(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開口パターンを形成するステップと前記薄膜パターンを成膜するステップとの間に、前記フィルムの開口パターンを介して、前記電極に電極材料を成膜するステップをさらに含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜パターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による薄膜パターン形成方法を、基板上に有機EL層を形成して有機EL表示装置を製造する有機EL表示装置の製造方法に適用した実施形態を
図1〜8に基づいて説明する。
図1〜4は本実施形態の各工程におけるTFT基板1を示す断面図であり、
図5〜8は本実施形態の各工程を示すフローチャートである。この有機EL表示装置の製造方法は、TFT基板1の有機EL層形成領域11(薄膜パターン形成領域)(11R,11G,11B)に予め形成されたアノード電極12(12R,12G,12B)上に、所定の形状を有する有機EL層14(薄膜パターン)(14R,14G,14B)及びカソード電極15(15R,15G,15B)を順次成膜して有機EL表示装置を製造する方法であり、赤色(R)有機EL層形成工程と、緑色(G)有機EL層形成工程と、青色(B)有機EL層形成工程と、カソード電極形成工程とを含んで構成される。
【0010】
まず、R有機EL層形成工程について、
図1,5を参照して説明する。このR有機EL層形成工程は、TFT基板1のR有機EL層形成領域11Rに、Rアノード電極12Rの電極材料13、R有機EL層14R及びRカソード電極15Rを順次蒸着・成膜してR有機EL層14Rを形成する工程であり、
図5に示すように、ステップS1〜S9を含んで構成される。
【0011】
ステップS1において、
図1(a)に示すように、TFT基板1の上方にフィルム2を配置する。TFT基板1は、ガラス等から構成された透明基板16上に、各有機EL層形成領域11R,11G,11Bごとに設けられたトランジスタ17と複数の絶縁膜18とアノード電極12とを積層して形成されており、アクティブマトリックス駆動方式やパッシブマトリクス駆動方式により駆動される。このTFT基板1を使用することにより、トップエミッション方式の有機EL表示装置が製造される。すなわち、本実施形態において製造される有機EL表示装置は、後述する対向基板3側(
図4(d)参照)が画像の表示側となる。
【0012】
前記フィルム2は、可視光を透過する樹脂製のフィルムであり、例えば厚みが10μm〜30μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド等の紫外線レーザアブレーションが可能なフィルムが使用される。このフィルム2は、例えば、フィルム2がTFT基板1全面を覆う大きさに裁断された状態で保持する保持手段や、長尺なフィルム2の送出し及び巻取りを行うローラにより保持され、
図1(a)におけるTFT基板1の上方に、すなわちTFT基板1のRアノード電極12R側に離間して配置される。
【0013】
ステップS2において、
図1(b)に示すように、TFT基板1上にフィルム2を密着させる。フィルム2は、静電吸着等の方法により密着させることができる。このフィルム2は可視光に対して透明であるため、フィルム2がTFT基板1の表面を覆った状態であっても、顕微鏡やCCDカメラ等の撮像手段は、フィルム2を介してTFTの表面を観察することができる。
【0014】
ステップS3において、
図1(c)に示すように、フィルム2のR有機EL層形成領域11Rと対応する部分に開口パターン21を形成する。まず、撮像手段によりフィルム2を介してTFT基板1の表面を観察し、TFT基板1上のR有機EL層形成領域の位置を検出する。次に、検出されたR有機EL層形成領域の表面を覆うフィルム2の部分に対してレーザ光Lを照射する。ここで使用されるレーザとして、例えば、波長が400nm以下のエキシマレーザ等を使用することができ、例えばKrF248nmのレーザを使用することができる。このような紫外線のレーザ光Lの光エネルギーにより、フィルム2がアブレーションされて除去され、R有機EL層形成領域11Rと同形状の開口パターン21が形成される。このように形成されたフィルム2の開口パターン21からは、TFT基板1のR有機EL層14R(
図1(f)参照)を駆動するためのRアノード電極12Rが露出する。この際、開口パターン21は、Rアノード電極12Rの全面に亘ってR有機EL層14Rを形成できるように、Rアノード電極12Rの両側に配置された絶縁膜の一部が露出するように形成されるのが好ましい。
【0015】
ステップS4において、
図1(d)に示すように、Rアノード電極12Rの表面から不純物を除去する。ここでいう不純物には、例えば前記ステップS3においてアブレーションされたフィルム2やRアノード電極12R等の残渣が含まれる。このような不純物がRアノード電極12Rの表面に付着した状態でR有機EL層14Rが成膜されると、Rアノード電極12Rの電気抵抗が上昇し、R有機EL層14Rの駆動に障害が生じるおそれがある。また、このような不純物には有機EL層を腐食するものもあり、有機EL層の耐用年数を縮めるおそれがある。
【0016】
このような不純物を除去するために、エッチングやレーザが使用される。エッチングを行う場合には、O
2(酸素)、O
2とAr(アルゴン)との混合気、又はO
2とArとCF
4(四フッ化炭素)との混合気等をエッチングガスとして使用したドライエッチングにより不純物を除去するのが好ましい。また、レーザを使用する場合には、エネルギー密度が0.5J/cm
2程度で波長が532nmのグリーンレーザ,355nmのUVレーザ,266nmのDUVレーザ等を使用することができる。この際、O
2、O
2とArとの混合気、O
2とArとCF
4との混合気、又はO
3(オゾン)等をアシストガスとして併用するのが好ましい。
【0017】
ステップS5において、
図1(e)に示すように、Rアノード電極12R上に残った不純物を除去する。ステップS4において、エッチングやレーザによりフィルム2やRアノード電極12R等の残渣を含む不純物の除去を行ったが、成膜するRアノード電極12Rの表面に付着した残渣は完全には除去できないおそれがある。したがって、ステップS4に加えて、不活性ガスプラズマによるイオン衝撃処理を行うことにより、Rアノード電極12R上に残った不純物を物理的に除去する。これにより有機EL層の耐用年数を縮めることなく有機ELの点灯が可能となる。また、ここでいう不活性ガスには、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Xe(キセノン)又はKr(クリプトン)等が含まれてよい。
【0018】
なお、前記では、不純物除去のステップS4及びS5の両方を行ったが、ステップS4又はS5のどちらか一方のみを行ってもよい。また、前記開口パターン21を形成するステップS3の工程終了後に、不純物除去の工程が不要な場合は、前記ステップS4,S5及び後述のステップS6を実行しなくてもよい。
【0019】
ステップS6において、
図1(f)に示すように、Rアノード電極12Rに電極材料13を成膜する。ここでいう電極材料13とは、アノード電極12を形成する材料を意味し、例えばAl(アルミニウム)やMg(マグネシウム)等が含まれる。電極材料13は、スパッタリング、真空蒸着、及びイオンプレーティング等の方法により、フィルム2に形成された開口パターン21を介してRアノード電極12Rの表面に蒸着される。また、前記ステップS4又はS5で不純物の残渣が完全に除去される場合は、前記ステップS6を実行しなくてもよい。
【0020】
ステップS7において、
図1(g)に示すように、R有機EL層14Rを成膜する。R有機EL層14Rの成膜は、Rアノード電極12R上にフィルム2の開口パターン21を介して、正孔注入層、正孔輸送層、赤色の有機発光層、電子輸送層等を順次蒸着して積層することにより行われる。
【0021】
ステップS8において、
図1(h)に示すように、Rカソード電極15Rを成膜する。Rカソード電極(ITO)15Rは、酸化インジウム錫等からなる透明な金属薄膜である。Rカソード電極15Rは、フィルム2に形成された開口パターン21を介してR有機EL層14R上に成膜される。
【0022】
ステップS9において、
図1(i)に示すように、フィルム2を剥離する。TFT基板1の表面に密着したフィルム2は、フィルム2とTFT基板1とを相対的に
図1の上下方向に引き離すことにより、TFT基板1の表面から剥離される。以上により、R有機EL層形成工程が終了する。
【0023】
次に、G有機EL層形成工程について、
図2,6を参照して説明する。このG有機EL層形成工程は、TFT基板1のG有機EL層形成領域11Gに、Gアノード電極12Gの電極材料13、G有機EL層14G及びGカソード電極15Gを順次蒸着・成膜してG有機EL層14Gを形成する工程であり、
図6に示すように、ステップS10〜S18を含んで構成される。
【0024】
すなわち、ステップS10においてTFT基板1の上方にフィルム2を配置し(
図2(a)参照)、ステップS11においてTFT基板1上にフィルム2を密着させ(
図2(b)参照)、ステップS12においてフィルム2のG有機EL層形成領域11Gと対応する部分に開口パターン21を形成し(
図2(c)参照)、ステップS13において、ドライエッチング(又はレーザ)によりGアノード電極12Gの表面から不純物を除去し(
図2(d)参照)、ステップS14において、イオン衝撃処理によりステップS13で除去しきれなかったGアノード電極12G上の不純物を除去し(
図2(e)参照)、ステップS15においてGアノード電極12Gに電極材料13を成膜し(
図2(f)参照)、ステップS16においてG有機EL層14Gを成膜し(
図2(g)参照)、ステップS17においてGカソード電極15Gを成膜し(
図2(h)参照)、ステップS18においてフィルム2を剥離し(
図2(i)参照)、G有機EL層形成工程が終了する。
【0025】
なお、前記では、不純物除去のステップS13及びS14の両方を行ったが、ステップS13又はS14のどちらか一方のみを行ってもよい。また、前記開口パターン21を形成するステップS12の工程終了後に、不純物除去の工程が不要な場合は、前記ステップS13,S14及びS15を実行しなくてもよい。また、前記ステップS13又はS14で不純物の残渣が完全に除去される場合は、前記ステップS15を実行しなくてもよい。
【0026】
以上の各工程は、R有機EL層形成工程の対応する各工程と同様である。なお、ステップS12においてフィルム2に形成される開口パターン21は、Rアノード電極12RとGアノード電極12Gとが短絡しないように形成される。すなわち、R有機EL層形成領域11RとG有機EL層形成領域11Gとに成膜した電極材料13が互いに接することなく所定の距離離間するように、それぞれの開口パターン21は形成される(
図2(f)参照)。
【0027】
次に、B有機EL層形成工程について、
図3,7を参照して説明する。このB有機EL層形成工程は、TFT基板1のB有機EL層形成領域11Bに、Bアノード電極12Bの電極材料13、B有機EL層14B及びBカソード電極15Bを順次蒸着・成膜してB有機EL層14Bを形成する工程であり、
図7に示すように、ステップS19〜S27を含んで構成される。
【0028】
すなわち、ステップS19においてTFT基板1の上方にフィルム2を配置し(
図3(a)参照)、ステップS20においてTFT基板1上にフィルム2を密着させ(
図3(b)参照)、ステップS21においてフィルム2のB有機EL層形成領域11Bと対応する部分に開口パターン21を形成し(
図3(c)参照)、ステップS22において、ドライエッチング(又はレーザ)によりBアノード電極12Bの表面から不純物を除去し(
図3(d)参照)、ステップS23において、イオン衝撃処理によりステップS22で除去しきれなかったBアノード電極12B上の不純物を除去し(
図3(e)参照)、ステップS24においてBアノード電極12Bに電極材料13を成膜し(
図3(f)参照)、ステップS25においてB有機EL層14Bを成膜し(
図3(g)参照)、ステップS26においてBカソード電極15Bを成膜し(
図3(h)参照)、ステップS27においてフィルム2を剥離し(
図3(i)参照)、B有機EL層形成工程が終了する。
【0029】
なお、前記では、不純物除去のステップS22及びS23の両方を行ったが、ステップS22又はS23のどちらか一方のみを行ってもよい。また、前記開口パターン21を形成するステップS21の工程終了後に、不純物除去の工程が不要な場合は、前記ステップS22,S23及びS24を実行しなくてもよい。また、前記ステップS22又はS23で不純物の残渣が完全に除去される場合は、前記ステップS24を実行しなくてもよい。
【0030】
以上の各工程は、R有機EL層形成工程及びG有機EL層形成工程の対応する各工程と同様である。なお、ステップS21においてフィルム2に形成される開口パターン21は、Rアノード電極12RとGアノード電極12GとBアノード電極12Bとが短絡しないように形成される。すなわち、R有機EL層形成領域11RとG有機EL層形成領域11GとB有機EL層形成領域11Bとに成膜した電極材料13が互いに接することなく所定の距離離間するように、それぞれの開口パターン21は形成される(
図3(f)参照)。
【0031】
最後に、カソード電極形成工程について、
図4,8を参照して説明する。このカソード電極形成工程は、カソード電極15を成膜して対向基板3を貼り合わせることにより、有機EL表示装置を完成させる工程であり、
図8に示すように、ステップS28〜S31を含んで構成される。
【0032】
ステップS28において、
図4(a)に示すように、カソード電極15を成膜する。上記の各有機EL層形成工程において、それぞれの有機EL層14R,14G,14B上にはカソード電極15R,15G,15Bが成膜されているが、これらの各カソード電極15R,15G,15Bは互いに電気的に接続されていない(
図3(i)参照)。そこで改めてTFT基板1全体にカソード電極15を成膜することにより、各カソード電極15R,15G,15Bをそれぞれ電気的に接続する。
【0033】
ステップS29において、
図4(b)に示すように、保護膜4を成膜する。この保護膜4は、絶縁性の材料により形成さており、上記ステップS28において成膜されたカソード電極15上に、カソード電極15全体を覆うように成膜される。
【0034】
ステップS30において、
図4(c)に示すように、保護膜4上に接着層5を形成する。接着層5は、例えばUV硬化性の樹脂をスピンコート又はスプレー塗布することにより形成される。
【0035】
ステップS31において、
図4(d)に示すように、対向基板3を貼り合わせる。この対向基板3は透明であり、接着層5上に貼り合わせられる。対向基板3の貼り合わせは、例えば対向基板3を接着層5上に密着させた後、対向基板3側から紫外線を照射して接着層5を硬化させることにより行うことができる。以上により、有機EL表示装置が完成する。
【0036】
本実施形態によれば、有機EL表示装置の製造方法は、TFT基板1上に可視光を透過する樹脂製のフィルム2を密着させるステップ(S2,S11,S20)と、TFT基板1上の有機EL層形成領域11にレーザ光Lを照射し、フィルム2に有機EL層形成領域11と同形状の開口パターン21を形成するステップ(S3,S12,S21)と、フィルム2の開口パターン21を介して、TFT基板1上の有機EL層形成領域11に有機EL層14を成膜するステップ(S7,S16,S25)と、フィルム2を剥離するステップ(S9,S18,S27)と、を含んで構成される。フィルム2の開口パターン21は、フィルム2がTFT基板1の表面に密着した状態でレーザ光Lを照射することにより形成されるため、高精度に形成することができる。また、有機EL層は、高精度に形成された開口パターン21を介して成膜されるため、高精細な有機EL層14を容易に形成することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、有機EL表示装置の製造方法は、有機EL層形成領域11に予めアノード電極12が形成されたTFT基板1において、開口パターン21を形成するステップ(S3,S12,S21)と有機EL層14を成膜するステップ(S7,S16、S25)との間に、アノード電極12の表面から不純物を除去するステップをさらに含んで構成される。この場合、ドライエッチング(又はレーザ)によりアノード電極12の表面から不純物を除去するステップ(S4,S13,S22)を行う。したがって、アノード電極12上に不純物が存在することによりもたらされる、アノード電極12の電気抵抗の上昇や有機EL層14の腐食などの弊害を除去することができる。加えて、上記ステップ(S4,S13,S22)後に、不活性ガスによるイオン衝撃処理によりアノード電極12の表面から不純物を除去するステップ(S5,S14,S23)を行う。したがって、ステップ(S4,S13,S22)でアノード電極12の表面から不純物を完全に除去できない場合であっても、イオン衝撃処理によって物理的に不純物を除去することにより、アノード電極12の電気抵抗の上昇や有機EL層14の腐食などの弊害を除去することができる。これにより、有機EL表示装置の寿命を低下させることなく有機ELの点灯が可能となる。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、有機EL表示装置の製造方法は、有機EL層形成領域11に予めアノード電極12が形成されたTFT基板1において、開口パターン21を形成するステップ(S3,S12,S21)と有機EL層14を成膜するステップ(S7,S16、S25)との間に、フィルム2の開口パターン21を介して、アノード電極12に電極材料13を成膜するステップをさらに含んで構成される。この場合、アノード電極12の表面から不純物を除去するステップ(S4,S5;S13,S14;S22,S23)と有機EL層14を成膜するステップ(S7,S16,S25)との間に、フィルム2の開口パターン21を介して、アノード電極12に電極材料13を成膜するステップ(S6,S15,S24)を行う。したがって、フィルム2に開口パターン21を形成した後にアノード電極12上に不純物が付着した場合であっても、電極材料13を改めて成膜することにより、アノード電極12の電気抵抗の上昇を防止することができる。また、不純物と有機EL層14との間に電極材料13が成膜されるため、不純物による有機EL層14の腐食を防止することができる。
【0039】
なお、本発明は、本実施形態において説明した有機EL表示装置の製造方法に限られず、高精細な薄膜パターンを形成しようとするものであれば、ボトムエミッション方式の有機EL表示装置、液晶表示装置のカラーフィルター、半導体基板の配線パターン等の形成にも適用することができる。
【0040】
また、本発明の他の実施形態において、フィルム2の上部(TFT基板1と反対側)の少なくとも一部に鉄等からなる薄い金属板を配置するとともに、TFT基板1の下方(フィルム2と反対側)に磁気チャックを配置してもよい。このような構成により、フィルム2を磁気吸着によりTFT基板1に密着させることができる。
【0041】
さらに、本実施形態において、カソード電極15は、各有機EL層形成工程でそれぞれ成膜した後、カソード電極形成工程で改めて全体に成膜したが、各有機EL層形成工程での成膜を省略してもよい。