特許第6194230号(P6194230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6194230タイヤ成型金型用測定治具及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194230
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】タイヤ成型金型用測定治具及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/16 20060101AFI20170828BHJP
   B29C 33/70 20060101ALI20170828BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20170828BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   G01B21/16
   B29C33/70
   B29C33/02
   B29C35/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-231296(P2013-231296)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-90348(P2015-90348A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】新山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】古谷 弘幸
【審査官】 池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−020026(JP,A)
【文献】 特開平05−220748(JP,A)
【文献】 特開2008−023722(JP,A)
【文献】 特開2004−230716(JP,A)
【文献】 米国特許第05368799(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B21/00−21/32
B29C33/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に凸部を有する複数のセクタを周方向に配置して得られた外周面側をガイドするためのタイヤ成型金型用測定治具であって、
前記セクタの外面に当接可能な環状の基準面と、前記凸部が挿入される凹部を有する治具本体を備え、
前記治具本体の少なくとも一部を取外可能なブロックで構成し、前記治具本体から前記ブロックを取り外すことにより、前記セクタの少なくとも1つを挿入可能な空間部を形成したことを特徴とするタイヤ成型金型用測定治具。
【請求項2】
前記セクタの凸部の下面が当接する、前記治具本体の凹部の対向下面からなる第2の基準面をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成型金型用測定治具。
【請求項3】
前記治具本体は、前記基準面から外面側へと窪んだ当接受面を有する第1凹部と、そこからさらに窪んだ第2凹部とからなる段付き形状の取付凹部を形成され、
前記ブロックは、前記基準面の一部を構成する内周面、及び、前記第1凹部の当接受面に当接する当接面を有する内面部と、前記第2凹部内に配置されるブロック本体と、からなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成型金型用測定治具。
【請求項4】
前記第2凹部は、内面部の当接面を第1凹部の当接受面に当接させた状態で、前記ブロック本体との間に移動可能な隙間を有し、
前記ブロックは、前記第2凹部内に配置されるブロック本体に対して前記治具本体の外面側から挿入したネジが螺合されることにより、前記内面部の当接面を第1凹部の当接受面に圧接されることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ成型金型用測定治具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ成型金型用測定治具の使用方法であって、
前記治具本体から前記ブロックを取り外し、
前記治具本体の内側にセクタを配置し、
前記治具本体にブロックを取り付け、
前記治具本体の基準面に、前記セクタの外面を当接させ、隣接するセクタ間に隙間を形成した状態で、各セクタを治具本体に固定し、
前記セクタ間の隙間を測定することを特徴とするタイヤ成型金型用測定治具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成型金型用測定治具及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ成型金型用測定治具として、例えば、次のようなものが公知である。
特許文献1には、トレッドセグメント保持体の取付リング部の内周面に保持した円筒整列状のトレッドセグメントの内面凹凸量を測定する測定手段を、トレッドセグメント保持体の底部の中心部に着脱自在に取付けた構成が開示されている。
特許文献2には、タイヤ加硫用の割モールドの内周面を測定する測定装置が、割モールドのリング状下サイドモールドの軸心に直交する測定平面上を回転することが開示されている。
【0003】
しかしながら、前記いずれの測定治具であってもセグメント(セクタ)の内周面を測定することができるだけである。タイヤ成型時の熱膨張を考慮して各セグメント(セクタ)間の隙間を測定する点については一切言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−257537号公報
【特許文献2】特開2003−266445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タイヤ成型時のセクタの熱膨張を考慮して予めセクタ間に設定する隙間を測定することができるタイヤ成型金型用測定治具及びその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
外面に凸部を有する複数のセクタを周方向に配置して得られた外周面側をガイドするためのタイヤ成型金型用測定治具であって、
前記セクタの外面に当接可能な環状の基準面と、前記凸部が挿入される凹部を有する治具本体を備え、
前記治具本体の少なくとも一部を取外可能なブロックで構成し、前記治具本体から前記ブロックを取り外すことにより、前記セクタの少なくとも1つを挿入可能な空間部を形成したものである。
【0007】
この構成により、外面の凸部を備えたセクタや、内面に凸部を備えた治具本体であっても、治具本体からブロックを取り外すことにより、形成された空間部を介して治具本体の内側に各セクタを配置し、ブロックを装着することができる。また治具本体に固定した各セクタは、外面を治具本体の基準面に当接されることにより正確に位置決めされるので、セクタ間の隙間の測定を正確に行うことが可能となる。
【0008】
前記セクタの凸部の下面が当接する、前記治具本体の凹部の対向下面からなる第2の基準面をさらに備えるのが好ましい。
【0009】
この構成により、より一層各セクタの位置決め精度を高めて、セクタ間の隙間の測定精度を向上させることができる。
【0010】
前記治具本体は、前記基準面から外面側へと窪んだ当接受面を有する第1凹部と、そこからさらに窪んだ第2凹部とからなる段付き形状の取付凹部を形成され、
前記ブロックは、前記基準面の一部を構成する内周面、及び、前記第1凹部の当接受面に当接する当接面を有する内面部と、前記第2凹部内に配置されるブロック本体と、から構成するのが好ましい。
【0011】
この構成により、ブロック本体を治具本体に固定すれば、ブロックの内面部の当接面を、治具本体の第1凹部の当接受面に当接させて、内面を治具本体の基準面と一致させることができる。
【0012】
前記第2凹部は、内面部の当接面を第1凹部の当接受面に当接させた状態で、前記ブロック本体との間に移動可能な隙間を有し、
前記ブロックは、前記第2凹部内に配置されるブロック本体に対して前記治具本体の外面側から挿入したネジが螺合されることにより、前記内面部の当接面を第1凹部の当接受面に圧接されるのが好ましい。
【0013】
この構成により、ネジを螺合するという簡単な手段によってブロックの内面部の当接面を、治具本体の第1凹部の当接受面に圧接させることができる。これにより、精度良くブロックの内面を治具本体の基準面と一致させることが可能となる。
【0014】
また本発明は、前記課題を解決するための手段として、
前記いずれかの構成からなるタイヤ成型金型用測定治具の使用方法であって、
前記治具本体から前記ブロックを取り外し、
前記治具本体の内側にセクタを配置し、
前記治具本体にブロックを取り付け、
前記治具本体の基準面に、前記セクタの外面を当接させ、隣接するセクタ間に隙間を形成した状態で、各セクタを治具本体に固定し、
前記セクタ間の隙間を測定するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、治具本体の一部を取外可能なブロックで構成し、このブロックを取り外すことにより形成された空間部を介して治具本体内にセクタを配置可能としたので、外面に凸部等が形成されているセクタであっても簡単に取り付けることができる。またセクタの外面を治具本体の基準面に当接させるようにしているので、セクタの位置決めを高精度で行うことができ、隣接するセクタ間の隙間を正確に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本実施形態に係る治具の平面図、(b)はその正面断面図である。
図2図1のブロックを示す斜視図である。
図3図1のセクタを示す斜視図である。
図4】他の実施形態に係る治具の部分正面断面図である。
図5】本実施形態の比較例を示す治具の正面断面図である。
図6】本実施形態の他の比較例を示す治具の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係るタイヤ成型金型用測定治具を示す。このタイヤ成型金型用測定治具は機械構造用炭素鋼(例えば、S45C)、球状黒鉛鋳鉄(例えば、FCD450)等からなる有底筒状の治具本体1で構成されている。治具本体1は一体的に形成した底面部2と筒状部3とからなる。
【0019】
底面部2はドーナツ状で、中心孔4により軽量化が図られている。また底面部2の外周部上面には段部5が形成されている。
【0020】
筒状部3は、その内周面がセクタ20の外周面を当接させて位置決めするための第1基準面6となっている。第1基準面6の上方側には、凹部の一態様である環状溝7が形成されている。環状溝7の深さ寸法は、後述するセクタ20の外周面に形成した突条21の突出寸法よりも若干大きくなるように設定されている。また環状溝7の幅寸法は、セクタ20の突条21の幅寸法よりも若干大きくなるように設定されている。環状溝7の下方側側面(対向下面)は、セクタ20の突条21が載置される第2基準面8となっている。
【0021】
環状溝7の底面(内周面)と筒状部3の外周面とは、外周面側で内径寸法が大きくなった段付き形状の第1ネジ孔9によって連通されている。第1ネジ孔9は、2つ一組で周方向に均等に配置される9組で構成されている。すなわち、1組のネジ孔を利用して1つのセクタ20をネジ止め固定することにより、都合9つのセクタ20を固定できるようになっている。但し、セクタ20のネジ止め固定は2箇所に限らず、1箇所又は3箇所以上であっても構わない。
【0022】
また筒状部3の上方開口部には、その内面側の一部が切除されることにより逃がし凹部10が形成されている。
逃がし凹部10は段付き形状で、筒状部3の内周面側に開口する第1凹部11と、その底面両端部の当接受面12を残してさらに窪んだ第2凹部13とで構成されている。第2凹部13の底面(内側面)と筒状部3の外周面とは、外周面側で内径寸法が大きくなった段付き形状の第2ネジ孔14によって連通されている。逃がし凹部10にはブロック15が装着される。
【0023】
図2に示すように、ブロック15は、ブロック本体16と内面部17とからなる。
ブロック本体16は略直方体形状で、背面両側に第1雌ネジ孔18がそれぞれ形成され、逃がし凹部10の第2凹部13内に配置される。各第1雌ねじ孔18の位置は、前記筒状部3に形成した第2凹部13の底面に開口する第2ネジ孔14の位置にそれぞれ対応している。
【0024】
内面部17は、ブロック本体16の両側からはみ出しており、その前面(内面)が筒状部3の第1基準面6の一部を構成する。一方、内面部17の背面(外面)は前記第1凹部11の当接受面12に当接する当接面19を構成する。内面部17の当接面19を第1凹部11の当接受面12に当接させた状態では、ブロック本体16の背面と第2凹部13の底面との間には僅かに隙間が形成される。これにより、逃がし凹部10にブロック15を配置してネジ止めすると、ブロック15の当接面19を第1凹部11の当接受面12に押し付けて位置決めすることができ、筒状部3の基準面に対してブロック15の内周面を高精度に合致させることが可能となる。
【0025】
前記構成の治具は、タイヤ成型金型のセクタ20を、タイヤ成型時の熱膨張分を考慮して周方向に一定の隙間を形成しつつ保持する際に利用される。
セクタ20は、周方向に複数個が並設されることにより形成された内周面で、未加硫のタイヤであるグリーンタイヤのトレッド部にトレッドパターンを形成する。図3に示すように、各セクタ20の外周面には、凸部の一形態である周方向に延びる突条21が形成されている。突条21の両端側には、前記1組の第1ネジ孔9を介して雄ネジ(図示せず)を螺合するための第2雌ネジ孔22がそれぞれ形成されている。
【0026】
前記治具へのセクタ20の位置決め(固定)は次のようにして行う。
すなわち、治具本体1の筒状部3の内周側にセクタ20を配置する。各セクタ20の外周面には突条21が形成されているため、そのままでは全てのセクタ20を筒状部3の内側には配置することができない。そこで、治具本体1の逃がし凹部10からブロック15を取り外しておき、形成された空間部を介してセクタ20を配置する。このとき、各セクタ20は、治具本体1にネジ止めできるように周方向に位置決めする。この場合、各セクタ20と治具本体1の配置位置とにそれぞれ対応する番号を付与しておき、治具本体1に対して各セクタ20を位置決めすればよい。
【0027】
治具本体1の筒状部3内に全てのセクタ20が位置決めされれば、筒状部3の逃がし凹部10にブロック15を配置してネジ止め固定する。またこの状態で、各セクタ20を治具本体1の筒状部3にネジ止め固定する。このとき、隣接する各セクタ20間にほぼ均等な隙間が形成されるように位置を調整した状態で、各セクタ20を治具に固定する。
【0028】
各セクタ20は、その外面を治具本体1の第1基準面6に当接させ、突条21の下面を環状溝7の第2基準面8に当接させた状態で固定される。この場合、セクタ20の外面の全面積のうち、治具本体1の第1基準面6との当接面積が70%以上であるのが好ましい。したがって、各セクタ20を治具本体1に対して正確に位置決めすることができる。
【0029】
次に、図示しない隙間ゲージを使用して各セクタ20の隙間を測定する。そして、全ての隙間について測定が完了すれば、その測定値の合計を計算し、その合計値が予め設定した値に(所定公差の範囲内で)合致するか否かを判断する。合致していれば、9つのセクタ20のセットは所望の精度に形成されていることになり、タイヤ成型金型として使用する。合致していなければ、不良品と判断したり、一部のセクタ20の寸法調整を行って再度前述の測定を行ったりする。
【0030】
このように、前記構成の治具を使用してセクタ同士の隙間を測定することにより、測定結果を高精度なものとすることができる。ここで、以下のような2種類の他の構成の治具を使用する場合について検討してみる。
図4は、前記セクタ20の突条部を抑える部分、すなわちブロック15に相当する部分を全周に亘って除去した治具を示す。これによれば、治具に対するセクタ20の組付作業は容易であるものの、セクタ20の外面に当接する第1基準面6の当接面積が小さくなり、測定精度が悪化する。
図5は、ブロック15を設けることなく環状溝7のみを形成した治具を示す。この治具では、そもそも外面に突条21を有するセクタ20を組み付けることができないという問題がある。
この点で、環状溝7を形成し、取外可能なブロック15を備えた前記構成の治具によれば、セクタ20の組付作業を効率的に行うことができると共に、セクタ20間の隙間を高精度に測定することができるという利点がある。
【0031】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0032】
例えば、前記実施形態では、セクタ20は9分割で設けるようにしたが、7分割等、その分割数は自由に設定することができる。また各セクタ20のサイズは均等にしたが、必ずしも均等とする必要もなく、周長が相違していても構わない。
【0033】
また前記実施形態では、セクタ20の外面に凸部として突条21を形成するようにしたが、この凸部は必ずしも周方向につらなった突条21である必要はなく、2箇所の突起等で構成することも可能である。
【0034】
また前記実施形態では、ブロック15を筒状部3の1箇所にのみ設けるようにしたが、2箇所以上とすることも可能である。第1基準面6の精度を高める上で、1箇所のみとするのが好ましいが、複数箇所とすることでセクタ20の装着作業が容易となる。
【0035】
また前記実施形態では、治具本体1に対する各セクタ20の位置合わせをそれぞれに付与した番号に基づいて行うようにしたが、図6に示すように、いずれか一方に突起23、残る他方にこの突起を配置可能な凹部24を設け、突起23と凹部24の位置を各セクタ20で相違させることにより、位置合わせするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…治具本体
2…底面部
3…筒状部
4…中心孔
5…段部
6…第1基準面
7…環状溝
8…第2基準面
9…第1ネジ孔
10…逃がし凹部
11…第1凹部
12…当接受面
13…第2凹部
14…第2ネジ孔
15…ブロック
16…ブロック本体
17…内面部
18…第1雌ネジ
19…当接面
20…セクタ
21…突条
22…第2雌ネジ
23…突起
24…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6