(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194495
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】輪状ステータコア構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/12 20060101AFI20170904BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
H02K1/12 Z
H02K24/00
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-46318(P2014-46318)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-171279(P2015-171279A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】岩山 達大
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0291519(US,A1)
【文献】
特開2003−344107(JP,A)
【文献】
特開2004−166483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度間隔で内方へ向けて突出すると共にステータ巻線(3)を有する複数の突出磁極を有する1枚のみの輪状ステータ(1)と、前記輪状ステータ(1)の両面に一体に設けられ前記各突出磁極を覆うように形成されたインシュレータ(2)と、前記輪状ステータ(1)及びインシュレータ(2)を軸方向(A)に沿って貫通し、前記輪状ステータ(1)に対して絶縁状態で設けられた複数の端子ピン(4)と、を備えたレゾルバ用輪状ステータコア構造において、
前記インシュレータ(2)の外周縁(2a)は前記輪状ステータ(1)の外周面(1a)より内側に位置し、前記外周縁(2a)には前記輪状ステータ(1)の径方向内側に向けて形成された複数の凹部(10)が設けられ、前記輪状ステータ(1)の前記凹部(10)に対応する位置には、バカ穴からなる取り付け穴(11)が形成され、前記インシュレータ(2)の前記各凹部(10)間には、前記各凹部(10)よりも径方向外側でかつ前記外周縁(2a)よりも内側へ向けて前記インシュレータ(2)が突出する凸部(12)が形成され、前記凸部(12)内には前記端子ピン(4)が1個のみ又は複数個設けられ、前記輪状ステータ(1)をエンジン又はモータの取付部分に、前記取り付け穴(11)に設けられたねじ又はボルトを介して取り付ける時、前記輪状ステータ(1)は、前記取付部分に対して若干左右に回動可能な構成としたことを特徴とするレゾルバ用輪状ステータコア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪状ステータコア構造に関し、特に、輪状ステータに設けるインシュレータに複数の凹部を形成し、輪状ステータの前記凹部に対応する位置に取り付け穴を形成し、輪状ステータの取り付け
時の零調等を容易化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の輪状ステータコア構造としては、例えば、特許文献1及び2に示されている構成を挙げることができる。
特許文献1に開示された「VR型レゾルバ」においては、図示していないが、輪状ステータに設けられたステータ巻線の端線を接続するための端子ピンは、輪状ステータとは別体でリード線で接続された端子ピン保持部に設けられている。
また、特許文献2に開示された「レゾルバのステータ構造」においては、図示していないが、輪状ステータの端面上に端子台が設けられ、この端子台上に端子ピンが一体成形にて設けられている。
【0003】
また、前述の各特許文献1及び2に開示された現在出願人が製造販売している構造を
図3及び
図4で挙げることができる。
すなわち、
図3において符号1で示されるものは輪状ステータであり、この輪状ステータ1の両面にはインサート一体成形によるインシュレータ2が形成され、前記輪状ステータ1の内側には所定の角度間隔で内方へ向けて突出する複数の突出磁極(図示せず)が形成されている。
尚、前記各突出磁極に設けられたステータ巻線3は概略的に示されている。
【0004】
前記輪状ステータ1には、
図5で示されるように、端子ピン4を植立させるための穴5が形成され、この穴5内には、インサート成形時、前記インシュレータ2が充填されると共に、図示しない射出成形の金型のキャビティ内に位置決めされている各端子ピン4が
図5のようにインサート成形によって輪状ステータ1の周縁に植設されている。
【0005】
前記インシュレータ2の外周縁2aは、前記輪状ステータ1の外周面1aよりも内側に形成されているため、前記外周縁2aは前記外周面1aよりも外側に突出することはなく、前記輪状ステータ1をモータあるいはエンジン等に取り付ける場合には、前記外周面1aをモータあるいはエンジンの取り付け凹部(図示せず)内に嵌入させることによって取り付けが完了していた。
また、
図4の構成は
図3の他の従来構成で、端子ピン4の数が
図3よりも少なくしてある構成で、
図3と同一符号を付し、説明は省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−51749号公報
【特許文献2】特開2010−122159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の輪状ステータコア構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1の構成の場合、輪状ステータのステータ巻線の端線は、インシュレータと一体でかつその外側に設けられた端子ピン保持部の各端子に接続されていたため、輪状ステータの外周面をそのままモータやエンジン等の取り付け凹部に嵌め込み式に取り付けるための要望には応じることができなかった。
【0008】
また、特許文献2の構成の場合、輪状ステータの端面に設けられた端子保持部から半径方向外側へ向けて端子が突出しているため、輪状ステータの外周面をそのままモータやエンジン等の取り付け凹部に嵌め込むことには障害となっていた。
【0009】
また、前述の
図3及び
図4の構成の場合、モータやエンジン等の取り付け凹部内に嵌め込みによる取り付けはできるが、一度、取り付け凹部内に輪状ステータの外周面を嵌め込むと、その後の輪状ステータの回転方向に沿う
零調等の微調整は極めて困難で、実質上不可能であった。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、輪状ステータに設けるインシュレータに複数の凹部を形成し、輪状ステータの前記凹部に対応する位置に取り付け穴を形成し、輪状ステータの回転方向の微調整を可能にするようにした輪状ステータコア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による
レゾルバ用輪状ステータコア構造は、所定角度間隔で内方へ向けて突出すると共にステータ巻線を有する複数の突出磁極を有する
1枚のみの輪状ステータと、前記輪状ステータの両面に一体に設けられ前記各突出磁極を覆うように形成されたインシュレータと、前記輪状ステータ及びインシュレータを軸方向に沿って貫通し、前記輪状ステータに対して絶縁状態で設けられた複数の端子ピンと、を備えた
レゾルバ用輪状ステータコア構造において、前記インシュレータの外周縁は前記輪状ステータの外周面より内側に位置し、前記外周縁には前記輪状ステータの径方向内側に向けて形成された複数の凹部が設けられ、前記輪状ステータの前記凹部に対応する位置には、
バカ穴からなる取り付け穴が形成さ
れ、前記インシュレータの前記各凹部間には、前記各凹部よりも径方向外側
でかつ前記外周縁よりも内側へ向けて前記インシュレータが突出する凸部が形成され、前記凸部内には前記端子ピンが1個のみ又は複数個設けられ
、前記輪状ステータをエンジン又はモータの取付部分に、前記取り付け穴に設けられたねじ又はボルトを介して取り付ける時、前記輪状ステータは、前記取付部分に対して若干左右に回動可能とした構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による
レゾルバ用輪状ステータコア構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、所定角度間隔で内方へ向けて突出すると共にステータ巻線を有する複数の突出磁極を有する
1枚のみの輪状ステータと、前記輪状ステータの両面に一体に設けられ前記各突出磁極を覆うように形成されたインシュレータと、前記輪状ステータ及びインシュレータを軸方向に沿って貫通し、前記輪状ステータに対して絶縁状態で設けられた複数の端子ピンと、を備えた輪状ステータコア構造において、前記インシュレータの外周縁は前記輪状ステータの外周面より内側に位置し、前記外周縁には前記輪状ステータの径方向内側に向けて形成された複数の凹部が設けられ、前記輪状ステータの前記凹部に対応する位置には、
バカ穴からなる取り付け穴が形成されていることにより、レゾルバの取付時に、
バカ穴からなる各取り付け穴を介してボルト等で取り付ける場合、取り付け穴の隙間を利用してレゾルバの回転方向の位置調整を容易に行うことができる。そのため、輪状ステータに端子ピンを設けレゾルバ等の外径を小径化した構成においても、従来と異なって回転方向の位置調整が可能である。
また、前記インシュレータの前記各凹部間には、前記各凹部よりも径方向外側へ向けて前記インシュレータが突出する凸部が形成され、前記凸部内には前記端子ピンが1個のみ又は複数個設けられていることにより、取り付け位置を調節することができるレゾルバであっても、ステータ巻線の外部への接続を端子ピンを介して簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による
レゾルバ用輪状ステータコア構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による
レゾルバ用輪状ステータコア構造は、輪状ステータに設けるインシュレータに複数の凹部を形成し、輪状ステータの前記凹部に対応する位置に取り付け穴を形成し、輪状ステータの回転方向の微調整を可能とすることである。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による
レゾルバ用輪状ステータコア構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは輪状ステータであり、この輪状ステータ1の両面にはインサート一体成形によるインシュレータ2が形成され、前記輪状ステータ1の内側には所定の角度間隔で内方へ向けて突出する複数の突出磁極(図示せず)が形成されている。
尚、前記各突出磁極に設けられたステータ巻線3は概略的に示されている。
【0016】
前記輪状ステータ1には、
図5で示されるように、インサート成形時に、端子ピン4を植立させるための穴5が形成され、この穴5内には前記インシュレータ2が充填されると共に、図示しない射出成形の金型のキャビティ内に位置決めされている各端子ピン4がインサート成形によって輪状ステータ1の周縁の穴5(
図5)内にインシュレータ2によって絶縁された状態で植設されている。
【0017】
前記インシュレータ2の外周縁2aは、前記輪状ステータ1の外周面1aよりも内側に形成されているため、前記外周縁2aは前記外周面1aよりも外側に突出することはなく、前記輪状ステータ1の外周面1aは外方に露出した状態で形成されている。
【0018】
前記外周縁2aには、前記輪状ステータ1の径方向内側へ向けて形成された複数の凹部10が形成されており、前記輪状ステータ1の前記凹部10内、すなわち、前記凹部10に対応する位置には、この輪状ステータ1を例えばエンジンやモータ等の取付部分に取り付けるための取り付け穴11が形成されている。
【0019】
前記インシュレータ2の前記各凹部10間には、前記各凹部10よりも径方向外側
でかつ前記外周縁2aよりも内側へ向けて前記インシュレータ2が突出する凸部12が形成され、前記凸部12内には、
図5で詳述した端子ピン4が1個のみ又は複数個設けられている。
従って、前述の
図1で示される輪状ステータコア構造20をエンジンやモータ等の取付部分に取り付ける
時、前記各取り付け穴11を取り付け用のねじ又はボルトの径よりも大である(いわゆるバカ
穴)形状とすることにより、被取り付け面に対して若干左右に回動可能となり、いわゆる零調整等の調整動作を行うことができるように構成されている。さらに、輪状ステータ1の外形を利用して相手側に取り付けた場合でも、この各取り付け穴11を用いて回転方向に微調整を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明による
レゾルバ用輪状ステータコア構造は、インシュレータの凹部に対応する位置に取り付け穴を有しているため、端子ピンを有する輪状ステータの取り付け位置を調整することができ、輪状ステータの外周面の内側に端子ピンを有する輪状ステータの取り付けが極めて容易となり、モータ
又はエンジンへの取り付けが従来よりも大幅に容易化できる。
【符号の説明】
【0021】
1
1枚のみの輪状ステータ
1a 外周面
2 インシュレータ
2a 外周縁
3 ステータ巻線
4 端子ピン
10 凹部
11 取り付け穴
(バカ穴)
12 凸部
A 軸方向