記方法が、塩化マグネシウムの溶液を少なくとも300℃の温度で熱分解工程に供し、それによって、塩化マグネシウムを酸化マグネシウムと塩化水素に分解する追加の工程を含み、該追加の工程が上記工程bの後に行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
炭素源が、発酵ブロス中で微生物によって発酵されて乳酸を形成し、そしてマグネシウムの酸化物、水酸化物もしくは炭酸塩から選択される塩基を添加することによって、上記乳酸の少なくとも一部を中和し、それによって乳酸マグネシウムを得る発酵工程をさらに含み、該発酵工程が上記工程aの前に行われる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に従う方法は、水性液体から開始する。水性液体は、乳酸、メタノール、および上記液体の重量に基づいて計算して少なくとも5重量%の、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび塩化亜鉛から選択される溶解した塩化物塩を含む。
【0012】
水性液体中の乳酸濃度は、広範囲で変わりうる。最大値として、50重量%の値が挙げられうる。最小として、1重量%の値が挙げられうる。その値未満では、経済的運転が困難でありうる。乳酸濃度は、5〜40重量%、特に10〜40重量%、より特に15〜35重量%の範囲であることが好ましい。20〜35重量%の範囲が特に魅力的でありうる。
【0013】
水性液体中に存在するメタノールの量は、その系に存在する乳酸の量によって決定される。乳酸とメタノールとのモル比は一般に、1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:5の範囲である。
【0014】
乳酸およびメタノールに加えて、水性液体は、液体の重量に基づいて計算されて少なくとも5重量%の、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび塩化亜鉛から選択される溶解した塩化物塩を含む。溶解した塩の量が5重量%未満であると、本発明の有利な効果が得られない。溶解した塩化物塩が、少なくとも10重量%、特に少なくとも15重量%の量で存在するのが好ましくありうる。塩化物塩の量の最大は、本発明に従う方法において重要でない。最大は、媒体中の問題になっている塩の溶解度に依存する。一般的な値として、40重量%の最大が挙げられうる。水性液体が、10〜30重量%、特に15〜25重量%の溶解した塩化物塩を含むのが好ましくありうる。塩化物塩は、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび塩化亜鉛から選択されうる。塩の混合物も当然適用されうる。塩化マグネシウムの使用が好ましいと考えられる。なぜならば、高い分離効率およびおそらく高められた反応速度の確保において特に有効であると考えられるからである。さらに、塩化マグネシウムの使用は、熱分解工程を使用することにより、魅力的な統合された方法を可能にする。これは、下記でより詳細に述べられる。
【0015】
乳酸、メタノールおよび塩化物塩を含む水性液体は、種々の様式で得られうる。一実施形態では、乳酸、メタノールおよび塩化物塩が、水中で一緒にされる。しかし、多くの特に魅力的な可能性がある。
【0016】
一実施形態では、乳酸、メタノールおよび塩化物塩を含む水性液体は、乳酸のマグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩を含む水性液体を用意する工程、水性液体をHClの添加により酸性化する工程、およびHClの添加の前、添加の後または添加と同時にメタノールを添加する工程によって得られる。酸性化工程は、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウムまたは乳酸亜鉛の乳酸への転化および同時に対応する塩化物塩の形成をもたらす。乳酸塩およびHClの濃度を選択することにより、乳酸および塩化物塩を上述した範囲で含む液体が得られうる。
【0017】
望むならば、これらの成分の濃度が、種々の様式で、例えば乳酸もしくは塩化物塩を添加することにより、または濃縮工程を行う(ここで、水が系から除去される)ことにより、高められうる。
【0018】
HClの存在は、反応速度をさらに増加させうる。したがって、一実施形態では、反応混合物が、追加のHClを、例えばカルボン酸の量に基づいて計算されて0.5〜5重量%の量で含む。HClは反応混合物に別個に添加されうるが、本発明の一実施形態では、酸性化プロセスが、乳酸塩の中和に必要なHClの量と比較して過剰のHClを使用することにより行われる。この実施形態では、添加される過剰量のHClは、例えば乳酸塩を乳酸に転化するために添加されるHClの量に基づいて計算されて、0.5〜5重量%の量でありうる。
【0019】
乳酸、メタノールおよび塩化物塩を含む水性液体は、乳酸メチルの形成をもたらす反応条件に付される。
【0020】
反応条件は一般に、20〜150℃、特に30〜130℃、より特に50〜100℃の範囲の温度を含む。
【0021】
反応中の圧力は、水性液体が液状のままである限り、重要でない。一般に、反応は、1〜5バールの圧力で、好ましくは大気圧条件で行われる。
【0022】
乳酸、メタノールおよび塩化物塩を含む水性液体を反応条件に付し、それによって乳酸メチルエステルを得る工程は、最終の液体において行われることができる。しかし、形成中、例えば上述した酸性化反応中の液体において行われることもできる。同様に、後述する分離工程は、エステル化反応が終了した後に行われることができるが、エステル化工程中に行われることもでき、いくつかの実施形態では、連結された酸性化/エステル化工程中に行われることができる。種々の実施形態が後述される。
【0023】
本発明に従う方法では、抽出溶媒としても示される抽出剤は、乳酸メチルを形成する前、間および/または後に反応混合物に供給される。
【0024】
抽出溶媒の存在は、抽出剤および乳酸メチルを含む液体有機層ならびに溶解した塩化物塩を含む水性層を含む2相系の形成をもたらす。系は一般に、過剰のメタノールを含み、過剰のメタノールは、抽出溶媒の性質に応じて、水層および/または有機層中に存在しうる。任意の残存する乳酸は、抽出溶媒の性質に応じて、水層および/または有機層中に存在しうる。
【0025】
2相系は、液液分離工程に付され、ここで乳酸メチルおよび抽出溶媒を含む有機相が、溶解した塩化物塩を含む水溶液から分離され得る。
【0026】
抽出溶媒は、乳酸メチルの形成が終了したときに、反応混合物に添加されることができる。抽出溶媒はまた、反応の開始時に、または反応中に添加されることもできる。組み合わせも当然可能である。抽出剤がエステル化反応の前に反応媒体に供給される実施形態は、何らかの乳酸メチルエステルが形成されるとすぐに抽出溶媒層に移動するという利点を有する。乳酸メチルエステルは、それによって、反応混合物から効率的に除去されるので、これはエステル化速度の増加をもたらす。
【0027】
抽出溶媒は、以下の要件を満たすべきである:2相系を形成することが可能であるべきであり、乳酸、メタノールまたは乳酸メチルと実質的な程度まで反応すべきではない(例えば、仮にあったとしても、2%未満)。抽出溶媒は、好ましくは、蒸発によって除去されることができるような、例えば、200℃未満の沸点を有する。
【0028】
適切な抽出溶媒の例は、脂肪族および芳香族炭化水素、例えば、アルカンおよび芳香族化合物、ケトンならびにエーテルである。種々の化合物の混合物もまた使用されうる。特定の群の抽出溶媒を選択することが本発明の好ましい実施形態であることが見出された。なぜならば、抽出溶媒は、速い反応速度を、高い乳酸メチル収率および乳酸メチルの乳酸からの効率的な分離、および効率的なさらなる処理に役立つ抽出溶媒中の高い乳酸メチル濃度と組み合わせるからである。したがって、抽出溶媒は、C5+ケトン、C3〜C10エーテルおよびC6〜C10芳香族化合物からなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含むことが好ましい。
【0029】
一実施形態では、抽出溶媒は、C5+ケトンを含み、ここで、C5+は少なくとも5個の炭素原子を持つケトンを表す。C9+ケトンの使用はあまり好ましくない。なぜならば、このタイプの化合物における乳酸メチルの溶解度は限定されているからである。したがって、C5〜C8ケトンの使用が好ましい。メチル−イソブチル−ケトン(MIBK)の使用が特に魅力的であることが見出された。
【0030】
適切なC3〜C10エーテルの例は、C3〜C6エーテル、例えば、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)およびジエチルエーテル(DEE)である。
【0031】
適切なC6〜C10芳香族化合物の例としては、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンが挙げられる。
【0032】
C5+ケトンおよびC3〜C10エーテルから選択される1つまたは複数の化合物、特にC5〜C8ケトンを含む抽出溶媒が特に好ましいと考えられる。なぜならば、これらの化合物の使用は、高い乳酸メチル濃度を有する抽出溶媒が得られ得るので、効率的なプロセスをもたらすことが見出されたからである。示された化合物の選択の利点を得るために、抽出溶媒は、適切なまたは好ましい抽出溶媒として上述された化合物を、少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%、より特に少なくとも90重量%含むことが好ましい。
【0033】
本発明において使用される抽出溶媒の量は一般に重要でない。最小量は、有効な分離プロセスを確保するために必要な量によって決定される。最大量は、さらなる抽出溶媒の追加が改善された分離をもたらさず、反応器容積の増加のみをもたらす場合には、商業的運転によって決定される。一般的な範囲として、1:0.01〜1:10、特に1:0.1〜1:10の範囲内の(水+乳酸+メタノール+塩+乳酸メチル):抽出溶媒の体積比が挙げられうる。
【0034】
系に存在する乳酸メチルの少なくとも80%、特に少なくとも90%、より特に少なくとも95%、さらにより特に少なくとも98%が液体有機層中に存在することが好ましい。液体有機層は、典型的には、20重量%未満の水、より特に10重量%未満の水、さらにより特に5重量%未満の水を含む。
【0035】
有機相中のエステルと水性相との間の効率的な分離は、例えば、多段向流操作を実行することによって得られることができる。
【0036】
水性層は、上述したように、溶解した塩化物塩、および好ましくは5重量%未満の乳酸メチル、より好ましくは2重量%未満の乳酸メチル、さらにより好ましくは1重量%未満の乳酸メチルを含む。水性層は、好ましくは、系に供給された乳酸の総量の5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満を含有する。
【0037】
本発明に従う方法は、好ましくは、系に最初に供給された乳酸の量に基づいて計算された、転化された乳酸の量で表されて、少なくとも90%の転化を示す。より好ましくは、転化は少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%である。
【0038】
本発明に従う方法は、系に最初に供給された乳酸の量から計算された理論収量に基づいて計算された、上記方法から生じる乳酸メチルエステルの量で表されて、少なくとも90%の収率まで運転されることができる。好ましくは、収率は少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%である。本発明に従う方法は、例えば、多段向流プロセスの使用と組み合わせて、適切な再循環工程がプロセス設計の中に組み込まれることが確保される場合は特に、そのような高い収率を得ることができることが見出された。
【0039】
上述したように、エステル化反応中の溶解した塩化物塩の存在は、反応速度の増加をもたらす。溶解した塩化物塩の存在は、抽出による乳酸メチルエステルの分離を高めることがさらに見出された。特に、溶解した塩化物塩の濃度の増加は、有機層と水性層との間の乳酸メチルのより高い分配係数をもたらし得、有機相における改善された乳酸メチル収率および水性層のより低い有機含有量を結果する。したがって、塩化物塩溶液は比較的高濃度であることが好ましい。この実施形態では、水性液体中の塩化物塩濃度は、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、さらにより好ましくは少なくとも20重量%であることが好ましくありうる。
【0040】
溶解した塩化物塩を含む水性溶液から乳酸メチルおよび抽出溶媒を含む有機相が分離される液液分離を実行する工程は、液液分離のための当該技術分野で知られている方法によって行われることができる。液液分離のための適切な装置および方法の例としては、デカンテーション、沈降、遠心分離、プレートセパレーターの使用、コアレッサーの使用およびハイドロサイクロンの使用が挙げられる。異なる方法および装置の組み合わせもまた用いられうる。
【0041】
本発明の方法は、エステル化に先立ってまたはエステル化中の水分除去工程をさらに含みうる。例えば、水は、メタノールを添加する前であるが、塩化水素を添加した後に除去されうる。このような工程は、塩化物塩のより高い濃度および/または乳酸のより高い濃度を可能にしうる。これは、エステル化反応速度を増加させ、および/または抽出溶媒中の乳酸メチルの量を増加させうる。そこまで濃縮させることができるところの好ましい乳酸濃度は、水性混合物について上述されている。沈殿した塩の存在は追加の利点を提供しないで、処理問題をもたらしうるので、上限は、溶液中の塩化物塩の溶解度から得られうる。
【0042】
上述したように、本発明において使用される塩化物塩は塩化マグネシウムであることが好ましい。この塩が好ましい1つの理由は、塩化物塩溶液の魅力的な処理方法、すなわち、熱分解による方法を可能にするからである。したがって、本発明の一実施形態では、分離工程から生じる塩化マグネシウム溶液が、熱分解工程に供給され、そこで、酸化マグネシウムおよび塩化水素に転化される。熱分解のプロセスはまた、熱的加水分解(thermal hydrolysis)および熱加水分解という用語でも知られている。
【0043】
熱分解は一般に、少なくとも300℃の温度で実施される。好ましくは、熱分解は、少なくとも350℃の温度で実施される。エネルギーコストのために、温度は、好ましくは1000℃未満、より好ましくは800℃未満である。例えば、熱分解が実施される温度は、350〜600または400〜450℃でありうる。
【0044】
好ましくは、塩化マグネシウム溶液は、15〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%の塩化マグネシウム濃度を有する。溶液中に存在する塩化マグネシウムの量が多すぎると、熱加水分解ユニットに入った後に、塩化マグネシウムの沈殿をもたらしうる。望ましい塩化マグネシウム濃度を得るために、水が、本発明の方法において回収された塩化水素溶液に添加される、または塩化水素溶液から除去されうる。
【0045】
熱分解を実施するための適切な装置は、当技術分野において知られている。例えば、噴霧焙焼炉または流動床焙焼炉が使用されることができる。このような装置は、例えば、SMS Siemag、Andritz.Tenova、CMIおよびChemlineで得られることができる。
【0046】
熱分解において得られる酸化マグネシウムは、固形状である。望むならば、発酵プロセスにおいて特に中和剤として使用するために再循環されることができる。MgOは直接使用されることができるが、水と反応させることによって水酸化マグネシウムに転化することも可能である。熱分解において得られる塩化水素は、望むならば、酸性化工程において使用されうる。
【0047】
一実施形態では、本発明は、発酵工程による乳酸の製造から乳酸メチルエステルを形成するまでのすべての工程を包含する統合された方法に関する。これは、種々の工程の効率的な統合および高い乳酸メチル収率に役立つ。
【0048】
望むならば、乳酸メチルをアクリル酸メチルに転化する工程もまた提供されることができる。
【0049】
したがって、一実施形態では、本発明に従う方法は、乳酸塩を含む水性供給物が形成される発酵工程をさらに含む。このような工程は、典型的には、微生物によって炭素源を発酵させて乳酸を含む発酵培地を形成するサブステップ、および中和剤を添加することにより望ましいpHを確立して対応する乳酸塩を形成するために、(部分的に)発酵培地を中和させるサブステップを含む。中和剤は、この場合、好ましくはカルシウム塩基、亜鉛塩基またはマグネシウム塩基、より特にマグネシウム塩基である。続いて、バイオマスは、望むならば、例えば、(限外)濾過、遠心分離またはバイオマスのデカンテーションによって発酵培地から分離されうる。バイオマスの除去は、より低い汚染物質含有量などの、よりよい性質を持つ最終生成物をもたらすことが一般に見出されている。汚染物質は、多くの場合、除去するのが困難である着色化合物の形成を結果するので、より低い汚染物質含有量はまた、生成物のよりよい色をもたらす。したがって、バイオマス除去工程を行うことが好ましい。バイオマスの存在はまた、生成物の損失をもたらし、液液分離を妨げる、いわゆるクラッド形成に影響を与えうるので、これはさらに好ましい。
【0050】
上述したように、熱分解工程において得られた酸化マグネシウムは、沈殿工程において中和剤またはその前駆体として再循環されることができる。
【0051】
一実施形態では、本発明に従う方法は、乳酸メチルが触媒の存在下で脱水反応に付されてアクリル酸メチルを形成する工程をさらに含む。上記方法は、気相中で適切に行われる。反応温度は、例えば、300〜500℃である。反応圧力は、例えば、0.5〜3バールの範囲であり、適切には大気圧である。希釈により分圧を減少させるために、不活性ガスが添加されうる。適切な触媒としては、当該技術分野で知られている脱水素触媒が挙げられる。例としては、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウムおよびこれらの組み合わせをベースとする触媒が挙げられる。適切な促進剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸銅、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムが挙げられる。
【0052】
図1は、統合された方法に組み込まれた本発明に従う方法を図示する。発酵プロセスは、乳酸を生成する発酵反応器(1)中で行われる。発酵中に塩基が添加され(図示せず)、乳酸塩の形成をもたらす。塩基は、好ましくは、カルシウム塩基、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウムもしくは炭酸カルシウム、マグネシウム塩基、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムもしくは炭酸マグネシウム、または亜鉛塩基、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛もしくは炭酸亜鉛である。マグネシウム塩基の使用が好ましい。乳酸塩、好ましくは乳酸カルシウム、乳酸マグネシウムまたは乳酸亜鉛、特に乳酸マグネシウムを含む生成物流(2)は、発酵反応器から取り出され、酸性化/エステル化反応器に供給される。望むならば、バイオマス除去などの中間精製工程が当該技術分野で知られている様式で行われうる。酸性化/エステル化反応器(3)において、ライン(14)を通ってメタノールが添加され、ライン(9)を通って塩化水素が添加される。塩化水素は、気相中または水溶液中に存在しうる。塩化水素は、メタノールの添加に先立って、メタノールの添加と同時に、またはメタノールの添加の後に添加されうる。抽出溶媒はライン(16)を通って供給される。反応器は、エステル化条件に付される。次に、分離工程が行われる。図において、これは別個の工程(5)として示されるが、エステル化反応器中で行われうる。分離工程は、塩化物塩含む水性流(6)、ならびに抽出溶媒および乳酸メチルを含む有機相を生じさせる液液分離工程を包含する。塩化物塩が塩化マグネシウムである場合、流れ(6)は熱分解工程(7)に供給されることができ、ここで、塩化マグネシウム水溶液が分解されて酸化マグネシウムおよび塩化水素が形成され、酸化マグネシウムはライン(8)を通って除去され、塩化水素はライン(9)を通って除去される。塩化水素は、図中に示されるように、ガスとして、または水性液体に吸収されて溶液を形成した後のいずれかで、酸性化工程に再循環されうる。酸化マグネシウムは、直接に、または水酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムに転化された後に、発酵工程(1)に(図示されていないラインを介して)再循環されうる。分離工程(5)から除去された生成物流(10)は、抽出溶媒中の乳酸メチルを含む。エステル化反応は一般に、余剰のメタノールの存在下で行われるので、生成物流は一般に、メタノールも含む。生成物流(10)は、乳酸メチルエステルからメタノールおよび抽出溶媒が分離される分離工程(11)に供給されうる。分離工程は、乳酸メチルエステルを含む生成物流(12)、メタノール供給物(14)に供給されることができるメタノール流(13)、および抽出溶媒再循環流(16)を生じさせる。乳酸および任意選択の縮合生成物を含有しうる底部流(15)が存在しうる。この流れは、存在する場合には、エステル化工程に再循環され、あるいは処分されうる。
【0053】
図2は、
図1の方法の変形を示す。
図2の方法において、酸性化工程およびエステル化工程は分離され、酸性化工程は、塩酸がライン(9)を通って供給される酸性化反応器(31)中で行われる。乳酸メチルエステルおよび塩化物塩を含む水性液体である酸性化された生成物は、メタノールがライン(14)を通って供給されるところのエステル化反応器(33)にライン(32)を通って供給される。
【0054】
本発明の一実施形態では、エステル化工程および液液分離工程が、単一の反応器中での単一工程において連結される。一実施形態では、この反応器は、向流操作で運転され、乳酸が、上記の塩化物塩を含む溶液で反応器の頂部に供給される。メタノールおよび抽出溶媒は、同じまたは別々の流れで、反応器の底部に供給される。乳酸メチルエステルおよび抽出溶媒は、反応器の頂部から取り出される。溶解した塩化物塩を含む水性溶液は、反応器の底部から取り出される。上述のように、この実施形態は、高い収率と一緒に高い転化率を得ることを可能にすることが見出された。この実施形態は、これに、またはこれによって限定されることなく、
図3に図示されている。
【0055】
図3は、頂部に入口(2)を備えた反応器(1)を示し、水性液体、例えば、乳酸および可溶性塩化物塩を含む溶液が反応器に供給される。メタノールおよび抽出溶媒は、ライン3を通って反応器の底部に供給される。反応器は、上述したエステル化条件にある。頂部流は、ライン(4)を通って反応器から取り出される。頂部流は、乳酸メチルおよび抽出溶媒を含む。塩化物塩を含む底部流は、ライン(5)を通って取り出される。種々の液体中の成分、処理条件および得られた生成物の処理に関する情報については、上記の一般的な説明が参照される。
【0056】
種々の段落において上述されている本発明の種々の局面が組み合わされうることは当業者には明らかである。
【0057】
図面は種々の統合された方法を示しているが、適切な様式で方法の種々の要素を組み合わせることは当業者の範囲内である。
【0058】
本発明および本発明の特定の実施形態は、これに、またはこれによって限定されることなく、以下の実施例および/または実施形態によって説明される。
【実施例1】
【0059】
一般的手順
反応容器は、乳酸、水、および任意選択でMgCl2および/または抽出溶媒で充填された。混合物は、60℃に加熱された。必要な場合には、すなわち、ヘキサンおよびメチル−tertブチルエーテルの場合には、反応は、抽出溶媒の蒸発を防ぐためオートクレーブ中で行われた。他の実験は、ガラス容器中で行われた。
【0060】
下記表1は、試験した組成物を示す:
【0061】
【表1】
【0062】
すべての実験について、乳酸とメタノールとのモル比は1:3である。乳酸と塩化マグネシウム(使用される場合)とのモル比は1:2である。反応の開始時の有機相と水性相との体積比は1:1である。反応時間は、オートクレーブ中で7時間行われた実施例4および5を除いて、24時間である。すべての実験において、水性媒体中(メタノールおよび抽出溶媒なし)の乳酸の初期濃度は25重量%であった。
【0063】
t=0で、メタノールが添加された。メタノールが添加された後、温度は数分以内に60℃に戻った。2相系の場合には、磁気撹拌は、混合が制限因子になるのを防ぐために、超微粒子状のエマルジョンが形成されるような速度で適用された。
【0064】
特定の回数で、試料は分析のために採取された。2相系の場合、混合物を沈降させた。次いで、混合物または上層の4滴(約0.05ml)が、溶媒としてのブタノール1.5mlで希釈された。
【0065】
動的実験の結果
試料は、GLC(面積)により分析された。レスポンスファクターが適用されなかったので、結果は半定量的である。MeLおよびMeOHのGC面積が合計され、100%に基づいて正規化された。
【0066】
結果は、
図4に示される。
図4は、有機層中の乳酸メチルとメタノールの合計(MeOH+MeL=100%)に基づいて計算された、有機層中の乳酸メチルの量で表された、60℃での有機相中の乳酸メチルの形成を示す。
【0067】
図4から、以下の結論が引き出されうる。
− 塩化マグネシウムの添加は、反応速度の増加をもたらす(MgCl2(比較例B)をブランク(比較例A)と比較)。しかし、これらの系は、抽出溶媒の不存在下で相分離を生じない。
− MgCl2の不存在下でのMIBKの使用は、反応速度に影響を与えていないようである(ブランクMIBK(比較例C)をブランク(比較例A)と比較)。
− MgCl2と2−ブタノン、トルエン、MTBEおよびMIBKとの組み合わせの使用(実施例1、2、3および5)はすべて、有機相中の乳酸メチルの存在を結果する。[データは乳酸メチル+メタノールの量に基づいて計算されて表されるので、乳酸メチルの絶対量についての結論は引き出されることができないことに留意されたい。]
− ヘキサン(実施例6)については、有機相中に乳酸メチルは存在しない、または非常に大量のメタノールが存在するのいずれかであった。ヘキサンは、あまり適切でない抽出溶媒でありうる。
【0068】
有機層および水性層の分析
実施例1および3については、24時間後の有機層および水性層の組成がより詳細に分析された。結果は表2に示される。
【0069】
【表2】
【0070】
表から、実施例3のトルエンは、メタノールおよび乳酸および水と比較して、乳酸メチルのための選択的な抽出溶媒であることが分かる。トルエン層は、乳酸メチルのみを含有する。一方、上記実験では、比較的大量の乳酸メチルが水性相中に残った。これは、乳酸メチルの完全な抽出のためには、大容量のトルエンが必要とされることを意味する。これは、例えば、複数の工程の抽出を介して対処されることができる。
【0071】
抽出溶媒としてMIBKを使用すると、有機相においてより高い濃度が得られることが分かる。これは、乳酸メチルを抽出するために、より少ない抽出溶媒が必要とされることを意味する。一方、有機層は、より多くの量の乳酸およびメタノールを含有し、抽出の選択性が低いことを示している。