特許第6194411号(P6194411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6194411
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】加工用ノズルおよび光加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/144 20140101AFI20170828BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20170828BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20170828BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20170828BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20170828BHJP
   B29C 67/00 20170101ALI20170828BHJP
   B22F 3/105 20060101ALN20170828BHJP
   B22F 3/16 20060101ALN20170828BHJP
【FI】
   B23K26/144
   B23K26/21 Z
   B23K26/34
   B23K15/00 501B
   B33Y30/00
   B29C67/00
   !B22F3/105
   !B22F3/16
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-510843(P2016-510843)
(86)(22)【出願日】2015年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2015081726
【審査請求日】2016年2月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 経済産業省「産業技術開発(次世代産業用三次元造形システム技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】津野 聡
(72)【発明者】
【氏名】笹木 裕司
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−000775(JP,A)
【文献】 特表2002−519200(JP,A)
【文献】 特開平01−232024(JP,A)
【文献】 特開2003−340583(JP,A)
【文献】 実開昭60−166474(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B29C 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を通過させる光線経路を有し、加工材料を含む流体を射出口から射出する加工用ノズルであって、
前記光が通過する光線経路の外側に配置され、前記流体を供給する供給管と、
前記流体を前記供給管から前記射出口に向けて供給する、全長が同じ第1、第2分岐管と、
を含み、
前記第1分岐管は、
第1形状を有する第1屈曲部を前記流体の上流側に含み、
第2形状を有する第2屈曲部を前記流体の下流側に含み、
前記第2分岐管は、
前記第1形状を有する第3屈曲部を前記流体の上流側に含み、
前記第2形状を有する第4屈曲部を前記流体の下流側に含み、
前記第1屈曲部および前記第3屈曲部は、第1曲率半径と第1長さとを有し、
前記第2屈曲部および前記第4屈曲部は、第2曲率半径と第2長さとを有し、
前記第1分岐管と前記第2分岐管は、前記供給管から流体が流入する流入口からの流路に沿った距離sのうち、少なくとも一つの距離が等しい位置における方向ベクトル
【数1】
【数2】
が互いに異なり、
かつ、任意の前記距離sにおいて、
方向ベクトルの絶対値の変化が等しい
【数3】
加工用ノズル。
【請求項2】
前記第1分岐管および前記第2分岐管の下流側の終端の位置は、前記光線経路を中心として回転対称に配置された請求項1に記載の加工用ノズル。
【請求項3】
前記光線経路を内包する内側筒体と、
前記内側筒体を内包する外側筒体と、
をさらに備え、
前記第1、第2分岐管の下流端が、前記内側筒体と前記外側筒体とで形成される流路に接続された請求項1または2に記載の加工用ノズル。
【請求項4】
前記第1、第2分岐管の下流端が、前記加工面に向けて開口した請求項1乃至のいずれか1項に記載の加工用ノズル。
【請求項5】
前記加工用ノズルは、奇数の分岐管を備える請求項1乃至のいずれか1項に記載の加工用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工面に光を照射し、その照射部に加工材料を含む流体を噴射して造形する加工用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、非特許文献1には、外部で3分岐された粉体流をノズルの外側から流入させる光加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.aichi-sangyo.co.jp/products/trumpf/WorkingHead.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の技術では、3分岐された粉体流がノズルに至るまでの粉体流路をほぼ等コンダクタンスにするために、粉体流路を一定以上確保する必要がある。
【0005】
したがって、分岐箇所は、ノズルから離れた位置になってしまい、全体としての装置構成が上下方向に大型化しやすかった。そこで、分岐箇所をノズル近くに配置しても、その分岐箇所からノズルまでの粉体流路を等コンダクタンスにできる構成が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る加工用ノズルは、
光源からの光を通過させる光線経路を有し、加工材料を含む流体を射出口から射出する
加工用ノズルであって、
前記光が通過する光線経路の外側に配置され、前記流体を供給する供給管と、
前記流体を前記供給管から前記射出口に向けて供給する、全長が同じ第1、第2分岐管
と、
を含み、
前記第1分岐管は、
第1形状を有する第1屈曲部を前記流体の上流側に含み、
第2形状を有する第2屈曲部を前記流体の下流側に含み、
前記第2分岐管は、
前記第1形状を有する第3屈曲部を前記流体の上流側に含み、
前記第2形状を有する第4屈曲部を前記流体の下流側に含み、
前記第1屈曲部および前記第3屈曲部は、第1曲率半径と第1長さとを有し、
前記第2屈曲部および前記第4屈曲部は、第2曲率半径と第2長さとを有し、
前記第1分岐管と前記第2分岐管は、前記供給管から流体が流入する流入口からの流路
に沿った距離sのうち、少なくとも一つの距離が等しい位置における方向ベクトル
【数1】
【数2】
が互いに異なり、
かつ、任意の前記距離sにおいて、
方向ベクトルの絶対値の変化が等しい
【数3】
加工用ノズル。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る光加工装置は、
上記加工用ノズルを用いた。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分岐箇所をノズル近くに配置し、かつ分岐箇所からノズルまでの各粉体流路を等コンダクタンスにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルの全体構成を示す概略斜視図である。
図1B】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルの全体構成を示す他の概略斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルの構成を示す概略底面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルが備える分岐経路の構成パーツの一例を説明する図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルが備える分岐経路の構成パーツのパーツ仕様の一例を説明する図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルが備える分岐経路の構成パーツの組み合わせ一例を説明する図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルが備える分岐経路の構成を示す概略斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルが備える分岐経路の構成を示す概略上面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る光加工装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての加工用ノズルについて、図1A乃至図4を用いて説明する。図1Aは、本実施形態に係る加工用ノズル100の全体構成を示す概略斜視図であり、図1Bは、本実施形態に係る加工用ノズル100の全体構成を示す他の概略斜視図である。また、図2は、本実施形態に係る加工用ノズル100の構成を説明する概略底面図である。
【0015】
加工用ノズル100は、光加工装置の加工用ヘッドの先端部に取り付けられ、加工点181に対して3次元造形物などの材料である粉体を含む粉体流を供給する部材である。加工用ノズル100を取り付けられた光加工装置の加工用ヘッドは、加工点181に向けて光を集光して加工点181を溶融し、加工点181に粉体流170に含まれる粉体材料を供給し、3次元造形物の造形や肉盛溶接などを行う。ここで、粉体流は、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム、窒素など希ガス)に金属粉体などを混入させたものである。ただし、これに限るものではなく、水や液体窒素などの液状の流体に金属粉体や樹脂などの材料を混入させたものでもよい。
【0016】
図1に示したように、加工用ノズル100は、供給管101と、分岐経路102A、102Bと、分岐経路103とを備える。供給管101および分岐経路102A、102B、103は管状のパイプとなっている。ただし、各分岐路は管状に限らず、金属や樹脂などの部材に空隙あるいは空孔を設けた流路でよい。以下では、それらを総称してパイプと呼ぶ。
【0017】
分岐経路102A、分岐経路102Bおよび分岐経路103は、全長が同じである。分岐路102Aは、分岐部110との接合部において直線部分を有している。この直線部はなくてもよいが、直線部を備えることにより、流体が分岐部110で分岐された直後に乱れるのを抑える効果がある。ここで、供給管101を上流とし、流体が射出口141に向けて流れる方向を下流側と定義する。分岐経路102Aは、上流側から下流側に向かって、複数のパイプ形状で構成されている。ここで、パイプ形状とは、パイプに流体を流したときの軌跡、つまり流体の流線のことを言う。以下で、分岐路102Aの上流側から構成を説明する。まず、流線が加工面にいったん近づいて遠ざかるような、下に向いた半円形状のパイプ形状部分(パーツ121)を備える。次に、流線が加工面からいったん遠ざかって近づくような上に向いた半円形状のパイプ形状部分(パール121)と接合部123で接続する。そして、上に向いた半円形状のパイプ形状部分(パーツ121)を経て、流線が中心角90°となる円弧形状(1/4円形状)のパイプ形状部分(パーツ122)と接合部124で接続する。以上で述べたパイプ形状は、半円形状(パーツ121)と1/4円形状(パーツ122)のみであったが、パイプ形状はこれに限らない。つまり、パイプ形状はどのような曲線でも構わない。
【0018】
同様に、分岐経路102Bおよび分岐経路103も、上流側から下流側に向かって、まず、下に向いた半円形状のパイプ形状部部分(パーツ121)を経て、上に向いた半円形状のパイプ形状部分(パーツ121)と接合部123、133で接続する。そして、上に向いた半円形状のパイプ形状部分(パーツ121)を経て、1/4円形状のパイプ形状部分(パーツ122)と接合部124、134で接続する。
【0019】
分岐経路102Aと分岐経路102Bと分岐経路103とは、各パイプ形状部分同士の継ぎ目において、その接続する向きが異なっている。ただし、各分岐部102A、102B、103は、全長が同じであり、各分岐部を構成する複数のパイプ形状も上流側から逐次的(シーケンシャル)に同じとなっている。
【0020】
供給管101は、粉体流の供給源である粉体の貯留タンク(不図示)などから粉体流の供給を受け、供給管101に流入し、供給管101内を流れた粉体流は、その後、分岐部110へと進入する。分岐部110へと進入した粉体流は、分岐部110内で、3つに分かれ、3つに分岐された粉体流はそれぞれ、分岐経路102A、102B、103へと進入する。
【0021】
そして、3つの分岐経路102A、102B、103へと進入した粉体流は、各分岐経路102A、102B、103内を通過し、ノズル筐体140へと導かれ、ノズル筐体140内へと進入する。
【0022】
ノズル筐体140内に進入した粉体流は、ノズル筐体140の内部に設けられたスリット(不図示)を通過し、先端の射出口141からノズル筐体140の外部へと射出される。なお、スリットは、光線経路160を内包する、同軸に配置された内側筒体と外側筒体との間隙で形成される。各筒体は、光線経路160に沿って先細りする形状であってもよい。例えば、円錐形状でよく、この場合、スリットは光線経路160(あるいはノズル筐体140)に直交する断面において円環状の断面を有することになる。この円環状の断面は、光線経路160(あるいはノズル筐体140)に対して等方的である。このように、先細りする形状とすることで、光線経路160に沿って加工面へと粉体材料を収束できるという効果がある。また、このスリットは光線経路160(あるいはノズル筐体140)に対して等方的であるため、流体もこのスリットに等方的に流入させることにより流体のばらつきを低減することができ、加工面における粉体の収束性が高まる。つまり、流体の流速あるいは流量を、光線経路160(あるいはノズル筐体140)に対して等方的にすることにより、粉体の収束性を高めることができる。
【0023】
3つの分岐経路102A、102B、103がノズル140に接合する部分は、中心軸180に対して回転対称となるように配置されている。ここで、回転対称とは、対象物を回転軸まわりに回転させた場合に、回転角が360°未満でもとの形状と一致することをいう。なお、本実施形態においては、分岐経路は3つ、つまり、3分岐となっているが、分岐経路の分岐数はこれには限られない。なお、分岐経路の分岐数は、奇数であっても、偶数であってもよい。また、光線経路160とノズル筐体140に設けられたスリットも中心軸180に対して回転対称に配置される。このように両者を中心軸180に対して同軸に配置した場合、加工面における光線の集光点と粉体の収束点とを一致させることができる。これにより、粉体の利用効率が向上するという効果がある。
【0024】
図2に示したように、分岐経路102Aと分岐経路102Bとは、中心軸180を含む面に対して反転対称の形状となっているが、分岐経路102Aと分岐経路103とは互いに異なる形状をしている。同様に、分岐経路102Bと分岐経路103とは互いに異なる形状をしている。
【0025】
次に、分岐経路102A、102B、103の形状について説明する。なお、ここで、各流路の流入口と流出口とは、粉体流170の流れに対して上流側を流入口とし、下流側を流出口としている。粉体流が供給管101の流入口(入口部分)から分岐経路102Aあるいは102Bあるいは103の経路上の任意の位置(点、場所)までの距離をs(経路距離)とする。また、その位置における分岐経路102Aあるいは102Bあるいは103の方向ベクトルを、
【数1】
とする。ここで、ベクトルの方向は上流から下流に向かう方向とする。
【0026】
このとき、経路距離sにおける分岐経路102Aあるいは102Bあるいは103の曲率Kは、
【数2】
となる。
【0027】
そして、例えば、分岐経路102Aの経路距離sにおける方向ベクトルを
【数3】
とし、分岐経路103あるいは分岐経路102Bの経路距離sおける方向ベクトルを
【数4】
とすると、分岐経路102Aと分岐経路103、あるいは分岐経路102Aと分岐経路102Bとは、形状が異なるので、
【数5】
を満たす経路距離sが少なくとも一つ存在する。また、任意の経路距離sにおいて、同時に、
【数6】
を満たす。なお、分岐経路102A、分岐経路102Bおよび分岐経路103の全長は、全て同じである。以上で述べた条件より、式(2)と式(3)とを同時に満たす、少なくとも一つの経路距離sが存在することになる。
【0028】
なお、分岐経路102A、分岐経路102Bおよび分岐経路103が、接合点で接続されたパーツで作成された場合、接合点までの経路距離sにおいても、上記式(2)および式(3)が成立するように各パーツが相対的に回転して接合される。
【0029】
このような条件で、各分岐経路102A、102B、103を形成すれば、分岐部110からノズル筐体140への流入口(入口)に至るまでの分岐経路のコンダクタンス、すなわち、各分岐経路102A、102B、103のコンダクタンスを等しくすることができる。なぜならば、式(3)が成立するため、各分岐経路の任意の経路距離sにおいて曲率が等しくなる。分岐経路を流れる流体の流速は、分岐経路の曲率に依存する。それゆえ、分岐部110で等分岐された流体は、各分岐経路の任意の経路距離sにおいて互いに流速が等しくなる。さらに、各分岐経路の流線方向に直交する断面積が等しければ、それぞれの流体の流量も等しくできる。
【0030】
次に、粉体流が供給管101から供給され、射出口141から射出されるまでの流れについて説明する。
【0031】
粉体流は、供給管101の流入口(入口)から供給管101内へ流入され、分岐部110において、3つに分岐される。分岐部110は回転対称な形状をしており、たとえば円筒形状の筐体を有している。この分岐部110は、供給管101から伸びた流路が内部で3分岐されるような3回転対称の流路を備えている。このとき、3つの分岐経路102A、102B、103への流入口が、分岐部110の回転対称軸に対して回転対称に配置されているので、分岐部110において粉体流を均等に3分岐することができる。
【0032】
これに対して、3つの分岐経路102A、102B、103が同じ形状の場合は、分岐経路102A、102B、103の流出口において、各分岐経路の終端部を中心軸180に対して回転対称に配置することができない。
【0033】
従って、少なくとも1つの組み合わせの分岐経路の形状が異なる必要がある。つまり、分岐経路102A、分岐経路102B、分岐経路103のうち、少なくとも一つの組み合わせに対して上記式(2)が成立する必要がある。
【0034】
分岐経路102A、102B、103はそれぞれ、任意の経路距離sにおいて曲率が等しく、式(3)が成立する。これにより、各分岐経路102A、102B、103の任意の経路距離sにおける流速を互いに等しくすることができる。つまり、各分岐経路102A、102B、103の終端部における流速を等しくすることができる。したがって、ノズル筐体140内での粉体流を光線経路160に対して等方化することができ、流速の分岐ばらつきが低減し、加工点181における粉体流の粉体収束性が向上する。つまり、ノズル筐体140内に設けられた、光線経路160に対して等方的なスリットに対し、等方的に流体を流入させることができるため、粉体収束性を高めることができる。さらに、分岐経路102A、102B、103の任意の経路距離sにおいて、流線方向に直交する断面積を等しくすることにより、それぞれ分岐経路における流体の流量も等しくできる。これにより、流量の分岐ばらつきも低減させることができ、加工点181における粉体流の粉体収束性が向上する。
【0035】
すなわち、分岐経路102Aと、分岐経路102Bと、分岐経路103とは、互いに形状が異なっている。それゆえ、分岐部110が中心軸180上になく、中心軸180から離れた位置に配置されていても、その分岐部110と接続される3つの分岐経路102A、102B、103は、終端部(流出口、出口、分岐経路の下流端)、つまり、ノズル筐体140に接続する部分において、分岐経路の流出口を中心軸180に対して回転対称となるように配置することができる。
【0036】
これにより、粉体流をノズル筐体140およびその中心軸180に対して等方的に流入させることができる。したがって、ノズル筐体140内において、粉体流が等方化され、粉体流を3分岐したことによる分岐ばらつきが低減し、加工点181における粉体収束性が向上する。
【0037】
また、分岐経路の数は3つであり、奇数であるので、ノズル筐体140に流入する粉体流は、ノズル筐体140内において互いに正面からぶつかりあうことがない。よって、乱流の発生を低減でき、粉体収束性を向上させることができる。
【0038】
光線は、不図示の光学系から照射され、光線経路160を通過して、加工点181や加工点181を含む所定面積の領域に集光される。そして、光線経路160に沿って、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム、窒素などの希ガス)も流しており、加工点181の酸化を防止したり、加工点181から飛散するヒュームなどの異物が加工用ノズル100の内部へ混入したりするのを防止する。
【0039】
図1Bは、本実施形態に係る加工用ノズル100の全体構成を示す他の概略斜視図であり、分岐経路102A、102B、103が一体成形された実施形態である。なお、図1Bにおいて、図1Aと同様の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明は省略する。
【0040】
図3は、本実施形態に係る加工用ノズル100が備える分岐経路の構成パーツの一例を説明する図である。分岐経路102A、102B、103のそれぞれは、同図に示したパーツ122、121を組み合わせることにより構成される。例えば、分岐経路102A(102B)は、1/4円管の部材であるパーツ122と、半円管の部材であるパーツ121との組み合わせから構成される。具体的には、分岐経路102A(102B)は、パーツ121、パーツ121、パーツ122の順番に、これらのパーツを連結することにより製造できる。分岐管103も同じ順番でパーツ122、121を連結することにより製造できる。ただし、分岐経路102A、102B、分岐経路103はそれぞれ、パーツ122、121同士の継ぎ目における継ぎ目角度が異なっている。すなわち、あるパーツから次のパーツへと継がる部分である継ぎ目において、継ぎ目は同じであるが、両者の相対位置が異なっている。また、継ぎ目角度は、継ぎ目を含む平面の法線を軸とし、その軸に対するパーツの相対的な回転角度を意味する。
【0041】
なお、パーツ同士の継ぎ目に直線管を設けてもよい。このように、分岐経路の継ぎ目部分に直線部分を設けることにより、継ぎ目部分における粉体流の乱れを減らすことができる。また、パーツ同士の継ぎ目における、粉体流の向きの急激な変化による抵抗により、乱流が発生することを低減することができる。
【0042】
ここでは、1/4円形状(中心角が90度となる円弧形状)のパイプのパーツ122と半円形状(中心角が180度の円弧形状)のパイプのパーツ121とを用いて、各分岐経路102A、102B、103を製造する例で説明したが、パーツとして用いることのできるパイプは、1/4円形状および半円形状には限定されない。すなわち、1/N円形状であっても(Nは、正の実数)、任意の曲率を持つパイプであってもよい。さらに、パーツとして直線パイプを用いてもよい。
【0043】
このように、共通のパーツ122、121を用いて、継ぎ目部分における角度を適宜調整して分岐経路102A、102B、103を製造すると、分岐経路の組み立てが容易になる。また、出来上がった分岐経路のコンダクタンスの目標値からの乖離が少なくなり、さらに、製品精度のばらつきも減少する。
【0044】
なお、上述の説明では、各分岐経路102A、102B、103は、パーツ122、121を組み合わせて製造する例で説明をしたが、パーツに分けずに、一体成型してもよい。
【0045】
図4は、本実施形態に係る加工用ノズル100が備える分岐経路の構成パーツのパーツ仕様の一例を説明する図である。パーツ仕様400は、パーツ型番401に関連付けて、曲率402と、長さ403と、材質404とを表示している。材質404としては、例えば、プラスチックや金属などが代表的である。このように、様々な曲率のパーツを準備しておけば、ユーザは、これらを適宜組み合わせることにより、様々な形状の分岐経路を製造することが可能となる。
【0046】
図5は、本実施形態に係る加工用ノズル100が備える分岐経路の構成パーツの組み合わせ一例を説明する図である。パーツ組み合わせ500は、分岐経路型番501に関連付けて、分岐経路型番501を製造するのに必要なパーツの組み合わせ502と、パーツの継ぎ目における継ぎ目角度503とを表示している。ここで、継ぎ目角度は、継ぎ目を含む平面の法線を軸とし、その軸に対するパーツの相対的な回転角度を意味する。したがって、ユーザは、このパーツ組み合わせ500を参照して、所望の分岐経路を製造することができる。
【0047】
本実施形態によれば、粉体流を3分岐するので、ノズル筐体140に流入する粉体流は互いに正面からぶつかりあうことがなく、乱流の発生を低減でき、粉体収束性を向上させることができる。また、ノズル筐体内での粉体流の流速が光線経路160に対して等方化され、分岐ばらつきが低減するので、加工点における粉体流の粉体収束性が向上する。さらに、ノズル筐体内において、粉体流の方向が光線経路160に対して等方化され、粉体流を3分岐したことによる分岐ばらつきが低減するので、加工点における粉体収束性が向上する。さらにまた、従来のように分岐箇所を遠くに配置することによって、分岐箇所からノズル筐体140に至るまでの分岐経路をほぼ等しくする必要がない。そのため、分岐箇所をノズル近くに配置し、かつ流路長を揃えた構成とすることできる。
【0048】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルについて、図6および図7を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る加工用ノズルが備える分岐経路の構成を示す概略斜視図である。図7は、本実施形態に係る加工用ノズルが備える分岐経路の構成を示す概略上面図である。本実施形態に係る加工用ノズル600は、上記第1実施形態と比べると、分岐経路に射出口が設けられている点で異なる。その他の構成および動作は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。また、図6および図7において、図が煩雑になるのを避けるため、分岐経路以外の部材等は適宜省略している。
【0049】
分岐経路602A、602B、603は、経路の終端部(加工点181に近い側)に射出口621A、621B、631を備えている。すなわち、各分岐経路602A、602B、603は、ノズル筐体140に接続されていない、3ビームタイプノズルである。そして、粉体流は、各分岐経路602A、602B、603から直接加工点181に対して噴射される。
【0050】
本実施形態によれば、各分岐経路の終端部(加工点に近い側)に射出口を設けたので、各分岐経路を通過する粉体流が混合されることがないので、混合した時に乱流が発生することを防ぐことができる。また、ノズル筐体140内にスリットを設ける必要がなく、構造をシンプルにできるという利点もある。
【0051】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る光加工装置について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る光加工装置800の構成を説明するための図である。光加工装置800は、上述の実施形態で説明した加工用ノズル100を含み、集光した光が生み出す熱で粉体流に含まれる材料を溶融することにより三次元造形物を造形したり、肉盛溶接を生成したりする装置である。
【0052】
《装置構成》
光加工装置800は、光源801、光伝送部815、ステージ805、材料収容装置806、材料供給部830、加工ヘッド808および制御部807を備えている。
【0053】
光源801としては、ここではレーザ光源を用いることとするが、LED(Light Emitting Diode)、ハロゲンランプ、キセノンランプを用いることができる。材料の溶融に使う光線はレーザ光に限るものではなく、加工点で粉体材料を溶融することができるものであればどのような光線でもよい。例えば、電子ビームや、マイクロ波から紫外線領域の電磁波などの光線であってもよい。
【0054】
光伝送部815は、例えばコア径がφ0.01〜1mmの光ファイバであり、光源801で発生した光を加工ヘッド808に導く。
【0055】
材料収容装置806は、加工ヘッド808に対し、材料供給部830を介して材料を含むキャリアガスを供給する。例えば、材料は金属粒子、樹脂粒子などの粒子である。キャリアガスは、不活性ガスであり、例えばアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、でよい。
【0056】
材料供給部830は例えば樹脂あるいは金属のホースであり、キャリアガスに材料を混入させた粉体流を加工ヘッド808へと導く。ただし、材料が線材の場合は、キャリアガスは不要となる。
【0057】
加工ヘッド808は、光線としての光を集束させる集束装置を内部に備え、その集束装置の下流に、加工用ノズル100が取り付けられている。加工ヘッド808に供給されたレーザ光は、内部に設けられたレンズ等からなる光学系を介することで、加工面860において集光するように調整されており、加工用ノズル100内部を経て加工面860に照射される。光学系は、レンズ間隔等を制御することで、集光位置を制御可能に設けられている。
【0058】
制御部807は、細書きまたは太書きなどの造形条件を入力し、入力した造形条件に応じて光源801からのレーザ光の出力値を変更すると共に、加工用ノズル100の外側筐体をスライドさせる。これにより、加工用ノズル100から射出される粉体による粉体スポット径を溶融プール径に合わせて制御する。
【0059】
《装置動作》
次に、光加工装置800の動作について説明する。造形物810は、ステージ805の上で作成される。加工ヘッド808から射出される射出光は、造形物810上の加工面860において集光される。加工面860は、集光によって昇温され、溶融され、一部に溶融プールを形成する。
【0060】
材料は加工用ノズル100から加工面860の溶融プール861へと射出される。そして、溶融プール861に材料が溶け込む。その後、溶融プール861が冷却され、固化することで加工面860に材料が堆積され、3次元造形が実現する。
【0061】
本実施形態によれば、粉体収束性のよい加工用ノズルを用いるので、精度の高い光加工を行うことができる。
【0062】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【要約】
分岐個所をノズル近くに配置し、かつ流路長を揃えた構成とする。加工用ノズルであって、光源からの光を通過させる光線経路を有し、加工材料を含む流体を射出口から射出する加工用ノズルであって、前記光が通過する光線経路の外側に配置され、前記流体を供給する供給管と、前記流体を前記供給管から前記射出口に向けて供給する、全長が同じ第1、第2分岐管と、を含み、前記第1分岐管は、第1形状を有する第1屈曲部を前記流体の上流側に含み、第2形状を有する第2屈曲部を前記流体の下流側に含み、前記第2分岐管は、前記第1形状を有する第3屈曲部を前記流体の上流側に含み、前記第2形状を有する第4屈曲部を前記流体の下流側に含む。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8