(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生体の可動部分に取り付けた発信コイルと受信コイルのペアの相対距離に基づいて運動データを算出する運動機能測定装置と、前記運動機能測定装置から受信した前記運動データに基づいて前記生体の運動機能を評価する評価装置と、を備え、
前記運動機能測定装置は、
所定周波数の交流電流を発生する交流発生部と、
複数の発信コイルと、
前記交流発生部および前記複数の発信コイルと接続され、前記交流発生部が発生した交流電流を前記複数の発信コイルそれぞれに順番に流すように切り替える第1の切替部と、
前記複数の発信コイルそれぞれに1対1対応で設けられ、ペアの前記発信コイルが発生する磁場を検出する複数の受信コイルと、
前記複数の受信コイルと接続される第2の切替部と、
前記複数の受信コイルに、前記第2の切替部を介して接続される増幅・フィルタ部と、
前記増幅・フィルタ部と接続され、前記交流発生部からの参照信号を用いて検波を行う時間調整・検波部と、
ペアとなっている前記発信コイルと前記受信コイルが順次動作するように、前記第1の切替部による前記複数の発信コイルの切り替え、および、前記第2の切替部による前記複数の受信コイルの切り替え、を行う制御部と、
を備えることを特徴とする運動機能評価システム。
生体の可動部分に取り付けた発信コイルと受信コイルのペアの相対距離に基づいて運動データを算出し、前記算出した運動データを、前記生体の運動機能を評価する評価装置に送信する運動機能測定装置であって、
所定周波数の交流電流を発生する交流発生部と、
複数の発信コイルと、
前記交流発生部および前記複数の発信コイルと接続され、前記交流発生部が発生した交流電流を前記複数の発信コイルそれぞれに順番に流すように切り替える第1の切替部と、
前記複数の発信コイルそれぞれに1対1対応で設けられ、ペアの前記発信コイルが発生する磁場を検出する複数の受信コイルと、
前記複数の受信コイルと接続される第2の切替部と、
前記複数の受信コイルに、前記第2の切替部を介して接続される増幅・フィルタ部と、
前記増幅・フィルタ部と接続され、前記交流発生部からの参照信号を用いて検波を行う時間調整・検波部と、
ペアとなっている前記発信コイルと前記受信コイルが順次動作するように、前記第1の切替部による前記複数の発信コイルの切り替え、および、前記第2の切替部による前記複数の受信コイルの切り替え、を行う制御部と、
を備えることを特徴とする運動機能測定装置。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国では、認知症、パーキンソン病、脳卒中などの脳神経疾患の患者(以下、「脳神経疾患患者」という。)が急増している。例えば、パーキンソン病は、振戦(ふるえ)、筋強剛(筋肉の緊張が高まっている状態のひとつ)、姿勢反射障害(姿勢の立て直し不良)、寡動(動作の鈍化)の4つを主要徴候とする脳神経疾患である。また、認知症に関しては、国内に200万人もの認知症患者がいると言われており、記憶障害、見当識障害、学習障害などが生じ、日常生活に大きな支障を来たす。認知症においても、末期には、小刻み歩行や前傾姿勢などの運動障害が表れ、最終的には寝たきり状態に陥る。
【0003】
人間の運動は、脳からの運動指令が電気信号として神経系を伝わり、それを受けて筋肉が収縮することで実現される。しかし、脳神経疾患患者の場合、脳からの運動指令が電気信号として神経系に正常に伝わらないため、身体の状態や動作に異常が発生する。
脳神経疾患患者の急増は、医療費の増大だけでなく、それらの患者が就労不能であることによる大きな社会的損失も招くことになる。したがって、このような脳神経疾患による社会的問題を解決するには、被験者が脳神経疾患か否か、また、脳神経疾患である場合はその度合いを、ある程度以上の精度で判定することが必要となる。
【0004】
しかし、被験者が脳神経疾患か否かや、その度合いは、血液検査やMRI(Magnetic Resonance Imaging)の画像所見などで判定することが難しい。なぜなら、脳神経疾患患者と健常者との差異が必ずしも明確ではないからである。したがって、被験者が脳神経疾患か否かや、その度合いは、検査者である医師の経験や能力によって主観的に判断されることも少なくない。そういった背景の中で、例えば、パーキンソン病による運動機能低下や調律異常を評価するために、手の指の運動をモニタする指運動テストが行なわれるようになってきた。
【0005】
この指運動をモニタする方法として、例えば、電気スイッチ、金属ループ、キーボード、3次元カメラなどを使用した方法が考案されている。しかし、これらの方法は簡易な方法とは言えず、充分普及していない。
【0006】
そこで、本出願人は、磁気センサを用いて、生体の部位の動き(例えば、片手の二指(親指と人差し指)の連続開閉動作(以下、「指タップ運動」という。))を検出することが可能な生体検査装置を提案している(特許文献1参照)。特許文献1の技術によれば、指タップ運動から得た情報を解析して被験者の二指の動きを認識することで、脳神経疾患患者か健常者かを高精度で判定することができる。
【0007】
一方、車両の幅方向の変位を電子的に検出する方法として、同一周波数の励磁電源を用いて、各受信コイルを切替え接続し、時分割により受信コイルの検出信号を得る手法が開示されている(特許文献2参照)。この特許文献2の技術では、水晶発信子の出力信号を増幅した後、切替スイッチを介して励磁コイルに供給している。この手法を用いると、現在の車両の走行位置などのマーカ情報および車両の幅方向の変位を電子的に検出し得る電子式車両位置検出システムを提供できるとされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る運動機能評価システム1000は、被験者の手指運動を測定する運動機能測定装置1100と、運動機能測定装置1100によって測定されたデータの記録及び解析を行う評価装置1200と、被験者の情報などを入力する操作入力部1300と、測定結果や解析結果などを表示する表示部1400と、を含んで構成される。
【0017】
ここで、被験者とは、運動機能測定装置1100による測定対象であり、本実施形態においては、認知症の有無または重症度の検査を受ける人である。
また、運動機能測定装置1100は、被験者に手指運動を行わせた際の指の動作を測定するものである。ここで、手指運動とは、磁気センサによって計測された指タップ運動(手の親指と人差し指を可能な限り速く、かつ可能な限り大きく繰り返し開閉させる運動)や、そのほか2つのコイル間距離で計測できる生体の運動を全て含む。以下、手指運動として、指タップ運動を例にとって説明する。
【0018】
[運動機能測定装置の概要]
運動機能測定装置1100は、生体の可動部分に取り付けた発信コイルと受信コイルのペアの相対距離に基づいて運動データを算出するものであって、例えば、被験者の手指運動の情報(以下、単に「運動情報」ともいう。)を時系列に検出するものであり、少なくとも、距離、速度、加速度、躍度(加速度を時間微分したもの)のいずれか1つに関する被験者の運動情報を、時系列データ(波形データ)として取得するものである。
【0019】
運動機能測定装置1100は、センサ部1500およびセンサ部1510と、切替部(1)1110(第1の切替部)および切替部(2)1111(第2の切替部)と、交流発生部1120と、増幅・フィルタ部1130と、アナログデジタル変換部1150と、時間調整・検波部1160と、ダウンサンプリング部1170とを備えて構成される。
【0020】
≪センサ部(運動センサ)≫
図2(a)に示すように、センサ部1500は、磁場を発信する発信コイル1501と、この磁場を受信(検出)する受信コイル1511によって構成される。なお、
図2(a)は、センサ部1500を左手に装着した図であり、
図2(b)は、センサ部1510を右手に装着した図である。以下の説明では、説明の簡略化のため、
図2(a)の左手用のセンサ部1500のみで説明を行うが、
図2(b)の右手用のセンサ部1510においても左手用のセンサ部1500と全く同様の配置、動作などが可能である。
【0021】
図2(a)に示すように、発信コイル1501は親指の爪部に、受信コイル1511は人差し指の爪部に、例えば両面テープなどによって、それぞれ装着される。なお、取り付ける指を逆にして、発信コイル1501を人差し指の爪部に、受信コイル1511を親指の爪部に装着してもよい。
【0022】
また、発信コイル1501と受信コイル1511の被装着部位は、親指と人差し指のそれぞれの爪部として説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、爪部以外の指部分であってもよい。
また、親指と人差し指に限定されることなく、例えば、親指と小指などの別の組み合わせの指に装着してもよい。さらに、被装着部位は被験者の爪部又は指に限定されることなく、例えば、指に近接する手のひらなどの周辺部位も含まれる。したがって、発信コイル1501と受信コイル1511の被装着部位は、指タップ運動を検出できるのであれば、被験者の爪部、指、および指の周辺部位のいずれでもよい。さらに、本実施形態では生体への装着で説明しているが、発信コイルと受信コイルを生体以外に取り付けて、発信コイルと受信コイル間の相対距離の測定、金属の磁化の度合いや磁化された物体の動きの測定を行うことも可能である。
【0023】
[運動機能測定装置の詳細]
図3に示すように、運動機能測定装置1100は、発信コイル(1)1501から発信コイル(N)150NまでN個配置し、それぞれの発信コイルに対応する受信コイル(1)1511から受信コイル(N)151NまでN個配置している。つまり、発信コイル(1)1501のペアは受信コイル(1)1511であり、発信コイル(2)1502のペアは受信コイル(2)1512であり、発信コイル(N)150Nのペアは受信コイル(N)151Nである。通常の指タップ運動は人差し指と親指の運動を計測するため、N=2(つまり、
図3では発信コイル(2)1502と受信コイル(2)1512のペアまで)となるが、指などの複数(N)箇所の動きをモニタする場合では、N個まで発信コイルと受信コイルのペアを増加させることができる。なお、本実施形態での説明において、複数の発信コイルを総称するときなどに符号を省略して単に「発信コイル」と称し、また、複数の受信コイルを総称するときなどに符号を省略して単に「受信コイル」と称する場合がある。
【0024】
本実施形態ではN個までペアが増加した場合で説明を行う。発信コイル(1)1501から発信コイル(N)150Nまでには、1つの交流発生部1120(交流発生回路)が切替部(1)1110(切替スイッチ)を介して接続されている。そして、切替部(1)1110による切り替え動作により、交流発生部1120からの交流電流(例えば20kHzの電流)がそれらの発信コイルに順次流れ、交流電流が流れた発信コイルは交流磁場を発生させる。交流発生部1120は、所定周波数の交流電流を発生するものであり、制御部1140によって、電流を流すタイミングを制御される。具体的には、省電力にするため、制御部1140は、発信コイル(1)1501から発信コイル(N)150NまでのN個の発信コイルに流す間の時間のみ、交流発生部1120が発信動作するように制御する。さらに、交流発生部1120が発生する信号は時間調整・検波部1160の検波動作の参照信号3100として使用される。
【0025】
また、制御部1140は、切替部(1)1110と切替部(2)1111(切替スイッチ)を制御するための同期信号3101を発生する。同期信号3101によって切替部(1)1110と切替部(2)1111は同時に切り替わることができ、発信コイルと受信コイルのペアごとに順次動作する。つまり、制御部1140は、ペアとなっている発信コイルと受信コイルが順次動作するように、切替部(1)1110による複数の発信コイルの切り替え、および、切替部(2)1111による複数の受信コイルの切り替え、を行う。
【0026】
また、受信コイル(1)1511から受信コイル(N)151NまでのN個の受信コイルは、切替部(2)1111を介して増幅・フィルタ部1130(アンプ・フィルタ回路)に接続され、増幅・フィルタ部1130からの出力信号は、アナログデジタル(AD)変換部1150によってデジタル信号に変換され、時間調整・検波部1160にそのデジタル信号が伝達される。なお、アナログデジタル変換部1150によるアナログデータのデジタルデータ化によって、その後の処理(ダウンサンプリングなど)が容易になる。時間調整・検波部1160では、受信コイルで検出された交流磁場波形のうち、切替部(2)1111による切り替え直後の所定周期分の交流磁場波形(ノイズ部分)を削除する処理を行う(
図4で詳細を説明)。
【0027】
また、各受信コイルの交流磁場波形における削除処理の時刻は、制御部1140によって正確に制御される。この削除処理のあと、時間調整・検波部1160は、参照信号3100を用いて全波整流処理およびフィルタ処理(主に、低域通過フィルタ(LPF)による処理)を行う。最後に、時間調整・検波部1160で処理されたデジタル信号は、ダウンサンプリング部1170によって、アナログデジタル変換部1150でのサンプリング周波数(例えば200kHz)の1000分の1程度(所定の割合)のサンプリング周波数(例えば200Hz)の粗いデータへと変換(ダウンサンプリング)される。これにより、データ全体の容量を小さくすることが可能となる。したがって、出力信号3200は、通信容量に制限がある中でも複数の受信コイルのデータとして、高速送信が可能となる。つまり、データ通信部1600は、ダウンサンプリング部1170から受信するデータ量が小さいので、複数の受信コイルに関する運動データを、無線または有線により、評価装置1200に一度に受け渡すことができる。
【0028】
図4の上段は、発信コイル(1)1501から発信コイル(N)150NまでN個の発信コイルでの電流波形を示し、
図4の下段は、受信コイル(1)1511から受信コイル(N)151NまでN個の受信コイルで検出した磁場波形を示している。各発信コイルには時間幅T1(例えば50μs(200kHz))の間、交流電流が流されている(
図4では時間幅T1の間に4周期分の電流波形が示されている)。そして、切替部(1)1110(
図3)により各発信コイルの接続が順次切り替えられ、T1間隔で順番にN番目の発信コイル(N)150Nまで電流が流されている。
【0029】
時間幅T2は、例えば、指タップ運動などが有する最大周波数10Hzを計測するのに十分な100Hz程度のサンプリング時間である10msとする(つまり、時刻1と時刻2の時間幅と時刻2と時刻3の時間幅は10msとなる)。時間幅T3は(時間幅T2−時間幅T1×N)であり、時間幅T3の間は交流発生部1120から発信コイルへの電流を停止する制御を制御部1140(
図3)で行う。これらの時間幅の関係は、T1<<T2、T1×N<<T3である(
図4では、作図の都合上、それらの関係を正確に表記していない)。したがって、時間幅T2の中の大半の時間を占める時間幅T3の間、交流発生部1120から発信コイルへの電流を停止する制御により消費電流を抑えることができ、省電力を実現することができる。
【0030】
一方、受信コイル(1)1511から受信コイル(N)151NまでのN個の受信コイルについて、順次、ペアとなる発信コイルに交流電流が流れるタイミングで切替部(2)1111(
図3)による接続が切り替えられ、増幅・フィルタ部1130(
図3)に信号が入力される。
図4の下段に示すように、各受信信号(磁場波形)は時刻の最初の部分にノイズが混入してしまっている。この受信ノイズは、受信コイルを切り替える切替部(2)1111(
図3)によって接続が切り替えられことにより発生するノイズである。
【0031】
これはすべてのチャンネル(受信コイル)の信号をほぼ同時に検出するために、受信コイルの信号間に時間差をつけずに計測するために生じる問題である。仮に数mから数十mはなれた位置での車の通過などの計測では、このように受信コイルの信号間に時間差を設けることができるため、このような問題は生じない。また、受信コイルとアンプの間にフィルタ回路を入れる方法も手法も考えられるが、例えば20kHzであると1周期が50μsと非常に短いため、フィルタによる遅延時間のほうが長くなり実用的ではない。また、省電力にするためにはなるべく各発信コイルの発信時間を短くして時間幅T3を長くする必要があり、受信コイルおよび発信コイルのT1を短くして、時間差なく各チャンネル(受信コイル、発信コイル)を切り替えていく必要がある。
【0032】
時間調整・検波部1160の時間調整機能によって、受信コイルで検出されたノイズ成分を削除する処理について、
図5を用いて詳細に説明する(
図1なども参照)。交流発生部1120で発生した交流電流が流れる発信コイルによって誘起された磁場は、ペアとなる受信コイルで検出される。このとき、受信コイルは切替部(2)1111(
図3)によって接続が順次切り替えられるため、切替ノイズが発生する。
図5では切替のタイミングの最初の部分にノイズが入っている場合を示しており、
図5の上段に受信波形5100を示し、
図5の下段にノイズ削除処理後の波形5200を示している。
図5の下段のノイズ削除処理後の波形5200は、最初の1周期分を削除し、残りの3周期分の時間幅T4を信号成分として検出した例である。このノイズ削除処理はCPU(Central Processing Unit)を搭載しているマイコン(時間調整・検波部1160)により動作させることが可能である。
【0033】
図6を用いて、ノイズ削除処理後の波形の信号処理の手法を、受信コイル1511を例にして説明する。ノイズ削除処理後の波形5200は、マイコン(時間調整・検波部1160)によって負の信号をすべて正の信号に変換する全波整流が行われ、検波後の波形6100が得られる。この検波後の波形6100の時間積分を行いデータ点数で割り算して、平均後の波形6200を得る。この平均後の波形6200の波形を時刻1、時刻2、時刻3(
図4参照)の時刻での値として、連続的な運動波形が形成される。
【0034】
図3に示す出力信号3200は、例えば、親指と人差し指にそれぞれ装着された発信コイル(1)1501と受信コイル(2)1511の相対距離、発信コイル(2)1502と受信コイル(2)1512の相対距離に対応する電圧値を表す(相対距離と電圧値の変換式については後記)。
【0035】
[評価装置]
評価装置1200(
図1参照)は、運動機能測定装置1100によって測定されたデータの記録や解析を行うものである。ここで、評価装置1200は、データ通信部1600からの出力信号(時系列データ)を入力するデータ入力部1210と、前記入力した出力信号を解析するデータ処理部1220と、運動機能測定装置1100へ測定の開始のための信号を送信する信号制御手段1230と、被験者情報処理手段1240と、データ処理部1220の解析結果を表示部1400に出力できる形式に処理する出力処理手段1250と、データ処理部1220、被験者情報処理手段1240の処理するデータなどを保存する記憶部1260と、データの受け渡しや演算処理などの制御を行う制御部1270と、を含んで構成される。
【0036】
≪データ処理部≫
データ処理部1220(
図1参照)は、データ入力部1210から送給され制御部1270を通して得られた出力信号に基づいて、被験者の指タップ運動の運動波形を算出(生成)し、運動機能(例えばパーキンソン病)や脳機能(例えば認知症)の重症度を表す客観的な指標を算出する。各情報は適宜、記憶部1260に格納される。
ここで、データ処理部1220は、運動波形生成手段1221と、特徴量生成手段1222とを含んで構成される。
【0037】
<運動波形生成手段>
運動波形生成手段1221(
図1参照)は、運動機能測定装置1100から送給された電圧出力の時系列データ(波形データ)を、対応する運動波形に変換し、変換された運動波形を時間微分、時間積分などすることによって、距離波形と、速度波形と、加速度波形とを補完的に生成するものである(詳細は後記)。
【0038】
ここで、電圧出力(電圧値)を運動波形(相対距離波形など)に変換するための変換式は、例えば、長さの異なる複数のブロック(例えば長さが20、30、60mmのブロック)を一体化したキャリブレーションブロックを用いて、その複数の長さ(20、30、60mm)それぞれの部分を二指で持った際に得られる電圧値と距離値のデータセットから、そのデータセットとの誤差を最小にする近似曲線として求められる。
【0039】
図7は、前記波形データを変換式によって変換して得られた距離波形7100(
図7(a))と、距離波形7100を時間微分することで得られた速度波形7200(
図7(b))と、速度波形7200を時間微分することで得られた加速度波形7300(
図7(c))を示す図である。なお、「運動波形」とは、特に限定しない限り、距離波形、速度波形、加速度波形および躍度波形のうち、少なくとも1つを含む。
【0040】
≪信号制御手段≫
信号制御手段1230(
図1参照)は、操作入力部1300から送給される操作信号に応じて、運動機能測定装置1100へ測定の開始のための信号を送信する。運動機能測定装置1100は、測定を行わないときはスタンバイ状態で、信号制御手段1230からの信号によって測定可能な状態になる。
【0041】
≪被験者情報処理手段≫
被験者情報処理手段1240(
図1参照)は、記憶部1260内の、被験者情報、解析結果などの情報を記録する被験者DB(Data Base)を用いて、それらの情報の管理を行うものである。
より詳細には、被験者情報処理手段1240は、1)被験者情報の登録、修正、削除、検索、ソート、2)被験者情報と測定データとの関連付け、3)測定データの解析結果の登録、修正、削除(項目の追加、修正、削除)、4)統計処理を行った場合には、その統計処理結果の登録、修正、削除、の主に4項目の処理を被験者DBとの連携によって行う。
【0042】
また、被験者DBに登録される被験者情報としては、被験者ID(Identifier)、氏名、生年月日、年齢、身長、体重、疾患名、被験者に関するコメントなどが挙げられる。なお、被験者情報処理手段1240によるこれらの情報管理は、従来公知のプログラムとデータ構成によって容易に実現することができる。
【0043】
≪出力処理手段≫
出力処理手段1250(
図1参照)は、表示部1400に、被験者DBに登録された被験者情報、解析結果などの情報を、グラフやテーブルの形式を適宜用いて視覚的に理解しやすい表示形式で表示させるものである。なお、出力処理手段1250は、前記した全ての解析結果に関し、同時に表示させる必要はなく、操作入力部1300を介して操作者が適宜選択する項目に関して表示させる構成とすることもできる。
【0044】
≪制御部≫
制御部1270(
図1参照)は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などによって構成される。
【0045】
なお、データ処理部1220内の運動波形生成手段1221および特徴量生成手段1222、信号制御手段1230、被験者情報処理手段1240、ならびに、出力処理手段1250は、記憶部1260に格納されたプログラム又はデータを制御部1270にロードして、演算処理を実行することによって実現される。
【0046】
[操作入力部]
操作入力部1300(
図1参照)は、運動機能評価システム1000の操作者が、被験者情報を入力するためのものであって、キーボード、マウスなどによって実現することができる。また、被験者情報を入力する場合には、操作者による入力を補助するユーザインタフェースとして、ディスプレイに入力画面を表示させるようにしてもよい。
【0047】
[表示部]
表示部1400(
図1参照)は、データ処理部1220により処理された被験者情報や運動情報を出力するものであって、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、プリンタなどによって実現することができる。
【0048】
(比較例(従来技術))
次に、
図8と
図9、および、それぞれの構成での出力波形例(
図10と
図11)を参照して、比較例(従来技術)の複数計測点での手法を説明する。
【0049】
比較例の両手の指タップ運動の同時計測では、
図8に示すように、交流発生回路(f
1)8301と交流発生回路(f
2)8302は互いに異なる周波数の交流電流を発生されるものであり、それぞれ、発信コイル(1)8101、発信コイル(2)8202と接続されている。受信コイルも同様に受信コイル(1)8201と受信コイル(2)8202とがそれぞれ配置され、それぞれについて、アンプ回路8601、8602と、検波回路8401、8402と、低域通過回路(LPF回路)8501、8502を通して、また、参照信号8701、8702を用いて、出力信号8801,8802をそれぞれ得る構成となっている。
図10は、
図8の構成によって計測された両手の同時計測された指タップ運動波形であり、(a)は利き手の距離波形を示す図であり、(b)は非利き手の距離波形を示す図である。そして、本実施形態における構成を用いた場合も
図10と全く同様の波形を得ることができる。
【0050】
さらに、比較例(従来技術)の2チャンネル同時計測の他の従来例を
図9に示す。距離D
1とD
2が発信コイル9200を基準として計測できる場合、一つの発信コイル9200と一つの交流発生回路9100を配置し、受信コイル(1)9301と受信コイル(2)9302の2つを配置する。受信コイル(1)9301と受信コイル(2)9302について、それぞれアンプ回路9801、9802と、検波回路9401、9402と、低域通過回路(LPF回路)9501、9502を通して、また、参照信号9701、9702を用いて、出力信号9601,9602をそれぞれ得る構成となっている。
【0051】
本構成では、D
1とD
2の部分にバネを配置し、生体への圧力を保つ構成とする。この構成で測定されるものとして頚動脈などの脈波がある。
図11に
図9の構成で計測された脈波の例を示している。
図11(a)に示すように、出力信号(1)11001は、血圧に対応する定常的な値を示している。
図11(b)に示すように、出力信号(2)11002は脈波を表している。そして、出力信号(2)11002の振幅の局所的なピークの出る位置での出力信号(1)11001が平均血圧に対応する値である。さらに、
図11(c)に示すように、出力信号(2)11002を拡大した波形が出力信号(2)拡大波形11003であり、脈波がはっきりと計測(観測)されている。
上記の
図8から
図11に示す比較例(従来技術)では、2つの回路群を配置しているため、生体の複数個所での同時計測は可能であるが、回路規模の小型化・省電力や、通信容量低減などを実現できない。
【0052】
[効果]
このように、本実施形態の運動機能評価システム1000によれば、複数点での生体の動きをほぼ同時刻(複数点で無視できる時間差(最大で
図4のT1×(N−1))で検出できる。また、回路規模が小さく省電力、低コストを実現できる。さらに、発信コイル、受信コイルからなるペアの複数を切り替えて使用するので、2つ以上の受信コイル間での混信を防ぐことができる。また、ダウンサンプリングにより、扱うデータ量が少なくて済むので、通信容量が制限される無線などでもPC(Personal Computer)にデータを容易に送信することができる。