(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194247
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】完全性検査を有する機械航法システム
(51)【国際特許分類】
G01C 17/38 20060101AFI20170828BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20170828BHJP
G01C 21/16 20060101ALI20170828BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20170828BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20170828BHJP
G01S 19/49 20100101ALI20170828BHJP
G01S 19/23 20100101ALI20170828BHJP
【FI】
G01C17/38 C
G01C21/28
G01C21/16
G08G1/16 A
G08G1/0968
G01S19/49
G01S19/23
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-526114(P2013-526114)
(86)(22)【出願日】2011年8月24日
(65)【公表番号】特表2013-540996(P2013-540996A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011048895
(87)【国際公開番号】WO2012027431
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】12/868,429
(32)【優先日】2010年8月25日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビブハラジット ハルダー
【審査官】
白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−301725(JP,A)
【文献】
特開2007−163401(JP,A)
【文献】
特開2008−122252(JP,A)
【文献】
特開2008−175786(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0163255(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0125234(US,A1)
【文献】
米国特許第07003386(US,B1)
【文献】
米国特許第05483455(US,A)
【文献】
特開平9−257502(JP,A)
【文献】
特開平4−346024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 17/38
G01C 21/16
G01C 21/28
G01S 19/23
G01S 19/49
G08G 1/0968
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時刻と第2の時刻の機械(12)の位置を測定するように構成された航法装置(26)と、
第1の時刻から第2の時刻の期間の機械(12)の速度と進行方向を示す少なくとも1つの第1の信号を生成するように構成された少なくとも1つの第1のセンサ(30)と、
航法装置(26)と少なくとも1つの第1のセンサ(30)と通信する制御装置(28)であって、
第1の時刻の機械(12)の測定位置と少なくとも1つの第1の信号とに基づき第2の時刻の機械(12)の位置を推定し、
第2の時刻の機械(12)の測定位置と第2の時刻の機械(12)の推定位置との比較を行い、
第2の時刻の測定位置が閾値量だけ第2の時刻の推定位置と異なる場合に航法装置(26)が誤動作したと判断し、
航法装置(26)が設定期間にわたって誤動作したと判断された場合に、機械(12)の進行方向の変更を含む回避的機械(12)制御を選択的に実施し、
制御装置(28)はさらに、少なくとも第1のセンサ(30)の少なくとも第1の信号に基づいて、第1の時刻から第1の時刻の将来時刻である第3の時刻までの期間の連続的時間間隔で推定した、第3の時刻の機械(12)の推定位置と、第3の時刻の機械の測定位置との追加比較を行い、追加比較の傾向分析に基づき、ドリフトする航法装置(26)の精度を判断するように構成された制御装置(28)と、を含む航法システム(20)。
【請求項2】
少なくとも1つの第1のセンサ(30)は、機械(12)の走行速度を示す速度信号を生成するように構成された速度センサ(30A)と、機械(12)の進行方向を示す第1の進行方向信号を生成するように構成された操舵角センサ(30B)と、を含む請求項1に記載の航法システム(20)。
【請求項3】
少なくとも1つの第1のセンサ(30)はさらに、機械(12)の進行方向を示す第2の進行方向信号を生成するように構成されたピッチセンサ(30)を含む、請求項2に記載の航法システム(20)。
【請求項4】
制御装置(28)は、速度センサ(30A)、操舵角センサ(30B)、ピッチセンサ(30)からの信号と、機械(12)の公知の運動学とに基づき第2の時刻の機械(12)の位置を推定するように構成される、請求項3に記載の航法システム(20)。
【請求項5】
航法装置(26)はGPS装置である、請求項1に記載の航法システム(20)。
【請求項6】
制御装置(28)はさらに、航法装置(26)が誤動作していると判断された場合に、機械(12)の制御目的のために、第2の時刻の測定位置を第2の時刻の推定位置で置換するように構成される、請求項1に記載の航法システム(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には航法システム(navigation system)に関し、より具体的には完全性検査を有する機械航法システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オンハイウェイまたはオフハイウェイ運搬トラック、モータグレーダ、除雪車、および他のタイプの重機などの機械は、様々なタスクを行うために利用される。これらのタスクのいくつかは、大きな、扱いにくい、緩んだおよび/または重い負荷を急な傾斜の上に、または荒れたまたは標識の乏しい運搬道路に沿って、運ぶまたは押すことに関わる。そして、機械の大きさと運動量のためにおよび/または視界の悪さのために、これらのタスクは人間オペレータが単独で効果的に完了するには難しい可能性がある。
【0003】
運搬道路に沿って大型機械を安全かつ効率的に誘導するのを支援するために、いくつか機械は、センサ、例えばGPSセンサ、RADARセンサ、SONARセンサ、LIDARセンサ、IRおよび非IRカメラ、および他の同様なセンサを備えている。これらのセンサはしばしば、機械操縦上の制御が強化またはさらには自動化され得るように、機械の表示装置および/または誘導システムに接続される。これらの表示装置と誘導システムが正しく動作するためには、センサにより提供される情報が正確でなければならない。そして、ほとんどの機械センサシステムは最初に作動されるときに校正されるにもかかわらず、動作中の機械に対する振動、衝突、損傷が、センサにより提供される情報の品質を低下させる可能性がある。このため、センサの完全性の定期的検査が有益となり得る。
【0004】
定期的完全性検査を提供する例示的な機械システムは、1999年5月25日にFanに発行された(特許文献1)(以下、’655特許という)に開示されている。特に、(特許文献1)はGPS受信機と慣性航法装置(INU:Inertial Navigation Unit)を有する一体型機械測位システムを開示している。INUは、走行記録計、ドップラーレーダー、ジャイロスコープ、および可動機械の操舵角を測定するためのセンサを含む。機械測位システムはGPS受信機からGPS位置推定値をINUからINU位置推定値を受信し、これら2つの位置推定値を比較する。2つの位置推定値が同じであれば、システムは有効と考えられる。そうでなければ、走行記録計とドップラーレーダーにより判断された可動機械の速度が比較される。速度の差が第1の所定の閾値より大きければ、INUは無効であると判断される。速度の差が第1の所定の閾値未満であれば、ジャイロスコープからの進行方向速度(heading rate)は、測定された転舵角と速度に基づき計算された進行方向速度と比較される。進行方向速度の差が第2の所定の閾値より大きければ、INUは無効であると考えられる。そうでなければ、GPSが無効であると考えられる。
【0005】
(特許文献1)の機械測位システムはある状況では役立ち得るが、このシステムは最適とは言い難いこともある。特に、このシステムは2つの別個で冗長な航法装置を必要とし、システムのコストと複雑さを増大する可能性がある。加えて、このシステムは、センサ値、センサ雑音、機械のスリップまたはスライドなどの外部条件の過渡変化により誤警報を発しやすいこともある。さらに(特許文献1)のシステムは経時誤差ドリフトを検出することができないこともある。
【0006】
開示される航法システムは、従来技術の上記問題および/または他の問題の1つまたは複数を克服することに向けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,906,655号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示は航法システムに向けられる。本航法システムは、第1の時刻と第2の時刻の機械の位置を測定するように構成された航法装置と、第1の時刻〜第2の時刻の期間の機械の速度と進行方向を示す少なくとも1つの第1の信号を生成するように構成された少なくとも1つの第1のセンサと、航法装置と少なくとも1つの第1のセンサと通信する制御装置と、を含んでもよい。制御装置は、第1の時刻の機械の測定位置と少なくとも1つの第1の信号とに基づき第2の時刻の機械の位置を推定し、第2の時刻の機械の測定位置と第2の時刻の機械の推定位置との比較を行うように構成されてもよい。制御装置はまた、上記比較に基づき航法装置の完全性を判断するように構成されてもよい。
【0009】
さらに別の態様では、本開示は航法システムにより使用されるコンピュータ読み取り可能媒体に向けられる。このコンピュータ読み取り可能媒体は、測定位置の精度検査方法を行うための実行命令を有してもよい。本方法は、第1の時刻と第2の時刻の機械の位置を測定する工程と、第1の時刻〜第2の時刻の期間の機械の速度と進行方向を測定する工程と、第1の時刻の機械の測定位置と測定された速度と進行方向とに基づき第2の時刻の機械の位置を推定する工程と、を含んでもよい。本方法はまた、第2の時刻の可動機械の測定位置と第2の時刻の可動機械の推定位置との比較を行う工程と、上記比較に基づき第2の時刻の測定位置の精度を判断する工程と、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】例示的な開示機械航法システムの絵入り図解である。
【
図2】
図1の機械航法システムにより行われてもよい例示的開示方法を描写するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、作業現場10と、作業現場10においてタスクを実行する例示的な機械12とを示す。作業現場10の例としては、鉱区、埋め立て地、石切場、建設現場、または機械12により通過可能な道路または地面14を有する任意の他のタイプの作業現場が挙げられる。機械12により実行されるタスクは作業現場10において地勢を変えることに関連し得る。このタスクの例として、運搬作業、傾斜付け作業、平坦化作業、耕す作業、バルク材除去作業、または任意の他のタイプの作業が挙げられる。このため、機械12は、可動機械、例えば運搬トラック、モータグレーダ、ローダー、または除雪車を具現してもよい。機械12はとりわけ、電源16、1つまたは複数の牽引装置18、航法システム20を含んでもよい。電源16は、機械12を推進する牽引装置18の電力を生成し供給してもよい。一方、航法システム20は、様々な入力に応答して機械12を操縦するために電源16および/または牽引装置18の動作を調整していてもよい。
【0012】
電源16は、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、気体燃料動力エンジン、または当業者に明らかな任意の他のタイプのエンジンなどの内燃エンジンを具現してもよい。電源16は、その代わりにまたはそれに加えて、燃料電池、電力蓄積装置、電動機、または他の同様な機構などの電力の非燃焼源を含んでもよい。電源16は、直接的機械結合、油圧回路、電気回路を介しまたは任意の他の適切なやり方で牽引装置18を駆動するように接続されてもよい。
【0013】
牽引装置18は、車輪、ベルト、トラック、または当該技術領域で知られた別の牽引装置であってよい。1つまたは複数の牽引装置18は、電源16の出力回転に従って機械12を回転させ推進するために、電源16により駆動されてもよい。操舵装置22、例えば油圧シリンダ、油圧モータ、電気モータおよび/またはラックアンドピニオン構造は、その操舵に影響を与えるように1つまたは複数の牽引装置18に関連付けられてもよい。加えて、制動装置24、例えば圧縮ディスクブレーキ、内部流体ブレーキ、エンジンリターダ、排気ブレーキおよび/または変速機ブレーキは、機械12の制動に影響を与えるように1つまたは複数の牽引装置18および/または電源16に関連付けられてもよい。
【0014】
航法システム20は、機械12の操縦を調節するのを支援するように相互作用する多数の部品を含んでもよい。特に、航法システム20は、航法装置26と、電源16、牽引装置18、操舵装置22、制動装置24および/または航法装置26と通信する制御装置28と、を含んでもよい。制御装置28は、航法装置26からおよび/または機械12のオペレータから受信された入力に基づき機械12の操縦(すなわち、推進、操舵、および/または制動)を部分的または完全に制御するように構成されてもよい。
【0015】
航法装置26は、作業現場10における機械12の位置を判断するとともにそれを示す信号を生成するように構成されてもよい。例えば、航法装置26は、全地球測位システム(GPS)装置、慣性基準/測定装置(IR/MU:Inertial Reference/Measurement Unit)、ローカル追跡システム、または機械12に関連する位置情報を受信または判断するように構成された任意の他の公知の位置決め装置を具現してもよい。一実施形態では、2次元情報だけを提供する装置が使用されてもよいが、航法装置26からの位置情報は3次元であってもよい。航法装置26は、受信または判断された位置情報を示す信号を伝達するために制御装置28と通信してもよい。
【0016】
制御装置28は、航法装置26により測定され提供されるような機械12の地理的場所を監視し、記録し、格納し、インデックスを付け、処理し、および/または伝達するための部品と、この情報に応答して機械12の操縦(すなわち推進、操舵、および/または制動)を部分的または完全に制御するための部品と、を含んでもよい。これらの部品は、例えば、メモリ、1つまたは複数のデータ記憶装置、中央処理装置、または開示されたアプリケーションを実行するために使用されてもよい任意の他の部品を含んでもよい。さらに、本開示の態様はメモリ内に通常格納されているものとして説明され得るが、これらの態様は、コンピュータチップ、およびハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、光媒体、CD−ROM、または他の形式のRAMまたはROMを含む2次記憶装置などの異なるタイプのコンピュータプログラム製品またはコンピュータ読み取り可能媒体上に格納されるまたはそれから読み取ることができるということを当業者は理解することになる。
【0017】
航法装置26により提供される情報が機械12の自律的または半自律的制御中に制御装置28にとって最も正確かつ有用となるために、航法装置26の精度は定期的に検査されなければならず、偏差は考慮される所望の精度からのものでなければならない。理想的には、航法装置26の精度は常にほぼ所望の精度に一致する。しかしながら、組立中に発生した誤差、または機械12の動作中の航法装置26の望まれない動きまたは損傷が、航法装置26の実際の精度を所望の精度からドリフトさせることがある。制御装置28は、航法装置26から信号を受信するように、そして以下に説明される航法完全性を検査し制御する方法を行うためにコンピュータ読み取り可能媒体上に格納された一連のコンピュータプログラム命令を実行するように、構成されてもよい。
【0018】
制御装置28により行われる方法は通常、時刻T1に航法装置26を介し機械12の位置を測定する工程と、測定された位置と他の入力とに基づき後時刻T2の機械12の位置を推定する工程と、時刻T2に航法装置26を介し機械12の位置を測定する工程と、時刻T2の測定位置と時刻T2の推定位置との比較を行う工程と、この比較に基づき是正措置および/または回避行動を選択的に取る工程と、を含んでもよい。この比較に対する応答は、測定位置と推定位置との差(例えば、この差の関数として計算される誤差値に基づいて)に基づいて変化してもよいし、それに基づいてもよい。例えば、測定位置が推定位置とほぼ等しい場合、制御装置28は機械操縦に全く影響を与えなくてもよい。但し、測定位置が推定位置と実質的に異なる(すなわち、少なくとも1つの閾値量だけ異なる)場合、制御装置28は航法システム20が誤動作し得ると機械12のオペレータに警告する、オペレータによる行動を勧める、知られた安全な場所の方に機械12を操縦するように操舵装置22を自律的に制御する、機械12の走行を遅くするまたはさらに停止するように制動装置24を自律的に制御する、および/または他の回避操縦を実施することができる。どの応答をトリガするかだけでなく、制御装置28により特定の応答をトリガする測定位置と推定位置との差のレベルも、必要に応じ調整可能であってよいということが企図されている。いくつかの実施形態では、機械の測定位置と推定位置との差は、航法装置26に関連する衛星カバー範囲の短い経過時間のために回避操縦が偽ってトリガされないように、回避操縦が実行される前の設定期間の間は閾値量より大きくなければならないということも企図されている。衛星カバー範囲のこれらの経過時間中、または航法誤動作の他の短い期間中、制御装置28は必要に応じ、時刻T2の測定位置を機械12の自律制御に使用される推定位置で置換するように構成されてもよい。
【0019】
制御装置28は、航法装置26により提供される時刻T1の測定位置と時刻T1〜時刻T2の期間に継続的に感知される機械パラメータとに基づき、時刻T2の機械12の位置を推定するように構成されてもよい。特に、航法システム20は、機械12の位置を推定するために、航法装置26の完全性検査中に制御装置28により使用される少なくとも1つのセンサ30を含んでもよい。特定の実施形態では、航法システム20は、2つの異なるセンサ、例えば走行速度センサ30Aと少なくとも1つの進行方向センサ30Bとを含む。制御装置28は、時刻T1の機械12の第1の位置に関する情報を航法装置26から受信し、時刻T1〜後時刻T2の期間の走行速度と進行方向に関する情報をセンサ30Aと30Bから受信し、感知された走行速度、上記期間、感知された進行方向に基づき時刻T1以後に機械12により特定方向に走行された全距離を計算し、時刻T2の機械12の位置を、時刻T1の位置、時刻T1以後に走行された距離、時刻T1からの走行方向に基づき推定してもよい。制御装置28は、時刻T2の機械位置の推定中に使用される各計算に関連するメモリに格納されたアルゴリズムを有してもよい。
【0020】
制御装置28はまた、航法装置26の精度ドリフトを判断するように構成されてもよい。特に、制御装置28は、連続的時間間隔で推定および測定される機械12の位置を記録し、記録された情報に対し傾向分析を行い精度ドリフトを判断するように構成されてもよい。例えば、制御装置28は、時刻T1の機械10の測定位置および時刻T1〜時刻T10の期間に測定された機械10の速度と進行方向に基づく将来時刻T10の機械10の推定位置を格納し、時刻T2の機械10の測定位置および時刻T2から時刻T10の期間に測定された機械10の速度と進行方向に基づく将来時刻T10の機械10の位置の推定位置を格納し、時刻T3の機械10の測定位置および時刻T3から時刻T10の期間に測定された機械10の速度と進行方向に基づく将来時刻T10の機械10の位置の推定位置を格納する、等してもよい。次に、制御装置28は、時刻T10の測定位置と時刻T1〜時刻T9の推定位置のそれぞれとを比較し、航法システム20の複数の誤差項(例えば、E1〜E9)を判断してもよい。次に、制御装置28は1つまたは複数の所定の基準に従ってこれらの誤差値に重み付けし、残留信号Rを計算してもよい。残留信号が閾値誤差値より大きい場合、航法システム20はドリフトしていると判断されてもよい。次に、制御装置28は、個々の測定位置と推定位置との差が未だ上述の閾値差量を越えなくても、ドリフトに基づき異なる応答を実施する(すなわち、異なる是正処置を取る)ように構成されてもよい。必要に応じて任意の数(例えば、10、15、50)の推定位置が単一の測定位置と比較されてもよいように企図されている。
【0021】
センサ30Aは、牽引装置18の回転速度に関する指示を提供するように構成された磁気ピックアップ型センサを具現してもよい。一例では、センサ30Aは、牽引装置18のハブ内に埋め込まれた磁石(図示せず)に隣接して配置されたホール効果素子(図示せず)、牽引装置18の軸、および/または牽引装置18を駆動する減速歯車構造または変速機(図示せず)の回転部品を含んでもよい。この位置で、ホール効果素子は、牽引装置18の回転速度を感知し、対応する走行速度信号を生成してもよい。あるいは、センサ30Aは、別のタイプのセンサ(例えば、光センサ、レーダーセンサ、ドップラーセンサ、当該技術領域で知られた任意の他のタイプの走行速度センサ)を必要に応じ具現してもよい。センサ30Aからの信号は処理と管理目的のために制御装置28へ導かれてもよい。
【0022】
進行方向センサ30Bは、機械12の進行方向を感知し、少なくとも1つの対応する信号を生成するように構成されてもよい。特定の実施形態では、機械12の進行方向は2次元(すなわち地面14とほぼ平行なx−y面内)においてだけ感知される。ほとんどの状況では、2次元進行方向情報は、機械12が通常は平面動作だけ行うことができるので、機械12の自律制御および/または航法装置26の完全性検査に必要なすべてとなり得る。このため、進行方向センサ30Bは、牽引装置18に関連付けられた単一の操向角度センサであって、機械12の前/後方向から離れた牽引装置18の角度を示す第1の信号を生成するように構成された単一の操向角度センサであってよい。操舵角センサは、牽引装置18を前/後方向から離れて旋回させる操舵シリンダに関連付けられもてよく、この構成では、操舵角センサは、シリンダの延出長さを検出するとともに牽引装置18の旋回角度を示す対応信号を生成するように構成されてもよい。別の例では、操舵角センサは、牽引装置18の回転角を直接測定するように牽引装置18の旋回軸に関連付けられてもよい。機械12の進行方向を示す信号を生成するために、任意のタイプの操舵角センサを機械12の公知の運動学と共に利用してもよいということに注意すべきである。
【0023】
いくつかの実施形態では、自律的機械制御および/または航法装置完全性検査のために3次元の進行方向情報が有用となり得る。これらの実施形態では、進行方向センサ30Bは必要に応じピッチ、ロール、および/またはヨーセンサ(図示せず)を追加的に含んでもよいように企図されている。例えば、ピッチセンサからの第2の信号は、時刻T1から時刻T2の期間の機械12の進行方向が仰角パラメータを含むかどうかを判断するために役立ち得る。
【0024】
図2に、航法完全性検査中の制御装置28による実行のための命令としてコンピュータ読み取り可能媒体上に格納することができる例示的な開示方法を示す。
図2は、開示された概念をさらに説明するために以下の章でさらに詳細に検討される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
開示された航法システムは、位置検出を利用する任意の可動機械に適用可能であってもよい。開示された航法システムは、検出された位置の精度を判断しシステム誤動作中に回避的機械操縦を提供するのを支援してもよい。開示されたシステムは、手動制御され、部分的に自律的、または完全に自律的である機械と共に使用されてもよい。航法システム20の動作について次に
図2を参照して説明する。
【0026】
図2からわかるように、航法完全性検査の例示的方法は、時刻T1の機械12の位置測定で開始されてよい(工程100)。航法装置26は、機械12の位置を測定し、この位置を示す信号を制御装置28に導いてもよい。位置は2次元または3次元情報を含んでもよい。制御装置28により時刻T1の機械12の位置が記録された後、制御装置28はセンサ30からの入力と共にこの情報を利用して後時刻T2の機械12の位置を推定してもよい。特に、制御装置28は、センサ30により生成された信号に基づき時刻T1〜時刻T2の期間の機械12の走行速度と進行方向を判断してもよい(工程110)。制御装置28は、ニュートン法則と、機械12が横方向に動かない(すなわち、機械12は横にスライドし得ない)ということと牽引装置18はスリップしないということとの仮定と、を利用することにより、上記期間に収集された走行速度と進行方向情報に基づき上記期間に走行された全距離と走行の方向とを計算してもよい。次に制御装置28は、走行された全距離と走行方向情報とを利用して、時刻T2の機械12の位置を推定してもよい(工程120)。すなわち、制御装置28は、時刻T1の機械12の元位置に、測定された走行方向に機械12が走行した全距離を加え、時刻T2の機械12の最終位置を計算してもよい。同時に、時刻T2の機械12の位置は航法装置26により測定されてもよい(工程130)。
【0027】
制御装置28は、時刻T2の測定位置と推定位置とを比較し2つの位置間の差が閾値量より大きいかどうかを判断することにより航法装置26の完全性を検査してもよい(工程140)。時刻T2の測定位置と推定位置の差が閾値量未満であれば、航法装置26は正しく機能していると結論付けることができ(工程140:はい)、制御は工程100に戻ってもよい。しかしながら、工程140で、測定位置と推定位置の差が閾値量より大きければ(工程140:いいえ)、航法装置26は誤動作している(すなわち、機械12の測定位置は不正確である)と結論付けることができ、是正処置が実施されなければならない(工程150)。上述のように、是正処置は、オペレータに機械12の誤動作の警告を与えること、機械12の操舵に影響を与えること、機械12の推進に影響を与えること、および/または電源16、操舵装置22、制動装置24の選択的制御を介し機械12の制動に影響を与えること、を含んでもよい。一実施形態では、機械12の測定位置と推定位置の差が少なくとも1つの設定期間の閾値より大きい場合、制御装置28は機械12のすべての走行を自律的に停止してもよい。
【0028】
航法システム20は、簡単で、低コストで、頑強であってもよい。特に、航法システム20は単一の航法装置だけ(すなわち航法装置26)を必要とてもよく、既存のセンサ(すなわち走行速度、操舵角センサ30A、30B)を利用して航法装置の完全性を検査してもよい。この配置により、機械の誘導制御に対する複雑でなく低コストな解決策がもたらされ得る。加えて、航法装置の誤動作は、誤差経時ドリフトの比較だけでなく閾値量に対する測定誤差の直接比較により判断されてもよく、両方とも航法システム20の頑強性を改良するのを支援することができる。
【0029】
本開示の航法システムに対し様々な修正と変形をなし得ることは当業者にとって明らかである。本航法システムの他の実施形態は、本明細書の考察と本明細書に開示したシステムの実施から当業者には明白である。本明細書と実施例は単なる例示的なものと考えられ、本開示の真の範囲は以下の特許請求範囲およびそれらの均等物により示されることが意図されている。