【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本実施例は本発明の一様態を示すものであってこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
試料作製は転炉用製品製造ラインを用いた。表1、2に記載の割合にて原料秤量を行い、混練はハイスピードミキサーを使用し、成形は長さ810mmの側壁用標準形状において真空フリクションにより最高180MPaの成形圧力で成形した。乾燥はバッチ炉において最高280℃で5時間保持した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
これから物性測定用試料を切り出して見かけ気孔率を測定するとともに、耐酸化性及び耐食性を評価した。
【0033】
見かけ気孔率の測定においては形状60×60×60mmの試料を使用した。この見かけ気孔率の測定は1400℃で3時間の還元雰囲気での熱処理後に行った。熱処理温度が1400℃未満では、MgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず、熱負荷も十分でないため緻密性の評価として適当ではない。また1400℃を超える温度では焼結が進行し、緻密性の評価として焼結の効果を分離して評価することが困難になるうえ、熱処理を行う炉への負荷が大きく定常的な測定法として好ましくなくなる。熱処理の時間は3時間未満ではMgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず適当ではない。更にこれよりも長時間の熱処理では焼結が進行してその効果を分離して評価することが困難になる。本実施例では、1400℃で3時間の還元雰囲気での熱処理後の試料を、媒液を白灯油としたアルキメデス法(JIS R 2205)に準じて見かけ気孔率を測定した。
【0034】
耐酸化性の評価は乾燥後試料からφ50×50mmに切り出し、大気雰囲気下で電気炉中1400℃で5時間焼成した。この後試料の高さ方向の中央を切断し、炭素成分が脱炭して変色した部分の厚さを4方向計測してこの値の平均値を脱炭層厚さとした。
【0035】
耐食性は、回転侵食試験にて評価した。回転侵食試験では、水平の回転軸を有するドラムの内面に供試れんがでライニングし、スラグを投入、加熱してれんが表面を侵食させた。加熱源は酸素−プロパンバーナーとし、試験温度は1700℃、スラグ組成はCaO/SiO
2=3.4、FeO=20質量%、MgO=3質量%とし、スラグの排出、投入を30分毎に10回繰り返した。試験終了後、各れんがの最大溶損部の寸法を測定して侵食量を算出し、表1に記載の「比較例1」の侵食量を100とする耐食性指数で表示した。この耐食性指数は数値が大きいものほど耐食性が優れることを示す。
【0036】
参考例1〜3及び比較例1〜3は黒鉛含有量(マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合をいう。以下同じ。)が13質量%のMgO−Cれんがにおいて、金属Alの添加量を変化させたときの炭化硼素の併用効果を調査した結果である。
参考例1では、粒径75μm以下の金属Alを0.13質量%、粒径45μm以下の炭化硼素を0.065質量%添加した場合であるが、見かけ気孔率7.7%が達成され、耐酸化性、耐食性ともに優れる結果となった。これに対し比較例1は炭化硼素が無添加であるため、見かけ気孔率が上昇し、耐酸化性、耐食性も劣る結果となった。
【0037】
また、
参考例2、3はそれぞれ、金属Al添加量を1.0質量%、1.9質量%、炭化硼素添加量を0.5質量%、0.95質量%とした場合であるが、
参考例1と比較して更に見かけ気孔率が低減し、耐酸化性に優れる結果となった。これに対し比較例2は炭化硼素が無添加であるため、
参考例3と比較すると見かけ気孔率が増大する結果となった。比較例3は添加した添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量が過多であるため見かけ気孔率が増大し、耐食性が低下した。
【0038】
参考例4は、添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量を1.0質量%にした場合であり、見かけ気孔率7.6%を達成している。
参考例5は、添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量を20質量%にした場合であり、更に見かけ気孔率が低減し、耐酸化性及び耐食性が向上する結果が得られた。
【0039】
比較例4は、添加金属Al量に対する炭化硼素の添加量は適正であるが、炭化硼素を粒径75μm以下の比較的粗い粒(粒径45μm以下の含有量は15質量%)として添加したため、見かけ気孔率が上昇している。
【0040】
実施例6、7は、粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比を5.38、6.63に調整し評価した結果であるが、更に見かけ気孔率は低減し、耐酸化性及び耐食性は向上した。
【0041】
実施例8、9、10は黒鉛含有量をそれぞれ8、18、25質量%としたMgO−Cれんがである。いずれも、低見かけ気孔率であり、良好な耐酸化性及び耐食性を示した。これに対し比較例5は黒鉛含有量を7質量%としたMgO−Cれんがであるが、見かけ気孔率が増大し、それに伴い耐酸化性が低下した。また、黒鉛含有量が26質量%の比較例6においても見かけ気孔率は増大し、耐食性が低下することが確認された。
【0042】
実施例11は、金属Alを細粒化することで更なる低気孔率化を達成している。これに対し比較例7は0.15mm以下の比較的粗粒の金属Al(粒径75μm以下の含有量は10質量%)を1.0質量%添加した結果、十分な気孔率低減効果が得られず、実施例6や11に比べ耐酸化性及び耐食性に劣る結果となった。
【0043】
実施例12は、粒径75μm以下の金属Siを併用した場合である。金属Siを併用することで、低気孔率化することが確認された。また、実施例13は粒径45μm以下の金属Siを使用したものであり、更なる低気孔率化が達成された。
【0044】
実施例14は粒径45μm以下の細粒化した金属Alと粒径45μm以下の細粒化した金属Siを併用した場合であり、細粒化された金属を併用することで更なる低気孔率化が達成された。
【0045】
実施例15は残炭率が48%のフェノール樹脂を結合材として使用したMgO−Cれんがである。実施例14の残炭率が42%のそれを使用した場合と比較して特性が改善された。
【0046】
実施例16、17は、残炭率が30%のフェノール樹脂を結合材として使用するとともにピッチ系原料の含有量を1又は2質量%とした例であるが、本発明の範囲内であり緻密な組織となっている。