(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194223
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】杭頭処理治具および杭頭処理方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
E02D5/34 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-217261(P2013-217261)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78564(P2015-78564A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 美那
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏一
(72)【発明者】
【氏名】柳田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−325141(JP,A)
【文献】
特開2001−131964(JP,A)
【文献】
特開昭57−071926(JP,A)
【文献】
特開昭53−036911(JP,A)
【文献】
特開平07−207661(JP,A)
【文献】
特開昭58−204216(JP,A)
【文献】
特開昭59−228523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22〜 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の現場造成時に余盛コンクリートを解体するために使用する杭頭処理治具であって、
前記杭の鉄筋に取り付けるための上部部材と、
前記上部部材と連結され、線材により構成された、水平方向の管体を取り付けるための下部部材と、
を具備し、
前記上部部材は、同心円状に配置された複数のリング材からなり、
前記複数のリング材が、最内のリング材から外側に向かって放射状に配置された棒材に取り付けられ、
前記棒材の位置が、水平方向の前記管体の周方向位置に対応することを特徴とする杭頭処理治具。
【請求項2】
前記上部部材と前記下部部材の間に鉛直方向の管体が取付けられることを特徴とする請求項1記載の杭頭処理治具。
【請求項3】
杭の現場造成時に余盛コンクリートの解体を行う杭頭処理方法であって、
上部部材と、
前記上部部材と連結され、線材により構成された、水平方向の管体を取り付けた下部部材と、
を具備する杭頭処理治具を用い、
前記杭頭処理治具の上部部材を前記杭の鉄筋に取り付けた状態でコンクリートを打設する工程(a)と、
水平方向の前記管体に挿入した破砕剤もしくは孔拡張手段を用いて余盛コンクリートを下方のコンクリートから分断する工程(b)と、
を具備し、
前記上部部材は、同心円状に配置された複数のリング材からなり、
前記複数のリング材が、最内のリング材から外側に向かって放射状に配置された棒材に取り付けられ、
前記棒材の位置が、水平方向の前記管体の周方向位置に対応することを特徴とする杭頭処理方法。
【請求項4】
前記上部部材と前記下部部材の間に鉛直方向の管体が取付けられ、
前記工程(b)において、鉛直方向の前記管体に挿入した破砕剤もしくは孔拡張手段を用いて、分断された前記余盛コンクリートの分割を行うことを特徴とする請求項3に記載の杭頭処理方法。
【請求項5】
前記工程(a)では、前記上部部材が露出するようにコンクリートを打設し、
前記工程(b)で、前記コンクリートの外周面の、前記周方向位置に対応する箇所を除去することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の杭頭処理方法。
【請求項6】
水平方向の前記管体の外側端部に詰物が詰められ、
前記工程(b)で、前記詰物を除去することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の杭頭処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭処理治具および杭頭処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭など地下杭は、現場造成により構築することがある。杭の現場造成の例を
図7に示す。この例では、
図7(a)に示すように地盤100の掘削を行って孔101を形成した後、
図7(b)に示すように孔101に鉄筋籠102を建込み、
図7(c)に示すように、トレミー管などを用いてコンクリート103の打設を開始する。
【0003】
図7(d)に示すように、コンクリート103の打設の進行に伴って最初に打設したコンクリートが上昇し、杭頭の余盛コンクリート103aとなる。コンクリート103の硬化により杭は形成されるが、余盛コンクリート103aは孔101の底部にあった土等の不純物を含んでおり構造体とはできないため、これを解体、除去する必要がある。この例では、
図7(e)に示すように杭頭の周囲の地盤100を掘削した後、
図7(f)に示すように地上にて余盛コンクリート103aを解体、除去している。
【0004】
余盛コンクリート103aの除去時には、爆薬・火薬・非火薬破砕剤などの破砕剤を用いて余盛コンクリート103aを破砕し、除去することがある。破砕剤を装薬するための装薬孔は、コンクリート103の打設後に余盛コンクリート103aに穿孔することが多い。
【0005】
しかしながら、上記のように装薬孔を後施工とすると、穿孔時の騒音や粉塵、工期増加などの問題が有る。また山留近傍など、杭の位置によっては水平方向の穿孔を行うために穿孔機械を配置するスペースがなく、装薬孔の配置が限定され効果的な配置ができないケースもあった。そのため、鉄筋籠等に事前に装薬管などを取付けておき、これを装薬孔として用いる例がある。
【0006】
例えば、特許文献1では、余盛コンクリート部分にダイナマイト装填管を予め設置した後、コンクリートを打設し、ダイナマイト装填管にダイナマイトを装填して余盛コンクリートを爆破させる方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献2では、余盛コンクリートとその下方のコンクリートの境界部に予め破壊用パイプを設置した後、コンクリートを打設し、その後破壊用パイプに膨張性物質を充填しこれを用いてコンクリートに亀裂を発生させる方法が記載されている。
【0008】
特許文献3には、余盛コンクリートとその下方のコンクリートとの境界面となる部分に静的破砕剤入り容器を取り付けた破砕補助板を設置した後、コンクリートを打設し、静的破砕剤を水和膨張させてコンクリートにクラックを発生させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−052269号公報
【特許文献2】特開昭58−204216号公報
【特許文献3】特開2001−131964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3の方法では、装薬管等を適切な位置に配置するのが面倒であったり、装薬管等の配置に用いる治具がコンクリートの打設を妨げるなどの問題があった。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、装薬孔等を好適に形成できる杭頭処理治具等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するための第1の発明は、杭の現場造成時に余盛コンクリートを解体するために使用する杭頭処理治具であって、前記杭の鉄筋に取り付けるための上部部材と、前記上部部材と連結され、線材により構成された、水平方向の管体を取り付けるための下部部材と、を具備し、
前記上部部材は、同心円状に配置された複数のリング材からなり、前記複数のリング材が、最内のリング材から外側に向かって放射状に配置された棒材に取り付けられ、前記棒材の位置が、水平方向の前記管体の周方向位置に対応することを特徴とする杭頭処理治具である。
【0013】
第1の発明の杭頭処理治具を用いて、装薬孔等として機能する管体を事前設置することにより、装薬孔等を後施工とする場合の穿孔時の騒音や粉塵、工期増加の問題が解消され、杭周囲のスペースが狭くても装薬孔等の効果的な配置が可能になる。また、第1の発明では、上部部材を鉄筋籠等の適切なレベルに取り付けるだけで下部部材の管体を適切な位置に配置、固定できるので、作業効率も高い。また、下部部材には線材を用いるので、コンクリートの打設時にコンクリートの流動を妨げることがない。
また、上部部材の棒材によって、水平方向の管体と対応する位置を識別可能とすることにより、コンクリート打設後に、上部部材を目印として、コンクリートに埋設された水平方向の管体の位置を容易に把握し、コンクリートをはつって装薬等が行える。
【0014】
前記上部部材と前記下部部材の間に鉛直方向の管体が取付けられることが望ましい。
これにより、水平方向の装薬孔等と同時に、鉛直方向の装薬孔等も効率よく形成できる。また、鉛直方向の管体により、上部部材に下部部材を適切な間隔で固定することができる。
【0016】
第2の発明は、杭の現場造成時に余盛コンクリートの解体を行う杭頭処理方法であって、上部部材と、前記上部部材と連結され、線材により構成された、水平方向の管体を取り付けた下部部材と、を具備する杭頭処理治具を用い、前記杭頭処理治具の上部部材を前記杭の鉄筋に取り付けた状態でコンクリートを打設する工程(a)と、水平方向の前記管体に挿入した破砕剤もしくは孔拡張手段を用いて余盛コンクリートを下方のコンクリートから分断する工程(b)と、を具備
し、前記上部部材は、同心円状に配置された複数のリング材からなり、前記複数のリング材が、最内のリング材から外側に向かって放射状に配置された棒材に取り付けられ、前記棒材の位置が、水平方向の前記管体の周方向位置に対応することを特徴とする杭頭処理方法である。
【0017】
前記上部部材と前記下部部材の間に鉛直方向の管体が取付けられ、前記工程(b)において、鉛直方向の前記管体に挿入した破砕剤もしくは孔拡張手段を用いて、分断された前記余盛コンクリートの分割を行うことが望ましい。
また
、前記工程(a)では、前記上部部材が露出するようにコンクリートを打設し、前記工程(b)で、前記コンクリートの外周面の、前記周方向位置に対応する箇所を除去することも望ましい。
さらに、水平方向の前記管体の外側端部に詰物が詰められ、前記工程(b)で、前記詰物を除去することも望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装薬孔等を好適に形成できる杭頭処理治具等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】杭頭処理治具10を鉄筋籠33に取り付けた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
(1.杭頭処理治具10)
図1に本発明の実施形態に係る杭頭処理治具10を示す。この杭頭処理治具10は、現場造成杭の構築時に、破砕剤を用いて余盛コンクリートを解体するために用いるもので、装薬管(管体)を取り付けた状態で前記の鉄筋籠に設置し、装薬管の事前設置を行うためのものである。
【0022】
図1に示すように、杭頭処理治具10は、上部リング1(上部部材)と、下部リング9(下部部材)からなる。
【0023】
上部リング1と下部リング9との間には、鉛直方向の装薬管21(以下、鉛直装薬管21という)が両リングの周方向および径方向に沿って複数取り付けられ、これにより、下部リング9が上部リング1に所定間隔で連結される。
【0024】
下部リング9には、水平方向の装薬管23(以下、水平装薬管23という)が周方向に沿って複数取り付けられる。各水平装薬管23は、下部リング9の平面中央部から外側に向かって放射状に取り付けられる。
【0025】
これら上部リング1や下部リング9によって鉛直装薬管21、水平装薬管23の配置や形状が固定される。なお、各装薬管の配置、本数、長さは、杭径や余盛コンクリートの高さを考慮して設計される。
【0026】
図2は上部リング1を示す図である。図に示すように、上部リング1は線材により構成され、同心円状に配置された3つのリング材3を有する。リング材3の大きさや数は、杭径等に応じて決定される。各リング材3は、最内のリング材3から放射状に複数配置された棒材5に取り付けられ、一体とされる。リング材3、棒材5は、例えば、鉄筋等の剛性を有する部材で作成する。
【0027】
図3は下部リング9を示す図である。図に示すように、下部リング9は線材により構成され、同心多角形状に配置された3つのリング材11を有する。リング材11の大きさや数は、リング材3と同様、杭径等に応じて決定される。リング材11は、例えば塩ビ管のように、ある程度の剛性を有しつつ、破砕剤の発破時には容易に変形もしくは破壊され、コンクリートの破砕を妨げない部材を用いる。ただし、杭径や装薬量によっては、別の材料を用いることも考えられる。
【0028】
リング材11には、水平装薬管23を取り付けるための取付具13と、鉛直装薬管21を取り付けるための取付具15が設けられる。取付具13、15は、それぞれリング材11の周方向に所定の間隔で設けられる。
【0029】
水平装薬管23は、取付具13を用いて前記したように下部リング9に取り付け、水平方向に配置される。水平装薬管23の周方向位置は、上部リング1の棒材5の周方向位置に対応する。すなわち、上部リング1の棒材5によって、水平装薬管23に対応する周方向位置が識別可能である。
【0030】
鉛直装薬管21は、上部を番線等を用いて上部リング1に取り付け、下部を下部リング9の取付具15に取り付けて、前記したように鉛直方向に配置される。
【0031】
なお、本実施形態では、鉛直装薬管21、水平装薬管23に塩ビ管を用いる。また、塩ビ管には、外周面に螺旋状の突出部を有するスパイラル管を用いるが、これに限ることはない。
【0032】
(2.杭頭処理方法)
本実施形態では、
図7で説明した方法と同様にして杭の現場造成を行うが、余盛コンクリートの解体を行うために、
図1のように鉛直装薬管21、水平装薬管23を取付けた杭頭処理治具10を鉄筋籠に取付けた状態でコンクリートの打設を行う。杭頭処理治具10は鉄筋籠の建て込み前の仮置時に予め取り付けておくか、あるいは鉄筋籠の建て込み後コンクリートを打設する前に取り付ければよい。
【0033】
図4は、杭頭処理治具10を鉄筋籠33に取り付けた状態を示した図であり、地盤に掘削した孔30に鉄筋籠33を建て込んだ状態を示している。
【0034】
杭頭処理治具10は、上部リング1を鉄筋籠33の主筋35の上端部に取り付けて配置する。この時、水平装薬管23が後述する余盛コンクリートとその下方の構造体コンクリートとの境界部に配置され、上部リング1や鉛直装薬管21の上端部が余盛コンクリートの上面から露出するように取り付けが行われる。杭頭処理治具10の取付けは、上部リング1を番線等で主筋35に固定したり、図示しないかんざしを単管等で作成して主筋35に取付け、かんざしに上部リング1を引っ掛けてもよい。
【0035】
また、上部リング1の棒材5の外側端部と、下部リング9に固定された水平装薬管23の外側端部は、孔30の内周面(杭の外周面)から若干内側に位置する。
【0036】
また、
図5に示すように、水平装薬管23の外側端部には、詰物27が詰められ、コンクリート打設時にコンクリートの流入が防がれる。なお、鉛直装薬管21の上端部にも同様の詰物を詰め、土砂等の侵入による目詰まりを防ぐようにしておく。
【0037】
コンクリートの打設は、上部リング1の最内のリング材3の孔7、下部リング9の最内のリング材11の孔8をガイドとして用い、これらの孔にトレミー管を挿入して行われる。上部リング1は剛性を有する部材で形成されるので、トレミー管の先端が動いてぶつかった場合にも、その形状を保持できる。
【0038】
コンクリートの硬化後、前記と同様、杭頭の周囲の地盤を、余盛コンクリートの部分が地表に露出するように掘削し、
図6(a)に示す状態とする。
【0039】
そして、上部リング1の棒材5の位置を目安にして水平装薬管23の周方向位置を把握し、余盛コンクリート45と構造体コンクリート43の境界部の、上記周方向位置に対応する箇所のコンクリートをはつって除去し、水平装薬管23の外側端部を露出させる。次に、
図5に示した詰物27を水平装薬管23の外側端部から取り外して除去し、水平装薬管23の内部に破砕剤を挿入して装薬する。また、鉛直装薬管21についても、上端部の詰物を除去して内部に破砕剤を挿入して装薬を行う。
【0040】
なお、破砕剤とは爆薬・火薬・非火薬破砕剤等の高エネルギー物質であり、その点火(起爆)によって爆発衝撃波またはガス圧力を発生させ、これにより対象物の破砕を行うものである。爆薬の場合は爆発衝撃波が発生し、火薬や非火薬破砕剤を使用する場合はガス圧力が発生する。
【0041】
上記のようにして各装薬管に破砕剤を装薬した後、これらの発破により余盛コンクリート45の解体を行う。ここでは、まず水平装薬管23の破砕剤の発破を行い、その後鉛直装薬管21の破砕剤の発破を行う。鉛直装薬管21の破砕剤は、外側のものから内側のものへと順に発破する。
【0042】
図6(b)に示すように、水平装薬管23の破砕剤の発破により、余盛コンクリート45が下方の構造体コンクリート43から上下に分断される。下部リング9は、余盛コンクリート45と構造体コンクリート43の境界部において断面欠損として働くため、発破時に亀裂誘発の役割も果たす。
【0043】
また、鉛直装薬管21の破砕剤の発破により、
図6(c)に示すように余盛コンクリート45が複数の小片に分割される。こうして余盛コンクリート45を構造体コンクリート43から分断し、複数の小片に分割した後、
図6(d)に示すように、杭頭処理治具10の取り外しを行い、コンクリートの小片を除去する。
【0044】
なお、本実施形態では各装薬管の外周面に螺旋状の突出部を有するので、コンクリートに埋設された装薬管の突出部がくさびとして働き、破砕剤による破砕効果が高まる。
【0045】
このように、本実施形態では、装薬孔として機能する鉛直装薬管21、水平装薬管23を事前設置することにより、装薬孔を後施工とする場合の穿孔時の騒音や粉塵、工期増加の問題が解消され、杭周囲のスペースが狭くても装薬孔の効果的な配置が可能になる。また、破砕剤は発破時に装薬すればよく、事前に装薬しておく必要が無いので、浸水による不爆や、雷からの迷走電流による誤爆の恐れもなくすことができる。また、杭の出来形に応じて適切に装薬量を変更することも可能である。
【0046】
また、本実施形態の杭頭処理治具10は、上部リング1と下部リング9が鉛直装薬管21によって適切な間隔で連結され、上部リング1を鉄筋籠33等の適切なレベルに取り付けるだけで下部リング9の水平装薬管23を余盛コンクリート45と構造体コンクリート43の境界部の適切な位置に配置、固定できるので、作業効率も高い。また、下部リング9には線材を用いるので、コンクリートの打設時にコンクリートの流動を妨げることがない。
【0047】
本実施形態では、コンクリートの打設後に各装薬管に破砕剤を装薬して発破を行う。杭頭処理治具10では、上部リング1の棒材5の周方向位置が、下部リング9に取付けられた水平装薬管23の周方向位置に対応し、これが識別可能である。従って、棒材5を目安にコンクリートに埋設された水平装薬管23の周方向位置を容易に把握でき、当該周方向位置のコンクリートをはつって除去し水平装薬管23の外側端部を露出でき、装薬時に水平装薬管23を探す手間がかからない。
【0048】
しかしながら、本発明はこれに限ることはない。例えば、本実施形態では上部リング1の棒材5によって水平装薬管23に対応する周方向位置が識別可能であるが、これに限らず、上部リング1の当該周方向位置に視認可能なマークを形成してもよい。さらに、鉛直装薬管21や水平装薬管23の杭頭処理治具10への取付け方法も本実施形態で説明したものに限ることはない。
【0049】
また、杭頭処理治具10は前記した上部リング1と下部リング9で構成したが、その形状は、鉄筋籠33等に取り付ける上部部材と、線材により構成される下部部材を有していれば、これに限ることはない。ただし、本実施形態のようにリング材3、11により構成した上部リング1や下部リング9を用いることで、コンクリートの打設状況が確認しやすい等の利点がある。
【0050】
さらに、本実施形態では破砕剤により余盛コンクリート45の解体を行う例を示したが、これに限ることはなく、油圧破砕機(孔拡張手段)により余盛コンクリート45の解体を行うことも可能である。油圧破砕機は、例えば、先端のウェッジライナーをコンクリートに設けた挿入孔に挿入して拡げることで、コンクリートに亀裂を発生させるものである。この場合では、前記の鉛直装薬管21や水平装薬管23に替えて、ウェッジライナーを挿入可能な適当な径と長さを有し、上記の挿入孔として機能する管体を杭頭処理治具10に取付ける。そして、前記と同様にコンクリートを打設した後、水平方向の管体に挿入した油圧破砕機のウェッジライナーを上下に拡げて構造体コンクリート43から余盛コンクリート45を分断し、鉛直方向の管体に挿入した油圧破砕機のウェッジライナーを横に拡げて余盛コンクリート45の分割を行うことができる。
【0051】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1………上部リング
3、11………リング材
5………棒材
9………下部リング
10………杭頭処理治具
21………鉛直装薬管
23………水平装薬管
27………詰物
30………孔
33………鉄筋籠
35………主筋
43………構造体コンクリート
45………余盛コンクリート