特許第6194382号(P6194382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6194382飛行障害表示装置、飛行障害表示方法及び飛行障害表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6194382
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】飛行障害表示装置、飛行障害表示方法及び飛行障害表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/00 20060101AFI20170828BHJP
   G08G 5/04 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B64D45/00 A
   G08G5/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-55163(P2016-55163)
(22)【出願日】2016年3月18日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小野村 陽一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸英
(72)【発明者】
【氏名】板橋 由布
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/186989(WO,A1)
【文献】 特開平11−296800(JP,A)
【文献】 特開平9−304526(JP,A)
【文献】 特開2003−132499(JP,A)
【文献】 特開2016−85613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 45/00
B64D 47/00
G08G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の飛行障害となり得る飛行障害要因を表示する飛行障害表示装置であって、
表示手段と、
前記飛行障害要因に関する前記航空機の外囲情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記外囲情報に基づいて、前記飛行障害要因の空間範囲を算出する範囲算出手段と、
前記範囲算出手段により算出された前記飛行障害要因の空間範囲のうち、前記航空機の飛行方位ベクトルを含む平面と交差する飛行障害断面を算出する断面算出手段と、
前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を前記表示手段に立体的に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする飛行障害表示装置。
【請求項2】
前記情報取得手段が取得する前記外囲情報は、将来の予測情報を含み、
前記範囲算出手段及び前記断面算出手段は、現在から所定の将来時刻までの各時刻における前記飛行障害要因の空間範囲及び前記飛行障害断面を算出し、
前記表示制御手段は、現在から将来の所定時刻までのうちの所定時刻における前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1に記載の飛行障害表示装置。
【請求項3】
前記範囲算出手段は、前記飛行障害要因の空間範囲を、前記航空機の飛行に及ぼす危険度に応じて複数の領域に区分し、
前記表示制御手段は、前記複数の領域を互いに異なる表示態様で表しつつ、前記飛行障害要因の空間範囲を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の飛行障害表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記航空機の飛行方位ベクトルを含む平面を、前記航空機の進行方向とその直交方向とに沿った複数の格子線で格子状に区画した状態で前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の飛行障害表示装置。
【請求項5】
前記表示手段は、三次元画像を表示可能なものであり、
前記表示制御手段は、前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を含む表示内容を、三次元画像として前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の飛行障害表示装置。
【請求項6】
前記飛行障害要因が、他機、悪天候及び飛行禁止空域のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の飛行障害表示装置。
【請求項7】
航空機の飛行障害となり得る飛行障害要因を表示手段に表示する飛行障害表示方法であって、
飛行障害表示装置が、
前記飛行障害要因に関する前記航空機の外囲情報を取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程で取得された前記外囲情報に基づいて、前記飛行障害要因の空間範囲を算出する範囲算出工程と、
前記範囲算出工程で算出された前記飛行障害要因の空間範囲のうち、前記航空機の飛行方位ベクトルを含む平面と交差する飛行障害断面を算出する断面算出工程と、
前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を前記表示手段に立体的に表示させる表示制御工程と、
実行することを特徴とする飛行障害表示方法。
【請求項8】
航空機の飛行障害となり得る飛行障害要因を表示する飛行障害表示プログラムであって、
表示手段を備える飛行障害表示装置を、
前記飛行障害要因に関する前記航空機の外囲情報を取得する情報取得手段
前記情報取得手段により取得された前記外囲情報に基づいて、前記飛行障害要因の空間範囲を算出する範囲算出手段
前記範囲算出手段により算出された前記飛行障害要因の空間範囲のうち、前記航空機の飛行方位ベクトルを含む平面と交差する飛行障害断面を算出する断面算出手段
前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を前記表示手段に立体的に表示させる表示制御手段
として機能させることを特徴とする飛行障害表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の飛行障害となり得る飛行障害要因を表示する技術に関し、特に、パイロットによる飛行障害要因の認識性を向上させるのに有用な技術である。
【背景技術】
【0002】
航空機の操縦においては、他機や悪天候などの飛行障害要因を適切に回避できるように、当該飛行障害要因をパイロットに認識させる必要がある。
飛行障害要因をパイロットに認識させるための表示手法としては、飛行障害要因を水平面及び鉛直面に投影してこれら2つの投影画面を表示する手法や、飛行障害要因を奥行きのある斜影図として立体的に表示させる手法(例えば、特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−312900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の手法ではパイロットが2つの投影画面を見て総合的に判断する必要があり、後者の手法では単純な斜影表示のためにパイロットが距離感を掴みにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、パイロットによる飛行障害要因の認識性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、航空機の飛行障害となり得る飛行障害要因を表示する飛行障害表示装置であって、
表示手段と、
前記飛行障害要因に関する前記航空機の外囲情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記外囲情報に基づいて、前記飛行障害要因の空間範囲を算出する範囲算出手段と、
前記範囲算出手段により算出された前記飛行障害要因の空間範囲のうち、前記航空機の飛行方位ベクトルを含む平面と交差する飛行障害断面を算出する断面算出手段と、
前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を前記表示手段に立体的に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の飛行障害表示装置において、
前記情報取得手段が取得する前記外囲情報は、将来の予測情報を含み、
前記範囲算出手段及び前記断面算出手段は、現在から所定の将来時刻までの各時刻における前記飛行障害要因の空間範囲及び前記飛行障害断面を算出し、
前記表示制御手段は、現在から将来の所定時刻までのうちの所定時刻における前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の飛行障害表示装置において、
前記範囲算出手段は、前記飛行障害要因の空間範囲を、前記航空機の飛行に及ぼす危険度に応じて複数の領域に区分し、
前記表示制御手段は、前記複数の領域を互いに異なる表示態様で表しつつ、前記飛行障害要因の空間範囲を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飛行障害表示装置において、
前記表示制御手段は、前記航空機の飛行方位ベクトルを含む平面を、前記航空機の進行方向とその直交方向とに沿った複数の格子線で格子状に区画した状態で前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飛行障害表示装置において、
前記表示手段は、三次元画像を表示可能なものであり、
前記表示制御手段は、前記航空機の自機位置、前記飛行障害要因の空間範囲、前記飛行障害断面を含む表示内容を、三次元画像として前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の飛行障害表示装置において、
前記飛行障害要因が、他機、悪天候及び飛行禁止空域のうちの少なくとも1つであることを特徴とする。
【0012】
請求項7及び請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の飛行障害表示装置と同様の特徴を具備する飛行障害表示方法及び飛行障害表示プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、航空機の自機位置と、飛行障害要因の空間範囲と、この飛行障害要因の空間範囲のうち航空機の飛行方位ベクトルを含む平面と交差する飛行障害断面とが、ディスプレイなどの表示手段に立体的に表示される。
このように飛行障害断面を表示させることにより、距離感のある画像を表示することができ、パイロットは表示手段を見ただけで、自機から飛行障害要因までの距離や飛行障害要因の大きさなどを容易に把握することができる。
したがって、パイロットによる飛行障害要因の認識性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態における航空機の概略構成を示すブロック図である。
図2】飛行障害表示処理でのデータの流れを示すデータフロー図である。
図3】飛行障害表示処理でのディスプレイの表示例を示す図である。
図4】飛行障害表示処理でのディスプレイの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る飛行障害表示装置を航空機1に適用した場合の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
[構成]
まず、本実施形態における航空機1の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、航空機1の概略構成を示すブロック図である。
航空機1は、本発明に係る飛行障害表示装置を具備することにより、自機の飛行障害となり得る飛行障害要因をパイロットに認識しやすく表示可能なものである。
具体的には、図1に示すように、航空機1は、飛行機構11と、操作部12と、表示部13と、機体センサー14と、通信部15と、記憶部16と、制御部17とを備えて構成されている。
【0017】
このうち、飛行機構11は、航空機1を飛行させるための機構であり、推進力を発生させる内燃機関(例えばジェットエンジン)や舵面駆動用のアクチュエータ等から構成されている。
操作部12は、パイロットに操作される操縦桿や各種操作キー等を備えており、これら操縦桿や各種操作キー等の操作状態に対応する信号を制御部17に出力する。
【0018】
表示部13は、制御部17から入力される表示信号等に基づいて各種情報をパイロットに知らせるものであり、機体の各種情報を示す計器類(図示省略)のほか、航空機1の外囲状況を表示するディスプレイ130を備えている。
ディスプレイ130は、本実施形態においては、三次元画像(ステレオ視画像)を表示可能なディスプレイである。
【0019】
機体センサー14は、航空機1の飛行状態を検出したり、航空機1の外囲状況に関する情報(以下、「外囲情報」という)を取得したりするための各種のセンサーであり、レーダー,映像センサー(カメラ),ジャイロセンサー,速度センサー,GPS(Global Positioning System)、TCAS(Traffic alert and Collision Avoidance System:空中衝突防止装置)等を含んで構成されている。これらの機体センサー14は、制御部17からの制御指令に基づいて各種情報を取得し、その信号を制御部17へ出力する。
【0020】
通信部15は、地上(海上及び空中を含む)の管制設備や他の航空機との間で通信を行い、互いに各種信号を送受信可能であるほか、通信ネットワークに接続して各種情報を入手可能なものである。
また、通信部15は、識別子、現在位置、高度、対気速度等の各種情報を含んだADS−B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast:放送型自動従属監視)信号を送受信するようになっている。
【0021】
記憶部16は、航空機1の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに、作業領域としても機能するメモリである。本実施形態においては、記憶部16は、飛行障害表示プログラム160を記憶している。
飛行障害表示プログラム160は、後述の飛行障害表示処理を制御部17に実行させるためのプログラムである。
【0022】
制御部17は、航空機1の各部を中央制御する。具体的に、制御部17は、飛行機構11を駆動制御して航空機1の飛行を制御したり、記憶部16に記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
また、制御部17は、後述するように、飛行障害表示処理における各種の機能部として、第一飛行障害範囲評価器171、第二飛行障害範囲評価器172、第一飛行障害断面算出器173、第二飛行障害断面算出器174、飛行禁止断面算出器175、表示対象・時間断面設定器176、三次元画像生成器177を備えている(図2参照)。
【0023】
[動作]
続いて、飛行障害表示処理を実行する際の航空機1の動作について説明する。
図2は、飛行障害表示処理でのデータの流れを示すデータフロー図であり、図3及び図4は、飛行障害表示処理におけるディスプレイ130での表示例を示す図である。
【0024】
飛行障害表示処理は、航空機1の飛行障害となり得る飛行障害要因をディスプレイ130に表示する処理であり、本実施形態においては飛行中に随時実行される処理である。この飛行障害表示処理は、例えばパイロットの操作等により当該飛行障害表示処理の実行指示が入力されたときに、制御部17が記憶部16から飛行障害表示プログラム160を読み出して展開することで実行される。
なお、本実施形態では、飛行障害要因として、他機AP、悪天候BW、飛行禁止空域NZの3つが表示可能であるものとする(図3(a)〜(c)参照)。またここでは、航空機1は飛行中であるものとする。
【0025】
飛行障害表示処理が実行されると、まず制御部17は、当該飛行障害表示処理に必要な情報を取得する。
具体的に、制御部17は、図2に示すように、機体センサー14により自機(航空機1)の飛行情報(速度ベクトルV)を取得するとともに、3つの飛行障害要因(他機AP、悪天候BW、飛行禁止空域NZ)に関する自機の外囲情報を通信部15により取得し、これらを記憶部16に記憶させる。
より詳しくは、制御部17は、3つの飛行障害要因に関する外囲情報として、ADS−B信号から他機情報S1(他機の位置、速度、飛行方位等)を取得し、気象台等から得られる数値気象予報やSIGMET(significant meteorological information:悪天情報)から悪天候情報S2(悪天候の範囲、悪天度合い等)を取得し、NOTAM(航空官署等から得られる航空関係の各種情報)等から飛行禁止空域情報S3(飛行禁止範囲、有効時間等)を取得する。このとき、いずれの外囲情報についても、現在の情報は勿論のこと、それぞれ所定時間間隔かつ所定時間後までの予測情報も得られる。
なお、各飛行障害要因に関する外囲情報は、必要なものを取得できるのであればその取得手段は特に限定されず、例えば機体センサー14により他機情報S1や悪天候情報S2が取得されることとしてもよいし、予め記憶部16に入力(記憶)されていることなどとしてもよい。
【0026】
次に、制御部17は、各飛行障害要因の空間範囲(飛行障害範囲)を求め、その三次元モデルを生成する。
ここでは、制御部17は、第一飛行障害範囲評価器171により、各他機APの飛行障害範囲R1(図3(a)参照)を他機情報S1に基づいて算出するとともに、第二飛行障害範囲評価器172により、各悪天候BWの飛行障害範囲R2(図3(b)参照)を悪天候情報S2に基づいて算出する。制御部17は、これらの飛行障害範囲R1,R2を、現在から所定の将来時間までの各時刻(各時間断面)について算出する。
なお、飛行禁止空域NZの空間範囲に関しては、飛行禁止空域情報S3に飛行禁止範囲とその有効時間の情報が含まれているため、算出を要しない。
【0027】
具体的に、第一飛行障害範囲評価器171は、各他機APが、或る時刻から所定時間の範囲で飛行可能性のある空間範囲を、当該時刻における他機APの飛行障害範囲R1として算出する。これにより、他機APの飛行障害範囲R1として、当該他機APの位置を頂点とし、その進行方向を中心軸とする円錐形の空間範囲が求められる。
またこのとき、第一飛行障害範囲評価器171は、各他機APの飛行障害範囲R1を、当該他機APの飛行可能性の度合い(つまり、当該他機APが航空機1の飛行に及ぼす危険度)に応じて、複数(図3(a)では3つ)の領域R1aに区分する。
【0028】
一方、第二飛行障害範囲評価器172は、各悪天候BWが自機の飛行に影響を及ぼす空間範囲を、当該悪天候BWの飛行障害範囲R2として算出する。
またこのとき、第二飛行障害範囲評価器172は、各悪天候BWの飛行障害範囲R2を、その悪天度合い(つまり、当該悪天候BWが航空機1の飛行に及ぼす危険度)に応じて、複数(図3(b)では3つ)の領域R2aに区分する。
【0029】
次に、制御部17は、各飛行障害範囲のうち、航空機1の飛行方位ベクトルを含む自機飛行平面F(図3参照)と交差する飛行障害断面を算出する。
具体的に、制御部17は、第一飛行障害断面算出器173により、各他機APの飛行障害範囲R1のうち、自機飛行平面Fと交差する他機APの飛行障害断面C1を、自機の速度ベクトルVと他機APの飛行障害範囲R1とに基づいて算出する。
また、制御部17は、第二飛行障害断面算出器174により、各悪天候BWの飛行障害範囲R2のうち、自機飛行平面Fと交差する悪天候BWの飛行障害断面C2を、自機の速度ベクトルVと悪天候BWの飛行障害範囲R2とに基づいて算出する。
また、制御部17は、飛行禁止断面算出器175により、飛行禁止空域NZの空間範囲のうち、自機飛行平面Fと交わる飛行禁止断面C3を、自機の速度ベクトルVと飛行禁止空域情報S3とに基づいて算出する。
制御部17は、これらの飛行障害断面C1〜C3を、現在から所定の将来時間までの各時刻(各時間断面)について算出する。このとき、将来時刻における自機の速度ベクトルVについては、航空機1の飛行予定情報から予測する。
【0030】
次に、制御部17は、パイロット又は操作員による操作部12の入力操作に基づいて、表示部13に表示させる飛行障害要因の種別と時刻(時間断面)とを、表示対象・時間断面設定器176により設定する。
具体的に、ここでは、他機AP、悪天候BW、飛行禁止空域NZのうちの少なくとも1つの飛行障害要因と、現在から所定の将来時間までのうちの時刻とが設定される。
【0031】
次に、制御部17は、設定された表示内容をディスプレイ130に表示させるための三次元画像(ステレオ視画像)データDを、三次元画像生成器177により生成する。
具体的に、三次元画像生成器177は、表示設定された時刻及び飛行障害要因の飛行障害範囲及び飛行障害断面と、当該時刻における航空機1の自機位置及び自機飛行平面Fとの三次元画像データDを生成する。
このとき、他機APの飛行障害範囲R1及び悪天候BWの飛行障害範囲R2については、危険度の高い領域R1a,R2aほど濃い色となるように、複数の領域R1a,R2aが互いに異なる色で表されるようにする。但し、複数の領域R1a,R2aは互いに異なる表示態様で表されれば色が同じでもよく、例えば目の細かさが異なるドット模様などで表してもよい。
また、自機飛行平面Fについては、平面内が自機の進行方向とその直交方向に沿った所定間隔の複数の格子線で格子状に区画され、当該複数の格子線のみで表現される。さらに、航空機1の自機位置は、その進行方向が分かるように、例えば「△」マークなどで表示されるようにする。
【0032】
そして、制御部17が、生成された三次元画像データDを表示部13のディスプレイ130に出力することにより、航空機1の外囲状況が三次元画像として当該ディスプレイ130に立体的に表示される。
これにより、例えば表示させる飛行障害要因として他機APのみが設定されていた場合には、図3(a)に示すように、航空機1の自機位置と、各他機APの飛行障害範囲R1と、自機飛行平面Fと、これらの交差部分である他機APの飛行障害断面C1とが三次元表示される。このとき、飛行障害断面C1は、飛行障害範囲R1内の複数の領域R1aを跨ぐ境界が判別可能なように、当該境界が強調表示されることが好ましい。
また、表示させる飛行障害要因として悪天候BWが設定されていた場合には、図3(b)に示すように、航空機1の自機位置と、悪天候BWの飛行障害範囲R2と、自機飛行平面Fと、悪天候BWの飛行障害断面C2とが同様に表示され、飛行禁止空域NZが設定されていた場合には、図3(c)に示すように、航空機1の自機位置と、飛行禁止空域NZの飛行禁止範囲と、自機飛行平面Fと、飛行禁止断面C3とが同様に表示される。
さらに、他機AP、悪天候BW及び飛行禁止空域NZの3つの飛行障害要因全てが表示設定されていた場合には、図4に示すように、航空機1の自機位置や自機飛行平面Fを共通のものとして、これら3つの飛行障害要因それぞれの飛行障害範囲及び飛行障害断面が同時に表示される。
【0033】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、航空機1の自機位置と、飛行障害要因の空間範囲(飛行障害範囲)と、この飛行障害範囲のうち自機飛行平面Fと交差する飛行障害断面とが、ディスプレイ130に立体的に表示される。
このように飛行障害断面を表示させることにより、距離感のある画像を表示することができ、パイロットはディスプレイ130を見ただけで、自機から飛行障害要因までの距離や飛行障害要因の大きさなどを容易に把握することができる。
したがって、パイロットによる飛行障害要因の認識性を向上させることができる。
【0034】
また、将来時刻における航空機1の自機位置、飛行障害要因の空間範囲、飛行障害断面をディスプレイ130に表示可能であるので、将来的に起こり得る状況をパイロットに認識させ、例えば飛行障害要因に対する自機の回避飛行などを速やかに行わせることができる。
【0035】
また、他機APや悪天候BWの飛行障害範囲R1,R2が危険度に応じた複数の領域R1a,R2aに区分され、これら複数の領域R1a,R2aが互いに異なる表示態様でディスプレイ130に表示される。
これにより、他機APや悪天候BWが自機の飛行に及ぼす危険度を、より正確にパイロットに認識させることができる。
【0036】
また、航空機1の飛行方位ベクトルを含む自機飛行平面Fが、航空機1の進行方向とその直交方向とに沿った複数の格子線で格子状に区画された状態で、ディスプレイ130に表示される。
これにより、パイロットは自機飛行平面F上の格子線を目盛として、ディスプレイ130上での距離感を容易に把握することができる。
【0037】
また、航空機1の自機位置、飛行障害要因の空間範囲、飛行障害断面を含む表示内容が、三次元画像(ステレオ視画像)としてディスプレイ130に表示されるので、パイロットはディスプレイ130上での距離感をさらに容易に把握することができる。
【0038】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、ディスプレイ130が三次元画像(ステレオ視画像)を表示可能な三次元ディスプレイであることとしたが、当該ディスプレイ130は外囲状況を立体的に表示可能なものであればよい。また、ディスプレイ130を三次元画像が表示可能なものとした場合でも、三次元ディスプレイでなく、例えばヘッドマウントディスプレイなどとしてもよい。
【0040】
また、ディスプレイ130に表示可能な飛行障害要因は、他機AP、悪天候BW、飛行禁止空域NZの3つに限定されない。例えば航空機1の飛行高度が低いときに、山などの地形や地上設備がディスプレイ130に表示されることなどとしてもよい。
【0041】
また、本発明に係る飛行障害表示装置は、航空機1に搭載されていなくともよく、例えば管制設備などの地上設備に設けられるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 航空機
13 表示部
130 ディスプレイ(表示手段)
14 機体センサー
15 通信部
16 記憶部
160 飛行障害表示プログラム
17 制御部
AP 他機(飛行障害要因)
R1 飛行障害範囲
R1a 領域
C1 飛行障害断面
BW 悪天候(飛行障害要因)
R2 飛行障害範囲
R2a 領域
C2 飛行障害断面
NZ 飛行禁止空域(飛行障害要因)
C3 飛行禁止断面
F 自機飛行平面
S1 他機情報
S2 悪天候情報
S3 飛行禁止空域情報
【要約】
【課題】パイロットによる飛行障害要因の認識性を向上させる。
【解決手段】航空機1は、ディスプレイ130と、飛行障害要因に関する当該航空機1の外囲情報を取得する機体センサー14及び通信部15と、制御部17とを備える。制御部17は、取得された外囲情報に基づいて、飛行障害要因の空間範囲である飛行障害範囲を算出し、算出された飛行障害範囲のうち、航空機1の飛行方位ベクトルを含む自機飛行平面と交差する飛行障害断面を算出し、航空機1の自機位置、飛行障害範囲、飛行障害断面をディスプレイ130に立体的に表示させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4