特許第6194068号(P6194068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194068
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】蓄熱体
(51)【国際特許分類】
   F28D 17/02 20060101AFI20170828BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F28D17/02
   F28D20/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-126540(P2016-126540)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2017-32267(P2017-32267A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-154986(P2015-154986)
(32)【優先日】2015年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
(72)【発明者】
【氏名】足立 修一
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−234527(JP,A)
【文献】 特開平08−068597(JP,A)
【文献】 特開2002−292768(JP,A)
【文献】 特開2012−228655(JP,A)
【文献】 特許第5807083(JP,B2)
【文献】 特許第5946853(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 17/02
F28D 20/00
F28F 21/04
F23L 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス製の蓄熱体であり、
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有しており、
対向する方向を同一方向とする場合に、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であり、
複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有しており、前記円筒内接面の数は、前記円筒の中心軸が同一である前記円筒内接面を同一面として数える場合に、前記開口端面一つ当たり一つまたは二つである
ことを特徴とする蓄熱体。
【請求項2】
一つの前記開口端面は、一つまたは二つの前記円筒内接面のみからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱体。
【請求項3】
二方向から見た外形が円形である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項4】
三方向から見た外形が円形であり、
一つの前記開口端面は、二つの前記円筒内接面のみからなる
ことを特徴とする請求項2に記載の蓄熱体。
【請求項5】
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有するセラミックス製の円柱体を、
前記軸方向に直交する方向に、円筒で一回くり抜く
ことを特徴とする蓄熱体の製造方法。
【請求項6】
前記円柱体を、前記軸方向に直交すると共に、前記円筒でくり抜いた方向に直交する方向に、円筒で更に一回くり抜く
ことを特徴とする請求項5に記載の蓄熱体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流路に配置され流体から熱を回収する蓄熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の流路に配置され流体から熱を回収する蓄熱体の例として、蓄熱式バーナ(リジェネバーナ)の熱交換部に配される蓄熱体を挙げることができる。蓄熱式バーナは、鍛造炉、熱処理炉、溶解炉、焼成炉などの工業炉において使用されているバーナであり、バーナの燃焼により高温となった排ガスと、バーナの燃焼のために新たに供給されるガスとを、交互に熱交換部に流通させるべく、ガスの流通方向が所定時間間隔で切り換えられる。排ガスの熱は蓄熱体によって回収され、回収された熱によって、新たに供給されるガスが予熱される。
【0003】
蓄熱式バーナの熱交換部には多数の蓄熱体が充填されているが、蓄熱体としては、従前よりアルミナ製の中実ボール(「アルミナボール」と称されている)が多用されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、中実の蓄熱体を充填した場合、ガスは蓄熱体間の空隙を流通するため、圧力損失が大きいという問題があった。また、中実の蓄熱体は比表面積が小さいため流体に接触する面積が小さく、中心部は熱交換に寄与しにくいため、熱交換が不十分であるという問題もあった。
【0004】
一方、アルミナ、コージェライト、ムライト等のセラミックスのハニカム構造体を、蓄熱式バーナ用の蓄熱体として使用する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。ハニカム構造体は、多数の隔壁により区画されたセルを備え、セルは単一の方向に延びているため、ガスの流通に伴う圧力損失が小さいという利点がある。また、ハニカム構造体は比表面積が非常に大きいため、流体に接触する面積が非常に大きい利点がある。
【0005】
しかしながら、ハニカム構造体の比表面積が非常に大きいということは、嵩高さが同程度の中実の蓄熱体に比べて質量が非常に小さいということであり、熱容量が小さい。そのため、熱交換させる流体の温度など蓄熱体が使用される条件や蓄熱体が使用される装置の用途等によっては、従来のハニカム構造の蓄熱体では、蓄熱量が飽和するまでの時間が短過ぎる場合があった。つまり、熱交換のためには比表面積が大きいことが望ましいものの、従来のハニカム構造の蓄熱体より、熱容量の大きな蓄熱体が要請される場合があった。
【0006】
一方、従来のアルミナボールのように蓄熱体が球状であると、熱交換部に蓄熱体を配置する際、熱交換部のケーシングの開口部から蓄熱体を投入すれば、蓄熱体が転がって自ずとデッドスペースが小さくなるように充填されるため作業が容易である。これに対して、ハニカム構造体は押出成形によって成形されるため、断面形状が単一の柱状であり、投入するように配置すると、デッドスペース(ハニカム構造体間の空隙)が大きくなる。このため、従来のハニカム構造の蓄熱体は、デッドスペースが生じないよう、ハニカム構造体を立方体または直方体として積み重ねており、多数のハニカム構造体を積み重ねる作業が非常に煩雑であった。そのため、従来は、熱交換が不十分である短所より、投入により充填できる作業のし易さを優先して、アルミナボールが選択される傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−343829号公報
【特許文献2】特開平8−247671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、比表面積と熱容量とを調整することができ、且つ、容易な作業でデッドスペースを低減して配置することができる蓄熱体の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる蓄熱体は、
「セラミックス製の蓄熱体であり、
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有しており、
対向する方向を同一方向とする場合に、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であり、
複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有しており、前記円筒内接面の数は、前記円筒の中心軸が同一である前記円筒内接面を同一面として数える場合に、前記開口端面一つ当たり一つまたは二つである」ものである。
【0010】
「セラミックス製の蓄熱体」の材質は特に限定されるものではなく、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、ムライト、コージェライト等とすることができる。
【0011】
「対向する方向を同一方向とする」とは、正面視と背面視、平面視と底面視、左側面視と右側面視のように、視線が同一線上にあるが視線の向きが反対である二方向を、同一方向とすることを指している。
【0012】
「対向する方向を同一方向とする場合に、一方向または二方向からから見た外形が円形であり、複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有する」形状は、軸方向に複数の貫通孔が形成された円柱体を、軸方向に直交する方向に円筒で一回くり抜いて形成することができる。この場合、元となる円柱体の径及び高さと、くり抜く円筒の径との関係により、外形が円形に見える方向が一方向または二方向となる。そして、円筒でくり抜く方向に、円筒内接面が、開口端面一つ当たりに一つ形成される。
【0013】
更に、円柱体を上記のように円筒で一回くり抜いた後、軸方向に直交する方向で、且つ、先に円筒でくり抜いた方向に直交する方向に、円筒でもう一回くり抜くことにより、開口端面一つ当たりに円筒内接面がもう一つ形成される。これにより、「円筒内接面を開口端面一つ当たりに二つ」有する蓄熱体が形成される。この場合、元となる円柱体の径及び高さと、くり抜く円筒の径との関係により、外形が円形に見える方向が「一方向、二方向、または三方向」となる。
【0014】
本構成の蓄熱体は、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であるため、その周方向に転がり易い。また、開口端面の少なくとも一部に、開口端面一つ当たり一つまたは二つの湾曲面を有しており、その湾曲面はそれぞれ単一の仮想の円筒に内接する円筒内接面であるため、その周方向に転がり易い。すなわち、本構成の蓄熱体は、非常に転がり易い形状である。従って、複数の蓄熱体を設置場所に投入するなど乱雑に配置したとしても、個々の蓄熱体が転がって自ずと密に充填され易いため、容易な作業でデッドスペースを低減して配置することができる。
【0015】
また、本構成の蓄熱体は、貫通孔の数や孔径によって、比表面積と熱容量とを調整することができる。ここで、貫通孔の軸方向に直交する方向の蓄熱体の断面における貫通孔の密度は、(2個〜50個)/平方インチ、すなわち、(0.3個〜8個)/平方センチメートルである。これは、従来のハニカム構造の蓄熱体におけるセル密度(一般的に、(200セル〜500セル)/平方インチ)に比べると、1桁〜2桁小さい密度である。ハニカム構造体のセル密度を変化させることによって比表面積と熱容量とを調整することも想到し得るが、その場合は、比表面積がかなり大きく熱容量がかなり小さい範囲内でしか両値を変動させることができない。これに対し、軸方向に直交する断面における貫通孔の密度を(2個〜50個)/平方インチとすることにより、従来のハニカム構造体よりも熱容量がかなり大きい範囲で、比表面積と熱容量とを容易に調整することができる。
【0016】
更に、本構成の蓄熱体は、軸方向に直交する断面における貫通孔の形状が円形または楕円形である。これにより、貫通孔同士の間に肉厚の部分ができるため、全体として高強度となる。従って、設置場所に蓄熱体を投入するなど乱雑に配置しても、損傷しにくい利点を有している。
【0017】
また、蓄熱体と熱交換させる流体には異物が含まれていることがある。例えば、直接加熱により金属を溶融させる加熱炉では、溶融のし易さの調整のために添加されるナトリウム化合物、カリウム化合物、或いはカルシウム化合物の残渣が排ガスに含まれ、金属スクラップ溶解炉ではスクラップ由来のダストが排ガスに含まれる。このような場合、仮に蓄熱体の貫通孔が角部を有する形状であると、流体が通過する際に異物が角部に引掛り易く貫通孔が異物で詰まりやすい。これに対して、本構成の蓄熱体は、貫通孔の断面形状が円形または楕円形であるため、流体中に異物が含まれていたとしても、異物が詰まりにくい利点を有している。
【0018】
本発明にかかる蓄熱体は、上記構成において、「一つの前記開口端面は、一つまたは二つの前記円筒内接面のみからなる」ものとすることができる。
【0019】
本構成の蓄熱体は、開口端面が「単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面」のみで形成されているため、開口端面の一部に円筒内接面を有する場合に比べて、より転がり易い形状である。
【0020】
本発明にかかる蓄熱体は、上記構成において、「二方向から見た外形が円形である」ものとすることができる。
【0021】
本構成の蓄熱体は、異なる二方向から見た外形が円形であり、それぞれの周方向に転がり易い。従って、一方向のみから見た外形が円形である蓄熱体に比べて、より転がり易い形状である。
【0022】
本発明にかかる蓄熱体は、上記構成において、「三方向から見た外形が円形であり、一つの前記開口端面は、二つの前記円筒内接面のみからなる」ものとすることができる。
【0023】
本構成の蓄熱体は、異なる三方向から見た外形が円形であるため、一方向または二方向のみから見た外形が円形である蓄熱体に比べて、更に転がり易い形状である。加えて、開口端面が円筒内接面のみで形成されているため、開口端面の一部に円筒内接面を有する場合に比べて転がり易いだけではなく、一つの開口端面が二つの円筒内接面からなるため、二つの周方向の何れにも転がることができる。
【0024】
次に、本発明にかかる蓄熱体の製造方法は、
「単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有するセラミックス製の円柱体を、
前記軸方向に直交する方向に、円筒で一回くり抜く」ものである。
【0025】
これは、上記の構成、すなわち、
「セラミックス製の蓄熱体であり、
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有しており、
対向する方向を同一方向とする場合に、一方向または二方向から見た外形が円形であり、
複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有しており、前記円筒内接面の数は、前記円筒の中心軸が同一である前記円筒内接面を同一面として数える場合に、前記開口端面一つ当たり一つである」蓄熱体の製造方法である。
【0026】
本発明にかかる蓄熱体の製造方法は、上記構成に加え、
「前記円柱体を、前記軸方向に直交すると共に、前記円筒でくり抜いた方向に直交する方向に、円筒で更に一回くり抜く」ものとすることができる。
【0027】
これは、上記の構成、すなわち、
「セラミックス製の蓄熱体であり、
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有しており、
対向する方向を同一方向とする場合に、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であり、
複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有しており、前記円筒内接面の数は、前記円筒の中心軸が同一である前記円筒内接面を同一面として数える場合に、前記開口端面一つ当たり二つである」蓄熱体の製造方法である。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の効果として、比表面積と熱容量とを調整することができ、且つ、容易な作業でデッドスペースを低減して配置することができる蓄熱体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第一実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、及び(c)側面図である。
図2図1のハニカム構造体の製造方法の説明図である。
図3】本発明の第二実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、及び(c)側面図である。
図4】本発明の第三実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、及び(c)側面図である。
図5】本発明の第四実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、及び(c)側面図である。
図6】第一実施形態の変形例である蓄熱体の斜視図である。
図7】(a)図6の蓄熱体の正面図であり、(b)図1の蓄熱体の正面図である。
図8】本発明の第五実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、(c)正面図、及び(d)側面図である。
図9図8のハニカム構造体の製造方法の説明図である。
図10】本発明の第六実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、(c)正面図、及び(d)側面図である。
図11】本発明の第七実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、(c)正面図、及び(d)側面図である。
図12】本発明の第八実施形態である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、(c)正面図、及び(d)側面図である。
図13】第五実施形態の変形例である蓄熱体の(a)斜視図、(b)平面図、(c)正面図、及び(d)側面図である。
図14】第一実施形態の他の変形例である蓄熱体の(a)斜視図及び(b)平面図である。
図15】第五実施形態の他の変形例である蓄熱体の(a)斜視図及び(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の第一実施形態の蓄熱体1〜第八実施形態の蓄熱体8について説明する。蓄熱体1〜8は、何れも単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有しており、軸方向に直交する断面における貫通孔10の形状は円形である。また、何れの蓄熱体1〜8も、対向する方向を同一方向とする場合に一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であり、複数の貫通孔10が開口する端面である開口端面20の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面20aを有している。
【0031】
各図では、貫通孔10が開口する開口端面20が、平面視にあらわれるように図示している。また、以下では、単に「軸方向」と称した場合、貫通孔10の軸方向を指している。
【0032】
まず、第一実施形態〜第四実施形態の蓄熱体1〜4について説明する。蓄熱体1〜4では、円筒内接面20aの数は、内接する円筒の中心軸が同一である円筒内接面20aを同一面として数える場合に、開口端面20一つ当たり一つである。
【0033】
第一実施形態の蓄熱体1は、図1に示すように、二方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり一つの円筒内接面20aのみからなる。より詳細には、蓄熱体1は、貫通孔10が開口する開口端面20の外形(平面視)が円形であり、軸方向に直交する方向のうち一方向から見た外形が、開口端面20の外形円と直径が同一の円形である。そして、開口端面20以外で円形に見える方向を側面視とすると、正面視(背面視)の外形は、開口端面20の外形円及び側面視における円の直径と一辺の長さが等しい正方形である。
【0034】
なお、本実施形態では、貫通孔10の数が七個の場合を図示により例示しているが、軸方向に直交する断面における貫通孔10の密度は(2個〜50個)/平方インチの範囲であり、これは他の実施形態も同様である。
【0035】
このような構成の蓄熱体1は、図2に示すように、単一の軸方向Zに延びている複数の貫通孔10を有する円柱体50から形成することができる。具体的には、高さが断面円の直径以上である円柱体50を、その軸方向Zに直交する方向Xに、円柱体50と直径が等しい円筒51で、円柱体50の中心軸と円筒51の中心軸とが交差するように一回くり抜くことにより、製造することができる。このように円筒51でくり抜くことによって、くり抜く方向Xに沿って円筒内接面20aが形成される。すなわち、蓄熱体の製造に際して円柱体50をくり抜く円筒51が、本発明の「蓄熱体の開口端面の湾曲面が内接する単一の仮想の円筒」に相当する。そして、方向Xに円筒で一回くり抜くことにより、開口端面20一つ当たりに一つの円筒内接面20aが形成される。
【0036】
なお、単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有する円柱体50は、セラミックス製であり、押出成形により形成することができる。
【0037】
第二実施形態の蓄熱体2は、図3に示すように、一方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり一つの円筒内接面20aのみからなる。より詳細には、蓄熱体2は、軸方向に直交する方向のうち、一方向から見た外形が円形である。開口端面20の外形は、この円よりも大径の円が、平面図における上下で平行に切り欠かれた形状である。そして、円形に見える方向を側面視とすると、正面視の外形は、短辺の長さが側面視の円の直径と等しく、長辺の長さが開口端面20a(平面視)の切り欠かれた円の直径と等しい長方形である。
【0038】
このような構成の蓄熱体2は、単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有する円柱体を、その軸方向に直交する方向へ、円柱体の高さ及び断面円よりも小径の円筒で、円柱体の中心軸と円筒の中心軸とが交差するように一回くり抜くことにより、製造することができる。円柱体をくり抜く円筒が、側面視における円と同一径であり、円柱体の断面円が、開口端面20(平面視)の外形である切り欠かれた円と同一径である。
【0039】
第三実施形態の蓄熱体3は、図4に示すように、一方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり一つの円筒内接面20aのみからなる。より詳細には、蓄熱体3は、開口端面20(平面視)の外形が円形であり、軸方向に直交する方向のうち一方向から見た外形が、開口端面20の外形円より大径の円が、軸方向に平行に切り欠かれた形状である。この切り欠かれた円に見える方向を側面視とすると、正面視の外形は、短辺の長さが開口端面20の外形円の直径と等しく、長辺の長さが側面視の切り欠かれた円の直径と等しい長方形である。
【0040】
このような構成の蓄熱体3は、単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有する円柱体を、その軸方向に直交する方向に、円柱体の高さ以下で、且つ円柱体の断面円より大径の円筒で、円柱体の中心軸と円筒の中心軸とが交差するように一回くり抜くことにより、製造することができる。円柱体をくり抜く円筒が、側面視における切り欠かれた円と同一径であり、円柱体の断面円が、開口端面20の外形円と同一径である。
【0041】
第四実施形態の蓄熱体4は、図5に示すように、一方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり一つの円筒内接面20aと平坦面20bとからなる。より詳細には、蓄熱体4は、開口端面20の外形が円形であり、軸方向に直交する方向のうち一方向から見た外形が、開口端面20の外形円より大径の円が、軸方向及びこれに直交する方向に、それぞれ平行に切り欠かれた形状である。この切り欠かれた円に見える方向を側面視とすると、正面視の外形は、短辺の長さが開口端面20の外形円の直径と等しく、長辺の長さが側面視の切り欠かれた円の直径と等しい長方形である。また、蓄熱体4の開口端面20は、平面図において平坦面20bの上下にそれぞれ円筒内接面20aが延設されている形状であるが、これらの円筒内接面20aが内接する円筒の中心軸は同一であるため、円筒内接面20aの数は開口端面20一つ当たり一つと計数する。
【0042】
このような構成の蓄熱体4は、単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有する円柱体を、その軸方向に直交する方向に、円柱体の高さ及び断面円より大径の円筒で、円柱体の中心軸と円筒の中心軸とが交差するように一回くり抜くことにより、製造することができる。円柱体をくり抜く円筒が、側面視における切り欠かれた円と同一径であり、円柱体の断面円が、開口端面20の外形円と同一径である。
【0043】
なお、ここでは、円柱体を円筒でくり抜いて形成される形状を、平面視、側面視、正面視の形状で表現するに当たっては、貫通孔10の数や位置の相違による影響を排除するために、貫通孔10の縁の輪郭線は無視して表現している。例えば、図6に示す第一実施形態の変形例の蓄熱体1bは、貫通孔10の数を除けば第一実施形態の蓄熱体1と同一である。つまり、蓄熱体1の貫通孔10は、元となる円柱体の中心軸上に貫通孔10が一つあり、他の六つの貫通孔10が円柱体の中心軸に対して等角度間隔で設けられていたのに対し、蓄熱体1bの貫通孔10は、元となる円柱体の中心軸に対して等角度間隔で三つの貫通孔10が設けられている。図7(a)に示すように、蓄熱体1bの正面図における外形に貫通孔10の輪郭は影響していないが、図7(b)に示すように、蓄熱体1の正面図における外形は、中心軸上の貫通孔10の部分で凹みが表れる。本書面では、貫通孔10の縁の輪郭線は考慮することなく表現しており、図7(b)の外形も図7(a)の外形と同様に「正方形」としている。
【0044】
次に、第五実施形態〜第八実施形態の蓄熱体5〜8について説明する。蓄熱体5〜8では、円筒内接面20aの数は、内接する円筒の中心軸が同一である円筒内接面20aを同一面として数える場合に、開口端面20一つ当たり二つである。
【0045】
第五実施形態の蓄熱体5は、図8に示すように、三方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり二つの円筒内接面20aのみからなる。より詳細には、蓄熱体5は、貫通孔10が開口する開口端面20(平面視)の外形が円形であり、軸方向に直交する二方向、すなわち、正面視及び側面視の外形が、開口端面20の外形円と直径が同一の円形である。なお、貫通孔10の数は、三個の場合を図示により例示している。
【0046】
このような構成の蓄熱体5は、図9に示すように、単一の軸方向Zに延びている複数の貫通孔10を有するセラミックス製の円柱体50から形成することができる。具体的には、高さが断面円の直径以上である円柱体50を、軸方向Zに直交する方向Xと、軸方向Zに直交すると共に方向Xに直交する方向Yに、円柱体50と直径が等しい円筒51で、円柱体50の中心軸と円筒51の中心軸とが交差するように二回くり抜くことにより、製造することができる。そして、方向Xと方向Yに円筒で二回くり抜くことにより、開口端面20一つ当たりに二つの円筒内接面20aが形成される。
【0047】
第六実施形態の蓄熱体6は、図10に示すように、二方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり二つの円筒内接面20aのみからなる。より詳細には、蓄熱体6は、軸方向に直交する二方向、すなわち、正面視及び側面視の外形が円形である。開口端面20の外形は、この円よりも大径の円が、平面図における上下及び左右で平行に切り欠かれた形状である。
【0048】
このような構成の蓄熱体6は、単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有する円柱体を、それぞれ軸方向に直交し、且つ、互いに直交している二方向に、円柱体の高さ及び断面円よりも小径の円筒で、円柱体の中心軸と円筒の中心軸とが交差するように二回くり抜くことにより、製造することができる。円柱体をくり抜く円筒が、正面視及び側面視における円と同一径であり、円柱体の断面円が、開口端面20(平面視)の外形である切り欠かれた円と同一径である。
【0049】
第七実施形態の蓄熱体7は、図11に示すように、一方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり二つの円筒内接面20aのみからなる。より詳細には、蓄熱体7は、開口端面20(平面視)の外形が円形であり、軸方向に直交する二方向、すなわち、正面視及び側面視の外形が、開口端面20の外形円より大径の円が、軸方向に平行に切り欠かれた形状である。
【0050】
このような構成の蓄熱体7は、単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有する円柱体を、それぞれ軸方向に直交し、且つ、互いに直交している二方向に、円柱体の高さ以下で、且つ円柱体の断面円より大径の円筒で、円柱体の中心軸と円筒の中心軸とが交差するように二回くり抜くことにより、製造することができる。円柱体をくり抜く円筒が、正面視及び側面視における切り欠かれた円と同一径であり、円柱体の断面円が、開口端面20の外形円と同一径である。
【0051】
第八実施形態の蓄熱体8は、図12に示すように、一方向から見た外形が円形であり、開口端面20は一つ当たり二つの円筒内接面20aと平坦面20bとからなる。より詳細には、蓄熱体8は、開口端面20(平面視)の外形が円形であり、軸方向に直交する二方向、すなわち、正面視及び側面視の外形が、開口端面20の外形円より大径の円が、軸方向及びこれに直交する方向に、それぞれ平行に切り欠かれた形状である。また、蓄熱体8の開口端面20は、平面図において平坦面20bが円筒内接面20aで囲まれている形状であるが、これらの円筒内接面20aが内接する円筒には、中心軸の方向が直交する二つが存在するため、円筒内接面20aの数は開口端面20一つ当たり二つと計数する。
【0052】
このような構成の蓄熱体8は、単一の軸方向に延びている複数の貫通孔10を有する円柱体を、それぞれ軸方向に直交し、且つ、互いに直交している二方向に、円柱体の高さ及び断面円より大径の円筒で、円柱体の中心軸と円筒の中心軸とが交差するように二回くり抜くことにより、製造することができる。円柱体をくり抜く円筒が、正面視及び側面視における切り欠かれた円と同一径であり、円柱体の断面円が、開口端面20の外形円と同一径である。
【0053】
蓄熱体5〜8は、貫通孔10の縁の輪郭線が正面視及び側面視の外形に影響を及ぼさない例であったが、くり抜かれる円柱体の中心軸上に貫通孔10が存在する場合は、貫通孔10の縁の輪郭線が正面視及び側面視の外形に表れる。例えば、図13に示す第五実施形態の変形例である蓄熱体5bは、貫通孔10の数を除けば第五実施形態の蓄熱体5と同一であるが、貫通孔10の数が七つであり、くり抜かれる円柱体の中心軸上に貫通孔10が存在する例である。このような場合、図13(c),(d)に示すように、正面図及び側面図における外形は、中心軸上の貫通孔10の部分で凹みが表れる。図7を用いて上述したように、本書面では貫通孔10の縁の輪郭線は無視して形状を表現しているため、図13(c),(d)の何れの外形も「円形」としている。
【0054】
上記のように、第一実施形態〜第八実施形態、及び変形例の蓄熱体1〜8,1b,5bは何れも、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であり、開口端面20に円筒内接面20aを含むため、転がり易い形状である。そのため、複数の蓄熱体1〜8,1b,5bを設置場所に投入するなど乱雑に配置したとしても、個々の蓄熱体1〜8,1b,5bが転がって自ずと密に充填され易い。従って、設置場所に数百個〜数千個と多数配置する場合であっても、容易な作業でデッドスペースを低減して配置することができる。
【0055】
特に、蓄熱体1〜3,1b,5〜7,5bは、開口端面20が円筒内接面20aのみからなるため、より転がり易い。また、蓄熱体5〜8,5bは、開口端面20一つ当たり二つの円筒内接面20aを有するため、二つの円筒内接面20aが内接する二つの円筒の周方向の何れにも転がり易い。
【0056】
また、蓄熱体2〜4,7,8は一方向から見た外形が円形であるのに対し、蓄熱体1,1b,6は二方向から見た外形が円形であり、蓄熱体5,5bは三方向から見た外形が円形である。従って、開口端面20が円筒内接面20aのみからなることに加え、二方向から見た外形が円形である蓄熱体1,1b,6及び三方向から見た外形が円形である蓄熱体5,5bは、非常に転がり易い形状である。
【0057】
なお、蓄熱体4,8は、開口端面20に平坦面20bを有しているため、円筒内接面20aと平坦面20bとの割合によって、転がり易さを調整することができる。
【0058】
また、蓄熱体1〜8,1b,5bは、軸方向に直交する断面における貫通孔10の密度が(2個〜50個)/平方インチであるため、貫通孔の数や孔径の変更によって、ハニカム構造体においてセル密度を変更する場合とは大きく異なる範囲で、比表面積と熱容量とを調整することができる。特に、従来のハニカム構造体よりも熱容量をかなり大きくした上で、比表面積と熱容量とを容易に調整することができる。
【0059】
更に、蓄熱体1〜8,1b,5bは、貫通孔10の断面形状が円形であり、貫通孔10同士の間に肉厚の部分があるため、設置場所に投入するなど乱雑に配置しても損傷しにくい強度を有している。加えて、貫通孔10の断面形状が円形であることにより、貫通孔が角部を有する場合に比べて異物が詰まりにくい利点を有している。
【0060】
そして、蓄熱体1〜8,1b,5bは何れも、複数の貫通孔10を有する円柱体を押出成形によって形成し、その円柱体を、軸方向に直交する方向に一回または二回円筒でくり抜くことにより、製造することができる。従って、従来のハニカム構造体を製造する設備に特段の設備を付加することなく、容易に蓄熱体1〜8,1b,5bを製造することができる。
【0061】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0062】
例えば、上記では、軸方向に直交する断面における貫通孔10の形状が円形である場合を例示したが、図14,15に示す蓄熱体1c,5cのように、当該断面における貫通孔10の形状は楕円形であっても良い。貫通孔10の形状が楕円形であっても、貫通孔10の形状が円形である場合と同様に、貫通孔10同士の間に肉厚の部分があるため、設置場所に投入するなど乱雑に配置しても損傷しにくい強度を有していると共に、貫通孔が角部を有する場合に比べて異物が詰まりにくいという上記の利点を有している。
【0063】
ここで、図14は、第一実施形態の他の変形例の蓄熱体1cであり、貫通孔10の形状を除けば上記の第一実施形態の変形例である蓄熱体1bと同一である。また、図15は、第五実施形態の他の変形例の蓄熱体5cであり、貫通孔10の形状を除けば上記の第五実施形態の蓄熱体5と同一である。なお、第二実施形態〜第四実施形態、第六実施形態〜第八実施形態についても、同様に貫通孔10の形状が楕円形である変形例や貫通孔10の数が相違する変形例が存在することは、もちろんである。
【0064】
また、上記では、蓄熱式バーナに使用される蓄熱体を従来技術として例示したが、本発明の蓄熱体の用途はこれに限定されず、太陽熱発電装置など他の蓄熱装置用の蓄熱体として使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1〜8,1b,1c,5b,5c 蓄熱体
10 貫通孔
20 開口端面
20a 円筒内接面(開口端面)
20b 平坦面(開口端面)
50 円柱体
51 円筒
図1
図2
図3
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