(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194433
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】固体酸化物電池スタックの封止構成及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0271 20160101AFI20170828BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20170828BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20170828BHJP
【FI】
H01M8/02 S
H01M8/12
H01M8/02 R
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-575006(P2016-575006)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公表番号】特表2017-523567(P2017-523567A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】FI2014050583
(87)【国際公開番号】WO2016009105
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2016年12月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516183473
【氏名又は名称】エルコーゲン オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100133983
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 均
(72)【発明者】
【氏名】ノポネン,マッティ
(72)【発明者】
【氏名】トッリ,パウリ
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−050692(JP,A)
【文献】
特開平11−154525(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102005005117(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物電池スタックの封止構成であって、
各電池は、燃料側と、酸素リッチ側と、前記燃料側と前記酸素リッチ側との間の電解質層を含む電解質要素とを含み、前記電池は、スタックの形態に構成され、前記固体酸化物電池スタックは、反復的な構造において、各電池が電池内に流れを構成するための流れ場プレートと、燃料送り流が誘導される領域としての、前記流れ場プレートにある流れ分配領域と、前記流れ場プレートにある流れ出口領域と、前記流れ場プレートにある流れ領域と、前記流れ分配領域と前記流れ出口領域とに開放される流れオリフィスとを含み、
当該封止構成は、前記流れ場プレートと前記電解質要素との間に配置される少なくとも1つのガスケット構造を含み、該少なくとも1つのガスケット構造は、前記反復的な構造の前記流れ場プレートの間に位置し、
当該封止構成は、前記流れ場プレート及び前記ガスケット構造と接触する、第1の封止層を含み、該第1の封止層は、前記流れ場プレートに対向する領域であって、前記ガスケット構造の端面より内側の領域の上にオーバーレイされ、
当該封止構成は、前記電解質要素及び前記ガスケット構造と接触する、第2の封止層を含み、該第2の封止層は、前記電解質要素に対向する領域であって、前記ガスケット構造の端面より内側の領域の上にオーバーレイされることを特徴とする、
封止構成。
【請求項2】
当該封止構成は、前記流れ場プレート及び前記電解質要素の少なくとも一方の圧縮性強化表面の間で圧縮される、前記ガスケット構造を含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止構成。
【請求項3】
前記ガスケット構造は、前記封止層をカプセル化するために、並びに、前記電解質要素と前記流れ場プレートとの間の並びに前記流れ場プレートの間の境界を封止するために、少なくとも部分的に、圧縮可能な材料で作られることを特徴とする、請求項1に記載の封止構成。
【請求項4】
前記ガスケット構造は、前記流れ場プレートの間で電気を絶縁するための絶縁材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止構成。
【請求項5】
前記ガスケット構造は、前記流れ場プレートと前記電解質要素との間で電気を絶縁するための絶縁材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止構成。
【請求項6】
当該封止構成は、スクリーン印刷製造技術によって製造される封止層を含む、請求項1に記載の封止構成。
【請求項7】
固体酸化物電池スタックを封止する方法であって、
各電池は、燃料側と、酸素リッチ側と、前記燃料側と前記酸素リッチ側との間の電解質層を含む電解質要素とを含み、前記電池は、スタックの形態に構成され、該スタックは、反復的な構造において、各電池が前記電池内で流れを構成するための流れ場プレートと、燃料送り流が誘導される領域としての、前記流れ場プレートにある流れ分配領域と、前記流れ場プレートにある流れ出口領域と、前記流れ場プレートにある流れ領域と、前記流れ分配領域と前記流れ出口領域とに開放される流れオリフィスとを含み、当該方法において、前記流れ分配領域からの流れは、前記流れ場プレート上を流れ、
少なくとも1つのガスケット構造が、前記流れ場プレートと前記電解質要素との間に並びに前記反復的な構造の前記流れ場プレートの間に配置され、第1の封止層が、前記流れ場プレート及び前記ガスケット構造と接触して配置され、前記第1の封止層は、前記流れ場プレートに対向する領域であって、前記ガスケット構造の端面より内側の領域の上にオーバーレイされ、第2の封止層が、前記電解質要素及び前記ガスケット構造と接触して配置され、前記第2の封止層は、前記電解質要素に対向する領域であって、前記ガスケット構造の端面より内側の領域の上にオーバーレイされることを特徴とする、
方法。
【請求項8】
前記ガスケット構造は、2つの圧縮性強化構造の間で圧縮されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記封止層はカプセル化され、境界が、前記ガスケット構造の圧縮可能な材料を圧縮することによって、前記電解質要素と前記流れ場プレートとの間で並びに前記流れ場プレートの間で封止されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ガスケット構造の絶縁材料を利用することによって、電気絶縁が、前記流れ場プレートの間で行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ガスケット構造の絶縁材料を利用することによって、電気絶縁が、前記流れ場プレートと前記電解質要素との間で行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記封止層は、スクリーン印刷技術で製造されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
世界のエネルギの殆どは、石油、石炭、天然ガス又は原子力を用いて生産されている。全てのこれらの生産方法は、例えば、利用可能性及び環境に対する優しさに関する限り、それらの特定の課題を有する。環境に関する限り、特に石油及び石炭は、それらが消費されるときに、汚染を引き起こす。原子力の課題は、少なくとも、使用済み燃料の貯蔵である。
【0002】
特に環境問題の故に、より環境に優しく、例えば、上述のエネルギ源よりも良好な効率を有する、新しいエネルギ源が、開発されている。燃料電池−燃料電池を用いて、燃料のエネルギ、例えば、バイオガスが、環境に優しいプロセスにおいて化学反応を介して電気に直接的に変換される、及び電気を燃料に変換する電解槽は、有望な将来的なエネルギ解決デバイスである。
【0003】
太陽光発電及び風力のような再生可能なエネルギ生産方法は、季節的な生産変動の問題に直面する。何故ならば、それらの電気生産は、環境要因によって制約されるからである。過剰生産の場合、水電解を通じた水素生産が、将来的なエネルギ貯蔵オプションの1つとして提案されている。更に、再生可能なバイオガス貯蔵所から高品質のメタンガスを生産するために電解セルも利用し得る。
【0004】
本発明は、固体酸化物燃料電池(SOFC)スタック又は固体酸化物電解槽電池(SOEC)スタックにおける封止構成(sealing arrangement)に関する。燃料電池は、電気を生産するために、アノード電極にある入力反応燃料ガス及びカソード電極にあるガス状酸化剤(酸素)を反応させる。電解槽反応は燃料電池と逆である。即ち、電気を用いて燃料及び酸素を生産する。SOFCスタック及びSOECスタックは、積重ね電池要素及びセパレータをサンドイッチ状に含み、各電池要素は、電解質、アノード側、及びカソード側を挟むことによって構成される。反応物は、流れ場プレート(flow field plates)によって誘導される。
【背景技術】
【0005】
図1に提示されるような燃料電池は、アノード側100と、カソード側102と、それらの間の電解質材料101とを含む。ここでは、その構造を電解質要素104(
図2、
図3、
図4)と呼ぶ。固体酸化物燃料電池(SOFCs)では、酸素106がカソード側102に送られ、それはカソードから電子を受けることによって負の酸素イオンに変えられる。負の酸素イオンは、電解質材料101を通じてアノード側100に移り、それはアノード側で燃料108と反応して、電子及び水を生産し、典型的には、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO
2)も生産する。アノード100及びカソード102は、燃料電池のための負荷110を含む外部電気回路111を通じて接続されて、システムから熱と共に電気エネルギを引き出す。メタン、一酸化炭素、及び水素燃料の場合における燃料電池反応を以下に示す。
アノード:CH
4+H
2O=CO+3H
2
CO+H
2O=CO
2+H
2
H
2+O
2−=H
2O+2e
−
カソード:O
2+4e
−=2O
2−
正味反応:CH
4+2O
2=CO
2+2H
2O
CO+1/2O
2=CO
2
H
2+1/2O
2=H
2O
【0006】
電解質動作モード(固体酸化物電解電池(SOEC))において、反応は逆転させられる。即ち、熱、並びに、ソース110からの電気エネルギは、電池に供給され、電池で、水が、しばしば、二酸化炭素も、カソード側において還元させられて、酸素イオンを形成し、酸素イオンは、電解質材料を通じてアノード側に動き、酸化反応がアノード側で起こる。SOFCモード及びSOECモードの両方において同じ固体電解質電池を用いることが可能である。そのような場合には、この記述の脈絡において、電極は、典型的には、燃料電池動作モードに基づき指定されるアノード及びカソードであるのに対し、純粋にSOEC用途では、酸素電極はアノードと呼ばれてよく、反応電極はカソードと呼ばれてよい。
【0007】
固体酸化物電解槽電池は、高温電解反応が起こるのを可能にする温度で動作し、前記温度は、典型的には、500〜1000℃の間であるが、前記限界が異なる温度が有用なことがある。これらの動作温度は、SOFCsのそれらの条件と類似する。正味電池反応は、水素ガス及び酸素ガスを生産する。1モルの水についての反応が以下に示され、水の還元はアノードで起こる。
カソード:H
2O+2e
− ---> 2H
2+O
2−
アノード:O
2− ---> 1/2O
2+2e
−
正味反応:H
2O ---> H
2+1/2O
2
【0008】
本明細書では一般的に固体酸化物電池スタックと呼ぶ、固体酸化物燃料電池(SOFC)スタック及び固体酸化物電解槽(SOE)スタックにおいて、各電池内で内部的なアノードガスに対するカソードガスの流れ方向並びに隣接する電池の間の流れ方向は、スタックの異なる電池層を通じて組み合わせられる。更に、カソードガス及びアノードガス又はそれらの両方は、それが排気される前に、1つよりも多くの電池を通じて進み得るし、複数のガスストリームは、一次電池を通じた後、二次電池を通じる前に、分割され或いは合流させられ得る。これらの組み合わせは、電流密度を増大させ、電池及びスタック全体に亘る温度勾配を最小にする、働きをする。
【0009】
SOFCは、通常動作において、約0.8Vの電圧を供給する。総電圧出力を増大させるために、燃料電池は、スタックに組み立てられるのが普通であり、スタック内で、燃料電池は流れ場プレート(同様に、セパレータプレート、インターコネクトプレート、インターコネクタプレート、バイポーラプレート)を介して電気的に接続される。所望のレベルの電圧は、必要とされる電池の数を決定する。
【0010】
バイポーラプレートは、隣接する電池ユニットのアノード側及びカソード側を分離し、同時に、アノードとカソードとの間の電子伝導を可能にする。インターコネクトプレート又はバイポーラプレートは、インターコネクトプレートの一方の側での燃料ガスの通過及び他方の側での酸素リッチガス(酸素に富むガス)の通過のための、複数の流路を備えるのが普通である。燃料ガスの流れ方向は、電池ユニットの燃料入口部分から燃料出口部分への実質的な方向として定められる。同様に、酸素リッチガスの流れ方向は、電池ユニットのその入口部分からその出口部分への実質的な方向として定められる。
【0011】
従来、電池は互いに重なり合って積み重ねられ、完全なオーバーラップは、例えば、スタックの一方の側に全ての燃料入口及び酸化剤入口を有し且つ反対側に全ての燃料出口及び酸化剤出口を有する共流(co-flow)を伴う、スタックをもたらす。動作中の構造の温度に影響を及ぼす1つの構成は、電池内に送られる燃料の蒸気改質(steam reformation)である。蒸気改質は、吸熱反応であり、電池の燃料入口縁を冷却する。
【0012】
電気化学プロセスの放熱性の故に、出口ガスは、入口温度よりも高い温度で出る。吸熱反応及び放熱反応がSOFCスタック内で組み合わせられるとき、スタックに亘る有意な温度勾配が生成される。大きな温度勾配は、スタック内で極めて望ましくない熱応力を誘発し、それらは電流密度及び電気抵抗における相違を引き起こす。従って、許容し得ない応力を避けるのに十分な程に温度勾配を減少させ、且つ、均一な電流密度プロファイルを通じて電気効率を最大にするために、SOFCスタックの熱管理の問題が存在する。
【0013】
従来技術の燃料電池スタック又は電解槽電池スタックは、スタック内の電池構造の間に電解質要素構造厚さにおける公差変動を有する。例えば、セラミック材料が用いられる電池スタック構造では、ほんのマイクロメータの測定値における厚さ変動のみが従来技術の実施態様において便利である。この電池間の異なる流れ条件についての結果は、電池間の温度勾配及びスタックの出力密度の減少を引き起こす、スタック構造における異なる電池電圧プロファイルをもたらす。よって、スタックのデューティー比(duty ratio)は減少させられ、スタックの寿命は短くさせられ、初めに、生産される電力出力当たりのスタックの資本コストを減少させ、後に、スタック構造の運用コストを増大させる。何故ならば、例えば、燃料電池システムではスタック交換時間が短縮され、電解槽スタックでは電気のコストが増大させられるからである。
【0014】
高温固体酸化物電池スタックは、燃料電池及び電解モードの両方におけるそれらの極めて高い効率の故に、好適な変換技術である。これらの技術に関する固有の挑戦は高温に起因し、挑戦は、燃料電池及び電解槽の電気生産能力及び水素生産能力をそれぞれ減少させる構造に対する内部抵抗の増大を引き起こす材料の腐食である。腐食の問題は、スタック構造の多数の場所に存在し得るが、典型的には、様々な材料のシステムを含む領域において際立つ。そのようなシステムは、金属インターコネクト構造、封止構造、及び酸化ガスの間の三相領域である。そのような材料システムにおいて、例えば、典型的には、フェライトステンレス鋼等級で作られる、金属インターコネクト材料は、その良好な耐食性及び他のスタック材料間の整合する熱膨張特性の故に、例えば、金属の検証構造を変更することによって、或いは、究極的には鋼材料の平面通過酸化を引き起して、燃料及び酸素が混ざって構造の壊滅的な故障を引き起こすことがある、金属表面の保護酸化物構造を変更することによって、典型的には、少なくとも部分的にガラス材料で作られる、封止構造と反応し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、燃料電池スタック又は電解槽電池スタックの信頼性及び寿命を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これは、固体酸化物電気スタックの封止構成であって、各電池は、燃料側と、酸素リッチ側と、燃料側と酸素リッチ側との間の電解質要素とを含み、電池はスタックの形態に構成され、固体電池スタックは、反復的な構造において、各電池が電池内で流れを構成するための流れ場プレートと、流れ場プレートにある流れ分配領域と、流れ場プレートにある流れ出口領域と、流れ場プレートにある流れ領域と、流れ分配領域と流れ出口領域とに開放される流れオリフィスとを含む、封止構成(sealing arrangement)によって達成される。封止構成は、流れ場プレートと電解質要素との間に並びに反復的な構造の流れ場プレートの間に位置する少なくとも1つのガスケット構造を含み、第1の封止層が、流れ場プレート及びガスケット構造と接触し、第1の封止層は、流れ場プレートの選択的な領域の上に並びにガスケット構造の選択的な領域の上にオーバーレイされ、選択的な領域は、腐食最小化基準に基づき並びに封止機能基準に基づき選択される。
【0017】
本発明の焦点は、各電池は、燃料側と、酸素リッチ側と、燃料側と酸素リッチ側との間の電解質要素とを含み、電池はスタックの形態に構成される、固体酸化物電池スタックを封止する方法にもあり、当該方法では、流れ場プレートを用いることによって、流れが電池内で構成され、燃料送り流が流れ分配領域に誘導される。封止方法では、少なくとも1つのガスケット構造が、流れ場プレートと電解質要素との間に並びに反復的な構造の流れ場プレートの間に配置され、第1の封止層が、流れ場プレート及びガスケット構造と接触して配置され、当該方法において、第1の封止層は、流れ場プレートの選択的な領域の上に並びにガスケット構造の選択的な領域の上にオーバーレイされ、選択的な領域は、腐食最小化基準に基づき並びに封止機能基準に基づき選択される。
【0018】
本発明は、流れ場プレート及びガスケット構造と接触し且つ電解質要素及びガスケット構造と接触する封止層構造の利用に基づく。封止層は、流れ場プレートの選択的な領域の上に並びにガスケット構造の選択的な領域の上にオーバーレイされ、そして、選択的に、電解質要素の選択的領域の上にもオーバーレイされる。選択的な領域は、接触材料の構造に基づき、並びに燃料電池スタック及び電解質要素の機能的な構造に基づき決定される。
【0019】
本発明の利益は、電池スタックの信頼性が向上させられ、SOFCシステム及びSOECシステムの運用コストが減少させられ、電池スタックの寿命がより長くなり、よって、従来技術の実施態様に比べて電池システム全体の電力運用がより良好にされ且つより経済的にさせられることである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本発明に従った例示的な電池構造を示している。
【
図4】本発明に従った1つの好適な封止構成の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によれば、燃料電池スタック(fuel cell stack)又は電解槽スタック(electrolyzer stack)は、少なくとも2つの単一の反復的な構造を含む。単一の反復的な構造は、少なくとも、1つの電気機械的に活性な電解質要素構造と、その意図される囲壁でガス雰囲気を封止する少なくとも1つの封止手段とを含み、少なくとも1つの電気機械的に活性な電解質要素構造は、少なくとも2つの流れ場プレート(flow field plates)の間に配置される、燃料側、間の電解質、及び酸素リッチ側を含み、他方が電解質要素構造の酸素リッチ側(酸素に富む側)において酸素リッチガス(酸素に富むガス)を送り、他方が電解質要素の燃料側において燃料ガスを送る。流れ場プレートは、燃料ガス及び/又は酸素リッチガスのための少なくとも1つの入口開口と、使用済み燃料ガス及び/又は酸素リッチガスのための少なくとも1つの出口開口とを有する。燃料ガスの流れ方向及び酸素リッチガスの流れ方向は、両方のガスが電解質要素の各側で本質的に同じ方向に流れる共流(co-flow)構成において、或いは、流れ方向が燃料ガスと酸素リッチガスとの間で本質的に反対である向流(counter-flow)構成において、或いは、流れ向きが燃料ガスと酸素リッチガスとの間で本質的に90°にある直交流(gross-flow)構成において、或いは、それらの組み合わせにおいて、配置され得る。
【0022】
以下、本発明を主に固体酸化物燃料電池技術に関して説明する。固体酸化物電解槽スタックは、最新技術において記載されるような燃料電池反応に対する逆反応で化学物質を生成するために電気が用いられる方法において、固体酸化物燃料電池スタックと異なるだけである。
【0023】
図2は、例示的な反復的な固体酸化物電池構造を表している。固体酸化物電池スタックは、図示する方法において反復的な構造138内に配置される、幾つかのプレート121を含む。この実施態様中のプレートは、長方形であり、対称的である。アノード電極とカソード電極との間の電解質槽を含む電解質要素構造104が、プレートの概ね中央でプレート121の間に配置される。電解質要素構造104は、如何なる適切な電解質要素構造であってもよく、従って、ここでは更に詳細に記載されない。流れ場プレート121及び電解質要素構造104は、好ましくは、例えば、ケイ酸塩鉱物、ガラス、金属、ガラス−セラミック、セラミック、又はそれらの複合材料である、圧縮可能な材料で作られる、ガスケット構造128で封止(シール)される。本発明に従ったガスケット構造128は、電池がスタック形態に組み立てられるときに圧縮される。2つの対向する流れ場プレート121及び電解質要素構造104並びにそれらの間のガスケット構造128は、単一の反復的な構造を形成する。
【0024】
1つの実施態様(例えば、
図2)において、流れオリフィス127,137(flow orifices)の高さは、電解質要素構造104厚さにおける公差変動を有する、スタックの反復的な構造138内の流れ分配を安定化させるよう、流れ分配領域120(flow distribution area)の底及び流れ出口領域131(flow outlet area)の底からガスケット構造128の底までの距離によって決定され得る。電池間の類似の圧力損失状態が、均一な熱分配、即ち、スタック内の電池間の類似の温度勾配を達成するために圧縮させられ得る、同様に、少なくとも流れ部品150(flow parts)から事前圧縮させられ得る、ガスケット構造128を利用することによって達成される。よって、固定酸化物電池スタックのデューティー比(duty ratio)は改良され、スタックの寿命もより長くされる。
【0025】
本発明に従った電池スタック構成は、流れ分配領域及び流れ出口領域に開放される流れ制限オリフィス(flow restriction orifices)を含み得る。1つの実施態様では、燃料送り流(fuel feed flow)を燃料電池の両側から流れ分配領域に誘導するための手段を用い得る。ガスケット構造は、流れ制限オリフィスの上で圧縮される。流れ制限オリフィスは、流路(flow path)に対する追加的な圧力シンク(pressure sink)を創ることによって、燃料電池電極の活性領域全体への均質な燃料流れ分配(fuel flow distribution)を保証する。ガスケット構造は、燃料電池の反復的な構造の間に類似の圧力損失状態も創り、燃料電池の各反復的な構造のための均質な燃料流れ分配特性を保証する。燃料電池スタックにおける均一な流れ分配は、燃料電池スタックのための均一な熱分配状態、即ち、スタック内の電池間の類似の温度勾配も保証する。よって、燃料電池スタックのデューティー比は改良され、燃料電池スタックの寿命はより長くされる。
【0026】
ガスケット構造の目的は、更に、酸化剤及び燃料が直接的に混ぜられず、電気機械的に活性な領域の内側で燃料電池反応がないこと、燃料及び酸化剤が電気化学電池から漏れ出さないこと、隣接する電気化学的電池が互いに電子接触しないこと、並びに酸化剤及び燃料が所望の流れ場プレート平面に供給されることを保証することである。流れ場プレートは、金属合金、セラミック材料、サーメット材料、又は燃料電池内に存在する化学応力、熱応力、機械応力に耐え得る他の材料で作られる、平面的な薄いプレートである。酸素リッチガスは、測定可能な量の酸素を含む、あらゆるガス又はガス混合物であり得る。
【0027】
流れ場プレートの輪郭付き表面を形成する好適な製造方法は、材料の形状は変更されるが、材料は追加されず或いは除去されない、スタンピング(stamping)、プレッシング(pressing)、及び同等物のような、塑性変形を用いる方法、又は、溶接のように材料が追加される或いはエッチングのように材料が除去される方法である。流れ場材料が砕けやすい(brittle)ならば、押出し、鋳造、印刷、成形、及び同等物のような、他の製造方法も利用し得る。通常、ガス用のオリフィスを同じ製造ステップにおいて作り得る。
【0028】
各流れ場プレートはスタックアセンブリ構造内で同様に作られ得る。よって、所望の量の反復的な電解質要素構造を有する燃料電池スタックを生産するために、1つだけの種類のプレートが必要とされる。これは構造を単純化し、燃料電池の製造を容易にする。
【0029】
燃料電池システム内の単一の最大のエネルギ消費デバイスは、燃料電池スタックのカソード区画に空気を供給するために用いられる空気ブロア又はコンプレッサである。空気供給デバイスの電力消費は、それらが空気を圧縮しなければならない圧力レベルに比例する。固体酸化物電解槽システムにおいても、電解槽スタックの熱平衡を制御し且つアノード区画に対する明確に定められる酸素分圧に耐えるために、空気がアノードに供給されるのが典型的である。燃料電池及び電解槽システムにおける主要な圧力損出源の1つは、スタック自体である。デバイスの空気側が周囲の雰囲気に対する開放流路を有する方法においてデバイスを設計することは有利である。この構成において、空気供給チャンバ及び空気排出チャンバは、圧力損失が最小にされる方法においてスタックデバイスから独立して設計され得る。そのような設計は、システムのコスト削減も可能にする。何故ならば、材料が節約されるので、空気がスタック内で内部的に多岐管(マニホールド)で集配される解決策に比べて、スタックフットプリントを削減し得るからである。更に、1つの実施態様において、燃料電池の両側における燃料分配流路の配置は、燃料電池スタックへの均一な空気流分配を保証するために、空気入口側及び空気出口側に対して90°に配置されるのが好ましい。何故ならば、その場合、燃料分配流路は、スタックへの空気流を制限しないからである。本発明に従った実施態様において、燃料分配通路は、上で提示したように、異なって配置され得る。
【0030】
図3には、本発明に従った例示的な封止配置構造が表されており、
図14には、本発明に従った好適な封止配置の断面図が表されている。各固体酸化物電池は、燃料側100と、酸素リッチ側12と、燃料側と酸素リッチ側との間の電解質要素104とを含む。固体酸化物電池は、燃料電池又は電解槽電池である。電池はスタックの形態に配置され、スタックは、電池、流れ場プレート121にあるガス流分配領域120、及び流れ場プレート121にあるガス流出口領域131内にガス流を配するよう、反復的な構造138内に、各電池のための流れ場プレート121を含む。固体酸化物電池スタックは、流れ場プレート121の燃料側にある流れ領域143(flow area)や、流れ場プレート121の酸素リッチ側にある流れ領域145や、流れ分配領域120及び流れ出口領域131に開放される流れオリフィス126,136も含む。封止構成は、流れ場プレート121と電解質要素104との間に配置され、且つ、反復的な構造138の流れ場プレート121の間に配置される、少なくとも1つのガスケット構造128を含む。封止構成は、更に、流れ場プレート121及びガスケット構造128と接触する、第1の封止層140aを更に含む。第1の封止層140aは、流れ場プレート121の選択的な領域の上に並びにガスケット構造128の選択的な領域の上にオーバーレイされる。好適な封止構成は、電解質要素104及びガスケット構造128と接触する、第2の封止層140bも含む。第2の封止層140bは、電解質要素104の選択的な領域の上に並びにガスケット構造128の円卓的な領域の上にオーバーレイされる。選択的な領域は、腐食最小化基準に基づき並びに封止機能基準に基づき選択される。封止層140a,140bは、好ましくは、スクリーン印刷技術によって製造され、少なくとも部分的にガラス材料、ガラス−セラミック材料、又は鑞接合金材料から成る。
【0031】
ガスケット構造128は、例えば、ケイ酸塩鉱物、ガラス、金属、ガラス−セラミック、セラミック、又はそれらの複合材料である、圧縮可能な材料で作られるのが好ましい。本発明に従ったガスケット構造128は、電池がスタック形態に組み立てられるときに、2つの圧縮性の強化表面の間で圧縮される。圧縮表面は、流れ場プレート121の表面、又は、電解質要素104の表面及び流れ場プレート121の表面である。ガスケット構造128は、ガスケット構造がオーバーレイされた封止層を有さない流れ部分150から少なくとも事前圧縮されるのが好ましい。ガスケット構造128は、封止層140a及び/又は140bをカプセル化するために並びに封止層140a及び/又は140bへの対流性のガス流を防止するよう境界を封止するために、少なくとも部分的に圧縮可能な材料で作られる。前記境界は、ガスケット構造128と流れ場プレート121との間の境界及び/又はガスケット構造128と電解質要素104との間の境界である。前記ガス流は、特に、酸素含有ガスであり、それは、高温状態と共に、流れ場プレート121金属及びガスケット構造128材料の接触表面への並びに電解質要素104材料とガスケット構造128材料との間の接触表面への腐食を引き起こす。選択的な領域、即ち、封止層140a,140bの幅は、前記カプセル化及び酸素隔離を成功させるために、ガスケット構造128の幅よりも本質的に狭いことが好ましい。好適な封止構成において、ガスケット構造128は、流れ場プレート121の間の及び/又は流れ場プレート121と電解質要素104との間の電気を絶縁するための絶縁材料を含む。
【0032】
図5には、本発明に従ったガスケット構造の他の好適な実施態様が表されており、ガスケット構造は、1/2楕円の幾何学的形状を有する。前記1/2楕円の幾何学的形状124を備える或いは他の形状124のガスケット構造128を備える流れ誘導構成(flow guiding arrangement)を用いる電池スタック構成において、送込み流及び送出し流(feed-in flows and out flows)は、他の実施態様に関して上で提示したものと異なって構成され得る。
【0033】
ガスケット構造128は、電解質要素に亘る本質的に均質な流れを調節するために、前記少なくとも1つの幾何学的形状124を含むのが好ましい。幾何学的形状124は、例えば、少なくとも部分的に楕円、例えば、1/2楕円若しくは1/4楕円、又は楕円以外の他の幾何学的形状124である。
図5には、本発明に従ったガスケット構造128の1つの好適な実施態様が表されており、ガスケット構造は、
図3及び4の例示的な実施態様にも示される1/2楕円の幾何学的形状124を有する。ガスケット構造128は、少なくとも流れ部品150から事前圧縮され得る圧縮可能な材料で作られるのが好ましい。ガスケット構造は、例えば、ケイ酸塩鉱物、ガラス、金属、ガラス−セラミック、セラミック、又はそれらの複合材料で作られる。前記圧縮及び/又は事前圧縮に基づき、圧力損失はより制御可能であり、スタック内の異なる電池の間の流れ条件は、実質的に等しいように達成される。ガスケット材料が制限オリフィス構造から広がるのを防止するために、それにより、ガスケット材料が制限オリフィスの高さ特性を変更するのを防止するために、制限オリフィス領域127,137にあるガスケット構造は、明確な厚さに事前圧縮され得る。
【0034】
本発明の幾つかの実施態様では、電解質要素の中央領域にあるより大きな流れダクト(即ち、流路)及び電解質要素の側方領域にあるより小さな流れダクトが配置される構成も利用される。
【0035】
本発明は、燃料電池スタック又は電解質電池スタックの組立てプロセス中に電解質要素配置が容易にされるのも可能にする。ガスケット構造は、電解質要素がガスケット構造にある穴内に配置されることができ、次に、ガスケット構造が組立てプロセス中に電解質要素をその所望の位置に係止し、且つ、燃料電池及び電解槽スタック動作中に電解質要素のための支持をもたらすように、形作られる。
【0036】
実質的に同じ結果を遂行する要素の全ての組み合わせは本発明の範囲内にあることが明示的に意図される。1つの記載される実施態様から他の実施態様への要素の置換も完全に意図され且つ想定される。図面は原寸通りに描かれておらず、それらは本来的に概念に過ぎないことも理解されるべきである。従って、付属の請求項の範囲によって示されるようにのみ限定されることが意図される。