(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194412
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】アルコール飲料の毒性低減
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20060101AFI20170828BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20170828BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
C12G3/04
A23L33/105
C12G3/06
【請求項の数】22
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-511153(P2016-511153)
(86)(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公表番号】特表2016-516442(P2016-516442A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】IB2014061051
(87)【国際公開番号】WO2014177989
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】1894/CHE/2013
(32)【優先日】2013年4月29日
(33)【優先権主張国】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517002524
【氏名又は名称】チグルパティ ハーシャ
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】チグルパティ ハーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ビヤニ マニッシュ ラデシャム
(72)【発明者】
【氏名】アウディ ビスワジット
【審査官】
吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第92/001393(WO,A1)
【文献】
特開平03−014519(JP,A)
【文献】
特開平06−192107(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101744865(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102450714(CN,A)
【文献】
特表2009−522382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
C12C
C12F
A23L 33/00−33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1の肝保護剤、
b)アルコール、又は、アルコール−水の混合物、及び
c)第2の肝保護剤を含み、
d)前記第1の肝保護剤が、0.05%〜0.3%の質量濃度範囲の18α−グリチルリチン、又は、0.05〜0.4%の質量濃度範囲の18β−グリチルリチン、又はこれらの組み合わせを含み、
e)前記第2の肝保護剤が、質量濃度範囲で、0.5%〜3.0%の少なくとも1種の糖又は少なくとも1種の糖アルコールを含む、
相乗的肝保護を提供するアルコール飲料組成物。
【請求項2】
前記第2の肝保護剤が、D−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の糖アルコールを含有する、請求項1に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項3】
前記第2の肝保護剤が、D−スクロース、D−マンノース、D−キシロース、D−ラクトース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の糖を含有する、請求項1に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項4】
前記第1の肝保護剤が、18α−グリチルリチンを0.05%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖アルコールが、0.5%〜3.0%の質量濃度範囲である、請求項2に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項5】
前記第1の肝保護剤が、18α−グリチルリチンを0.1%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖アルコールが、1.0%〜2.5%の質量濃度範囲である、請求項2に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項6】
前記第1の肝保護剤が、18α−グリチルリチンを0.05%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖が、0.5%〜3.0%の質量濃度範囲である、請求項3に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項7】
前記第1の肝保護剤が、18α−グリチルリチンを0.1%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖が、1.0%〜2.5%の質量濃度範囲である、請求項3に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項8】
更に、少なくとも1種のpH調整剤を含有する、請求項1に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項9】
更に、少なくとも一種の着香剤を含有する、請求項1に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項10】
請求項1のアルコール飲料組成物の調製方法であって、(a)アルコール又はアルコール−水の混合物を入手する工程、(b)18β−グリチルリチンまたは18α−グリチルリチンと、工程(a)のアルコール又はアルコール−水の混合物とを混合する工程、(c)工程(b)の混合物に糖アルコールまたは糖を添加する工程、(d)工程(c)で得られた溶液のpHを4.0〜9.0の間に調整する工程、(e)着香剤を添加してもよい工程、および(f)アルコール飲料組成物を得る工程を含む方法。
【請求項11】
アルコール摂取によって引き起こされる、急性および慢性毒性を含む疾患の改善方法に用いられる、請求項1に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項12】
前記着香剤が、バニラフレーバー又はストロベリーフレーバーを含有する、請求項9に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項13】
前記第1の肝保護剤が18β−グリチルリチンを0.05%〜0.4%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖アルコールが0.5%〜3.0%の質量濃度範囲である、請求項2に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項14】
前記第1の肝保護剤が18β−グリチルリチンを0.1%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖アルコールが1.0%〜2.5%の質量濃度範囲である、請求項2に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項15】
前記第1の肝保護剤が18β−グリチルリチンを0.05%〜0.4%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖が0.5%〜3.0%の質量濃度範囲である、請求項3に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項16】
前記第1の肝保護剤が18β−グリチルリチンを0.1%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記糖が1.0%〜2.5%の質量濃度範囲である、請求項3に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項17】
前記第1の肝保護剤が、18β−グリチルリチン又は18α−グリチルリチンを含有し 前記第2の第2の肝保護剤が、D−マンニトールを含有する、請求項1に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項18】
前記第1の肝保護剤が、18β−グリチルリチンを0.05%〜0.4%の質量濃度範囲で含有し、
前記D−マンニトールが0.5%〜3.0%の質量濃度範囲である、請求項17に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項19】
前記第1の肝保護剤が、18β−グリチルリチンを0.1%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記D−マンニトールが1.0%〜2.5%の質量濃度範囲である、請求項17に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項20】
前記第1の肝保護剤が、18α−グリチルリチンを0.05%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記D−マンニトールが0.5%〜3.0%の質量濃度範囲である、請求項17に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項21】
前記第1の肝保護剤が、18α−グリチルリチンを0.1%〜0.3%の質量濃度範囲で含有し、
前記D−マンニトールが1.0%〜2.5%の質量濃度範囲である、請求項17に記載のアルコール飲料組成物。
【請求項22】
前記pH調整剤が、ソルビン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム(sodium dihydorogen phosphate)、リン酸水素二ナトリウム(sodium hydrogen phosphate)、及びリン酸三ナトリウム(trisodium phosphate)からなる群から選択される、有機または無機塩基/緩衝剤を含有する、請求項8に記載のアルコール飲料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肝毒性を低減したアルコール飲料を提供する。本発明はまた、該飲料の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノール摂取は60種の医学的状態につながり得る。エタノールの急性および慢性中毒作用は、非可逆的臓器障害を引き起こし得る(Das S.K. et. al., Indian Journal of Biochemistry & Biophysics, 2010, Vol. 47, 32)。広く認められているアルコール性肝疾患(ALD)の形態は、禁酒により回復可能な単純性脂肪肝(脂肪症)、瘢痕組織形成(線維症)をもたらし炎症を伴う脂肪肝(脂肪性肝炎)、禁酒により改善する場合も改善しない場合もあり後に肝臓がん(肝細胞癌)に進行する、正常な肝組織の破壊(肝硬変)である。2010年に、WHOは、米国の成人人口の10%がアルコール使用障害を患い、肝硬変は米国で12番目に多い死亡原因となっていることを示した(Alcohol and Health, Focus on: Alcohol and the Liver, 2010, Vol. 33, No. 1 and 2, 87)。ヒトに摂取されたエチルアルコールすなわちエタノール(以下「アルコール」)の5%は、もとのまま排出されるが、残りの95%はアセトアルデヒドに分解されることが知られている。アルコールは消化管から急速に吸収される。空腹状態では、血中アルコール濃度は30分以内にピークに達する。分布は急速に進み、組織内レベルが血中濃度に近づく。肝臓はアルコール代謝の約90%を行い、残りは肺および尿を介して排出される。通常の成人は1時間に7〜10gのアルコールを代謝することができる(米国特許第7666909(B2)号)。
【0003】
少量から適量のアルコールが摂取される場合、アルコール代謝の主経路は、主に肝細胞の細胞質内でアルコール脱水素酵素(ADH)により触媒され、アセトアルデヒドを生成する。肝臓へのNADH(過剰還元当量)の蓄積は、慢性アルコール飲用で顕著にみられる肝障害に関与している。ミクロゾームエタノール酸化系(MEOS)により生成されるアセトアルデヒドは、まずエタノール酸化の副経路となり、おそらく肝機能の10%未満が割かれる。
【0004】
より高いアルコールレベル(100mg/dl超)では、MEOSはCYP450(2E1、1A2および3A4)に依存し、補因子としてのNADPHおよびO2を用いてアルコール代謝において重要な役割を果たす。カタラーゼは特に、過酸化水素生成系の存在下で、空腹状態でエタノールを酸化することができる。アセトアルデヒドは、肝臓内において、ミトコンドリア内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)依存性アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を介して酢酸に酸化される。ALDHの活性はADHのおよそ3分の1であるため、アセトアルデヒドの蓄積が起こる。酢酸はさらにアセチル−CoAに代謝され、TCA回路に入るか脂肪酸を合成できるようになる。これらの経路のそれぞれは(活性酸素種{ROS}などの)フリーラジカル生成をもたらし、それに伴い細胞の酸化還元状態が変化する(すなわち、NADHのNAD
+に対する比に応じて、NADH(二電子還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+))がより多く発生する)。細胞は、ミトコンドリア呼吸鎖において、この系の最大能力でNADHをNAD
+に再酸化する限定的能力を有し、これにより反応速度が決まる。アルコール代謝に応じた酸化還元状態により、肝細胞の正常な代謝に見られるNAD
+媒介酵素反応が抑制される。この抑制が起こると、クエン酸回路が最も影響を受ける。このときNADH/NAD比は正になり、これがアルコール誘発性脂肪肝発生の最も重要な原因であると考えられている。ミトコンドリア呼吸鎖の最大能力は、体の総代謝レベルに依存する。酸化還元状態変化の結果には、低酸素症(酸素不足細胞)がある。アルコール誘導性肝毒性の経路として他に考えられるものとして、腸内エンドトキシンにより活性化したクッパー細胞による炎症性サイトカインの過剰産生がある。ROSは主にミトコンドリア電子伝達系に関連して発生し、肝臓内のCYP2E1および活性化されたクッパー細胞によっても生成される。急性および慢性アルコール摂取はROS産生量を増大させ、上記の種々の経路を通じて酸化ストレスをもたらす[(Zakhari, S. Alcohol Research & Health, 2006, 29, 4, 245)、(Wheeler M.D. et. al, Free Radical Biology & Medicine, 2001, Vol. 31, No. 12, 1544)、(Koop, D.R., Alcohol Research & Health, 2006, 29,4, 274)、(米国特許第7666909(B2)号)]。
【0005】
アルコールが細胞傷害を引き起こす機序は複雑であり、相互に関係する複数の経路が組み合わされている。ROSは主に細胞膜と反応し(密着結合が弱くなり)、それによりリポ多糖(LPS)が漏出し、その結果、腸の構造的完全性が損なわれる。アミノトランスフェラーゼ[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)]の増加は、細胞漏出および細胞膜の機能完全性喪失を示している(Yue et. al, 2006)。細胞完全性の喪失は、肝胆道機能に影響し、アルカリホスファターゼ(ALKP)活性の上昇につながり、同時に血清ビリルビンレベルが上昇し、血漿総タンパク質量が減少する。ROSレベルの上昇および低下は、肝細胞のアポトーシスにつながり得る(Wheeler M.D. Alcohol Res. Health, 2003; 27, 300)。細胞が正常に機能するためには、ミトコンドリア呼吸鎖の活性時に発生するROSから細胞自身を保護するGSHが不可欠である。アルコール摂取によりGSHレベルは急激に低下する。アルコールはシトクロムcと作用し、ミトコンドリアからサイトゾルに漏出し、これにより、アポトーシスを起こし得るカスパーゼとして知られる酵素が活性化し得る。
【0006】
ROSは、LPO[マロンジアルデヒド(MDA)、4−ヒドロキシノネナール(HNE)と反応するROS]を含み、肝細胞障害の重要な出発点として理解されている。エンドトキシンにより活性化したクッパー細胞は、ミトコンドリアに影響を及ぼし、ROS(過酸化水素ラジカル、ヒドロキシルラジカル、特にスーパーオキシドラジカル)および複数のサイトカイン(すなわち、腫瘍壊死因子{TNF−α})の放出をもたらし、肝細胞壊死およびアポトーシスをもたらす。アルコール性肝疾患を持つ患者は、炎症促進性サイトカインIL-1、IL-6およびTNF-α、並びにケモカインIL−8およびその他のサイトカインのレベルが上昇したことが臨床研究により立証されている。
【0007】
アルコールは肝細胞の感受性を高める場合があり、その結果、ミトコンドリア内でのROS産生が増大する場合がある。ROSは、核内因子kB(NF−kB)と呼ばれる調節タンパク質を活性化することができる。核内因子kBは、免疫反応の調節において重要な役割を果たし、アポトーシスを促進するタンパク質をコードする遺伝子の他、TNF−αおよびそのレセプターを発現させる遺伝子を含む、多数の遺伝子の活性を制御する。従って、TNF−αによりROS産生が促進され、それによりNF−kBが活性化され、更なるTNF−αおよびそのレセプターの産生が強化され、アポトーシス促進因子の産生につながる、という悪循環が肝細胞内に生じる場合がある。前記サイクルは最終的に肝細胞の構造を変化させ、その機能を損ない、肝細胞のアポトーシスをもたらし得る。TNF−αはまた、増殖を促進することにより肝細胞再生を助長する[(Wheeler M.D. Alcohol Res Health, 2003; 27,300)、(Molina P., Happel, K.I., Zhang P., Kolls J.K., Nelson S., Focus on: alcohol and the immune system. Alcohol Res. Health, 2010,33(1 & 2), 97)1)]。
【0008】
TGF−β(トランスフォーミング増殖因子ベータ)は、アルコール誘発性肝障害の進行に関与する場合があり、これにより、肝細胞が、トランスグルタミナーゼのような分子、通常、細胞に形状を与える役割を果たすサイトケラチンを生成する場合がある。これらの分子の架橋が過度に進み、アルコール性肝炎のマーカーとなるマロリー小体と呼ばれる微小構造が形成される。TGF−βは、星状細胞を活性化することにより肝障害の原因にもなり得る。正常な状態では、これらの細胞は主に脂肪およびビタミンAを肝臓に貯蔵する役割を果たす。星状細胞は、活性化されると、肝線維症の発現につながる瘢痕組織の主成分であるコラーゲンを産生する。アルコールはTGF−βの活性化を誘発し、この分子が高濃度で血中に入ると、それによりアポトーシスが開始される場合がある(Wheeler M.D., Alcohol Res. Health, 2003; 27,300)。
【0009】
アセトアルデヒドまたはROSとDNAまたはタンパク質もしくはタンパク質ビルディングブロック、およびROSとMDAまたはMAA(MDA−アセトアルデヒド−タンパク質付加体混合物)もしくはHNE等は、細胞内で安定または不安定な付加体を形成する場合があり、この付加体は、発癌性、免疫原性を有し、炎症過程を引き起こし、ミトコンドリア等に損傷を与える場合がある[(Zakhari, S. Alcohol Research & Health, 2006, 29 (4)245);(D. Wu, Alcohol Research & Health, 2006, 27, 4, 277);(Wheeler M.D., Alcohol Res. Health, 2003; 27, 300);(Molina P., Happel K.I., Zhang P., Kolls J.K., Nelson S., Focus on: alcohol and the immune system);(Alcohol Res. Health, 2010, 33, Vol. 1 & 2, 97);(Neuman M.G., Cytokine-central factor in alcoholic liver disease, Alcohol Res. Health, 2003, 27,307)]。
【0010】
ROSから細胞を保護するために、種々の内因性酵素および非酵素の機序が発達してきた。ここには、O2を除去するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD);H
2O
2および還元型グルタチオン(GSH)、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ユビキノン、尿酸、およびビリルビンなどの非酵素低分子量抗酸化物質を除去するカタラーゼ(CAT)およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)系が含まれる。しかし、これらが細胞を保護する能力は限定的なものである。S−アデノシル−L−メチオニン(SAMe)、N−アセチルシステイン(NAC)、またはビタミンE、ビタミンC、植物生理活性物質(没食子酸、ケルセチン等)などの抗酸化物質のような、グルタチオン前駆体を経口投与することにより、追加的保護を実現し得る(D. Wu, Alcohol Research & Health, 2006, 27, 4, 277)。
【0011】
従来技術
文献では、各種添加物を加えたアルコール飲料が開示されている。本発明が属する分野には下記の文献が存在し、内容が詳細に検討されてきた。
米国特許出願公開第20100086666号は、カゼイン加水分解物のようなタンパク質により、滑らかな風味を強め、栄養上の効果を消費者に提供するアルコール飲料を開示している。Das S.K.ら(Indian Journal of Biochemistry & Biophysics, 2010, vol 47, 32)は、マウスにおけるレスベラトロールまたはビタミンEとアルコールとの併用処置が、アルコール誘発性酸化ストレスおよび血管新生プロセスを改善し、免疫調節活性の制御に有効であることについて記載している。
【0012】
米国特許出願公開第20100086666号は、アルコールにより発生したフリーラジカルを捕捉することにより酸化ストレスを低減することが知られる、エピガロカテキンガラート(EGCG)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキン(EC)、エピカテキンガラート(ECG)、プロアントシアニン、タンニンおよびケルセチン等のフェノールを含むアルコール飲料を開示している。
米国特許第7666909号は、アルコール代謝を促進し、アルコール摂取により生じる有害事象を軽減する、D−グリセリン酸およびその塩を含むアルコール飲料を開示している。
GAもしくはクサエンジュ(S. flavescens)から分離したマトリン(Mat)アルカロイド単独、またはGA+Matは、アセトアミノフェン過剰投与マウスへのジメチルニトロソアミン(DMN)の腹部注射により誘発された肝線維症のラットモデルに投与すると、アセトアミノフェン誘導性肝毒性を弱毒化することにより死亡率を低下させる。これはおそらくγ−GT陽性病巣の数および面積が低減したことによる。さらに、GA+Matは、免疫抑制に対する保護効果、強い非特異的抗炎症効果、およびナトリウム−水反応発生低減効果を有していた(W. Xu-yingae, Chemico-Biological Interactions. 181 (2009) 15-19)。
【0013】
国際公開第2008/055348号は、ウコンを含むアルコール飲料が二日酔いを低減することを開示している。
Das S.K.ら(Indian Journal of Experimental Biology, 2006, Vol44, 791)は、ウィスターラットにてビタミンB複合体を含むレシチンまたはビタミンEとアルコールとの併用処置を実施したことを明らかにしている。ビタミンB複合体を含むレシチンとアルコールは、酸化ストレスを低減するうえで、ビタミンEとアルコールよりも有望な治療方法であることが立証されている。
El-Fazaa S.ら(Alcoholism & Alcoholism, 2006, Vol. 41, No 3, 236)は、レスベラトロールを含むアルコール飲料が、アルコール誘発性脂質過酸化反応を抑制し、傷害に対する保護効果を有することを例証している。
【0014】
国際公開第1989004165号またはEP0336960A4は、D−ガラクトース、D−ラクトース、D−キシロース、L−フルクトース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−グルコース等からなる群のうち任意の1種以上の糖の組み合わせを含むアルコール飲料を開示している。
特開平06−014746は、ケルセチン配糖体、二価金属イオンおよび甘草抽出物(グリチルリチン)を含むアルコール飲料を開示している。上記飲料は、アルコール代謝を促進し、エタノールおよびアセトアルデヒドによる肝障害抑制活性を有する。従って、二日酔いが軽減される。
中国特許公報第1736270号は、キトサンオリゴ糖、グリチルリチン、葛花の水性抽出物およびホーブナイン(hovenine)の水性抽出物を含む肝臓保護飲料を開示している。
【0015】
米国特許出願公開第20090196951号は、強抗酸化物質レスベラトロールを含むアルコール飲料抗酸化物質は、サーチュイン1(SIRT1)およびペルオキシソーム増殖剤活性化(PPAR)−ガンマ活性化補助因子−1[PGC−1’]遺伝子をも活性化し、当該遺伝子がエネルギーおよび代謝ホメオスターシスの鍵となるレギュレータであることを開示している。
【0016】
特開2008−266203およびEP0502554 は、エリトリトール、マンニトール、ソルビトールおよびキシリトールからなる群から選択される1種以上の物質により、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼまたはペルオキシダーゼなどの活性酸素種(ROS)除去酵素群の酵素活性量が増加することを開示している。
CN1448497は、エタノールおよびグリチルリチンを含むアルコール飲料を開示しているが、グリチルリチンとは別に本組成物の不可欠な部分として特定の糖アルコールまたは糖を含む、アルコールと肝臓保護剤との相乗作用性混合物(synergistic mixture)は、記載されていない。
CN101744865は、キシリトールおよびグリチルリチンを含む肝臓保護錠剤(liver protecting tablet)の製造方法を開示している。CN101744865は、キシリトール肝臓錠剤(Xylitol liver tablets)の調製方法に焦点を絞り、かかる錠剤の生物学的活性は一切証明していない。さらに、本特許は、毒性を低減したアルコール飲料および同アルコール飲料の調製方法に焦点を当てている。本出願は、当該組成物の不可欠な部分として特定の糖アルコールまたは糖を含む、アルコールと肝臓保護剤との相乗作用性混合物を示し、かかる相乗作用性混合物が十分な程度の肝保護を提供することを示している。
グリチルリチンおよびマンニトール、エリトリトール、キシリトール等の糖アルコールが、カロリー価の低い非栄養性甘味剤としてまたは着香剤として、飲料に種々の機能を付与するために用いられた他の種々の先行技術が公知となっている(US 20080226787、US 3282706、US1720329、US 4537763、US 8524785)が、肝保護の側面は開示されてこなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
先行技術文献において、グリチルリチン、糖アルコールおよび糖はそれぞれ単独で肝保護活性を示すことが知られているが、相乗的肝保護(synergistic hepato-protection)を示すそれらの組み合わせは現在のところ報告されていない。本願出願人は、飲料の毒性を低減するために、18β−グリチルリチンまたは18α−グリチルリチンと糖アルコール、より詳細には、18β/α−グリチルリチンとD−マンニトールの組み合わせにより付与される相乗活性であって、相乗的肝保護を典型的に示すものを初めて報告する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示は、4.0〜9.0の範囲のpHを有し、蒸留アルコール、脱イオン水、グリチルリチンおよび糖アルコールまたは糖を含み、肝毒性を低減したアルコール飲料、特にウォッカ、フレーバーウォッカ、ウイスキー等の蒸留酒に関する。
より詳細には、本発明は、蒸留アルコール、脱イオン水、18β−グリチルリチンまたは18α−グリチルリチンおよび糖アルコールまたは糖を含む、肝毒性を低減したアルコール飲料を提供する。本発明はまた、該飲料の調製方法に関する。該飲料により実現される肝毒性低減の典型例は、前記アルコール飲料中に存在する、18βまたは18α−グリチルリチンと糖アルコール/糖の組み合わせによって示される相乗的肝保護によって得られたものである。
【0019】
発明の目的
本発明の目的は、肝毒性を低減したアルコール飲料を提供することである。
本発明の別の目的は、相乗活性を有し肝保護を強化したアルコール飲料を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、肝毒性を低減するために肝保護剤を含む飲料を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、肝毒性を低減するために18β−グリチルリチンまたは18α−グリチルリチンを含むアルコール飲料を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、糖アルコールおよび糖などの肝保護剤を含むアルコール飲料を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、D−マンニトール、D−エリトリトール、D−キシリトール等から選択される糖アルコールを含むアルコール飲料を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、D−キシロース、D−マンノース、D−スクロース、およびD−ラクトースから選択される糖を含むアルコール飲料を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、pH調整剤および着香剤を含むアルコール飲料を提供することである。
本発明の更なる目的は、バニラおよびストロベリー等から選択される着香剤を含んでもよいアルコール飲料を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、良好な味、風味、香り、透明度およびバズファクター(buzz factor)を有するアルコール飲料を提供することである。
本発明の別の重要な目的は、(a)アルコールまたはアルコール−水混合物、(b)18β−グリチルリチン/18α−グリチルリチン、(c)糖アルコールまたは糖、(d)pH調整剤を含み、および着香剤を含んでもよいアルコール飲料組成物の調製方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、肝保護を強化したアルコール飲料組成物を提供することである。
当該アルコール飲料は、脂肪症などのアルコール性肝疾患(ALD)のような急性および慢性アルコール性障害(alcoholic toxicity)を含む疾患の改善方法で利用することを目的としている。
【0022】
表の簡単な説明
表1:D−マンニトールの保護%
表2:D−キシリトールおよびD−エリトリトールの保護%
表3:18βおよび18α−グリチルリチンの比較保護%
表4:18β−グリチルリチン−マンニトールの組み合わせの保護%および相乗%
表5:18βまたは18α−グリチルリチン−マンニトールの組み合わせの保護%および相乗%の比較
表6:18β−グリチルリチン−マンニトール、キシリトールおよびエリトリトールの保護%および相乗%の比較
表7:(18β−グリチルリチン/マンニトール、キシリトールおよびエリトリトール)の保護%および相乗%の比較データ
表8:スクロース、マンノース、キシロース、ラクトースの保護%
表9:(18β−GA:スクロース、マンノース、キシロースおよびラクトース)の保護%および相乗%
【発明を実施するための形態】
【0023】
従って、本発明は、飲料、より具体的には、蒸留アルコール、脱イオン水、18βまたは18α−グリチルリチンおよび糖アルコールまたは糖を含み、4.0〜9.0の範囲のpHを有する、肝毒性を低減したアルコール飲料を提供する。より詳細には、前記肝毒性はアルコール摂取により生じる。本発明の飲料での肝毒性低減は、前記アルコール飲料に混合される18βまたは18α−グリチルリチンと糖アルコールまたはグリチルリチンと糖の相乗的組み合わせによって提供される肝保護活性の促進により達成される。前記成分の相乗効果は、動物モデルでの実験を実施し、18βまたは18α−グリチルリチン、糖アルコールおよび、グリチルリチンと糖アルコール/糖との組み合わせによる肝保護の用量依存性試験を行うことにより立証された。
【0024】
(成分説明)
グリチルリチン(またはグリシルリジン酸もしくはグリチルリチン酸:「GA」と略記)は、スペインカンゾウ(甘草)根の主な甘味成分である。グリチルリチンは日本ではC型肝炎の処置として静脈内投与され、食料品および化粧品内の乳化剤およびゲル形成剤としても利用されている。グリチルリチン(GA)はトリテルペノイドサポニン配糖体である。グリチルリチンには、18β−グリチルリチンと18α−グリチルリチンという2つの異性体のラセミ体または純粋形態がある。GAの肝保護機構はそのアグリコンであるグリチルレチン酸によるものであり、グリチルレチン酸がフリーラジカル生成と脂質過酸化反応の両方を抑制する。18α−GAは、肝線維化抑制(anti-hepatofibrosis)効果を有し、肝保護剤として頻繁に用いられる。GAの甘さは砂糖より遅く立ち上がり、口内に長く残る。GAの一部は元のままの薬物(intact drug)として吸収される(W. Xuyinga et.al.)Chemico-Biological Interactions 181 (2009) 15-19)、(T,Zing et. al., Chinese Journal of Modern Applied Pharmacy 2006, 02, 15-19)。GAおよびその代謝物質はステロイド様の抗炎症活性を示す。これは、部分的に、多数の炎症過程に不可欠な酵素であるホスホリパーゼA2活性が阻害されることによる。GAおよびその代謝物質はアルドステロンの肝代謝を阻害し、肝臓の5α−レダクターゼを抑制する。コルチゾールおよびアルドステロンは同一の親和力でミネラルコルチコイドレセプターに結合するため、腎臓内でのコルチゾール増加はミネラルコルチコイド過剰効果をもたらす(Akamatsu, H. Planta Med., 1991, 57: 119-121)、(Armanini, D., Clin.Endocrinol.1983,19: 609)。
【0025】
GAは、おそらく細胞表面への負電荷を低減することで、かつ/または膜流動性を低減し、それによりA型肝炎ウィルスがレセプター媒介型エンドサイトーシスにより細胞内に侵入するのを防ぐことで、ウィルス抗原の発現を完全に抑制した(W. Xu-Yinga et. al., Chemico-Biological Interactions 181 (2009) 15-19)。
【0026】
GAは解毒および発癌性または有毒性物質の分泌に関与する第二相酵素、並びに細胞環境内でのフリーラジカル/酸化物質と抗酸化物質との平衡状態を維持する役割を果たすその他の抗酸化酵素を誘導する。ARマウス(アルドースレダクターゼ欠失マウス)の酸化傷害は、用量依存的にGSH量を増やしMDA形成を低減することで、GAにより低減される。ARマウスにおけるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、カタラーゼ(CAT)、総抗酸化能(TAOC)およびSOD活性に随伴疾患が観察されている。IFN−αまたは2型インターフェロンは、ウィルス感染および細胞内細菌感染に対する先天免疫および適応免疫にとって、また腫瘍制御にとって重要なサイトカインである。GAは薬剤処置マウスにおけるIFN−αレベルの著しい上昇をもたらした。IL−4は、ナイーブヘルパーT細胞(Th0細胞)のTh2細胞への分化を引き起こすサイトカインである。IL−4により活性化されると、Th2細胞は後に追加のIL−4を産生する(Xiao-Lan Li Int. J. Mol. Sci. 2011,12, 905)。[単球化学誘引性(走化性)タンパク質−1]はCCケモカインMCP−1阻害物質であるため、GAは感染抵抗性を高めることができる(米国特許出願公開第20060116337号)。
【0027】
上記マウスはCC1
4(0.5ml/kg)で腹腔内処置した。マウスは、CC1
4投与の24時間前および0.5時間前並びに4時間後にGA(50、300、200、400mg/kg)を投与された。上記保護は、ヘムオキシゲナーゼ−1の誘導および炎症誘発性媒介物質のダウンレギュレーションに起因すると思われる(Biol Pharm Bull. 2007, 30, 10, 1898)。18α−GAは、肝細胞の増殖を促進することにより、用量依存的にCC1
4誘導肝線維症を抑制するが、肝星細胞(HSC)GAの抑制により、NF−kBの核への転位がブロックされる。これにより活性化を抑制し、HSCのアポトーシスを誘導できる(Q Ying, Med Sci. Monit., 2012,18,1: BR24)。
【0028】
GAは、上記すべての時点で、組織学的肝変化を減衰させ、AST、ALT、および、乳酸脱水素酵素(LDH)の血清レベルを著しく低下させることが示された。GAはまた、カスパーゼ−3の発現をダウンレギュレートし、ミトコンドリアから細胞質へのシトクロムcの放出を抑制することにより、肝細胞アポトーシスを著しく抑制した。GAの抗炎症活性は、腫瘍壊死因子−αの放出、ミエロペルオキシダーゼ活性、および核内因子κBの核への転座の抑制に依存する場合がある。GAはまた、増殖細胞核抗原の発現をアップレギュレートし、LPSにより損傷した肝臓の再生を促進できる可能性も示唆された。要約すると、GAは、特に大量肝切除後に、エンドトキシン誘発性障害から肝臓を保護する強力な薬物になり得る(Brazilian Journal of Medical and Biological Research, 2007, 40, 1637)。GA(50mg/kg)およびMMP阻害物質(5mg/kg)による前処理は、LPS/GalNで処置されたマウスにおいて、MMP−9のダウンレギュレーションのため、ALTおよびASTの血清レベル上昇を抑制した(J Pharm Pharmacol. 2008, 60, 1, 91)。
メタボリックシンドローム(MetS)は、内臓脂肪型肥満(visceral obesity)、脂質代謝異常およびインスリン抵抗性(IR)を含む代謝異常症候群である。50mg/kgのGAの1週間にわたる経口投与により、内臓脂肪型肥満の発症を妨げ、組織リポタンパク質リパーゼ(LPL)の選択的誘導、発現および血清脂質パラメータの改善(positive shift)それぞれのを通じて脂質代謝異常を改善し、組織脂肪変性に伴うIRの発生を遅らせることができる(Lipids Health Dis. 2009, 29, 8, 31)。
【0029】
グリチルリチン酸二アンモニウム(DG)は、コンカナバリンA(ConA)により誘発させた血清中ALTレベル上昇および肝細胞アポトーシスからマウスを保護した。DGはおそらく、IL−6依存の経路を介したアポトーシスからの肝細胞の直接的保護、およびIl−1依存の経路を介したT細胞媒介炎症の間接的抑制という2つの経路を介して傷害から肝臓を保護することができる(IntImmunopharmacol. 2007 Oct: 7(10):1292)。
【0030】
イソグリチルリチン酸マグネシウム100または150mgを1日1回投与することが、慢性肝疾患の有効かつ安全な治療法である(ZhoiighuaGanZang Bing ZaZhi. 2009, 11,847)。
【0031】
糖アルコールは、糖から調製されるアルコールの一種である。これらの有機化合物は、ポリオールに分類され、多価アルコール、ポリアルコール、またはグリシトールとも呼ばれる。これらは天然に存在する白色で水溶性の固体であり、食品業界で増粘剤および甘味料として広く利用されている。マンニトール、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコールは、化学的に安定であり、ラジカルスカベンジャー(ヒドロキシルラジカル)として用いることができる。同様に、エリトリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の化合物は、Cu/Zn−SOD、Mn−SODおよびEC−SODアイソザイムのような種々のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)をアップレギュレートすることが見出されている。特に、エリトリトール添加群のSOD活性は2〜5倍増大した。さらに、メイラード反応はSOD活性を著しく低下させるため、糖尿病患者はメイラード反応によりSOD活性が低くなることが報告されている(米国特許出願公開第20100037353号)。マンニトール含有高浸透圧溶液は、エタノール誘発性胃粘膜障害を防止することが示されている(Gharzouli K, Exp.Toxic.Pathol., 2001; 53: 175)。ラットとヒトは共に、消化管(GIT)内で摂取されるマンニトールを部分的に吸収し代謝する。ただし、腸内細菌叢がマンニトールをより吸収し易い形態に変換する。ラットでは、吸収されたマンニトールは、おそらくフルクトースを通じて、肝グリコーゲンに変換される(J. Nutr. 1985, 115: 890)。マンニトールにより生細胞を保護する機構は完全には判明していない。
【0032】
本飲料はpH調整剤および着香剤等の他の成分を含む。
本発明による飲料の重要な実施形態には以下のものがある:
本発明の重要な一実施形態は、毒性を低減した飲料に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、肝毒性を低減したアルコール飲料に関する。
本発明のさらに別の実施形態は、肝毒性低減を実現するために肝保護剤を含むアルコール飲料に関する。
本発明の重要な一実施形態において、本飲料は、D−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択される糖アルコール、およびD−キシロース、D−マンノース、D−スクロース、D−ラクトースおよびこれらの混合物から選択される還元糖または非還元糖と組み合わされた、18β−グリチルリチンを含む。
本発明のさらに別の重要な一実施形態において、本飲料は、D−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択される糖アルコールと組み合わされた18α−グリチルリチンを含む。
重要な一実施形態において、本飲料組成物は、18β−グリチルリチンを0.05〜0.4%、好ましくは0.1〜0.3%の範囲で含み、D−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトール(Erythitol)、D−キシロース、D−マンノース、D−スクロース、D−ラクトースおよびこれらの混合物を0.5〜3.0%、好ましくは1.0〜2.5%の範囲で含む。
【0033】
重要な一実施形態において、本飲料組成物は、18α−グリチルリチンを0.05〜0.3%、好ましくは0.1〜0.3%の範囲で含み、D−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトール(Erythitol)およびこれらの混合物を0.5〜3.0%、好ましくは1.0〜2.5%の範囲で含む。
【0034】
重要な一実施形態において、肝保護剤の最も好ましい組み合わせは、18β−グリチルリチンまたは18α−グリチルリチンとD−マンニトールとの組み合わせである。
重要な一実施形態において、本飲料組成物は、0.05〜0.3%の範囲の18β−グリチルリチンおよび0.5〜3.0%の範囲のD−マンニトール、好ましくは、0.1〜0.3%の範囲の18β−グリチルリチンおよび1.0〜2.5%の範囲のD−マンニトールを含む。
重要な一実施形態において、本飲料組成物は、0.1〜0.3%の範囲の18α−グリチルリチンおよび1.0〜2.5%の範囲のD−マンニトールを含む。
【0035】
さらに別の実施形態として、(a)アルコールもしくは水またはこれらの混合物を入手する工程、(b)18β−グリチルリチンまたは18α−グリチルリチンと、工程(a)のアルコールもしくは水またはアルコールおよび水の混合物とを混合する工程、(c)工程(b)の混合物に糖アルコールまたは糖を添加する工程、(d)工程(c)で得られた溶液のpHを4.0〜9.0の間に調整する工程、(e)着香剤を添加してもよい工程、および(f)要求されるアルコール飲料組成物を得る工程を含む、アルコール飲料組成物の調製方法がある。
本発明のさらに別の実施形態では、pH調整剤を含むアルコール飲料組成物を提供する。
【0036】
さらに別の実施形態では、当該pH調整剤は、有機または無機塩基/緩衝剤であり、好ましくはソルビン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム(一塩基、二塩基または三塩基)から選択される。
本発明の更なる実施形態では、バニラおよびストロベリーから選択される着香剤を含んでもよい飲料を提供する。
本発明のさらに別の実施形態では、良好な味、風味、香り、透明度およびバズファクターを有する飲料を提供する。
本発明の更なる実施形態では、肝保護活性に関して、糖アルコール、グリチルリチン、および糖アルコールと18βまたは18α−グリチルリチンとの組み合わせの種々の用量が評価された。
本発明の範囲には、種々のアルコール用量およびアルコール投与継続時間により引き起こされる急性および慢性肝障害に関する検査も含まれる。
本飲料組成物のさらに別の実施形態は、肝毒性低減を提供することに関する。
本飲料組成物のさらに別の実施形態は、アルコール誘発性毒性によって引き起こされる、脂肪症、脂肪性肝炎、線維症、肝硬変および肝細胞癌等のアルコール性肝疾患(ALD)などの急性および慢性毒性を含む疾患の改善方法の使用である。
本発明の別の重要な実施形態は、本飲料組成物を飲み易い製品としてフードグレードの瓶、缶、テトラパック、パウチ等に封入できることである。封入は従来の方法で行うことができる。
本発明の配合に存在する相乗作用を立証するために、マーカー/マーカー酵素、すなわちSOD、カタラーゼ、GPx、TNF−αを主に考慮して相乗%を評価した。ただし、上記評価を支持するために、酵素ALT、AST、ALKPおよびMDAの分析も行った。
【0037】
ALT、AST、ALKPを評価した理由:慢性アルコール乱用は、血清中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(AST、ALT)、アルカリホスファターゼ(ALKP)などの肝機能マーカー酵素を変化させため、これらの酵素を検査した。
ALTおよびASTは肝細胞内に見られるが、ASTは骨格筋(skeletal)細胞および心筋細胞内にも見られる。アルコール性肝障害では、少なくとも部分的にはアルコール性骨格筋障害の反映として、ASTがALTよりも高くなる。これは、ALTがASTを上回る急性肝細胞障害(例えば急性ウイルス性肝炎)における通常のパターンと逆である。
【0038】
ALKPは肝臓の胆管に並ぶ細胞内にある酵素である。血漿中ALKPレベルは、変質胆汁生成および/または分泌並びに慢性肝疾患に関係し、肝疾患にほぼ随伴して上昇する。
酸化ストレスマーカー(MDA、抗酸化酵素[SOD、CAT、グルタチオンペルオキシダーゼ等]、還元型グルタチオン[GSH])を評価した理由:肝臓内のアルコール代謝は活性酸素種(ROS)発生につながる。アルコールはまた、シトクロムP450の活性を促し、これがROS産生の一因となる。さらに、アルコールは体内の特定の金属のレベルを変化させ、これによりROS産生が促進される。最後に、アルコールは、ROSを除去できる作用物質(すなわち、内因性抗酸化物質)のレベルを低下させる。結果的に生じる細胞の状態は、酸化ストレスと呼ばれ、細胞傷害をもたらし得る。肝細胞内でのROS産生および酸化ストレスは、アルコール性肝疾患の発現において中心的役割を果たす。
【0039】
MDA(マロンジアルデヒド)は細胞膜脂質過酸化反応の最終生成物である。ROSは、細胞膜の多価不飽和脂肪酸の劣化(酸化劣化)を引き起こし、細胞損傷をもたらす。脂質過酸化反応の程度は、組織内MDA量との間に高い相関を示す場合がある。
SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)は、スーパーオキシドラジカルの酸素および過酸化水素への分解を触媒する。肝細胞は、多数の物質の代謝に関係する主要器官であるため、SODにより強化される。
CAT(カタラーゼ)は、過酸化水素(H
2O
2)の水および酸素への変換を触媒する。この酵素は、ほとんどの真核細胞のペルオキシゾームに局在している。
GPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)は、ほとんどの細胞の細胞質に最も豊富に存在する。GPxはGSHの存在下で過酸化水素(H
2O
2)を中和する。
【化1】
(GSH−還元型グルタチオン、GSSG−酸化型グルタチオン)
【0040】
GSHは好気性細胞内に最も豊富に存在する抗酸化物質である。GSHは酸化ストレスから細胞を保護するうえで不可欠なものであり、フリーラジカルスカベンジャーおよび脂質過酸化反応の阻害物質としての役割を果たす。GSHはまた、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)によるH
2O
2の分解に関与する。還元型グルタチオン(GSH)の酸化型グルタチオン(GSSG)に対する比は、細胞の健康状態(細胞内酸化還元電位の状態)の指標となる。正常な健康状態では、GSHは細胞内グルタチオンの約90%を構成する(すなわち、GSH/GSSGは約9である)。ただし、GSH/GSSG比はROS関連疾患の際に低下する。
腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)を評価した理由:アルコール摂取は、エンドトキシンの腸から門脈循環への転位を増加させ、クッパー(Kuppfer)細胞(免疫細胞)と相互作用し、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)を含む複数の炎症性サイトカインの分泌につながる。
上記説明に基づき、複数の重要なマーカーを特定した。選択したパラメータが重要である理由は以下のとおりである:
【0041】
SOD、カタラーゼおよびGPx:系内でSODはスーパーオキシドのH
2O
2への不均化反応を触媒する。次いで、GPxおよびカタラーゼが単独でこのH
2O
2を水に変換する。SODは、GPxおよびカタラーゼと共に、ROSの有害な影響に対して主要な酵素防御を形成する。
【0042】
GSHは、アルコールを含む生体外物質から細胞を保護する主な内因性抗酸化物質である。アルコールは、オキシダントを中和するために、前記プロセスでGSHレベルを低下させることが知られている。これとは別に、内因性グルタチオン−グルタチオンペルオキシダーゼ系が、エタノールに曝された肝細胞内の重要な抗酸化物質および細胞保護機構として機能する。従って、細胞内GSHレベルの低下は、エタノール媒介肝細胞性機能障害において重要な役割を果たす。
【0043】
以下の表(1〜9)は、個々の成分の肝保護%、各成分の組み合わせおよび各組み合わせが示す相乗%を表している。すべての動物実験は、用量2.5g/kgのアルコールの経口投与により、1ヶ月間にわたり実施された。
【表1】
【表2】
【表3】
【0049】
【表9】
上記表に挙げられたデータは、18β−GA/D−マンニトールの組み合わせが、18β−GA/D−エリトリトールおよび18β−GA/キシリトールの組み合わせよりも高い相乗作用を示すことを明確に表している。
【0050】
上記表に挙げられたデータは、18β−GA/D−マンニトールの組み合わせ全体が、18β−GA/D−マンニトールの組み合わせとほぼ同様の相乗作用を示すことをさらに表している。
また、18β−GA/還元または非還元単糖または二糖の組み合わせは相乗効果が小さいとも結論づけられる。
本発明を以下の実施例により説明する。ただし、本発明の範囲は、いかなる態様においても、当該実施例によって限定されることはないと理解すべきである。当業者であれば、本研究が以下の実施例を含んでいること、また本発明の範囲内でさらに修正および変更ができることが理解できるであろう。
【0051】
(材料および方法)
(試薬)
Bengal Chemicals,West Bengal,Indiaから蒸留エタノールを入手した。Span Diagnostics Ltd. Strunt,IndiaからAST、ALT、ALKPおよび総タンパクなどの生化学キットを入手した。K2Cr2O7誘発性腎毒性における酸化ストレスおよびニトロソ化ストレス並びに抗酸化酵素の経時的研究がある[BMC Nephrol, 6:4]。ラットTNF−α ELISAキット(BioLegend, Inc.Sam Diego,CA,USA)に記載の標準手順によりTNF−α(TNF−)を評価した。
【0052】
本研究で使用したすべての化学物質は分析用のものであり、以下の企業から入手した:Sigma(St.Louis,MO,USA)、Merck(Mumbai,India)、S. D. Fine Chemicals(Mumbai,India)およびQualigen(Mumbai,India)。
【0053】
ラットにおけるアルコール誘発性亜急性肝毒性
体重150〜200gの雄のウィスター系アルビノラットを地域の登録取引業者(CPCSEA Regd No.1443/po/6/4/CPCSEA、Kolkata,India)から調達し、標準的屋内条件(26℃±2℃、60〜70%RH、明暗周期12±1時間)にて7日間順応させた。実験期間中、動物には市販飼料(Upton India Pvt. Ltd,India)を与え、自由飲水させた。
【実施例】
【0054】
(例1)
a)生物試験用モデル:
体重150〜200gの雄のウィスター系アルビノラットを調達し、各6匹からなる群に無作為に分ける。25%のアルコール(2.5mg/kg/日,p.o.)を28日間にわたり経口投与することで、ラットにアルコール誘発性亜急性毒性を起こさせ、この群を陰性対照とし、陽性対照群に蒸留水のみを与えた。
b)薬液の調製:
15〜40%の水性アルコールですべての薬液を調製し、肝保護活性の評価のためにpHを4.0〜9.0の範囲に調整した。前記溶液を蒸留水でさらに蒸留し25%の水性アルコール溶液を得て、胃管栄養法により工程a)の異なるラット群に経口投与した。
c)肝保護活性の評価:
28日目に当該動物をエーテルで麻酔し、心臓穿刺により血液サンプルを採取し、当該血清を用いて、マーカー酵素、すなわち血清中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)の検定を行った。血液採取の直後に当該ラットをエーテル過剰投与により屠殺して、その肝臓を取り出し、低温の生理的食塩水で洗浄した。前記肝臓の一部は、リン酸緩衝液(pH7.4)中での肝ホモジネート調製のために用いられた。マロンジアルデヒド(MDA)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、還元型グルタチオン(GSH)およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)の評価のために、当該上澄み液を使用した。
【0055】
(例2)
D−マンニトール(0.5g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、0.5%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。当該処置は28日間にわたって行い、1日ごとに10mlのサンプルを6mlの蒸留水で希釈し、25%の水性アルコール溶液(16ml)を作製し、経口投与した(10ml/kg/日)。例(1c)に関して肝保護活性の評価を行った。
平均肝保護%:
【表10】
【0056】
(例3)
水性アルコール(100ml)中にD−マンニトール(2.5g)を溶解させて、2.5%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表11】
【0057】
(例4)
18β−グリチルリチン(0.1g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、0.1%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表12】
【0058】
(例5)
D−マンニトール(2.5g)および18β−グリチルリチン(0.1g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、2.6%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表13】
【0059】
(例6)
D−マンニトール(2.5g)および18β−グリチルリチン(1.0g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、3.5%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表14】
【0060】
(例7)
D−マンニトール(0.5g)および18β−グリチルリチン(0.1g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、0.6%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表15】
【0061】
(例8)
D−マンニトール(3.0g)および18β−グリチルリチン(0.1g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、3.1%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表16】
【0062】
(例9)
D−マンニトール(2.5g)および18β−グリチルリチン(0.4g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、2.9%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表17】
【0063】
(例10)
D−マンニトール/D−キシリトール/D−エリトリトール(0.1g)および18β−グリチルリチン(0.1g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、1.1%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表18】
【0064】
(例11)
D−マンニトール/D−キシリトール/D−エリトリトール(2.5g)および18β−グリチルリチン(0.3g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、2.8%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表19】
【0065】
(例12)
D−マンノース/D−キシロース/D−ラクトース/D−スクロース(2.5g)および18β−グリチルリチン(0.3g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、2.8%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表20】
【0066】
(例13)
D−マンノース/D−キシロース/D−ラクトース/D−スクロース(1.0g)および18β−グリチルリチン(0.1g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、1.1%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表21】
【0067】
(例14)
D−マンニトール(1.0g)および18α−グリチルリチン(0.1g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、1.1%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表22】
【0068】
(例15)
D−マンニトール(2.5g)および18α−グリチルリチン(0.3g)を水性アルコール(100ml)中に溶解させて、2.8%の溶液を得た。この溶液を例(1a)のラット群の1匹に複数回に分けて投与した。前記処置、サンプル希釈、経口投与および肝保護活性の評価を、例(2)に記述したとおり、かつ例(1c)に関して実施した。
平均肝保護%:
【表23】
【0069】
(例16)
(調製方法)
0.1〜0.4gの18β/α−グリチルリチンを、15〜40%のアルコールまたはアルコール−水混合物(100ml)中に溶解させる。この溶液(0.5〜3.0g)に糖アルコールまたは糖を添加する。得られた溶液を十分に混合し、透明溶液を得る。その後、得られた溶液のpHを4.0〜9.0の間に調整し、最終アルコール飲料組成物を得る。このとき所望の着香剤(バニラ)を添加してもよい。
【0070】
本出願で用いられる略語の原語を以下に挙げる:
GA:グリチルリチン(グリチルリチン酸もしくはグリシルリジン酸または18β−グリチルリチン)
Man:マンニトール
Xyl:キシリトール
Ery:エリトリトール(Erythitol)
Mans:マンノース
Suc:スクロース
Xyls:キシロース
Lac:ラクトース
SOD等:SOD、CATおよびGPx
ALT等:ALT、ASTおよびALKP
Mat:マトリン
【0071】
(本発明の利点)
1.本発明のアルコール飲料は優れた肝保護を有する。
2.本発明のアルコール飲料は、良好な香り、味、透明度および良好なバズファクターを有する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕a)肝保護剤
b)アルコールもしくは水またはこれらの混合物
c)pH調整剤を含み、
d)着香剤を含んでもよい、
相乗的肝保護を提供するアルコール飲料組成物。
〔2〕肝保護剤が、18β−グリチルリチン、18α−グリチルリチン、糖アルコールおよび糖からなる群から選択される、前記〔1〕に記載の飲料組成物。
〔3〕糖アルコールが、D−マンニトール、D−キシリトールおよびD−エリトリトールからなる群から選択され、糖が、D−スクロース、D−マンノース、D−キシロースおよびD−ラクトースからなる群から選択される、前記〔2〕に記載の飲料組成物。
〔4〕肝保護剤が、18β−グリチルリチン、18α−グリチルリチン、並びにD−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトール、D−スクロース、D−マンノース、D−キシロースおよびD−ラクトースまたはこれらの混合物のうちいずれか1種からなる群から選択される組み合わせである、前記〔1〕から〔3〕までのいずれかに記載の飲料組成物。
〔5〕18β−グリチルリチンが、0.05〜0.4%、好ましくは0.1〜0.3%の範囲であり、かつD−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトール、D−キシロース、D−マンノース、D−スクロース、D−ラクトースまたはこれらの混合物が、0.5〜3.0%、好ましくは1.0〜2.5%の範囲であり、また、18α−グリチルリチンが0.05〜0.3%、好ましくは0.1〜0.3%の範囲であり、かつD−マンニトール、D−キシリトール、D−エリトリトールまたはこれらの混合物が0.5〜3.0%、好ましくは1.0〜2.5%の範囲である、前記〔4〕に記載の飲料組成物。
〔6〕より好ましい肝保護剤が18β/18α−グリチルリチンとD−マンニトールとの組み合わせである、前記〔1〕から〔5〕までのいずれかに記載の飲料組成物。
〔7〕18β−グリチルリチンが0.05〜0.4%の範囲、D−マンニトールが0.5〜3.0%の範囲であり、好ましくは18β−グリチルリチンが0.1〜0.3%の範囲、D−マンニトールが1.0〜2.5%の範囲であり;18α−グリチルリチンが0.1〜0.3%の範囲、D−マンニトールが1.0〜2.5%の範囲である、前記〔6〕に記載の飲料組成物。
〔8〕pH調整剤が有機または無機塩基/緩衝剤であり、好ましくはソルビン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム(一塩基、二塩基または三塩基)から選択される、前記〔1〕に記載の飲料組成物。
〔9〕着香剤がバニラフレーバー、スロベリーフレーバーから選択される、前記〔1〕に記載の飲料組成物。
〔10〕前記〔1〕のアルコール飲料組成物の調製方法であって、(a)アルコールもしくは水またはこれらの混合物を入手する工程、(b)18β−グリチルリチンまたは18α−グリチルリチンと、工程(a)のアルコールもしくは水またはアルコールおよび水の混合物とを混合する工程、(c)工程(b)の混合物に糖アルコールまたは糖を添加する工程、(d)工程(c)で得られた溶液のpHを4.0〜9.0の間に調整する工程、(e)着香剤を添加してもよい工程、および(f)要求されるアルコール飲料組成物を得る工程を含む方法。
〔11〕肝毒性低減を提供するための、前記〔1〕に記載のアルコール飲料組成物の使用。
〔12〕アルコール誘発性毒性によって引き起こされる、脂肪症、脂肪性肝炎、線維症、肝硬変および肝細胞癌等のアルコール性肝疾患(ALD)などの急性および慢性毒性を含む疾患の改善方法に用いる、前記〔1〕に記載のアルコール飲料。