特許第6194311号(P6194311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6194311圧力作動式の分割可能フィーチャを有するカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194311
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】圧力作動式の分割可能フィーチャを有するカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   A61M25/00 540
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-527163(P2014-527163)
(86)(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公表番号】特表2014-524333(P2014-524333A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012049858
(87)【国際公開番号】WO2013028348
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】13/216,029
(32)【優先日】2011年8月23日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジー.モールトン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン ジー.ホーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー アール.マクマレイ
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第7144386(US,B2)
【文献】 特表2008−539048(JP,A)
【文献】 特開2007−175297(JP,A)
【文献】 米国特許第6080141(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面と、内面と、近位端部と、遠位端部と、前記近位端部と前記遠位端部との間をカテーテル本体の長手方向軸に沿って延びる管腔と、遠位管腔開口部とを有するカテーテル本体と、
前記遠位端部の一部分を形成するカテーテル先端部であって、前記遠位管腔開口部を含むカテーテル先端部と、
前記カテーテル先端部の壁内に形成された分割可能フィーチャと
を備える液体注入用カテーテルであって、
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体の前記長手方向軸に対してほぼ平行に配向され、前記内面側から前記外面側に向かう方向に向かって先細にされた溝であり、
前記分割可能フィーチャは、1ml/秒以上の高速注入手順中の前記カテーテル先端部の内側管腔圧力の増大に応答して分割されることを特徴とする液体注入用カテーテル。
【請求項2】
前記分割可能フィーチャは、1つまたは複数のスカイブ加工ラインを含むことを特徴とする請求項1に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項3】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体の前記内面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項4】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体の前記外面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項5】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル先端部を複数のフィンガに分けることを特徴とする請求項1に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項6】
前記分割可能フィーチャは、隣り合うフィンガ間に間置された薄いウェビングを備えることを特徴とする請求項5に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項7】
前記分割可能フィーチャは、隣り合うフィンガ間に間置された一連の穿孔開口部を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項8】
前記複数のフィンガの各々は、前記カテーテル本体の前記長手方向軸に対してほぼ平行であることを特徴とする請求項5に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項9】
前記内面は、複数の軸方向の長穴をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項10】
前記内面は、複数の軸方向のリブをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項11】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体が使用されないときに前記フィンガの長さに沿って実質的に接触状態にある2つの対向するスリット表面を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項12】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル先端部の先細にされた部分上に少なくとも部分的に配設されることを特徴とする請求項1に記載の液体注入用カテーテル。
【請求項13】
1ml/秒以上の高速注入手順中のカテーテル先端部の内側管腔圧力の増大に応答して分割される分割可能な静脈内液体注入用カテーテルを製造するための方法であって、
外面と、内面と、近位端部と、遠位端部と、前記近位端部と前記遠位端部との間をカテーテル本体の長手方向軸に沿って延びる管腔と、遠位管腔開口部とを有するカテーテル本体を提供するステップと、
前記遠位端部の一部分を形成するカテーテル先端部を提供するステップであって、前記カテーテル先端部は前記遠位管腔開口部を含む、ステップと、
前記カテーテル先端部の壁内に形成された分割可能フィーチャであって、前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体の前記長手方向軸に対してほぼ平行に配向され、前記内面側から前記外面側に向かう方向に向かって先細にされた溝である、分割可能フィーチャを提供するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記分割可能フィーチャは、1つまたは複数のスカイブ加工ラインを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体の前記内面上に配置されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体の前記外面上に配置されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル先端部を複数のフィンガに分けることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記分割可能フィーチャは、隣り合うフィンガ間に間置された薄いウェビングを備えることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分割可能フィーチャは、隣り合うフィンガ間に間置された一連の穿孔開口部を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
管腔および遠位管腔開口部を有するカテーテル本体であって、前記管腔は、カテーテル本体内をカテーテル本体の長手方向軸に沿って延び、カテーテル本体は、患者の末梢静脈にアクセスするのに十分な切頭長さをさらに有し、14ゲージカテーテルより小さくまたは14ゲージカテーテルと等しくなるようにサイズ設定される、カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位の先細にされた部分を貫通して形成された分割可能フィーチャであって、前記カテーテル本体の前記遠位の先細にされた部分を複数の隣り合って配置されたフィンガに分け、前記複数の隣り合って配置されたフィンガは、互いに対して閉位置および開位置を有し、1ml/秒以上の高速注入中のカテーテル先端部の内側管腔圧力の増大に応答して分割される分割可能フィーチャと
を備え、前記分割可能フィーチャは、前記カテーテル本体の前記長手方向軸に対してほぼ平行に配向され、前記内面側から前記外面側に向かう方向に向かって先細にされた溝であ
ることを特徴とする末梢液体注入用カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
血管アクセス装置は、流体を患者の生体組織に連通させるために使用される。たとえば、カテーテルなどの血管アクセス装置が、生理食塩水、さまざまな薬剤、および/または完全静脈栄養などの流体を患者に注入し、患者から血液を抜き、かつ/または患者の血管系のさまざまなパラメータを監視するために一般的に使用されている。
【0002】
重度外傷、大手術、重度熱傷、ならびに膵炎および糖尿病性ケトアシドーシスなどの特定の疾患状態を含む多様な臨床状況は、広範囲の循環量の枯渇を生み出し得る。この枯渇は、実際の血液損失または内部流体の不均衡から引き起こされ得る。これらの臨床背景では、血液および/または他の流体を患者に急速に注入して深刻な結果を回避することが必要になり得る。
【0003】
加えて、大量の流体を急速に注射する能力は、特定の他の医療手順および診断手順にとって望ましくなり得る。たとえば、一部の診断撮像手順は、初期の診断率を高める目的で、造影剤の増強を利用して病変の顕著性を向上させている。これらの手順は、粘性の造影剤が、専用の「自動注入器」ポンプによって非常に高流量で静脈注射されることを必要とし、それによって、患者の血流内に造影ボーラスまたは造影剤の小さい栓子を確立し、その結果画像品質の増強をもたらす。
【0004】
自動注入手順は、注入システム内に高圧を発生させ、それによって、何らかの専用の血管アクセス装置、延長セット、造影剤移送セット、ポンプシリンジおよびバルクのまたは事前充填された造影剤のシリンジを必要とする。造影剤の濃度(したがって粘性)および注入速度が増大するにつれて、ボーラス密度もまた増大しコンピューター断層撮影(CT)の減衰によってより良好な画像品質をもたらす結果となる。したがって、医療分野における現在の傾向は、造影剤のボーラス濃度および造影剤が患者に注入される速度の両方を増大させることによって造影剤のボーラス密度を増大させることであり、これらすべては、最終的にはシステム圧力の要求事項をより高くする。
【0005】
静脈内注入速度は、概ね999立方センチメートル毎時(cc/hr)までの日常的なものとして、または概ね約999cc/hrから90,000cc/hr(1.5リットル毎分)の間またはそれ以上の急速なものとして規定され得る。粘性造影剤を利用する一部の診断手順に関しては、十分なボーラス濃度を確実にするには約1から10ml/秒の注射速度が必要とされる。この注射速度での粘性媒体の自動注射は、注入システム内に大きな背圧を生み出し、その結果、一般的には注入システムの構成要素の不具合をもたらす。
【0006】
従来、急速注入療法は、蠕動ポンプなどのポンプに取り付けられた静脈内カテーテルおよび流体供給源の使用を伴う。患者は、カテーテルの先端部分が患者の脈管構造に挿入され、ポンプがカテーテルを通して患者の静脈内に流体を押し入れるときに注入される。現在の急速注入療法は、従来の日常的注入速度で使用されるものと同一の形状を有するカテーテルおよびカテーテル先端部を利用している。これらの形状は、先細のカテーテル先端部を含むことができ、それにより、流体は、カテーテル先端部内を移動し、そこを出て患者の脈管構造内に入るときに加速されるようになる。注入される流体のこの加速は、いくつかの理由のために望ましいものではない。
【0007】
たとえば、先細にされたカテーテルは、カテーテル組立体の残りの部分に対してより大きい背圧をもたらす結果となる。この影響は、注入ポンプの圧送容量を制約する共に、注入システムの構成要素および副構成要素の構造的完全性が限定されるために望ましくないものである。たとえば、背圧が大きくなり過ぎる場合、ポンプの効率が低下することがあり、注入システム内の特定のシールまたは連結部が破損することがある。加えて、カテーテル先端部内の流体加速は、カテーテル先端部を患者の静脈内で移動させ、それによってカテーテルを変位させ、かつ/または患者の静脈および/または注入部位に損傷を与え得る反跳力をもたらす結果となる。流体加速はまた、カテーテルの先端部における注入液の噴出速度も増大させる。いくつかの手順においては、流体噴出は、患者の静脈壁を穿孔し、それによって溢出または浸潤に至る恐れがある。これは患者に対して不快および苦痛を与えるだけでなく、浸潤は、患者が必要とされる療法を受けることを妨げることもある。
【0008】
望ましくない背圧および注入された流体の加速の増大に打ち勝つために、一部の血管内システムは、静脈内カテーテルの先端部分内およびその周りに設けられた拡散穴の配列を含む。一般に、拡散穴は、カテーテル先端部開口部の表面積を増大させ、それによってカテーテル先端部開口部における流体圧力を低下させる。しかし、カテーテルの先端部にまたはその近くに拡散穴を加えることはまた、カテーテルの座屈抵抗を低減させ、それによって挿入中、カテーテル先端部をより潰れやすくする。その結果、拡散器穴を加えることは、カテーテル挿入の不具合および患者に対する肉体的苦痛をもたらし得る。さらに、拡散器穴を加えることは、カテーテルに非連続外面をもたらし、この非連続外面は、カテーテルがそこを通って挿入される患者の皮膚の開口部および/または静脈上にぶつかるまたは引っかかることがある。これもまた、カテーテル挿入の不具合ならびに/または患者に対する肉体的苦痛および/または肉体的損傷をもたらす結果となり得る。
【0009】
したがって、急速注入手順中に注入液の出口速度を低減する方法およびシステムが現在存在しているが、課題も依然として存在する。したがって、現在の技術を向上させる、またはさらには他の技術と置き換えることが、当技術分野における改良となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第13/053,495号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のシステムおよび方法は、現在利用可能な注入システムおよび方法によって完全に解決されていない当技術分野における問題および必要性に応えて開発された。したがって、これらのシステム、構成要素および方法は、より安全でより効率的な急速注入手順を実現するために開発される。
【0012】
本発明の1つの態様は、注入液を患者の血管系に急速に送達することができる血管注入システムと組み合わせて使用するための改良された血管アクセス装置を提供する。本発明の一部の実施形態は、以下の通りに構成され得る。血管アクセス装置は、患者の血管系にアクセスするように構成された静脈内カテーテルを含むことができる。静脈内カテーテルは、その中を長手方向軸に沿って遠位管腔開口部まで延びる管腔を有することができる。先端部分は、先細にされた部分を含むことができ、この場合、先端部の外面および内面は、カテーテルの遠位端部に向かって先細になる。静脈内カテーテルの先細にされた部分は、カテーテル本体の壁を貫通して形成された分割可能フィーチャを含むように改変され得、この場合、カテーテルの管腔上で流体圧力の増大にさらされたとき、分割可能フィーチャは有効にされ、それによってカテーテルの遠位開口部の有効領域を増大させる。
【0013】
本発明の別の態様では、カテーテルは、管腔および遠位管腔開口部を有するカテーテル本体を有する。管腔は、カテーテル本体内をカテーテル本体の長手方向軸に沿って遠位管腔開口部まで延びることができる。カテーテルはまた、カテーテル本体の遠位の先細にされた部分を貫通して形成された分割可能フィーチャを有することもできる。一部の実施においては、分割可能フィーチャは、一連の穿孔穴である。他の実施においては、分割可能フィーチャはスカイブ加工(skive)ラインである。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、末梢カテーテルは、管腔および遠位管腔開口部を有するカテーテル本体を含む。管腔は、カテーテル本体内をカテーテル本体の長手方向軸に沿って延びる。本発明の一部の実施においては、カテーテル本体は、患者の末梢静脈にアクセスするのに十分な切頭(truncated)長さを有し、カテーテル本体は、14ゲージカテーテルより小さくまたは14ゲージカテーテルと等しくなるようにサイズ設定される。分割可能フィーチャは、カテーテル本体の遠位の先細にされた部分を貫通して形成される。
【0015】
さらに、本発明の一部の実施においては、分割可能フィーチャを有するカテーテルを製造するための方法が提供される。方法のステップは、外面と、内面と、近位端部と、遠位端部と、近位端部と遠位端部の間をカテーテル本体の長手方向軸に沿って延びる管腔と、遠位管腔開口部とを有するカテーテル本体を提供するステップと、遠位端部の一部分を形成するカテーテル先端部を提供するステップであって、カテーテル先端部は遠位管腔開口部を含む、ステップと、カテーテル先端部の壁内に形成された分割可能フィーチャを提供するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の上記で引用された、また他の特徴および利点が得られる方法が容易に理解されるようにするため、上記で簡潔に説明された本発明のより具体的な説明が、付属の図に例示されたその特有の実施形態を参照することによってなされる。これらの図は、本発明の典型的な実施形態を表すにすぎず、したがって本発明の範囲を限定すると考えられるものではない。
【0017】
図1】本発明の代表的な実施形態による注入システムの斜視図である。
図2】本発明の代表的な実施形態による、遠位端部のスリットを備えたカテーテルの詳細な斜視図である。
図3】本発明の代表的な実施形態による、スリットを有するカテーテル先端部、およびその中を延びる導入針の斜視図である。
図4】本発明の代表的な実施形態による、流体注入前のカニューレおよびカテーテルの端部断面図である。
図5】本発明の代表的な実施形態による、流体注入後のカテーテル先端部の側部斜視図である。
図6】本発明の代表的な実施形態による、図5のカテーテル先端部の端部断面図である。
図7】本発明の代表的な実施形態による、流体注入前のカニューレおよびカテーテルの側部斜視図である。
図8】本発明の代表的な実施形態による、図7のカテーテル先端部の断面図である。
図9】本発明の代表的な実施形態による、カニューレの取り外し後および流体注入後の図8のカテーテル先端部の端部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、図を参照することによって最適に理解され、図中、同じ参照番号は、同一のまたは機能的に類似する要素を示す。本明細書における図において全般的に説明され例示される本発明の構成要素は、多種多様な異なる構成で配置され設計され得ることが容易に理解される。したがって、図に表される以下のより詳細な説明は、特許請求される本発明の範囲を限定するようには意図されず、本発明の現在好ましい実施形態を表すにすぎない。
【0019】
本発明のシステムおよび方法は、全般的に、注入液を患者の血管系に急速に送達することができる血管注入システムと組み合わせて使用するように設計される。ここで図1を参照すれば、本発明の代表的な実施形態による血管注入システム100が示されている。このタイプの注入システムは通常、2000psi(14MPa)までの内部圧力で作動するように構成される。多くのシステムは、75(0.52MPa)から2000psiまでの範囲で作動するが、このタイプの特有の装置は、100、200、および300psi(7、14、21MPa)で作動する。血管注入システム100は、コイル式延長セット130を介して注入器ポンプ120に結合された血管アクセス装置112を備える。一部の実施形態では、注入システム100は、血管アクセス装置112と注入器ポンプ120の間に配置された安全装置140をさらに備える。一部の実施形態では、安全装置140は、注入システム100の流路を自動的に閉塞するために設けられ、それによって、下流側の注入構成要素における過剰な圧力上昇を防止する。
【0020】
注入器ポンプ120は、全般的に、血液、薬剤、CTスキャン造影剤などの注入液を患者の血管系に急速に送達するように構成された流体圧送機器を備える。望ましい注入液はまた、医療手順および診断手順の必要に応じてしばしば高い粘性のさまざまな流体を含むこともできる。一部の実施形態では、注入器ポンプ120は、注入液を約10mL/時から1500mL/分以上の流量で患者に送達することができる自動注入器を備える。一部の実施形態では、高注入流量は、患者の血管系内における注入液のボーラス密度の補強を必要とする医療手順に望ましい。たとえば、診断撮像手順における傾向は、造影剤の補強を利用することであり、これは、より粘性のある造影剤をより高流量で患者に押し入れることを必要とし、それによって、画像品質の向上をもたらす結果となる。したがって、一部の実施形態では、注入器ポンプ120および血管アクセス装置112は、所望の注入流量を適合させて達成するように選択される。
【0021】
コイル式延長セット130は、全般的に、注入液を注入器ポンプ120から血管アクセス装置112に送達するように構成された可撓性または半可撓性のポリマーチュービングを備える。延長セット130は、延長セット130を下流側の装置112または140に連結するための第1のカップラを含む。延長セット130はまた、延長セット130を注入器ポンプ120に連結するための第2のカップラ134も含む。延長セット130のコイル形状は、全般的に、注入手順中のセット130の望ましくないよじれまたは閉塞を防止する。しかし、当業者は、延長セット130が、注入液を注入器ポンプ120から血管アクセス装置112を介して患者に効率的に送達することができる任意の形状を含むことができることを理解するであろう。一部の実施形態では、延長セット130は、シリンジと血管アクセス装置の間に結合され、それによって注入液は手動で患者に注入される。他の実施形態では、注入システムは、本発明により、シリンジおよび血管アクセス装置のみを備える。
【0022】
血管アクセス装置112は、全般的に、末梢静脈内カテーテル114を備える。本発明による末梢静脈内カテーテル114は、全般的に、小さい末梢静脈内に挿入される短いまたは切頭型のカテーテル(通常13mmから52mm)を備える。そのようなカテーテルは、全般的に、約14ゲージカテーテルまたはそれより小さい直径を含む。末梢静脈内カテーテル114は通常、一時的に配置するように設計される。カテーテル114の短い長さは、カテーテルの好都合な配置を容易にするが、これらを、患者の移動および/または注入手順中に遭遇する反跳力によって静脈からの早期のはずれを生じやすくする。さらに、正中または中央末梢カテーテルとは異なり、本発明による末梢静脈カテーテル114は、先細にされたカテーテル先端部146を備えて、カテーテル114の挿入を補助するように設計された導入針(図示せず)と共に使用することに対応する。
【0023】
カテーテル先端部146の先細にされた外面は、カテーテル先端部開口部の狭小直径とカテーテルチュービングのより大きい直径との間の滑らかな移行を実現することができる。したがって、カテーテル114の先端部146が患者の静脈内に導入されるとき、先細にされた外面146は、アクセス穴からのカテーテル114の簡単な挿入を容易にする。先細にされた内面は、全般的に、カテーテルの管腔内に収容された導入針の外面と緊密に接触するために設けられる。導入針は、カテーテル先端部がそこから挿入される患者の静脈内に至る開口部を作り出すために設けられる。先細にされた内面は、カテーテルの内面と針の外面との間の緊密なシールを確実にする。カテーテルの配置後、導入針は取り外される。
【0024】
導入針は通常、針の先端部が先細にされた先端部146を超えて延びるようにカテーテル114から挿入される。先細にされた先端部146の先細にされた形状は、導入針の外面に緊密に適合する。先端部146の外面および内面の両方は、カテーテル114の遠位端部に向かって先細にされる。先端部146の外面は先細にされて、導入針のより小さいプロファイルからカテーテル外径のより大きいプロファイルへの滑らかな移行を実現する。導入針の患者の静脈への挿入は、静脈内に至る開口部をもたらし、この開口部を通ってカテーテル114の先細にされた先端部146が挿入される。先端部146の先細にされた外面は、カテーテル114の開口部への容易な挿入を可能にする。末梢静脈内カテーテル114が患者の静脈に挿入されると、導入針(図示せず)は、カテーテル114の管腔から取り外されてカテーテル114を介した注入を可能にする。
【0025】
一部の実施形態では、先端部146の内面は先細にされて、カテーテル先端部146の内面と導入針の外面(図示せず)との間のしっかりとしたシールを実現する。加えて、先端部146の先細にされた内面は、注入液がカテーテル先端部146に近付きそこを流れ抜けるときにカテーテルの管腔内の注入液の加速を引き起こす。注入手順後、末梢静脈内カテーテル114は、静脈から簡単に取り外され廃棄される。
【0026】
望まれる注入液は通常、カテーテル114に結合された静脈内チュービング116のセクションを介してカテーテル114に送達される。一部の実施形態では、y−アダプタ118が、カテーテル114とは反対側のチュービング116の端部に結合され、血管アクセス装置112を血管注入システム100の残りの部分に結合することを可能にする。当業者は、医療専門業および研究専門業において一般的に使用されるような、利用可能な血管アクセス装置112の可能な変更形態および特有の特徴を理解するであろう。たとえば、一部の実施形態では、本発明によるカテーテル114は、所望に応じて、追加のアクセス部位、クランプ、平行な静脈内ライン、弁、カップラ、導入針、コーティング、および/または材料を含んで、特有の用途に適合させることができる。
【0027】
ここで図2を参照すれば、本発明の代表的な実施形態によるカテーテル214が示されている。カテーテル214は、全般的に、管状本体部材220を収容するように構成されたカテーテルアダプタ218を備える。カテーテルアダプタ218は、静脈内チュービング216のセクションに結合された入口ポート230をさらに含む。静脈内チュービング216のセクションは、図示するように、また上記の図1に関連して説明されたように、上流側の注入構成要素にさらに結合される。
【0028】
カテーテルアダプタ218は、静脈内チュービング216内の注入液を管状本体部材220を介して患者に送達することを容易にする。カテーテルアダプタ218の内側管腔は、静脈内チュービング216の内側管腔および管状本体部材220の内側管腔の両方と流体連通する。一部の実施形態では、カテーテルアダプタ218は、アクセスアダプタ222をさらに備える。アクセスアダプタ222は、全般的に、カテーテルアダプタ218の内側管腔に直接アクセスすることを可能にするために設けられる。一部の実施形態では、アクセスアダプタ222は、針およびシリンジを介してアクセスされて、注入液を管状本体部材220を介して患者に送達する。他の実施形態では、導入針またはガイドワイヤが、アクセスアダプタ222に挿入され、管状本体部材220の内側管腔内を前進される。一部の実施形態では、導入針またはガイドワイヤ(図示せず)の先端部分は、管状本体部材220の先端部分240を超えて延びる。したがって、導入針またはガイドワイヤの先端部分は、患者の血管系内に至る開口部をもたらすことができ、この開口部に管状本体部材220は挿入される。管状本体部材220を患者の静脈内に配置した後、導入針またはガイドワイヤはアクセスアダプタ222から取り外され、それによって管状本体部材220と、カテーテルアダプタ218と、静脈内チュービング216との間の流体連通を確立する。
【0029】
一部の実施形態では、管状本体部材220は、静脈内カテーテル(またはカテーテル本体)である。静脈内カテーテル214は、全般的に、当技術分野で一般的に使用されるように、可撓性または半可撓性の生体適合性材料を含む。一部の実施形態では、静脈内カテーテル214は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレンなどのポリマー材料を含む。他の実施形態では、静脈内カテーテル214は、外科用鋼、チタン、コバルト鋼などの金属材料を含む。
【0030】
管状本体部材220は、任意の長さを含むことができ、この場合この長さは、カテーテル214の意図される用途に基づいて選択される。一部の用途では、管状本体部材220は、患者の末梢静脈内に挿入される。他の用途では、管状本体部材220は、患者の中央静脈内に挿入される。
【0031】
急速注入用途では、管状本体部材220の先端部分240は、分割可能フィーチャ250を含むように改変される。分割可能フィーチャ250は、全般的に、注入液が高圧でカテーテル214を通って注入されるときにカテーテル先端部240を開き、または分割することを可能にする。したがって、カテーテル先端部240の先細にされた内面および外面形状は膨張され、それによって、そうでなければ管状本体部材の遠位開口部242を出る流速を増大させるであろういかなる形状的拘束も解消する。したがって、一部の実施形態に関しては、分割可能フィーチャ250を開くのに必要とされる力は、高圧の注入手順中に注入液によってカテーテル先端部240上に及ぼされる力より小さい。
【0032】
一部の実施形態では、分割可能フィーチャ250は、図2に示されるように、患者の脈管構造に挿入される前の閉位置を含む。分割可能フィーチャ250の閉位置は、上記で論じられたように、静脈カテーテル214の効果的な挿入を可能にする。特に、閉位置は、図3に示されるように、遠位開口部342と導入針304の外面との間に精密公差が維持されることを確実にする。したがって、カテーテル先端部340は、導入針によってもたらされた開口部を介して患者の脈管構造に容易に挿入されることが可能である。さらに、大きな拡散穴が無いことにより、管状本体320には連続外面がもたらされ、それによってカテーテル挿入中、患者の皮膚または他の組織上への管状本体320のいかなるぶつかりまたは引っかかりも防止する。さらに、大きな拡散穴が無いことより、カテーテル先端部340の構造的剛性が維持され、それによってカテーテル挿入手順中のカテーテル先端部340のいかなる望ましくない潰れまたは圧壊も防止する。
【0033】
図3および4を引き続き参照すると、一部の実施形態では、分割可能フィーチャ350は、カテーテル先端部340を複数の隣り合うフィンガまたはセクション343に分ける。図示するように閉位置にあるとき、複数の隣り合うフィンガ343は、分割可能フィーチャ350を介して連結され、それによって閉じられたカテーテル先端部340を形成する。一部の実施形態では、分割可能フィーチャ350は、隣り合うフィンガ343間に間置された一連の穿孔開口部または穿孔穴を含む。隣り合う近位と遠位の開口部の間の空間352は、カテーテル先端部の材料を隣接する近位開口部と遠位開口部の間で引き裂かれまたは分離することを容易にするように選択される。したがって、カテーテル本体管腔322内の圧力の増大にさらされたとき、分割可能フィーチャ350は分離し、それによって図5および6に示されるように、複数の分離された隣り合うフィンガ343を形成する開位置をとる。
【0034】
一部の実施形態では、分割可能フィーチャ350は、軸方向に配向され、したがってカテーテル314の長手方向軸305にほぼ平行である。開位置では、複数の分離されたフィンガ343は、注入液324がそこを通って管腔322を出る複数の延長されたスリットまたは先細にされた開口部をもたらすことによって遠位カテーテル開口部342の有効面積を拡大する。分割可能フィーチャ350が分離されると、先端部340のいかなる形状的または構造的拘束も解消される。したがって、注入液324によって引き起こされる内側管腔圧力は、低減されかつ/または解消され、それによって管状本体320およびカテーテル先端部340を通る注入液324の低圧の層流を生み出す。
【0035】
一部の実施形態では、分割可能フィーチャ450は、図7〜9に示されるように、カテーテル414の管状本体420の先端部分440の内面上に形成された複数のスカイブ加工ラインを含む。一部の実施形態では、分割可能フィーチャ450は、カテーテル先端部440を複数の隣り合うフィンガまたはセクション443に分けるために設けられる。分割可能フィーチャ450をカテーテル先端部440の内面上に配置することにより、先端部440は連続外面を維持し、それによって、カテーテルの患者の脈管構造への挿入中、患者の皮膚または組織上でのカテーテル先端部440のいかなるぶつかりまたは引っかかりも防止する。しかし、一部の実施形態では、分割可能フィーチャ450は、先端部分440の外面上に形成された複数のスカイブ加工ラインを含む。さらに、一部の実施形態では、分割可能フィーチャ450は、先端部分440の外面か内面、または外面および内面の両方上に形成された1つまたは複数のスカイブ加工ラインを含む。
【0036】
図7および8に示すように閉位置にあるとき、複数の隣り合うフィンガ443は、分割可能フィーチャ450を介して連結され、それによって閉じられたカテーテル先端部440を形成する。したがって、分割可能フィーチャ450は、軸方向に配向された、したがってカテーテル414の長手方向軸405に対してほぼ平行に複数の溝452を形成する。一部の実施形態では、溝452の軸方向の配向は、カテーテル管腔422を通る注入液のより層流の流れを容易にする複数の軸方向に配向されたリブまたはスプライン454をもたらす。さらに、一部の実施形態では、溝452は、カテーテル先端部440の有効内側直径の増大を実現する。これらの特徴の各々は、単独でまたは組み合わせて注入液の乱流を低減し、それによって層流れを促し、注入液の有効流量を増大させる。
【0037】
各々の溝452の頂点は、カテーテル材料の薄いウェビングを含み、このウェビングは、高圧のおよび/または高速の注入手順中、カテーテル本体管腔422内での圧力の増大に応答して倒されるように選択された厚さを有する。倒されたとき、分割可能フィーチャ450は、カテーテル先端部440を複数の分離された隣り合うフィンガ443に分け、それによって、図9に示されるように、注入液424がそこを通って管腔422を出る複数の延長されたスリットまたは先細にされた開口部446をもたらすことにより、遠位カテーテル開口部442の有効表面積を拡大する。
【0038】
本発明の分割可能フィーチャは、内側管腔圧力の増大にさらされたときに遠位端部開口部の有効面積を膨張させることによってカテーテル先端部の拘束構造をそれによって解消する、任意の構造、形状、機械的機能、または他の機構を含むことができる。たとえば、本発明による分割可能フィーチャは、参照によって本明細書に組み込まれる、特許文献1に教示されるような非線形の形状を含むことができる。
【0039】
本発明による分割可能フィーチャは、カテーテル本体および/またはカテーテル先端部内に、注入手順中、内側管腔圧力の増大に応答して倒されるように設計された工学的な脆弱点を含むことができる。一部の実施形態では、カテーテルは、単一の分割可能フィーチャを含む。他の実施形態では、カテーテルは、2つまたはそれ以上の分割可能フィーチャを含む。したがって、内側管腔圧力の増大にさらされたとき、本発明の一部のカテーテルは、単一の分割可能フィーチャが倒される単一のフィンガをもたらし、それによって、注入液がそこを通ってカテーテルの管腔を出る単一の延長されたスリットまたは先細にされた開口部を形成する。他の実施形態では、内側管腔圧力の増大にさらされたとき、本発明の一部のカテーテルは、2つまたはそれ以上の分割可能フィーチャが倒される2つまたはそれ以上の隣り合うフィンガをもたらし、それによって注入液がそこを通ってカテーテルの管腔を出る2つまたはそれ以上の延長されたスリットまたは先細にされた開口部を形成する。
【0040】
通常、本発明の分割可能フィーチャは、カテーテルの患者の脈管構造への挿入中、カテーテル先端部の閉位置を維持するのに十分な構造的完全性を含むように設計される。特に、患者への挿入中、カテーテル先端部上に及ぼされた圧縮力に耐えることができる本発明の分割可能フィーチャが、提供される。しかし、本発明の分割可能フィーチャは、高圧が掛けられた状態下でカテーテルの先端部分内の内側管腔圧力の増大にさらされたときに倒されるようにさらに設計される。
【0041】
本発明による分割可能フィーチャを備えるカテーテルは、当技術分野における任意の知られている方法によって提供され得る。一部の実施形態では、本発明の分割可能フィーチャは、先端部形成プロセス中、分割可能フィーチャをカテーテルチュービングにかたどることによってもたらされる。たとえば、本発明の分割可能フィーチャは、射出成形プロセス、機械的プロセスの使用によって、および/またはレーザの使用を介してもたらされ得る。特に、分割可能なフィーチャを作製するための所望の形状は、カテーテル装置を生産および/または製造するために使用される、チッピングマンドレル、チッピングダイ、またはその両方内に、ならびにコアピン、型穴、またはその両方内に含まれ得る。
【0042】
本発明は、本明細書において広く説明され、特許請求されるその構造、方法、または他の本質的特徴から逸脱することなく他の特有の形態で具現化され得る。説明された実施形態は、あらゆる点において制限的ではなく例示的としてのみ考えられるものとする。本発明の範囲は、したがって、前述の説明ではなく添付された特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と等価な意味および範囲に入るすべての変更は、本範囲内に包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9