特許第6194145号(P6194145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194145
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】機能性成分搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20170828BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20170828BHJP
   B60H 3/00 20060101ALI20170828BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20170828BHJP
   F24F 6/00 20060101ALN20170828BHJP
【FI】
   A61L9/00 Z
   A61L9/01 Q
   B60H3/00 J
   B60H1/34 611Z
   !F24F6/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-46580(P2014-46580)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-167796(P2015-167796A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】岩井 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀雄
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−064608(JP,A)
【文献】 特開2010−042749(JP,A)
【文献】 実開平05−052628(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/072744(WO,A1)
【文献】 特表2007−517725(JP,A)
【文献】 特開2005−000305(JP,A)
【文献】 特開2002−283844(JP,A)
【文献】 特開2004−160374(JP,A)
【文献】 特開平10−068548(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0253800(US,A1)
【文献】 特開2010−089685(JP,A)
【文献】 特開2006−282085(JP,A)
【文献】 特開2008−195178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/
B60H 1/
B60H 3/
F24F 6/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層流からなる搬送流を所定方向に生成する搬送流生成手段と、
機能性成分を該搬送流内に導入する機能性成分導入手段とを備え、
前記搬送流生成手段は、内部が空洞である複数の気筒の集合体を備えて気流を整流する搬送流整流器を備え、
前記機能性成分が、前記搬送流整流器の中心寄りに配置された少なくとも一つの前記気筒に導入されて前記層流からなる前記搬送流の中心寄りに導入され、
該搬送流により該機能性成分を所望位置まで搬送し得ることを特徴とする機能性成分搬送装置。
【請求項2】
層流からなる搬送流を所定方向に生成する搬送流生成手段と、
機能性成分を該搬送流内に導入する機能性成分導入手段とを備え、
前記搬送流生成手段は、内部が空洞である複数の気筒の集合体を備えて気流を整流する搬送流整流器を備え、
前記機能性成分の機能を弱める又は無効化する効果のある抑止成分が、前記搬送流整流器の外周寄りに配置された少なくとも一つの気筒に導入され
該搬送流により該機能性成分を所望位置まで搬送し得ることを特徴とする機能性成分搬送装置
【請求項3】
前記搬送流生成手段は、
搬送流整流器を所定方向に把持する把持具と、
前記搬送流の流速を調整する流速調整手段と、
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の機能性成分搬送装置。
【請求項4】
更に、前記気流を発生させる送風機を備える請求項1〜3のいずれかに記載の機能性成分搬送装置。
【請求項5】
前記機能性成分導入手段は、
更に、前記搬送流内の前記機能性成分の濃度を調整する濃度調整手段を具備する請求項1〜4のいずれかに記載の機能性成分搬送装置。
【請求項6】
複数種の前記機能性成分が、それぞれ異なる前記気筒に導入されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の機能性成分搬送装置。
【請求項7】
車両に搭載して車室内に機能性成分を搬送する機能性成分搬送装置であって、
運転環境情報又は乗員の観測状態に応じて前記搬送流内に導入する前記機能性成分を変更する制御手段を具備する請求項1〜6のいずれかに記載の機能性成分搬送装置。
【請求項8】
前記制御手段は、車両の空調システムの一部に組み込まれることを特徴とする請求項に記載の機能性成分搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能性成分を所望位置まで搬送する機能性成分搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内をより快適にするために、多くの人が車室内に芳香剤を設置している。芳香の種類によって、乗員をリラックスさせたりリフレッシュさせる効果がある。昨今、車用品専門店だけでなく一般的な量販店においても、専用の容器に入っている液体やゲル状の固体に芳香成分が含まれているタイプや、吊り下げ可能なシート状の厚紙に芳香成分を染み込ませているタイプの車室内用芳香剤を安価で手軽に入手することができる。しかし、これらの芳香剤は芳香成分をただ自然揮発させて車室内全体に充満させているに過ぎない。そのため、より快適な車室内空間を提供するために、下記の特許文献のような様々な方式を用いた車室内に機能性成分を供給する装置が提供されている。
【0003】
特許文献1には、エアコンからの空気に芳香成分を添加して送風路の先端に設けられた空気吹き出しノズルから放出し、さらにその空気の供給量を制御することができる車両用芳香制御装置を提供している。乗員はエアコン以外の風圧による違和感を感じることがないのに加え、芳香成分の放出位置及び強度を時間で制御するため、乗員が芳香に順応(麻痺)してしまうのを抑制できる。
【0004】
特許文献2には、所定の空気質成分を含む空気砲(渦輪)を、インストルメントパネル内、オーバーヘッドモジュール、及びヘッドライニング部等に設定した放出口から所定の乗員に向けて断続的に放出し、渦輪が乗員に到達した際所定の空気質成分が拡散する車両用の空気質成分供給装置を提供している。これにより、個別の乗員毎に異なる空気質成分の効果を伝達することができる。
【0005】
特許文献3には、特許文献2と同様に空気砲を使った車両用効能成分供給装置が提供されている。具体的には、少なくともいずれか1つに特定の効能成分を含む2つの渦輪を、所定の乗員に向けて放出し、乗員に衝突する前に渦輪を互いに衝突及び崩壊させることで、乗員に風圧の変化による違和感を与えることなく効能成分を届けるものである。所定の乗員の近くで渦輪が崩壊して効能成分が拡散するため、他の乗員は効能成分を感じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−89685号公報
【特許文献2】特開2006−282085号公報
【特許文献3】特開2008−195178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のエアコンの空気に芳香成分を添加する方法では、空気吹き出しノズルから放出された気流は乱れ成分が大きく、放出直後から拡散が始まり、所定の乗員だけに芳香成分を送り届けることはできない。また、特許文献2及び3の空気砲を用いる装置では、所定の乗員に所定の効能成分を搬送することができるが、渦輪は複雑かつ不安定な流体現象であるため、搬送方向及び時間を正確に制御するのは困難である。
【0008】
本発明の目的は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、機能性成分を所望位置へ拡散を抑制して精度よく搬送することができる機能性成分搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、機能性成分を所定方向に流れる単純かつ安定な層流の流れの中に導入することで、周辺空気への機能性成分の拡散を抑制して遠くに搬送することができると考え、この着想を具体化すると共に発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の第1および第2の機能性成分搬送装置は、層流からなる搬送流を所定方向に生成する搬送流生成手段と、機能性成分を該搬送流内に導入する機能性成分導入手段とを備え、該搬送流により該機能性成分を所望位置まで搬送し得ることを特徴とする。本発明の第1の機能性成分搬送装置では、前記搬送流生成手段は、内部が空洞である複数の気筒の集合体を備えて気流を整流する搬送流整流器を備え、前記機能性成分が、前記搬送流整流器の中心寄りに配置された少なくとも一つの前記気筒に導入されて前記層流からなる前記搬送流の中心寄りに導入される。本発明の第2の機能性成分搬送装置では、前記搬送流生成手段は、内部が空洞である複数の気筒の集合体を備えて気流を整流する搬送流整流器を備え、前記機能性成分の機能を弱める又は無効化する効果のある抑止成分が、前記搬送流整流器の外周寄りに配置された少なくとも一つの気筒に導入される。
【0011】
なお、本発明に係る搬送流生成手段は、搬送流整流器を所定方向に把持する把持具と、搬送流の流速を調整する流速調整手段とをさらに具備していてもよい。一方、本発明に係る機能性成分導入手段は、機能性成分を空気中に放出させ、更に放出した機能性成分を搬送流内に導入してもよい
【0012】
外部から供給された気流は、流速調整手段にて所定の流速に調整されて搬送流整流器へ送風される。所定の流速とは、機能性成分を搬送させたい距離によって決められる。搬送距離は搬送流の流速に比例するため、より遠くに搬送したい場合、流速を増加させればよい。搬送流整流器は、供給された多少の乱れ成分を含む気流を、具備する複数の気筒の内部を通過させて層流状態まで整流する。層流とは、隣り合う流体の分子が混ざり合うことなく整然と一方向に流れる状態であり、流体の慣性力と粘性力の比で表わされるレイノルズ数が一般的に2000〜4000より低い領域で発生するとされ、例えば円管の内部を流れる気流は、管の直径を小さくする、気流の速度を小さくする、及び気流の温度を上げて粘性を増加させるとより層流になり易くなる。把持具は、搬送流整流器を機能性成分を搬送させたい方向に向けて把持する。このようにして所定方向に生成された層流からなる搬送流内に、機能性成分導入手段により生成された機能性成分が導入される。この時、搬送流のより中心寄りに機能性成分が導入されると好適である。前述のように、層流内で機能性成分の分子が拡散することはほぼないため、搬送流の直線的な流れに乗って所望位置まで運ばれる。
【0013】
本発明に係る機能性成分搬送装置を車両に搭載して、搬送流の速度と搬送流整流器の向き等を調整することで、機能性成分の拡散を抑制して所定の乗員に所望の機能性成分を搬送することができる。また、従来のような空気砲により渦輪を発生させる装置に比べ、単純な構成の装置であるためより安価で提供でき、所定の流速に調整された安定した層流に乗せることで搬送タイミングもより正確に計ることができる。また、定常の流れに機能性成分を乗せるため、機能性成分の有無によって流速変化がほぼないので乗員に違和感を感じさない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】臭気成分と消臭成分を用いた実施形態を示す搬送流整流器と流線イメージの該略説明図である。
図2】搬送流整流器の気筒の長さを位置によって変えた実施形態を示す該略説明図である。
図3】実施例の臭気成分搬送装置の該略説明図である。
図4】実施例における搬送流及び臭気を感じた距離と搬送流の流速の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪搬送流生成手段≫
本発明に係る搬送流生成手段は、内部が空洞である複数の気筒の集合体を備えて気流を整流する搬送流整流器と、整流器を所定方向に把持する把持具と、搬送流の流速を調整する流速調整手段とを具備して、所定方向に流れる層流からなる搬送流を生成する。
【0016】
(1)搬送流整流器は、外部から供給される乱れ成分を含む気流を層流状態に整流するために、ストローのような内部が空洞となっている細長い複数の気筒の集合体を備えて、その一つ一つの気筒の内部に気流を一方向に流して整流する。実施の一形態として、一つの筒状匡体の内部を複数の壁面で仕切ってハニカム状の複数の個別の気筒を形成した搬送流整流器を用いることができる。この搬送流整流器の中心寄りに配置された少なくとも1つの気筒に少なくとも一つの機能性成分導入手段を連結させて、層流からなる搬送流の中心寄りに機能性成分を導入する。または、別形態として、外部からの気流を2つ以上に分岐させ、少なくとも1つの分岐された気流は少なくとも一つの機能性成分導入手段を経由して機能性成分が気流に導入された後、搬送流整流器の中心寄りに配置された少なくとも1つの気筒に送られる。一方、残りの分岐された気流はそのまま搬送流整流器の残りの気筒に供給される。こうして、層流からなる搬送流の中心寄りに機能性成分が導入された搬送流が配流される。各気筒の断面形状は、層流を生成することができる範囲内で、円、楕円、多角形、その他任意の形状とすることができる。また、各気筒の流量調整手段として、長さ及び断面積の調整の他、オリフィス板やニードルの設置などがあるため、詳細を後述する。
【0017】
搬送流の中心寄りに1種類の機能性成分を導入する場合は、機能性成分の拡散を抑えて到達距離をより伸ばすことができる。一方、搬送流整流器の異なる任意の位置にある複数の気筒に複数の種類の機能性成分を導入すれば、搬送流内で異なる機能成分を任意の割合で混合して搬送することもできる。また別の実施形態として、搬送流整流器の外周寄りに位置する複数の気筒に、中心寄りに導入された機能成分の機能を弱めるまたは無効化する抑止成分を導入すれば、機能性成分を打ち消す搬送流のバリア層を形成することもできる。図1に、本発明に係る機能性成分搬送装置を車両に搭載して、搬送流の中心寄りに眠気覚まし効果がある強い臭気成分を導入し、搬送流の外周寄りに消臭成分を導入して、運転者に向けて搬送する実施形態を示す。搬送流整流器4の中心寄りに配置された気筒7に強い臭気成分が導入され、外周寄りに配置された気筒8に消臭成分が導入される。図1に示される矢印は気流の流線イメージであり、太実線は強い臭気成分が導入された搬送流Nのイメージを示し、細点線は機能性成分を含まない搬送流Hのイメージを示し、太点線は消臭成分が導入された搬送流Dを示す。もし臭気成分が導入された搬送流Nが外側に広がったとしても、外周を取り囲む消臭成分が導入された搬送流Dからなるバリア層によって、強い臭気が消臭される又は弱められるため、他の乗員が強い臭気により不快に感じることが少ない。バリア層には除菌成分等を用いたり、バリア層により花粉等のブロックも可能となる。このように、導入する機能性成分の種類や種類数と、機能性成分を導入する搬送流整流器の気筒位置や気筒数との組み合わせは、使用目的に応じて適宜調整すればよい。
【0018】
(2)把持具は、所望位置に機能性成分を搬送するために、搬送流整流器を所定方向に把持する。よって、上下左右自在に変更し得る構成が好適である。向きの変更は手動でなされてもよいし、把持具にモータ等を内蔵して自動でなされてもよい。
【0019】
(3)搬送流の流速を調整する流速調整手段は、所望位置に機能性成分を搬送するために必要な流速目標があり、その流速目標を達成するために必要な気流の流量を、搬送流整流器の気筒の断面積及び配管抵抗などから算定して、外部から供給される流量をその算定流量に調整することによって行われる。気流の流量は、流量調節弁や流量制御バルブ等の流量調節器を用いて自在に調整することができる。また、別形態として、気流を外部から供給するのではなく、気流を起こし得る専用の送風機を具備してもよい。流量が調整された外部からの気流若しくは送風機からの気流は、搬送流整流器の気筒へ供給され、所定の流速を持つ搬送流が生成される。気流の供給量を全体的に増加させて、全体的な搬送流の速度を上げれば、より遠くに機能性成分を搬送することができる。また、搬送流の速度から所望位置までの搬送時間が推定できるので、機能性成分を作用させたいタイミングに合わせて機能性成分搬送のタイミングを計ることが可能である。
【0020】
さらに、搬送流整流器の各気筒に供給する気流の供給量をそれぞれ個別に調整できれば、搬送流の流れと直行する断面における流速分布を調整でき、機能性成分の広がり具合を制御することができる。また、この流速分布は、各気筒の流量を個別に調整しなくとも、搬送流整流器の各気筒の長さ及び断面積の調整の他、オリフィス板やニードルの設置などにより配管抵抗に変化を持たせて調整することもできる。搬送流整流器の気筒の配管抵抗を大きくするには、気筒を長くする、若しくは気筒の直径(断面)を小さくすればよく、配管抵抗を小さくするには、その逆にすればよい。例えば、気筒の長さを位置によって変えた変形例を図2に示す。図2の(a)のように気筒5,7の長さを集合体外側に向かって次第に短くすれば配管抵抗も従って小さくなり、よって外側の搬送流Hの流速が速くなる。逆に(b)のように気筒5,7の長さを集合体中心側に向かって次第に短くすれば配管抵抗も従って小さくなり、よって中心側の搬送流Hの流速が速くなる。なお、図2に示される矢印は気流の流線イメージであり、太実線は機能性成分が導入された搬送流Nのイメージを示し、細点線は搬送流Hのイメージを示す。
【0021】
≪機能性成分導入手段≫
機能性成分導入手段は、揮発等のガス化、放電等によるイオン化、及びマイクロカプセル等の細かな粒子化等によって機能性成分を空気中に放出させて、機能性成分を搬送流内へ導入する。更に、搬送流内の機能性成分の濃度を調整する濃度調整手段を具備することが好ましい。例えば、濃度調整手段を具備する機能性成分導入手段として、本発明者による特開2014−008944号公報に記載されているような揮発成分供給装置及び揮発剤カートリッジを用いることができる。このような機能性成分の濃度を調整可能な装置を用いれば機能性成分の効果に強弱の変化を付けられるので、機能性成分の作用に順応(麻痺)してしまうのを抑制し得る。また、2つ以上の異なる揮発剤カートリッジを連結させれば、放出する機能性成分の種類を自在に変更したり、2種類以上の機能性成分を同時に放出させて場面に合わせて適切な混合比で調合された機能性成分を導入し得る。
【0022】
≪制御手段≫
本発明に係る機能性成分搬送装置は、各気筒への気流の供給量、搬送流内へ導入する機能性成分の種類、種類数、導入する搬送流整流器の気筒位置や気筒数、搬送タイミング、又は搬送流整流器の把持向き等を適宜調整することで、所望の機能性成分を所望のタイミングで所定の搬送位置及び広がり具合で搬送することができる。本発明に係る機能性成分搬送装置が、車両に搭載されてラジオ、AV機器、又はカーナビゲーション等の車載機器や装置と連結し、それらの機器や装置から入力された情報に基づいて、搬送流内に導入する機能性成分を変更し得る制御手段を備えることもできる。例えば、ラジオやAV機器の音楽などの情報、及びカーナビゲーションなどからの位置情報を利用して、例えば山間部のワインディングロードや海岸線の直線道路等、その走行場面に適した機能性成分に切り替えて搬送することができる。更には、渋滞情報、走行データ、及び車室内カメラなどの人間計測による観測データなどから運転者の心理的、身体的疲労及び覚醒状態等を判断し、快適な運転状態を維持する効果のある機能性成分を選択して搬送流内に導入し、必要とする運転者へ搬送することもできる。
【0023】
さらに、前述の制御手段が車両の空調システムに組み込まれて、空調システムと一体で運用されることもできる。その場合、エアコンブロワからの気流の一部を機能性成分搬送装置へ取り込こんだり、車室内の美観を損なわないように、搬送流生成手段をエアコンの吹き出し口と共用、若しくは吹き出し口の内部又は周辺に併合してもよい。車両に1つの搬送流生成手段が設置された場合、各乗員の座席位置と機能性成分種類等を設定すれば、搬送流整流器の向き、搬送流の流速、機能性成分の種類及び機能性成分放出タイミング等が制御され、一定時間ごと交互に各乗員に機能性成分の自動搬送をすることもできる。更に、車両に各乗員専用の複数の搬送流生成手段を配備してそれぞれ制御可能であれば、各乗員が所望する異なる機能性成分を同時に搬送することができ、よりパーソナルな快適空間を提供できる。更に、車室内カメラを設置し、撮影した画像データから乗員頭部の3次元位置を認識及び追尾して、常時乗員頭部へ機能性成分を搬送できるよう搬送流の流速や搬送流整流器の向きを制御することもできる。
【0024】
走行中の車室内に搬送された複数の種類の機能性成分は、車両の自然喚気流に乗って車室内をスムーズに後方へ移動し、車両後部から車室外に速やかに排出されるため、蓄積することはほとんどない。自然換気量が少ない信号待ち中や停車中を自動認識して、機能性成分の搬送を一時停止させることもできる。
【0025】
≪機能性成分≫
なお、ここで言う機能性成分は、固体、液体、ガス体に関わらず気流によって搬送可能なものを言い、また必ずしも人の嗅覚により認識できる臭気を有する必要は無い。無臭でも、鼻口などから摂取されて、活動状況に応じた好ましい作用を人に及ぼす成分でもよい。例えば、臭気の有無を問わず、緊張の緩和(リラックス効果)、集中力や覚醒の向上(リフレッシュ効果)等を促す成分もある。この場合、前述のカーナビゲーションなどの位置情報、渋滞情報や走行データ、人間計測による観測データなどに応じて効果のある成分を自動で切り替えて搬送することもできる。勿論、本発明に係る機能性成分は、好みに合った種々の芳香を有する芳香成分でも良いことは言うまでもない。さらに、本発明に係る機能性成分には、例えば、野菜や果物等の鮮度を保持する成分、逆に果物等を追熟させる成分、防腐、防カビ、除菌又は消臭等に効果がある成分等を用いることもできる。要するに、本発明に係る機能性成分は、用途に応じた機能を発揮する成分であればよい。
【実施例】
【0026】
本発明に係る実施例について説明する。図3に示すような臭気成分搬送装置Sを用いて、搬送気流Hの流速と臭気成分の到達距離の関係を調査した。なお、図3に示される矢印は気流の流線イメージであり、太実線は臭気成分が導入された搬送流Nのイメージを示し、細点線は搬送流Hのイメージを示す。
【0027】
まず、臭気成分搬送装置Sについて詳細を説明する。送風機1が発生した気流は分岐された配管により流量調節器21と流量調節器22に分配される。流量調節器21で調節された気流は把持具3内部を通過して、搬送流整流器4の52本の細長い円筒状の気筒5のそれぞれに配給される。すべての気筒5は同一形状であるため、搬送流整流器4が生成する搬送流Hは同じ流速分布である。一方、流量調節器22で調節された気流は臭気成分導入手段6に供給される。臭気成分導入手段6には、2mLの酢酸Aと酢酸Aの揮発を促進するテフロン(登録商標)フィルターFと揮発した臭気成分が封入されている。臭気成分導入手段6で気流に臭気成分が導入されて、搬送流整流器4の中心に位置する1本の気筒7に供給される。気筒7と気筒5は同一形状である。気筒7から生成される臭気成分が導入された搬送流Nは、気筒5から生成される搬送流Hの中心寄りに配流され、臭気成分は所望位置に搬送される。
【0028】
上記の臭気成分搬送装置Sを用いて臭気成分をある一方向に搬送させて、その方向における搬送流Hの気流を感じる位置及び臭気を感じる距離を記録した。臭気成分が導入された搬送流Nの流量は0.1L/minで一定とし、搬送流Hの流量は10L/min,20L/min,30L/minの3ケースにおいて実施した結果と、その時の気流の流速を表1に示す。また、図4には、搬送流Hの気流を感じた距離及び臭気を感じた距離と搬送流の流速との関係をグラフで示す。参考に搬送流整流器4の気筒5及び気筒7が無い状態、つまり気筒5及び気筒7を集束する集束具Bだけに、0.1L/minの臭気成分が導入された搬送流Nの流量、及び10L/minの搬送流Hの流量を供給して同評価を実施したところ、気流を感じる距離は50cmから30cmに短くなり、臭気は周囲に充満した。このことから、気筒5及び気筒7により、周辺空気への気流の広がり及び臭気成分の拡散が抑制されていると言える。
【0029】
【表1】
【0030】
本実施例から、搬送流Hの生成される流速と臭気成分の搬送距離に相関があり、搬送流Hの流速が早ければ早いほど遠くまで臭気成分を搬送できることが分かる。また、気筒5,7の端部より3m離れた場所に臭気成分を搬送するのに必要な搬送流Hの流速は、エアコンの弱設定の風速が約1〜2m/secであるのに対し、表1から46.5cm/secの微風で十分であることが分かり、本発明に係る臭気成分搬送装置Sは、車両に搭載して後席の乗員まで臭気成分の拡散を抑制して搬送する装置として実用性があると言える。
【符号の説明】
【0031】
S 臭気成分搬送装置
H 搬送流
N 臭気成分が導入された搬送流
1 送風機
3 把持具
4 搬送流整流器
5,7,8 気筒
6 臭気成分導入手段
図1
図2
図3
図4