特許第6194071号(P6194071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レゾナント インコーポレイテッドの特許一覧

特許6194071表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法
<>
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000002
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000003
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000004
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000005
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000006
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000007
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000008
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000009
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000010
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000011
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000012
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000013
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000014
  • 特許6194071-表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194071
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20170828BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20170828BHJP
   G06F 17/50 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H03H9/64 Z
   H03H9/72
   G06F17/50 612A
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-132386(P2016-132386)
(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公開番号】特開2017-50852(P2017-50852A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年8月31日
(31)【優先権主張番号】14/843,812
(32)【優先日】2015年9月2日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514301705
【氏名又は名称】レゾナント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】コスタ ジェームズ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウィレムセン コルテス バラム クイツェ アンドレス
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−288227(JP,A)
【文献】 特開2009−272666(JP,A)
【文献】 特開2011−203836(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/149506(WO,A1)
【文献】 特開2008−140210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/64
H03H 9/72
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯域通過フィルタを設計する方法であって、
第1の設計基準を満たすベースライン・フィルタ設計を確立するステップであって、前記ベースライン・フィルタ設計は、複数の直列表面弾性波共振器及び複数の分岐表面弾性波共振器を含み、各表面弾性波共振器は、それぞれの共振周波数を有する、ステップと、
前記ベースライン・フィルタ設計の通過帯域上の入力インピーダンスに関連する性能測定基準を計算するステップと、
1つ以上の代替フィルタ設計を確立するステップであって、前記1つ以上の代替フィルタ設計の各々は、前記複数の直列表面弾性波共振器の2つ以上及び/又は前記複数の分岐表面弾性波共振器の2つ以上の共振周波数を並べ替えることによって、前記ベースライン・フィルタ設計から得られる、ステップと、
前記1つ以上の代替フィルタ設計の前記通過帯域上の各々の入力インピーダンスに関連するそれぞれの性能測定基準を計算するステップと、
前記それぞれの性能測定基準に基づき、前記ベースライン・フィルタ設計及び前記1つ以上の代替フィルタ設計から最終フィルタ設計を選択するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記性能測定基準は、前記通過帯域上の最大反射係数であり、
前記最終フィルタ設計を選択するステップは、前記ベースライン・フィルタ設計及び前記1つ以上の代替フィルタ設計から、前記通過帯域上で最も低い最大反射係数を有する設計を選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記性能測定基準は、複素インピーダンス平面上に示された前記通過帯域上の前記入力インピーダンスを囲む最小サイズの円の直径であり、
前記最終フィルタ設計を選択するステップは、前記ベースライン・フィルタ設計及び前記1つ以上の代替フィルタ設計から、前記複素インピーダンス平面上に示された前記通過帯域上の前記入力インピーダンスを囲む前記最小サイズの円の最少直径を有する設計を選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記性能測定基準は、複素インピーダンス平面上に示された前記通過帯域の縁部における入力インピーダンス間の距離であり、
前記最終フィルタ設計を選択するステップは、前記ベースライン・フィルタ設計及び前記1つ以上の代替フィルタ設計から、前記複素インピーダンス平面上に示された前記通過帯域の縁部における前記入力インピーダンス間の最小距離を有する設計を選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記代替フィルタ設計を確立するステップ及び前記それぞれの性能測定基準を計算するステップは、前記複数の直列表面弾性波共振器及び前記複数の分岐表面弾性波共振器の前記共振周波数の全ての可能な並べ替えに対し繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記代替フィルタ設計を確立するステップは、前記複数の直列表面弾性波共振器及び前記複数の分岐表面弾性波共振器の前記共振周波数の無作為に選択した並べ替えに対し所定回数繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記代替フィルタ設計を確立するステップは
前記ベースライン・フィルタ設計で開始し、前記複数の直列表面弾性波共振器からの2つの直列共振器、若しくは前記複数の分岐表面弾性波共振器からの2つの分岐共振器の前記共振周波数を交換することによって新たなフィルタ設計を確立するステップと、
前記新たなフィルタ設計に対する性能測定基準を計算するステップと、
前記新たなフィルタ設計の前記性能測定基準が前記ベースライン・フィルタ設計の前記性能測定基準よりも改良されているか否かを判定するステップと、
前記新たなフィルタ設計の前記性能測定基準が前記ベースライン・フィルタ設計の前記性能測定基準よりも改良されている場合、前記新たなフィルタ設計を前記ベースライン・フィルタ設計であると規定する、又は
前記新たなフィルタ設計の前記性能測定基準が前記ベースライン・フィルタ設計の前記性能測定基準よりも改良されていない場合、前記新たなフィルタ設計を破棄し、前記ベースライン・フィルタ設計を保持するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記新たなフィルタ設計が、前記第1の設計基準に加えて第2の設計基準を満たすかどうかを判定するステップと、
前記新たなフィルタ設計が前記第2の設計基準を満たす場合、前記新たなフィルタ設計を前記最終フィルタ設計として選択する、又は
前記新たなフィルタ設計が前記第2の設計基準を満たさない場合、請求項7に記載の方法を繰り返すステップと、
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記性能測定基準は、前記通過帯域上の最大反射係数であり、
前記第2の設計基準は、前記通過帯域上の所定値を超えない最大反射係数である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記性能測定基準は、複素インピーダンス平面上に示された前記通過帯域上の前記入力インピーダンスを囲む最小サイズの円の直径であり、
前記第2の設計基準は、所定値を超えない前記最小サイズの円の直径である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記性能測定基準は、複素インピーダンス平面上に示された前記通過帯域の縁部における入力インピーダンス間の距離であり、
前記第2の設計基準は、前記通過帯域の縁部の反射係数間の所定値を超えない距離である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
第1の設計基準を満たすベースライン・フィルタ設計を確立するステップであって、前記ベースライン・フィルタ設計は、複数の直列表面弾性波共振器及び複数の分岐表面弾性波共振器を含み、前記各表面弾性波共振器は、それぞれの共振周波数を有する、ステップと、
前記ベースライン・フィルタ設計の通過帯域上の入力インピーダンスに関連する性能測定基準をもたらすために、前記ベースライン・フィルタ設計を分析するステップと、
1つ以上の代替フィルタ設計を確立するステップであって、前記1つ以上の代替フィルタ設計の各々は、前記複数の直列表面弾性波共振器の2つ以上及び/又は前記複数の分岐表面弾性波共振器の2つ以上の前記共振周波数を並べ替えることによって、前記ベースライン・フィルタ設計から得られる、ステップと、
前記各代替フィルタ設計の通過帯域上の入力インピーダンスに関連するそれぞれの性能測定基準をもたらすために、前記1つ以上の代替フィルタ設計の各々を分析するステップと、
前記それぞれの性能測定基準に基づき、前記ベースライン・フィルタ設計及び前記1つ以上の代替フィルタ設計から最終フィルタ設計を選択するステップと、
を含む帯域通過フィルタの設計方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
著作権及びトレードドレスの通知
本特許文書の開示の一部分は、著作権の保護を受ける材料を含む。本特許文書は、所有者のトレードドレスである若しくはトレードドレスとなり得る事項を示す及び/又は記載することができる。著作権及びトレードドレスの所有者は、その特許開示が米国特許商標庁の特許出願書類又は記録内にあるので、当該特許開示の誰による複製にも異議はないが、それ以外は何であれ、全ての著作権及びトレードドレス権を保有するものである。
【0002】
本開示は、表面弾性波(SAW)共振器を使用する無線周波数フィルタに関し、詳細には、通信機器で使用するための送信フィルタ及びデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
【0004】
図1に示すように、SAW共振器100は、基板105の表面上に形成された薄膜導体パターンによって形成することができ、基板105は、石英、リチウムニオベート、リチウムタンタレート又はランタンガリウムシリケート等の圧電材料から作製される。基板105は、圧電材料の単結晶スラブであっても、シリコン、サファイア又は石英等別の材料に接合した、圧電材料の薄い単結晶ウエハを含む複合基板であってもよい。複合基板を使用すると、単結晶圧電材料単独の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数をもたらすことができる。第1のインターデジタル変換器(IDT)110は、複数の平行な導体を含むことができる。入力端子INを介して第1のIDT110に加えられた無線周波数又はマイクロ波信号は、基板105の表面上に弾性波を生成することができる。図1に示すように、表面弾性波は、左右方向に伝播することになる。第2のIDT120は、出力端子OUTで、弾性波を無線周波数又はマイクロ波信号に再度変換することができる。第2のIDT120の導体は、図示のように第1のIDT110の導体と交互配置することができる。他のSAW共振器構成(図示せず)では、第2のIDTを形成する導体は、第1のIDTを形成する導体と隣接して又はこれらから分離して、基板105表面上に配設することができる。
【0005】
第1のIDT110と第2のIDT120との間の電気的結合は、周波数に大きく依存する。第1のIDT110と第2のIDT120との間の電気的結合は、典型的には、共振(共振では、第1のIDTと第2のIDTとの間のインピーダンスは最小である)、及び反共振(反共振では、第1のIDTと第2のIDTとの間のインピーダンスは最大である)の両方を呈する。共振及び反共振の周波数は、主に、櫛形導体のピッチ及び向き、基板材料の選択、並びに基板材料の結晶配向によって決定される。グレーティング反射器130、132は、第1のIDT110及び第2のIDT120によって占められる基板領域に弾性波エネルギーの大部分を閉じ込めるため、基板上に配設することができる。
【0006】
SAW共振器は、帯域阻止フィルタ、帯域通過フィルタを含む様々な無線周波数フィルタ、及びデュプレクサで使用される。デュプレクサは、無線周波数フィルタ・デバイスであり、共通のアンテナを使用することによって、第1の周波数帯域での送信、及び(第1の周波数帯域とは異なる)第2の周波数帯域での受信を同時に可能にする。デュプレクサは、一般に、携帯電話を含む無線通信機器で見られる。
【0007】
図2は、通信デバイス200の部分のブロック図である。通信デバイス200は、送信器210、デュプレクサ220及びアンテナ230及び受信器240を含む。デュプレクサ220は、送信フィルタ222及び受信フィルタ224を含むことができる。送信フィルタ222は、送信器210とアンテナ230との間に結合することができる。受信フィルタ224は、アンテナ230と受信器240との間に結合することができる。デュプレクサ220の重要な機能は、受信器を送信器から隔離して、送信器からのエネルギーによる負荷が受信器にかかりすぎないことを保証することである。この目的で、送信フィルタ222は、送信周波数帯域内の周波数を通過させ、送信周波数帯域とは異なる受信周波数帯域内の周波数を遮断又は阻止するように設計することができる。逆に、受信フィルタは、受信周波数帯域内の周波数を通過させ、送信周波数帯域内の周波数を遮断するように設計することができる。
【0008】
送信器210は、送信すべき無線周波信号を生成する電力増幅器212、並びに電力増幅器212及び送信フィルタ222からの無線周波数信号をデュプレクサ220内で結合するインピーダンス整合ネットワーク214を含むことができる。インピーダンス整合ネットワーク214は、電力増幅器212の出力インピーダンスを送信フィルタ222の入力インピーダンスに整合するように設計することができる。送信器210の一部分として示すが、インピーダンス整合ネットワーク214は、その全部又は一部分を送信フィルタ222内に組み込むことができる。電力増幅器212の出力インピーダンスは、典型的には、送信周波数帯域上で一定又はほぼ一定である。電力増幅器212からアンテナ230への効率的な電力結合を保証するために、送信フィルタ222の入力インピーダンスも、可能な限り送信周波数帯域上で一定であることが好ましい場合がある。
【発明の概要】
【0009】
帯域通過フィルタを設計する方法、及びフィルタを開示する。第1の設計基準を満たすベースライン・フィルタ設計を確立することができ、ベースライン・フィルタ設計は、複数の直列表面弾性波共振器及び複数の分岐表面弾性波共振器を含み、各表面弾性波共振器は、それぞれの共振周波数を有する。ベースライン・フィルタ設計の通過帯域上の入力インピーダンスに基づき、性能測定基準を決定することができる。1つ以上の代替フィルタ設計を確立し、それぞれの性能測定基準を決定することができ、各代替フィルタ設計は、2つ以上の複数の直列表面弾性波共振器及び/又は2つ以上の複数の分岐表面弾性波共振器の共振周波数を並べ替えることによって確立される。最終フィルタ設計は、それぞれの性能測定基準に基づき、ベースライン設計及び1つ以上の代替フィルタ設計から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】SAW共振器の概略平面図である。
図2】通信デバイスのブロック図である。
図3A】例示的表面弾性波フィルタ送信フィルタのブロック図である。
図3B図3AのフィルタのSパラメータのグラフである。
図3C図3Aのフィルタの入力インピーダンスのプロットを有するスミス・チャートである。
図4A】別の例示的表面弾性波フィルタ送信フィルタのブロック図である。
図4B図4AのフィルタのSパラメータのグラフである。
図4C図4Aのフィルタの入力インピーダンスのプロットを有するスミス・チャートである。
図5図3A図4A及び図6Aの例示的表面弾性波フィルタの共振器周波数を比較した表である。
図6A】別の例示的表面弾性波フィルタ送信フィルタのブロック図である。
図6B図5AのフィルタのSパラメータのグラフである。
図6C図5Aのフィルタの入力インピーダンスのプロットを有するスミス・チャートである。
図7】表面弾性波フィルタの入力インピーダンスを最適化する方法のフローチャートである。
図8図6Aのフィルタの入力インピーダンスのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書全体にわたり、図面に現れる要素には、3桁の参照識別子が割り当てられており、最上位桁は、要素が最初に示される図面の番号であり、最下位の2桁は、要素に特有である。図面との関連で説明しない要素は、同じ参照識別子を有する、既に記載した要素と同じ特徴及び機能を有すると仮定することができる。
【0012】
装置の説明
【0013】
フィルタ回路は、通常、2個以上のSAW共振器を組み込む。例えば、図3Aは、X1からX10と表示された10個のSAW共振器を組み込む例示的帯域通過フィルタ回路300の概略図を示す。フィルタ回路300は、入力(ポート1)と出力(ポート2)との間に直列に接続した6個の直列共振器(X1、X3、X5、X6、X8及びX10)を含む。フィルタ回路300は、隣接し合う直列共振器の接合部と接地との間に接続された4つの分岐共振器(X2、X4、X7及びX9)を含む。10個のSAW共振器、即ち6個の直列共振器及び4個の分岐共振器の使用は、例示的なものである。フィルタ回路は、10個より多くても少なくてもよいSAW共振器、並びに異なる構成の直列共振器及び分岐共振器を含むことができる。フィルタ回路300は、例えば、デュプレクサ220等のデュプレクサ内に組み込む送信フィルタとすることができる。
【0014】
10個の共振器X1〜X10のそれぞれは、図1に示すインターデジタル変換器及びグレーティング反射器から構成することができる。10個の共振器X1〜X10のそれぞれは、対応する共振周波数f1〜f10を有することができる。共振周波数f1〜f10は全て、異なっていてもよい。共振器X1〜X10のいくつかの共振周波数は、同じであってもよい。典型的には、分岐共振器の共振周波数f2、f4、f7、f9は、直列共振器の共振周波数f1、f3、f5、f6、f8、f10からずらすことができる。
【0015】
図3Bは、フィルタ300の選択されたSパラメータ、即ち散乱パラメータを示すグラフである。Sパラメータは、線形電気ネットワークの性能を表すために使用される一般的な手法である。実線310は、電気ネットワークのポート1からポート2への伝達関数であるS(2,1)のプロットである。S(2,1)は、本質的に、数字符号の変更を伴うフィルタの「挿入損失」である(例えばS(2,1)=−3dBは、3dBの挿入損失に等しい)。この場合、実線310は、フィルタ300の入力から出力への伝達関数を示す。帯域通過フィルタは、所定の「通過帯域」内周波数の損失がほとんどない状態で、フィルタ300のポート1の信号入力をポート2に伝達する必要があり得る。図3Bに示すように、フィルタ300の通過帯域は、約1.7GHzから1.79GHzまでである。通過帯域からずれた周波数は、実質的に減衰される。帯域通過フィルタに対する規格には、通過帯域上のS(2,1)の最小値(即ち最大挿入損失)、及び1つ以上の停止帯域のそれぞれに対するS(2,1)の最大値(即ち最小挿入損失)を含むことができる。
【0016】
破線320は、電気ネットワークのポート1からポート1への伝達関数であるS(1,1)のプロットである。この場合、破線320は、全ての他のポートが理想的な負荷インピーダンスで終結する状態である、フィルタ300の入力から入力への反射係数を示し、この負荷インピーダンスは、しばしばギリシャ文字のガンマ(Γ)によって示される。フィルタ300のポート1での信号入力は、通過帯域外の周波数のために実質的に反射されポート1に戻される。通過帯域内の周波数に関して、入力信号の反射は、−10dBから−40dBの間で変動する。
【0017】
図3Cは、インピーダンス・スミス・チャートを示す。スミス・チャートは、回路の複素反射係数の極座標を使用したプロットである。図3Cは、フィルタ300のポート1の複素反射係数のプロットである。中心点は、ゼロの反射係数を表し、チャートの周辺部は、1の反射係数を表す。
【0018】
回路の反射係数は、回路の入力インピーダンス及び回路駆動ソースのインピーダンスによって決定される。したがって、スミス・チャートは、例えば周波数の関数として、回路の入力インピーダンスを視覚化するグラフ補助手段として使用することができる。入力インピーダンスを視覚化するために使用する場合、実インピーダンス基準及び複素インピーダンス基準を従来のスミス・チャートに加え、図3Cに示す「インピーダンス・スミス・チャート」と一般に呼ばれるものを実現する。スミス・チャートの中心点(ゼロに等しい反射係数)は、ソース・インピーダンスに等しい入力インピーダンスを表す。ソース・インピーダンスは、通常、必ずしもそうではないが50オームである。中心点を通る水平線は、実インピーダンス値(即ち抵抗)の軌跡である。チャートの外周は、100%の反射をもたらすインピーダンス値の軌跡である。スミス・チャートの中心点を通る水平線の左端は、短絡(0インピーダンス)を表し、この線の右端は、開放回路(無限インピーダンス)を表す。あらゆる複素入力インピーダンス値は、スミス・チャート上の固有の点に対応することになる。
【0019】
1.5GHzから2.0GHzの周波数範囲にわたるフィルタ300の入力インピーダンスを図3Cのインピーダンス・スミス・チャート上に示す。実線330は、フィルタ300の通過帯域上の入力インピーダンスを示し、破線340は、通過帯域外の周波数に対する入力インピーダンスを示す。理想的には、フィルタ300の入力インピーダンスは、通過帯域にわたって一定となり、この場合、通過帯域上の入力インピーダンスのグラフは、インピーダンス・スミス・チャート上の単一の点であると思われる。しかし、この理想は、実際の帯域通過フィルタでは達成することができない。現実の設計目標は、フィルタ300の入力インピーダンスが通過帯域上で所定量以下しか変動しないことである。例えば、設計目標又は要件は、2つの点が実線曲線330上で大部分が幅広く分離する点であり、所定距離以下まで分離することであり得る。同等に、設計目標又は要件は、実線曲線330が所定の直径を有する円内に完全に含まれることであり得る。
【0020】
図4Aは、帯域通過フィルタ回路300と同様の、別の例示的帯域通過フィルタ回路400の概略図を示し、例示的帯域通過フィルタ回路400は、入力(ポート1)と出力(ポート2)との間に直列に接続した6個の直列SAW共振器(X1、X3、X5、X6、X8及びX10)、並びに隣接し合う直列共振器の接合部と接地との間に接続された4個の分岐共振器(X2、X4、X7及びX9)を含む。フィルタ回路400は、6個の直列共振器の間の共振周波数を交換し、4個の分岐共振器の間の共振周波数を交換することによって、フィルタ回路300から得ることができる。
【0021】
図5は、フィルタ300、フィルタ400、及び後で説明するフィルタ600の共振器の共振周波数を列挙した表500である。共振器周波数の並べ替えが表500から理解することができる。例えば、フィルタ400では、共振器X1は、フィルタ300の共振器X6の共振周波数であった共振周波数f6を有する。フィルタ400の10個のSAW共振器のうち、共振器X8のみがフィルタ300の対応共振器と同じ共振周波数を有する。分岐共振器及び直列共振器の共振周波数は、ずれるため、直列共振器と分岐共振器との間の共振周波数は、交換しないものとする。共振周波数以外、フィルタ400の10個のSAW共振器のレイアウト(即ち基板上の相対位置)、サイズ及び他の属性は、フィルタ300のそれぞれの対応共振器と同じとすることができる。
【0022】
図面の4枚目に戻って参照すると、図4Bは、フィルタ400の選択されたSパラメータを示すグラフである。実線410は、フィルタ400の入力から出力への伝達関数であるS(2,1)のプロットである。フィルタ400の通過帯域は、約1.7GHzから1.79GHzであり、フィルタ300の通過帯域と同じである。フィルタ400のポート1での信号入力は、通過帯域内の周波数のために比較的わずかな損失でポート2に伝達される。しかし、通過帯域内のフィルタ400の損失は、5dBもの高さであることもあり、これは、フィルタ300の通過帯域上の損失よりも著しく高い。通過帯域からずれた周波数は、実質的に減衰される。
【0023】
破線420は、フィルタ400の入力から入力への反射係数であるS(1,1)のプロットである。フィルタ400のポート1での信号入力は、通過帯域外の周波数のために実質的に反射されポート1に戻される。通過帯域内の周波数に関して、入力信号の反射は、−5dBから−25dBまでの間で変動する。したがって、フィルタ400の通過帯域内の反射係数は、フィルタ300の反射係数よりも著しく高い。
【0024】
図4Cは、インピーダンス・スミス・チャート上に示した1.5GHzから2.0GHzの周波数範囲にわたるフィルタ400の入力インピーダンスのグラフである。実線430は、フィルタ400の通過帯域上の入力インピーダンスを示し、破線440は、通過帯域外の周波数に対する入力インピーダンスを示す。通過帯域上のフィルタ400の入力インピーダンス(実線430)は、大幅に変動する。フィルタ400の入力インピーダンスと、フィルタのポート1で導入された信号のソース・インピーダンスとの間の不整合が高反射係数の根本的な原因であり、フィルタ400の伝達を劣化させる。
【0025】
図6Aは、帯域通過フィルタ回路300及び400と同様の、また別の例示的帯域通過フィルタ回路600の概略図を示し、例示的帯域通過フィルタ回路600は、入力(ポート1)と出力(ポート2)との間に直列に接続した6個の直列SAW共振器(X1、X3、X5、X6、X8及びX10)、並びに隣接し合う直列共振器の接合部と接地との間に接続された4個の分岐共振器(X2、X4、X7及びX9)を含む。フィルタ回路600も、様々な直列共振器及び様々な分岐共振器の共振周波数を交換することによって、フィルタ回路300から得られた。共振周波数が交換される様式は、図5の表500から理解することができる。例えば、フィルタ600では、共振器X1は、フィルタ300の共振器X5の共振周波数であった共振周波数f5を有する。フィルタ300の共振器X1の共振周波数f1は、フィルタ600の共振器X10の共振周波数であり、以下同様である。フィルタ600の10個のSAW共振器のうち、共振器X2のみがフィルタ300の対応共振器と同じ共振周波数を有する。共振周波数以外、フィルタ600の10個のSAW共振器のレイアウト(即ち基板上の相対位置)、サイズ及び他の属性は、フィルタ300のそれぞれの対応共振器と同じとすることができる。
【0026】
図6Bは、フィルタ600の選択されたSパラメータ、即ち散乱パラメータを示すグラフである。実線610は、フィルタ600の入力から出力への伝達関数であるS(2,1)のプロットである。フィルタ600の通過帯域は、約1.7GHzから1.79GHzであり、フィルタ300の通過帯域と同じである。フィルタ600のポート1での信号入力は、通過帯域内の周波数のためにわずかな損失でポート2に伝達される。通過帯域からずれた周波数は、実質的に減衰される。
【0027】
破線620は、フィルタ600の入力から入力への反射係数であるS(1,1)のプロットである。フィルタ600のポート1での信号入力は、通過帯域外の周波数のために実質的に反射されポート1に戻される。通過帯域内の周波数に関して、入力信号の反射は、−16dBから−42dBの間で変動する。したがって、フィルタ600の通過帯域内の反射係数は、フィルタ300の反射係数よりも著しく低い。
【0028】
図6Cは、インピーダンス・スミス・チャート上に示した1.5GHzから2.0GHzの周波数範囲にわたるフィルタ400の入力インピーダンスのグラフである。実線630は、フィルタ600の通過帯域上の入力インピーダンスを示し、破線640は、通過帯域外の周波数に対する入力インピーダンスを示す。フィルタ600の通過帯域上の入力インピーダンス(実線630)は、フィルタ300の通過帯域上の入力インピーダンスよりも小さく変動する。フィルタ400の通過帯域上の入力インピーダンスがわずかな変動であることで、フィルタのポート1で導入された信号のソース・インピーダンスとのより良好なインピーダンス整合が可能になり、フィルタ400に対しより低い反射係数がもたらされる。
【0029】
工程の説明
【0030】
図3C図4C及び図6Cの比較は、SAW帯域通過フィルタ内の共振器の共振周波数の並べ方が、通過帯域上のフィルタの入力インピーダンス、伝達及び反射に対しかなりの影響を与える一方で、中心周波数及び通過帯域の帯域幅、又は通過帯域外の周波数に対するフィルタ性能にはわずかな影響しか与えないことを示す。したがって、共振器の共振周波数の順序を変更すると、他のフィルタ特性とは比較的無関係に、SAW帯域通過フィルタの入力インピーダンスを最適化する手段がもたらされる。
【0031】
図7は、SAW帯域通過フィルタを設計する工程700のフローチャートである。工程700は、705で、フィルタの規格セットと共に開始される。規格セットには、例えば、通過帯域に対するより低い及びより高い周波数の規格、並びに任意で1つ以上の停止帯域を含むことができる。規格セットには、通過帯域上のS(2,1)の最小値(即ち最大挿入損失)、及び停止帯域を規定する場合には、各停止帯域上のS(2,1)の最大値(即ち最小挿入損失)を含むことができる。規格セットには、入力インピーダンス範囲を含むことができる。入力インピーダンス範囲は、例えば、ソースによって所定のソース・インピーダンスで駆動される際のフィルタの入力における最大反射係数又は最大電圧定在波比(VSWR)として規定することができる。入力インピーダンス範囲は、いくつかの他の様式で規定することができる。フィルタの規格セットには、ダイの最大サイズ、動作温度範囲、入力電力レベル、及び他の要件等の他の要件を含むことができる。
【0032】
710で、フィルタ・アーキテクチャを選択することができる。具体的には、基板構成(単結晶又は複合結晶)、特定の圧電材料及び結晶配向(即ち内部結晶軸に対する基板表面の角度)、並びにSAW共振器の数、種類及び配置を選択することができる。例えば、図3A図4A及び図6Aの帯域通過フィルタは、6個の直列共振器及び4個の分岐共振器を有する。他のフィルタ・アーキテクチャは、より多い又はより少ない直列共振器及び/又は分岐SAW共振器、別様に接続した(例えば分岐共振器を入力及び/若しくは出力ポートから接地に接続させる)同じ数のSAW共振器を含むことができる。SAW共振器の数及び配置に加えて、基板の種類を710で選択することができる(基板の種類は、部分的に、各SAW共振器の共振と反共振との間の周波数間隔を決定する)。710で選択できるフィルタの他の特性には、SAW共振器の櫛形変換器を形成するために使用する金属の種類及び厚さ、櫛形変換器上の誘電体コーティング材料の有無、並びに他の製造関連特性を含むことができる。
【0033】
720で、710で選択したアーキテクチャを使用し、ベースライン・フィルタ設計を確立することができる。ベースライン設計は、例えば、設計技師によって、回路設計ソフトウェア・ツール及び/又は電磁(EM)分析ツールを使用して実施することができる。回路設計ツールを使用する場合、フィルタは、電子回路として分析でき、SAW共振器は、集中化したコンデンサ素子と誘導器素子と抵抗器素子との組合せによって表される。EM分析ツールを使用する場合、フィルタは、基板上のSAW共振器のIDTのモデルによって表すことができる。回路設計ツール及びEM分析ツールのいずれか又は両方は、所定の第1の設計基準を可能な程度に満たすように、フィルタ設計の自動最適化が可能であってもよい。第1の設計基準は、705からのフィルタ規格セットのサブセットであってもよい。例えば、第1の設計基準には、通過帯域に対するより低い周波数及びより高い周波数の規格、並びに任意で1つ以上の停止帯域を含むことができる。第1の設計基準には、通過帯域上のS(2,1)の最小値、及び停止帯域を規定した場合、各停止帯域上のS(2,1)の最大値を含むこともできる。第1の設計基準には、他のフィルタ規格を含むことができる。
【0034】
710で選択したアーキテクチャは、第1の設計基準を必ずしも満たすことができなくてもよいことを留意されたい。例えば、帯域通過フィルタに対する第1の設計基準が狭い通過帯域及び高い停止帯域阻止を含む場合、基準は、わずか数個のSAW共振器を有するアーキテクチャでは満たすことができない。730で、720からのベースライン設計が第1の設計基準を満たすかどうか判定を行うことができる。利用可能なソフトウェア・ツールを使用して可能な程度に最適化したベースライン設計が第1の設計基準を満たさない場合(730で「いいえ」)、工程700は、710に戻り、異なるフィルタ・アーキテクチャを選択することができる。
【0035】
710から730までの動作は、第1の設計基準を満たすベースライン設計が確立されるまで、必要に応じて繰り返すことができる。各SAW共振器は、有限の基板領域を占めるので、より少ない共振器を有するフィルタは、一般に、より小さい基板を使用することになり、より多くの共振器を用いるフィルタよりも少ない製造費用しかかからない。したがって、可能な動作順序は、710で、限界まで少ない共振器を有するフィルタ・アーキテクチャを最初に選択し、次に、710から730の動作を繰り返す毎に、より多くの共振器をアーキテクチャに追加することができる。
【0036】
720で、ベースライン設計が第1の設計基準を満たすという判定を行った場合(720で「はい」)、通過帯域上の入力インピーダンス均一性の改善を目的として、フィルタ設計の更なる最適化を行うことができる。730で、ベースライン・フィルタ設計の分析によって性能測定基準を得ることができる。性能測定基準には、通過帯域上のベースライン・フィルタの入力インピーダンスに関連する1つ以上のパラメータを含むことができる。様々な性能測定基準を図8に関して後で説明する。735で、代替設計を探すべきか否かの判定を行うことができる。ベースライン・フィルタ設計のみを評価した場合、735の判定は、少なくとも1つの代替設計が確立され、評価されるように、常に「はい」となる。
【0037】
725で、以前のフィルタ設計内の共振器の周波数を並べ替えることによって代替フィルタ設計が確立され、即ち、2つ以上の直列共振器の共振周波数を交換できる及び/又は2つ以上の分岐共振器の共振周波数を交換できる。直列共振器及び分岐共振器の共振周波数は、交換しないものとする。2つ以上の共振器の共振周波数の変更は、適切な共振器内のIDTのピッチの変更により達成することができ、一方で他の特性(例えば基板上の共振器の相対位置、各共振器の物理的サイズ、共振器を相互接続する導体及び他の特性)は、変更しないでおく。
【0038】
共振周波数の並べ替えによる代替フィルタ設計の実施は、730で分析し、それぞれの性能測定基準を開発することができる。次に、異なる順の共振器周波数を有する別の代替フィルタ設計を試みるか否かについて、735で再度判定を行うことができる。別の代替フィルタ設計を試みるという判定を行った場合、工程700は725に戻ることができる。725から735の動作は、735で別の試行を必要としないという判定を行うまで繰り返すことができる。
【0039】
可能な代替フィルタ設計の数は、725で選択できる共振器の共振周波数に対する可能な順の数と等しい。したがって、可能な代替フィルタ設計の数は、N!M!によって示されるが、ここでのNは直列共振器の数であり、Mは分岐共振器の数である。図3A図4A及び図5Aの例では、可能な数は、6!4!=(720)(24)=17280である。様々な方策を使用して、725の動作を繰り返す毎の共振周波数の並べ替え方を決定することができる。例えば、共振器周波数に対し可能な順のそれぞれを順次選択し、分析するソフトウェア・プログラムを開発することができる。
【0040】
(共振周波数の可能な順毎の分析と比較して)必要な計算量を低減するために、山登り(hill−climbing)アルゴリズムの変形形態等の反復的方策を使用して、共振器の共振周波数を並べ替えることができる。例えば、725で、一対の直列共振器又は一対の分岐共振器の共振周波数を交換し、得られた代替フィルタを730で分析することができる。フィルタ性能測定基準に基づき、共振周波数を交換した新たな代替フィルタが従来のフィルタよりも改良されている場合、新たな代替フィルタが新たなベースライン設計となる。共振周波数を交換した新たな代替フィルタが従来のフィルタよりも改良されていない場合、変更を取り消す。いずれの場合も、新たな対の共振器を選択するステップ、選択した共振器の共振周波数を交換するステップ、結果を分析するステップ、及び変更を保持するか否かを判定するステップは、繰り返される。したがって、フィルタ性能は、数回の反復にわたって増分的に改良させることができる。いくつかの他の反復的方策を使用して、共振器の共振周波数を並べ替えることができる。
【0041】
フィルタを反復的に最適化する間、いくつかの異なるフィルタ性能測定基準を使用して、新たなフィルタ設計が以前のフィルタ設計よりも改良されているかどうかを判定することができる。図8は、図6のフィルタ600の入力インピーダンスのグラフ800である。グラフ800は、図6Cからのデータを複素インピーダンス平面に変換したものを示す。実線830は、通過帯域上の例示的帯域通過フィルタの入力インピーダンスのプロットである。通過帯域の縁部を表す実線830の端部は、小さな円832、834により示される。破線840、842は、通過帯域外のフィルタの入力インピーダンスのプロットである。
【0042】
以前のフィルタ設計よりも新たなフィルタ設計が改良されているかどうかの判定に使用できる1つのフィルタ性能測定基準は、曲線830上の最も遠い点に対する公称インピーダンス値(この例では50オームの実又は抵抗インピーダンス)からの距離850である。距離850は、ソースによって公称ソース・インピーダンスで駆動した場合の通過帯域内フィルタの最低のケースの反射係数を表す。距離850を適切なフィルタ性能測定基準とし、ソースのソース・インピーダンスが50オーム等の特定値で固定された場合に、新たなフィルタ設計が以前のフィルタ設計よりも改良されているかどうかを判定することができる。
【0043】
いくつかの適用例では、フィルタ駆動ソースのソース・インピーダンスは、特定値で固定せず、フィルタと整合するように調整することができる。この場合、新たなフィルタ設計が以前のフィルタ設計よりも改良されているかどうかの決定のために使用できるフィルタ性能測定基準は、曲線830を取り囲む又は囲む最少円860の直径である。円860の直径は、通過帯域上のフィルタ入力インピーダンスの均一性の測定値である。円860は、通常、最も遠く分離する、曲線830上の2つの点によって決定される。フィルタ駆動ソースのソース・インピーダンスに対する実践的な制限があり得るため、円860の直径と距離850との組合せをフィルタ性能測定基準として使用し、新たなフィルタ設計が以前のフィルタ設計よりも改良されているかどうかを決定することができる。例えば、フィルタ性能測定基準は、距離850が所定値を超えることがない制限内で、円860の直径を低減することであり得る。円860の中心(十字862によって示される)も有用な基準である。というのは、中心は、ソース・インピーダンスの複素共役であり、曲線830上の点の全てに対し良好な平均整合をもたらすことになるためである。
【0044】
より低い計算費用でこの分析に近似できる代替良度指数を使用することもできる。円860の中心は、曲線830上の平均値の計算によって近似的に見つけることができ、円860の半径は、この平均値から複素平面上の最大距離にある曲線830上の点を見つけることによって、近似的に見つけることができる。
【0045】
SAW帯域通過フィルタの多くの適用例では、拡張された温度範囲にわたって動作させなければならない。例えば、家庭用通信デバイスで使用するSAW帯域通過フィルタは、25℃の公称温度に対して設計することができるが、0℃から55℃の温度範囲にわたって動作させる必要がある。産業又は軍事用通信デバイスで使用するSAW帯域通過フィルタは、より大きな温度範囲に対して設計することができる。温度の変動は、SAW共振器の共振周波数を比例的に変化させることになる。このことが生じると、フィルタの入力インピーダンスのプロットの全体形状は変化し得ないが、通過帯域を表すプロットの一部分が変化することになる。図8の例では、通過帯域(実線830)は、連続する曲線832−830−834に沿って変化することになる。通過帯域の一方又は他方の縁部における入力インピーダンスが極限温度で実質的に変化しないことを保証するために、通過帯域の両縁部における入力インピーダンスが、公称温度では公称ソース・インピーダンスに近接するようにフィルタを設計することが好ましい場合がある。この場合、新たなフィルタ設計が以前のフィルタ設計よりも改良されているかどうか決定するために使用できるフィルタ性能測定基準は、実線曲線830の端部832と834との間の距離である。
【0046】
図7を再度参照すると、最終的に、更なる代替フィルタ設計を試行する必要がないという判定を735で行うことができる(735で「いいえ」)。この判定は、全ての可能な共振周波数の並べ方の分析後に行ってもよい。更なる代替フィルタ設計を試行する必要がないという判定は、所定数の無作為に選択した共振周波数の順番を分析した後、又は725から735の動作による所定数の反復サイクルの後に行ってもよい。730での分析結果が、最も直近のフィルタ設計が「十分に良好」であること、即ち、最も直近のフィルタ設計が715からのベースライン設計により満たされた設計基準に加えて、いくつかの更なる設計基準を満たすこと、を示す場合、更なる代替フィルタ設計を試行する必要がないという判定を行うことができる。更なる設計基準は、新たなフィルタ設計が以前のフィルタ設計よりも改良されているかどうかを判定するために730で使用したフィルタ性能測定基準と関連するか又はこれと同じとすることができる。例えば、更なる設計基準は、第1の所定距離よりも短い若しくはそれと等しい距離850、所定の直径よりも小さい若しくはそれと等しい円860の直径、及び/又は第2の所定距離よりも短い若しくはそれと等しい実線曲線830の端部832と834との間とすることができるか、又はこれらを含むことができる。
【0047】
735で更なる代替フィルタ設計を試行する必要がないという判定を行った後、740で最良の設計を選択することができる。最後の設計が「十分に良好」であるとき、更なる代替フィルタ設計を試行する必要がないという判定を行った場合、又は所定数の反復後に更なる代替フィルタ設計を試行する必要がないという決定を行った場合、最後の設計が固有の最良設計となる。可能な共振周波数の順番の全てを分析した後に、更なる代替フィルタ設計を試行する必要がないという決定を行った場合、距離850、円860の直径及び/又は実線曲線830の端部832と834との間等の測定値を使用して最良設計を選択することができる。
【0048】
740で選択した設計は、例えば設計技師によって、回路設計ソフトウェア・ツール及び/又は電磁(EM)分析ツールを使用して745で更に最適化することができる。次に、745からの最適化したフィルタが、705からの規格セット全体を満たすか否かの判定を750で行うことができる。最適化したフィルタが規格を満たす場合(750で「はい」)、工程700は795で終了することができる。最適化したフィルタが規格セットを満たさない場合(750で「いいえ」)、工程700の全て又は部分を繰り返すことができる。例えば、工程700は、710に戻り、異なるフィルタ・アーキテクチャを選択することができる。
【0049】
結びのコメント
【0050】
本明細書全体にわたって示す実施形態及び例は、開示又は請求する装置及び手順に対する限定ではなく典型として考慮すべきである。本明細書に提示した多くの例は、方法動作又はシステム要素の特定の組合せを含むが、これらの動作及び要素は、他の様式で組み合わせて同じ目的を達成することができることを理解されたい。フローチャートに関して、更なるステップ及びより少ないステップを取ることができ、図示するステップを組み合わせる又は更に改良して本明細書に記載の方法を達成することができる。一実施形態に関連してのみ説明した動作、要素及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外することを目的としない。
【0051】
本明細書で使用する「複数」とは、2つ以上を意味する。本明細書で使用する、項目の「セット」は、そのような項目の1つ以上を含むことができる。本明細書で使用する用語「備える」、「含む」、「保持する」、「有する」、「収容する」、「伴う」等は、明細書内の記載であれ、特許請求の範囲内の記載であれ無制限であり、即ち、包括的であるがそれらに限定されないことを意味する。「からなる」及び「から本質的になる」というそれぞれの移行句のみが、特許請求の範囲に対する排他的又は半排他的移行句である。特許請求の範囲の要素を修飾するための、特許請求の範囲における「第1」「第2」「第3」等の順序を示す用語の使用は、それ自体、方法動作を実施する別の順序若しくは時間順序に対し、ある特許請求の範囲の要素に対する優先、優先順位又は順番を何ら暗示するものではなく、特定の名称を有する1つの特許請求の範囲の要素を、同じ名称を有する別の要素から区別するための表示として単に使用しており(順序を示す用語として使用するものではあるが)、特許請求の範囲の要素を区別するものである。本明細書で使用する「及び/又は」は、列挙する項目が代替形態であることを意味するが、こうした代替形態は、列挙する項目のあらゆる組合せも含む。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8