特許第6194257号(P6194257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 黒崎播磨株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194257
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】マグネシアカーボンれんが
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/043 20060101AFI20170828BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20170828BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   C04B35/043
   F27D1/00 N
   B22D41/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-14609(P2014-14609)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-196229(P2014-196229A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-44450(P2013-44450)
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 賢典
(72)【発明者】
【氏名】塩濱 満晴
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】吉富 丈記
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/056655(WO,A1)
【文献】 特開2010−105891(JP,A)
【文献】 特開平08−081256(JP,A)
【文献】 特開2010−132516(JP,A)
【文献】 特開昭58−208173(JP,A)
【文献】 特開平01−305849(JP,A)
【文献】 特開2002−249371(JP,A)
【文献】 特開2008−151425(JP,A)
【文献】 特開平07−033513(JP,A)
【文献】 特開平07−017758(JP,A)
【文献】 特開平05−004871(JP,A)
【文献】 特開昭57−118067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/04−35/053
F27D 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を8質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上92質量%以下含有し、更に、粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して1質量%以上15質量%以下、粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の炭化硼素を添加金属Al量に対して1質量%以上50質量%以下含有し、マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が35質量%以上、粒径0.075mm未満のマグネシア原料が15質量%以下配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であるマグネシアカーボンれんが。
【請求項2】
1400℃で3時間の還元雰囲気での熱処理後の見かけ気孔率が7.8%以下である請求項1に記載のマグネシアカーボンれんが。
【請求項3】
粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有する請求項1又は2に記載のマグネシアカーボンれんが。
【請求項4】
結合材として、残炭率が48%以上のフェノール樹脂を使用した請求項1乃至のいずれかに記載のマグネシアカーボンれんが。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の運搬、貯蔵、精製などを行う窯炉全般の内張り材に好適に使用されるマグネシアカーボンれんがに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシアカーボンれんが(以下「MgO−Cれんが」という。)はマグネシアと黒鉛を主骨材として構成される耐食性、耐スポール性に優れたれんがであり、転炉を初めとする窯炉全般の内張り材として汎く用いられている。
【0003】
近年の精錬容器の操業過酷化に伴い、より耐用性に優れるMgO−Cれんがが求められるようになった。その耐用性向上のためには、耐食性と耐スポーリング性に優れるのはもちろんのこと、窯炉の内張り材は一般に長期間使用され、加熱冷却の熱履歴を受けるため、同環境下においてもれんが組織を長期間維持、すなわち緻密性を維持できることが重要である。
【0004】
この点に関し特許文献1には、マグネシア系耐火原料の粒径0.1mm以下の材料の含有率をコントロールすることで、長期間高温下に曝されるような環境下においても組織劣化を抑制でき使用初期の耐食性を維持可能なMgO−Cれんがが開示されている。また、特許文献2には、マグネシア原料の粒度構成において粗粒、中間粒及び微粒の含有率をコントロールすることで、耐スポーリング性と被熱に伴う組織劣化による諸特性の低下を抑制できるMgO−Cれんがが開示されている。
【0005】
一方、MgO−Cれんがには炭素系原料を使用しており、この酸化防止のために酸素との親和性が高い金属Al、金属Siなどの金属を添加することが多く、上述の特許文献1,2の実施例においても酸化防止材として金属が添加されている。
【0006】
ところが、この酸化防止材として添加される金属は、自身の酸化によってれんが中の炭素系原料の酸化を抑制するものの、その反応は一般に膨張を伴う。また、その酸化反応生成物はMgO−Cれんがのれんが組織中に多く存在するマグネシア原料と反応し、生成物をなし、れんが組織を膨張させる。これらのれんが組織における膨張反応はれんが組織の緩みに繋がり、ひいては耐食性の低下へと繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−297246号公報
【特許文献2】特開平1−270564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、酸化防止材として添加される金属の膨張反応によるれんが組織の緩みの発生を抑制でき、実炉使用時における長期間に亘る熱履歴に曝される条件下で使用されても、れんが組織の劣化が小さく緻密性の維持が可能であって、耐用性向上が可能なMgO−Cれんがを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のMgO−Cれんがは、酸化防止材として金属Alを添加することを前提とする。この金属Alは実炉使用時にAlを生成し、更にこのAlはれんが組織中のマグネシア原料とスピネルを生成する。従来はこのスピネル生成による体積膨張により、拘束下で使用されるMgO−Cれんがは緻密化されると考えられてきた。しかし、本発明者らの研究により、れんが組織中で体積膨張が過度に起こると、れんが組織中で緩みが生じ、かつ残存膨張が大きくなるため気孔率が上昇してしまうことがわかった。
【0010】
一方、金属Alは上述とおり炭素系原料の酸化防止機能も有しているため、れんが組織中の金属Alの含有量を減らすことはれんがの耐酸化性の低下をもたらす。そこで本発明者らが耐酸化性担保のために炭化硼素の適用を検討したところ、長期間の熱履歴に対してもれんが組織の劣化を抑制することができるという知見が得られた。そのメカニズムは以下のように考えられる。
【0011】
金属Alの反応生成物の生成温度はAlが約800℃、Alが約900℃である。一方、炭化硼素の酸化開始温度は約500℃であり、また、炭化硼素と金属Alの共存化においてAlBCが400〜500℃で生成を開始する。炭化硼素の酸化により生成したBはAlと反応し、9Al・2B、2Al・B、及びAlとBが混在した液相を生成する。これらのことから、金属Alが添加されたMgO−Cれんがに炭化硼素を含有させることで、マグネシア原料とスピネルを生成する原因となるAlの生成を雰囲気温度が低い段階から抑えることができる。また、Al−B系の低融点化合物が生成するため、れんが組織中のAl量を減少させることができる。これにより、Alとマグネシア原料とのスピネル反応が抑えられ、ひいてはれんが組織の膨張抑制に繋がるものと考えられる。更に、これら9Al・2B、2Al・B及びAlとBが混在する液相は高温下で酸化被膜として作用するため、金属Alの減量によるMgO−Cれんがの耐酸化性の低下を抑制ないし耐酸化性を向上させる。
【0012】
本発明者らは種々検討した結果、長期間に亘る熱履歴を受けても、れんが組織の緩みが少なく緻密性を維持させるためには、れんが組織を構成する金属Alの粒度と含有量、及び炭化硼素の粒度と含有量を調整することが重要であることを見出した。更にこの効果は、マグネシア原料の粒度構成の調整、金属Siの併用並びにその粒度及び含有量の調整、更には残炭率の高い結合材の適用によって、一層の向上が図られることがわかった。
【0013】
すなわち、本発明は以下のMgO−Cれんがを提供する。
(1)マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を8質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上92質量%以下含有し、更に、粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して1質量%以上15質量%以下、粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の炭化硼素を添加金属Al量に対して1質量%以上50質量%以下含有し、マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が35質量%以上、粒径0.075mm未満のマグネシア原料が15質量%以下配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であるMgO−Cれんが。
(2)1400℃で3時間の還元雰囲気での熱処理後の見かけ気孔率が7.8%以下である(1)に記載のMgO−Cれんが。
)粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有する(1)又は(2)に記載のMgO−Cれんが。
)結合材として、残炭率が48%以上のフェノール樹脂を使用した(1)乃至(3)のいずれかに記載のMgO−Cれんが。
【0014】
なお、上記(2)に関し、従来においてもMgO−Cれんがを還元焼成して見かけ気孔率を測定した例は散見されるが、それらは殆どが焼成温度は1200℃以下であり、1400℃という高熱負荷下において7.8%以下の低気孔率を達成した例はない。本発明者らは、高熱負荷後のMgO−Cれんがの見かけ気孔率を7.8%以下へと更に低くさせることによって、従来にない優れた耐食性や耐酸化性を得ることが可能であるという知見を得た。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸化防止材として添加した金属Alの膨張反応によるれんが組織の緩みの発生が抑制され、実炉使用時における長期間に亘る熱履歴に曝される条件下で使用されても、れんが組織の劣化が小さく緻密性の維持が可能となりれんがの耐用性向上、ひいては炉寿命の延長に貢献できる。これにより炉のメンテナンス周期を延ばすことが可能となり、炉材原単位の削減や、炉修スパン延長により生産性の向上に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、マグネシア原料と黒鉛とを含有するMgO−Cれんがにおいて、れんが組織を構成する金属Alの粒度と含有量、及び炭化硼素の粒度と含有量を調整することで、長期間に亘る熱履歴の暴露に対し組織劣化を抑制し、緻密性を維持させることを特徴としている。
【0017】
マグネシア原料としては、電融マグネシア、海水マグネシア、天然マグネシアのうちいずれか一種又は二種以上を使用できる。また、純度に関しては本発明の効果に顕著には影響はしないが、不純物に伴う耐食性の低下や過焼結の影響を回避するためには90%以上の純度のマグネシア原料を用いることが好ましい。
【0018】
マグネシア原料の粒度構成としては、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が35質量%以上、粒径0.075mm未満のマグネシア原料が15質量%以下配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であることが好ましい。
【0019】
すなわち、粒径0.075mm未満の微粒が多すぎるとマグネシア原料同士の接触が増え成形性が低下するので、成形後の充填性を向上させるためにはより少ないほうが好ましい。具体的には、粒径0.075mm未満の微粒の配合量は15質量%以下であることが好ましい。この微粒の配合量が15質量%を超えると成形性が低下するうえ、熱履歴に曝された後に組織劣化が生じやすく、気孔率が増大する傾向となるので好ましくない。
【0020】
また、マグネシア原料は加熱、冷却の過程で膨張、収縮するが、周囲の黒鉛よりも膨張率が大きいため収縮する際にその周囲に空隙が生成する。特に粒径1mm超の粗粒の周囲には比較的大きな空隙が生成し、容易に開放気孔化してしまい見かけ気孔率の上昇が大きい。したがって、粒径0.075mm以上1mm以下の中粒の配合量を増量し、粒径1mm超の粗粒は減量したほうが好ましい。具体的には粒径0.075mm以上1mm以下の中粒の配合量は35質量%以上であることが好ましく、43質量%以上であることがより好ましい。また、粒径0.075mm未満の微粒に対する粒径0.075mm以上1mm以下の中粒の質量比(中粒の質量/微粒の質量)は4.2以上であることが好ましい。
【0021】
黒鉛としては、通常の鱗状黒鉛を使用できるが、これに換えて又はこれと併用して膨張黒鉛、人造黒鉛、キッシュグラファイトなどを使用してもよい。その組成は特に規定されるものではないが、より高い耐食性を得るためにはC純度が高い黒鉛を使用したほうがよく、C純度は好ましくは85%以上、より好ましくは98%以上である。粒度は極端に細粒なものでは緻密性の維持が難しいため、粒径0.04mm以上の、更に好ましくは粒径0.15mm以上の黒鉛をその配合量の40質量%以上使用したほうがよい。
【0022】
黒鉛の含有量は、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で8質量%以上25質量%以下とする。黒鉛の含有量が8質量%未満では、マグネシア原料の比率が増大し、組織安定性が低下する。すなわち、長期間熱履歴暴露後の気孔率増大を招く。黒鉛の含有量が25質量%を超えると、気孔率の上昇と耐食性の低下が懸念される。この黒鉛の含有量の残分として、マグネシア原料の含有量は、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で75質量%以上92質量%以下とする。
【0023】
金属Alの添加量は添加黒鉛量に対して1質量%以上15質量%以下が適当であり、更には10質量%以下であることが好ましい。このように金属Alの添加量を比較的少量に留めることにより、金属Alによる膨張反応を抑制でき、また金属Alが揮発して生じる気孔を少なくでき、結果としてMgO−Cれんがの緻密性を確保することができる。また、その粒径も小さいほうが見かけ気孔率を低減するためには好ましい。これは金属Alが昇温過程で溶融、揮発して生じる気孔径を小さくでき、開放気孔化する確率が小さくなるためである。更にこのことはMgO−Cれんがの組織を早期に形成するためにも有効と考えられる。金属Alを1質量%以上添加する理由は、これ未満の添加量では耐酸化性が不十分であるためである。金属Alによる効果は、粒径75μm以下の含有率が85質量%以上の金属Alを使用することで顕著に発現される。
【0024】
炭化硼素の添加量は添加金属Al量に対して1質量%以上50質量%以下が適当であり、更には25質量%以下であることが好ましい。炭化硼素の添加量が50質量%を超えると、熱履歴暴露の際、酸化によりBが過多に生成し、Alと反応しきれない余分なBがマグネシア原料と反応して低融点物を多量に生成してしまい、ひいては耐食性低下の原因となる。炭化硼素の添加量が1質量%未満では、その効果が得られない。また、炭化硼素による効果は、粒径45μm以下の含有率が85質量%以上の炭化硼素を使用することで顕著に発現される。なお、炭化硼素としては、耐火れんがに一般的に使用されている市販の原料を使用することができる。
【0025】
本発明のMgO−Cれんがにおいては、上述の金属Al及び炭化硼素に加えて金属Siを添加することができる。金属Siはその昇温過程でMgO−Cれんが内でSiC、続いてSiOを生成する。このSiOはMgOと反応し比較的融点の低いEnstatite,Forsteriteを生成するが、この反応過程の液相がMgO−Cれんがの微細気孔を埋め低気孔率化が図られる。更に金属Alとの共存下では、更に低融点であるCordieriteも生成し、より効率よく液相が気孔を埋める効果が発現される。また、金属Siの粒度も小さいほうが低気孔率化には有効であり、これは金属Alの場合と同様に昇温過程で溶融、揮発して生じる気孔径を小さくでき開放気孔化する確率が小さくなるためである。
【0026】
金属Siの添加量は添加黒鉛量に対して5質量%以下と極微量で充分であり、粒径45μm以下の細かい金属Si、具体的には粒度構成として粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを使用することで一層の効果が発現される。これ以上の過多な添加はMgO−Cれんが内での低融物生成量を増大させ、耐食性低下の原因となり耐用性を低下させる。金属Siの添加量の下限は特に限定されないが、金属Siの効果を顕著に発現させるには添加黒鉛量に対して1質量%以上であることが好ましい。
【0027】
結合材としてはフェノール樹脂を使用することが好ましい。フェノール樹脂はノボラック型、レゾール型、及びこの混合型のいずれでもよいが、MgO−Cれんがにおいては経時変化をおこし難いノボラック型がより好ましい。粉末又は適当な溶剤に溶かした液状、更に液状と粉末の併用のいずれも使用でき、通常はヘキサメチレンテトラミンなどの硬化材を適量添加して残炭率を確保する。その残炭率は34%以上であることが好ましく、より好ましくは48%以上であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。通常市販されている耐火物用のフェノール樹脂でこのような高残炭率のものはあまり知られていないが、例えば特開2010−105891号公報に開示されているようにピッチを相溶させたり溶媒種、量を調整したりすることにより50%以上の残炭率を達成することが可能である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本実施例は本発明の一様態を示すものであってこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
試料作製は転炉用製品製造ラインを用いた。表1、2に記載の割合にて原料秤量を行い、混練はハイスピードミキサーを使用し、成形は長さ810mmの側壁用標準形状において真空フリクションにより最高180MPaの成形圧力で成形した。乾燥はバッチ炉において最高280℃で5時間保持した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
これから物性測定用試料を切り出して見かけ気孔率を測定するとともに、耐酸化性及び耐食性を評価した。
【0033】
見かけ気孔率の測定においては形状60×60×60mmの試料を使用した。この見かけ気孔率の測定は1400℃で3時間の還元雰囲気での熱処理後に行った。熱処理温度が1400℃未満では、MgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず、熱負荷も十分でないため緻密性の評価として適当ではない。また1400℃を超える温度では焼結が進行し、緻密性の評価として焼結の効果を分離して評価することが困難になるうえ、熱処理を行う炉への負荷が大きく定常的な測定法として好ましくなくなる。熱処理の時間は3時間未満ではMgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず適当ではない。更にこれよりも長時間の熱処理では焼結が進行してその効果を分離して評価することが困難になる。本実施例では、1400℃で3時間の還元雰囲気での熱処理後の試料を、媒液を白灯油としたアルキメデス法(JIS R 2205)に準じて見かけ気孔率を測定した。
【0034】
耐酸化性の評価は乾燥後試料からφ50×50mmに切り出し、大気雰囲気下で電気炉中1400℃で5時間焼成した。この後試料の高さ方向の中央を切断し、炭素成分が脱炭して変色した部分の厚さを4方向計測してこの値の平均値を脱炭層厚さとした。
【0035】
耐食性は、回転侵食試験にて評価した。回転侵食試験では、水平の回転軸を有するドラムの内面に供試れんがでライニングし、スラグを投入、加熱してれんが表面を侵食させた。加熱源は酸素−プロパンバーナーとし、試験温度は1700℃、スラグ組成はCaO/SiO=3.4、FeO=20質量%、MgO=3質量%とし、スラグの排出、投入を30分毎に10回繰り返した。試験終了後、各れんがの最大溶損部の寸法を測定して侵食量を算出し、表1に記載の「比較例1」の侵食量を100とする耐食性指数で表示した。この耐食性指数は数値が大きいものほど耐食性が優れることを示す。
【0036】
参考例1〜3及び比較例1〜3は黒鉛含有量(マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合をいう。以下同じ。)が13質量%のMgO−Cれんがにおいて、金属Alの添加量を変化させたときの炭化硼素の併用効果を調査した結果である。参考例1では、粒径75μm以下の金属Alを0.13質量%、粒径45μm以下の炭化硼素を0.065質量%添加した場合であるが、見かけ気孔率7.7%が達成され、耐酸化性、耐食性ともに優れる結果となった。これに対し比較例1は炭化硼素が無添加であるため、見かけ気孔率が上昇し、耐酸化性、耐食性も劣る結果となった。
【0037】
また、参考例2、3はそれぞれ、金属Al添加量を1.0質量%、1.9質量%、炭化硼素添加量を0.5質量%、0.95質量%とした場合であるが、参考例1と比較して更に見かけ気孔率が低減し、耐酸化性に優れる結果となった。これに対し比較例2は炭化硼素が無添加であるため、参考例3と比較すると見かけ気孔率が増大する結果となった。比較例3は添加した添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量が過多であるため見かけ気孔率が増大し、耐食性が低下した。
【0038】
参考例4は、添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量を1.0質量%にした場合であり、見かけ気孔率7.6%を達成している。参考例5は、添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量を20質量%にした場合であり、更に見かけ気孔率が低減し、耐酸化性及び耐食性が向上する結果が得られた。
【0039】
比較例4は、添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量は適正であるが、炭化硼素を粒径75μm以下の比較的粗い粒(粒径45μm以下の含有量は15質量%)として添加したため、見かけ気孔率が上昇している。
【0040】
実施例6、7は、粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比を5.38、6.63に調整し評価した結果であるが、更に見かけ気孔率は低減し、耐酸化性及び耐食性は向上した。
【0041】
実施例8、9、10は黒鉛含有量をそれぞれ8、18、25質量%としたMgO−Cれんがである。いずれも、低見かけ気孔率であり、良好な耐酸化性及び耐食性を示した。これに対し比較例5は黒鉛含有量を7質量%としたMgO−Cれんがであるが、見かけ気孔率が増大し、それに伴い耐酸化性が低下した。また、黒鉛含有量が26質量%の比較例6においても見かけ気孔率は増大し、耐食性が低下することが確認された。
【0042】
実施例11は、金属Alを細粒化することで更なる低気孔率化を達成している。これに対し比較例7は0.15mm以下の比較的粗粒の金属Al(粒径75μm以下の含有量は10質量%)を1.0質量%添加した結果、十分な気孔率低減効果が得られず、実施例6や11に比べ耐酸化性及び耐食性に劣る結果となった。
【0043】
実施例12は、粒径75μm以下の金属Siを併用した場合である。金属Siを併用することで、低気孔率化することが確認された。また、実施例13は粒径45μm以下の金属Siを使用したものであり、更なる低気孔率化が達成された。
【0044】
実施例14は粒径45μm以下の細粒化した金属Alと粒径45μm以下の細粒化した金属Siを併用した場合であり、細粒化された金属を併用することで更なる低気孔率化が達成された。
【0045】
実施例15は残炭率が48%のフェノール樹脂を結合材として使用したMgO−Cれんがである。実施例14の残炭率が42%のそれを使用した場合と比較して特性が改善された。
【0046】
実施例16、17は、残炭率が30%のフェノール樹脂を結合材として使用するとともにピッチ系原料の含有量を1又は2質量%とした例であるが、本発明の範囲内であり緻密な組織となっている。