(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プリプレグで多層プリント配線板の絶縁層を形成する場合に、枚葉によらずに、連続的生産を可能とする、多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
多層プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルトアップ方式による製造方法が知られている。また多層プリント配線板の絶縁層を形成する方法として、支持体フィルム上に熱硬化性樹脂層が形成された接着フィルムにより、オートカッターと真空ラミネーターを使用して連続的に絶縁層を形成する方法が知られている。この方法はプリプレグでなく接着フィルムを使用するため、枚葉によらず、連続的に生産が可能である。該方法においては、一般に、まずオートカッターにおいて、ロール状に巻き取られた接着フィルムから、接着フィルムが回路基板上に搬送され、接着フィルムが部分的に熱圧着された後に、回路基板サイズに応じてカットされ、接着フィルムが回路基板に仮付される。その後、真空ラミネーターにより接着フィルムが回路基板にラミネート(積層)され、支持体フィルムが剥離された後、熱硬化により絶縁層が形成される。絶縁層形成後はセミアディティブ法に従って、メッキによる導体層形成が可能である。
【0006】
しかしながら、上述したように、機械特性などで接着フィルムとは大きく異なるプリプレグでは、多層プリント配線板の製造技術も異なり、枚葉による絶縁層形成が一般的である。また、特許文献1でも指摘されているように、プリプレグは、一般に、板鏡に挟んで加温加圧して多層化接着する方法で用いられることが想定されていたため、従来のプリプレグを真空ラミネーターに適用した場合には、内層回路基板上の回路凹凸を埋め込むだけの十分な流動性が得られなかった。一方、回路凹凸を十分に埋め込めるように、プリプレグに含浸される樹脂組成物の流動性を確保した場合、真空ラミネート後の熱硬化工程において、樹脂の流動性が大きくなりすぎるため、樹脂の染み出しが起こり、絶縁層表面にガラスクロス等の繊維基材が露出するなど、絶縁層形成に支障をきたす。従って、ラミネート工程と硬化工程が分離する上記方法にプリプレグを適用することは困難であった。例えば、特開2005−154727号公報(特許文献3)には、真空ラミネーターによる多層プリント配線板の絶縁層形成に適した溶融粘度値を有する熱硬化性樹脂組成物およびそれを含浸するプリプレグが開示されており、該プリプレグも接着フィルムと同様に真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能と記載されているものの、結局、実施例では、枚葉により、離形フィルムを介して真空積層プレスする方法でしか、多層プリント配線板は製造されていない。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、支持体フィルム上にプリプレグを形成した接着シートを回路基板にラミネートした後、支持体フィルムを剥離することなくプリプレグを熱硬化させ、絶縁層を形成した場合には、回路凹凸を埋め込めるだけの流動性のある熱硬化性樹脂組成物をプリプレグ中に使用した場合でも、熱硬化工程でプリプレグから樹脂が染み出すことなく、絶縁層が形成可能であることを見出した。
【0008】
一方、支持体フィルムを剥離することなくプリプレグを熱硬化した場合には、硬化後に支持体フィルムを剥離することが困難となるため、離型層付きの支持体フィルムを使用し、硬化後のプリプレグ(絶縁層)と支持体フィルム間で離型層を介して剥離可能とすることが必要となるが、本発明者らの研究により、離型層を設けた場合に、オートカッターにおいて、接着シートを搬送する過程で、支持体フィルムとプリプレグ間に剥離が起こり、連続生産が困難となる現象が見出された。そこで、本発明者らはさらなる鋭意検討の結果、硬化後においても支持体フィルムが硬化したプリプレグから剥離可能となる離型層付き支持体フィルムにおいて、熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度を一定値以上に設定することで、安定的に連続生産が可能となることを見出した。
【0009】
本発明者らは、以上のような知見をもとに本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
【0010】
[1] (1)支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートがロール状に巻き
取られたロール状接着シートから接着シートを搬送し、プリプレグ面が回路基板の両面又は片面に接するように接着シートを配置する、仮付け準備工程、
(2)接着シートの一部を支持体フィルム側から加熱および加圧することで部分的に接着シートを回路基板に接着した後、接着シートを回路基板のサイズに応じてカッターでカットすることにより、接着シートを回路基板に仮付けする、仮付け工程、
(3)減圧下で、仮付けされた接着シートを加熱および加圧し、回路基板に接着シートをラミネートする、ラミネート工程、
(4)プリプレグを熱硬化し、絶縁層を形成する、熱硬化工程、および
(5)熱硬化工程の後に支持体フィルムを剥離する、剥離工程を含むことを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
[2] 接着シートにおいて、支持体フィルムがプリプレグと接する面側に離型層を有し
、熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上である、上記[1]記載の方法。
[3] 接着シートにおいて、支持体フィルムの厚みが20〜50μmおよびプリプレグ
の厚みが20〜100μmである、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 仮付け準備工程および仮付け工程が、オートカッターにより行われる、上記[1
]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] ラミネート工程が、真空ラミネーターにより行われる、上記[1]〜[4]のい
ずれかに記載の方法。
[6] 接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有し、仮付
け準備工程における接着シートの搬送時に、保護フィルムが巻き取られながら剥離される、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 接着シートにおいて、保護フィルムの厚みが5〜30μmである、上記[6]記
載の方法。
[8] ラミネート工程において、加熱および加圧が弾性材を介して行われる、上記[1
]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] ラミネート工程の後に、常圧下で、金属板により、接着シートを加熱および加圧
する平滑化工程をさらに含む、上記[8]に記載の方法。
[10] 絶縁層に穴あけする穴あけ工程、該絶縁層を粗化処理する粗化工程、粗化され
た絶縁層表面にメッキにより導体層を形成するメッキ工程、及び導体層に回路を形成する回路形成工程をさらに含む、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 絶縁層に穴あけする穴あけ工程が、熱硬化工程と剥離工程の間に行われる、上
記[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 穴あけ工程において、ビアホール形成が、支持体フィルム上から炭酸ガスレー
ザーを照射して行われる、上記[10]または[11]記載の方法。
[13] 炭酸ガスレーザーのエネルギーが1mJ以上である、上記[12]記載の方法
。
[14] 炭酸ガスレーザーのエネルギーが1mJ〜5mJである、上記[12]記載の
方法。
[15] 支持体フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである、上記[1]〜
[14]のいずれかに記載の方法。
[16] プリプレグが、ガラスクロスに熱硬化性樹脂組成物を含浸したプリプレグであ
る、上記[1]〜[15]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、枚葉によらず、プリプレグにより多層プリント配線板の絶縁層を連続的に製造することができる。すなわち、真空ラミネーターで接着シートをラミネートし、熱硬化により絶縁層を形成した場合でも、樹脂の染み出しによるプリプレグ繊維の露出等の不具合もなく、回路凹凸の埋め込み性に優れた絶縁層を形成することができる。また、オートカッター等において、支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートをロール状に巻き取られた状態で使用でき、搬送中に支持体フィルムとプリプレグが剥離することなく、接着シートの回路基板への仮付けを連続的に行うことができる。さらに、セミアディティブ法等によりメッキで導体層を形成する工程と組み合わせることにより、プリプレグを使用した、ビルトアップ形式が可能となり、生産性の高い、プリント配線板の製造方法を提供することができる。
プリプレグにより形成される絶縁層は機械強度に優れるため、本発明は薄型コア基板やコア基板を省略したコアレス基板等の薄型化した多層プリント配線板の製造に特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明におけるプリプレグは、シート状繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱および乾燥させて得ることができる。
【0014】
シート状繊維基材としては、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。特にガラスクロスが好ましい。また、多層プリント配線板の絶縁層形成に用いる場合には、厚さが50μm以下の薄型のものが好適に用いられる。
【0015】
シート状繊維基材の具体的な例としては、ガラスクロス基材として、例えば、旭シュエーベル(株)製のスタイル1027MS(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布質量20g/m
2、厚み19μm)や1037MS(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布質量24g/m
2、厚み28μm)、(株)有沢製作所製の1037NS(経糸密度72本/25mm、緯糸密度69本/25mm、布質量23g/m
2、厚み21μm)、1027NS(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布質量19.5g/m
2、厚み16μm)、1015NS(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布質量17.5g/m
2、厚み15μm)等が挙げられる。
【0016】
液晶ポリマー不織布として(株)クラレ製の芳香族ポリエステル不織布のメルトブロー法によるベクルス(目付け量6〜15g/m
2)やベクトラン等が挙げられる。
【0017】
熱硬化性樹脂組成物は、多層プリント配線板の絶縁層に適するものであれば、特に限定なく使用でき、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の熱硬化性樹脂にその硬化剤を少なくとも配合した組成物が使用される。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する組成物が好ましく、例えば、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂および硬化剤を含有する組成物が好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はいずれか1種を使用するか2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
エポキシ樹脂は、これらの中でも、耐熱性、絶縁信頼性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4032」、「HP4032D])、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂は、硬化後の組成物に適度な可撓性を付与する等の目的で配合されるものであり、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。当該熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5〜60質量%の割合で配合するのが好ましく、より好ましくは3〜50質量%である。
【0021】
フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、東都化成(株)製のFX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製のYX8100、YL6954、YL6974等が挙げられる。
【0022】
ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0023】
ポリイミドの具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0024】
ポリアミドイミドの具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0025】
ポリエーテルスルホンの具体例としては、住友化学(株)製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。
【0026】
ポリスルホンの具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0027】
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの、シアネートエステル樹脂等を挙げることができる。中でも、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル樹脂が好ましい。なお、本発明において、硬化剤は1種であっても2種以上を併用してもよい。
【0028】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、LA7052、LA7054、LA3018、LA1356(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0029】
また、シアネートエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。市販されているシアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)やビスフェノールAジシアネートの一部または全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230」、シアネート当量232)等が挙げられる。
【0030】
熱硬化性樹脂と硬化剤の配合比率は、熱硬化性樹脂、硬化剤の種類等によって適宜選択されるが、例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、フェノール系硬化剤またはナフトール系硬化剤の場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対してこれら硬化剤のフェノール性水酸基当量が0.4〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.5〜1.0の範囲となる比率がより好ましい。シアネートエステル樹脂の場合は、エポキシ当量1に対してシアネート当量が0.3〜3.3の範囲となる比率が好ましく、0.5〜2の範囲となる比率がより好ましい。
【0031】
なお、熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤に加え、硬化促進剤をさらに配合することができる。このような硬化促進剤としては、イミダゾール系化合物、有機ホスフィン系化合物等が挙げられ、具体例としては、例えば、2−メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィンなどを挙げることができる。硬化促進剤を用いる場合、エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いるのが好ましい。なお、エポキシ樹脂硬化剤にシアネートエステル樹脂を使用する場合には、硬化時間を短縮する目的で、従来からエポキシ樹脂組成物とシアネート化合物とを併用した系で硬化触媒として用いられている有機金属化合物を添加してもよい。有機金属化合物としては、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅化合物、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛化合物、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト化合物などが挙げられる。有機金属化合物の添加量は、シアネートエステル樹脂に対し、金属換算で通常10〜500ppm、好ましくは25〜200ppmの範囲である。
【0032】
また、熱硬化性樹脂組成物には、硬化後の組成物の低熱膨張化のために無機充填剤を含有させることができる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特にシリカが好ましい。なお、無機充填剤は絶縁信頼性の観点から、平均粒径が3μm以下であるのが好ましく、平均粒径が1.5μm以下であるのがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物中の無機充填剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした時、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは20〜50質量%である。
【0033】
熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等の難燃剤、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0034】
プリプレグは、公知のホットメルト法、ソルベント法などにより製造することができる。ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、樹脂組成物を樹脂組成物と剥離性の良い離型紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂組成物ワニスにシート状繊維基材を浸漬することにより、樹脂組成物ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。また、支持体フィルム上に積層された熱硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムをシート状繊維基材の両面から加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることで調製することもできる。ワニスを調製する場合の有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。有機溶剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
乾燥条件は特に限定されないが、回路基板にラミネートして用いる場合などはプリプレグの接着能力を保持するため、乾燥時に熱硬化性樹脂組成物の硬化をできる限り進行させないことが重要となる。また、プリプレグ内に有機溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、熱硬化性樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合が通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下となるように乾燥させる。具体的な乾燥条件は、熱硬化性樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶剤量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、通常80〜180℃で3〜13分程度乾燥させることができる。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0036】
本発明における支持体フィルム上にプリプレグが形成された接着シートの調製方法としては、例えば、プリプレグ及び支持体をロール式ラミネート装置に搬送し、金属ロール又は弾性材ロールで、支持体フィルムをプリプレグに連続的に加圧・加熱することによりラミネートする方法が挙げられる。また保護フィルムを有する接着シートを調製する場合は、プリプレグ、支持体および保護フィルムを、プリプレグの片面に支持体フィルム、別の片面に保護フィルムが接するよう、ロール式ラミネート装置に搬送し、支持体フィルムおよび保護フィルム双方の面から、金属ロール又は弾性材ロールで加圧・加熱することによりラミネートする方法が挙げられる。ラミネート後に、得られた接着シートをロール状に巻き取ることで、ロール状の接着シートが調製される。また、これら接着シートの調製は、プリプレグの製造工程の後に連続して行うことにより、効率的に製造することができる。例えば、ロール状に巻き取られたシート状繊維基材をロールにより連続的に搬送し、熱硬化性樹脂組成物のワニスへ含浸および乾燥を行った後、そのまま接着シートの調製工程へと移行することができる。
【0037】
支持体フィルムとしては、プラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、アクリル(PMMA)、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、特に安価なポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。支持体フィルムは、プリプレグ側の面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。プリプレグの熱硬化後に、支持体フィルムを剥離可能とするため、支持体フィルムとしては、支持体フィルムとプリプレグが接する面側に離型層を有する、離型層付き支持体フィルムを使用するのが好ましい。
【0038】
なお、離型層付き支持体フィルムを用いた場合、オートカッターにおいて、接着シートを搬送する過程で、支持体フィルムとプリプレグ間に剥離(浮き)が起こり易くなる。剥離が発生した場合、後のラミネート工程において支持体フィルムにしわが生じ、プリプレグ中にボイドが入るなどの不具合を生じる。このような剥離を抑制するためには、プリプレグの熱硬化後に支持体フィルムが剥離可能である一方、熱硬化前のプリプレグからの支持体フィルムの剥離強度が180度ピール強度で1.5gf/50mm以上であることが重要である。かかる剥離強度(180度ピール強度)は1.6gf/50mm以上であるのがより好ましく、さらには1.7gf/50mm以上であるのがより好ましい。かかる剥離強度の上限は特に設定されず、接着シートにおいて、プリプレグの熱硬化後に支持体フィルムが剥離可能であればよく、一般的には5gf/50mm以下の範囲に収まると考えられる。
【0039】
離型層付き支持体フィルムの離型層に使用する離型剤としては、プリプレグの熱硬化後は支持体フィルムを剥離可能にし、かつ、プリプレグの熱硬化前における支持体フィルムの180度ピール強度が1.5gf/50mm以上となるようにするものであれば特に限定はされないが、好ましいものとしては、例えば、アルキッド樹脂系離型剤等が挙げられる。なお、離型層に汎用されるシリコーン系離型剤は、一般に離型性に優れており、これを主成分とする離型層を使用した場合、プリプレグの熱硬化前における支持体フィルムの剥離強度を180度ピール強度で1.5gf/50mm以上とするのが困難となる。ただし、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体やアルキッド樹脂等を配合することにより、シリコーン系離型剤の離型性をコントロールすることができるため、かかる離型性のコントロールによって、プリプレグの熱硬化前における支持体フィルムの180度ピール強度を1.5gf/50mm以上にし得る離型層に調製してもよい。
なお、離型層付き支持体フィルムにおける離型層の厚みは一般的には0.01〜1μm程度であり、好ましくは0.01〜0.2μmである。
また、本発明において、離型層付き支持体フィルムは、市販品を用いることができ、例えば、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製のSK−1、AL−5、AL−7などが挙げられる。
【0040】
上記剥離強度(すなわち、プリプレグの熱硬化前における支持体フィルムとプリプレグ間の剥離強度)は支持体フィルムの厚みが大きいほど増大する傾向にある。しかしながら、支持体フィルムの厚みが大きすぎると、オートカッターにおいてバキューム吸着によるフィルム搬送が困難となるなど、連続生産が困難となる傾向にある。また、支持体フィルムの厚みが小さすぎると、剥離強度が小さくなりすぎる傾向にあり、また仮付けされた接着シートがロール状に巻かれる(カールする)現象が起こるなど、連続生産が困難となる傾向にある。従って、本発明において、支持体フィルムの厚みは、20〜50μmの範囲が好ましく、20〜45μmの範囲がより好ましく、23〜40μmの範囲がとりわけ好ましい。なお、本発明における支持体フィルムの厚みは、支持体が離型層を有する場合は、該離型層を含む厚みである。
【0041】
プリプレグの熱硬化前における支持体フィルムとプリプレグ間の剥離強度(180度ピール強度)の測定は、以下の方法によって行うことができる。接着シートを50mm幅にカットする。なお、保護フィルムが存在する場合にはそれを剥離する。次に、プリプレグ側を両面テープで補強板に接着させ、支持体フィルムを180度方向に引き剥がした時のピール強度を引っ張り試験機で測定する。引張り試験機としては、例えば、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−Jシリーズ等が挙げられる。引き剥がし速度は、例えば200mm/分が採用される。
【0042】
本発明においてプリプレグの厚みは20〜100μmであるのが好ましい。プリプレグの厚みが20μm未満であると、回路基板に平坦に積層させることが困難となる傾向にあり、100μmを超えると、多層プリント配線板の薄型化に不向きであり、またオートカッターにおけるバキューム吸着によるフィルム搬送も困難となる傾向にある。
【0043】
本発明における接着シートは、保護フィルムを有するのが好ましい。すなわち、接着シートが保護フィルム/プリプレグ/支持体フィルムの層構成を有するのが好ましい。保護フィルムは、オートカッターに支持体フィルム付プリプレグをセットする際にプリプレグ表面を物理的ダメージから守り、またゴミ等の異物付着を防止するなどの利点がある。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、PET、PEN等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド等を挙げることができる。なお、保護フィルムにも支持体フィルムと同様、マッド処理、コロナ処理の他、離型処理が施してあってもよい。保護フィルムの厚みは5〜30μmの範囲であるのが好ましい。5μm未満であると、薄く伸びやすいため、製造時にプリプレグ表面に密着良く貼り合わせることが困難となる傾向にある、30μmを超えると、コスト的に不利となり好ましくない。
【0044】
本発明における仮付け準備工程および仮付け工程について説明する。仮付け準備工程においては、まず回路基板の幅に予めスリットされたロール状接着シートを、オートカッターにセットする。回路両面へラミネートする場合はロール状接着シートを上下2本セットし、片面のみラミネートする場合は1本セットする。接着シートが保護フィルムを有する場合には該保護フィルムを巻き取りロールで巻き取りながらプリプレグ面より剥離する。接着シートの搬送は、支持体フィルム側からバキューム吸着で吸い付けることにより接着シートを固定した後、機械的に行うことができる。接着シートを搬送し、支持体フィルムが外側になるよう、すなわち、プリプレグ面が回路基板の両面又は片面に接するように配置する。仮付け工程においては、例えば、基板の送り方向前方一部、ラミネートを必要とする回路に重なっていない不要部分において、接着シートの一部を支持体フィルム側から加熱および加圧することで、部分的に接着シートを回路基板に接着する。接着条件は、プリプレグに使用された熱硬化性樹脂組成物とその溶融粘度特性にもよるが、通常60〜130℃の温度で、1〜10秒程度で圧着する。その後、接着シートは回路基板とともに搬送され、接着シートを基板サイズに応じてカッターでカットすることにより、接着シートが回路基板に仮付けされる。カットする際、樹脂組成物の切りカス(レジンチップ)が発生するのを低減する目的で、40〜80℃の範囲で加温されたカッターバックアップヒーターが設置されていることが好ましい。
【0045】
本発明における仮付け準備工程および仮付け工程は、市販されているオートカッターによって連続的に行うことができる。市販されているオートカッターとしては、伯東(株)製ドライフィルムラミネーターMachシリーズ、新栄機工(株)オートカッターFAC−500、SAC−500/600などが挙げられる。
【0046】
次にラミネート工程について説明する。回路基板に仮付けされた接着シートを、減圧下で、加熱および加圧し、回路基板に接着シートをラミネートする。ラミネート工程において、加熱および加圧は、加熱されたSUS鏡板等の金属板を支持体フィルム側からプレスすることにより行うことができるが、金属板を直接プレスするのではなく、回路基板の回路凹凸に接着シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスを行うのが好ましい。プレスは、温度が好ましくは70〜140℃、圧力が好ましくは1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)の範囲で行われる。空気圧は好ましくは20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で行われる。ラミネート工程の後に、好ましくは、金属板による熱プレスにより、ラミネートされた接着シートの平滑化を行う。該平滑化工程は、常圧下(大気圧下)で、加熱されたSUS鏡板等の金属板により、接着シートを加熱および加圧することにより行われる。加熱および加圧条件は、上記ラミネート工程と同様の条件を用いることができる。
【0047】
本発明におけるラミネート工程および平滑化工程は、市販されている真空ラミネーターによって連続的に行うことができる。市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製バキュ
ームアップリケーター等が挙げられる。
【0048】
ラミネート工程の後、または平滑化工程の後、熱硬化工程を行う。熱硬化工程においては、プリプレグを熱硬化し、絶縁層を形成する。熱硬化条件は熱硬化性樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一般に硬化温度が170〜190℃程度、硬化時間が15〜60分程度である。
【0049】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、熱硬化されたプリプレグ(絶縁層)から支持体フィルムを剥離する工程をさらに含む。支持体フィルムの剥離は、手動で剥離してもよく、自動剥離装置により機械的に剥離してもよい。
【0050】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、絶縁層に穴あけする穴あけ工程、該絶縁層を粗化処理する粗化工程、粗化された絶縁層表面にメッキにより導体層を形成するメッキ工程、及び導体層に回路を形成する回路形成工程をさらに含んでもよい。これらの工程は、当業者に公知である、多層プリント配線板の製造に用いられている各種方法に従って行うことができる。
【0051】
穴あけ工程は、例えば、絶縁層に、ドリル、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザー、プラズマ等によりビアホール(ブラインドビア)、スルーホール(貫通孔)等のホールを形成することにより行うことができる。ブラインドビアは高密度配線においてはレーザーによる形成が好適である。ただし、UV−YAGレーザーはガラスクロスの加工性は良好であるものの、コストや加工速度の観点から、必ずしも満足のいくものではない。一方、炭酸ガスレーザーは加工速度やコストの面でUV−YAGレーザーより優れるものの、加工性が良好でない。例えば、プリプレグに炭酸ガスレーザーを照射しブラインドビア等を形成した場合には、ガラスクロスと熱硬化性樹脂との加工性の違いから、ガラスクロスがブラインドビア側壁から突出し、壁面の凹凸が大きくなる現象が生じる。このようなブラインドビアの側面の凹凸は導通信頼性を低下させる要因となり、特に孔径が100μm以下となるような高密度のプリント配線板においては、顕著な問題となる。一方、ガラスクロスの加工性を上げるため、炭酸ガスレーザーのエネルギーを上げた場合は、絶縁層表面のダメージが大きくなり、孔の表面の孔径(ビアトップ径)が大きく加工され、また孔周辺の絶縁層表面の凹凸が大きくなり、微細配線化に不都合になる。これに対し、支持体フィルム上にプリプレグを形成した接着シートを回路基板にラミネートした後、支持体フィルムを剥離することなくプリプレグを熱硬化させて絶縁層を形成し、該支持体フィルム上から炭酸ガスレーザーを照射して、ブラインドビア(ビアホール)を形成した場合には、高エネルギーの炭酸ガスレーザーを照射した場合でも、絶縁層表面のダメージが抑制され、ガラスクロスが良好に加工される。従って、ブラインドビア形成は、熱硬化工程と剥離工程の間に行われるのが好ましく、プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成した後、支持体フィルム上から炭酸ガスレーザーを照射してブラインドビアを形成するのが好ましい。また、支持体フィルムとしては上述したように、プラスチックフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。なお、繊維基材が存在しない接着フィルムを用いて絶縁層を形成した場合、より低いエネルギーで加工が可能のため、このような問題は生じていなかった。
【0052】
炭酸ガスレーザーは、一般に9.3〜10.6μmの波長が使用される。炭酸ガスレーザーのエネルギーは1mJ以上が好ましい。エネルギーが低すぎると、繊維基材の加工性の低下により、孔側壁からの繊維基材が突出し、壁面の凹凸が大きくなる傾向が顕著になる。また、ショット数を減らすことによる加工速度向上も困難となる。エネルギーの上限は、高すぎるとブラインドビアの下地導体層がダメージを受けるため自ずと決まってくる。ショット数やプラインドビアの深さ等によるが、一般には5mJ以下、好ましくは4.5mJ以下、さらに好ましくは4mJ以下、とりわけ好ましくは3.5mJ以下である。
【0053】
またショット数は、ブラインドビアの深さ、孔径によっても異なるが、通常1〜10ショットの間で選択される。加工速度を速める上では、ショット数は少ない方が好ましく、高いエネルギー値を採用すれば、ブラインドビアの場合1〜2ショットでの加工も可能であり、多層プリント配線板の生産性を大きく向上させることができる。従って、加工速度の観点から、炭酸ガスレーザーのエネルギーは1.5mJ以上がより好ましく、さらには2mJ以上がより好ましい。複数のショットで加工する場合、連続的なショットであるバーストモードは孔内に加工熱がこもるため、繊維基材と熱硬化性樹脂組成物の加工性に差が生じやすく、孔側壁の凹凸が大きくなる傾向にあるため、時間的間隔を持たせた複数ショットである、サイクルモードが好ましい。
【0054】
炭酸ガスレーザーのパルス幅は特に限定されず、28μsのミドルレンジから4μs程度の短パルスまで広い範囲で選択可能である。
【0055】
なお、炭酸ガスレーザーのエネルギーとは、1ショットあたりの絶縁層表面でのレーザーのエネルギー値であり、炭酸ガスレーザー装置における、発振機の出力、コリメーションレンズ(エネルギー調整用レンズ)、マスク径等によって調整することができる。なお、マスク径は、加工するブラインドビアの径に応じて選択される。エネルギー値は、レーザー加工を行う台座上に、測定器(パワーセンサ)を置いて、加工される回路基板の絶縁層表面高さにおけるエネルギーを実測することにより測定することができる。なお、市販されている炭酸ガスレーザー装置には測定装置が装備されており、照射対象表面におけるエネルギーを容易に測定することができる。市販されている炭酸ガスレーザー装置としては、例えば、三菱電機(株)のML605GTWII、日立ビアメカニクス(株)のLC−Gシリーズ、松下溶接システム(株)の基板穴あけレーザー加工機などが挙げられる。
【0056】
必要により、絶縁層が形成された回路基板に貫通孔(スルーホール)を形成してもよい。貫通孔形成は従来公知の方法を用いることができる。多層プリント配線板においては、貫通孔の形成は一般にコア基板において行われ、ビルドアップされた絶縁層は一般にはブラインドビアにより導通が行われる。また貫通孔形成は、一般に機械ドリルが用いられる。レーザーでコア基板に貫通孔を形成する方法も知られているが、その場合、銅箔がレーザーを反射するため、通常、銅箔表面を化学的に加工した後、レーザーを照射する方法が用いられる。また、レーザーエネルギーの吸収を向上させる成分を含む穴あけ用補助シートを銅箔表面に設置してレーザー照射する方法も知られている。炭酸ガスレーザーで貫通孔を形成する場合、より大きなエネルギーが必要となり、銅箔やコア基板の厚みにもよるが、例えば10〜60mJのエネルギーが採用される。薄型の回路基板においては、例えば本発明におけるブラインドビアの形成のように、絶縁層表面に密着された支持体フィルム上から炭酸ガスレーザーを照射して、貫通孔を形成させる等、ビルトアップされた絶縁層上からレーザーにより貫通孔を形成することも考えられる。
【0057】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、熱硬化されたプリプレグ(絶縁層)から支持体フィルムを剥離する剥離工程をさらに含む。支持体フィルムの剥離は、手動で剥離してもよく、自動剥離装置により機械的に剥離してもよい。支持体フィルムの剥離は、ブラインドビア形成後に行うのが好ましい。また貫通孔を形成する場合は、ブラインドビア形成後、またはブラインドビアと貫通孔形成後に行うのが好ましい。
【0058】
粗化工程は、例えば、絶縁層表面をアルカリ性過マンガン酸水溶液等の酸化剤で処理することにより行うことができる。該粗化工程は、ビアホール、スルーホール等のホールのデスミア工程を兼ねる場合がある。アルカリ性過マンガン酸水溶液に先立って膨潤液による膨潤処理を行うのが好ましい。膨潤液には、例えば、アトテックジャパン株式会社製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。膨潤処理は、通常60〜80℃程度に加熱した膨潤液に絶縁層を5〜10分程度付すことで行われる。アルカリ性過マンガン酸水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。アルカリ性過マンガン酸水溶液による粗化処理は、通常60〜80℃、10〜30分程度付すことで行われる。アルカリ性過マンガン酸水溶液は、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のコンセントレイト・コンパクトCP、ドージングソ
リューション セキュリガンスP等が挙げられる。また、酸化剤(アルカリ性過マンガン酸水溶液)の処理後に、還元剤による中和処理を行うのが好ましく、かかる還元剤(中和液)としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントPが挙げられる。中和処理は、通常25〜60℃程度に加熱した中和液に2〜7分程度付すことで行われる。
【0059】
メッキ工程は、例えば、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された絶縁層表面に無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成することにより行われる。導体層としては銅メッキ層が好ましい。銅メッキ層は、無電解銅メッキと電解銅メッキを組み合わせた方法か、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解銅メッキのみで導体層を形成する。無電解メッキ層の厚みは、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.3〜2μmである。一方、電解メッキ層の厚みは、無電解メッキ層の厚みとの合計厚みが好ましくは3〜35μm、より好ましくは5〜20μmとなる厚みである。なお、導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上させ、安定化させることができる。
【0060】
回路形成工程は、例えば、サブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。ファインライン形成にはセミアディティブ法が好ましく、無電解メッキ層上にパターンレジストを施し、所望の厚みの電解メッキ層(パターンメッキ層)を形成後、パターンレジストを剥離し、無電解メッキ層をフラッシュエッチで除去することにより、回路形成することができる。
【0061】
本発明の多層プリント配線板の製造に用いる回路基板とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)形成されたものをいう。また多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および/または導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう回路基板に含まれる。なお導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0062】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、以下の記載において「部」は「質量部」を意味する。
【実施例1】
【0063】
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)28部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)28部とをメチルエチルケトン15部、シクロヘキサノン15部の混合液に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、ナフトール系硬化剤(東都化成(株)製「SN-485」、フェノール性水酸基当
量215)の固形分50%のメチルエチルケトン溶液110部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、「SO−C2」アドマテックス社製)70部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(積水化学工業(株)製「KS-1」の固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物ワニスを調製した。
【0064】
該ワニスを、厚み19μmのガラスクロス(旭シュエーベル(株)製1027MS)に含浸、80〜120℃で6分間乾燥させて、厚み50μmのプリプレグを得た(残留溶剤量はガラスクロスを含まない熱硬化性樹脂組成物中1wt%)。プリプレグの片側から表1記載の厚み25μmの離型層付きPET(リンテック(株)製AL5:アルキッド樹脂系離型剤)と、もう一方の側から厚み16μmのポリプロピレンの保護フィルムを熱ラミネートし、ロール状に巻き取った。その後、幅335mmでスリットし、50m巻きのロール状接着シート2本を得た。その後、新栄機工株式会社製オートカッターFAC−500にセットし、回路形成(回路導体厚18μm)された厚さ0.2mmの銅張積層板への仮付け試験を行った。仮付けの温度は100℃、3秒で行った。
【0065】
仮付けが良好に行われたものについて、(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度120℃、圧力7kgf/cm
2、気圧5mmHg以下の条件で積層板の両面にラミネートし、さらに連続的に温度120℃、圧力5kgf/cm
2、大気圧の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いでPETフィルムの付いた状態で180℃、30分熱硬化させ、基板両面に絶縁層を形成した。その後、PETフィルムの剥離性の良否を手動で剥離して評価した。
【0066】
[支持体フィルムとプリプレグ(熱硬化前)の剥離強度の測定]
支持体フィルムとプリプレグの剥離強度は、接着シートを50mm幅にカットし、保護フィルムを剥離した後、プリプレグ側を両面テープで補強板に接着させ、支持体フィルムを180度方向に引き剥がした時のピール強度を引っ張り試験機で測定した。表中の値は3回測定の平均値である。引張り試験機は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−500を使用し、引き剥がし速度200mm/分で測定した。
【実施例2】
【0067】
表1の記載の厚み38μmの離型層付きPET(リンテック(株)製AL5:アルキッド樹脂系離型剤)で行う以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例1と同様の評価を行った。
【0068】
<比較例1>
表1の記載の厚み16μmの離型層付きPET(リンテック(株)製AL5:アルキッド樹脂系離型剤)で行う以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例1と同様の評価を行った。
【0069】
【表1】
【0070】
表1中の、支持体フィルムとプリプレグの剥離強度(gf/50mm)はプリプレグを熱硬化する前の剥離強度である。
表1中、支持体フィルムとプリプレグ間の剥離(浮き)の評価は、ロール状に巻き取られた接着シートを約1m引き出した際に、該接着シートの長辺の両端1cmの部分で支持フィルムが剥がれているかを目視で観察することにより行った。全ての領域で支持体フィルムとプリプレグ間で剥がれ及び浮きが生じないものを合格(○)、剥がれ又は浮きが生じるものを不可(×)とした。
また、仮付け後のプリプレグのカールの評価は、ロール状に巻き取られた接着シートを引き出して50cmの長さに切断し、支持フィルムを上側にして平坦な机上に置き、一方の先端部の辺を机上に固定し、反対の先端部の辺においてカールにより短縮される長さを測定することにより行った。短縮される長さ(反り量)が5cm以下の場合を合格(○)、5cmを超える場合を不可(×)とした。
また、オートカッターでのフィルム送りの評価は、「SAC-500(新栄機工(株)製オートカッター)」に、該ロール状に巻き取られた接着シートを設置し、該装置内で、ロールから送り出された接着シートがオートカッター部分を経由し、仮付け工程まで搬送される工程で、支持体フィルムとプリプレグ間において、全面で剥離(浮き)が生じるかを目視で観察することにより行った。全面剥離なきもの(浮きのないもの)を合格(○)、剥離あるもの(浮きのあるもの)を不可(×)とした。
また、熱硬化後の支持体フィルムの剥離の評価は、接着シートが仮付けされた基板を、(株)名機製作所製真空ラミネーターを通して、接着シートを基板にラミネートし、更に、その基板を「SPHH−101(ESPEC社製ギアオーブン)」で、180℃で30分間加熱することで、接着シートの硬化を行い、硬化後の支持体フィルムの状態を目視で観察することによって行った。硬化後も支持体フィルムがプリプレグ表面に接着しているものを合格(○)、支持体フィルムがプリプレグ表面から剥離するものを不可(×)とした。なお、比較例1の熱硬化後の支持体フィルムの剥離の評価は(−)であるが、これは硬化前の段階で浮きが発生しており、熱硬化後の支持体フィルムの剥離の評価ができなかったことを意味する。
【実施例3】
【0071】
多層プリント配線板の製造
実施例2で得られた支持体フィルム付プリプレグの仮付けされた基板を、(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度120℃、圧力7kgf/cm
2、気圧5mmHg以下の条件で両面にラミネートし、さらに連続的に温度120℃、圧力5kgf/cm
2の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いで離型PETフィルムの付いた状態で180℃、30分間加熱し、プリプレグを熱硬化させ、基板両面に絶縁層を形成した。その後、離型PETフィルムを剥離し、レーザーにより穴開けを行いビアホールを形成させた。デスミアプロセスを兼ねた絶縁層の表面処理プロセスは、アトテックジャパン社製の以下の薬液を使用した。
酸化剤「コンセントレイト・コンパクト CP(Concentrate Compact CP)」(過マンガン酸アルカリ溶液)
還元剤「リダクション・ソルーション・セキュリガンス P−500(Reduction solutionSecuriganthP-500)」
絶縁層を温度80℃で10分間酸化剤溶液により表面処理を行った。次いで、温度40℃で5分間還元剤溶液により中和処理を行った。次に絶縁層表面に無電解銅めっきの触媒付与を行なった後、無電解及び電解めっきを行い、最外層の銅をエッチングにより回路を形成し、4層プリント配線板を得た。その後、さらに180℃で30分アニール処理を行った。得られた導体層の導体めっき厚は約30μmであり、ピール強度は0.8kgf/cmであった。ピール強度測定は日本工業規格(JIS) C6481に準じて評価した。得られた多層プリント配線板は255℃×15分ベークしても反らなかった。
【0072】
<比較例2>
実施例3と同様にラミネートおよび熱プレスを行った後、離型PETフィルムを剥離し、180℃、30分間過熱し、プリプレグを熱硬化させた。熱硬化後の樹脂表面にはガラスクロスの縫い目に沿って凹凸(3μm程度)が発生し、その後の評価に使用できるものではなかった。なお、実施例3の樹脂表面は、支持体フィルム同様の平坦面であり、その凹凸は回路上においても1μm程度と良好であった。表面平坦性は、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKONT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、10倍レンズにより測定範囲を1.2mm角として、絶縁層表面のRt値(Peak-to-valley)で凹凸評価した。
【実施例4】
【0073】
実施例1で得られた樹脂ワニスを、厚み16μmのガラスクロス((株)有沢製作所製1027NS)に含浸し、80〜120℃で6分間乾燥させて得た厚み50μmのプリプレグを得た(残留溶剤量はガラスクロスを含まない熱硬化性樹脂組成物中1wt%)。そして、該プリプレグの片側から38μmの離型PETフィルム(リンテック(株)製AL5:アルキッド樹脂系離型剤)と、反対側から厚み16μmのポリプロピレンの保護フィルムを熱ラミネートし、ロール状に巻き取った。その後、幅335mmでスリットしロール状プラスチックフィルム付プリプレグを得た。その後、プラスチックフィルム付プリプレグを500mmの長さでカットし、回路形成(回路導体厚18μm)された510mm×340mmサイズ、厚さ0.2mmの銅張積層板の両面へ仮付けし、(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度120℃、圧力7kgf/cm
2、気圧5mmHg以下の条件で両面にラミネート、さらに連続的に温度120℃、圧力5kgf/cm
2の条件でSUS鏡板による熱プレスを行った。次いで離型PETフィルムが付いた状態で180℃、30分の条件で熱硬化させ、回路基板両面に絶縁層を形成した。
【0074】
室温まで冷却後、離型PETフィルムを剥離せず、その上から三菱電機(株)製炭酸ガスレーザー(ML605GTWII−P)により、
図1の実施例4の欄に記載の条件にて孔あけを行い複数のブラインドビア(トップ径70μmを想定)を形成した。なお、想定トップ径70μmを比較例と同じとするため、マスク径は後掲比較例における離型PETフィルム無しの孔あけの場合の1.0mmに対して若干大きい1.1mmとした。
【0075】
その後、走査型電子顕微鏡(SEM) ((株)日立ハイテクノロジーズ製、型式「SU−1500」)にてブラインドビアの観察を行い、レーザー加工性の評価を行った。また、絶縁層の粗化処理プロセスを兼ねたデスミアプロセス後にも、走査型電子顕微鏡(SEM)にてブラインドビアの観察を行った。粗化処理プロセスは、アトテック社の粗化液(スエリングディップ・セキユリガンドP(膨潤)、コンセントレート コンパクトP(
酸化)、リダクションショリューシン セキュリガント P(中和))を用いて、膨潤60℃×5分、酸化80℃×20分、中和40℃×5分の工程を通すことで行った。
【実施例5】
【0076】
孔あけを
図1の実施例5の欄に記載の条件で行う以外は、実施例4と同様の操作を行い、実施例4と同様の評価を行った。
【実施例6】
【0077】
孔あけを
図1の実施例6の欄に記載の条件で行う以外は、実施例4と同様の操作を行い、実施例4と同様の評価を行った。
【0078】
<比較例3〜5>
実施例4で作製した両面に絶縁層が形成された回路基板を室温にまで冷却後、離型PETフィルムを剥離した後、三菱電機(株)製炭酸ガスレーザー(ML605GTWII−P)により、
図2(比較例3〜5)記載の条件にて孔あけを行った(マスク径1.0mm
)。それ以外は実施例4と同様の操作を行い、実施例4と同様の評価を行った。
【0079】
結果を
図1及び
図2に示す。SEM写真はガラスクロス密度の高い箇所を代表として掲載した。
【0080】
図1から分かるように、支持体フィルム上から炭酸ガスレーザーにより形成されたブラインドビアは、いずれもビアの真円度に優れ、かつ1mJを超える高エネルギーでも樹脂ダメージが少なく、デスミア後、ビア周辺絶縁層も均一な粗面であった。また、高いエネルギーを使用することで、ショット数を減らしてもビア加工が可能となっており、本発明の方法が、ビア形成の高速化に適した孔形成方法であることが分かる。
一方、支持体フィルムを剥離後、絶縁層に直接炭酸ガスレーザーを照射させてブラインドビアが形成された
図2から、エネルギーが低い比較例3、4では加工性が低下し、ガラスクロスの突き出しが顕著になっていることがわかる。また比較例5ではエネルギーを1mJと比較的高くしているが、ガラスクロス突き出しは比較的抑えられているものの、ビアの真円度が悪く、ビア周辺絶縁層表面の樹脂ダメージも大きいため、デスミア後にビアトップ径の広がりが顕著となっている。
本出願は日本で出願された特願2007−235621及び特願2007−239671を基礎としており、それらの内容は本明細書に全て包含される。