(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなセンサの中には、上述した水しぶきや高圧の水流がかかる環境で使用されるもののほか、エンジンルーム内でのオイル漏れで漏れたオイルやオイル交換/補充時にこぼれたオイルが飛散するなどして、オイルが付着する環境下で使用されるものがある。そして、このような水やオイルが、センサのうち、ケーシングの基端部に付着して、この基端部からセンサ本体の内部に浸入すると、例えば、電極等を変質させたり、浸入したオイルが高温に晒されて揮発することなどにより、センサに不具合を生じるおそれがある。
しかしながら、特許文献1の車載センサでは、センサの基端部を覆うカバー部材の内側に、センサのリード線を包囲するリード包囲チューブが位置していた。このため、リード包囲チューブに水やオイルが付着した場合には、このリード包囲チューブに付着した水やオイルが、リード包囲チューブを伝わって、カバー部材の内側に浸入し、さらに、センサ本体の内部に水やオイルが浸入するのを、適切に防止することができなかった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、センサ本体の内部へ水やオイルが浸入するのを適切に防止できる車載センサ及びガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その一態様は、外筒の外筒基端部をグロメットで閉塞した本体基端部を有する車載センサ本体と、上記グロメットに挿通されてなり、上記本体基端部から上記車載センサ本体の基端側の外部に延出するリード延出部を含むリード線と、上記リード線の上記リード延出部の径方向周囲を包囲するリード包囲チューブと、筒状のカバー部材であって、上記本体基端部を径方向外側から包囲する第1包囲部、及び、上記第1包囲部に連なり、上記リード延出部を径方向外側から包囲する第2包囲部を有するカバー部材と、を備え、上記リード包囲チューブは、上記本体基端部側に位置するチューブ先端部を有し、上記チューブ先端部の内側に、上記カバー部材の上記第2包囲部のうち少なくとも基端側の一部を収容してなる車載センサである。
【0007】
この車載センサでは、カバー部材の第2包囲部がリード線のリード延出部を径方向外側から包囲している。そして、このカバー部材の第2包囲部のうち少なくとも基端側の一部は、リード包囲チューブのチューブ先端部の内側に収容されている。このため、リード包囲チューブに水やオイルが付着し、このリード包囲チューブを伝わって車載センサ側に移動しても、この水やオイルが、カバー部材の内側に浸入するのを防止できる。また、飛散した水やオイルが、直接カバー部材の内側に浸入することも防止できる。
これにより、カバー部材内から車載センサ本体の基端部を通じて、車載センサ本体の内部に水やオイルが浸入して、車載センサに不具合が発生することを適切に防止することができる。
【0008】
なお、カバー部材の材質としては、例えば、PTFE、PFA、FEPなどのフッ素樹脂、FKMなどのフッ素ゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴムなどのシリコーン、EPM、EPDM、CRなどのゴム、PE、PPなどの樹脂(プラスチック)、GFRP、CFRPなどのFRP(繊維強化プラスチック)、ステンレスなどの金属が挙げられる。
また、リード包囲チューブとしては、例えば、PTFE、PFA、FEPなどを用いたフッ素樹脂チューブや、シリコーンゴムチューブ、シリコーンワニスガラス編組チューブなどが挙げられる。
【0009】
さらに、上述の車載センサであって、前記リード包囲チューブの前記チューブ先端部は、前記カバー部材の前記第1包囲部よりも径小である車載センサとすると良い。
【0010】
この車載センサでは、リード包囲チューブのチューブ先端部が、カバー部材の第1包囲部よりも径小であるので、リード包囲チューブが先端側に移動しようとしても、チューブ先端部が、カバー部材のうち第1包囲部または第1包囲部よりも基端側の第2包囲部のいずれかの部位に当たる。従って、リード包囲チューブが車載センサ本体の先端側に向けて移動するのを制限することができる。
【0011】
さらに、上述のいずれかの車載センサであって、前記リード包囲チューブは、少なくとも前記チューブ先端部において、所定内径を有する円筒状であり、前記カバー部材の前記第2包囲部は、少なくとも基端側の一部が上記リード包囲チューブの上記チューブ先端部の内側に収容されると共に、上記チューブ先端部の内径との径差が0.5mm以下の外径を有する円筒状で、前記リード延出部の径方向周囲を包囲する第2円筒包囲部を有する車載センサとすると良い。
【0012】
この車載センサでは、カバー部材の第2包囲部が、チューブ先端部の内径との径差が0.5mm以下の外径を有する円筒状の第2円筒包囲部を有している。これにより、リード包囲チューブを伝わった水やオイルが、チューブ先端部と第2円筒包囲部との間から、カバー部材の内側に浸入しにくくなっている。
【0013】
さらに、上述の車載センサであって、前記カバー部材の前記第2円筒包囲部は、当該第2円筒包囲部の外周面に、上記外周面の周方向に環状に膨出し、前記リード包囲チューブの前記チューブ先端部の内周面に環状に接する環状凸部を複数有する車載センサとすると良い。
【0014】
この車載センサでは、カバー部材の第2円筒包囲部の外周面の環状凸部がリード包囲チューブのチューブ先端部の内周面と接しているので、これらの間の摩擦により、リード包囲チューブが先端側または基端側に向けてずれるのを防止することができる。また、複数の環状凸部の存在により、水やオイルが、チューブ先端部と第2円筒包囲部との間から、カバー部材の内側により浸入しにくくなっている。これにより、水やオイルがカバー部材の内側に浸入するのを、さらに適切に防止することができる。
【0015】
さらに、上述のいずれかの車載センサであって、前記カバー部材の前記第2包囲部は、前記第1包囲部の基端からまたは上記第1包囲部に連なり基端側に延びる筒状の第2先端包囲部の基端から延び、基端側に向かうほど縮径する第2縮径包囲部を有する車載センサとすると良い。
【0016】
この車載センサでは、カバー部材の第2包囲部は、第2縮径包囲部を有している。これにより、複数のリード線のリード延出部がそれぞれグロメットの各所から延出している場合において、これら複数のリード線のリード延出部を、第2縮径包囲部内で纏めながら基端側に向けて適切に導くことができる。
【0017】
さらに、上述のいずれかの車載センサであって、前記カバー部材は、前記リード線の前記リード延出部に沿う方向について生じうる前記リード包囲チューブの先端の可動範囲よりも基端側に、前記第2包囲部の基端が位置する形態を有する車載センサとすると良い。
【0018】
この車載センサでは、カバー部材は、リード包囲チューブの先端の可動範囲よりも基端側に、第2包囲部の基端が位置する形態を有している。
このため、リード包囲チューブがリード線のリード延出部に沿って移動しても、リード包囲チューブのチューブ先端部で、カバー部材の第2包囲部のうち少なくとも基端側の一部を覆い続けることができ、カバー部材の内側へ水やオイルが浸入するのを、確実に防止することができる。
【0019】
また、上述のいずれかの車載センサであって、前記車載センサ本体は、前記本体基端部において、前記外筒の前記外筒基端部に、上記外筒基端部の周方向の少なくとも一部を径方向内側に凹ませた凹部を形成して、前記グロメットを上記外筒基端部に加締め固定してなり、前記カバー部材の前記第1包囲部は、径方向内側に突出して上記凹部に係合する係合凸部を有する車載センサとすると良い。
【0020】
この車載センサでは、カバー部材の第1包囲部の径方向内側に突出する係合凸部が、車載センサ本体のうち外筒の外筒基端部の凹部に係合しているので、カバー部材を、本体基端部に確実に保持させることができる。
【0021】
さらに、上述のいずれかの車載センサであって、前記グロメットは、前記外筒の内外を連通する貫通孔を有し、上記グロメットの上記貫通孔に装着され、水の通過を阻止しつつ、上記外筒内と前記第2包囲部内との間の大気の流通を許容する通気フィルタを備える車載センサとすると良い。
【0022】
この車載センサでは、外筒内との大気の流通を許容する通気フィルタがグロメットの貫通孔に装着されている。この通気フィルタに水やオイルが付着した場合、内外の気圧差などによって、この通気フィルタで通過を阻止できず、水やオイルが車載センサ本体の内部に浸入する場合がある。
しかるに、この車載センサでは、リード包囲チューブのチューブ先端部の内側に、カバー部材の第2包囲部のうち少なくとも基端側の一部を収容している。さらに、通気フィルタは、この第2包囲部内にあるので、水やオイルが通気フィルタに付着するのを、適切に防止することができる。
通気フィルタとしては、例えば、PTFEからなり、撥水性及び通気性を有するシートを用いたものが挙げられる。
【0023】
さらに、上述の車載センサであって、前記車載センサ本体は、被測定ガス中に含まれる特定ガスを検出するガス検出素子を備え、上記ガス検出素子は、前記外筒内に連通する基準ガス室を内部に形成してなるガスセンサとすると良い。
【0024】
この車載センサは、通気フィルタ及びガス検出素子を備えるガスセンサである。そして、ガス検出素子は、通気フィルタを通じてガス検出素子の内部の基準ガス室に大気を導入している。
しかるに、車載センサ本体内に水やオイルが流入すると、電極等を変質させたり、高温に晒されたオイルが揮発することで基準ガスの組成変化を生じて、ガスセンサの出力に異常を生じるなどの不具合が生じるおそれがある。
【0025】
これに対し、このガスセンサでは、リード包囲チューブのチューブ先端部の内側に、カバー部材の第2包囲部のうち少なくとも基端側の一部を収容している。さらに、通気フィルタは、第2包囲部内にあり、水やオイルの浸入を防止している。かくして、車載センサ本体の内部に水やオイルが浸入することによる不具合の発生を、適切に防止することができる。
このようなガスセンサとしては、例えば、被測定ガスとガス検出素子の内部(大気)の酸素濃度差から、被測定ガス中の酸素濃度を検知する酸素センサが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に、本実施形態に係る車載センサであるガスセンサ1を示す。このガスセンサ1は、車両の内燃機関の排気管に装着され、排気ガス中の酸素濃度を測定する酸素センサである。
ガスセンサ1は、軸線AXに沿う軸線方向HJ(図中上下方向)に延びるセンサ本体2(車載センサ本体)のほか、このセンサ本体2のうち基端側GK(図中上方)の本体基端部2Kから基端側GKの外部に延出するリード線3、このリード線3のうち、センサ本体2の外部に延出したリード延出部3eの径方向周囲を包囲するリード包囲チューブ5、センサ本体2の本体基端部2Kに装着されたカバー部材10、リード線3の基端側GKの端部に取り付けられた外部コネクタ8を備える。
【0028】
先ず、
図1及び
図2を用いて、ガスセンサ1のうちセンサ本体2の概略構成について説明する。
ガスセンサ1のセンサ本体2は、排気管に固定するためのネジ部41が外表面に形成された筒状の主体金具40を備える。また、主体金具40の先端側GS(図中下方)には、外側プロテクタ50a及び内側プロテクタ50bからなる二重の有底筒状のプロテクタ50がレーザ溶接により固設されている。一方、主体金具40の基端側GK(図中上方)には、筒状をなす金属製の外筒30がレーザ溶接により固設されている。そして、これらプロテクタ50、主体金具40及び外筒30の内側に、先端側GSが閉じて、基端側GKが開口する有底筒状で、軸線方向HJに延びる断面略U字状のガス検出素子20が、その先端部分をプロテクタ50内に突出させた状態で配置されている。
また、ガス検出素子20の有底孔21内には、内部電極層用接続部材70の先端部分が挿入されると共に、これに保持されたヒータ60が配置されている。
【0029】
ガス検出素子20は、上述したように、断面略U字状の有底筒状で、酸素イオン伝導性を有する固体電解質からなり、ヒータ60で加熱されることにより活性化される。また、ガス検出素子20の有底孔21の内周面には、そのほぼ全面を覆うように、PtあるいはPt合金により多孔質に形成された内部電極層23が公知の無電解メッキ法により形成されている。さらに、この内部電極層23は、ガス検出素子20の有底孔21に挿入された内部電極層用接続部材70に電気的に接続している。
【0030】
一方、ガス検出素子20の軸線方向HJの中間部には、径方向外側に突出する係合フランジ部22が設けられており、ガス検出素子20のうち、係合フランジ部22よりも先端側GSの外周面の全面には、内部電極層23と同様な多孔質の外部電極層24が形成されている。さらに、この外部電極層24は、ガス検出素子20の基端側GKに外嵌された外部電極層用接続部材71に電気的に接続している。
【0031】
また、後述するように、ガス検出素子20の有底孔21は、外筒30内の基準ガス空間30vに連通しており、有底孔21内には、基準ガス(大気)が導入された基準ガス室GRが形成されている。
これにより、ガス検出素子20の内部電極層23は、基準ガス室GR内の基準ガス(大気)に接触する一方、ガス検出素子20の外部電極層24は、プロテクタ50内で、被測定ガスに接触する。このため、ガス検出素子20の内部電極層23と外部電極層24との間には、酸素濃度差に応じた起電力が発生し、被測定ガス中の酸素濃度を測定することが可能になっている。
【0032】
また、主体金具40は、その内部に、径方向内側に突出する段部42を有している。主体金具40の段部42には、先端側GSから基端側GKに向かって順に、金属製パッキン43、アルミナからなる筒状のセラミックホルダ44、及び、金属製パッキン45が配置され、これらを介して、ガス検出素子20の係合フランジ部22を保持されている。さらに、ガス検出素子20の係合フランジ部22の基端側GKに、滑石などのセラミック粉末46が充填され、さらにその基端側GKに、アルミナからなる筒状のセラミックスリーブ47が配設されている。セラミックスリーブ47の基端側GKには、金属製パッキン48が配置されると共に、主体金具40の基端部40Kが、径方向内側に屈曲して加締められて、金属製パッキン48を介して、セラミックスリーブ47を押圧している。これにより、セラミック粉末46が圧縮され、主体金具40内にガス検出素子20が気密に保持されている。
【0033】
一方、主体金具40の基端側GKに固設された外筒30は、基端側GKから先端側GSに向けて、外筒基端部31、第1径大部32、縮径部33、及び第2径大部34を有している。このうち、第2径大部34は、先端側GSの部位が、径方向内側に縮径され、レーザ溶接により主体金具40に固設されている。
また、外筒基端部31の内側には、後述するように、フッ素ゴム製のグロメット4が加締め固定されており、これにより、センサ本体2の本体基端部2Kとなる外筒30の外筒基端部31が、グロメット4で閉塞されている。
【0034】
このグロメット4には、センサ出力リード線3S1,3S2及びヒータリード線3h
1,3h2(3h2は3h1と軸線AXに対して対称位置)の合計4本のリード線3が挿
通され、本体基端部2Kからセンサ本体2の基端側GKの外部に延出している。
さらに、グロメット4の中央部分には、貫通孔4cが設けられ、この貫通孔4c内に通気フィルタ6が配設されている。後述するように、この通気フィルタ6を通じて、外筒30内に、外部の大気が導入される。
【0035】
また、外筒30のうち、第1径大部32及び縮径部33の内側に、絶縁性のアルミナセラミックからなる筒状のセパレータ80が保持されている。このセパレータ80内には、内部電極層用接続部材70、外部電極層用接続部材71及びヒータリード線用接続部材72,73が配設されている。さらに、セパレータ80内で、センサ出力リード線3S1が内部電極層用接続部材70に、センサ出力リード線3S2が外部電極層用接続部材71にそれぞれ接続している。また、同じくセパレータ80内で、ヒータリード線3h1がヒータリード線用接続部材72に、ヒータリード線3h2がヒータリード線用接続部材73にそれぞれ接続している。また、ヒータリード線用接続部材72,73は、ヒータ60に接続している。
【0036】
次いで、本実施形態に係るガスセンサ1のうち、センサ本体2の基端部分の構成について、
図3を参照してさらに説明する。
センサ本体2は、前述したように、外筒30の外筒基端部31を、フッ素ゴム製のグロメット4で閉塞した本体基端部2Kを有している。具体的には、センサ本体2は、本体基端部2Kにおいて、外筒30の外筒基端部31の周方向全体を径方向内側に環状に凹ませた凹部31aを形成して、グロメット4を外筒基端部31に加締め固定している。
【0037】
また、グロメット4は、前述したように、その中央部分に、外筒30の内外を連通する貫通孔4cを有しており、この貫通孔4cには、PTFEからなり、撥水性及び通気性を有するシート形状の通気フィルタ6を、円筒状の挿入部材7に被せて装着している。なお、通気フィルタ6は、水の通過を阻止しつつ、外筒30の内外の大気の流通を許容している。
このため、外筒30の外部の大気が、通気フィルタ6を通じて外筒30内に導入され、ひいては、ガス検出素子20の有底孔21内に導入される。これにより、外筒30内には、基準ガス空間30vが形成され、ガス検出素子20の有底孔21内には、外筒30内の基準ガス空間30vに連通する基準ガス室GRが形成されている。
【0038】
また、グロメット4のうち、貫通孔4cの周囲には、4本のリード線3(センサ出力リード線3S1,3S2及びヒータリード線3h1,3h2)を挿通するためのリード線用挿通孔4hが、貫通孔4cを取り囲むように90°間隔で4箇所に設けられている。そして、4本のリード線3は、それぞれグロメット4の各所のリード線用挿通孔4hに挿通され、センサ本体2の基端側GKの外部に、これらリード線3のリード延出部3eが延出している。
【0039】
リード線3のうち、センサ本体2の基端側GKの外部に延出するリード延出部3eの径方向周囲は、シリコーンワニスガラス編組チューブからなるリード包囲チューブ5により包囲されている。また、センサ本体2の本体基端部2Kには、フッ素ゴムからなる筒状のカバー部材10が装着されており、このカバー部材10の基端側GKの部位(後述する第2円筒包囲部13)は、リード延出部3eの径方向周囲を包囲しつつ、リード包囲チューブ5のうち本体基端部2K側に位置するチューブ先端部5Sの内側に収容されている。
【0040】
図4に、カバー部材10の半断面図を示す。カバー部材10は、外径D3の円筒状をなし、センサ本体2の本体基端部2Kを径方向外側から包囲する第1包囲部11、及び、第1包囲部11に連なり、リード線3のリード延出部3eを、より詳しくは、そのうちグロメット4に隣接する隣接リード延出部3aを径方向外側から包囲する第2包囲部12を有する。
【0041】
なお、カバー部材10の第1包囲部11の径方向内側には、外筒30の外筒基端部31の凹部31aに係合する断面半円状の係合凸部16が突出している。この係合凸部16が外筒基端部31の凹部31aに係合することにより、カバー部材10が、センサ本体2の本体基端部2K(外筒基端部31)に確実に保持されている。
【0042】
一方、カバー部材10の第2包囲部12のうち、第1包囲部11に連なって基端側GKに延びる先端側GSの第2先端包囲部15も、第1包囲部11と同径の外径D3の円筒状をなしている。すなわち、カバー部材10のうち、第1包囲部11及びその基端11Kに連なる第2先端包囲部15が、外径D3の円筒状をなしている。
【0043】
また、カバー部材10の第2包囲部12のうち基端側GKには、第1包囲部11及び第2先端包囲部15よりも径小(D2<D3)である外径D2の円筒状で、リード線3のリード延出部3e、具体的には、隣接リード延出部3aの径方向周囲を包囲する第2円筒包囲部13が設けられている。この第2円筒包囲部13は、リード包囲チューブ5のうち円筒状のチューブ先端部5Sの内側に収容されており、チューブ先端部5Sの内径D1(
図3参照)と第2円筒包囲部13の外径D2との径差(D1−D2)は0.5mm以下(より具体的には、0.1mm以下)となっている。
【0044】
このように、本実施形態のガスセンサ1では、カバー部材10の第2円筒包囲部13が、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sの内側に収容されているので、リード包囲チューブ5に付着した水やオイルが、このリード包囲チューブ5を伝わって、カバー部材10の内側に浸入するのを防止している。特に本例では、チューブ先端部5Sの内径D1と第2円筒包囲部13の外径D2との径差(D1−D2)が0.5mm以下の小さな値とされていることにより、リード包囲チューブ5を伝わった水やオイルが、チューブ先端部5Sと第2円筒包囲部13との間から、カバー部材10の内側に浸入しにくくなっている。
【0045】
さらに、カバー部材10の第2包囲部12は、第2先端包囲部15の基端15Kから、基端側GKに向かうほど縮径する第2縮径包囲部14を有しており、この第2縮径包囲部14の基端側GKに第2円筒包囲部13が連なっている。
これにより、グロメット4の各所のリード線用挿通孔4hから延出したリード線3のリード延出部3e(隣接リード延出部3a)が、第2縮径包囲部14の内側に収容され、これらが第2縮径包囲部14内で纏めて基端側GKの第2円筒包囲部13内に導かれている。
【0046】
また、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sは、カバー部材10の第1包囲部11よりも径小(チューブ先端部5Sの内径D1<第1包囲部11の外径D3)となっている。より具体的には、チューブ先端部5Sは、カバー部材10の第2縮径包囲部14のうち基端側GKの部位よりも径小である。このため、リード包囲チューブ5が先端側GSに移動しようとしても、チューブ先端部5Sが、カバー部材10のうち、第1包囲部11よりも基端側GKの第2縮径包囲部14に当たるので、これにより、リード包囲チューブ5の先端側GSへの移動が制限されている。
【0047】
また、
図1に示すように、リード線3の基端側GKの端部には、リード線3をリード包囲チューブ5内に挿通した後に、外部コネクタ8が取り付けられており、この外部コネクタ8によって、リード包囲チューブ5の基端側GKへの移動が制限されている。そして、このように、カバー部材10及び外部コネクタ8によって、リード包囲チューブ5の先端側GS及び基端側GKへの移動がそれぞれ制限されることにより、リード包囲チューブ5の可動範囲が制限されている。
なお、カバー部材10では、第2円筒包囲部13が長くされ、第2包囲部12の基端12K(第2円筒包囲部13の基端)が、リード包囲チューブ5の先端5SSの可動範囲mrよりも基端側GKに位置する形態を有している(
図3参照)。このため、リード包囲チューブ5がリード線3のリード延出部3eに沿って基端側GKに移動したとしても、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sが、第2円筒包囲部13の少なくとも基端側GKの一部を確実に覆うようになっている。
【0048】
以上で説明したように、本実施形態では、車載センサとして、排気ガス中の酸素濃度を測定するガスセンサ1(酸素センサ)を示した。このガスセンサ1では、カバー部材10の第2包囲部12がリード線3のリード延出部3e、具体的には、隣接リード延出部3aを径方向外側から包囲している。そして、このカバー部材10の第2包囲部12のうち基端側GKの一部(具体的には、第2円筒包囲部13)は、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sの内側に収容されている。このため、リード包囲チューブ5に水やオイルが付着し、このリード包囲チューブ5を伝わってガスセンサ1側に移動しても、この水やオイルが、カバー部材10の内側に浸入するのを防止できる。また、飛散した水やオイルが、直接カバー部材10の内側に浸入することも防止できる。
これにより、カバー部材10内からセンサ本体2の本体基端部2Kを通じて、センサ本体2の内部に水やオイルが浸入して、ガスセンサ1に不具合が発生することを適切に防止することができる。
【0049】
特に、本実施形態のガスセンサ1は、本体基端部2Kに、グロメット4に装着された通気フィルタ6を備えており、この通気フィルタ6を通じて、ガス検出素子20の有底孔21に形成された基準ガス室GRに大気を導入している。
このため、通気フィルタ6に水やオイルが付着すると、内外の気圧差などによって、通気フィルタ6で通過を阻止できず、水やオイルがセンサ本体2の内部に浸入するおそれがある。センサ本体2内に水やオイルが流入すると、電極等を変質させたり、高温に晒されたオイルが揮発することで基準ガスの組成変化を生じて、ガスセンサ1の出力に異常を生じるなどの不具合が生じるおそれがある。
【0050】
これに対し、本実施形態のガスセンサ1では、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sの内側に、カバー部材10の第2包囲部12のうち基端側GKの一部(第2円筒包囲部13)を収容している。さらに、通気フィルタ6は、第2包囲部12内にあり、水やオイルの浸入を防止している。かくして、センサ本体2の内部に水やオイルが浸入することによる不具合の発生を、適切に防止することができる。
【0051】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sが、カバー部材10の第1包囲部11よりも径小(チューブ先端部5Sの内径D1<第1包囲部11の外径D3)であるので、リード包囲チューブ5が先端側GSに移動しようとしても、チューブ先端部5Sが、カバー部材10のうち第1包囲部11よりも径小となっている第2包囲部12の部位(具体的には、第2縮径包囲部14の基端側GKの部位)に当たる。従って、リード包囲チューブ5が車載センサ本体2の先端側GSに向けて移動するのを制限することができる。
【0052】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、カバー部材10の第2包囲部12が、チューブ先端部5Sの内径D1との径差が0.5mm以下の外径D2を有する円筒状の第2円筒包囲部13を有している。これにより、リード包囲チューブ5を伝わった水やオイルが、チューブ先端部5Sと第2円筒包囲部13との間から、カバー部材10の内側に浸入しにくくなっている。
【0053】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、カバー部材10の第2包囲部12は、第2縮径包囲部14を有している。本実施形態では、複数(4本)のリード線3(センサ出力リード線3S1,3S2及びヒータリード線3h1,3h2)のリード延出部3eがそれぞれグロメット4の各所のリード線用挿通孔4hから延出しており、これら複数のリード線3のリード延出部3e(隣接リード延出部3a)を、第2縮径包囲部14内で纏めながら基端側GKの第2円筒包囲部13内に向けて適切に導くことができる。
【0054】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、カバー部材10は、リード包囲チューブ5の先端5SSの可動範囲mrよりも基端側GKに、第2包囲部12の基端12K(第2円筒包囲部13の基端)が、位置する形態を有している。
このため、リード包囲チューブ5がリード線3のリード延出部3eに沿って移動しても、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sで、カバー部材10の第2包囲部12(第2円筒包囲部13)のうち少なくとも基端側GKの一部を覆い続けることができ、カバー部材10の内側へ水やオイルが浸入するのを、確実に防止することができる。
【0055】
また、本実施形態のガスセンサ1では、カバー部材10の第1包囲部11の径方向内側に突出する係合凸部16が、センサ本体2のうち外筒30の外筒基端部31の凹部31aに係合しているので、カバー部材10を、本体基端部2K(外筒基端部31)に確実に保持させることができる。
【0056】
(変形形態)
次いで、上述の実施形態の変形形態について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5に示す本変形形態で用いるカバー部材10Aは、第2円筒包囲部13に、複数の環状凸部13Tを設けている点で、実施形態で用いたカバー部材10と異なる。環状凸部13Tは、第2円筒包囲部13の外周面13mの周方向に環状に膨出している。
【0057】
本変形形態のガスセンサ1Aでは、
図6に示すように、このカバー部材10Aを、実施形態のカバー部材10に代えて、センサ本体2の本体基端部2Kに装着し、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sの内側に、カバー部材10Aの第2円筒包囲部13を収容している。このため、第2円筒包囲部13に設けられた環状凸部13Tが、リード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sの内周面5mに環状に接する。
【0058】
したがって、本変形形態のガスセンサ1Aでは、実施形態と同様の作用効果を奏するほか、カバー部材10Aの第2円筒包囲部13の外周面13mの環状凸部13Tがリード包囲チューブ5のチューブ先端部5Sの内周面5mと接しているので、これらの間の摩擦により、リード包囲チューブ5が先端側GSまたは基端側GKに向けてずれるのを防止することができる。また、複数の環状凸部13Tの存在により、水やオイルが、チューブ先端部5Sと第2円筒包囲部13との間から、カバー部材10Aの内側により浸入しにくくなっている。これにより、水やオイルがカバー部材10Aの内側に浸入するのを、さらに適切に防止することができる。
【0059】
以上において、本発明の車載センサを、実施形態及び変形形態のガスセンサ1,1Aに即して説明したが、本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態及び変形形態では、車載センサとして、通気フィルタ6を備えたガスセンサ1,1A(酸素センサ)を示したが、本発明における車載センサは、これに限られない。例えば、本体基端部に通気フィルタを備えていない酸素センサのほか、窒素酸化物(NOx)の濃度を検出するNOxセンサ、CO濃度を検出するCOセンサ、水素ガスを検知する水素センサなどの他のガスセンサであっても良く、また、排気ガス温度を測定する排気温度センサなど、ガスセンサ以外のセンサであっても良い。
【0060】
また、実施形態及び変形形態では、カバー部材10,10Aのうち、第1包囲部11及びその基端11Kに連なる第2先端包囲部15を外径D3の円筒状とし、第2縮径包囲部14を、第2先端包囲部15の基端15Kから縮径する形態とした。しかし、第2包囲部12に第2先端包囲部15を設けず、第2縮径包囲部14を、第1包囲部11の基端11Kから縮径する形態としても良い。
なお、カバー部材の材質及び形状は、実施形態及び変形形態に限られず、適宜変更が可能である。カバー部材の変形例として、例えば、
図7〜
図9に示すカバー部材210,310,410のような形状のものが挙げられる。また、リード包囲チューブの太さ、材質及び形状も、適宜変更が可能である。