(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)Uは、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)などバーハンドルタイプの車両に好適に用いられるものであり、図示しない車両の前輪および後輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ制御装置Uを自動二輪車に適用した例について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のブレーキ制御装置Uは、第1ブレーキである前輪ブレーキFB(ホイールシリンダ)に制動力を付与する第1ブレーキ系統K1と、第2ブレーキである後輪ブレーキRB(ホイールシリンダ)に制動力を付与する第2ブレーキ系統K2と、第1ブレーキ系統K1および第2ブレーキ系統K2のブレーキ液圧を昇圧する機能を有する共通液圧系統K3とを備えている。
【0020】
第1ブレーキ系統K1は、入口ポート101から出口ポート102に至る系統である。入口ポート101には、液圧源であるフロントのマスタシリンダFrMCに至る配管が接続され、出口ポート102には前輪ブレーキFBに至る配管が接続されている。第1ブレーキ系統K1は、マスタシリンダFrMC側に設けられたシミュレータ部10と、前輪ブレーキFB側に設けられたコントロール部20とを備え、ブレーキバイワイヤ制動可能に構成されている。
【0021】
第2ブレーキ系統K2は、入口ポート201から出口ポート202に至る系統である。入口ポート201には、液圧源であるリアのマスタシリンダRrMCに至る配管が接続され、出口ポート202には後輪ブレーキRBに至る配管が接続されている。第2ブレーキ系統K2は、マスタシリンダRrMC側に設けられたシミュレータ部10と、後輪ブレーキRB側に設けられたコントロール部20とを備え、ブレーキバイワイヤ制動可能に構成されている。
【0022】
以下、第1ブレーキ系統K1、第2ブレーキ系統K2および共通液圧系統K3について詳細説明するが、第1ブレーキ系統K1および第2ブレーキ系統K2は、同一の構成からなるので、以下においては主として第1ブレーキ系統K1について説明し、適宜第2ブレーキ系統K2について説明する。
なお、以下では、ブレーキ液圧回路全体を通して、マスタシリンダFrMC(RrMC)から前輪ブレーキFB(後輪ブレーキRB)に至る液圧路(ブレーキ液の流路)を「第1液圧路C」と称し、また、共通液圧系統K3から前輪ブレーキFB(後輪ブレーキRB)に至る流路を「第2液圧路D」と称する。
【0023】
第1ブレーキ系統K1のシミュレータ部10は、主として、ダミーシリンダ11と、開閉弁12と、チェック弁12aと、遮断弁13と、第1液圧センサ14と、を備えて構成されている。
ダミーシリンダ11は、マスタシリンダFrMCに接続された図示しないブレーキ操作子の操作に起因して第1液圧路Cに吐出されたブレーキ液を一時的に貯溜するとともに、ブレーキ操作子の操作反力を発生させるものである。ダミーシリンダ11は、シリンダ本体11aと、このシリンダ本体11aの内部に摺動自在に挿入されたピストン11bと、ピストンスプリング11cと、ブレーキ液を一時的に貯溜する液圧室11dとを備えている。
【0024】
開閉弁12は、ダミーシリンダ11と第1液圧路Cとを連通する流路に設けられた常閉型の電磁弁からなる。開閉弁12は、第1液圧路Cにおいてこれよりも下流側に設けられた遮断弁13が第1液圧路Cを遮断し、自動二輪車の図示しないエンジンやモータ等の駆動手段を始動させたときに開弁して、第1液圧路Cからダミーシリンダ11へのブレーキ液の流入を許容する(
図3参照)。なお、自動二輪車の図示しないエンジンやモータ等の駆動手段を始動させた後、ブレーキ操作子によるブレーキ入力がされたとき(ポンプ40の作動時)に、開閉弁12が開弁するように設定してもよい。開閉弁12を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
【0025】
チェック弁12aは、開閉弁12に並列に接続された一方向弁からなり、ダミーシリンダ11から第1液圧路Cへのブレーキ液の流出のみを許容する。
【0026】
遮断弁13は、常開型の電磁弁からなり、コントロール部20へ通じる第1液圧路Cを開閉する役割をなす。つまり、マスタシリンダFrMC側(ダミーシリンダ11側)からコントロール部20側へのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。なお、遮断弁13を構成する常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、電磁コイルを消磁すると開弁する。本実施形態においては、車両の駆動手段の始動とともに遮断弁13が閉弁するように設定されている。つまり、遮断弁13は、車両の駆動手段を駆動させている間は、マスタシリンダFrMC側からコントロール部20側へのブレーキ液の流入を遮断する(
図3参照)。なお、遮断弁13は、駆動手段の停止あるいは制御装置100が停止している状態においては開弁し、ブレーキ操作子の操作力(つまり、マスタシリンダFrMCで発生したブレーキ液圧)は、第1液圧路Cを通じて前輪ブレーキFBへ直に伝達する(
図2参照)ようになっている。
また、第2ブレーキ系統K2において、遮断弁13は、車両の駆動手段を駆動させている間は、マスタシリンダRrMC側からコントロール部20側へのブレーキ液の流入を遮断する(
図3参照)。なお、遮断弁13は、駆動手段の停止あるいは制御装置100が停止している状態においては開弁し、ブレーキ操作子の操作力(つまり、マスタシリンダRrMCで発生したブレーキ液圧)は、第1液圧路Cを通じて後輪ブレーキRBへ直に伝達する(
図2参照)ようになっている。
【0027】
第1液圧センサ14は、遮断弁13により遮断された第1液圧路Cにおけるブレーキ液圧の大きさを検出する液圧検出センサである。第1液圧センサ14で計測されるブレーキ液圧は、マスタシリンダFrMCにおけるブレーキ液圧と相関する物理量であるが、実質的には、マスタシリンダFrMCにおけるブレーキ液圧とみなすことができる。
第1液圧センサ14で計測されたブレーキ液圧は、制御装置100に随時取り込まれ、共通液圧系統K3におけるブレーキ制御に用いられる。
【0028】
コントロール部20は、開閉弁21と、チェック弁21aと、第2液圧センサ22と、圧力付与部材30と、を備えて構成されている。
開閉弁21は、第2液圧路Dに設けられた常閉型の電磁弁からなる。開閉弁21は、第1液圧路Cにおいて遮断弁13が第1液圧路Cを遮断しているときに開弁される。これにより、圧力付与部材30を介して第2液圧路Dに付与されたブレーキ液圧が前輪ブレーキFBに作用することが許容される状態となる(
図3参照)。また、第2ブレーキ系統K2においては、圧力付与部材30を介して第2液圧路Dに付与されたブレーキ液圧が後輪ブレーキRBに作用することが許容される状態となる。
本実施形態においては、自動二輪車の図示しないエンジンやモータ等の駆動手段を始動させたときに、開閉弁21が開弁するように設定されている。なお、開閉弁21を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
【0029】
チェック弁21aは、開閉弁21に並列に接続された一方向弁からなり、圧力付与部材30側から第1液圧路C(前輪ブレーキFB、第2ブレーキ系統K2においては後輪ブレーキRB)側へのブレーキ液の流出のみを許容する。
なお、第1液圧路Cは、開閉弁21と前輪ブレーキFBとの間において第2液圧路Dに接続されている。
また、第2ブレーキ系統K2において、第1液圧路Cは、開閉弁21と後輪ブレーキRBとの間において第2液圧路Dに接続されている。
【0030】
第2液圧センサ22は、第2液圧路Dにおける開閉弁21と圧力付与部材30との間に設けられており、第2液圧路Dにおけるブレーキ液圧の大きさを計測するものである。計測されるブレーキ液圧は、前輪ブレーキFBにおけるブレーキ液圧と相関する物理量である。なお、第2ブレーキ系統K2において、第2液圧センサ22により計測されるブレーキ液圧は、後輪ブレーキRBにおけるブレーキ液圧と相関する物理量である。
【0031】
圧力付与部材30は、第2液圧路Dの途中に介設されており、第2液圧路Dを共通液圧系統K3側と前輪ブレーキFB側とに仕切る部材(分離する部材)である。圧力付与部材30は、共通液圧系統K3から付与されたブレーキ液圧を前輪ブレーキFB側に付与する役割をなすものであり、シリンダ本体31と、このシリンダ本体31の内部に摺動自在に挿入されたピストン32と、ピストン32に装着されたシール部材32aと、ピストンスプリング33と、ピストン32により仕切られてシリンダ本体31内に形成される圧力入力室34および圧力出力室35とを備えている。圧力入力室34は、共通液圧系統K3の後記する第1吐出液圧路E1(第2ブレーキ系統K2においては第2吐出液圧路E2)に通じている。圧力出力室35は、開閉弁21を介して前輪ブレーキFB(第2ブレーキ系統K2においては後輪ブレーキRB)側に通じている。
【0032】
シリンダ本体31は、ブレーキ制御装置Uのボディをなす図示しない基体に、装着穴等を形成して構成される。ピストン32は、前記のようにシリンダ本体31内を圧力入力室34と圧力出力室35とに仕切り、ピストンスプリング33によって共通液圧系統K3側(圧力入力室34)に付勢され、その端面に第2液圧路Dを通じて共通液圧系統K3において昇圧されたブレーキ液圧を受ける。ピストン32は、共通液圧系統K3において昇圧されたブレーキ液圧を受けるとピストンスプリング33の付勢力に抗して圧力出力室35側へ摺動する。シリンダ本体31の圧力出力室35には、第2液圧路Dを通じてブレーキ液が貯溜されており、前記のようにピストン32が圧力出力室35側へ摺動することで、シリンダ本体31の圧力出力室35に貯溜されていたブレーキ液が第2液圧路Dに吐出されるようになっている。これにより、共通液圧系統K3で昇圧されたブレーキ液圧が圧力付与部材30を介して前輪ブレーキFBに作用するようになる。
なお、ポンプ40の停止時に、ピストン32は、ピストンスプリング33の付勢力によって圧力入力室34側へ摺動し、シリンダ本体31の圧力出力室35には、第2液圧路Dからブレーキ液が流入して貯溜される。
【0033】
なお、第2ブレーキ系統K2において、圧力付与部材30は、共通液圧系統K3から付与されたブレーキ液圧を後輪ブレーキRB側に付与する役割をなし、第1ブレーキ系統K1における圧力付与部材30と同様の作用をなす。
【0034】
なお、共通液圧系統K3で昇圧されたブレーキ液圧は、第2液圧路Dを通じてピストン32に作用するだけであるので、共通液圧系統K3のブレーキ液が前輪ブレーキFB側に流入することがない。つまり、共通液圧系統K3側から前輪ブレーキFB側へのブレーキ液の通流なしに、昇圧されたブレーキ液圧を共通液圧系統K3側から前輪ブレーキFB側へ付与する(伝達する)ことができる。したがって、第1ブレーキ系統K1と共通液圧系統K3とを別個独立したブレーキ系統として構成することができる。
このことは第2ブレーキ系統K2についても同様であり、第2ブレーキ系統K2と共通液圧系統K3とを別個独立したブレーキ系統として構成することができる。さらに、第1ブレーキ系統K1と第2ブレーキ系統K2とを別個独立したブレーキ系統として構成することができる。
【0035】
共通液圧系統K3は、ポンプ40と、モータ41と、第1吐出液圧路用電磁弁(制御弁手段、以下、第1吐出弁という)401と、第1逃がし液圧路用電磁弁(制御弁手段、以下、第1逃がし弁という)411と、第2吐出液圧路用電磁弁(制御弁手段、以下、第2吐出弁という)402と、第2逃がし液圧路用電磁弁(制御弁手段、以下、第2逃がし弁という)422と、貯液室Rと、を備えて構成される。共通液圧系統K3は、1つのポンプ40を中心として、吐出路E3、第1吐出液圧路E1、第1逃がし液圧路G1、吸入路G3からなる循環路と、吐出路E3、第2吐出液圧路E2、第2逃がし液圧路G2、吸入路G3からなる循環路とを備えており、前者が第1ブレーキ系統K1に対応する液圧路を構成しており、後者が第2ブレーキ系統K2に対応する液圧路を構成している。第1吐出弁401は、第1吐出液圧路E1に配置され、第1逃がし弁411は第1逃がし液圧路G1に配置される。また、第2吐出弁402は、第2吐出液圧路E2に配置され、第2逃がし弁422は、第2逃がし液圧路G2に配置される。第1吐出弁401、第1逃がし弁411、第2吐出弁402および第2逃がし弁422は、いずれも常開型の電磁弁からなる。
【0036】
ポンプ40は、図示しない吸入弁と吐出弁とを備え、吸入路G3と吐出路E3との間に介設されている。ポンプ40は、貯液室Rで貯溜されているブレーキ液を吸入路G3を通じて吸入し、吐出路E3に吐出する機能を有している。吸入路G3には、第1逃がし液圧路G1および第2逃がし液圧路G2が接続され、吐出路E3には、第1吐出液圧路E1および第2吐出液圧路E2が接続されている。
なお、ポンプ40の吐出口側には、図示しないダンパやオリフィスが設けられており、その協働作用によってポンプ40から吐出されるブレーキ液の脈動が減衰されるようになっている。
【0037】
モータ41は、ポンプ40の動力源である。モータ41は、図示しないエンジンやモータ等の駆動手段を始動させた後、第1ブレーキ系統K1および第2ブレーキ系統K2の少なくとも一方のブレーキ操作子が操作された際に、制御装置100からの指令に基づいて作動する。
【0038】
第1吐出弁401は、第1吐出液圧路E1を開閉する。第1吐出弁401は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、消磁すると開弁する。本実施形態では、第1吐出弁401は、開弁圧を電流により制御可能なリニアソレノイド弁であり、自身よりもブレーキ液の循環方向上流側となるポンプ40側(第2吐出液圧路E2側)のブレーキ液圧から、循環方向下流側となる第1ブレーキ系統K1側のブレーキ液圧を差し引いた値(差圧)が、設定した開弁圧以上になると自動的に開弁するように構成されている。第1吐出弁401の開弁圧は、電磁コイルに与える電流値の大きさを制御装置100で制御することで増減させることができる。
【0039】
第1逃がし弁411は、第1逃がし液圧路G1を開閉する。第1逃がし弁411は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、消磁すると開弁する。第1逃がし弁411は、開弁圧を電流により制御可能なリニアソレノイド弁であり、自身よりもブレーキ液の循環方向上流側となる第1ブレーキ系統K1側のブレーキ液圧から、循環方向下流側となるポンプ40側のブレーキ液圧を差し引いた値(差圧)が、設定した開弁圧以上になると自動的に開弁するように構成されている。第1逃がし弁411の開弁圧は、電磁コイルに与える電流値の大きさを制御装置100で制御することで増減させることができる。
【0040】
第2吐出弁402は、第2吐出液圧路E2を開閉する。第2吐出弁402は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、消磁すると開弁する。第2吐出弁402は、開弁圧を電流により制御可能なリニアソレノイド弁であり、自身よりもブレーキ液の循環方向上流側となるポンプ40側(第1吐出液圧路E1側)のブレーキ液圧から、循環方向下流側となる第2ブレーキ系統K2側のブレーキ液圧を差し引いた値(差圧)が、設定した開弁圧以上になると自動的に開弁するように構成されている。第2吐出弁402の開弁圧は、電磁コイルに与える電流値の大きさを制御装置100で制御することで増減させることができる。
【0041】
第2逃がし弁422は、第2逃がし液圧路G2を開閉する。第2逃がし弁422は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、消磁すると開弁する。第2逃がし弁422は、開弁圧を電流により制御可能なリニアソレノイド弁であり、自身よりもブレーキ液の循環方向上流側となる第2ブレーキ系統K2側のブレーキ液圧から、循環方向下流側となるポンプ40側のブレーキ液圧を差し引いた値(差圧)が、設定した開弁圧以上になると自動的に開弁するように構成されている。第2逃がし弁422の開弁圧は、電磁コイルに与える電流値の大きさを制御装置100で制御することで増減させることができる。
【0042】
貯液室Rは、吸入路G3に接続されており、ポンプ40から吐出路E3へ吐出するブレーキ液を貯溜する大気開放型のタンクである。また、貯液室Rには、第1逃がし液圧路G1および第2逃がし液圧路G2を通じて逃がされたブレーキ液が戻される。なお、貯液室Rには、共通液圧系統K3で昇圧時に使用されるのに十分な液量のブレーキ液が貯溜されている。
【0043】
制御装置100は、第1液圧センサ14、第2液圧センサ22、図示しない車輪速度センサ等からの出力に基づいて、各ブレーキ系統の開閉弁12、遮断弁13、開閉弁21、第1吐出弁401、第1逃がし弁411、第2吐出弁402、第2逃がし弁422の開閉、並びに、モータ41の作動を制御する。
【0044】
次に、各液圧回路を参照しつつ、制御装置100によって実現される通常のブレーキ制御、前輪と後輪との連動ブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御について説明する。
【0045】
はじめに、図示しない駆動手段が停止した状態(イグニッションオフ状態)では、
図2に示すように、シミュレータ部10の遮断弁13が開弁されており、第1液圧路CがマスタシリンダFrMC(RrMC)から前輪ブレーキFB(後輪ブレーキRB)まで連通された状態にされる。また、シミュレータ部10の開閉弁12が閉弁されて、第1液圧路Cとダミーシリンダ11との間が遮断された状態にされる。つまり、ブレーキ操作子を操作すると、その操作によるブレーキ液圧がコントロール部20側にかかり、第1液圧路Cから第2液圧路Dを通じて前輪ブレーキFB(後輪ブレーキRB)に作用する状態にされる。
なお、両ブレーキ系統K1,K2において、開閉弁21はいずれも閉じているので、圧力付与部材30にブレーキ液圧が作用することはない。
【0046】
(通常のブレーキ制御)
イグニッションをONにして駆動手段を作動させると、
図3に示すように、制御装置100によって遮断弁13が閉弁されるとともに、開閉弁12が開弁され、シミュレータ部10とコントロール部20との間で第1液圧路Cが遮断された状態にされる。これにより、シミュレータ部10とコントロール部20とが分離された状態にされる。
【0047】
一方、コントロール部20側においては、第1液圧路Cがシミュレータ部10側から分離された状態にされることで、前輪ブレーキFBにマスタシリンダFrMCからのブレーキ液圧が直接にはかからない状態にされる。また、制御装置100によって開閉弁21が開弁され、第2液圧路D上で圧力付与部材30と前輪ブレーキFBとが連通された状態にされる。また、第2ブレーキ系統K2においても、開閉弁21が開弁され、第2液圧路D上で圧力付与部材30と後輪ブレーキRBとが連通された状態にされる。
【0048】
前輪のブレーキ操作子のみが操作される前輪入力の単独制動時では、その操作により起因して発生したブレーキ液圧が第1液圧センサ14により検出される。そうすると、制御装置100の制御によりモータ41が回転を開始し、ポンプ40が作動を開始する。また、ブレーキ操作子の操作により発生したブレーキ液圧は、そのままダミーシリンダ11にかかり、これによって、ブレーキ操作子に対して擬似的な操作力が付与される。なお、図示しないストロークセンサを用いてブレーキ操作子の操作を検出してモータ41が回転を開始するように構成してもよい。
【0049】
また、制御装置100により第1逃がし弁411に電流が付与され、第1逃がし弁411が閉弁されて第1逃がし液圧路G1が遮断される。この場合、第1逃がし弁411には、差圧によって開弁することのない大きな電流値が付与される。
【0050】
また、第1ブレーキ系統K1に通じる第1吐出液圧路E1の第1吐出弁401は、非作動状態(開弁状態)にされるとともに、第2吐出液圧路E2の第2吐出弁402に制御装置100により開弁圧となる前輪目標圧が設定されて電流が付与される。これにより、第2吐出弁402は、第1液圧センサ14により検出されたブレーキ液圧に対応する前輪目標圧に制御される。なお、前輪目標圧は第1液圧センサ14の大きさに対応して(比例して)増える。また、第2逃がし液圧路G2の第2逃がし弁422は、非作動状態(開弁状態)にされる。
【0051】
このように第2吐出弁402が制御されることで、第1ブレーキ系統K1に通じる第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が昇圧する。なお、連続して駆動されるポンプ40によって第2吐出弁402の前後で前輪目標圧を超える差圧が生じると、逐次、第2吐出弁402が開弁し、第2逃がし液圧路G2にブレーキ液が逃がされる。つまり、第2吐出弁402は、第1吐出液圧路E1側(第1ブレーキ系統K1側)のブレーキ液圧を設定値以下に調節するリリーフ弁として機能する。これにより、第1吐出液圧路E1が前輪目標圧に保持される。なお、第2逃がし液圧路G2に逃がされたブレーキ液は、第2逃がし弁422を通じて吸入路G3に戻される。
【0052】
前記のように、第1吐出液圧路E1にブレーキ液圧が発生すると、そのブレーキ液圧が第1ブレーキ系統K1の第2液圧路Dに作用し、ブレーキ液が圧力付与部材30の圧力入力室34に流入し、圧力付与部材30のピストン32がピストンスプリング33の付勢力に抗して圧力出力室35側に摺動する。これにより、圧力出力室35に貯溜されていたブレーキ液が第2液圧路Dに流出し、開閉弁21を通じて前輪ブレーキFBに作用する。これにより、前輪ブレーキFBにより前輪が制動される。
このとき、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧が第2液圧センサ22で検出され、その検出値が制御装置100にフィードバックされる。ここで、仮に、フィードバックされた検出値とブレーキ操作子により入力された要求圧(第1液圧センサ14により検出された検出値)との間に差が生じている場合には、その差が小さくなるように制御装置100によって第2吐出弁402の前輪目標圧が調整される。
【0053】
なお、ブレーキ操作子の操作を終了したときには、モータ41が停止されてポンプ40が停止し、第1逃がし弁411が開弁制御される。これにより、第1ブレーキ系統K1の圧力付与部材30に作用していたブレーキ液が第1逃がし液圧路G1を通じて貯液室Rに戻される。これによって、圧力付与部材30において、ピストン32がピストンスプリング33の付勢力により圧力入力室34側に戻され、第2液圧路Dから圧力付与部材30内の圧力出力室35にブレーキ液が吸入される。これにより、前輪ブレーキFBにブレーキ液が作用しなくなり、前輪の制動が解除される。なお、圧力付与部材30内の圧力出力室35に吸入されたブレーキ液は、次の制動(後記するアンチロックブレーキ制御における減圧制御時には次の増圧制御)に備えて貯溜される。
【0054】
一方、後輪のブレーキ操作子のみが操作される後輪入力の単独制動時では、第2ブレーキ系統K2の第1液圧センサ14によりブレーキ液圧が検出され、制御装置100により第2逃がし弁422に電流が付与されて、第2逃がし弁422が閉弁される。
また、第2ブレーキ系統K2に通じる第2吐出液圧路E2の第2吐出弁402は、非作動状態(開弁状態)にされるとともに、第1吐出液圧路E1の第1吐出弁401に制御装置100により後輪目標圧が設定されて電流が付与される。これにより、第1吐出弁401は、第2ブレーキ系統K2の第1液圧センサ14により検出されたブレーキ液圧に対応する後輪目標圧となるように制御される。また、第1逃がし液圧路G1の第1逃がし弁411は、非作動状態(開弁状態)にされる。
【0055】
このように第1吐出弁401が制御されることで、第2ブレーキ系統K2に通じる第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が昇圧される。なお、連続して駆動されるポンプ40によって第1吐出弁401の前後で設定された後輪目標圧を超える差圧が生じた場合には、逐次、第1吐出弁401が開弁し、第1逃がし液圧路G1にブレーキ液が逃がされる。つまり、第1吐出弁401は、第2吐出液圧路E2側(第2ブレーキ系統K2側)のブレーキ液圧を設定値以下に調節するリリーフ弁として機能する。これにより、第2吐出液圧路E2が後輪目標圧に保持される。なお、第1逃がし液圧路G1に逃がされたブレーキ液は、第1逃がし弁411を通じて吸入路G3に戻される。
【0056】
そして、第2吐出液圧路E2にブレーキ液圧が発生すると、そのブレーキ液圧が第2ブレーキ系統K2の第2液圧路Dに作用し、ブレーキ液が圧力付与部材30の圧力入力室34に流入して、圧力付与部材30のピストン32が圧力出力室35側に摺動する。これにより、圧力付与部材30から開閉弁21を通じて後輪ブレーキRBにブレーキ液圧が作用し、後輪ブレーキRBにより後輪が制動される。
【0057】
なお、ブレーキ操作子の操作を終了したときには、モータ41が停止されてポンプ40が停止し、第2逃がし弁422が開弁制御される。これにより、第2ブレーキ系統K2の圧力付与部材30に作用していたブレーキ液が第2逃がし液圧路G2を通じて貯液室Rに戻される。これによって、圧力付与部材30において、ピストン32がピストンスプリング33の付勢力により圧力入力室34側に戻され、第2液圧路Dから圧力付与部材30内の圧力出力室35にブレーキ液が吸入される。これにより、後輪ブレーキRBにブレーキ液が作用しなくなり、前輪の制動が解除される。なお、圧力出力室35内に吸入されたブレーキ液は、次の制動(後記するアンチロックブレーキ制御における減圧制御時には次の増圧制御)に備えて貯溜される。
【0058】
(連動ブレーキ制御)
はじめに、前輪のブレーキ操作子のみが操作される前輪入力の前後輪連動ブレーキ制動について
図4を参照して説明する。
前輪のブレーキ操作子が操作されると、前記した動作によって、前輪が制動される。具体的には、第1逃がし弁411が閉弁され、第1吐出弁401および第2逃がし弁422が非作動状態(開弁状態)にされ、さらに第2吐出弁402が前輪目標圧となるように制御される。
このような状態において、前輪入力の前後輪連動ブレーキ制動時には、連動される側となる第2ブレーキ系統K2に対応する第2逃がし液圧路G2の第2逃がし弁422に後輪目標圧が設定され、制御装置100により第2逃がし弁422に電流が付与されて制御される。例えば、後輪目標圧は、前輪目標圧(マスタシリンダFrMCの入力圧)に基づき、適切な制動配分となるように決定される。また、第2吐出弁402が、前輪目標圧から後輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御されるとともに、第1吐出弁401が非作動状態、第1逃がし弁411が閉弁状態に制御される。これにより、第2吐出液圧路E2が昇圧を開始する。
【0059】
なお、このように第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が後輪目標圧に向けて昇圧される過程で、第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が前輪目標圧に維持されるように、第2吐出弁402の開弁圧がバランス制御される。
【0060】
前記のように第2吐出液圧路E2にブレーキ液圧が発生すると、そのブレーキ液圧が第2ブレーキ系統K2の第2液圧路Dに作用し、ブレーキ液が圧力付与部材30の圧力入力室34に流入して、圧力付与部材30のピストン32が圧力出力室35側に摺動する。これにより、圧力付与部材30から開閉弁21を通じて後輪ブレーキRBにブレーキ液圧が作用し、後輪ブレーキRBにより後輪が連動制動される。
なお、後輪ブレーキRBに作用するブレーキ液圧が第2液圧センサ22で検出され、その検出値が制御装置100にフィードバックされる。ここで、仮に、フィードバックされた検出値と連動ブレーキにおける要求圧(マスタシリンダFrMCの入力圧に基づいて決定された値)との間に差が生じている場合には、その差が小さくなるように制御装置100によって第2逃がし弁422の後輪目標圧が調整される。
【0061】
以上が前輪入力の前後輪連動ブレーキ制動に関するものであるが、前輪と後輪との両方のブレーキ操作子が操作される前後輪の入力に見合ったブレーキ制動において、前輪の入力が後輪の入力よりも大きい場合(前輪の入力>後輪の入力)にも、この前後輪連動ブレーキ制動と同様に各弁が制御されることによりブレーキ制動が実行される。すなわち、第2逃がし弁422が後輪目標圧となるように制御され、第2吐出弁402が前輪目標圧から後輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御されるとともに、第1吐出弁401が非作動状態(開弁状態)、第1逃がし弁411が閉弁状態に制御される。これにより、前後輪の入力に見合ったブレーキ制動が実行されることとなる。
【0062】
なお、前輪と後輪との両方のブレーキ操作子が操作されるブレーキ制動(前輪の入力>後輪の入力)においては、前記のような前後輪の入力に見合ったブレーキ制動によらずに、適切な前後輪の制動配分となるようにブレーキ制動することも可能である。
この場合にも、前記と同様に各弁が制御されることに加えて、前輪と後輪とが適切な制動配分となるように、制御装置100によって前輪目標圧および後輪目標圧の少なくとも一方の目標圧が決定され、この目標圧に基づき制御されることで、適切な前後輪の制動配分となるようにブレーキ制動が実行される。
【0063】
次に、後輪のブレーキ操作子のみが操作される後輪入力の前後輪連動ブレーキ制動について
図5を参照して説明する。
後輪のブレーキ操作子が操作されると、前記した動作によって、後輪が制動される。具体的には、第2逃がし弁422が閉弁され、第2吐出弁402および第1逃がし弁411が非作動状態(開弁状態)とされ、さらに第1吐出弁401が後輪目標圧となるように制御される。
このような状態において、後輪入力の前後輪連動ブレーキ制動時には、連動される側となる第1ブレーキ系統K1に対応する第1逃がし液圧路G1の第1逃がし弁411に前輪目標圧が設定され、制御装置100により第1逃がし弁411に電流が付与されて制御される。例えば、前輪目標圧は、後輪目標圧(マスタシリンダRrMCの入力圧)に基づき、適切な制動配分となるように決定される。また、第1吐出弁401が、後輪目標圧から前輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御されるとともに、第2吐出弁402が非作動状態、第2逃がし弁422が閉弁状態に制御される。これにより、第1吐出液圧路E1が昇圧を開始する。
【0064】
なお、このように第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が前輪目標圧に向けて昇圧される過程で、第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が後輪目標圧に維持されるように、第1吐出弁401の開弁圧がバランス制御される。
【0065】
前記のように第1吐出液圧路E1にブレーキ液圧が発生すると、そのブレーキ液圧が第1ブレーキ系統K1の第2液圧路Dに作用し、ブレーキ液が圧力付与部材30の圧力入力室34に流入して、圧力付与部材30のピストン32が圧力出力室35側に摺動する。これにより、圧力付与部材30から開閉弁21を通じて前輪ブレーキFBにブレーキ液圧が作用し、前輪ブレーキFBにより前輪が制動される。
なお、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧が第2液圧センサ22で検出され、その検出値が制御装置100にフィードバックされる。ここで、仮に、フィードバックされた検出値と連動ブレーキにおける要求圧(マスタシリンダRrMCの入力圧に基づいて決定された値)との間に差が生じている場合には、その差が小さくなるように制御装置100によって第1逃がし弁411の前輪目標圧が調整される。
【0066】
以上が後輪入力の前後輪連動ブレーキ制動に関するものであるが、前輪と後輪との両方のブレーキ操作子が操作される前後輪の入力に見合ったブレーキ制動において、後輪の入力が前輪の入力よりも大きい場合(前輪の入力<後輪の入力)にも、この前後輪連動ブレーキ制動と同様に各弁が制御されることによりブレーキ制動が実行される。すなわち、第1逃がし弁411が前輪目標圧となるように制御され、第1吐出弁401が後輪目標圧から前輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御されるとともに、第2吐出弁402が非作動状態(開弁状態)、第2逃がし弁422が閉弁状態に制御される。これにより、前後輪の入力に見合ったブレーキ制動が実行されることとなる。
【0067】
なお、前輪と後輪との両方のブレーキ操作子が操作されるブレーキ制動(前輪の入力<後輪の入力)においては、前記のような前後輪の入力に見合ったブレーキ制動によらずに、適切な前後輪の制動配分となるようにブレーキ制動することも可能である。
この場合にも、前記と同様に各弁が制御されることに加えて、前輪と後輪とが適切な制動配分となるように、制御装置100によって前輪目標圧および後輪目標圧の少なくとも一方の目標圧が決定され、この目標圧に基づき制御されることで、適切な前後輪の制動配分となるようにブレーキ制動が実行される。
【0068】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、例えば、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、前輪の図示しない車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置100によって判断される。
【0069】
まず、前記した前輪入力の単独制動時における前輪ブレーキFBのブレーキ液圧の減圧制御について説明する。前記したように、前輪入力の単独制動時は、第1逃がし弁411が閉弁制御され、第1吐出弁401および第2逃がし弁422が非作動状態(開弁状態)に制御され、さらに、第2吐出弁402が前輪目標圧となるように制御される。
このような状態において、制御装置100によって、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、前記ブレーキ制動時に閉じられていた第1逃がし弁411が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、ブレーキ液が第1逃がし液圧路G1に逃がされて第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が減圧され、圧力付与部材30を介して前輪ブレーキFBに付与されるブレーキ液圧が減圧される。つまり、第1逃がし弁411は、第1吐出液圧路E1側(第1ブレーキ系統K1側)のブレーキ液圧を設定値以下に調節するリリーフ弁として機能する。
ここで、第1逃がし弁411が開かれることによる減圧では、第1逃がし弁411が開かれることにより実質的に流路が拡大することとなるので、急減圧が可能である。
【0070】
また、減圧後、制御装置100によって、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合には、第1逃がし弁411が閉弁制御されるとともに、第2吐出弁402の前輪目標圧が保持すべき前輪目標圧に下げられる。これにより、第2吐出弁402が保持すべき前輪目標圧に制御され、前輪ブレーキFBに付与されるブレーキ液圧が保持される。
【0071】
さらに、制御装置100によって、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、第2吐出弁402の前輪目標圧が上げられる。これにより、第2吐出弁402の前後の差圧が大きくなり、第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が昇圧して、圧力付与部材30を介して前輪ブレーキFBに付与されるブレーキ液圧が増圧される。
【0072】
次に、前記した後輪入力の単独制動時における後輪ブレーキRBのブレーキ液圧の減圧制御について説明する。前記したように、後輪入力の単独制動時は、第2逃がし弁422が閉弁制御され、第2吐出弁402および第1逃がし弁411が非作動状態(開弁状態)に制御され、さらに、第1吐出弁401が後輪目標圧となるように制御される。
このような状態において、制御装置100によって、後輪ブレーキRBに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、前記ブレーキ制動時に閉じられていた第2逃がし弁422が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、ブレーキ液が第2逃がし液圧路G2に逃がされて第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が減圧され、圧力付与部材30を介して後輪ブレーキRBに付与されるブレーキ液圧が減圧される。つまり、第2逃がし弁422は、第2吐出液圧路E2側(第2ブレーキ系統K2側)のブレーキ液圧を設定値以下に調節するリリーフ弁として機能する。
ここで、第2逃がし弁422が開かれることによる減圧では、第2逃がし弁422が開かれることにより実質的に流路が拡大することとなるので、急減圧が可能である。
【0073】
また、前記と同様に減圧後、制御装置100によって、後輪ブレーキRBに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合には、第2逃がし弁422が閉弁制御されるとともに、第1吐出弁401の後輪目標圧が保持すべき後輪目標圧に下げられる。これにより、第1吐出弁401が保持すべき後輪目標圧に制御され、後輪ブレーキRBに付与されるブレーキ液圧が保持される。
また、前記と同様に、制御装置100によって、後輪ブレーキRBに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、第1吐出弁401の後輪目標圧が上げられる。これにより、第1吐出弁401の前後の差圧が大きくなり、第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が昇圧して、圧力付与部材30を介して後輪ブレーキRBに付与されるブレーキ液圧が増圧される。
【0074】
次に、前記した前輪入力の前後輪連動ブレーキ制動、および前記した前後輪の入力に見合ったブレーキ制動(前輪の入力>後輪の入力)における減圧について説明する。
前記したように、前輪入力の前後輪連動ブレーキ制動時、および前後輪の入力に見合ったブレーキ制動時(前輪の入力>後輪の入力)は、第2吐出弁402が前輪目標圧から後輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御され、第1吐出弁401が非作動状態(開弁状態)、第1逃がし弁411が閉弁状態に制御され、さらに、第2逃がし弁422が後輪目標圧となるように制御される。
このような状態において、制御装置100によって、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、前記ブレーキ制動時に閉じられていた第1逃がし弁411が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、ブレーキ液が第1逃がし液圧路G1に逃がされて第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が減圧され、圧力付与部材30を介して前輪ブレーキFBに付与されるブレーキ液圧が減圧される。
【0075】
一方、制御装置100によって、後輪ブレーキRBに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、次のように制御される。
すなわち、前記したように、第2吐出弁402が前輪目標圧から後輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御され、第1吐出弁401が非作動状態(開弁状態)、第1逃がし弁411が閉弁状態に制御され、さらに、第2逃がし弁422が後輪目標圧となるように制御される状態から、第2逃がし弁422が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が減圧され、圧力付与部材30を介して後輪ブレーキRBに付与されるブレーキ液圧が減圧される。この場合、第2逃がし弁422を減圧した分だけ、第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧も減圧するのを防ぐため、第2吐出弁402の目標圧(指示圧)を上げるバランス制御が行われる。
【0076】
また、制御装置100によって、前輪ブレーキFBおよび後輪ブレーキRBの両方に作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、次のように制御される。
すなわち、前記したように、第2吐出弁402が前輪目標圧から後輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御され、第1吐出弁401が非作動状態(開弁状態)、第1逃がし弁411が閉弁状態に制御され、さらに、第2逃がし弁422が後輪目標圧となるように制御される状態から、第1逃がし弁411および第2逃がし弁422の両方が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が減圧されるとともに、第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が減圧され、前輪ブレーキFBに付与されるブレーキ液圧および後輪ブレーキRBに付与されるブレーキ液圧がともに減圧される。
【0077】
次に、前記した後輪入力の前後輪連動ブレーキ制動、および前記した前後輪の入力に見合ったブレーキ制動時(前輪の入力<後輪の入力)における減圧について説明する。
前記したように、後輪入力の前後輪連動ブレーキ制動、および前記した前後輪の入力に見合ったブレーキ制動時(前輪の入力>後輪の入力)は、第1吐出弁401が、後輪目標圧から前輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御され、第2吐出弁402が非作動状態、第2逃がし弁422が閉弁状態に制御され、さらに、第1逃がし弁411が前輪目標圧となるように制御される。
このような状態において、制御装置100によって、前輪ブレーキFBに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、前記ブレーキ制動時に前輪目標圧に設定されていた第1逃がし弁411が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が減圧され、圧力付与部材30を介して前輪ブレーキFBに付与されるブレーキ液圧が減圧される。この場合、第1逃がし弁411を減圧した分だけ、第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧も降下するのを防ぐため、第1吐出弁401の目標圧(指示圧)を上げるバランス制御が行われる。
【0078】
一方、制御装置100によって、後輪ブレーキRBに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、次のように制御される。
すなわち、前記したように、第1吐出弁401が、後輪目標圧から前輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御され、第2吐出弁402が非作動状態、第2逃がし弁422が閉弁状態に制御され、さらに、第1逃がし弁411が前輪目標圧となるように制御される状態から、第2逃がし弁422が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が減圧され、圧力付与部材30を介して後輪ブレーキRBに付与されるブレーキ液圧が減圧される。
【0079】
また、制御装置100によって、前輪ブレーキFBおよび後輪ブレーキRBの両方に作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、次のように制御される。
すなわち、前記したように、第1吐出弁401が、後輪目標圧から前輪目標圧を減算した連動目標圧となるように制御され、第2吐出弁402が非作動状態、第2逃がし弁422が閉弁状態に制御され、さらに、第1逃がし弁411が前輪目標圧となるように制御される状態から、第1逃がし弁411および第2逃がし弁422の両方が開弁制御される(減圧制御される)。これにより、第1吐出液圧路E1のブレーキ液圧が減圧されるとともに、第2吐出液圧路E2のブレーキ液圧が減圧され、前輪ブレーキFBに付与されるブレーキ液圧および後輪ブレーキRBに付与されるブレーキ液圧がともに減圧される。
【0080】
以上説明した本実施形態のブレーキ制御装置Uによれば、共通液圧系統K3のポンプ40を作動させ、共通液圧系統K3で昇圧されたブレーキ液圧を第1ブレーキ系統K1および第2ブレーキ系統K2にそれぞれ付与することで、第1ブレーキ系統K1の前輪ブレーキFBおよび第2ブレーキ系統K2の後輪ブレーキRBに対して制動力を生じさせることができる。
すなわち、共通液圧系統K3に備わる1つのポンプ40で、第1ブレーキ系統K1の前輪ブレーキFBおよび第2ブレーキ系統K2の後輪ブレーキRBに制動力を生じさせることができるので、従来の構成に比べて部品点数を削減することができ、コスト低減を図ることができる。
【0081】
また、共通液圧系統K3に備わる4つの第1吐出弁401,第1逃がし弁411,第2吐出弁402,第2逃がし弁422の開弁圧を制御装置100により適宜制御するという簡単な構成で、通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御を実行できるとともに、連動ブレーキ制御を良好な制動配分にて実行することがきる。
【0082】
また、共通液圧系統K3で昇圧されたブレーキ液圧が圧力付与部材30を介して第1ブレーキ系統K1の液圧路および第2ブレーキ系統K2の液圧路へ伝わるよう構成されているので、圧力付与部材30を介して、第1ブレーキ系統K1、第2ブレーキ系統K2および共通液圧系統K3を相互に分離することができる。したがって、圧力付与部材30を介してブレーキバイワイヤ制動が可能な、新規な液圧回路を有するブレーキ制御装置Uが得られる。
また、各系統を相互に分離することができるので、ブレーキ液量の管理は、各系統において行えばよくなり、したがって、ブレーキ液の管理が簡単になる。さらに、各系統を別個独立した液圧回路で構成することができるので、液圧配管のレイアウトがシンプルなものとなる。
【0083】
また、圧力付与部材30は、ポンプ40の作動停止によって共通液圧系統K3側のブレーキ液圧を貯液室R側に逃がすと、ピストン32が初期位置である圧力入力室34側にスムーズに戻されるので、前輪ブレーキFB側または後輪ブレーキRB側のブレーキ液圧をスムーズに減圧することができる。したがって、ブレーキ操作子の操作による制動の応答性が向上する。
【0084】
また、制御弁手段を、第1吐出弁401、第1逃がし弁411、第2吐出弁402、第2逃がし弁422で構成することにより、共通液圧系統K3から第1ブレーキ系統K1および第2ブレーキ系統K2に向けて吐出される吐出液圧、およびポンプ40に戻される逃がし液圧を、各電磁弁によって容易に制御することができる。
また、第1吐出弁401、第1逃がし弁411、第2吐出弁402、第2逃がし弁422は、いずれもリニアソレノイド弁であるので、共通液圧系統K3から第1ブレーキ系統K1および第2ブレーキ系統K2に向けて吐出される吐出液圧、およびポンプ40に戻される逃がし液圧を、電流制御によって容易に制御することができる。
【0085】
(第2実施形態)
図6および
図7を参照して第2実施形態のブレーキ制御装置について説明する。
本実施形態では、段付き形状の圧力付与部材50を備えている。
【0086】
圧力付与部材50は、大径部51と小径部52とを備えた段付き形状のピストン53と、大径部51を収容する大径室(圧力出力室)54と小径部52を収容する小径室(圧力入力室)55とを備えたシリンダ室56と、ピストン53を小径室55側に付勢するピストンスプリング57と、を備えている。なお、大径部51および小径部52には、シール部材が装着されている。
大径室54は、第2液圧路Dを通じて前輪ブレーキFB側(後輪ブレーキRB)に連通し、小径室55は、第2液圧路Dを通じて共通液圧系統K3側に連通している。
【0087】
このような構成によれば、第1実施形態で説明した連動ブレーキ制御等により共通液圧系統K3の昇圧によって、ブレーキ液が圧力付与部材50の小径室55に流入し、ピストン53が大径室54側に摺動すると、大径室54側から前輪ブレーキFB側に吐出するブレーキ液は、小径部52と大径室54Aとの受圧面積の差によって、小径室55側に流入したブレーキ液よりも量の多いものとなる。したがって、第1ブレーキ系統K1におけるブレーキ液の昇圧を早めることができるようになり、ブレーキ液圧が増圧されて前輪ブレーキFB(後輪ブレーキRB)に大きな制動力を発生させることができる(
図7参照)。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、前記した圧力付与部材30,50の各構成部材は、前記した形状に限られるものではなく、任意の形状を採用することができる。
【0089】
また、前記実施形態では、第1逃がし弁411や第2逃がし弁422が開かれることにより減圧制御を行うようにしたが、これに限られることはなく、第1吐出弁401や第2吐出弁402を通じてブレーキ液を抜くことで減圧制御するようにしてもよい。
この場合には、液圧制御中の第1吐出弁401や第2吐出弁402でブレーキ液圧をコントロールするため、目標圧への到達精度が高いという利点が得られる。
なお、これらの弁のうち、いずれの弁を用いて減圧制御するかについては、搭載しようとするバーハンドル車両の設定に応じて、一方または双方の減圧制御手法を適宜選択して設定することができる。