【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる蓄熱体は、
「セラミックス製の蓄熱体であり、
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有しており、
対向する方向を同一方向とする場合に、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であり、
複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有しており、前記円筒内接面の数は、前記円筒の中心軸が同一である前記円筒内接面を同一面として数える場合に、前記開口端面一つ当たり一つまたは二つである」ものである。
【0010】
「セラミックス製の蓄熱体」の材質は特に限定されるものではなく、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、ムライト、コージェライト等とすることができる。
【0011】
「対向する方向を同一方向とする」とは、正面視と背面視、平面視と底面視、左側面視と右側面視のように、視線が同一線上にあるが視線の向きが反対である二方向を、同一方向とすることを指している。
【0012】
「対向する方向を同一方向とする場合に、一方向または二方向からから見た外形が円形であり、複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有する」形状は、軸方向に複数の貫通孔が形成された円柱体を、軸方向に直交する方向に円筒で一回くり抜いて形成することができる。この場合、元となる円柱体の径及び高さと、くり抜く円筒の径との関係により、外形が円形に見える方向が一方向または二方向となる。そして、円筒でくり抜く方向に、円筒内接面が、開口端面一つ当たりに一つ形成される。
【0013】
更に、円柱体を上記のように円筒で一回くり抜いた後、軸方向に直交する方向で、且つ、先に円筒でくり抜いた方向に直交する方向に、円筒でもう一回くり抜くことにより、開口端面一つ当たりに円筒内接面がもう一つ形成される。これにより、「円筒内接面を開口端面一つ当たりに二つ」有する蓄熱体が形成される。この場合、元となる円柱体の径及び高さと、くり抜く円筒の径との関係により、外形が円形に見える方向が「一方向、二方向、または三方向」となる。
【0014】
本構成の蓄熱体は、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であるため、その周方向に転がり易い。また、開口端面の少なくとも一部に、開口端面一つ当たり一つまたは二つの湾曲面を有しており、その湾曲面はそれぞれ単一の仮想の円筒に内接する円筒内接面であるため、その周方向に転がり易い。すなわち、本構成の蓄熱体は、非常に転がり易い形状である。従って、複数の蓄熱体を設置場所に投入するなど乱雑に配置したとしても、個々の蓄熱体が転がって自ずと密に充填され易いため、容易な作業でデッドスペースを低減して配置することができる。
【0015】
また、本構成の蓄熱体は、貫通孔の数や孔径によって、比表面積と熱容量とを調整することができる。ここで、貫通孔の軸方向に直交する方向の蓄熱体の断面における貫通孔の密度は、(2個〜50個)/平方インチ、すなわち、(0.3個〜8個)/平方センチメートルである。これは、従来のハニカム構造の蓄熱体におけるセル密度(一般的に、(200セル〜500セル)/平方インチ)に比べると、1桁〜2桁小さい密度である。ハニカム構造体のセル密度を変化させることによって比表面積と熱容量とを調整することも想到し得るが、その場合は、比表面積がかなり大きく熱容量がかなり小さい範囲内でしか両値を変動させることができない。これに対し、軸方向に直交する断面における貫通孔の密度を(2個〜50個)/平方インチとすることにより、従来のハニカム構造体よりも熱容量がかなり大きい範囲で、比表面積と熱容量とを容易に調整することができる。
【0016】
更に、本構成の蓄熱体は、軸方向に直交する断面における貫通孔の形状が円形または楕円形である。これにより、貫通孔同士の間に肉厚の部分ができるため、全体として高強度となる。従って、設置場所に蓄熱体を投入するなど乱雑に配置しても、損傷しにくい利点を有している。
【0017】
また、蓄熱体と熱交換させる流体には異物が含まれていることがある。例えば、直接加熱により金属を溶融させる加熱炉では、溶融のし易さの調整のために添加されるナトリウム化合物、カリウム化合物、或いはカルシウム化合物の残渣が排ガスに含まれ、金属スクラップ溶解炉ではスクラップ由来のダストが排ガスに含まれる。このような場合、仮に蓄熱体の貫通孔が角部を有する形状であると、流体が通過する際に異物が角部に引掛り易く貫通孔が異物で詰まりやすい。これに対して、本構成の蓄熱体は、貫通孔の断面形状が円形または楕円形であるため、流体中に異物が含まれていたとしても、異物が詰まりにくい利点を有している。
【0018】
本発明にかかる蓄熱体は、上記構成において、「一つの前記開口端面は、一つまたは二つの前記円筒内接面のみからなる」ものとすることができる。
【0019】
本構成の蓄熱体は、開口端面が「単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面」のみで形成されているため、開口端面の一部に円筒内接面を有する場合に比べて、より転がり易い形状である。
【0020】
本発明にかかる蓄熱体は、上記構成において、「二方向から見た外形が円形である」ものとすることができる。
【0021】
本構成の蓄熱体は、異なる二方向から見た外形が円形であり、それぞれの周方向に転がり易い。従って、一方向のみから見た外形が円形である蓄熱体に比べて、より転がり易い形状である。
【0022】
本発明にかかる蓄熱体は、上記構成において、「三方向から見た外形が円形であり、一つの前記開口端面は、二つの前記円筒内接面のみからなる」ものとすることができる。
【0023】
本構成の蓄熱体は、異なる三方向から見た外形が円形であるため、一方向または二方向のみから見た外形が円形である蓄熱体に比べて、更に転がり易い形状である。加えて、開口端面が円筒内接面のみで形成されているため、開口端面の一部に円筒内接面を有する場合に比べて転がり易いだけではなく、一つの開口端面が二つの円筒内接面からなるため、二つの周方向の何れにも転がることができる。
【0024】
次に、本発明にかかる蓄熱体の製造方法は、
「単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有するセラミックス製の円柱体を、
前記軸方向に直交する方向に、円筒で一回くり抜く」ものである。
【0025】
これは、上記の構成、すなわち、
「セラミックス製の蓄熱体であり、
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有しており、
対向する方向を同一方向とする場合に、一方向または二方向から見た外形が円形であり、
複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有しており、前記円筒内接面の数は、前記円筒の中心軸が同一である前記円筒内接面を同一面として数える場合に、前記開口端面一つ当たり一つである」蓄熱体の製造方法である。
【0026】
本発明にかかる蓄熱体の製造方法は、上記構成に加え、
「前記円柱体を、前記軸方向に直交すると共に、前記円筒でくり抜いた方向に直交する方向に、円筒で更に一回くり抜く」ものとすることができる。
【0027】
これは、上記の構成、すなわち、
「セラミックス製の蓄熱体であり、
単一の軸方向に延びており、前記軸方向に直交する断面における形状が円形または楕円形である複数の貫通孔を、前記軸方向に直交する断面において(2個〜50個)/平方インチの密度で有しており、
対向する方向を同一方向とする場合に、一方向、二方向、または三方向から見た外形が円形であり、
複数の前記貫通孔が開口する端面である開口端面の少なくとも一部に、単一の仮想の円筒に内接する湾曲面である円筒内接面を有しており、前記円筒内接面の数は、前記円筒の中心軸が同一である前記円筒内接面を同一面として数える場合に、前記開口端面一つ当たり二つである」蓄熱体の製造方法である。