(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像形成パネルとピールオフパネルとが配置されたインクリボンを用いて中間転写媒体に画像を形成しその画像を印刷媒体に転写する印刷装置と、ホストコンピュータとを備えた印刷システムにおいて、
前記印刷媒体に対応して所望の画像オブジェクトを生成するとともに、前記画像オブジェクトの領域内に前記印刷媒体に対して前記中間転写媒体の転写層を転写しないことを表す非転写領域を設定するためのオブジェクト生成/非転写領域設定手段と、
前記オブジェクト生成/非転写領域設定手段で生成された画像オブジェクトを印刷データに変換する変換手段と、
前記変換手段で変換された印刷データのうち、前記オブジェクト生成/非転写領域設定手段で設定された非転写領域内の印刷データ、前記非転写領域より所定寸法大きく該非転写領域を含む領域内の印刷データ、若しくは前記非転写領域より所定寸法大きい領域の印刷データの階調値を所定階調値以下に修正するか、または前記非転写領域内の印刷データの階調値を所定階調値以下に修正するとともに前記非転写領域より所定寸法大きい領域にグラデーション処理を施した修正印刷データを生成する修正印刷データ生成手段と、
複数の加熱素子が列設されたサーマルヘッドを有し、前記修正印刷データ生成手段で生成された修正印刷データに従って前記画像形成パネルに対し前記加熱素子を選択的に加熱することで前記中間転写媒体に画像を形成した後または画像を形成する前に、前記オブジェクト生成/非転写領域設定手段で設定された非転写領域の位置情報に従って前記ピールオフパネルに対し前記加熱素子を選択的に加熱することで前記中間転写媒体の転写層を剥ぎ取る印刷部と、
前記印刷部で前記中間転写媒体に形成され前記転写層が剥ぎ取られた画像を前記印刷媒体に転写する転写部と、
を備えた印刷システム。
前記修正印刷データ生成手段は、前記非転写領域内の印刷データ、前記非転写領域より所定寸法大きく該非転写領域を含む領域内の印刷データ、若しくは前記非転写領域より所定寸法大きい領域の印刷データの階調値を階調値0に修正することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
前記修正印刷データ生成手段は、前記非転写領域より所定寸法大きい領域の前記非転写領域とは反対側に隣接する領域の境界の印刷データの階調値を前記修正した階調値に向けて徐々にまたは段階的に小さく設定することで前記グラデーション処理を施すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷システム。
記録媒体の種類と該記録媒体の種類に応じた前記非転写領域との関係を予め記憶した記憶手段をさらに備え、前記オブジェクト生成/非転写領域設定手段は前記記録媒体の種類に応じて前記記憶手段に記憶された関係から前記非転写領域を設定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の印刷システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を、カードに文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行う印刷システムに適用した実施の形態について説明する。
【0019】
<システム構成>
図1および
図14に示すように、本実施形態の印刷システム200は、大別して、上位装置201(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、印刷装置1とで構成されている。
【0020】
印刷装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置201に接続されており、上位装置201から印刷装置1に印刷データや磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、印刷装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(
図14参照)、上位装置201からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
【0021】
上位装置201には、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置204、上位装置201に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置203、上位装置201によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ202が接続されている。なお、上位装置201のハードディスクには、後述するオブジェクト生成アプリケーションソフトウエアおよびプリンタドライバがインストールされている。
【0022】
<印刷装置>
図2に示すように、印刷装置1はハウジング2を有しており、ハウジング2には情報記録部Aと画像形成部Bと媒体収容部Cと収容部Dとが備えられる。
【0023】
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成される。
【0024】
媒体収容部Cは、複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられて、ピックアップローラ19にて最前列のカードから繰り出し供給するようになっている。
【0025】
繰り出されたカードCa(
図20(A)も参照)は、先ず搬入ローラ22にて反転ユニットFに送られる。反転ユニットFはハウジング2に旋回動可能に軸受け支持された回転フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20、21にて構成される。そして、ローラ対20、21は回転フレーム80に回転自在に軸支持されている。
【0026】
反転ユニットFが旋回する外周には、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23および接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27の何れかに向けて搬入する媒体搬入経路65を形成し、これらの記録部にてカードCaには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。
【0027】
画像形成部Bは、カードCaの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬入経路65の延長上にカードCaを移送する媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードCaを搬送する搬送ローラ29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0028】
画像形成部Bはフィルム状媒体搬送装置を備えて、この搬送装置にて搬送される転写フィルム46に対して、先ずサーマルヘッド40にて画像を形成する印刷部B1と、続いてヒートローラ33にて媒体搬送経路P1にあるカードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2とを備えている。
【0029】
画像形成部Bの下流側には収容スタッカ60に印刷後のカードCaを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードCaを搬送する搬送ローラ37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0030】
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することにより、ヒートローラ33による熱転写により生じたカールを矯正する。このためデカール機構36は図示しないカムなどによる昇降機構にて
図2に示す上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0031】
収容部Dは、画像形成部Bから送られたカードCaを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61にて
図2で下方に移動するように構成されている。
【0032】
上記した印刷装置1の全体構成の中で画像形成部Bについて、更に詳しく説明する。
【0033】
転写フィルム46は、モータMr2の駆動にて回転する転写フィルムカセットの巻取ロール47と操出ロール48にそれぞれ巻回されている。フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を移送する主要な駆動ローラであり、このローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が決まる。このフィルム搬送ローラ49は不図示のステッピングモータに連結されている。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2も駆動するが、巻取ロール47が繰り出された転写フィルム46を巻き取るためのものであって、転写フィルム46を搬送の主体となって駆動するものではない。
【0034】
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、
図2では示されていないが、フィルム搬送ローラ49に対して進出および退避するよう移動可能に構成されており、図の状態はフィルム搬送ローラ49に進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
【0035】
インクリボン41はインクリボンカセット42に収納され、このカセット42にインクリボン41を供給する供給スプール43とインクリボン41を巻き取る巻取スプール44が収容され、巻取スプール44はモータMr1にて駆動し、供給スプール43はモータMr3にて駆動する。モータMr1およびモータMr3には正逆転可能なDCモータが用いられている。また、
図2に示すSe2は、インクリボン41の終端部に付されインクリボン41の使用限界を表すエンプティマークを検出するための透過型センサである。インクリボン41は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のカラーリボンパネルとBk(ブラック)リボンパネルとを有する画像形成パネルと、転写フィルム46の所定領域(後述するPO領域)の転写層を剥ぎ取るためのピールオフパネル(PO)とを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されている(
図22参照)。
【0036】
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは印刷部B1を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。サーマルヘッド40は主走査方向に列設された複数の加熱素子を有しており、これらの加熱素子はヘッドコントロール用IC(図示せず)により印刷データに従って選択的に加熱制御されて、昇華型のインクリボン41を用いて転写フィルム46に画像を印刷する。また、これらの加熱素子は、後述するように、設定されたPO領域の位置情報に基づいてピールオフパネル(PO)による転写フィルム46の所定領域の転写層を剥ぎ取る際にも選択的に加熱制御される(
図22参照)。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷やす為のものである。
【0037】
転写フィルム46への印刷が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はカセット42に固設されており、剥離コロ25は印刷時に剥離部材28に当接して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動による巻取スプール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを含む転写部B2まで搬送される。
【0038】
転写部B2では、転写フィルム46はカードCaと共にヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46上の画像がカード表面に転写される。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
【0039】
印刷部B1の構成をその作用と共に更に詳しく説明する。
図3乃至
図5にて示すように、ピンチローラ32a、32bはピンチローラ支持部材57の上端部と下端部にそれぞれ支持されて、ピンチローラ支持部材57はその中央部を挿通する支持シャフト58に回動自在に支持されている。支持シャフト58は、
図10にて示すごとく、両端部がピンチローラ支持部材57に設けられる長穴76、77に架け渡されると共に、中間部でブラケット50の固定部78にて固定されている。また、長穴76、77は支持シャフト58に対して水平方向および垂直方向に空間を持たせている。よって、後述するフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32a、32bの調整を可能にしている。
【0040】
そして、支持シャフト58にはバネ部材51(51a、51b)が装着されて、ピンチローラ支持部材57のピンチローラ32a、32bが装着される側の端部は、それぞれバネ部材51と接してそのバネ力によりフィルム搬送ローラ49の方向へ付勢されている。
【0041】
ブラケット50は、カム受81にてカム53のカム作動面と当接しており、駆動モータ54(
図10参照)にて駆動するカム軸82を支点とするカム53の矢印方向への回動に応じてフィルム搬送ローラ49に対して図で左右方向に移動するように構成している。従って、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき(
図4および
図5)、ピンチローラ32a、32bはバネ部材51に抗して転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49に圧接し、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。
【0042】
このときブラケット50の回動支点となる軸95から遠い位置にあるピンチローラ32bが先ずフィルム搬送ローラ49を圧接し、続いてピンチローラ32aが圧接する。このように、回動支点である軸95をフィルム搬送ローラ49より上方に配置することで、ピンチローラ支持部材57は平行移動ではなく回動しながらフィルム搬送ローラ49と当接することになり、平行移動させるよりも幅方向のスペースが少なくてすむ利点がある。
【0043】
また、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49へ圧接したときの圧接力は、バネ部材51により転写フィルム46の幅方向の対して均一となる。その際、ピンチローラ支持部材57の両側に長穴76、77が設けられて支持シャフト58は固定部78で固定されているために、ピンチローラ支持部材57を3方向に調整することができ、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46はスキューを起こすことなく正しい姿勢にて搬送される。なお、ここで言う3方向の調整とは、(i)フィルム搬送ローラ49に対してピンチローラ32a、32bの軸方向の圧接力を均一にするために、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の水平方向の平行度を調整すること、(ii)フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aの圧接力とフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32bの圧接力とを均一にするために、フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aとピンチローラ32bとの移動距離を調整すること、および(iii)フィルム進行方向に対してピンチローラ32a、32bの軸が垂直になるように、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の垂直方向の平行度を調整することである。
【0044】
そして、ブラケット50には、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49に巻き付けられていない部分と当接する張力受け部材52を設けている。
【0045】
張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bが転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に圧接した際に生じる転写フィルム46の張力にて、ピンチローラ32a、32bがそれぞれバネ部材51の付勢力に抗してフィルム搬送ローラ49から退避するのを防止するために設けられる。よって、張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bより図で左の位置で転写フィルム46と当接するようブラケット50の回動側端部の先端に取り付けられている。
図2は張力受け部材52が転写フィルム46と当接している状態を示している。
【0046】
これにより、転写フィルム46の弾性から生じる張力は張力受け部材52を通してカム53にて直接受け止めることができる。したがって、この張力にてピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49から退避してピンチローラ32a、23bの圧接力が弱まることが防止されるため、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49への密着した巻き付け状態が維持されて正確な搬送を行うことができる。
【0047】
転写フィルム46の横幅方向に沿って配置されるプラテンローラ45は、
図9に示すごとく、軸71を支点として回動自在な一対のプラテン支持部材72に支持されている。一対のプラテン支持部材72はプラテンローラ45の両端を支持している。プラテン支持部材72はそれぞれ、軸71を共通の回動軸とするブラケット50Aの端部にバネ部材99を介して接続されている。
【0048】
ブラケット50Aは、基板87と、この基板87からのプラテン支持部材72の方向に折り曲げて形成されるカム受支持部85とから成り、カム受支持部85でカム受84を保持している。そして、基板87とカム受支持部85の間には、駆動モータ54にて駆動するカム軸83を支点に回動するカム53Aを配設して、カム作動面とカム受84とが当接するよう構成している。従って、カム53Aの回動によりブラケット50Aがサーマルヘッド40の方向へ進出すると、プラテン支持部材72も移動してプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接する。
【0049】
このようにブラケット50Aとプラテン支持部材72との間にバネ部材99とカム53Aとを上下に配置することにより、このプラテン移動ユニットはブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔内に収めることができる。また、幅方向はプラテンローラ45の幅内に収めることができ省スペース化が図れる。
【0050】
また、カム受支持部85は、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72b(
図9参照)に嵌合させているために、カム受支持部85をプラテン支持部材72の方向に突出して形成しても、ブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔が広がることがなく、その面でも省スペース化が図れる。
【0051】
プラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接したとき、それぞれのプラテン支持部材72に接続されたバネ部材99は、それぞれ転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。よって、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49にて搬送されるときスキューが防止され、転写フィルム46の印刷領域が幅方向にずれることがなくサーマルヘッド40による熱転写を正確に行うことができる。
【0052】
ブラケット50Aの基板87には、剥離コロ25の両端を支持する一対の剥離コロ支持部材88がバネ部材97を介して設けられており、剥離コロ25は、ブラケット50Aがカム53Aの回動にてサーマルヘッド40に対し進出したとき、剥離部材28と当接して両者で挟持している転写フィルム46とインクリボン41とを剥離する。剥離コロ支持部材88もプラテン支持部材72と同様に剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
【0053】
ブラケット50Aの軸支59側の端部と反対側の端部には、張力受け部材52Aが設けられている。張力受け部材52Aは、プラテンローラ45と剥離コロ25とをサーマルヘッド40と剥離部材28とにそれぞれ圧接する際に生じる転写フィルム46の張力を吸収するように設けられている。バネ部材99とバネ部材97は、転写フィルム46の幅方向への圧接力を均一にするために設けられるが、逆にバネ部材99、97が転写フィルム46の張力に負けて転写フィルム46への圧接力が弱まってしまわないよう、張力受け部材52Aにて転写フィルム46からの張力を受けている。なお、張力受け部材52Aも上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、転写フィルム46の張力はブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになるので、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な印刷および剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、印刷領域の長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度良く印刷できる。
【0054】
カム53とカム53Aは、ベルト98(
図3参照)が張架されて同一の駆動モータ54にて駆動させている。
【0055】
このような、画像形成部Bが
図6に示す待機ポジションにあるときカム53およびカム53Aは
図3に示す状態にあり、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に圧接しておらず、またプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接していない。換言すると、待機ポジションにあるときは、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは両者が離間した離間位置に位置している。
【0056】
そして、カム53およびカム53Aが連動して回転して
図4に示す状態となると、画像形成部Bは
図7に示す印刷ポジションに移行する。その際、まずピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けると共に、張力受け部材52は転写フィルム46と当接する。その後プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する。この印刷ポジションでは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に向けて移動して転写フィルム46とインクリボン41を挟み圧接して、剥離ローラ25が剥離部材28と接している。
【0057】
この状態で、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46の搬送が開始されると、同時にインクリボン41もモータMr1の動作により巻取スプール44にて巻き取られて同じ方向に搬送される。この搬送の間、転写フィルム46に設けた位置出し用マークがセンサSe1を通過して所定量移動し、転写フィルム46が印刷開始位置に到達した時点で、転写フィルム46の所定領域にサーマルヘッド40による印刷が行われる。特に印刷中は転写フィルム46の張力が大きくなるため、転写フィルム46の張力はフィルム搬送ローラ46からピンチローラ32a、23bを離間させる方向および、剥離部材28とサーマルヘッド40から剥離コロ25とプラテンローラ45とを離間させる方向に働く。しかし、上記したように、転写フィルム46の張力は張力受け部材52、52Aが受けているため、ピンチローラ32a、32bの圧接力が弱くなることがなく、正確なフィルム搬送を行うことができ、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も弱くなることがないため、正確な印刷および剥離を行うことができる。印刷終了後のインクリボン41は転写フィルム46から引き剥がされて巻取スプール44に巻き取られる。
【0058】
転写フィルム46の搬送による移動量、すなわち印刷が施される印刷領域の搬送方向の長さは、フィルム搬送ローラ49に設けられたエンコーダ(不図示)にて検知され、それに応じてフィルム搬送ローラ49の回転が停止し、同時にモータMr1の動作による巻取スプール44による巻き取りも停止する。これにより、サーマルヘッド40による転写フィルム46の印刷領域への1色目の印刷が終了する。
【0059】
そして、カム53およびカム53Aが連動して更に回転し
図5に示す状態となると、画像形成部Bは
図8に示す搬送ポジションに移行して、プラテンローラ45はサーマルヘッド40から退避する方向に復帰する。この状態では依然として、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けて、張力受け部材52は転写フィルム46と接しており、フィルム搬送ローラ49の逆方向の回転により転写フィルム46は初期位置にまで逆搬送される。このときも転写フィルム46の移動量はフィルム搬送ローラ49の回転によって制御されるが、印刷が施された印刷領域の搬送方向の長さ分が逆搬送される。なお、インクリボン41もモータMr3により所定量巻き戻され、次に印刷する色のパネルを初期位置(頭出し位置)に待機させる。
【0060】
そして、カム53、53Aによる制御状態は再び
図4に示す状態となって
図7に示す印刷ポジションとなり、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させ、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を印刷領域の長さ分移動させると、サーマルヘッド40にて次色による印刷が行われる。
【0061】
こうして、印刷ポジションと搬送ポジションでの動作は全ての色(本例では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の4色)の印刷が終了するまで繰り返され、さらに、ピールオフパネル(PO)による転写フィルム46の所定領域の転写層を剥ぎ取る際にも繰り返される。そして、サーマルヘッド40による印刷(転写フィルム46への画像形成および所定領域の転写層の剥ぎ取り)が終了すると、転写フィルム46に画像形成された領域をヒートローラ33まで搬送するが、このときカム53および53Aは
図3に示す状態に移動して、転写フィルム46への圧接を解除する。その後、巻取ロール47の駆動で転写フィルム46を搬送しながらカードCaへの転写が行われる。
【0062】
このような画像形成部Bは、3通りのユニット90、91、92に分割してそれぞれ一体化される。
【0063】
図9に示す第1のユニット90は、ユニット枠体75にモータ54(
図10参照)の駆動により回転する駆動軸70を装架しており、駆動軸70にフィルム搬送ローラ49を装着している。フィルム搬送ローラ49の下方には、ブラケット50Aと一対のプラテン支持部材72とが配置されており、これら部材はユニット枠体75の両側板に装架される軸71に回動自在に支持されている。
【0064】
図9においては、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72bからブラケット50Aの一部である一対のカム受支持部85が表れている。カム受支持部85は、その後方に配置される一対のカム受84を保持する。そして、カム受84の更に後方には、ユニット枠体75を挿通しているカム軸83に装着されるカム53Aが配置されている。カム軸83はユニット枠体75の両側板に装架される。
【0065】
転写フィルム46とインクリボン41の搬送パスを挟みプラテンローラ45と対向する位置にはサーマルヘッド40が配置される。サーマルヘッド40、加熱に関する部材および冷却ファン39は
図11に示すように第3のユニット92に一体化しており、第1のユニット90に対向して配置される。
【0066】
第1のユニット90は、移動可能なブラケット50Aにて、印刷動作により位置を変動するプラテンローラ45と剥離コロ25と張力受け部材52Aとを一括して保持することで、これら部材間の位置調整が不要となる。しかも、カム53の回動にてブラケット50Aを移動させることでこれら部材を所定の位置にまで移動させることができる。また、ブラケット50Aを設けたことで、固定のフィルム搬送ローラ49と同一のユニットに収納でき、転写フィルムを精度良く搬送しなければならないフィルム搬送ローラ49による搬送駆動部分と、プラテンローラ45による転写位置規制部分とが同じユニットに含まれるために両者間の位置調整が不要となる。
【0067】
図10に示す第2のユニット91は、ユニット枠体55にカム53が装着されるカム軸82を挿通させて、カム軸82を駆動モータ54の出力軸に連結している。そして、第2のユニット91は、カム53と当接するようブラケット50をユニット枠体55に移動自在に支持しており、ブラケット50には、ピンチローラ支持部材57を回動自在に支持している支持シャフト58と張力受け部材52とが固設されている。
【0068】
ピンチローラ支持部材57には、支持シャフト58にバネ部材51a、51bが取り付けられていて、その端部をピンチローラ32a、32bを支持しているピンチローラ支持部材57の両端にそれぞれ当接させて、フィルム搬送ローラ49の方向へ付勢している。そして、ピンチローラ支持部材57は、長穴76、77に支持シャフト58を挿入しており、支持シャフト58は中央部でブラケット50に固定支持される。
【0069】
ブラケット50とピンチローラ支持部材57との間には、ピンチローラ支持部材57をブラケット50に向けて付勢するバネ89を設けている。このバネ89によりピンチローラ支持部材57は第1のユニット90のフィルム搬送ローラ49から後退する方向に付勢されるために、転写フィルムカセットを印刷装置1にセットするときに第1のユニット90と第2のユニット91の間に転写フィルム46を容易に通すことができる。
【0070】
第2のユニット91は、印刷動作に応じて位置が変動するピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とをブラケット50Aにて保持し、カム53の回動にてブラケット50Aを移動させることでピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とを移動させるために、両者間の位置調整やピンチローラ32a、32bとフィルム搬送ローラ49との位置調整が簡略化される。このような第2のユニット91は、転写フィルム46を挟み第1のユニット90に対向して配置される。
【0071】
このようにユニット化することで第1のユニット90、第2のユニット91および第3のユニット92は、転写フィルム46やインクリボン41の各カセットと同様に、それぞれ印刷装置1の本体から引き出すことも可能になる。従って、転写フィルム46やインクリボン41の消耗によるカセットの交換時にこれらユニット90、91、92も必要に応じてユニットを取り出しておけばカセット挿入時の転写フィルム46やインクリボン41を簡単に装置内に装架することができる。
【0072】
上記したように、プラテンローラ45とブラケット50Aとカム53Aとプラテン支持部材72とを一体化した第1のユニット90と、ピンチローラ32a、32bとブラケット50とカム53とバネ部材51とを一体化した第2のユニット91とを組み合わせると共に、サーマルヘッド40が取り付けられた第3のユニット92をプラテンローラ45に対向して配置して組み付けることで、印刷装置の製造時における組み立てやメンテナンス時の調整を容易且つ正確に行うことができる。しかも、一体化したことで装置からの取り外しも容易に行えて、印刷装置としての取扱い性が向上する。
【0073】
<インクリボンカセット>
次に、インクリボン41を収納するカセット42について詳述する。
図12に示すように、カセット42は、カセット42の基台となる矩形板状のベース11を有している。ベース11には、印刷装置1に装着するための本体接続突起15、16が突設されている。本体装着突起15、16にはバネが巻き掛けられており、これらのバネにより印刷装置1にスライド可能に装着される。
【0074】
ベース11の長手方向一側(
図12の上側)には巻取スプール44が回転可能に配置されており、ベース11の長手方向他側(
図12の下側)には供給スプール43が回転可能に配置されている。すなわち、ベース11の長手方向一側および他側には、それぞれ巻取スプール44および供給スプール43の一側の軸(
図13の符号119参照)を回転可能に軸支する円形状の貫通穴が形成されている。巻取スプール44は軸の反対側に大径の係合部115を有しており、供給スプール43は軸119の反対側に係合部115より小径の係合部112を有している。このように係合部115と係合部112との径が異なるのは、カセット42を本体装置に装着する際に、
図12に示す上下方向で誤って装着しようとしても装着できないようにするためである。
【0075】
また、カセット42は、ベース11と交差する方向に、巻取スプール44および供給スプール43を覆うカバー17を有している。カバー17はベース11の長手方向に沿う端部に固定されている。さらに、カセット42には、
図12の下側から上側の順に、シャフト14、13、シャフト状の剥離部材28、シャフト12が、供給スプール43ないし巻取スプール44の軸線と平行となるように配設されている。これらのシャフトは、それぞれ、一側がベース11に固定されており、他側がカバー17からベース11と対向するように張り出した延出部に固定されている。
【0076】
従って、供給スプール43から繰り出されたインクリボン41は一面側でシャフト14、13、剥離部材28およびシャフト12に摺接して巻取スプール44に巻き取られるように、またはその逆に、シャフト12、剥離部材28およびシャフト14、13に摺接して供給スプール43に巻き戻されるように搬送される。
【0077】
ここで、カセット42が本体装置に装着された際の本体装置側のセンサSe2およびサーマルヘッド40とこれらのシャフトとの配置関係について付言すると、
図16(A)に示すように、供給スプール43から繰り出されたインクリボン41に沿って、シャフト14とシャフト13との間にセンサSe2が位置付けられており、シャフト13と剥離部材28との間にサーマルヘッド41が位置付けられている。
【0078】
また、カセット42が本体装置に装着された際のインクリボン41、供給スプール43、巻取スプール44等の関係について付言すると、インクリボン41の供給スプール43と巻取スプール44との間で張架された長さが、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の連続する4色のリボンパネルのうち3色のリボンパネルの合計の長さより小さく設定されており、さらに、供給スプール43と巻取スプール44との間で張架されたインクリボン41に沿って、供給スプール43とセンサSe2との間の距離、センサSe2とサーマルヘッド40との間の距離、サーマルヘッド40と剥離部材28との間の距離、および、剥離部材28と巻取スプール44との間の距離が、いずれもインクリボン41の1色のリボンパネルの長さより小さく設定されている。
【0079】
次に、
図13を参照して、供給スプール43側のスプール本体110およびスプール本体110に係合する印刷装置1の係合部について説明する。
図13は供給スプール43の係合部112と本体装置側の係合部材(係合凸部122)との係合状態を示したものであるが、巻取スプール44の係合部と本体装置側の係合部材との係合状態も同様のため、供給スプール43についてのみ説明し、巻取スプール44についての説明は省略する。係合部112は、端部方向へ突出する矩形状の8個の凸部を有している。なお、
図12に示した供給スプール43および巻取スプール44はそれぞれスプール本体110にインクリボン41が巻回(保持)されたものであり、供給スプール43にはインクリボン41のうち未使用部分が巻回されており、巻取スプール44にはインクリボン41のうち使用済部分(サーマルヘッド40による熱転写後のインクリボン41)が巻回される。
【0080】
スプール本体110は、両側にフランジ113、114を有しインクリボン41を保持する筒状のリボン保持部118と、フランジ113に隣接して一側端部に設けられた係合部112と、フランジ114に隣接して係合部112の反対側に設けられリボン保持部118の筒状部より縮径された軸部119とを有している。
【0081】
フランジ113、114はスプール本体110の軸方向でインクリボン41のリボン保持部118への巻回を位置規制するため、スプール本体110が回転しても、リボン保持部118から未使用のリンクリボン41が位置ズレすることなく供給され(供給スプール43の場合)、巻き取り側のリボン保持部にはリンクリボン41のうち使用済部分が適正に巻回される(巻取スプール44の場合)。
【0082】
供給スプール43の係合部112に対する本体装置側の係合部は複数の部材で構成されている。すなわち、ハウジング2に支持軸125が固定されており、支持軸125は円盤状で外縁部にギアを有する係合部材を回転可能に軸支している。係合部材の、係合部112と係合する側には、係合部112の凸部(溝部)とは形状の異なる、2つの係合凸部122が対向するように(係合部材の回転方向に対して180°の位相差ができるように)突設されている。係合部122には、凸部側面に直線状に形成され所定の傾斜角度を有する傾斜面と、隣接する凸部の傾斜面間を連接する底部とで形成された溝が形成されている(
図13では係合部112と係合部122の凸部の関係が逆である。)。また、支持軸125にはバネ124が巻き掛けられており、このバネ124により係合部材(係合凸部122)はスライド可能に係合部側に付勢される。ギア123にはモータMr3のモータ軸に嵌着されたギア126が噛合している。このため、スプール本体110にはモータMr3からの回転駆動力が伝達される。
【0083】
カセット42を本体装置に装着する際に、スプール本体110の係合部112の凸部の先端と装置本体側の係合部材に設けられた係合凸部122の先端とが当接して(ぶつかって)スムーズに挿入されない場合がある。係合部材は支持軸125の軸方向に対してスライド可能に設けられているため、係合部112の凸部の先端と係合凸部122の先端とがぶつかったときには、係合凸部122が一旦装置フレーム側(スプール本体110の反対側)に退避する。その後、係合部材またはスプール本体110が回転すると、係合凸部122が係合部112の凸部間の溝に入り込み、バネ124によってスプール本体110側に付勢され、係合凸部122と係合部112の凸部(間の溝)とは2点で点接触する。
【0084】
係合部材のギアにはギア121Cが噛合しており、ギア121Cには同軸上にスリット(不図示)が形成された回転板121Aが固着している。また、回転板121Aを挟む位置には、発光素子と受光素子とからなる透過一体型のセンサ121Bが配置されている。従って、回転板121Aとセンサ121Bが、インクリボン41を供給する供給スプール43の回転量を検出する回転量検出手段としてのエンコーダ121を構成している。なお、上述したフィルム搬送ローラ49に設けられたエンコーダ(不図示)も同様に構成されている。すなわち、上述した駆動軸70(
図9参照)に
図13に示したギア123と同様のギアが嵌着されており、このギアに噛合するギア(
図13のギア121Cに相当)と回転板(
図13の回転板121Aに相当)とを有しており、この回転板の回転がセンサ(
図13のセンサ121Bに相当)で検出可能に構成されている。
【0085】
サーマルヘッド40の転写フィルム46への印刷処理に伴って、インクリボン41は供給スプール43側から巻取スプール44へと搬送されることになるが、これに準じて、供給スプール43のリボン径は大径から小径へと移行し、また、巻取スプール44のリボン径は小径から大径へと変化していくことになる。この変化に伴い、インクリボン41を巻取スプール44に巻き取る際の張力(テンション)は、大から小へと移行していき、インクリボン41を供給スプール43に巻き戻す際の張力は、反対に、小から大へと移行していくため、本例では、巻取スプール44の回転駆動源となるモータMr1と、供給スプール43の回転駆動源となるモータMr3との2つのモータを用いている。
【0086】
次に、印刷装置1の制御および電気系統について説明する。
図14に示すように、印刷装置1は、印刷装置1全体の動作制御を行う制御部100と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部120とを有している。
【0087】
<制御部>
図14に示すように、制御部100は、印刷装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ102(以下、マイコン102と略称する。)を備えている。マイコン102は、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、印刷装置1の基本制御動作(プログラムおよびプログラムデータ)が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、およびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0088】
マイコン102には外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置201との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードCaに印刷すべき印刷データやカードCaの磁気ストライプや収容ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ101が接続されている。
【0089】
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部103、各モータに駆動パルスや駆動電力を送出するモータドライバ等を制御するアクチュエータ制御部104、サーマルヘッド40を構成する発熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド制御部105、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部106、および、上述した情報記録部Aが接続されている。
【0090】
電源部120は、制御部100、サーマルヘッド40、オペパネ部5および情報記録部Aに作動/駆動電源を供給している。
【0091】
<印刷システム200の特色等>
次に、本実施形態の印刷システム200の特色等について説明する。
【0092】
(アプリケーションソフトウエア)
上位装置201には、「オブジェクト生成/非転写領域設定手段」として機能し、個々の印刷オブジェクトを生成するとともに、複数の印刷オブジェクトで構成されカードCaに印刷される所望画像を作成するためのオブジェクト生成アプリケーションソフトウエアと、「変換手段」として機能し、オブジェクト生成アプリケーションソフトウエアで作成されたデータに基づき印刷装置1用の印刷データを作成するプリンタドライバ(アプリケーションソフトウエア)がインストールされている。
【0093】
(印刷オブジェクトの作成)
ここで、印刷オブジェクトの作成について例を挙げて説明する。
図15は、カードCaに印刷される所有者の氏名「知財 花子」の印刷オブジェクトを作成する場合のモニタ202に表示された画面の例を模式的に示したものである。この例では、オペレータが、「テキスト入力」の欄に入力装置203のキーボードから「知財 花子」(テキストデータ)を入力し、入力装置203のマウス(不図示)で、フォント名、フォントサイズ、スタイル/装飾、文字色、背景色等の印刷情報を入力した例であり、プレビューの欄には、入力されたテキストデータと印刷情報とから生成された印刷オブジェクトが表示されている。オペレータは、プレビューを参照しつつ、入力装置203を操作(修正)することで所望の印刷オブジェクト(テキストデータ)を作成し、OKボタンをクリックする。これにより、上位装置201には一つの印刷オブジェクト(オブジェクトのサイズ情報を含む。)が取り込まれ、オブジェクト生成アプリケーションソフトウエアにより、その印刷オブジェクトを特定するための名前や番号が付与されるとともに、予め定められた上位装置201のフォルダに印刷オブジェクトが収容される。なお、この例では、「プレビュー」の欄に表示された印刷オブジェクトが複数の文字で構成され、それらの文字のフォント名やフォントサイズ等が同じ印刷オブジェクトを示したが、印刷オブジェクトは1文字で構成されていても、複数の文字で構成され各文字が異なるフォント名やフォントサイズであってもよい。
【0094】
カードCaは、一般に、所有者の氏名の他、所有者が所属する会社名やID番号等種々の印刷オブジェクト(テキストデータ)を含んで構成されるため、上記の例に従い他の(氏名以外の)印刷オブジェクトを作成することができ、同一のフォルダに、作成された複数の印刷オブジェクトが収容される。また、カードCaには、一般に、所有者の顔写真、会社のロゴマーク、カードの背景画像等の印刷オブジェクト(イメージデータ)も印刷されることが多く、これらのイメージデータは同一のフォルダに収容されてもよく、他のフォルダに収容されるようにしてもよい。なお、このようなイメージデータは画像入力装置204から取り込んでも、他のコンピュータに保存されているイメージデータを利用するようにしてもよい。
【0095】
(画像オブジェクトの生成とピールオフ領域の設定)
オペレータは、上述したフォルダに収容された複数の印刷オブジェクトにより、カードCaに印刷される所望の画像を作成する。すなわち、上位装置201は、オブジェクト生成アプリケーションソフトウエアにより、全体のプレビュー画像(
図16も参照)をモニタ202に表示し、オペレータによる複数のオブジェクト配置を補助する。これにより、オペレータは所有者の氏名、会社名、ID番号、顔写真、ロゴマーク等が所望位置に配置された画像オブジェクトを得ることができる。
【0096】
背景技術欄で述べたように、カードCaには、磁気ストライプ配置箇所、IC(特に、接触式IC)収容箇所、所有者の署名欄など、転写フィルム46の転写層が転写されるべきでない領域が存在する。オペレータは、この所望の画像オブジェクトを得る際に(複数の印刷オブジェクトの配置前、配置中または配置後に)、画像オブジェクトの領域内にカードCaに対して転写フィルム46の転写層を転写しないことを表す非転写領域を設定(指定)する。印刷装置1側では、インクリボン41のピールオフパネルを用いて転写フィルム46転写層を剥ぎ取る(peel off)ことで非転写領域を形成するので、以下、この「非転写領域」をピールオフ領域といい、PO領域と略称する。
【0097】
図20(A)は、カードCaに対し転写フィルム46の転写層が転写されるべきでない領域として、磁気ストライプ配置箇所および接触式IC収容箇所を示したものであり、磁気ストライプ配置箇所および接触式IC収容箇所に、非転写領域としてのPO領域(ドットで示した領域)が設定され、PO領域より所定寸法大きくPO領域を中心に含む領域内(斜線で示した領域)を中間転写媒体46に画像を形成しない非印刷領域として設定された例である。以下では、
図20(A)に従って、接触式IC収容箇所を中心に説明する。
【0098】
図16は、オブジェクト生成アプリケーションソフトウエアにより接触式ICの収容位置に対してPO領域を設定する際に、上位装置201のモニタ202に表示された画面の一例を模式的に示す説明図で、各印刷オブジェクトを配置する前のプレビュー画像を示したものである。この例では、カードCaの上端と左端それぞれの延長線上で両者が交差する位置が原点O(0,0)の座標とされている。オペレータは、接触式ICの収容位置の左上の座標、すなわち、原点Oに最も近い位置の座標をピールオフ開始座標P(x,y)として設定するとともに、PO領域のX軸方向のサイズNおよびY軸方向のサイズLを設定する。これに代えて、ピールオフ開始座標P(x,y)と、接触式ICの収容位置の右下の座標、すなわち、原点Oに最も遠い位置の座標をピールオフ終了座標Q(x+L,y+N)とを設定してもよい。本例では、上述した個別の印刷オブジェクトにサイズ情報があるため、印刷オブジェクトに対する処理と同様に、ピールオフ開始座標P(x,y)とサイズ情報(L,N)とでPO領域の位置情報としている。オペレータは、他のPO領域(例えば、磁気ストライプ配置領域)についても同様に設定する。
【0099】
本例のオブジェクト生成アプリケーションソフトウエアでは、オペレータがPO領域設定(マニュアル)ボタンをクリックすることで、矩形状所定サイズのPO領域がプレビュー画像に表示され、表示されたPO領域のピールオフ終了座標Qにポインタ(カーソル)を位置付けマウスで任意に左ドラッグすることで、PO領域のX軸方向のサイズLおよびY軸方向のサイズNを自在に変更することができ、PO領域内のピールオフ終了座標Q以外の箇所にポインタを位置付けマウスで任意の位置に左ドラッグすることでPO領域を任意の位置に移動させることができる。なお、ピールオフ開始座標P、PO領域のX軸方向のサイズLおよびY軸方向のサイズNの数値を表したボックスも同時に表示され(不図示)、オペレータはボックス内の数値を直接変更することもできる。
【0100】
上記は、オペレータがマニュアルでPO領域を設定する場合の例であるが、カードCaに規格品を用いる場合には、より簡単に設定することができる。オブジェクト生成アプリケーションソフトウエアは、例えば、プログラムデータとしてカードの種類とカードの種類に応じたPO領域の位置情報(ピールオフ開始座標P、PO領域のX軸方向のサイズLおよびY軸方向のサイズN)との関係を定めた情報を有しており、オペレータがPO領域設定(選択)ボタンをクリックすることで、カードCaの種類を特定するためのリスト(不図示)が表示される。オペレータは、例えば、カードの種類に対応したボックス内にチェックを入れることで、表示されたリスト中からカードCaの種類を特定(選択)する。上位装置201のCPUは、プログラムデータを参照して特定されたカードCaの種類に対応するPO領域の位置情報を決定し、プレビュー画像にPO領域を表示する。
【0101】
上位装置201のCPUは、プレビュー画像のOKボタンがクリックされたかを判断し、クリックされた場合には、カードCaに印刷される画像オブジェクトおよびピールオフデータが確定したものとみなす。ここで、重要なことは、各印刷オブジェクトに位置情報が設定されることである。従って、印刷情報には、上述した印刷情報の他に、印刷オブジェクトの位置情報が付加される。また、ピールオフ開始座標P(x,y)とサイズ情報(L,N)を取り込み、所定のフォルダ(ピールオフフォルダ)にピールオフデータとしてPO領域の位置情報を格納する。なお、ピールオフフォルダは印刷オブジェクトが収容されたフォルダと同一のフォルダであってもよい。
【0102】
次いで、上位装置201のCPUは、オブジェクト生成アプリケーションソフトウエアに従って、テキストデータの各印刷オブジェクトを例えば、ビットマップ等のイメージデータに変換し、カードの一面ごとに全てのイメージデータを一つに統合した画像オブジェクトを生成する。そして、API(Application Program Interface)関数を利用して画像オブジェクト、ピールオフデータおよび入力装置203から予め入力されておりカードCaの磁気ストライプやICに記録すべきデータをGDI(Graphic Device Interface、特開2004−194041号公報参照)に出力する。GDIはDDI関数(Device Driver Interface、特開2002−91428号公報参照)を利用して、画像オブジェクト、ピールオフデータおよびカードCaの磁気ストライプやICに記録すべきデータをプリンタドライバに出力する。
【0103】
(プリンタドライバ)
上位装置201のCPUは、プリンタドライバに従って、GDIを介してオブジェクト生成アプリケーションソフトウエアから出力されたデータを受け取り、印刷装置1での記録動作を制御するための各種パラメータ値を決定し、その記録指令よりカードCaへの記録を行うための印刷データ、ピールオフデータおよび磁気ストライプやICに記録すべきデータを生成して、印刷装置1に送信する。
【0104】
(画像変換)
ここで、プリンタドライバによる画像オブジェクトから印刷データへの画像変換について説明する。本実施形態では、プリンタドライバにより次の3種類の画像変換が行われる。1)R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)を色成分とする画像オブジェクトからY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のそれぞれを色成分とする印刷データへの変換、2)上記1)の変換に際して行われるエッジ強調変換(例えば、顔の輪郭等を強調する変換)、3)Bk(ブラック)を色成分とする画像オブジェクトに対するディザ変換。このディザ変換は本例のようにインクリボン41のBkリボンパネルのインクが溶融インクの場合に行われるが、インクリボン41のカラーリボンパネルが溶融タイプの場合(本例以外の場合)にはカラーリボンパネルに対してもディザ変換が行われる。なお、本実施形態では、上記1)の画像変換において、R、G、B、Bkの印刷データを構成する各画素は階調値0〜255範囲の256階調で変換される。
【0105】
(印刷装置)
一方、印刷装置1の制御部100のバッファメモリ101には、記録制御指令となる各種パラメータ値、印刷データ、ピールオフデータおよび磁気ストライプやICに記録すべきデータが格納される。
【0106】
(修正印刷データの生成)
制御部100のマイコン102のCPU(以下、CPUと略称する。)は、バッファメモリ101に格納された印刷データおよびピールオフデータに基づき、受信した印刷データに修正を施した修正印刷データを生成するための修正印刷データ生成ルーチンを実行する。
【0107】
図17に示すように、この修正印刷データ生成ルーチンでは、まず、ステップ202でピールオフデータが有るか否かを判断し、否定判断のときは修正印刷データ生成ルーチンを終了し、肯定判断のときは、次のステップ204においてマスク領域生成処理を行う。
【0108】
図18に示すように、マスク領域生成処理では、ステップ222でピールオフデータからピールオフ開始座標P(x,y)を読み出し(
図21も参照)、次のステップ224ではマスク開始座標Rを算出する。本例では、上述したように、PO領域より所定寸法大きくPO領域を中心に含む領域(
図20(A)の斜線で示した領域)を中間転写媒体46に画像を形成しない非印刷領域として設定することから、
図21に示すように、マスク開始座標R(a,c)は、ピールオフ開始座標P(x,y)から、X軸およびY軸の原点Oの方向(
図21の左側および上側)にそれぞれ所定寸法(本例では0.5mm)離間した位置として算出される(R(a,c)=R(x−0.5,y−0.5))。
【0109】
次いでステップ226ではピールオフデータからPO領域のサイズ情報(L,N)を読み出し、サイズ情報からピールオフ終了座標Q(x+L,y+N)を算出する。次にステップ228では、非印刷領域のX軸およびY軸方向におけるサイズ(b,d)を算出する(サイズ(b,d)=サイズ(L+1,N+1))。この非印刷領域には後述するマスク処理が施されることから、以下、非印刷領域のX軸およびY軸方向におけるサイズをマスクサイズという。そして、ステップ230において、ステップ224で算出したマスク開始座標Rと、ステップ228で算出したマスクサイズ(b,d)とから非印刷領域のうち原点O(0,0)から最も遠い位置の座標として表されるマスク終了座標S(a+b,c+d)を算出してマスク領域生成サブルーチンを終了し、
図17のステップ206に進む。
【0110】
図17のステップ206では、各種パラメータ値(または印刷データ)を参照して、カラーの印刷データ(Y、M、Cを色成分とする印刷データ)があるか否かを判断し、否定判断のときはステップ214に進み、肯定判断のときは、ステップ208〜212において、Y、M、Cを色成分とする印刷データごとに非印刷領域を生成するためのマスク処理を行う。
【0111】
図19に示すように、このマスク処理では、ステップ232においてステップ226(
図18参照)で算出されたマスク開始座標Rを読み出し、次のステップ234において、マスク終了座標Sに到達したか否かを判断し、肯定判断のときには、マスク終了座標Sの画素の階調値を階調値0で上書きしてマスク処理サブルーチンを終了し、否定判断のときには、次のステップ236においてマスク開始座標Rの画素の階調値を階調値0で上書きする。次いで、ステップ238では、非印刷領域内のマスク対象座標を更新しステップ234に戻る。これにより、Y、M、Cを色成分とする印刷データのそれぞれに対し、
図21に示すように、PO領域を含め非印刷領域内の印刷データの階調値が階調値0に設定された修正印刷データが生成される。
【0112】
次に、
図17のステップ214では、各種パラメータ値(または印刷データ)を参照して、Bkの印刷データがあるか否かを判断し、否定判断のときは修正印刷データ生成ルーチンを終了し、肯定判断のときは、次のステップ216において、Bkを色成分とする印刷データに対し非印刷領域を生成するためのマスク処理を行う(
図21も参照)。このマスク処理は上述したY、M、Cを色成分とする印刷データに対するマスク処理(
図19参照)と同様のため、その説明を省略する。
【0113】
以上の説明は、接触式IC収容箇所に対するものであるが、本例のようにストライプ配置箇所のピールオフデータが存在する場合、さらに、カードCaの所有者の署名欄等が存在する場合には、同様に、印刷データに修正がなされる。
図20は、接触式IC収容箇所およびストライプ配置箇所に対して、接触式IC収容箇所、ストライプ配置箇所を中心に含みそれらより所定寸法大きい領域内の印刷データが削除(マスク処理で階調値0に上書き)された例であり、削除された箇所が斜線で示されている。
【0114】
ところで、本実施形態では、画像オブジェクトの生成とPO領域の設定→画像変換→修正印刷データの生成の順に処理するが、理論的には、画像オブジェクトの生成とPO領域の設定→修正印刷データの生成→画像変換の順で処理することも考えられる。後者の場合には、修正印刷データの生成がカラー画像オブジェクトとBk画像オブジェクトの2つに対して行うことで済み、前者のY、M、C、Bk印刷データのそれぞれに対して合計4回行うこと(
図17のステップ208、210、212、216参照)より処理負荷が小さくなると思われる。しかしながら、後者の場合には、画像処理の前に修正印刷データの生成を行い元画像がなくなってしまうため、画像変換の際(特に、上述したディザ変換やエッジ強調変換の際)に、非印刷領域の境界部分の仕上がりが遜色するおそれがある。これに対し、前者の場合には、出来上がった印刷データに対し非印刷領域内の画素の階調値を階調値0に設定するだけのため、非印刷領域の境界部分が綺麗に仕上がる。このため、本実施形態では、前者の手順により、カードCaに形成される画像の画質を向上させている。
【0115】
(転写フィルム46への画像形成)
印刷部B1では、修正印刷データ生成ルーチンで生成されたY、M、C、Bkのそれぞれの修正印刷データに従って、インクリボン41のY、M、CのカラーリボンパネルおよびBkリボンパネルのぞれぞれの画像形成パネルに対し、サーマルヘッド40の加熱素子を選択的に加熱することで画像を形成する。
図22に示すように、インクリボン41の各画像形成パネルには、斜線で示した非印刷領域の印刷データが階調値0に設定されているため加熱素子による加熱が行われず、その結果、転写フィルム46にY、M、C、Bkの各インクによる画像形成は行われない。
【0116】
(転写フィルム46の転写層の剥ぎ取り)
次いで、印刷部B1では、PO領域の位置情報に従って、インクリボン41のピールオフパネル(PO)に対し、サーマルヘッド40の加熱素子を選択的に加熱することで転写フィルム46のインクリボン41におけるPO領域に対応する領域の転写層を剥ぎ取る。
図22は、ピールオフパネル(PO)上のPO領域をドットで示したものである。転写フィルム46はインクリボン41とともにサーマルヘッド40とプラテンローラ45とで挟持(ニップ)されて副走査方向に搬送された状態のため、このドットで示したインクリボン41のPO領域を主走査方向に列設された加熱素子で選択的に加熱することで、対応する転写フィルム46の領域の転写層が剥ぎ取られる(
図23(C)参照)。
【0117】
(カードCaへの転写)
転写部B2では、以上のように転写フィルム46に形成され転写層が剥ぎ取られた画像をカードCaに転写する。これにより、カードCaの一面に対する印刷処理が終了する。なお、カードCaの両面に画像を転写する際には、例えば、カードCaの一面に画像を転写した後、カードCaを媒体搬送経路P1上を反転ユニットFに向けて逆搬送し、反転ユニットFで180°回転させてカードCaの他面に画像を転写するようにしてもよく、または、カードCaの一面に画像を転写した後、媒体搬送経路P2上に沿って収容スタッカ60に移送し(印刷装置1から一旦排出し)、カードCaの他面に対して改めて印刷処理を施すようにしてもよい。
【0118】
(利点等)
次に、本実施形態の印刷システム200の利点等について、従来例の課題と対比して説明する。
【0119】
従来例では、カードに転写されるべきでない転写フィルム46の所定領域にもインクリボン41のY、M、C、Bkの画像形成パネルで一旦画像を形成してその所定領域の転写層をインクリボン41のピールオフパネル(PO)で剥ぎ取ることから、
図23(A)に示すように、剥ぎ取られた領域の周囲の画像との境界がギザギザとなるおそれがある(課題1)。また、
図23(B)に示すように、PO領域に印刷されたY、M、C、Bkの階調が高い(色が濃い)ほどピールオフパネル(PO)で完全には剥ぎ取れず、転写フィルム46のPO領域に対応する領域に色が残ってしまうおそれもある(課題2)。
【0120】
本実施形態の印刷システム200では、修正印刷データは非印刷領域の印刷データの画素が階調値0に設定(削除)されているので、
図23(C)に示すように、印刷部B1で転写フィルム46に画像形成パネルで画像を形成する際に、この印刷データの階調値0に設定された非印刷領域に対応する転写フィルム46の領域には画像形成パネルによる画像形成がなされず、印刷部B1でインクリボン41のピールオフパネル(PO)で転写フィルム46の転写層を剥ぎ取る際に、剥ぎ取られる転写層の領域が非印刷領域より小さいので、剥ぎ取られる転写層の領域の周囲には画像形成がなされておらずピールオフパネル(PO)により剥ぎ取られる領域が剥ぎ取り易くなるため、剥ぎ取られた領域の周囲の画像との境界にギザギザの発生を防止でき(課題1を解決でき)、転写部B2で転写フィルム46に形成された画像を転写した後のカードCaの画質を向上させることができる。また、印刷データの階調値0に設定された非印刷領域に対応する転写フィルム46の領域には画像形成パネルによる画像形成がなされないため、転写フィルム46のPO領域に対応する領域に色が残ってしまうという問題も生じない(課題2を解決できる。)。
【0121】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0122】
(変形例その1)
図20(B)および
図23(D)に示すように、非印刷領域とPO領域とを同じ領域に設定するようにしてもよい。この変形例1では、印刷部B1でインクリボン41のピールオフパネル(PO)で転写フィルム46の転写層を剥ぎ取る際に、剥ぎ取られる転写層の領域が画像形成されない領域と同じなため、剥ぎ取られる転写層の領域には画像形成がなされておらずピールオフパネル(PO)により剥ぎ取られる領域が剥ぎ取り易くなるため、剥ぎ取られた領域の周囲の画像との境界にギザギザの発生を防止でき(課題1を解決でき)、転写部B2で転写フィルム46に形成された画像を転写した後のカードCaの画質を向上させることができる。また、印刷データの階調値0に設定された非印刷領域に対応する転写フィルム46の領域には画像形成パネルによる画像形成がなされないため、転写フィルム46のPO領域に対応する領域に色が残ってしまうという問題も生じない(課題2を解決できる。)。
【0123】
(変形例その2)
また、
図20(C)および
図23(E)に示すように、非印刷領域をPO領域の周囲のみに設定するようにしてもよい(PO領域に対応する中間フィルム46の領域には従来例と同様に画像が形成される。)。この変形例2では、印刷部B1でインクリボン41のピールオフパネル(PO)で転写フィルム46の転写層を剥ぎ取る際に、剥ぎ取られる転写層の領域が画像形成されない領域に隣接するので、剥ぎ取られる転写層の周囲の領域には画像形成がなされておらずピールオフパネル(PO)により剥ぎ取られる領域が剥ぎ取り易くなるため、剥ぎ取られた領域の周囲の画像との境界にギザギザの発生を防止でき(課題1を解決でき)、転写部B2で転写フィルム46に形成された画像を転写した後のカードCaの画質を向上させることができる。しかしながら、PO領域に対応する中間フィルム46の領域には従来例と同様に画像が形成されるため、従来例と同様に課題2の解決はできない。なお、
図20(A)で示した本実施形態は、
図20(B)および
図20(C)と比較すると明らかなように、非印刷領域およびPO領域に関し、
図20(B)と
図20(C)とを重ねたものとして捉えることができる。
【0124】
(変形例その3)
さらに、
図20(A)に示す態様(本実施形態)において、
図20(C)に示す斜線の領域にグラデーション処理を施すようにしてもよい。換言すると、
図21の斜線で示した領域(PO領域より所定寸法大きい領域でPO領域は含まない領域。)に対してグラデーション処理を施すようにしてもよい。
図23(F)はこの断面を示したものである。このグラデーション処理は、修正印刷データを生成する際に、PO領域より所定寸法大きい領域のPO領域とは反対側に隣接する領域の境界の印刷データの階調値を修正した階調値の階調値0に向けて徐々にまたは段階的に小さく設定することで行うことができる。この変形例3では、変形例1と同様に、課題1、2を解決することができるほかに、グラデーション処理により、より自然な仕上がり、換言すれば、より画質を向上させることができる。
【0125】
なお、本実施形態では、Y、M、C、Bkの画像形成パネルとピールオフパネル(PO)とをこの順で面順次に繰り返すことで構成されたインクリボン41を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ピールオフパネル(PO)とY、M、C、Bkの画像形成パネルとをこの順で面順次に繰り返すことでインクリボン41を構成するようにしてもよい。この場合には、画像形成パネルで転写フィルム46に画像を形成した後に、ピールオフパネル(PO)で転写フィルム46の転写層を剥ぎ取る本実施形態とは逆に、画像形成パネルで転写フィルム46に画像を形成する前に、ピールオフパネル(PO)で転写フィルム46の転写層を剥ぎ取ることができる。また、Y、M、C、Bkの画像形成パネルとピールオフパネル(PO)の他に保護層等を有していてもよい。さらに、本実施形態では、カラーリボンパネルがY、M、Cの順番である例を示したが、少なくとも上記3色を有していれば順番は適宜変更可能であり、他の色(シルバーやゴールド)のリボンパネルを有していてもよい。
【0126】
また、本実施形態では、画像オブジェクトの生成とPO領域の設定、並びに、画像変換を上位装置201側で行い、修正印刷データの生成を印刷装置1側で行う例を示したが、印刷装置1にはオペパネ部5が設けられているので、画像オブジェクトの生成とPO領域の設定を印刷装置1側で行うようにしてもよい。ただし、操作性や処理速度等を考慮すると、上位装置201側で行うことが好ましい。また、画像変換は、印刷装置1で行うようにしてもよい。さらに、修正印刷データの生成は、画像変換が印刷装置1側で行われる場合には印刷装置1側で行われるが、画像変換を上位装置201側で行う場合には、印刷装置1、上位装置201側のいずれで行うようにしてもよい。
【0127】
さらに、本発明を印刷装置1に適用する場合に、印刷装置1は本実施形態のように必ずしも上位装置201に接続されている必要はない。印刷装置1に、例えば、USBメモリ等の記憶媒体を介して印刷データやPO領域の位置情報等が入力されれば、本実施形態と同様の処理を行うことができる。
【0128】
また、本実施形態では、PO領域より所定寸法大きくPO領域を中心に含む領域として非印刷領域を設定する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、PO領域より所定寸法大きくPO領域を含む領域を非印刷領域として設定するようにしてもよい。この場合には、矩形状の非印刷領域の対角同士を結ぶ仮想線の交点(中心)と、矩形状のPO領域の対角同士を結ぶ仮想線の交点(中心)とが異なる位置となる。さらに、本実施形態では、所定寸法としてX軸方向およびY軸方向でそれぞれ0.5mmを例示したが、本発明はこれに限るものではく、例えば、X軸方向で0.4mm、Y軸方向で0.6mmのように、X軸方向とY軸方向とで寸法が異なるようにしてもよい。
【0129】
また、本実施形態では、
図20(A)に示したように、PO領域より所定寸法大きくPO領域を中心に含む領域を非印刷領域として設定する例を示したが、オブジェクト生成アプリケーションソフトウエアが、本実施形態の設定例および変形例その1〜その3のいずれかをオペレータに選択させるようにプログラムされていてもよい。
【0130】
そして、本実施形態では、プラテンローラ45をサーマルヘッド40側に移動させてインクリボン41および転写フィルム46をニップする例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、サーマルヘッド40をプラテンローラ45側に移動させてインクリボン41および転写フィルム46をニップするようにしてもよい。また、本実施形態では、サーマルヘッド40に対向配置されたプラテンローラ45を例示したが、本発明はローラないし回転体状のプラテンに限ることなく、例えば、サーマルヘッド40の押圧を受ける受け台状のプラテンや板状のプラテン等を用いるようにしてもよい。
【0131】
また、本実施形態では、非印刷領域について印刷データの階調値を階調値0に修正する態様を示したが、階調値を階調値0に修正しなくてもインクリボン41が発色しない範囲の階調値に修正すればよい。本実施形態の印刷装置は例えば階調値20程度ではインクリボンが発色しないため、
図19のマスク処理において、非印刷領域における印刷データの階調値を20以下の値に修正するようにしても同様の効果を得ることが出来る。インクリボンが発色しない程度の階調値は印刷装置の性能によって異なるので適宜設定することが望ましい。なお、発色しない程度にサーマルヘッド40を駆動することで、サーマルヘッド40に対する予備加熱の効果があり、サーマルヘッド40が冷めてしまうことがない。