(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電界が付加される位置と前記導電ボリュームとの間の距離は、少なくとも前記距離および前記導電ボリューム双方に対して垂直な方向における前記電気インターフェース領域の厚さである、請求項1に記載の装置。
前記電界が付加される位置と前記導電ボリュームとの間の距離は、前記距離および前記導電ボリューム双方に対して垂直な方向における前記電気インターフェース領域の厚さの少なくとも2倍である、請求項2に記載の装置。
前記電界付加アセンブリは、第2の複数の電極をさらに含み、前記第2の複数の電極は、前記導電ボリュームの、前記第1の複数の電極の配置される片側とは反対の側部に沿って配置され、これにより、前記導電ボリュームの対向する側部上の対の電極を形成する、請求項9に記載の装置。
前記装置は、電界測定アセンブリをさらに含み、前記電界測定アセンブリは、前記導電ボリューム内の電界を測定するように適合され、コントローラは、前記測定された電界に基づいて前記付加された別個の電界を変化させるように適合される、請求項1に記載の装置。
前記基板は、少なくとも1つのウェルを備え、前記少なくとも1つのウェルは、前記空洞および前記基板の表面と接続され、使用時において電極を収容する、請求項4に記載の装置。
前記少なくとも1つのウェルは、前記電界付加アセンブリの接続アームを介して前記空洞と流体接続され、前記接続アームは、使用時において導電性流体を含むように構成される、請求項17に記載の装置。
前記導電ボリュームの周囲に適合する方向に沿って設けられた第1の複数のウェルであって、前記第1の複数のウェル中の各ウェルは、前記導電ボリュームから第1の距離において配置され、
前記導電ボリュームの経路に適合する方向に沿って設けられた第2の複数のウェルであって、前記第2の複数のウェル中の各ウェルは、前記導電ボリュームから第2の距離において設けられる、第2の複数のウェルと、
をさらに含み、
これにより、前記第1の複数のウェル中の前記ウェルは、前記導電ボリュームの周囲に対して垂直な方向において前記第2の複数のウェル中の前記ウェルに対してジグザグ型である、請求項17に記載の装置。
前記電気インターフェース領域は、前記イオン伝導材料および非イオン伝導材料を含み、これにより、前記イオン伝導材料は、前記非イオン伝導材料と前記導電ボリュームとの間に配置され、前記別個の電界は、前記電界付加アセンブリから前記非イオン伝導材料へと付加される、請求項1に記載の装置。
前記非イオン伝導材料および前記イオン伝導材料が前記別個の電界の前記平滑化に貢献するように、前記非イオン伝導材料の伝導率および前記イオン伝導材料の伝導率を整合させる、請求項22に記載の装置。
前記導電ボリュームは複数のチャンネルを含み、各チャンネルは、電気インターフェース領域の一部により、隣接チャンネルから横方向に間隔を空けて配置され、前記電界付加アセンブリは、前記別個の電界を前記電気インターフェース領域の一部へ付加するように構成され、これにより、前記別個の電界が前記電気インターフェース領域によって平滑化されて、前記チャンネルそれぞれにおいて実質的に連続する電界が確立される、請求項1乃至27のうちいずれか1項に記載の装置。
前記装置は、対象物を分離する装置であり、前記導電ボリュームは、使用時において分離対象となる対象物を含む分離チャンネルであり、これにより、前記チャンネル中の前記実質的に連続する電界が各対象物に作用する電気力を発生させ、前記装置は、各対象物上の前記電気力に対向する力を発生させるように構成された平衡源を含み、
これにより、前記分離チャンネル中の対象物は、前記電界および前記平衡源の組み合わされた影響下においてバンドに分離するようにされる、請求項1乃至29のうちいずれか1項に記載の装置。
前記平衡源は、前記分離対象となる対象物と共に前記分離チャンネル中に含まれる流体であり、前記装置はコントローラをさらに含み、前記コントローラは、前記付加された別個の電界を変化させて、前記電界プロファイルを前記分離チャンネルに相対して調節するように適合され、これにより、前記分離チャンネル中の対象物は、前記チャンネル中において確立された前記電界に起因する電気力と、前記流体に起因する流体力学力とからの双方の影響下においてバンドに分離する、請求項30に記載の装置。
前記導電ボリュームは、使用時において分離対象となる対象物を含む分離チャンネルであり、これにより、電気力が各対象物上に作用し、前記方法は、各対象物上の前記電気力に対向する平衡力を付加するステップをさらに含み、
これにより、前記分離チャンネル中の対象物は、前記電界および前記平衡力の組み合わされた影響下においてバンドに分離するようにされる、請求項32に記載の方法。
前記電気インターフェース領域を提供するステップは、基板中に空洞を形成するステップと、前記空洞を液体形態の電気インターフェース領域材料で充填するステップと、前記空洞中の前記液体材料から前記電気インターフェース領域を形成するステップとを含む、請求項35に記載の方法。
前記液体形態の材料は液体プレポリマーであり、前記電気インターフェース領域を形成することは、前記液体プレポリマーを重合するステップを含む、請求項36に記載の方法。
前記導電ボリュームの高さは前記空洞の高さよりも大きく、これにより、前記空洞を充填している前記液体形態の電気インターフェース領域材料に作用する毛管力の作用により前記導電ボリュームが形成される、請求項36に記載の方法。
前記導電ボリュームを提供するステップは、前記導電ボリュームの内面を処理するステップを含み、これにより、使用時において、導電ボリュームの内面への被分析物の付着が回避される、請求項35に記載の方法。
前記空洞を充填する前に、前記空洞を処理し、これにより、前記電気インターフェース領域と前記空洞との間で接着が向上されるステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の局面によれば、装置は、
別個の電界プロファイルを有する電界を生成するように適合された電界付加アセンブリと、
導電ボリュームと、
導電ボリュームと電界付加アセンブリとの間に設けられた電気インターフェース領域であって、導電ボリュームから間隔を空けて配置された位置において電界付加アセンブリから別個の電界が電気インターフェース領域へと付加されるように、電気インターフェース領域が配置される、電気インターフェース領域と、
を含み、
電気インターフェース領域は、導電ボリュームに隣接して配置されたイオン伝導材料を少なくとも含み、
これにより、電界付加アセンブリから付加された別個の電界が電気インターフェース領域によって平滑化されて、導電ボリューム内に確立された電界プロファイルが実質的に連続する。
【0012】
本発明の第2の局面によれば、導電ボリュームへ電界を付加する方法が提供される。方法は、
別個の電界プロファイルを有する電界を生成するように適合された電界付加アセンブリを適合されるステップと、
導電ボリュームを提供するステップと、
導電ボリュームと電界付加アセンブリとの間に電気インターフェース領域を設けるステップであって、電気インターフェース領域は、導電ボリュームと隣接して配置されたイオン伝導材料を少なくとも含む、ステップと、
導電ボリュームから間隔を空けて配置された位置において別個の電界を電気インターフェース領域へ付加するステップと、
を含み、
これにより、付加された別個の電界を電気インターフェース領域によって平滑化して、導電ボリューム内に確立された電界プロファイルを実質的に連続するにする。
【0013】
本明細書中、「導電ボリューム」という用語は任意の導体を指し、ボリュームを有し、導電ボリュームのうち少なくとも一部の内部において実質的に連続する電界が所望されることが理解される。導電ボリュームの性質は、本発明の用途の種類に応じて異なり得ることが理解される。例えば、導電ボリュームmaybeaチャンネル(例えば、電気泳動または他の分離装置において用いられる分離チャンネル)であってもよいし、あるいは、このようなチャンネルを複数含んでもよい。他の用途において、導電ボリュームは、領域(例えば、疎水性紙基板内に設けられた親水性領域または多孔性疎水性基板内に設けられた多孔性領域)を表し得る。一般的に、導電ボリュームは任意のボリュームであり得、分析時において内部において対象となる流体または対象物を収容し(かつ/または移動させ)、チャンネルまたは他の物理的エンティティによって物理的に制約されるかまたは制約されない。例えば、導電ボリュームが1つ以上のチャンネルを含む場合、各1つのチャンネルを物理的に区切ってもよいし、区切らなくてもよい。導電ボリュームは、例えば、(「架空の」チャンネルまたは「仮想」チャンネルとしてみなすことが可能な)1つ以上の経路を収容することができる。これらのチャンネルは、「フリーフロー」電気泳動装置または「スラブゲル」技術において被分析物によって占有される。以下に記載する実施形態において、導電ボリュームという用語は、対象物の分離に用いられる物理的に規定されたチャンネルの形態のものを指す。しかし、本発明はこれに限定されないことが理解される。よって、本発明を用いれば、電界付加アセンブリ(例えば、電極アレイ)から得られた別個の電界を導電ボリューム中において実質的に連続する電界に変換することにより、印可電界の平滑化が可能になる。「別個の」電界とは、非連続の電界プロファイルを有するものを指す(例えば、大きさが突然増大または低下するもの(例えば、「ステッププロファイル」形状の電界))。例えば、別個の電界が、複数のポイント電源から発生し得る。これら複数のポイント電源はそれぞれ、導電ボリュームの周囲に沿って間隔を空けて配置される(例えば、チャンネルの場合、当該チャンネルの経路に沿って配置される)。「実質的に連続する」電界とは、別個の電界よりも平滑な電界を指す。例えば、上記の例において、記値of平滑化された電界の値は好適には、1つのポイント電源と次のポイント電源との間の間隔において、第1のポイント源において確立した値から第2のポイント源において確立した値へと徐々に変化する。より一般的には、実質的に連続する電界を、付加された別個の値間において平滑に補間することができる。しかし、付加された平滑化レベルによっては、連続電界が完全な直線勾配または曲線から一定範囲まで逸脱する場合があり、(別個の電界の不連続部よりも小さくはあるが)一定の不連続部を含む場合がある。
【0014】
電界整形は、導電ボリュームと電界付加アセンブリとの間に電気的インターフェース領域を設けることにより、達成される。電界付加アセンブリは、適切な電気的特性および幾何学的特性を有する。電界付加アセンブリは、電気インターフェース領域により、導電ボリュームから離隔して配置される。詳細には、電界平滑化は、イオン伝導材料内のイオン電流輸送によって少なくとも部分的に行われる。このイオン伝導材料は、電気インターフェース領域の一部(または全て)を形成し、導電ボリュームに隣接して配置される。この配置構成の場合、電気的インターフェース領域内または電極(または他の電源)において全ての電気分解が行われ、導電ボリューム内においては電気分解が行われない点において有利である。このようにすることで、導電ボリュームそのものの内部環境における混乱が無くなる。電気インターフェース領域は、導電ボリュームの周囲全体に沿って配置する必要は無く、導電ボリュームの一部のみに沿って延びる状態であればよい点に留意されたい。例えば、導電ボリュームがチャンネルである場合、電気インターフェース領域をチャンネルの長さ全体に沿って設ける必要は無く、チャンネルの一部のみに沿って延ばせばよい。
【0015】
導電ボリュームに「隣接する」という表現は、イオン伝導材料が導電ボリュームと直接的に電気接触した状態であり、両者の間に他の何も介在していない状態を指す。電気インターフェース領域は、単一の構成要素(イオン伝導材料)によって構成してもよいし、あるいは、1つよりも多くの構成要素を直列に(かつ相互に電気接触した状態で)電界付加アセンブリと導電ボリュームとの間に配置してもよい。一例において、以下に詳細に説明するように、電気インターフェース領域は、導電ボリュームに隣接するイオン伝導材料と、非イオン伝導材料(例えば、電気抵抗材料)とを含み得る。非イオン伝導材料は、電界付加アセンブリと、イオン伝導材料との間に設けられる。しかし、他の有利な実施形態において、電気インターフェース領域は、イオン伝導材料からなる。換言すれば、電気インターフェース領域の全体は、イオン伝導材料によって形成される。例えば、導電ボリュームと直接接触する上記した(単一の)イオン伝導材料は、導電ボリュームと電界付加アセンブリとの間に連続的に延び得る。あるいは、1つよりも多くのイオン導電性構成要素またはイオン導電性構成要素および非イオン導電性構成要素の混合物を導電ボリュームと電界付加アセンブリとの間に直列展開することで、電気インターフェース領域を形成してもよい。
【0016】
「イオン導電性」という用語は、イオン移動により材料が電気を伝導させることを意味する。材料中の電子または穴の移動はあっても無くてもよい。導電ボリュームを含む電気インターフェース領域の部分に加えて、導電ボリュームもイオン導電性であると好適であり、概して非導電性であるとよい。例えば、導電ボリュームは、以下により詳細に説明するように、イオン導体(例えば、水性緩衝液)が充填されたチャンネルであり得る。電気インターフェース領域を構成する1つ以上の構成要素(特に、イオン伝導材料を構成するもの)の伝導率/抵抗率を、導電ボリュームの伝導率/抵抗率と「整合」させるように構成することが望ましい。「整合」という用語は、電気インターフェース領域の構成要素または各構成要素のイオン伝導率を導電ボリュームのイオン伝導率と(同じまたは類似にすることが好適であるが)同じまたは類似にする必要が無いことを意味する。必要なことは、相対的な伝導率/抵抗率のバランスをとることで、電気インターフェース領域または導電ボリュームのいずれかに電流が偏って伝導する事態を回避することである。電気インターフェース領域の伝導率が高すぎるかまたは低すぎる場合、導電ボリューム中において形成される電界形状が所望の形状でなくなる。なぜならば、流体およびイオン伝導材料の相対的伝導率が著しく異なる場合、オームの法則に従って、印加電圧から発生する電流全てが電気インターフェース領域のみを通過するかまたは導電ボリュームのみを通過するからである。その結果、電界平滑化効果が著しく変化して、電界の平滑化が過度または不十分になる。詳細には、電気インターフェース領域の相対的伝導率が低すぎる場合、導電ボリューム中において得られた電界が減衰し得る(すなわち、電極において印加された電界よりもずっと低くなったようにみえる)。なぜならば、電気インターフェース領域内において、電力が実質的に失われたからである。
【0017】
整合を達成するためには、電気インターフェース領域を形成する構成要素(単数または複数)および導電ボリュームのる構成要素(単数または複数)の抵抗率/伝導率を同一にする必要は無く、実際、このような抵抗率/伝導率の同一化は極めて達成が困難である。しかし、好適な構成において、伝導率/抵抗率は同じ大きさである。特に好適な実施形態において、電気インターフェース領域を構成する構成要素(単数または複数)と、導電ボリュームの構成要素(単数または複数)(またはこの逆)の間の抵抗率/伝導率の比は1:100〜1:1であり、好適には1:50〜1:1であり、より好適には1:10〜1:1である。有利なことに、導電ボリュームと接触するイオン伝導材料は、(例えば電極における電気分解によって発生した)気体に対して不浸透性であり、これにより、導電ボリュームとの反応を回避する。あるいは、気泡を導電ボリュームから離隔方向に誘導するようにジオメトリを配置してもよい。イオン伝導材料は好適には、導電ボリューム中において分離されるべき被分析物が全て電極に到達する事態を回避する。例えば、材料中の全ての孔は好適には小さいため、対象物は孔を通過することができない。そのため、対象物を導電ボリューム内に保持し、サンプル損失を回避することを支援することができる。
【0018】
特定の好適な例において、電気インターフェース領域は、肉薄の「膜」状または「フィルム」状のジオメトリを有し、これにより、その幅(すなわち、電界付加アセンブリと導電ボリュームとの間の距離)は、上記距離および導電ボリューム双方に対して垂直な方向における厚さ(例えば、チャンネルの長軸)よりも少なくとも大きい。より好適には、導電ボリュームと、電界付加アセンブリとの間の距離は、電気インターフェース領域の厚さの少なくとも2倍であり、より好適には電気インターフェース領域の厚さの少なくとも5倍であり、さらに好適には少なくとも5倍、さらに好適には少なくとも10倍、最も好適には少なくとも100倍である。
【0019】
好適な膜状ジオメトリにより、電極間において得られた電圧が有効に平均化される。その結果、導電ボリュームの周囲に沿った各ポイント電圧が平均化され(他の任意の方向における電圧ばらつきが相対的に小さくなり)、これにより、電界付加アセンブリからの別個の印加電界を主に導電ボリュームの周囲に沿って平滑化することが可能になる。材料を肉薄に保持することにより、材料厚さ方向において実質的に一定になるように電圧を配置することが可能になり、これにより、導電ボリュームの横断電界の確立が回避される。しかし、これは、電気インターフェース領域の厚さ方向において変化しない別個の電界を付加するように電界付加アセンブリを配置することによっても達成することが可能である(例えば、材料の厚さ全体において当該材料と接触する電極の使用)。電界平滑化と同時に、電気インターフェース領域は、導電ボリューム中のマイクロ流体環境を電極から離隔して保持することで、分離または操作プロセスの混乱を回避する。
【0020】
好適には、導電ボリュームは、基板内または基板上に配置され、電気的インターフェース領域は、基板内の空洞または基板上の空洞を実質的に充填する。選択された微細加工技術を用いて、基板そのものを簡便に作製することが可能である。
【0021】
好適には、導電ボリュームの深さはおよそ、同一方向におけるインターフェース領域の厚さ以上である。詳細には、導電ボリュームの深さは好適には、材料の厚さの1倍〜5倍、好適には1.5倍〜3倍、さらに好適にはおよそ2倍である。本発明者らによれば、この比率を用いることにより、以下に説明するように流体形態で電気インターフェース領域材料に作用する毛管力により、導電ボリュームをチャンネルの形態で形成することが可能になる。
【0022】
好適な実施形態において、別個の電界を印加する位置と、導電ボリュームとの間の距離は、0.1〜8mmであり、好適には0.5〜2.5mmである。好適には、電気インターフェース領域の厚さは0.1〜100μmであり、好適には20〜40μmである。好適には、導電ボリュームの深さ(高さ)は0.1〜500μmであり、好適には10〜100μmである。
【0023】
特定の状況において、基板中の空洞に少なくとも1つの支柱を設けることにより、支持を提供しかつ基板の上側ピースの崩壊を回避することが望ましい。以下に述べるように、支柱を展開して、インターフェースの電気的特性を変更することも可能である。さらに、支柱を用いることにより、材料(単数または複数)を電気インターフェース領域内に保持することを支援するさらなる表面積も得られる。
【0024】
好適な実施形態において、導電ボリュームはチャンネルであり、任意の所望の経路をたどることができる。例えば、チャンネルは直線状であってもよいし、あるいは閉ループの形態をとってもよい。閉ループ構成を用いた場合、開ループ設計(例えば、直線チャンネル)には無い利点がいくつか得られる。第1の利点として、閉ループチャンネルは周辺効果を回避するため、チャンネルのいずれかの端部においてチャンネルの内部において得られた電界が所望のレベルから逸脱する。例えば、直線チャンネルにおいて、チャンネルの中間の部分には典型的には、チャンネルに沿った部分のいずれかの側部において付加された電源があるため、当該部分において得られた電圧は、これら2つの電圧の平均となる。しかし、チャンネルの端部近隣の部分は、しかし、両側部に設けられた電源を「確認」できず、チャンネルの他端に向かう側部上の電源しか確認できない。すなわち、平均化が非対称に行われるため、チャンネルの端部近隣の部分無いの電界に歪みが発生する。第2に、時間シフト型電界を開ループチャンネルへ付加した場合、発生した領域において、電界はほとんど変動せず、電流方向も実質的に変化が無いままである。その結果、電気インターフェース領域に含まれるイオン伝導材料においてイオン枯渇が局所的に顕著に発生し得る。その結果、チャンネル内において所望の電界形状が失われる。なぜならば、イオン枯渇による影響に起因して、印加電界が弱体化する傾向となる。これとは対照的に、閉ループチャンネル(例えば、円形配置構成)の場合、伝搬する電気「波」(すなわち、整形された不均一の電界プロファイル)を、ループ周囲において移動するように構成することができる。その結果、ループ周囲のイオン伝導材料中のイオンが「スイープ」され、その結果、任意のイオン露出領域が連続補充され、対応して過度に集中した領域からイオンが搬送され、これにより、チャンネル中の電界が平滑化されかつ安定した状態で保持される。第3に、開ループチャンネルを用いる場合、装置の有効動作長さは、チャンネルの物理的長さによって決定される。閉ループシステムにおいては、主要チャンネルにおいて開始部または終端部は無いため、装置は実質的に無限の動作長さを有する。
【0025】
好適には、電界付加アセンブリは、インターフェース領域と電気接触する複数の電極を含む。電界付加アセンブリは、コントローラをさらに含む。コントローラは、所望の電界プロファイルを得るために、各電極へ電圧を付加するように適合される。
【0026】
これらの電極は好適には、導電ボリュームの周囲に一致する方向に沿って、相互に間隔を空けて配置される。例えば、導電ボリュームがチャンネルである場合、チャンネル経路に一致する方向に沿って電極を間隔を空けて配置すると好適である。
【0027】
好適な実施形態において、複数の電極は、導電ボリュームの片側に沿って配置される。有利なことに、電界付加アセンブリは、第2の複数の電極をさらに含み得る。第2の複数の電極は、第1の複数の電極から導電ボリュームの他側部に沿って配置され、これにより、導電ボリュームの両側上に一対の電極が形成され、上記対の各電極へ電圧を付加することができる。いくつかの好適な実施形態において、実質的に同一の電圧が、各対中の両電極へ付加される。しかし、他の場合(例えば、(WO2006/070176に記載のように)導電ボリュームの曲率に起因する速度差の影響を弱めるためまたはボリューム内の電界を横方向に操作するために、上記対中の各電極に異なる電圧が付加され得る。
【0028】
装置は、電界測定アセンブリをさらに含み得る。この電界測定アセンブリは、導電ボリューム内の電界(および/または電気インターフェース材料に沿った電界)を測定するように、適合される。有利なことに、コントローラは、記測定された電界に基づいて付加された別個の電界を変化させるように、適合される。よって、別個の電界を付加する「書き込み」電極と別に、「読み出し」電極を用いて、印加電界の測定および制御を行うことができる。「読み出し」電極は、導電ボリュームと直接接触することもできるし、あるいは、電気インターフェース領域の一部を介して確立された電界を測定することもできる(電気インターフェース領域は、導電ボリュームと電界付加アセンブリとの間に配置された電気インターフェース領域であってもよいし、そうでなくてもよい)。例えば、電界測定アセンブリは好適には、電気インターフェース領域と電気接触する複数の電極を含む。電界測定アセンブリの複数の電極は好適には、電界付加アセンブリから導電ボリュームの反対側に配置される。別の有利な実施形態において、装置は、書き込み電極または読み出し電極(単数または複数)と同じ電極(単数または複数)を用いることができ、必要に応じてこれら2つのモード間で切り替わる。例えば、コントローラは、各電極への電圧供給を一定間隔で短期間停止し、局所的電界を瞬間的に読み出した後、電圧供給を再開するように適合することができる。
【0029】
基板は、空洞(および空洞を充填するインターフェース領域)および基板表面と共に穴(ウェルまたはウェルノードとも呼ぶ)を備え得、これにより、使用中の電極を収容する。これらの穴は、イオン導電性流体(例えば、水性緩衝液、チキソトロピックゲルまたは粘着性ゲル)が充填され援用、イオン導電性流体中に電極が浸漬するように配置される。有利なことに、この構成により、電気分解のガス生成物を逃がすためのポイントが得られる。さらに、イオン導体で充填された穴を基板に設けることにより、電気インターフェース領域に含まれるイオン伝導材料におけるイオン枯渇を軽減するために、充分なイオン貯蔵部サイズを得ることが可能になる。上記したような浸漬電極の代替例として、導電性電極(例えば、金属フィルムで形成されたもの)を基板上に配置することができ、これにより、電界制御システムとの一体化のための1つ以上のコネクタ(単数または複数)が装置上に得られる。これらの電極は、インターフェース材料と接触し、電気分解ガスを逃がすための通気孔を設けることができる。
【0030】
有利なことに、電界付加アセンブリは、接続アームをさらに含む(例えば、各電極を電気インターフェース領域へ電気接続させるように配置された流体アーム)。例えば、上記したウェルを、このような接続アームを介して、電気インターフェース領域で充填された空洞へ接続することができる。電界付加アセンブリにおいて流体アームを用いることにより、設計柔軟性が増加する。例えば、穴は、基板の上側ピース中に穿孔することができ、用途において簡便な任意の構成を持ち得る。流体アームは、電気インターフェース領域へ電圧を付加するための導体として機能する。各アームの寸法(およびよって当該アームの電気抵抗)の設計を注意深く設計することにより、材料へ付加される電圧レベルの制御が可能となる。各接続アームは好適には、電極のうち単一の電極を電気インターフェース領域へと接続させる。導電ボリュームがチャンネルである場合、基板中の穴を、導電ボリュームの周囲に追随する単一の線に沿って規則的に間隔を空けて配置することができる。しかし、これは必須ではなく、各穴を導電ボリュームから異なる距離において配置してもよい。一例において、導電ボリュームの周囲に対して穴を交互に配置することにより、導電ボリュームの周囲に沿って配置することが可能な穴の数を最大化することができる。異なる位置の穴(およびよって利用時において穴に含まれる電極)は、穴と材料との間の電界付加アセンブリの流体アーム設計により、否定され得る。しかし、他の例において、導電ボリューム周囲に沿って電界を生成するために必要な電圧変化の確立において、異なる距離を用いることが可能である。
【0031】
導電ボリュームが開ループの形態をとる場合(例えば、物理的に規定されたかまたは規定されていない別個の「端部」を少なくとも2つ有するチャンネル)、電界付加アセンブリは、電界周辺効果を弱めるように構成され得る。例えば、直線チャンネルの場合、2つのさらなる電極を配置して、チャンネルの各端部にさらなる電圧を提供することができる。好適には、これらの電極はチャンネル上のウェルノード中に挿入される。その場合、ウェルノードは、チャンネルの入口および/または出口として機能することもできる。
【0032】
上記したように、電気インターフェース領域は、1つよりも多くの構成要素を含み得、1つの好適な実施形態において、イオン伝導材料に加えて非イオン伝導材料を含む。これにより、イオン伝導材料を非イオン伝導材料を導電ボリュームとの間に配置し、別個の電界が電界付加アセンブリから非イオン伝導材料へと付加される。例えば、非イオン伝導材料は、イオン伝導材料と電極との間に配置することができる。非イオン伝導材料は、主に電子(および/または穴)の動きによって伝導し、例えば抵抗ポリマーまたは半導体(例えば、シリコン)であり得る。
【0033】
このような実施形態において、好適には、非イオン伝導材料の伝導率/抵抗率およびイオン伝導材料の伝導率/抵抗率を整合させるとよい。導電ボリュームおよび電気インターフェース領域の相対的伝導率/抵抗率に関連して上記したように、本文脈において、「整合」とは、伝導率/抵抗率を等しくしなければならないということを意味しない。しかし、できれば伝導率/抵抗率を少なくとも類似の値にすると好適である。電気インターフェース領域の2つ(またはそれ以上の)構成要素の伝導率/抵抗を「整合させること」により、伝導率/抵抗双方を印加電界パラメータと共に考慮に入れて、これにより、非イオン伝導材料およびイオン伝導材料双方が別個の電界の平滑化に貢献する。一方、2つの材料の相対的伝導率が大幅に異なる場合、オームの法則に従って、印加電圧から発生する電流全ては、イオン伝導材料のみを通じてまたは非イオン伝導材料のみを通じて通過することができる。これにより、電界平滑化効果が大幅に変化し、その結果、電界の平滑化において過不足が発生し、電界遮断効果も発生し得る。よって、好適な構成において、構成要素の伝導率/抵抗率は同じ大きさである。特に好適な実施形態において、2つの材料の抵抗率/伝導率の比は1:100〜1:1であり、好適には1:50〜1:1であり、より好適には1:10〜1:1である。
【0034】
同じ考え方が、直列構成の2つ以上のイオン導電性構成要素またはイオン導電性構成要素および非イオン導電性構成要素の混合物を含む電気インターフェース領域へ適用される。この場合、各構成要素の伝導率/抵抗率を「整合させる」と好適である。
【0035】
電気インターフェース領域の一部として非イオン伝導材料を含む構成を用いた場合、いくつかの利点が得られる。詳細には、このような利用により、電界付加アセンブリへの接続性において柔軟性が得られる。例えば、上記したように流体が充填されたウェルに電極を浸漬する代わりに、電極を「乾燥」固体材料(例えば、シリコン)へ接続することが可能になる。その結果、装置の一貫性および密封性が高くなる。一方、このような構成の不利点として、(典型的には流体を含む)イオン伝導材料と「乾燥した」非イオン伝導材料との組み合わせを用いる場合、流体/固体インターフェースが必要となるため、電気分解および気泡の発生に繋がる傾向となる点がある。そのため、このような構成の場合、このインターフェースに孔またはウェルを配置して、気泡の排気管として機能させる必要が出てくる。イオン伝導材料は、例えばポリマーを含み得る。有利なことに、発明による装置中へポリマーを液体形態で導入した後、in situ重合することができる。重合は、例えば化学開始剤あるいは熱開始または光開始を用いて行われる。好適には、イオン伝導材料は多孔性材料である。「多孔性」材料とは、内部を(例えば、材料の孔、チャンネルまたはキャビティを通じてを通じて)流体が通過することが可能な材料を指す。泡、スポンジまたは任意の他の種類のマトリックス状材料または細胞物質が、多孔性材料の例である。例えば、イオン導電性の多孔性材料は、多孔性ガラス材料または多孔性セラミック材料を含み得る。
あるいは、イオン伝導材料は、ヒドロゲルであり得る。ヒドロゲルは一種のポリマー材料であり、水溶液を吸収することができるが、水には溶けない。ヒドロゲルは多数の特性を有するため、本開示の電界整形インターフェースにおける使用に極めて適している。詳細には、ヒドロゲルは多孔性であり、典型的には細孔径はわずかnmの範囲であるため、水分子および小型イオンには浸透できるが、大型の被分析物(例えば、生体分子(例えば、タンパク質またはDNA)に対しては不浸透性である。さらに、ヒドロゲルは典型的には気泡に対して不浸透性であるため、電極における電気分解に起因して発生した気体が導電ボリュームへ到達する事態を回避する。
【0036】
好適な実施形態において、電気インターフェース領域の抵抗率は、ボリューム全体において一定である。等方性の電界平滑化効果を達成するために、電気インターフェース領域の電気的均一性が一般的に所望される。あるいは、他の実施形態において、抵抗率は、少なくとも1つの方向(例えば、導電ボリューム周囲に対して垂直な方向またはチャンネルの長手方向)において変化してもよい。その場合、例えば、異なる大きさの電界を複数の同心の円形チャンネルへ付加することが可能になる。これらの円形チャンネルはそれぞれ、単一の電界付加アセンブリを用いて、電界インターフェース領域の一部によって間隔を空けて配置される。
【0037】
電気インターフェース領域の抵抗率の変更は、領域材料の組成を1つ以上の方向において変更することにより(例えば、異なる電気的特性の複数の電気インターフェース構成要素を用いることにより)達成することが可能である。しかし、このような変更を実際に行うことは困難な場合がある。あるいは、空洞内に支柱を導入し、サイズまたは密度を1つ以上の方向において変更することにより、抵抗率をより容易に変更することも可能である。その結果、導電性材料を除去する効果が得られ、よって電気インターフェース領域の抵抗率が増加する(かまたは支柱密度が低下した場合は電気インターフェース領域の抵抗率が低下する)。電気インターフェース領域の抵抗率を変更するための別の例示的方法として、空洞深さを変更する方法がある。
【0038】
電気インターフェース領域の伝導性および相対的厚さは好適には、電極が付加された領域におけるジュール加熱および過度の電気分解を回避するために、電流フローが過度ではないくらいにするとよい。
【0039】
好適な実施形態において、基板は、電気抵抗性または絶縁性である。基板は、可視赤外線(IR)または紫外線(UV)放射のうち任意の1つ以上のに対して透明であることが望ましく、これにより、基板を通じた電気インターフェース領域材料の光パターニングおよび光重合または光検出技術との利用に適した装置の作成が可能になる。しかし、他の場合において、基板を光学的に透明にしなくてよい。
【0040】
有利なことに、本発明による装置は、導電ボリューム内における同時分析が可能である。例えば、ボリュームは、複数のチャンネルを含み得る。これら複数のチャンネルはそれぞれ、電気インターフェース領域の領域によって間隔を空けて横方向に配置される。電界付加アセンブリは、別個の電界を電気インターフェース材料の一部に付加するように構成され、これにより、別個の電界が電気インターフェース領域によって平滑化されて、複数のチャンネルそれぞれにおいて実質的に連続する電界が確立される。好適な構成において、各チャンネル内において確立された実質的に連続する電界は実質的に同じであるが、上記したように、これは必須ではない。代替例として、複数のチャンネルを導電ボリューム内において相互に載置することが可能である。各層は、絶縁体層によって分離されたチャンネルを含み、電気インターフェース材料は、チャンネル層それぞれの片側または両側と接触する。別の例において、インターフェース材料層および導電ボリューム(チャンネル)層は、相互に重ねて配置され得、絶縁層によって分離される。導電ボリューム内の分離チャンネルへのサンプル導入のための入口チャンネルは、絶縁層内に埋設され得る。
【0041】
本発明による装置は、例えば、マイクロ流体装置および/または対象物を分離するための分離装置であり得る。導電ボリュームは分離チャンネルである。例えば、装置は、対象物の分離のための分離装置であり得る。分離装置は、本発明による装置と、平衡源とを含む。導電ボリュームは分離チャンネルであり、使用時において、分離対象となる対象物を含む。これにより、チャンネル内の実質的に連続する電界に起因して、各対象物に作用する電気力が発生する。平衡源は、各対象物上の電気力を妨害する力を発生させるように構成される。これにより、分離チャンネル内の対象物は、電界および平衡源双方によるの影響により分離されてバンドとなる。「平衡」力または平衡源から発生する力は、静止流体またはゲル内を通過する対象物の流体力学抵抗に起因して力(単数または複数)となるだけであり、あるいは、導電ボリュームにクロマトグラフィーカラムまたはミセルを充填してもよく、これにより、平衡力(単数または複数)がサイズ排除および/または親和性クロマトグラフィープロセスに起因して発生し得る。あるいは、導電ボリュームを通じた流体の流体力学または電気浸透ポンピングから平衡力を得ることも可能である。好適な実施形態において、装置は電気泳動装置であり、平衡源は、分離対象となる対象物と共にチャンネル内に含まれる流体であり、装置は、コントローラをさらに含む。分離対象となる対象物と共には、付加された別個の電界を変更して分離チャンネルに対する電界プロファイルを調節するように適合され、これにより、チャンネル内において確立された電界に起因して発生する電気力および流体に起因する流体力学力双方による影響下において、分離チャンネル中の対象物が分離してバンドとなる。よって、この場合において、平衡力は流体力学力である。
【0042】
本発明の第3の局面によれば、装置の製造方法は、以下のステップを含む:
別個の電界プロファイルを有する電界を生成するように適合された電界付加アセンブリを提供するステップと、
導電ボリュームを提供するステップと、
導電ボリュームと電界付加アセンブリとの間に電気的インターフェース領域を設けるステップであって、電気インターフェース領域は、イオン伝導材料を少なくとも含み、イオン伝導材料は導電ボリュームに隣接して配置される、ステップ。
これにより、使用時において、導電ボリュームから間隔を空けて配置された位置において、別個の電界が電気インターフェース領域へ付加される。
これにより、使用時において、付加された別個の電界が電気インターフェース領域によって平滑化されて、導電ボリューム内に確立された電界プロファイルが実質的に連続する。
有利なことに、選択されたマイクロマシニング技術を用いて、導電ボリュームを基板表面内にエッチングすることが可能である。あるいは、2つ以上のプレートを共に取り付けることによって導電ボリュームを得ることも可能である。これらのプレートのうち少なくとも1つはエッチングされるかまたは他の場合に機械加工されて、導電ボリューム(例えば、内部チャンネル)を含む基板を形成する。
【0043】
有利なことに、類似のマイクロマシニング技術を用いて、空洞を基板中に形成することができる。その後、この空洞内にプレポリマー(例えば、モノマーまたは液体状の材料(例えば、液体プレポリマー)を充填することができる。このようなプレポリマーをその後重合または硬化させることで、電気インターフェース領域の少なくとも1つの構成要素を形成することができる。典型的には、これは、電気インターフェース領域のイオン導電性構成要素である。好適には、材料を水和させた後、空洞中へ挿入/注入し(その後硬化/重合を行う)。これにより、ボリューム中において材料が空洞中において実質的に変化する可能性(詳細には、膨張)が低下する。このような変化は、硬化後にに材料を水和させた場合に発生する。その結果、基板の亀裂および/または導電ボリュームの体積の低下に繋がる。
【0044】
好適な実施形態において、重合は、光開始剤または熱開始剤を用いて達成される。光開始剤は触媒成分であり、光(典型的にはUV放射)に対してポリマーを反応させる。重合プロセスは、遊離基によって駆動される。遊離基は、適切な波長の放射を受けた場合に光開始剤によって発生する。光開始剤は通常は、光子(典型的にはUV)へ晒された場合に遊離基を発生させるが、可視光またはさらには電子ビームによって活性化させることができる。よって、材料の重合を、例えばUV光の放射により制御することができる。また、電気インターフェース領域の材料を重合する際に熱開始手段または光開始手段を用いることが不要な適切な開始剤を用いることも可能である。一例として、アクリルアミドのAPS/TEMED開始がある。
【0045】
その結果、材料に光パターニングを行って、材料上にチャンネルを規定することができる。例えば、導電ボリュームの形成先となる装置の領域上にマスクを配置することができる。光開始に晒されると、マスクされた導電ボリュームは流体状態のまま、材料の露出領域が硬化する。その後、導電ボリューム内の材料を(例えばフラッシングによって)除去して、所望のボリュームを形成することができる。特に好適な例において、使用時において導電ボリューム中に含めるべき流体(例えば、緩衝液または篩ゲル)を用いてフラッシングステップを行うことができ、これにより、導電ボリュームの準備が迅速に整う。
【0046】
同様に、温度を上げることにより、熱開始剤を用いて重合を制御することができる。熱開始剤は分子であり、加熱されると分解して、遊離基を形成する。加熱は大域的に行ってもよいし(例えば、装置全体の加熱)、あるいは局所的に行ってもよい(例えばマイクロ波放射またはレーザの使用)。よって、電気インターフェース領域の類似のパターニングを達成することが可能になる。電気インターフェース材料の重合を行った後、装置を緩衝液中に浸漬して内部のイオン内容物を平衡化させた後、装置を用いる。
【0047】
あるいは、導電ボリュームは、液体形態の電気インターフェース領域材料に作用する(例えば、プレポリマーに作用する)毛管力を用いて得ることができ、その後重合を行う。適切な寸法の空洞を用いて、導電ボリューム(例えば、チャンネル)を得ることができる。チャンネルの深さは、インターフェース領域の厚さよりも大きく、好適にはインターフェース領域の厚さの約2倍である。これは、本発明者らにより、チャンネルの充填を回避しつつ空洞の充填を可能にするために発見された。しかし、上記したように、流体インターフェース領域材料の年度および基板の材料となる特定の材料の表面エネルギー(例えば、他のパラメータ)に応じて、他の寸法の空洞/チャンネルもこの効果を達成することができる。例えば、チャンネルの深さは好適には、空洞厚さよりも1および5倍よりも高く、好適には1.5および3倍よりも高い。空洞を適切にプレポリマーで充填した後、プレポリマーを上記したように重合することができる。
【0048】
空洞をプレポリマーで充填する前に、空洞表面を例えば塩類化によって処理することができ、これにより、基板への電気インターフェース領域材料の接着を向上させることができる。また、空洞の異なる領域の選択的塩類化によって材料をパターニングすることも可能であり、これにより、いくつかの領域を疎水性にし、いくつかの領域を親水性にする。所望であれば、シラン処理剤を代替的または追加的にプレポリマー混合物を付加することができる。
【0049】
別の例において、物理的停止部を空洞と導電ボリュームとの間に軽視得して、導電ボリューム中への材料の侵入を回避することができる。例えば、流体材料の進入を停止するためには、より小型の領域が有れば充分であり得る。
【0050】
好適には、導電ボリュームを適切な様式で処理することにより、導電ボリューム内に存在する対象物または被分析物の分析時において、対象物または被分析物が導電ボリュームの内壁または内面へ付着する事態を回避する。例えば、導電ボリュームの内面を適切な材料(例えば、ポリマー)でシラン処理またはコーティングすることができる。
【0051】
本発明による、電界形状を平滑化するための装置および方法の例と、装置の製造方法とについて、以下の図面を参照しつつ説明する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書中に記載の例示的実施形態による装置および方法は広範な用途を持ち得、電界平滑化の用途を必要とする任意の装置(例えば、マイクロ流体装置またはLOC)において用いられ得ることが理解される。可能な用途を上げると、対象物の分離に用いられる電気泳動を用いた技術または他の分離技術(例えば、EP1455949に記載のような)遠心分光分析がある。別の用途を挙げると、例えばスラブゲル中の「フリーフロー」電気泳動装置または電気クロマトグラフィーにおける疎水性紙基板内に設けられた親水性領域中の対象物を分離するためのマイクロ流体装置がある。
【0054】
以下に述べる例示的実施形態において、チャンネル中の対象物を分離するための電気泳動用途について主に説明する(特に、WO2006/070176中に述べる種類の電界シフト技術)。しかし、本発明はこれに限定されないことが理解される。
【0055】
分離対象となる「対象物」は、例えばポリマー(例えば、タンパク質、DNA分子、RNA分子)または他の種類の生体分子(例えば、生物細胞)を含み得る。無機対象物(例えば、微粒子(例えば、色素、染料、粉塵粒子)も考えられル。対象物のうち少なくとも一部は有効な帯電を有するため、印可電界の存在下において力を受ける。帯電は、対象物に固有のものであってもよいし(例えば、イオンの場合)、あるいは、流体中の対象物の電気二重層に起因して発生する場合もある(例えば、ゼータ電位)。
【0056】
図1は、本発明の第1の実施形態による装置1を示す。装置1は、チャンネルの形態をした導電ボリューム2を含む。導電ボリューム2は、例えば毛細管またはマイクロ流体チップとして実行することができる。本明細書中、以下において導電ボリューム2をチャンネル2と呼ぶが、本発明はこれに限定されないことが理解される。同様に、of導電ボリュームの関連周囲は、チャンネル2の長さに沿ったチャンネルの側部とするが、本発明はこれに限定されないことが意図される。
【0057】
装置1は、電界整形電気インターフェース領域3をさらに含む。電界整形電気インターフェース領域3は、この実施形態において、イオン伝導材料3からなる。イオン伝導材料3は、チャンネル2に沿って延び、チャンネル2と電気接触する。この例において、電気インターフェース領域3は1つの構成要素(イオン伝導材料)のみからなるため、領域3を「電気インターフェース材料3」と同義の用語として用いる。本明細書中、以下、この用語を、以下に述べる第3の実施形態のみに関連して用いる。しかし、本発明はこれに限定されないことが理解される。なぜならば、電気インターフェース領域3は、
図11に示す例示的な第3の実施形態においてより詳細に以下に説明するような、さらなるイオン導電性材料または非イオン導電性材料の形態をした他の構成要素を含み得る。
【0058】
装置1は、電界付加アセンブリ4をさらに含む。電界付加アセンブリ4は、チャンネル2(以下、「書き込み」電極5aと呼ぶ)およびコントローラ6に沿って電界を材料3へ付加するために、例えば間隔を空けて配置された電極のアレイ(例えば、行)を含み得る。好適な例において、これらの電極は、チャンネル2に沿って規則的に間隔を空けて配置される。しかし、これは必須ではない。
【0059】
任意選択的に、例えば「読み出し」電極5bのアレイを含む電界測定アセンブリを印可電界の測定のために設けてもよい。この例において、「読み出し」電極は、電気インターフェース材料3の第2の部分からの電界を測定する。第2の部分は、「読み出し」電極からのチャンネルの反対側にある。しかし、以下に説明するようにな他の配置構成も可能である。
【0060】
コントローラ6は、電源ユニット6bと、プロセッサ6aとを含み得る。電源ユニット6bは、書き込み電極5aにおいて個別の電圧を生成する。プロセッサ6aは、読み出し電極5bからのフィードバック電圧を受信し、受信されたフィードバックに応答して、生成された電圧を調節する。コントローラは、例えば、WO2006/070176に記載の様態で動作して、所望の電界プロファイルに従って電圧を生成する。その後、この電圧は、時間と共に変化する。あるいは、非シフト型(すなわち、時定数の)任意の所望の形状の電界を付加することができる。電界プロファイルの例を以下に示す。
【0061】
以下により詳細に説明するように、チャンネル2は、任意の形状をとり得る(例えば、
図1に示すような直線的形状または曲線形状)。いくつかの実施形態において、チャンネルは、閉ループを形成し得る。装置1が対象物分離のための電気泳動装置である場合、チャンネル2は、流体を収容し得る。この流体は、例えば、選択された緩衝液(典型的には、導電性の水性緩衝液またはゲル)であり得る。流体のpHは、分離対象となる対象物が示す見かけの帯電に影響を与えるため、最適な分離条件を得るために、チャンネル2中において分離されるべき被分析物の特性に応じて選択すべきである。DNAまたは変性SDS処理タンパク質の場合、例えば緩衝液のpHは典型的には7.5〜9である。しかし、他の種類の被分析物(例えば、天然タンパク質)には他のpH範囲がより適している場合があり、謝産物は、最適な分離を達成するために、異なるpH条件を必要とする可能性がある。導電ボリュームのpHは、装置全体において一定にする必要は無く、所望であれば、装置の異なる領域内において異なるpHレベルを配置することも可能である。分離対象となる対象物を、チャンネル2中の流体中に懸濁する。検出器を用いて、チャンネル内において発生している事象を検出してもよい。例えば、WO2006/070176中に記載の種類の検出器のうち任意のものを用いることが可能である。
【0062】
以下により詳細に説明するように、電気インターフェース材料3は、イオン導電性である(すなわち、イオンの動きを介して電流が内部を伝導する)。電気インターフェース材料3は、選択されたポリマーを含み得る(例えば、ヒドロゲル)または電解質が充填された多孔性材料(例えば、多孔性ガラス、多孔性セラミック、泡またはスポンジ)。材料3そのものはイオン導電性であり得、かつ/または、イオン導電性物質(例えば、水性緩衝液)を内部に含み得る点に留意されたい。利用可能な適切な緩衝液としてTris−Borate−EDTA(TBE)があり、好適な濃度は0.1X〜10Xである(典型的には、10XTBEを供給業者から入手した後、必要に応じて希釈する:例えば1XTBEを得るためには、脱イオン水を用いて1:10希釈を行うべきである。構成成分からTBEの10x集中領域原液を作製するためには、通常の手順は以下のように行う:54gのTrisベース(式量=121.14)および27.5gのホウ酸(FW=61.83)を重量測定し、これら双方をおよそ900mLの脱イオン水中に溶解させ、20mLの0.5MEDTA(pH8.0))を付加し、溶液を最終量の1Lに調整する)。TBEは一例であり、他の適切な緩衝系も利用可能であるとが理解される。
【0063】
電気インターフェース材料3は好適には、電極付加が行われる領域におけるジュール加熱および過度の電気分解を回避するために、中程度の抵抗率または高抵抗率を有する。しかし、電気インターフェース材料の抵抗率は、以下により詳細に説明するように適切なレベルの平滑化を達成するために、導電ボリューム2の抵抗率と同程度にすることが好適である。この例において、電気インターフェース材料3は、電気抵抗材料(例えば、ガラスまたはプラスチック)から作製された基板7の空洞7a内に配置される。空洞7aは好適には、電気インターフェース材料3を空洞7a中に完全に充填することが可能なような設計にするとよい。
図1に示す装置1において、基板7は一体ピースとして設けられ、チャンネル2は、基板の作製時において例えば成形により、空洞7aの中間内の基板7内に設けられる。以下に詳述する他の実施形態において、チャンネル2は、2つ以上の基板ピースの接合によって形成することができる。さらに他の例において、チャンネルは、基板の外面上に形成することができる。空洞7aも内部または外部に設けてよい。
【0064】
他の例において、電気インターフェース材料は、空洞内へ封じ込められることなく装置へ付加することができる。例えば、材料は、少なくともチャンネルの縁部に接触するように、適切な位置において装置表面に固定することができる。
【0065】
電気インターフェース材料が基板内に配置された場合、電極アレイ5aおよび5bを、空洞7a上のいくつかの接触点へ穴8(ウェルまたはウェルノードとも呼ぶ)を介して接続することができる。
図1に示す穴は円形であるが、穴は任意の形状をとり得る(例えば、楕円形または矩形)ことが理解される。各穴8は、基板表面から空洞7aの上側または外側の内壁へのアクセスを提供し、これにより、穴8内に配置された電極は、電気インターフェース材料3と直接電気接触する。他の例において、電極5aおよび5bと電気インターフェース材料3との間の間接的な電気接触が、電界付加アセンブリを介して達成される。電界付加アセンブリは、以下に述べるような流体が充填された接続アームを備える。各穴8は、電気的インターフェース材料3を補充するためのイオン導電性溶液(例えば、水性緩衝液)を含むウェルとしても機能する。好適には、ウェルによって提供される貯蔵部サイズは、電気インターフェース材料中のイオン枯渇を軽減するのに充分である。例えば、各ウェルは、約1mm
3の体積を保持するようなサイズにされ得る。
【0066】
いくつかの構成において、通気孔(図示せず)を穴8上に配置することで、漏出を回避すべきウェルを被覆しつつ、電気分解ガスを通気することが可能になる。好適には、通気孔は、微小孔性材料によって構成することで、穴8内の水性電解質をはじく。このようにした場合、封入されたカートリッジ状の装置において、事前充填された内容物(すなわち、穴8中の電解質)の漏洩を回避する際に有利である。いくつかの実施形態において、電極は、装置のセットアップ時において通気孔を貫通するように、構成され得る。
【0067】
空洞7aは、穴8間の幅(w)を有し、チャンネル2の最の近隣の側部を有する(この側部は、書き込み電極5aの間隔と、所望のレベルの電界平滑化とによって決定される)。例えば、穴8は、チャンネル2に沿って、典型的には100μm〜数mmの範囲の距離において提供され得る。幅(w)が大きいほど、平滑化レベルも高くなる。しかし、書き込み電極の間隔が小さい場合、比較的低レベルの平滑化(およびよってより小さな幅(w))で充分であり得る。好適には、y方向における幅(w)は、z方向における材料3の厚さ(t)少なくともと同程度であり、好適にはz方向における材料3の厚さ(t)よりもずっと大きい。すなわち、材料は、「膜」状の構成を有する。
【0068】
典型的な例において、y方向における空洞7aの幅(w)は0.1〜5mmであり、x方向におけるチャンネルに沿った電極間の間隔は約3mmであり、x方向におけるチャンネルに沿った空洞7aの長さ(I)は数センチメートル(例えば、12cm)であり、z方向における空洞7aの厚さ(t)は1〜100μmである。場合によっては、空洞7aの厚さ(t)を小さくするかまたは最大でもチャンネル2の深さ(d)と等しくすることが望ましく、これにより、当該チャンネル中の被分析物と電界インターフェース材料との間の相互作用が最小化される。例えば、深さが10μmであり幅が20〜200μmであるチャンネル2の場合、空洞7aは好適には厚さ(t)が1〜100μmであり、幅(w)が1〜5mmである。別の実施形態において、インターフェース材料3がチャンネル2を包囲する(例えば、全ての側部(例えば、上記および以下のもの))ことが好適であり得、これにより、y−z面における電界均一性が向上する。本発明による装置の製造方法を参照しつつ、さらなる例示的寸法について以下に説明する。
【0069】
電気インターフェース材料との接触のために空洞を用いない実行様態において、above例示的な空洞寸法が、電気インターフェース材料そのものに均等に用いられる点について留意されたい。
【0070】
電極接続のための穴8に加えて、入口9aおよび/または出口9bとして機能する複数のウェルノードを、チャンネル2中の流体および/または被分析物の挿入および/または取り出しのために設けることができる。直線チャンネル2の場合、
図1に示すように、2つのさらなるウェルノード9aおよび9bを用いて、電界付加アセンブリ4の一部を形成するさらなる書き込み電極(図示せず)を挿入し、これにより、以下にさらに説明するような電界周辺効果を弱めるための余分な電圧が得られる。これらのウェルノードポイントは、入口および/または出口としても機能し得る。上記したように、電極5aおよび5bは、(例えば、穴8を介して)空洞7a中の電気インターフェース材料3上の異なるポイントへ直接接続してもよいし、あるいは、
図2に示すような接続アーム10(「流体」アーム10と呼ぶ)を介して間接的に接続してもよい。いずれの様態においても、電界付加アセンブリは、別個の一連の電圧ポイントを電界インターフェース材料へ提供し、別個の電界プロファイルを発生させる。「アーム」10は、材料3から連続してもよいし、あるいは、流体のみを充填してもよい。いずれの場合においても、各流体アーム10は好適には、単一のポイント電圧(例えば、1つのみの電極)を電気インターフェース材料3へと接続する。
【0071】
この種の流体アームは、さらなる柔軟性を提供する。なぜならば、その寸法を制御することで、電気インターフェース材料3へ付加される電圧をさらに調節することが可能となるからである。例えば、アームの深さまたは横方向幅を増加することにより、アームからの電気抵抗を低減し、みかけの電圧が増加する。これとは対照的に、(穴8と材料3との間の方向における)アーム10の長さを増加することにより、抵抗が増加する。これは、複数の方法で行うことが可能である。例えば、(例えば一例を以下に示す「ジグザグ型の」実施形態の場合のように)穴8全てがチャンネルから同一距離において配置されていない場合、流体アーム10のサイズを、電気インターフェース材料3が「経験する」電界上の異なる電極位置による影響を弱めるようなサイズにする。このようなサイズは、例えばより近隣の電極を接続しているアーム10より遠隔の電極を接続しているアーム10よりも幅狭に設計することにより、得ることができる。このようにすることで、各アーム10は、実質的に同一の抵抗を各電極に提供し、これにより、各ポイントにおいて材料3へ付加された電圧が実質的に等しい量だけ低減し、電界形状への影響が無くなる。
【0072】
あるいは、流体アーム10は、材料3へ付加される電界の整形において積極的な役割をとってもよい。例えば、流体アーム10が異なるレベルの抵抗を提供するようなサイズにされた場合、異なる電圧のポイント(およびよって非ゼロ電界)を材料に提供しつつ、同じ電圧を各電極へ付加することが可能である。実際は、これら2つのアプローチの組み合わせを用いることが可能である。
【0073】
よって、穴8内に書き込み電極5aを浸漬することにより、コントローラ6によって設定されたインターフェースポイントに必要な電圧を得ることが可能になる。この例において、各対向する穴8は、書き込み電極5aから付加された電圧を測定するための読み出し電極5bを含む。ここでも、これらの読み出し電極は、流体アーム10を介して接続することができ、その寸法にも同様の考え方を適用することができる。図示の設定は、「非対称」設計の例であり、1行の書き込み電極5aが(読み出し電極5bの行の反対側にある)チャンネル2の片側に設けられており、チャンネル2は、2つの電極行5aおよび5bの間において2つの電極行5aおよび5bに平行に設けられる。
【0074】
好適な例において、2つの対向する電極行間の幅全体は、1〜6mmの範囲であり得、典型的には約2.2mmである。よって、電気インターフェース材料3の典型的な例示的幅(w)は1mmであり、電気インターフェース材料3は、200μm幅のチャンネル2の各側部に設けられる。しかし、実際は、電気インターフェース材料3の幅を200μm以下に幅狭にしてもよく、チャンネルそのものを上記したものよりも幅狭にしてもよい。単一のミクロンまたはさらにはナノメートルオーダー未満の寸法のより小型の装置が必要な場合、電気インターフェース材料3の幅について厳しい下限が無いという事実が重要となる。これらは例示的寸法であり、全体的幅は変化し得、例えば以下に詳述する複数のチャンネル設計の場合よりも高くなることが理解される。
【0075】
図3は、装置1の一部の模式図であり、電気インターフェース材料3の1つの領域がチャンネル2に隣接しかつ電気接触している様子を示す。
図3に示す外形は、電気インターフェース材料3無いの一定電圧の線の模式図である。この例において、ひとえに例示目的のために、図示の電極それぞれに同一電圧が付加されている点に留意されたい。しかし、実際は、チャンネル2の長さに沿って電界を発生させるために、異なる電圧が付加される。各電極5aから付加される電圧は、電極5a(または流体アーム10)が電気インターフェース材料3およびチャンネル2と接触する点においてイオン伝導し、半径の増加と共に、等電位線の曲率が低下する。最終的には、材料寸法が充分に大きい場合、等電位線は、チャンネル2の近隣において実質的に直線状になる。チャンネル2は、印加電圧を平滑化する効果を有する。材料3へ付加された電圧がチャンネル長さ(すなわち、x方向)において変化する場合、ポイント源が付加される位置およびその近隣において、別個の電界が確立される。しかし、チャンネル2に向かってかつチャンネル2において、材料3の平滑化効果は、チャンネル2内において実質的に連続する電界が得られることを意味する。
【0076】
図4Aは、例示的電圧Vを示すグラフである。電圧Vは、fチャンネルの経路に一致する方向において(この場合はx軸に沿って)材料3(例えば、電極5aによって)へ付加され得る。これらは実質的にはポイント電源であり、その大きさは、チャンネルに沿って増加するように配置されることが理解される。この例において、電圧は、x
n(n=2)に比例して増加するように構成されるが、任意の他の電圧変化も、用途において適切に適用可能である。
図4Aに示すポイント電圧は、
図4Bに示すようにチャンネルに沿って得られる別個の電界Eに対して発生する。電界の大きさは段階的に増加し、各段階は電界において不連続であることが理解される。
【0077】
図4Cは、チャンネル2に隣接するかまたはチャンネル2の内部のチャンネル方向(x)に沿って測定することが可能な例示的電圧Vを示すグラフである。電圧分布は、ここで実質的に連続することが理解される。
図4Cの電圧分布は、
図4Dに示すようにチャンネルに沿って得られる実質的に連続する(「平滑化」)電界Eに対して発生する。
図4Dに示す詳細な連続的電界Eは直線状である(すなわち、xに比例する)が、電極へ付加される特定の電圧分布に応じて、任意の実質的に連続する関数となり得ることが理解される。
【0078】
実際は、平滑化された電界中には、未だに一定の不連続部が含まれる場合がある。例えば、同一パラメータが上記例において付加された場合において材料3の幅が大幅に低減された場合、平滑化は不完全となり、そのためチャンネル内に確立された電界は、直線ではなく、変形階段関数となる。しかし、それでも、この電界は、もともとの別個の印加電界よりも連続性が高いままである。既述したように、電気インターフェース材料3は、電極5aとチャンネル2との間の電気接続が可能となるように、適切なイオン輸送特性を持つように選択される。これとは対照的に、電子(または穴)の動きによって主に導電する材料の場合、当該材料は電極として機能し、表面における電気化学反応を支援し、プロセスにおいて電気分解から気泡を発生させる。このような気泡に起因して、チャンネル2において得られた電界が深刻に妨害され、その結果、装置1の動作も妨害される。イオン伝導材料3の利用を通じて、このような事態が回避される。好適には、電気インターフェース材料3は適切な高速のイオン移動度を有するため、使用時における過度のイオン枯渇が回避される。
【0079】
インターフェース材料3の伝導性および相対的寸法については、使用時において、電極ウェルノードにおけるジュール加熱および過度の電気分解を回避するために、過度の電流フローが回避されるような伝導性および相対的寸法が必要である。
【0080】
上記したように、インターフェース材料3のイオン伝導率は好適には、充填されたチャンネル2(典型的には緩衝液またはゲル)と同程度であるとよい。インターフェース材料3の伝導率が高すぎるかまたは低すぎる場合、チャンネル2内において所望の電界形状を形成することができなくなる。なぜならば、チャンネル2および電気インターフェース材料3の流体の相対的伝導率が大きく異なる場合、オームの法則により、全電流が主に電気インターフェース材料3を通過するかまたは主にチャンネル2を通過するこことが予測されるため、電界平滑化効果が変化する(すなわち、過度の平滑化または不十分な平滑化に繋がる)からである。加えて、材料3の伝導率が低すぎる場合、チャンネル2内において得られる電界が減衰し得る(すなわち、電極5aにおいて付加された電界よりもずっと低くなったように見える)。なぜならば、電気インターフェース材料3内において電力が実質的に失われたからである。よって、チャンネル2および電界インターフェース材料3の相対的抵抗率を考慮に入れて、チャンネル2内において所望の電界を達成できるようにすると好適である。好適な構成において、相対的抵抗率は同じオーダーである。特に好適な場合において、チャンネル2および材料3の伝導率/抵抗率の差は、100倍を超えず、好適には50倍を超えず、最も好適には10倍を超えない。
【0081】
しかし、実際は、これを行うことは困難でであり得る。なぜならば、装置が電気泳動装置である場合、ボリューム内の流体の伝導率/抵抗率が一定範囲に限定されるからである。その理由として、適切な分離条件を得るためには、流体を(pHおよび濃度の点において)適切な組成にする必要がある点がある。このように、流体の伝導率に制約があり、また、(上記したように理想的には中程度に保持されている)電気インターフェース材料の好適な伝導率と比較して相対的に高い場合が多い。そのため、任意の差を最小限保持しておくことが好適であるものの、チャンネル2中の流体および材料3の伝導率を極めて近似することが不可能である場合がある。印可電界の大きさおよび/または形状は、発生する結果を考慮に入れて調節することができる。
【0082】
電気インターフェース材料3の抵抗率は、その体積全体において一定であり、このような一定の抵抗率は、均質の電気インターフェース材料3を利用可能とするために好適である。その結果、材料中における等方性電界の平滑化が可能となる。あるいは、他の実施形態において、電界インターフェース材料の抵抗率を少なくとも1方向において変化させることが望ましい場合がある。例えば、さらなる電界整形効果を得るために、材料3の抵抗率/伝導率をチャンネルの長さ方向(本例においてはx方向)に沿って変化させることができる。他の例において、抵抗率/伝導率を、チャンネル経路に対して垂直な方向(ここではy方向)において変化させることが可能である。これについて以下に述べる。
【0083】
電気インターフェース材料の抵抗率の変更は、空洞2中に支柱(図示せず)を導入し、1方向における当該支柱の直径または密度を変化させることにより、達成可能である。こののうにすることで、導電性材料が除去される効果が得られ、よって電界インターフェース材料3の抵抗率が低下するか(または支柱の密度が低下した場合は抵抗率が低下する)。あるいは、材料そのものの組成を変更することも可能である。例えば、(以下に記載する)ヒドロゲルの倍、孔および/またはイオンチャンネルの密度を設計することで、領域間において密度を変化させることができる。別の代替例として、電気インターフェース材料の厚さを幅にわたって変更してもよい。
【0084】
また、電極穴8中において電気分解に起因して発生した気泡に対して電気インターフェース材料3を不浸透性にすることで、材料内のイオン輸送およびよって電界が気泡によって妨害される事態が回避されることが望ましい。電気インターフェース材料3をチャンネル2内に含まれる任意の被分析物に対して不浸透性とすることがさらに所望される。さらに、電気インターフェース材料3は、充分にロバストであり、化学的かつ熱的に安定しかつ不活性であるべきである。また、材料3が電界内において安定し、かつ、その電気的特性または物理的特性を大幅に物理的に変形させたり変化させたりしないことが重要である。また、電気インターフェース材料3が基板7内の空洞7aへ適切に付着し、チャンネル2内の任意の被分析物が表面へ顕著に付着する事態を回避することが所望される。
【0085】
上記基準全てを満たすように設計することが可能な特に適切な材料として、ヒドロゲルがある。ヒドロゲルは一種のポリマー材料であり、水溶液を吸収することができるが、水中には溶解しない。ヒドロゲルは、孔またはチャンネルの網を形成し、流体を収容し、流体中のイオンが内部を通過することができる。この特性が得られる理由として、ポリマー鎖の三次元網が物理的架橋および/または化学的架橋によって相互に保持され、これらのマクロ分子間の空間が水で充填されている点がある。ポリマーの特性と、ヒドロゲルの形成に用いられる網の性質および密度とに応じて、このような構造は、多様な量の水を含むことができる。典型的には、孔および/またはチャンネルはこのように小型であるため、この材料をナノ多孔性と呼ぶことができる。ヒドロゲルを電気インターフェース材料として用いる場合、チャンネル/孔内において搬送される流体が材料を通じて(イオン輸送を介して)帯電を電導すると好適である。この固有のヒドロゲルそのものは、好適には実質的に電気的に絶縁性であるとよい。このように、ヒドロゲルは、多数の魅力的な特性を有するため、電界形状の平滑化のための電気電界インターフェースとして極めて好適である。しかし、上記記載の基準を満たす任意の種類のイオン伝導材料を用いることが可能であることが理解される。
【0086】
ヒドロゲルは、主に2種類に分類される。すなわち、物理的ゲルまたは偽ゲルは、静電気力、水素結合、疎水性相互作用または鎖エンタングルメントによって接続されたポリマー鎖からなる。このようなヒドロゲルは、非永続的力または結合によって相互に保持されるため、加熱されると再びポリマー溶液に戻ることが多い。一方、化学的ヒドロゲル(真ヒドロゲルまたは永続的ヒドロゲルとしても知られる)は、鎖間の共有結合を介して相互に保持される。いずれの種類のヒドロゲルも、本開示の装置において用いることが可能である。
【0087】
好適には、電気インターフェース材料3は、基板7を構成する材料と適合する。基板7は典型的には、例えばガラス、石英ガラス、石英またはプラスチック(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)または環状オレフィンコポリマー(COC)から作製されるか、または、エラストマー(例えば、ポリジメチシロキサン(PDMS)から作製される。
【0088】
さらに、電気インターフェース材料3を選択する際、電気インターフェース材料3を装置1内において容易に用いることが可能かについて検討する必要がある。液体ポリマー(例えば、未硬化ヒドロゲル)材料は、(例えば、UV放射によって)例えば光開始を用いてまたは電気インターフェース材料3を形成するための熱手段を用いて、入口9aおよび9bを介して(例えば、注入によって)基板7の空洞7a内へと導入され得、in situ重合され得る。この点について、以下にさらに詳述する。
【0089】
基板7そのものは、選択された微細加工手順を用いて作製され得る。そのような微細加工手順のうちいくつかの例について以下に説明する。理想的には、基板7の作製に用いられる材料は、その後の光パターニングおよび光重合のための紫外線放射に対して透明である。このようにすることは、チャンネル内の事象の検出においても有利である。基板も、この目的のために可視光に対して透明であり得る。
【0090】
チャンネル2および空洞7aは、
図1および
図2に示すように(例えば、機械加工または成形により)単一の基板ピース内に形成することができる。あるいは、チャンネル2からの凹部および空洞7aを別個のプレート71および72上に設けた後、
図5A〜
図5Cに示すように相互に固定して、基板7を形成することができる。プレート71および72のうちいずれかまたは双方は、電極接続ポイントを含み得、ワンピース(概して上側プレート71)は、穴8を有する。穴8は、例えば適切な機器により、穿孔、爆破、鋳造または成型され得る。その後、典型的には加熱プレス、プラズマ室、炉、超音波、溶媒、適切な接着剤を用いてまたは閉システムを形成するために文献に開示されている他の任意の従来の接合方法により、作製されたプレート71および72を接合する。
【0091】
チャンネル2は、エッチング、機械加工、熱エンボス加工、射出成形、鋳造、剥離によって作製することもできるし、あるいは、ガイドチャンネルを形成することにより作製することもできる。ガイドチャンネルは、基板表面を物理的に区切る。しかし、以下から分かるように、これは必須ではない。
図8Aに示す一例において、チャンネル2は、基板7の上側ピース72中においておよそ20〜40μmの典型的深さまで形成することができる。空洞7aは、基板の下ピース71内に形成され、別の20〜40μmの厚さを有する。これら2つのプレートを相互に固定した後、
図5Aに示すように、全体的チャンネル深さは空洞厚さ、を含んで40〜80μmとなる。
【0092】
別の例において、
図8Bに示すように、チャンネル2および空洞7aを1つのプレート72の表面上に形成することができ、その後第2のプレートへ固定することができる。第2のプレートは、さらなる凹部を備えてもよいし、備えなくてもよい。
【0093】
図5Cおよび
図8Cに示す例において、チャンネル2を規定する物理的ガイドチャンネルは形成されておらず、その代わりに、使用中に電気インターフェース材料を保持する同一空洞7a内にチャンネル2全体が最終的に収容される。チャンネル2の側部は、電気インターフェース材料そのものによって規定される。基板材料がプラスチックである場合、チャンネル2および空洞7aを各基板プレート71および72内において適切な高精度機械加工器具またはコンピューター数値制御(CNC)機械によって微細機械加工することができ、モールド/器具および高温エンボス器を用いてスタンピングを施し、別の液体ポリマー材料を用いて光パターニングを施し、充分に強力なレーザまたは文献に記載される任意の適切な方法によって選択的に溶融および気化させることができる。基板材料がガラス、石英ガラスまたは石英である場合、標準的なフッ化水素酸エッチング手順または深堀反応性イオンエッチングを用いてチャンネル2および空洞7aをエッチングすると好適である。ガラスに対し、例えば機械加工、レーザエッチングまたは電気化学エッチングまたはサンドブラストを行うことができる。
【0094】
装置の形成において適切な別の代替的な作製方法として、3D印刷がある。これらは独立型のシステムであり、微細構造を極めて高い分解能で形成することができる。本明細書中に記載の装置は、例えば光パターニングが可能なポリマー(任意選択的にはインターフェース材料(例えば、ヒドロゲル)の直接堆積および採用を含む)を用いて、このようなシステムによって作製することが可能である。
【0095】
チャンネル2中に存在する対象被分析物が分析時において導電ボリュームの内壁または内面に付着する事態を回避するように、基板内に形成された空洞を処理することができる。例えば、導電ボリュームの内壁または表面を適切な材料(例えば、ポリマー)でコーティングすることができる。電気インターフェース材料3で充填すべき空洞の表面に対してシラン処理を行うことで、基板への材料3の接着を向上させることができ、あるいは、この表面を任意の他の適切な接着促進システムを用いてコーティングしてもよい。材料のパターニングを可能にするように、コーティングまたは塩類化を選択することができる。
【0096】
文献中の任意の適切な技術により、穴8をレーザまたは砂によって機械的に穿孔または剥離することができる。典型的には、基板ピース71および72をその後正確にアライメントおよび接合させる。
【0097】
電気インターフェース材料の挿入は、複数の方法によって行うことが可能である。場合によっては、電気インターフェース材料を既に硬化した固体形態で設けてもよい。この場合、例えば2つのプレート71および72を相互に接合する前に、材料を空洞7a内に配置するだけでよい。空洞のない例においても、このような形態は好適な選択肢である。その場合、例えば、材料を空洞に沿って基板表面に接着することができる。
【0098】
しかし、好適な例において、電気インターフェース材料は、流体形態(例えば、プレポリマー)で装置内に導入される。このような導入により、基板と材料との間の接合が向上し、インターフェース中において被分析物または気体が通過する隙間がほとんど無くなることが分かっている。材料を装置の外面に配置する場合またはプレート71および72のうち1つまたは他方に導入した後に相互に接合する場合、任意の簡便な方法(例えば、印刷、拡散、スピンコーティング)によって材料を表面上にコーティングするかまたは空洞内にコーティングすることができる。材料を既に作製された内部空洞中に導入する場合、注入方法が好適である。例えば、上記した穴8のうち任意の穴を通じて材料を注入することができる。
【0099】
流体形態の材料3を導入するための1つの特に好適な技術において、空洞7aが小型であることに起因して、電気インターフェース材料3上に作用する毛管力が用いられる。基板中に設けられた空洞7a(および任意のガイドチャンネル)が適切な寸法である場合、導入後、
図5Aに示すように(空洞7aの上方および内部に配置された)チャンネル2を構成する領域にはインターフェース材料が実質的に含まれない様態で、電気インターフェース材料3が空洞7a中に充填される。毛管効果を有効に機能させるために、本発明者によれば、空洞の上方に設けられたガイドチャンネル2の深さを空洞7aの厚さとほぼ等しくすると好適であることが分かった。よって、物理的に機械加工されたかまたはエッチングされたチャンネル2中に毛管作用により充填された電気インターフェース空洞を設けた場合、チャンネル2の深さは、空洞7aの厚さのほぼ2倍となり(よって空洞を充填する電気インターフェース材料3の厚さのほぼ2倍となる)。
【0100】
図4Aおよび
図4Bは、チャンネル2を毛管作用を介して形成する方法の模式図である。
図6Aに示す毛管力F
cは、液体材料3の「コンテナ」として機能する空洞7a内からの液体中の電気インターフェース材料3の表面に作用する。毛管力F
cの影響下において、液体材料3は、チャンネル2の領域に到達した後、流動を停止する。例えば、関連する表面および液体の相対的親水性に応じて、液体材料は、
図6に示すように、空洞の上方に設けられたチャンネル2のいずれかの側部において(凹状または凸状の)メニスカスを空洞7a内に形成し得る。しかし、必ずしもこのようになるとは限らない。
【0101】
毛管力F
cに起因して空洞7a中に液体材料が充填され、その結果、液体材料3がチャンネル2のいずれかの側部においてチャンネル2へ向かって移動する。
図6Bに示すように、液体材料3aがチャンネル2に到達するまで、毛管力F
cが材料3へ作用する。チャンネル2において、(チャンネル2を現在含んでいる)「コンテナ」表面のサイズが増加したことに起因して、液体材料3の表面への毛管力による作用が停止する。その後、(例えばプレポリマーの重合により)電気インターフェース材料3を固体化させることができる。このような固体化は、例えば光放射、熱手段または室温における化学反応によって達成することができる。
【0102】
電界付加アセンブリに接続アーム10を含める場合、空洞を充填するために上記した原理と同じ原理に部分的に基づいて、アームの寸法を決定することができる。例えば、アーム10中に充填すべきものが流体であり電気インターフェース材料3ではない場合、アームの寸法を、毛管作用によって流体材料3がアーム10中に引き込まれないような寸法にすればよい。例えば、アーム10の深さまたは横方向幅を選択する際、空洞の寸法に相対して充分大きくなるように選択すればよく、これにより、電気インターフェース材料3が流体アーム10中へ進入事態が回避される。一方、アーム10を電気インターフェース材料3と連続させるべき場合、アーム10の深さまたは横方向幅を短くすることで、毛管力により、電気インターフェース材料がアーム10内へと強制的に移動させられる。
【0103】
別の例において、例えば液体プレポリマーを含むインターフェース材料3が光パターニング可能であることを利用することにより、チャンネル2を保持した状態で電気インターフェース材料を形成することができる。このような1つの例において、
図5Bに示す基板プレート71および72は、光(例えばUV放射)に対して透過性である。これらを作製した後、基板ピースを作製および接合し、液体プレポリマーを充填する。液体プレポリマーが充填されたチャンネル2および空洞7aの模式図を
図7Aに示す。その後、光マスクを用いて電気インターフェース材料3を液体プレポリマーから生成する。この光マスクは、基板の上方のマスクを選択的にマスクする。
【0104】
図5Bは、チャンネル2の上方に光マスクMが設けられている様子を示す。マスクMは、基板に対して垂直方向においてレーザまたは類似の光源から基板へ付加されるUV放射に対して実質的に不透過性である。液体プレポリマー中における重合を開始するための適切なエネルギー(波長)を有する任意の光源が利用可能であり、マスクMは、選択された特定の波長のみに対して不透過性であればよいことが理解される。重合後、流体(すなわち、液体または気体)をチャンネル2内に通過させて未硬化材料を流し落とすことにより、未重合の材料(すなわち、マスク下にある材料)を全て基板から除去することができる。あるいは、定圧または真空を付加することで未硬化材料を引き出すことも可能である。
図7Cは、光マスクの下に配置された未重合材料を除去することにより、チャンネル2が得られる様子を示す。実際は、フラッシングで材料全てを除去することはできないため、
図5Bに示すようにインターフェース材料のうち一領域がチャンネル内に残留し得る。しかしこれは問題ではない。
【0105】
同一の光パターニング原理を用いてチャンネル2を生成することができる。この場合、基板内において初期にガイドチャンネルは形成せず、空洞2全体に事前硬化材料を充填する。
図5Cに示すように、その後チャンネル2の壁部を材料3そのものによって規定する。電気インターフェース材料3に対してこのように光パターニングを施すことによって得られたチャンネル2の場合、チャンネル2の深さを空洞7aの厚さとほぼ等しくすることが可能であるため、基板中にガイドチャンネルを物理的に設けたりエッチングしたりする必要が無くなる(すなわち、チャンネル2は、マスクMによって被覆された領域下の電気インターフェース材料3内の空間に過ぎない)。他の例において、重合インターフェース材料3に対して化学的または機械的エッチング、剥離または機械加工を行って、重合インターフェース材料3をチャンネル領域から除去する。
【0106】
空洞7a内に電気インターフェース材料3を含んで作製および接合された基板7は、一般的にチップと呼ばれる。
【0107】
用途に応じて、チップを形成した後、チャンネル2に任意の材料(典型的には、チップに対して行うべき手順の種類に適した流体)を充填することができる。((装置が特定の用途用である場合(例えば、装置が電気泳動装置ではない場合)、流体を省略点に留意されたい。)チャンネル2は、基板7の上側ピース71内に設けられた入口9aを介して充填され得る。例えば、抵抗stoチャンネル2に挿入された篩材料(分離ゲルまたは篩マトリックスとして一般的に知られる)に応じて、質量比に対して異なる帯電を有するかまたは異なるサイズのみを有する被分析物に対して異なる抵抗を提供するように、チャンネル2を充填している流体を設計することができる。これは、任意の液体(例えば、水/緩衝液)または任意の分離ゲルシステム(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)。あるいは、導電ボリュームにミセルを充填してもよいし、あるいは多孔性ポリマーモノリス、クロマトグラフィーゲル(例えば、シクロデキストリン)または粒子ベッドでパッキングしてもよく、これにより、サイズ排除および/または親和性分離プロセスの利用が可能となる。
【0108】
その後、チップは、書き込み電極アレイ5aおよび読み出し電極アレイ5bとインターフェースをとり得る。書き込み電極アレイ5aおよび読み出し電極アレイ5bは、チップをコントローラ6へと接続させる。コントローラ6は、プロセッサ6aを含む。プロセッサ6aは、ソフトウェア制御された電子機器を含み、これより、分析に必要な電界形状を提供する。例えば、コントローラ6は、適切な時間依存性の電場勾配を形態をしたフィールドシフティングをチャンネル2に沿って提供し得る。シフティング電界が電気インターフェース材料3を介して付加され、平滑化な連続形状を有するチャンネル2内において得られた電界に起因して、チャンネル2内に閉じ込められた任意の被分析物が電気力に晒される。
【0109】
電界測定アセンブリ(例えば、上記した「読み出し」電極アレイ)が設けられている場合、コントローラ6は、測定電界を用いてフィードバックを行って、所望の電界を達成できるように印加電圧を調節する。
【0110】
本発明の実施形態による装置は、対象物を分離するための分離装置であり得る。チャンネル2は、分離対象となる対象物を閉じ込める。チャンネル2内において得られた実質的に連続する電界は、各対象物に作用する電気力に対して発生する。以下に記載するような平衡源を用いて、各対象物上への電気力に対抗する力を発生させ、これにより、電界および平衡源による混合的影響下において、分離チャンネル中の対象物を分離させる。
【0111】
例えば、装置は電気泳動装置であり得、平衡源は、分離対象となる対象物と共にチャンネル内に含まれる流体である。電気泳動装置の場合、電気力とチャンネル2中の流体に起因する流体力学力とによる混合的影響下において、適切な寸法のチャンネル内の被分析物を分離して「バンド」とすることができる。これらのバンドの幅および分離は、印加電界条件に依存する。装置は、(例えば質量分析または各バンドの組成を決定するための他の分析方法を用いて)バンドとして濃縮された後の被分析物を下流分析対象として選択的に除去および/または選別するように用いることも可能である。この目的のために用いることが可能な配置構成を
図15Bに示し、以下にさらに説明する。本発明による装置は上記用途に限定されず、上記用途はひとえに一例であることが理解される。
【0112】
チャンネル内の事象を検出するための検出器が設けられている場合、収集されたデータを分析するうようにプロセッサ6bを構成することもできる。例えば、コントローラ6は、視覚データ(典型的には、蛍光標識された生体分子被分析物からの光)(例えば、顕微鏡、スペクトロメータ(例えばラマン分光法を行うためのもの)、フォトダイオードアレイ、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管管(PMT)またはチップが内部において近隣に配置されるかまたは一体化される類似の波長選択的装置からの視覚データ)を分析し得る。これは、非視覚的な電磁放射分析方法からのデータであってもよい。他の非電磁的検出方法(例えば、伝導性、放射および屈折率の変化)を用いて、チャンネル2内の被分析物を検出することも可能である。この点について、WO2006/070176中により詳細な記載がある。
【0113】
上記したように、
図1の実施形態はいわゆる「非対称」の実行様態であり、
図9は、さらなる説明のための
図1の模式平面図である。この例において、書き込み電極5aの行は、読み出し電極5bの行反対側にあり、これらの行の間にチャンネル2が設けられる。チャンネル2は、2つの行5aおよび5bに対して平行であり、電気インターフェース材料3によって分離される。電極5aおよび5bは、接続アーム10を介して電気インターフェース材料3へ接続される。しかし、既述したように、読み出し電極(または任意の形態の電界測定装置)は任意選択であり、
図10は、読み出し電極を含まない第2の実施形態の模式図である。この構成において、電気インターフェース材料3は、チャンネル2と書き込み電極5aのアレイとの間において、チャンネルの片側だけに配置される。確立された電界を監視することが所望される場合、これは、書き込み電極5aを通じて達成することができる。例えば、短い間隔(例えば、100ms毎に1マイクロ秒)において、実際はサイクルは電界速度に依存し得るが、時間シフト型電気泳動システムにおいて、書き込み電極5aへの電圧供給をオフに切り換えることができ、その代わりに、同一電極を用いて、チャンネル2に沿った各位置における電圧測定を得る。測定間隔が充分に短い場合、チャンネル2内の被分析物の動きへの影響は実質的に無い。
【0114】
図11は、第3の実施形態における電気インターフェース領域3および導電ボリューム2の模式図である。電気インターフェース領域3は、イオン伝導材料3aおよび非イオン伝導材料3bを含む。
図11は、装置の他の構成要素(例えば、基板)を含まないが、これらの他の構成要素は、上記実施形態に関連して上記した様態と同じ様態で配置され得る。イオン伝導材料3aは、第1の2つの実施形態において「電気インターフェース材料」について述べたような上記したような任意の適切な材料であり得る(例えば、ヒドロゲル)。非イオン伝導材料3b(例えば、導電材料)は、抵抗ポリマー、半導体またはさらには金属材料であり得る。任意の非イオン伝導材料が利用可能であることが理解される。イオン伝導材料3aは、非イオン伝導材料3bとチャンネル2との間に配置される。この実施形態において、書き込み電極5aは、非イオン伝導材料3bと直接接触する。
【0115】
好適には、非イオン伝導材料3bの伝導率/抵抗率およびイオン伝導材料3aの伝導率/抵抗率を「整合」させるとよい。「整合」という用語は、印加電界の形状および大きさに加えて双方の伝導率を考慮に入れることで、非イオン伝導材料3bおよびイオン伝導材料3a双方が電極5aから非イオン伝導材料へ付加される別個の電界の平滑化へ貢献するようにすることを意味する。好適な構成において、伝導率/抵抗率は、同じ大きさである。これら2つの材料の伝導率/抵抗率の比は好適には100:1〜1:1である。
【0116】
図11に示す実施形態において、第1の2つの実施形態について上記したように、電極5aを流体ウェル中に浸漬する代わりに、材料3bへ接続することができる。有利なことに、この結果、装置の一貫性および密封性が高くなる。しかし、(電気接触している)イオン伝導材料3aと非イオン伝導材料3bとの間のインターフェースは典型的には流体/固体であるため、電気分解および気泡発生に繋がる傾向となる。孔、ウェルまたはトラック(図示せず)をこのインターフェースにおいて基板内に設けることで、気泡の排気管として機能させることができる。有利なことに、チャンネル2に隣接して配置されたイオン伝導材料3aは、電気分解からの気体に対して不浸透性であるため、チャンネル2への到達が回避される。
【0117】
図9、
図10および
図11に示す装置は、例えば単一の直線チャンネル2を有する直線チャンネル2は、開始部および終端を有する。このような「開ループ」構成の場合、いくつかの不利点がある。第1に、終端部に起因して電界周辺効果が発生し、装置のいずれかの終端においてチャンネル2内において得られた電界が、所望のレベルから逸脱する。この効果の一例を
図12に示す。所望の電界は、点線によって示すような直線プロファイルを有す一方、チャンネル2において得られる実際の電界は、実線曲線によって示すように、この線から逸脱する。この理由として、電界付加アセンブリの終端に近づくにつれて、非対称電界が平均化する点がある。記チャンネル端部の近隣の実線曲線においてみられる電界平坦化は、装置のうち大部分が分析において利用できないことを意味する。
【0118】
第2に、フィールドシフティング動作を開ループシステムと共に行う場合、かなりの長期間にわたって電界の変化がほとんど無くかつ電流方向が実質的に変化しないままである領域が発生し得る。その結果、電気電界インターフェース材料3において深刻な局所的イオン枯渇が発生し得る。その結果、チャンネル2の所望の電界形状が失われる。なぜならば、イオン枯渇効果が、印加電界を弱める傾向となるからである。深刻な場合、非直線電気泳動効果の発生および電気浸透流れ渦の形成に繋がり得、被分析物分離手順において極めて有害である。第3に、開ループシステムを用いた場合、システムの有効な動作長さは、チャンネル2の物理的長さによって決定される。
【0119】
第3の実施形態において、閉ループ構成(例えば、
図13中に模式的に示すような円形チャンネル2)を用いることにより、上記した不利点を解消することができる。円形チャンネル2は、電気インターフェース材料3を介して1組の書き込み電極5aと(任意選択)の1組の読み出し電極5bとへ接続される。チャンネル2の外周は、例えば100〜200mmであり、典型的には120mmである。
【0120】
書き込み電極5aは、円形チャンネル2と同心のの円に沿って規則的に間隔を空けて配置され、半径はチャンネル2の円形経路よりも大きい。同様に、読み出し電極5bは、チャンネル2と同心の円内に規則的に配置され、半径はチャンネル2の半径よりも小さい。しかし、書き込み電極5aの位置を読み出し電極5bの位置と交換してもよいし、またこの逆も成り立つことが理解される。さらに、(電極穴8および接続アーム10によって形成された)電極接続ポイントを、書き込み電極5aのための接続ポイントと読み出し電極5bのための接続ポイントとの間で切り換えて機能させることも可能である。また、電極の外輪を読み出し電極および書き込み電極の混合物によって構成することができ、内輪も、例えば、チャンネルに沿って機能を交換させることが可能である(このような構成は、直線チャンネル設計にも適用可能である)。
【0121】
上記した装置1と同様に、対象被分析物をプラグとして
図13に示す円形チャンネル2に注入することができるし、あるいは他の場合に(出口としても機能することが可能な)入口9のうち1つを通じて注入することもできる。入口9は、典型的なクロス注入システムにおいて配置される。あるいは、サンプルの初期の物理的サイズが無関係である場合、対象被分析物を分離緩衝液またはゲルと事前混合することも可能であり、
図13に示すクロス注入システム9は任意選択となる。
【0122】
図14に示すように、上記した種類の電界周辺効果は、閉ループシステム(例えば、
図13の円形装置)においては発生しない。この場合、「縁部」における電界ゆがみは、直線チャンネル2の場合の
図12に示す歪みよりもずっと小さい。(閉ループチャンネルの場合の「縁部」とは、電界が「逆転する」(すなわち、反対方向に移動する)ことによりループを完成させる有用な電界の境界を意味する。)この点について、WO2006/07176中に記載がある。その理由として、電界が装置ループ全体に付加されるため、非対称な電界平均化が無くなる点がある。
【0123】
さらに、フィールドシフティングシステム(例えば、WO2006/070176に記載のもの)において、伝搬するEM波は、ループの周囲を移動する。その結果、ループ周囲の電気インターフェース材料3中のイオンがスイープされ、これにより、材料の任意のイオン露出領域が連続的に補充され、その結果チャンネル2中の電界が平滑かつ安定した状態で維持される。閉ループシステムのさらなる利点として、チャンネル2の開始部または終端が無いため、装置が無限の動作長さを実質的に有する点がある。完全に直線状であるかまたは完全な閉ループチャンネルを除き、チャンネル2の直線部分または曲線部分の任意の組み合わせを本発明による装置において利用することが可能であることが理解される。
図15は、別の閉ループ設計のさらなる模式図である。
図15において、電気インターフェース材料3は干渉され、チャンネル2の周囲に連続領域を形成しない。電気インターフェース材料3を通じた事象が干渉され、電気接続経路i
1、i
2、...i
nはチャンネル2に沿って形成し、電気インターフェース材料3は材料の「閉ループ」として機能し、必要な平滑化機能を印可電界に対して行う。この実施形態において、電気インターフェース材料3はチャンネル2の片側のみに設けられる点に留意されたい。
【0124】
図16Aに示すさらなる閉ループ設計変形例において、電気インターフェース材料3は、チャンネル2のいずれかの側部において異なる幅を有し、読み出し電極5aおよび書き込み電極5bは、相互に対向するのではなく、チャンネル2からオフセットしている。
図16Aの装置はまた、異なる配置構成の入口9aおよび出口9bを有する。電気インターフェース材料3は、書き込み電極5aの側部上のみにおいて必要であり、チャンネル2へ直接接続されたナノチャンネルまたはマイクロチャンネルによって電圧を読み出すことができる。あるいは、書き込み電極5aは、内側円と、チャンネル2に対する外側円上の読み出し電極5bとの上に設けてもよいし、あるいは、任意のパターンにおいて交代で設けてもよい。インターフェース材料3をこのように設けることで、インターフェース材料3が書き込み電極とチャンネルとの間(のみ)において配置されるかまたはチャンネルの両側上に配置され得、これににより、多様な電極配置構成を収容することができる。別の設計において、コントローラ6を用いて、書き込み電極アレイ5aを短期間だけ(典型的には数ミリ秒だけ)読み出しアレイへ切り換えることにより、電界を読み出すこともできる。この例において、ポート9aはサンプルについての入力として機能し、ポート9bは廃棄物の出力として機能する。この点を、
図16Bの拡大図中により明確に示す。対象物を分離して被分析物バンドAとした後、選択されたバンドは、出力9bを通じた分析を通じて除去することができる。このような除去は、ポート9b内の適切な電界を活性化させて対象バンドを引きつけ、このバンドを主要チャンネル2から除去することにより、行われる。このようにして除去されたバンドは、保存対象としてウェルアレイへと方向付けられ、これにより各ウェルは1つの被分析物または極めて類似する質量/帯電比(q/m)を有する一定範囲の被分析物を含む。このようなウェルアレイは、MALDI型プレートの基盤を形成する(これらのウェルは、マトリックス材料を含み、レーザ脱着前に乾燥される)。あるいは、このようなウェルアレイを抽出してその後の使用または二次分析に分析に用いてもよい。同様に、接続ポート20を介してバンドを二次チャンネル上へ移動させることにより、バンドをさらなる使用または分析対象として選択することも可能である。その結果、異なるq/m範囲の「窓」または異なる分解能を備えた第2の電気泳動チャンネルの形態がとられ得る。あるいは、異なる分析技術(例えば、質量分析(例えば、エレクトロスプレーオン化)を用いてもよい。別の例において、2つ以上の装置の「カスケード」を用いてもよく、選択されたバンドのさらなる分析を第2の(および恐らくは後続の)フィールドシフティング電気泳動装置において行う。このフィールドシフティング電気泳動装置は、第1の装置からのサンプル出力を受容するように配置される。所望の異なるフィールドシフティングパラメータを各装置について選択することが可能である場合、例えば所与の狭い移動性範囲を有する特定の構成要素を分解するために。完全一体型装置の場合、被分析物をチップの別の部分内へ直接送って、生物化学プロセスにおいて用いることができる(例えば、DNAを増幅かつおよび/または修飾し、細胞中へ注入するか、または、タンパク質を細胞へ導入して、その効果を評価することができる)。
【0125】
図17Aおよび
図17Bは、直線状ループシステムおよび閉ループシステムの別の「対称」設計をそれぞれ示す。各設計は、チャンネル2のいずれかの側部上の2組の書き込み電極5aからなり、1行の読み出し電極5bがチャンネルの片側に設けられる。この例において、電極5aおよび5bは、電気インターフェース材料3へ直接接続される(すなわち、接続アームは用いられない)。読み出し電極5bは実際は、チャンネル2そのものと直接接触する(すなわち、材料3は介さない)。
【0126】
上記してきた実施形態において、電圧が電極によって付加されるかまたは読み出される接続ポイントを、適切な線に沿って記チャンネルから一定の間隔におい行内に分配してきた。しかし、上記において暗示したように、これは必須ではなく、これが必須である場合、流体アームを電界付加アセンブリの一部として用いて、システム柔軟性を増加させることができる。一例において、電極を受容する接続ポイント(穴8)は、
図18中に模式的に示すように、チャンネル2に対してジグザグ型であり得る。この構成により、チャンネルに沿った穴8のための空間の最大化が支援される。すなわち、チャンネルに沿ったポイント電圧の間隔を増加させることが可能になる。その結果、初期の別個の電界がこのような構成を用いない場合よりも平滑化され、その結果、材料3に必要なさらなる電界平滑化の量が低減し、よって幅の低減が可能になる。この例示的パターンにおいて、接続ポイントは、チャンネル2からの異なる距離d1およびd2間において交互して、同一レベルの電気抵抗を各電極へ提供し得る。
【0127】
図19Aおよび
図19Bはそれぞれ、さらなるチップ構成の模式的平面図および模式的正面図である。このさらなるチップ構成は、複数のチャンネル2を含む。チャンネル2は直線状であり、典型的には電気インターフェース材料3によって平行かつ間隔を空けて配置される。別の典型的な構成は、いくつかの同心の閉ループチャンネル2を含む。しかし、複数の直線状または曲線状のチャンネル2の任意の組み合わせが可能であることが理解される。各チャンネル2は、接続ポイント(穴8)を備え得る。接続ポイント(穴8)は、各チャンネル2へ電界を別個に付加するための電極を受容する。しかし、
図18に示すように、書き込み電極および任意選択に読み出し電極のための1組の接続ポイントを設けると好適である。電気インターフェース材料は、チャンネルそれぞれの間に配置されて、平滑化された印可電界を各チャンネルへ提供する。好適には、各チャンネル内において確立された電界は実質的に同じであり、これは典型的には、電気インターフェース材料の伝導率/抵抗率が全領域において均質である場合である。しかし、異なる強度の電界を各チャンネル内において確立することが所望される場合、これは、電気インターフェース材料の伝導率/抵抗率を例えば(チャンネルを横断する)y方向において変更することにより、達成することができる。その後、1つの電界付加アセンブリ4から別個の電界が付加されると、所望の大きさの平滑化された電界が各チャンネル内に発生する。上記したように、材料の伝導率/抵抗率の変更は、材料そのものを設計するかまたはフィーチャ(例えば、空洞中の支柱または空洞深さ(厚さ)の変更)を設けることにより、達成することができる。
【0128】
電気インターフェース材料の伝導率/抵抗率がチャンネルを横切る方向のみにおいて変化する場合、各チャンネル内において確立された電界は類似の形状となる。しかし、チャンネル(ここではx方向)に沿った方向において伝導率/抵抗率が(さらにまたはあるいは)変化した場合、同一の別個の印加電界からの各チャンネルにおいて、異なる電界プロファイル形状を達成することができる。
【0129】
複数のチャンネル2を含む装置は、上記した同じ技術によって製造することができる。詳細には、電気インターフェース材料3を形成するための液体ポリマーの光パターニングが、これらの装置に特に適している。しかし、内部空洞の寸法が適切に選択されていることが分かっている場合、毛管作用による充填によっても所望の結果を達成することができ、チャンネル2を実質的に空のままの状態にしつつ、液体インターフェース材料3によって各空洞領域を充填する。
【0130】
上記したように、本明細書中に記載される例示的実施形態による装置および方法は広範な用途を有し、平滑化電界の付加を必要とする導電ボリュームを有する任意の装置において用いることが可能であることが理解される。成形された(非不均一の)電界が所望である全ての場合において、これらの技術は特に有用である。上記した例示的実施形態においては、主に分離チャンネル2中の対象物を分離するための電気泳動用途について述べてきたが、本発明はこれに限定されないことが理解される。
【0131】
別の実施形態において、導電ボリュームは、例えば疎水性紙基板上に設けられた親水性紙領域であり得る。電気インターフェース材料3は、親水性領域の両側部に沿って設けられ得、書き込み電極を例えば紙上にスクリーン印刷することで、電界インターフェース材料3と積層させかつ親水性領域とは積層させない。電気インターフェース材料3は、例えば、紙上にスピンコート、成形または単に注入し光パターニングを必要に応じて行う。その後、分離対象となる対象物を、電界印加によって分離されるべき親水性紙領域中へと導入する。
【0132】
他の例において、導電ボリューム2は任意のボリューム形態を取り得、分析時において対象流体および/または対象物を収容し(かつ/または内部における移動を可能にすることができる)。導電ボリューム2自体は、流体および/または被分析物の経路を(例えば「フリーフロー」電気泳動装置)において物理的に含む必要は無い。「フリーフロー」電気泳動装置においては典型的には、電解質をチャンバを通じてポンピングすることで、装置中において流体力学流れが発生する。対象被分析物は、電解質と共にポンピングされる。ストリップ電極をチャンバに沿って配置し、流れ方向とアライメントさせ、垂直方向において間隔を空けて配置する。電界を流れ方向に対して垂直方向においてシフトさせることで、対象被分析物を別個の細流に分離することができ、その後これらの細流を装置下部において分離して、異なるチャンネルとすることができる。
【0133】
本発明による「フリーフロー」電気泳動装置の一例を
図20aおよび
図20bに示す。長細型の書き込み電極5aを多孔性疎水性基板上に形成することができる(図示せず)。多孔性疎水性層は、電気分解に起因するガスを逃すために設けられるが、これは必須ではない。
【0134】
電極5aは、垂直に配置され、垂直配置されたウェルに浸漬されることで、流体または緩衝液がウェル中に保持される。有利なことに、電気分解に起因して発生する気泡が上方移動し、ウェルから退出し得る。その後、電気インターフェース材料3の層を電極上に堆積させた後、支柱アレイ(図示せず)と共にパターニングする。電気インターフェース材料3の別の層を上部に付加し、導電ボリューム2をパターニングされた空洞として電気インターフェース材料3の2つの層の間に形成する。これら2つの層は、支柱によって間隔を空けて配置される。上側電気インターフェース材料層3上に、より多数の垂直電極を読み出し電極5bとして設けることができる。
【0135】
その後、分離対象となる対象物を装置の上部において導電ボリューム2中に導入し、矢印Fによって示すように空洞を通じて連続的にポンピングする。電界は、流れFに対して垂直方向において1つの空洞から他方の空洞からシフトされ得、その結果、別個の経路に沿って空洞内において移動する対象物の分離が集中的に行われる。
図20(b)の断面図に示すように、サンプルは初期においては、2つの異なる種類AおよびBの対象物を含み得る。それぞれは、矢印AおよびBによって模式的に示すような印加電界に起因する異なる横方向動きを示す。分離された対象物は、導電ボリューム2の下部に設けられた別個のチャンネル中に収集され得る。有利なことに、導電ボリューム2が閉ループ内に無い場合でも、このような装置は連続動作が可能であり、(例えば、調合化学のための)大量のサンプルの分離において極めて有用である。
【0136】
あるいは、電極5aを水平方向に配置してもより。この構成において、装置の側部上に水平ウェルを設ける(この場合、ウェル中の流体が流出するという望ましくない効果が発生する)代わりに、チャンネル状の「長尺ウェル」が設けられる。この「長尺ウェル」は、緩衝液が充填され、いくつかの小型穴がチャンネルに沿って設けられ、気泡用の排気管として機能する。
【0137】
別の例において、導電ボリュームは、「スラブゲル」を含み得る。スラブゲルは、篩マトリックスの実質的な平面領域について一般的に用いられる用語であり、例えばチップ側面上に形成される。この種の構成要素は典型的には、DNAおよびタンパク質分析において用いられる。
【0138】
スラブゲル型配置構成に適用した実施形態を
図21に示す。ここで、平行な直線読み出し電極5bを電気インターフェース材料5bの第1の領域と接触した様態で配置し、電気インターフェース材料5b上において、分離ゲル2の層をスラブゲル型形式で堆積させる。電極は、垂直方向に配置してもよいし、水平方向に配置してもよく、上記したように「長尺ウェル」中に浸漬される。電気インターフェース材料3の第2の領域をスラブゲル2上に堆積させ、別の1組の平行な直線電極を側電気インターフェース材料3と接触した様態で配置して、書き込み電極5aを形成する。もちろん、各組の電極の機能を重複させることで、下側の1組を電界生成器として機能させ、上側の1組を電界測定電極として機能させる。
【0139】
使用時において、被分析物(単数または複数)を含むサンプルをシステムの一端においてスラブゲルへ付加し、電界を必要に応じて付加することで、サンプルに集束させ、サンプルを構成要素に分解する。分離プロセスにおいてにおいて、サンプルは、直線電極に対して垂直方向において(x方向において)移動する。
【0140】
明確さのため、
図22は、その他の装置構成要素が除去された状態のスラブゲル2を示し、分離結果を確認することができる。スラブゲルの方向が
図21に示す方向と異なっている点に留意されたい。ここで、直線電極の位置は、破線5によって示される。3つの別個の「チャンネル」C
1、C
2およびC
3に沿って被分析物を分離して、スラブゲルへ付加される3つのサンプルの初期位置に応じて、バンドAとする。仮想「チャンネル」それぞれの間に物理的障壁を設ける必要は無いが、所望であれば設けてもよい。