(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁スリーブで被覆された前記熱電対素線は、前記支持体の長手方向に互いに離間した複数個所に前記支持体に拘束された複数の拘束部を有し、前記支持体の長手方向に隣り合う前記拘束部の間に前記遊び部が形成された請求項1に記載の温度検出装置。
前記保護管の下端部が固定された筒状の保持部と、当該保持部の下端から横方向に延びたガイド部と、を有する保護管ホルダをさらに備え、前記絶縁スリーブで覆われた前記熱電対素線が前記ガイド部から前記保護管ホルダの外に引き出された請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の温度検出装置。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置のような熱処理装置は、処理容器内の雰囲気温度を測定する温度検出装置を備えている。従来の温度検出装置は、例えば特許文献1に開示されているように、処理容器内で直立した保護管と、保護管の下端部に固定された保護管ホルダと、保護管の内部に挿入された絶縁管と、絶縁管に支持された複数の熱電対と、保護管ホルダの内側で絶縁管の下端部を支持する絶縁管ホルダと、を主要な要素として備えている。
【0003】
熱電対は、一対の熱電対素線と、熱電対素線の先端部を互いに接合することで構成された球状の接合部と、を有している。熱電対素線は、絶縁管に設けられた一対の貫通孔に挿入されている。熱電対素線は、貫通孔を通じて保護管ホルダに導かれるとともに、保護管ホルダの内部で略水平方向に向きを変えた後、保護管ホルダから側方に引き出されている。熱電対の接合部は、絶縁管に支持されている。
【0004】
従来の温度検出装置によると、熱電対素線は、絶縁管および絶縁管ホルダに拘束されることなく保護管ホルダの内部に導かれている。さらに、保護管ホルダの内部には、熱電対素線が自由に撓むことができるバッファエリアが確保されている。
【0005】
熱電対素線が熱膨張および熱収縮を繰り返すと、熱電対素線は、保護管ホルダの内部のバッファエリアで何等拘束されることなく自由に変形する。そのため、絶縁管の貫通孔を貫通する熱電対素線は、自重により真っ直ぐな状態を維持する。
【0006】
この結果、熱電対素線が貫通孔の内側で屈曲することはなく、熱電対素線と絶縁管との干渉に基づく熱電対素線の断線を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の温度検出装置では、保護管の下端部を支持する保護管ホルダの内部に、熱電対素線の自由な変形を許容し得るバッファエリアを確保する必要がある。バッファエリアは、熱電対素線の自由な動きを妨げない程度のボリュームを必要とするので、その分、保護管ホルダが大型化するのを否めない。
【0009】
しかも、バッファエリアで熱電対素線を撓ませるためには、バッファエリアの出口で熱電対素線を保護管ホルダにしっかりと固定しなくてはならない。このため、保護管ホルダの構成が煩雑となるとともに、温度検出装置の組み立て作業に多大な手間を要し、温度検出装置の製造コストの増大を招く一つの要因となる。
【0010】
本発明の目的は、シンプルかつコンパクトな構成で熱電対素線の熱膨張・熱収縮を吸収することができ、製造コストを低減できる温度検出装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る温度検出装置は、(1)温度を検出すべき雰囲気の中で直立した保護管と、(2)一対の熱電対素線と、当該熱電対素線の先端部を互いに接合することで構成された球形の測温部と、を有し、前記保護管内に収容されるとともに、前記保護管の下端から引き出された前記熱電対素線が前記保護管と交差する横方向に導かれた熱電対と、(3)前記熱電対の前記熱電対素線を個々に被覆した柔軟な絶縁スリーブと、(4)前記保護管内に挿入され、前記保護管の長手方向に延びた支持体と、(5)前記熱電対の前記熱電対素線が挿通される一対の挿通孔と、前記熱電対の前記測温部が入り込むスリットと、当該スリットにより隔てられて前記測温部を前記支持体の長手方向に移動可能に挟んだ一対の壁部と、を含み、前記支持体に固定された熱電対ホルダと、を備えている。
【0012】
前記絶縁スリーブで被覆された前記熱電対素線は、前記熱電対ホルダから前記支持体に沿って前記保護管の下方に導かれるとともに、前記保護管の内面に向けて膨らむように撓んだ少なくとも一つの遊び部を有している。
【0013】
本発明の好ましい形態によると、前記絶縁スリーブで被覆された前記熱電対素線は、前記支持体の長手方向に互いに離間した複数個所に前記支持体に拘束された複数の拘束部を有し、前記支持体の長手方向に隣り合う前記拘束部の間に前記遊び部が形成されている。
【0014】
本発明の好ましい形態によると、前記遊び部は、前記支持体を前記保護管の径方向から挟み込むように前記支持体と前記保護管との間に介在されている。
【0015】
本発明の好ましい形態によると、前記保護管の下端部が固定された筒状の保持部と、当該保持部の下端から横方向に延びたガイド部と、を有する保護管ホルダをさらに備えており、前記絶縁スリーブで覆われた前記熱電対素線が前記ガイド部から前記保護管ホルダの外に引き出されている。
【0016】
本発明の好ましい形態によると、前記保護管ホルダから引き出された前記絶縁スリーブを被覆した複数の外皮チューブと、当該外皮チューブを前記保護管ホルダに固定する固定金具と、をさらに備えている。前記固定金具は、前記保護管ホルダに固定された第1の固定板と、当該第1の固定板に取り外し可能に連結され、前記第1の固定板との間で前記外皮チューブを挟み込んで保持する第2の固定板と、を有している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遊び部が保護管の内部で変形することにより、熱電対素線の熱膨張・熱収縮を吸収する。このため、シンプルな構成で熱膨張・熱収縮を要因とする熱電対素線の断線を防止することができ、温度検出装置のコンパクト化および製造コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、例えば半導体製造装置の熱処理用の拡散炉1を概略的に示している。拡散炉1は、半導体ウエハのような被加熱物2が取り出し可能に収容される処理管3と、処理管3を取り囲んだヒータ4と、処理管3とヒータ4との間に介在された均熱管5と、を備えている。均熱管5は、ヒータ4から被加熱物2に向けて輻射される熱を均等化するための要素であって、処理管3およびヒータ4に対し同心状に配置されている。
【0021】
図1に示すように、拡散炉1は、本発明に係る温度検出装置10を備えている。温度検出装置10は、ヒータ4から輻射熱を受ける処理管3の雰囲気温度を測定するための要素であって、処理管3と均熱管5との間の高温雰囲気Hの中に直立した姿勢で設置されている。
【0022】
図2ないし
図4に示すように、温度検出装置10は、保護管11、保護管ホルダ12、支持体13、第1の熱電対14a、第2の熱電対14bおよび固定金具15を主要な要素として備えている。
【0023】
保護管11は、例えば直径が5mm〜8mm程度の真っ直ぐな円筒であり、本実施形態では、炭化ケイ素(SiC)のような耐熱性に優れた材料で構成されている。保護管11は、高温雰囲気Hの高さ方向に沿って一直線状に延びている。保護管11の上端は気密に閉塞されているとともに、保護管11の下端は下向きに開口されている。
【0024】
保護管ホルダ12は、例えばアルミナあるいはステンレスのような耐熱性に優れた材料で構成されている。保護管ホルダ12は、直立した円筒状の保持部17と、保持部17の下端から水平方向に延びた半円筒状のガイド部18と、を備えている。そのため、保護管ホルダ12は、L型に折れ曲がった形状を有している。
【0025】
保護管ホルダ12の保持部17は、上向きに開口されている。保持部17の内側に保護管11の下端部が嵌合されている。保護管11の下端部は、例えば接着等の手段により保持部17に固定されている。
【0026】
支持体13は、例えば耐熱性および電気絶縁性に優れたアルミナで構成されている。支持体13は、保護管11の長手方向に沿って真っ直ぐに延びた棒状の要素であって、保護管11の長手方向と直交する方向の断面形状が楕円形又は長円形に形成されている。支持体13は、保護管11の下端開口から保護管11の内部に挿入されている。支持体13の下端部は、保護管11の下端の開口を貫通して保護管ホルダ12の保持部17の内側に突出されている。
【0027】
さらに、支持体13は、第1の面13aと、第1の面13aの裏側に位置された第2の面13bと、を有している。第1の面13aおよび第2の面13bは、支持体13の全長に亘って延びている。
【0028】
図2ないし
図5に示すように、支持体13の第1の面13aと保護管11の内面との間には、配線用のスペースS1が確保されている。同様に、支持体13の第2の面13bと保護管11の内面との間には、配線用のスペースS2が確保されている。
【0029】
第1の熱電対14aは、前記高温雰囲気Hの上部の温度を検出するための要素であって、支持体13の上端部に第1の熱電対ホルダ20を介して保持されている。第2の熱電対14bは、前記高温雰囲気Hの高さ方向に沿う中間部の温度を検出するための要素であって、支持体13の長手方向に沿う中間部に第2の熱電対ホルダ21を介して保持されている。
【0030】
第1の熱電対14aは、正極側の熱電対素線22aと、負極側の熱電対素線22bと、熱電対素線22a,22bの先端部を互いに接合することで構成された球形の測温部22cと、を備えている。
【0031】
第1の熱電対ホルダ20は、例えばアルミナで構成されている。
図6に最もよく示されるように、第1の熱電対ホルダ20は、ホルダ本体24を備えている。ホルダ本体24は、断面形状が楕円又は長円形の偏平な板状であり、支持体13の第1の面13aの上端部に接着剤を介して固定されている。
【0032】
ホルダ本体24は、一対の挿通孔25a,25bを有している。挿通孔25a,25bは、第1の熱電対14aの熱電対素線22a,22bが個別に挿通される要素である。挿通孔25a,25bは、ホルダ本体24を支持体13の長手方向に沿って貫通するとともに、互いに間隔を存して平行に配置されている。
【0033】
ホルダ本体24の上端部にスリット26が形成されている。スリット26は、挿通孔25a,25bの間でホルダ本体24の上端面から下方に向けて切り込まれている。本実施形態によると、スリット26に対応した位置では、挿通孔25a,25bの径方向に沿う半分がスリット26によりカットされている。
【0034】
スリット26の深さDは、例えば熱電対素線22a,22bの熱膨張率、ホルダ本体24の熱膨張率および熱電対素線22a,22bが受ける熱等を考慮して決定することが望ましい。
【0035】
ホルダ本体24の上端部には、スリット26によって隔てられた一対の壁部27,28が形成されている。壁部27,28は、スリット26を間に挟んで向かい合う側面27a,28aを有し、当該側面27a,28aに挿通孔25a,25bが連続して開口されている。
【0036】
第1の熱電対14aの熱電対素線22a,22bは、ホルダ本体24の上方から挿通孔25a,25bに挿入されている。熱電対素線22a,22bの大部分は、挿通孔25a,25bを貫通してホルダ本体24の下方に導かれている。
【0037】
第1の熱電対14aの測温部22cは、スリット26に入り込むとともに、壁部27,28とスリット26の底とで囲まれた領域の底部に収められている。測温部22cは、壁部27,28の間で支持体13の長手方向に沿って移動可能に挟まれている。
【0038】
一方、第2の熱電対14bは、正極側の熱電対素線22dと、負極側の熱電対素線22eと、熱電対素線22d,22eの先端部を互いに接合することで構成された球形の測温部22fと、を備えている。
【0039】
第2の熱電対ホルダ21は、前記第1の熱電対ホルダ20と同一の構成を有している。そのため、第2の熱電対ホルダ21に関しては、第1の熱電対ホルダ20と同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
第2の熱電対ホルダ21のホルダ本体24は、支持体13の第1の面13aの長手方向に沿う中間部に接着剤を介して固定されている。第2の熱電対14bの熱電対素線22d,22eは、ホルダ本体24の上方から挿通孔25a,25bに挿入されている。熱電対素線22d,22eの大部分は、挿通孔25a,25bを貫通してホルダ本体24の下方に導かれている。
【0041】
第2の熱電対14bの測温部22fは、第2の熱電対ホルダ21のスリット26に入り込むとともに、壁部27,28とスリット26の底とで囲まれた領域の底部に収められている。測温部22fは、壁部27,28の間で支持体13の長手方向に沿って移動可能に挟まれている。
【0042】
なお、本実施形態では、二つの測温部22c,22fの周面がホルダ本体24の壁部27,28の側面27a,28aから離れているが、二つの測温部22c,22fの周面が壁部27,28の側面27a,28aに摺動可能に接していてもよい。
【0043】
図2ないし
図5に示すように、第1の熱電対ホルダ20から下方に引き出された第1の熱電対14aの熱電対素線22a,22bは、個々に絶縁スリーブ30a,30bで被覆されている。熱電対素線22a,22bを覆った絶縁スリーブ30a,30bは、支持体13の第1の面13aと保護管11の内面との間のスペースS1を通して配線されている。
【0044】
さらに、熱電対素線22a,22bを覆った絶縁スリーブ30a,30bは、第2の熱電対ホルダ21を避けるように支持体13の第1の面13aから第2の面13bに引き回された後、支持体13の第2の面13bと保護管11の内面との間のスペースS2を通して保護管ホルダ12の保持部17の内側に導かれている。
【0045】
第2の熱電対ホルダ21から下方に引き出された第2の熱電対14bの熱電対素線22d,22eは、個々に絶縁スリーブ30c,30dで被覆されている。熱電対素線22d,22eを覆った絶縁スリーブ30c,30dは、支持体13の第1の面13aと保護管11の内面との間のスペースS1を通して保護管ホルダ12の保持部17の内側に導かれている。
【0046】
そのため、第2の熱電対ホルダ21よりも下方では、支持体13の第1の面13aと保護管11の内面との間に熱電対素線22d,22eを覆った絶縁スリーブ30c,30dが介在され、支持体13の第2の面13bと保護管11の内面との間に熱電対素線22a,22bを覆った絶縁スリーブ30a,30bが介在されている。本実施形態では、絶縁スリーブ30a,30b,30c,30dは、例えばアルミナ又はセラミックファイバー製の織布で構成され、耐熱性および柔軟性を兼ね備えている。
【0047】
図2および
図7に示すように、熱電対素線22a,22bを覆った絶縁スリーブ30a,30bおよび熱電対素線22d,22eを覆った絶縁スリーブ30c,30dは、保護管ホルダ12の内部で略水平方向に向きを変えた後、ガイド部18の開口端から保護管ホルダ12の外に導かれている。
【0048】
熱電対素線22a,22bを覆った絶縁スリーブ30a,30bは、保護管ホルダ12から先の部分が第1の外皮チューブ31aで被覆されている。第1の外皮チューブ31aは、絶縁スリーブ30a,30bを一つに束ねているとともに、ガイド部18の開口端から保護管ホルダ12の外に引き出されている。
【0049】
同様に、熱電対素線22d,22eを覆った絶縁スリーブ30c,30dは、保護管ホルダ12から先の部分が第2の外皮チューブ31bで被覆されている。第2の外皮チューブ31bは、絶縁スリーブ30c,30dを一つに束ねているとともに、ガイド部18の開口端から保護管ホルダ12の外に引き出されている。
【0050】
第1の外皮チューブ31aおよび第2の外皮チューブ31bは、例えばアルミナ又はセラミックファイバー製の織布で構成され、耐熱性および柔軟性を兼ね備えている。
【0051】
図2および
図7に示すように、固定金具15は、第1の固定板33および第2の固定板34を備えている。第1の固定板33は、保護管ホルダ12のガイド部18の下端開口を塞ぐようにガイド部18に固定されている。保護管ホルダ12の内部に導かれた支持体13の下端は、第1の固定板33に突き当てられている。そのため、支持体13は、第1の固定板33により支持されている。
【0052】
第1の固定板33は、ガイド部18の開口端よりもガイド部18の外側に延出された受け部35を有している。受け部35は、複数のねじ挿通孔36を有している。ねじ挿通孔36は、互いに間隔を存して一列に並んでいる。本実施形態によると、絶縁スリーブ30a,30bを束ねた第1の外皮チューブ31aおよび絶縁スリーブ30c,30dを束ねた第2の外皮チューブ31bは、第1の固定板33の上を通して配線されているとともに、第1の固定板33の受け部35の上を横切っている。
【0053】
第2の固定板34は、受け部35の上に配置されている。第2の固定板34は、ねじ挿通孔36と合致する複数の通孔37を有している。複数のねじ38が第2の固定板34の上から通孔37に挿入されている。ねじ38は、通孔37およびねじ挿通孔36を貫通して受け部35の下方に突出されているとともに、ねじ38の突出端にナット39がねじ込まれている。
【0054】
第1の外皮チューブ31aおよび第2の外皮チューブ31bは、第1の固定板33の受け部35と第2の固定板34との間を通過している。そのため、ナット39を締め付けると、第1の外皮チューブ31aおよび第2の外皮チューブ31bが受け部35と第2の固定板34との間で挟み込まれる。
【0055】
この結果、熱電対素線22a,22b,22d,22eを覆った絶縁スリーブ30a,30b,30c,30dが第1の外皮チューブ31aおよび第2の外皮チューブ31bと共に保護管ホルダ12に一体的に固定されている。
【0056】
図2および
図3に示すように、絶縁スリーブ30a,30bで覆われた熱電対素線22a,22bは、第1の熱電対ホルダ20と第2の熱電対ホルダ21との間の領域の複数個所が耐熱ワイヤ41を介して支持体13に縛り付けられている。さらに、絶縁スリーブ30a,30bで覆われた熱電対素線22a,22bは、第2の熱電対ホルダ21よりも下方の領域の複数個所が絶縁スリーブ30c,30dで覆われた熱電対素線22d,22eと一緒に耐熱ワイヤ41を介して支持体13に縛り付けられている。
【0057】
耐熱ワイヤ41は、絶縁スリーブ30a,30bで覆われた熱電対素線22a,22bおよび絶縁スリーブ30c,30dで覆われた熱電対素線22d,22eを支持体13に対し移動不能に拘束している。
【0058】
具体的に述べると、絶縁スリーブ30a,30bで覆われた熱電対素線22a,22bおよび絶縁スリーブ30c,30dで覆われた熱電対素線22d,22eは、夫々耐熱ワイヤ41によって動きが拘束された複数の拘束部42を有している。拘束部42は、支持体13の長手方向に間隔を存して並んでいる。
【0059】
図2および
図3に示すように、絶縁スリーブ30a,30bで覆われた熱電対素線22a,22bおよび絶縁スリーブ30c,30dで覆われた熱電対素線22d,22eは、夫々複数の遊び部44を有している。遊び部44は、保護管11の内側で隣り合う拘束部42の間に位置されている。さらに、遊び部
44は、支持体13から保護管11の内面に向けて膨らむように撓んだ形状を有している。
【0060】
言い換えると、遊び部44は、熱電対素線22a,22b,22d,22eが熱膨張・熱収縮した時に、保護管11および支持体13に何等拘束されることなく自由に変形し得るように滑らかな円弧を描いて湾曲されている。したがって、絶縁スリーブ30a,30bで覆われた熱電対素線22a,22bおよび絶縁スリーブ30c,30dで覆われた熱電対素線22d,22eは、保護管11の内側で支持体13に沿って蛇行状に配線されている。
【0061】
さらに、
図5に最もよく示されるように、第2の熱電対ホルダ21よりも下方では、前記遊び部44が支持体13の第1の面13aおよび第2の面13bの双方から保護管11の内面に向けて張り出している。
【0062】
すなわち、遊び部44は、支持体13を保護管11の径方向から挟み込むように支持体13と保護管11との間に介在されて、保護管11の径方向に沿う支持体13の動きを規制している。
【0063】
本実施形態の温度検出装置10によると、第1の熱電対14aの熱電対素線22a,22bおよび第2の熱電対14bの熱電対素線22d,22eは、夫々支持体13に拘束されることなく自由に変形し得るように滑らかな円弧を描いて湾曲された複数の遊び部44を有している。
【0064】
このため、熱電対素線22a,22b,22d,22eが熱膨張・熱収縮すると、複数の遊び部44が保護管11の内側で撓むように変形し、熱電対素線22a,22b,22d,22eの熱膨張・熱収縮を吸収する。
【0065】
さらに、第1の熱電対14aの測温部22cおよび第2の熱電対14bの測温部22fは、夫々ホルダ本体24の壁部27,28の間で挟まれている。このため、熱電対素線22a,22b,22d,22eの先端部が熱膨張・熱収縮すると、測温部22c,22fが壁部27,28にガイドされた状態でスリット26の深さDの範囲内で移動し、熱電対素線22a,22b,22d,22eの先端部の熱膨張・熱収縮を吸収する。
【0066】
したがって、本実施形態によれば、熱電対素線22a,22b,22d,22eの熱膨張・熱収縮を保護管11の内部で吸収することができ、熱膨張・熱収縮に基づく熱電対素線22a,22b,22d,22eの断線を防止できる。
【0067】
さらに、熱電対素線22a,22b,22d,22eの熱膨張・熱収縮を吸収するための構成を保護管11の外の保護管ホルダ12の内部に設ける必要はなく、熱電対素線22a,22b,22d,22eの断線を防止するための構造を簡素化することができる。よって、温度検出装置10のコンパクト化が可能となるとともに、製造コストを低減することができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、絶縁スリーブ30a,30b,30c,30dで覆われた熱電対素線22a,22b,22d,22eを蛇行状に撓ませて支持体13に縛り付ければよく、熱電対素線22a,22b,22d,22eの配線作業が煩雑化することもない。そのため、温度検出装置10の生産性が良好となり、この点でも製造コストの低減に寄与する。
【0069】
それとともに、固定金具15にしても、第1の固定板33と第2の固定板34との間で熱電対素線22a,22bを覆った絶縁スリーブ30a,30bおよび熱電対素線20d,20eを覆った絶縁スリーブ30c,30dを挟んで保持するだけのシンプルな構成となっている。そのため、熱電対素線22a,22b,20d,20eを保護管ホルダ12に固定する構造を簡略化することが可能となり、温度検出装置10の製造コストを低減する上で有利となる。
【0070】
加えて、本実施形態によると、複数の遊び部44は、支持体13を保護管11の径方向から挟み込むように支持体13と保護管11との間に介在されて、保護管11の径方向に沿う支持体13の動きを規制している。このため、支持体13は、単にその下端を保護管ホルダ12に固定された第1の固定板33に突き当てるだけでよく、支持体13を起立した姿勢に保持する専用の部品を省略することができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0072】
例えば、保護管の内部に収容される熱電対の数は二つに限らず、三つ又はそれ以上として、これら複数の熱電対を支持体の長手方向に間隔を存して配列してもよい。
【0073】
さらに、支持体の断面形状は、楕円又は長円形に特定される
ものではなく、例えば断面が円形、方形あるいは多角形の棒状の要素で支持体を構成してもよい。
【0074】
加えて、保護管の材質も炭化ケイ素に制約されず、例えば石英管あるいはアルミナ管のような耐熱性に優れた他の材料で保護管を構成してもよい。