特許第6194310号(P6194310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6194310液体クロマトグラフィーに使用されるマルチゾーン熱システムを備えたカラムマネージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194310
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフィーに使用されるマルチゾーン熱システムを備えたカラムマネージャ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/54 20060101AFI20170828BHJP
   G01N 30/30 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   G01N30/54 D
   G01N30/30
【請求項の数】24
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-526203(P2014-526203)
(86)(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公表番号】特表2014-521983(P2014-521983A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012051088
(87)【国際公開番号】WO2013028450
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】61/525,253
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュリーブ,ジョシュア・エイ
(72)【発明者】
【氏名】メイレット,ジョン
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04534941(US,A)
【文献】 特開昭62−261059(JP,A)
【文献】 国際公開第01/067080(WO,A1)
【文献】 特表2007−523351(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/085337(WO,A1)
【文献】 特表2008−509401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィーシステムのカラムマネージャで使用するための熱システムであって、
空間的に分離され個々に制御された複数の熱電チップと、
それぞれが別個の熱ゾーンに位置して、個々に制御された熱電チップの1つにより個々に熱調整され、それぞれが1つまたは複数の液体クロマトグラフィーカラムを保持するような構造である熱伝導性の複数の溝を収容するカラムモジュールと、
空間的に分離された複数の熱ブリッジであって、複数の熱ブリッジのうちの第1の熱ブリッジは熱電チップの1つを複数の溝のうちの第1の溝に熱的に結合させ、複数の熱ブリッジのうちの第2の熱ブリッジは別の熱電チップを複数の溝のうちの第2の溝に熱的に結合させるような熱ブリッジと
を備え、
第1の熱ブリッジが、第2の熱ブリッジと同じ形状および同じサイズを有し、第2の熱ブリッジに対して互いに逆位置にしてカラムモジュールに物理的に接続される、熱システム。
【請求項2】
空間的に分離され個々に制御された複数の熱電チップに熱的に結合され、複数の熱電チップに共有されるヒートシンクと、
ヒートシンクに結合されて、空気をヒートシンクへと移動させるファンと
をさらに備える、請求項1に記載の熱システム。
【請求項3】
隣接する熱電チップ間に配置されて、それぞれの熱電チップを隣接する熱電チップから熱的に隔離する絶縁体をさらに備える、請求項1に記載の熱システム。
【請求項4】
熱電チップの熱的隔離の方向が、熱ゾーンの熱的隔離の方向に対して直角である、請求項3に記載の熱システム。
【請求項5】
それぞれの熱電チップが、熱電チップが熱的に結合される溝をセ氏4度〜90度の温度に個々に熱調整することができる、請求項1に記載の熱システム。
【請求項6】
それぞれの溝の一端の近傍に配置されるカラム溶媒予熱器をさらに備える、請求項1に記載の熱システム。
【請求項7】
それぞれの溝が、水滴を捕捉するために三方が外側シェルに囲まれ、外側シェルは、捕捉した水滴をカラムモジュールの外側に流すためのドレイン管を有する、請求項1に記載の熱システム。
【請求項8】
それぞれの外側シェルが、外側シェルで囲まれた溝の一部を露出させる複数の開口部を有し、それぞれの溝のそれぞれの露出部分は、所定の熱ブリッジが物理的かつ熱的に結合する接触領域を形成し、カラムモジュールは、それぞれの溝の露出部分を除いて全てを覆うパネルを有する、請求項7に記載の熱システム。
【請求項9】
熱ブリッジの1つに熱的に結合されるサーモスタットであって、その熱ブリッジに結合された熱電チップの電気回路に含まれるサーモスタットをさらに備える、請求項1に記載の熱システム。
【請求項10】
液体クロマトグラフィーカラムから送達された溶媒組成物を受け取るカラムマネージャであって、複数の液体クロマトグラフィーカラムのマルチゾーン熱環境を提供する熱システムを含むカラムマネージャ
を備える液体クロマトグラフィーシステムであって、熱システムは、
空間的に分離され個々に制御された複数の熱電チップと、
それぞれが別個の熱ゾーンに位置して、個々に制御された熱電チップの1つにより個々に熱調整され、それぞれが1つまたは複数の液体クロマトグラフィーカラムを保持するような構造である熱伝導性の複数の溝を収容するカラムモジュールと、
空間的に分離された複数の熱ブリッジであって、複数の熱ブリッジのうちの第1の熱ブリッジは熱電チップの1つを複数の溝のうちの第1の溝に熱的に結合させ、複数の熱ブリッジのうちの第2の熱ブリッジは別の熱電チップを複数の溝のうちの第2の溝に熱的に結合させるような熱ブリッジと
を備え、
熱システムの第1の熱ブリッジが、熱システムの第2の熱ブリッジと同じ形状および同じサイズを有し、第2の熱ブリッジに対して互いに逆位置にしてカラムモジュールに物理的に接続される、液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項11】
熱システムが、
空間的に分離され個々に制御された複数の熱電チップに熱的に結合され、複数の熱電チップに共有されるヒートシンクと、
ヒートシンクに結合されて、空気をヒートシンクへと移動させるファンと
をさらに備える、請求項10に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項12】
熱システムが、隣接する熱電チップ間に配置される絶縁体であって、それぞれの熱電チップを隣接する熱電チップから熱的に隔離する絶縁体をさらに備える、請求項10に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項13】
熱電チップの熱的隔離の方向が、熱ゾーンの熱的隔離の方向に対して直角である、請求項12に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項14】
それぞれの熱電チップが、熱電チップが結合される溝をセ氏10度〜90度の温度に個々に熱調整することができる、請求項10に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項15】
熱システムが、それぞれの溝の一端の近傍に配置されるカラム溶媒予熱器をさらに備える、請求項10に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項16】
それぞれの溝が、水滴を捕捉するために三方が外側シェルに囲まれ、外側シェルは、捕捉した水滴をカラムモジュールの外側に流すためのドレイン管を有する、請求項10に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項17】
それぞれの外側シェルが、外側シェルで囲まれた溝の一部を露出させる複数の開口部を有し、それぞれの溝のそれぞれの露出部分は、所定の熱ブリッジが物理的かつ熱的に結合する接触領域を形成し、カラムモジュールは、それぞれの溝の露出部分を除いて全てを覆うパネルを有する、請求項16に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項18】
熱システムが、熱ブリッジの1つに熱的に結合されるサーモスタットであって、その熱ブリッジに結合された熱電チップの電気回路に含まれるサーモスタットをさらに備える、請求項10に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項19】
隣接する熱電チップ間に配置される絶縁体をさらに備える、請求項10に記載の液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項20】
液体クロマトグラフィーカラムのマルチゾーン熱環境を提供する方法であって、
空間的に分離された複数の熱電チップのそれぞれの熱電チップを個々に制御するステップと、
熱的に隔離された隣接する複数のコンパートメントのそれぞれのコンパートメント内に1つまたは複数の液体クロマトグラフィーカラムを設置するステップと、
熱電チップの1つを複数のコンパートメントのうちの第1のコンパートメントに第1の熱ブリッジで物理的かつ熱的に結合させ、別の熱電チップを複数のコンパートメントのうちの第2のコンパートメントに第1の熱ブリッジに対して互いに逆位置の第2の熱ブリッジで物理的かつ熱的に結合させるステップと、
それぞれのコンパートメントを、コンパートメントに熱的に結合された熱電チップを個々に制御することに応じて互いに独立して熱調整するステップと
を含む方法。
【請求項21】
空間的に分離され個々に制御される複数の熱電チップにヒートシンクを共有させるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
それぞれの熱電チップをそれぞれの隣接する熱電チップから熱的に隔離するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
それぞれの熱電チップが、熱電チップが熱的に結合される溝をセ氏4度〜90度の温度に個々に熱調整することができる、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
それぞれのコンパートメントとそのコンパートメントを熱調整する熱電チップとの間の位置の温度を測定するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2011年8月19日に出願された米国特許仮出願第61/525,253号(発明の名称「液体クロマトグラフィーに使用されるマルチゾーン熱システムを備えたカラムマネージャ」)の優先権および利益を主張し、この出願の内容全体が参照によって本願明細書に引用される。
【0002】
本発明は、全般的には、液体クロマトグラフィーに関する。特に、本発明は、液体クロマトグラフィーカラムの熱環境を生成するために、液体クロマトグラフィーシステムに使用されるマルチゾーン熱システムに関する。
【背景技術】
【0003】
クロマトグラフィーは、混合物を成分に分離するための一連の技術である。一般に、液体クロマトグラフィー分析では、ポンプシステムが、液体溶媒(および/または他の流体)の混合物を取り込んで、サンプルが溶媒への注入を待機しているサンプルマネージャに送達する。サンプルとは、分析する物質である。サンプルの例として、ほんの数例を挙げれば、タンパク質の複合混合物、タンパク質前駆体、タンパク質小片、反応生成物、および他の化合物がある。アイソクラティック(isocratic)クロマトグラフィー法では、液体溶媒の組成物は変化しないが、グラジエント(gradient)クロマトグラフィー法では、溶媒組成物は経時変化する。溶媒(および/または他の流体)の混合物中に溶解しているサンプルから成る移動相は、固定相と呼ばれるカラムなどの使用場所に移動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動相をカラムに通過させることで、サンプル中の種々の成分は、異なる速度で互いに分離することにより、異なる時間でカラムから溶出する。検出器は、カラムから分離した成分を受け取って出力を生成し、その出力から被アナライトの同定および量を判断することができる。温度は、分析結果に影響を与える可能性があり、例えば、カラムの分離性能や移動相の粘度などの特性に影響を及ぼす可能性がある。したがって、分析結果の正確度および再現性にとって正確な一定のカラム温度を維持することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、液体クロマトグラフィーシステムのカラムマネージャで使用される熱システムを特徴とする。熱システムは、空間的に分離され個々に制御された複数の熱電チップを備える。カラムモジュールは、熱伝導性の複数の溝を収容している。それぞれの溝は、個々に制御された熱電チップの1つにより個々に熱調整される別個の熱ゾーンに位置する。それぞれの溝は、1つまたは複数の液体クロマトグラフィーカラムを保持するような構造である。空間的に分離される複数の熱ブリッジは、熱電チップの1つを複数の溝のうちの第1の溝に熱的に結合させる第1の熱ブリッジと、
別の熱電チップを複数の溝のうちの第2の溝に熱的に結合させる複数の熱ブリッジのうちの第2の熱ブリッジとを含む。
【0006】
別の態様では、本発明は、液体クロマトグラフィーカラムに送達される溶媒組成物を受け取るカラムマネージャを備えた液体クロマトグラフィーシステムを特徴とする。カラムマネージャは、複数の液体クロマトグラフィーカラムのマルチゾーン熱環境を提供する熱システムを含む。熱システムは、空間的に分離され個々に制御された複数の熱電チップを備える。カラムモジュールは、熱伝導性の複数の溝を収容している。それぞれの溝は、個々に制御された熱電チップの1つにより個々に熱調整される別個の熱ゾーンに位置する。それぞれの溝は、1つまたは複数の液体クロマトグラフィーカラムを保持するような構造である。空間的に分離される複数の熱ブリッジは、熱電チップの1つを複数の溝のうちの第1の溝に熱的に結合させる第1の熱ブリッジと、
別の熱電チップを複数の溝のうちの第2の溝に熱的に結合させる複数の熱ブリッジのうちの第2の熱ブリッジとを含む。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、液体クロマトグラフィーカラムのマルチゾーン熱環境を提供する方法を特徴とする。空間的に分離された複数の熱電チップのそれぞれの熱電チップは、個々に制御される。1つまたは複数のクロマトグラフィーカラムは、カラムモジュールの熱的に隔離された複数の隣接コンパートメントのそれぞれのコンパートメント内に設置される。熱電チップの1つは、複数のコンパートメントのうちの第1のコンパートメントに物理的および熱的に結合され、別の熱電チップは、複数のコンパートメントのうちの第2のコンパートメントに物理的および熱的に結合される。それぞれのコンパートメントは、コンパートメントに熱的に結合された熱電チップを個々に制御することに応じて互いに独立して熱調整される。
【0008】
本発明の上述およびさらに別の利点は、添付図面と併せて以下の説明からより十分に理解されるであろう。種々の図面において、同様の参照番号は同様の構造要素および構造的特徴を示すものとする。図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、本発明の原理を説明することに重点を置くものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カラムマネージャ内に設置されているカラムのマルチゾーン熱環境を提供するための熱システムを備えたカラムマネージャを有する液体クロマトグラフィーシステムの一実施形態の機能ブロック図である。
図2】複数のコンパートメントを有するカラムモジュールを含むカラムマネージャの熱システムの一実施形態の正面図である。
図3】カラムモジュール内の1つのコンパートメントの一実施形態の正面図である。
図4】1つの空のコンパートメントとカラムおよび予熱器が装着された1つのコンパートメントとを有するカラムモジュールの一実施形態の正面図である。
図5】コンパートメントの裏面を示したカラムモジュールの背面図(カラムモジュールのバックパネルを外した状態)である。
図6】カラムモジュールのバックパネルが取り付けられた状態の背面図であり、カラムモジュールのコンパートメントを熱調整する熱電チップにコンパートメントを結合する熱ブリッジを差し込む窓を示した図である。
図7】ヒートシンクとファンとを示したカラムマネージャの背面図である。
図8】カラムモジュールが外された状態のカラムマネージャの正面図であり、ヒートシンクに結合された熱ブリッジを示した図である。
図9図2のラインAA’に沿ったカラムマネージャの上面断面図である。
図10図2のラインBB’に沿ったカラムマネージャの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載されているシステムは、以下で説明するように、液体クロマトグラフィー分析時に、1つまたは複数のカラムの個々に制御されたマルチゾーン熱環境を提供するためのカラムマネージャを含む。カラムおよびカラムに流れ込む液体の温度制御は、一貫した信頼性のある結果を得るためには重要な要因である。これらのシステムの種々の形態は、液体クロマトグラフィー装置、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムおよびUPLC(超高速液体クロマトグラフィー)システムに関する。
【0011】
概要を説明すると、カラムマネージャは、液体クロマトグラフィーカラムのマルチゾーン熱環境を提供する熱システムを備えたカラムモジュールを含む。カラムモジュールは、複数のコンパートメントを有し、それぞれのコンパートメントは1つまたは2つのカラムを保持することができる。さらに、それぞれのコンパートメントは個々に制御された熱ゾーンであり、それぞれの熱ゾーンはそのコンパートメント内の1つまたは2つのカラムの隔離された熱環境である。
【0012】
熱ゾーンの熱調整を行うエンジンは、個々に制御される別個の熱電チップを含み、それぞれの熱ゾーンに対して1つの熱電チップを含む。熱電チップの動作としては、所与の熱ゾーンを加熱もしくは冷却することができる。熱ブリッジは、熱電チップをコンパートメントに熱的に結合させるもので、それぞれの熱ブリッジは、異なる熱電チップを異なるコンパートメントに結合させる。
【0013】
熱電チップは、外部ヒートシンクを共有し、ファンは、外気をヒートシンクに向けて移動させる。内部サーモスタットおよび外部サーモスタットは温度を監視して、過度温度が検出された場合に、熱電チップへの電気を切断することができる。本明細書では個々に制御される2つの別個の熱ゾーンに関して記載されているが、本発明の原理は、3つ以上の熱ゾーンであり、それぞれの熱ゾーンは個々に制御される熱電チップによって熱調整され、別個の熱ブリッジによって熱電チップに結合される。本明細書内で示されている「正面」、「裏面」、「背面」、「裏側」、「上面」、「底面」、「側面」、「左側」、「右側」、「上部」、「下部」、「水平方向」、および「垂直方向」の用語は、これらの原理の説明を簡単にするためのものであり、限定的な意味としてとらえるべきでない。
【0014】
図1は、サンプルを成分に分離するための液体クロマトグラフィーシステム10を示した図である。液体クロマトグラフィーシステム10は、サンプルマネージャ14と流体連通した溶媒送達システム12を含む。一般に、溶媒送達システム12は、溶媒容器と流体連通したポンプ(図示せず)を含み、ポンプは溶媒容器から溶媒を吸引する。溶媒送達システム12は、溶媒混合物をサンプルマネージャ14に送達する。サンプルマネージャ14は、サンプル源18と流体連通し、サンプルマネージャ14はサンプル源18からサンプルを取り出して、溶媒送達システム12から送られた溶媒組成物にサンプルを導入する。
【0015】
サンプルマネージャ14と流体連通しているのは、サンプルマネージャ14からサンプルを含む溶媒組成物を受け取るカラムマネージャ16である。カラムマネージャ16は、溶媒組成物を分離するのに使用する液体クロマトグラフィーカラムを保持し、後述するように、これらのカラムの個々に制御された複数の熱ゾーンを有する熱システム20を含む。一実施形態では、それぞれの熱ゾーンの温度は、4℃〜90℃である。これらの熱ゾーンは、両極端な場合もある。例えば、1つの熱ゾーンを4℃、他の熱ゾーンを90℃にしてもよい。これは、次の稼働のためにカラムを事前調整するために行われる場合がある。溶出物は、分離物を分析するために、カラムマネージャ16から検出器、例えば、質量分析計に移る。一実施形態では、溶媒送達システム12、サンプルマネージャ14、カラムマネージャ16、および検出器は、例えば、Waters Corporation(マサチューセッツ州ミルフォード)製のACQUITY UPLCシステムのような1つの装置に組み込むことができる別個の器具である。
【0016】
図2は、カラムマネージャ16の熱システム20の一実施形態を示した図である。熱システム20は、カラムモジュール42と物理的かつ熱的に結合された加熱器/冷却器モジュール40を含む。加熱器/冷却器モジュール40は、内側(熱環境の内部)と外側(熱環境の外側)とを含む。内側は、空間的に分離され個々に制御された複数の熱電チップ(図9)を含み、これらの熱電チップは絶縁体44に埋め込まれる。絶縁体44は、それぞれのチップの両側を囲撓して、それぞれのチップを互いに熱的に隔離する。加熱器/冷却器モジュール40の外側は、接合されたフィン状のヒートシンク50であって、熱電チップからの熱を伝えるために熱電チップに物理的かつ熱的に結合されたヒートシンク50と、ヒートシンク50のフィン間で(吹き出された、または吸い込まれた)空気を移動させるためのファン54とを含む。電気信号導体48は、ファン54の動作を制御する電気信号を伝送する。
【0017】
一実施形態では、熱電チップはペルティエ素子である。ぺルティエ素子は、電力を使用して、一方の側から他の側へ熱を伝達するヒートポンプとして動作することで素子の両側の温度差を生成する。生成される温度差は、複数の可変要素、すなわち、熱電チップの材料特性、低温側から除去される熱量、チャンバの平均温度、および駆動電流/電圧よって決まる。加熱器/冷却器モジュール40の電力は、熱電チップのサイズに比例する。一実施形態では、それぞれの熱電チップは、4cm×4cm×4mmである。
【0018】
カラムモジュール42は、側壁60−1、60−2(全体として60)、端壁62−1、62−2(全体として62)、後壁64、およびフロントパネル(図8)を有する全体的に長方形のハウジングである。端壁62のスリット66は、マイクロ流体管68の通路になり、マイクロ流体管68は、カラムモジュール42内に設置されたカラムに流体を搬送し、またカラムから流体を搬送する。一実施形態では、カラムモジュール42は、幅が約12インチ、高さが約4インチ、そして深さが約2.25インチである。カラムモジュール42の裏側には、以下で詳述するように、熱電チップをカラムモジュール42に熱的に結合させるために、各熱電チップに対して1つずつの1組の熱ブリッジ(図示せず)がある。
【0019】
カラムモジュール42は、水平方向に積み重ねられた隣接する1組の細長いコンパートメント72−1、72−2(全体として72)を収容する。それぞれのコンパートメント72は溝74を含み、上部のコンパートメント72−1は溝74−1(上部溝とする)を有し、下部のコンパートメント72−2は溝74−2(下部溝とする)を有する。それぞれのコンパートメント内部では、溝74は互いに熱的に隔離され、それぞれの溝は個々に制御された別個の熱ゾーンを占める。コンパートメント72の下端部からは、端壁62−2内の開口部を通るドレイン管70が伸びる。
【0020】
それぞれの溝74は、1つまたは2つのクロマトグラフィーカラムを保持することができる。これらのクロマトグラフィーカラムは、5cm〜15cmの長さにすることができる。それぞれの溝74の両端は、予熱器アセンブリを受承する構造のソケット78を有する。予熱器アセンブリは、液体が溝内に配置されたカラムに移る前に液体を予熱する働きをする。
【0021】
例えば、図2では、下部溝74−2には単一のHPLCカラム76が設置されているが、上部溝74−1は使用されていない。図2ではHPLCカラム76が示されているが、UPLCシステム向けに設計された他の実施形態は、HPLCカラムよりも短い長さで、内のり寸法が狭いUPLCカラムを使用する。カラム76は、溝74−2の端壁62−1に向けて配置される。管68は、端壁62−1内のスリット66を通って下部溝74−2に入り、予熱器アセンブリ58に結合する。予熱器アセンブリ58は、カラム76の一端に結合されて、流体経路が形成され、この経路により管68からの液体がカラム76に入る前に加熱される。管68は、カラム76の他端に結合されて、端壁62−2内の下部スリット66を通って下部溝74−2から出る。カラム76の下流側では、端壁62−1の近くのソケット78には予熱器アセンブリが設置されていない。溝に2つのカラムが端と端とをつなげて設置された構造では、液体がそれぞれのカラムに入る前に液体を加熱するために、溝内のそれぞれのソケット78に予熱器アセンブリが設置されてもよい。これらのカラムの下流側端部に接続された管は、カラムモジュール42の背面を通って溝から出るようにしてもよい。
【0022】
図3は、溝74(カラムが無い状態)と溝の両側に予熱器ソケット78とを含む図2のそれぞれのコンパートメント72の一実施形態を示した図である。それぞれの予熱器ソケット78の背面には、予熱器ソケットを電気コネクタ94に電気的に接続するリボンケーブル90がある。溝74は、後面100および対向側面102−1、102−2(全体として102)を有する。(フロントパネル(図9)は、溝コンパートメント72を囲い、溝74の周囲でしっかりと熱封止を行う4つ目の側面になる)。面100、102は、熱を溝の長さに沿って熱を分散させるために、熱伝導性の高い材料(例えば、アルミニウム)製である。さらに、裏面100は、溝を熱ブリッジ120(図8)に接続する留め具を通す複数の穴104を有する。一部の穴104のみが使用されるが、使用される穴は、溝が接続される熱ブリッジによって決まる。
【0023】
外側シェルは、三方で溝74および予熱器ソケット78を囲み、カラムおよび管からの漏れまたは熱ゾーンの冷却により生じる凝結を捕捉するドリップトレイの働きをする。外側シェルは、各端部の弾性スナップ108(溝の左側のスナップは見えない)によって留められた2つのプラスチック片(106−1、106−2)で形成される。スナップ108は、外側シェルの一方のプラスチック片に含まれ、外側シェルの他方のプラスチック片の縁部にある引っ掛け部に引っ掛ける。外側シェル片106−1、106−2を接続する他の同様のスナップを外側シェルの裏面に備えてもよい。外側シェルの下部シェル片106−2は、液体をコンパートメント72の外側に流すためのドレイン管70を有する。
【0024】
図4は、カラムモジュール42の正面図であり、下部溝74−2にカラム76が設置され、上部溝74−1が使用されていない状態の図である。また、下部コンパートメント72−2の左側の予熱器ソケット78には予熱器アセンブリ58が設置されているが、上部コンパートメント72−1の予熱器ソケット78および下部コンパートメント72−2の右側予熱器ソケット78は空である。空の予熱器ソケット78の中には、設置されている予熱器アセンブリに電力を接続供給するための電気接点112が示されている(下部コンパートメント72−2の右側予熱器ソケット78では、マイクロ流体管68で遮られているために電気接点は見えない)。リボンケーブル90(図3)は、電気接点112と電気コネクタ94(図3)とを電気連通させる。
【0025】
図5は、カラムモジュール42の背面図であり、コンパートメント72−1、72−2の裏面が見えるようにバックパネルが外された状態の図である。裏面のスナップ108は、外側シェルの2つの半片106−1、106−2(図3)を接合するものである。接合された半片は開口部120を形成し、その開口部120からそれぞれの溝74の後面100の裏側が露出している。さらに、予熱器ソケット78の裏側も露出している。
【0026】
図6は、バックパネル130が取り付けられた状態のカラムモジュール42の背面図である。バックパネル130は、2つの主開口部132−1、132−2(全体として132)を有する。2つの主開口部132は斜め向かいにあり、それぞれの開口部は異なる溝の露出後面100の裏側が見える窓を形成し、溝の接触領域を露出させることで熱ブリッジが接触領域に物理的に接続できるようにする。あるいは、主開口部132は、反対の対角線に沿って斜め向かいに配置することができ、主開口部132−1が下部コンパートメント72−2の窓を形成し、主開口部132−2が上部コンパートメント72−1の窓を形成するようにしてもよい。バックパネル130のカバー136は、予熱器ソケット78(図5)および予熱器ソケットに接続されたリボンケーブル90(図3)を覆って保護する。それぞれのカバー136は、1組の副開口部134を有し、それぞれリボンケーブル90を通すことができるサイズである。
【0027】
図7は、空間的に分離された複数の熱伝導性の水平方向フィン138から成るヒートシンク50に結合されたファン54を含む熱システム20の背面図である。ヒートシンク50は、カラムモジュール42のバックパネル130に結合される。ヒートシンク50とバックパネル130との間に配置されるのは、熱ブリッジ(図8)および熱電チップ(図9)を囲撓する絶縁体44である。電気信号導体140は、絶縁体44の側面を通り、熱電チップの1つに電気信号を伝達する。電気信号導体140は、絶縁体44の側面を通って伸びた状態で示されているが、絶縁体44の上面または底面を通って伸びてもよい。これらの電線によって搬送された信号に応じて、熱電チップは、カラムモジュール42に熱を伝える、またはカラムモジュール42から熱を逃がす(すなわち、カラムモジュールを加熱する、または冷却する)ように個々に制御可能である。他の電気信号導体142は、図8に示すように、熱ブリッジに組み込まれた温度センサ(図示せず)に電気的に接続される。電気コネクタ94は、表面カバー136に沿って伸びる。これらの電気コネクタ94はそれぞれ、副開口部134(図6)を通るリボンケーブル90(図3)で接続され、予熱器ソケット78(図5)に結合される。
【0028】
図8は、熱システム20の正面図であり、熱ブリッジ120−1、120−2(全体として120)をより詳細に示すためにカラムモジュール42が外された状態の図である。熱ブリッジ120は、高熱伝導性材料製、例えば、アルミニウム製である。それぞれの熱ブリッジ120は、薄い部分150と厚い部分152とを有する。薄い部分150は、温度センサ156(例えば、サーモスタット)および温度センサ156に接続された電気信号導体142を収容できるサイズおよび形状の切り欠き領域154を有する。この温度センサ156は、熱ブリッジに結合された熱電チップを駆動する電気回路の一部である。温度センサが過度温度を計測した場合には、対応する熱電チップはオフにされる。両方の熱電チップの回路内の別の温度センサ(図示せず)は、ヒートシンク50の外側に結合された状態にある。この温度センサがヒートシンク50で過度温度を計測した場合には、例えば、ファンが故障するので、両方の熱電チップがオフにされる。
【0029】
熱ブリッジ120−1、120−2は、互いにサイズおよび形状が同じであり、ヒートシンク50に取り付けた時に互いに逆位置になる。このように互いに逆位置にすることで、一方の熱ブリッジ120の厚い部分152を(図6の一方の主開口部132を通って)一方の溝に物理的に結合させることができ、他方の熱ブリッジの厚い部分152を(図6の他方の主開口部132を通って)他方の溝に物理的に結合させることができる。厚い部分152はさらに、熱ブリッジ120をカラムモジュール42の溝に物理的に接合してそれらを熱伝導連通させる留め具を受ける1組のねじ穴158を有する。この留め具は、熱ブリッジが付着する溝の後面100(図3)の穴104(図3)の2つを通る。
【0030】
さらに、留め具160は、熱ブリッジ120の四隅をヒートシンク50の熱伝導性サイドパネル162に固定してカラムモジュール42の裏側に差し込まれる。各熱ブリッジ120とサイドパネル162との間に挿置されるのは熱電チップ(図9)であり、それぞれの熱ブリッジは熱電チップと熱連通し、それぞれの熱電チップはヒートシンク50の熱伝導性サイドパネル162と熱連通している。電気信号導体140は、電気信号を絶縁体44に埋め込まれている熱電チップ(図8では見えない)に送る。
【0031】
図9は、図2の断面AA’に沿った上面図である(ここでは、カラムモジュール42はフロントパネル168が取り付けられた状態である)。カラムモジュール42内部の絶縁体層172は、カラムモジュール42の溝74とバックパネル130との間に配置される。絶縁体172内の開口部により、熱ブリッジ120を溝74の後面100の露出部分に直接接触させることができる。
【0032】
この断面は、熱ブリッジ120−1(すなわち、熱ブリッジの厚い部分152)の1つが上部溝74−1の後面100と直接物理的接触かつ熱伝導接触するのを示した図である。他方の熱ブリッジ120−2の薄い部分150は、上部溝74−1まで到達せず、カラムモジュール42のバックパネル130と薄い部分150との間に隙間ができる。さらに、熱ブリッジ120−1は、熱ブリッジ120−1とヒートシンク50との間に挿置された熱電チップと物理的に当接する。この熱電チップ174−1は、ヒートシンク50のサイドパネル162(図8)と直接物理的に接触する。その結果、矢印176で示されるように、熱ブリッジ120−1は、熱電チップ174−1を介して溝74−1からヒートシンク50に熱を伝えることができる熱経路を形成する。
【0033】
他方の熱電チップ174−2の動作が上部溝74−1の温度に与える影響はわずかであり、熱電チップ174−2と上部溝74−1との間に熱ブリッジは存在しない。さらに、熱ブリッジを逆に取り付けているので、熱ブリッジ174−2は、熱電チップ174−2を介して下部溝74−2(図示せず)からヒートシンク50に熱を伝えることができる熱経路を形成する。他方の熱電チップ174−1の動作は下部溝74−2の温度に影響を与えず、熱電チップ174−1と下部溝74−2との間に熱ブリッジは存在しない。
【0034】
図10は、図2の断面BB’に沿った側面図である(同様に、カラムモジュール42はフロントパネル168が取り付けられた状態である)。フロントパネル168は、絶縁体180を有し、絶縁体180が上部コンパートメント72−1および下部コンパートメント72−2の面それぞれに当接することにより、溝74−1、74−2内に設置されているカラム76を個々に制御された熱環境内に閉じ込める。
【0035】
この断面は、熱ブリッジ120−1の厚い部分152が上部溝74−1の後面100と直接物理的接触かつ熱伝導接触した状態を示している。一方、熱ブリッジ120−1の薄い部分150は、バックパネル130から空間的に分離され、下部溝74−2に接触していない。さらに、絶縁層172が、下部溝74−2と熱ブリッジ120−1の薄い部分150との間に挿置されることにより、下部溝74−2と熱ブリッジ120−1の薄い部分150との間で熱が伝達しにくくなる。したがって、熱ブリッジ120−1は、下部溝74−2の温度に影響を与えずに、熱電チップ174−1を介して溝74−1とヒートシンク50との間で熱が交換される経路を形成する。
【0036】
他方の熱ブリッジ120−2(図9)によって行われる熱伝達は、熱ブリッジ120−1に対して互いに逆位置にある他方の熱ブリッジ120−2の厚い部分152が下部溝74−2と物理的接触かつ熱伝導接触し、薄い部分150はバックパネル130から空間的に分離されて上部溝74−1に接触しない状態である以外は、ブリッジ120−1によって行われる熱伝達と同様である。したがって、熱ブリッジ120−2は、上部溝74−1の温度に影響を与えずに、他方の熱電チップ174−2(図9)によってヒートシンク50に熱を伝導する働きをする。
【0037】
本発明は特定の好適な実施形態に関して図示され説明されているが、以下の請求項によって定義された本発明の精神および範囲から逸脱せずに形態や細部の種々の変更が可能であることは当業者によって理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10