(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電部材が挿入される収容部を有した筒状の端子保持部材であって、前記収容部への前記導電部材の挿入時に前記収容部と前記導電部材とによって形成される間隙に相手端子が挿入されることにより、前記相手端子を前記導電部材とともに弾性保持するようになっており、
前記収容部に挿入された前記導電部材の底面を支持する底部と、
前記底部の対向側に設けられ、前記相手端子の一方の面と面接触し得る面接触部と、
前記面接触部を前記底部の側に向って付勢するバネ性を発揮し得るように前記底部と前記面接触部を繋ぐバネ部と、
を備え、
前記間隙を通じて挿入された前記相手端子と係合して前記相手端子の前記端子保持部材からの抜出を防止する可動部材を貫通させるための貫通穴が前記面接触部に設けられており、
前記端子保持部材は、一枚の金属製の板材から形成され、前記板材の合わせ目が前記底部において前記貫通穴の対向側に位置することを特徴とする端子保持部材。
【背景技術】
【0002】
例えば、ジョイントボックスのブスバーの接続端子として、端子保持部材が使用されている。端子保持部材によれば、端子保持部材の収容部への導電部材の挿入時に収容部と導電部材とによって形成される間隙に相手端子を挿入することができ、相手端子が挿入されたときには、相手端子と導電部材を一体的に弾性保持することができる。
【0003】
特許文献1に、端子保持部材、及び、この端子保持部材と導電部材から成るクランプ装置の一例が示されている。
図21は、この特許文献1に開示された端子保持部材112と導電部材111の斜視図、
図22は、これら端子保持部材112と導電部材111から成るクランプ装置の断面図である。
端子保持部材112は、一枚の導電金属板を打ち抜き、曲折することによって製造されており、全体として扁平筒状であって、中心を貫通する収容部を有する。収容部は、平板部112aと、この平板部112aの両側から板状部分111を抱き込むよう形成された一対のバネ接触部112bと、板状部分111に端子保持部材112を固定するための一対の押圧バネ部112dから成る。収容部には、予め導電部材10が挿入される。この導電部材10は、側面視L字形状を有し、端子保持部材112の収容部に挿入される部分は、特に、中央にリブ111aを有した板状部分111として形成されている。
収容部に板状部分111が挿入された後、収容部と板状部分111との間隙に、相手端子113が挿入される。端子保持部材112は、これら板状部分111と相手端子113の双方をまとめて弾性保持することができる。特に、ここでの弾性保持は、一対のバネ接触部112bと一対の押圧バネ部112dの板厚部分によって、また、リブ111aに沿う長さ方向において、相手端子113を板状部分111に向かって押し付けることによって行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、弾性保持は、一対のバネ接触部112bと一対の押圧バネ部112dといった非常に薄い板状部材の厚さ部分を利用して、また、リブ111aの略幅方向に沿う細長い部分において、行われるものとなっており、この結果、相手端子113を板状部分111に向かって十分押し付けることができないといった問題があった。十分な押し付けができない場合、相手端子と導電部材の間に大きな接触抵抗が発生し、特に、比較的大きな電流を流すために端子保持部材が使用された場合には、発熱、発火といった深刻な問題を生じさせるおそれがある。
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、面接触部を利用して相手端子との接触面積を大きくし、面接触部の略全体で相手端子を導電部材に押し付けるようにして、相手端子を導電部材に対してより広い面積部分で押し付けることができる端子保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明によれば、導電部材が挿入される収容部を有した筒状の端子保持部材であって、前記収容部への前記導電部材の挿入時に前記収容部と前記導電部材とによって形成される間隙に相手端子が挿入されることにより、前記相手端子を前記導電部材とともに弾性保持するようになっており、前記収容部に挿入された前記導電部材の底面を支持する底部と、前記底部の対向側に設けられ、前記相手端子の一方の面と面接触し得る面接触部と、前記面接触部を前記底部の側に向って付勢するバネ性を発揮し得るように前記底部と前記面接触部を繋ぐバネ部と、を備えることを特徴とする端子保持部材が提供される。
この構成によれば、面接触部を利用して相手端子との接触面積を大きくし、面接触部の略全体で相手端子を導電部材に付勢することにより、相手端子を導電部材に対してより広い面積部分で押し付けるようにして、相手端子と導電部材との間の接触抵抗を小さくして、発熱しにくい構造の端子保持部材を提供することができる。
(2) 上記(1)に記載の端子保持部材において、前記バネ部の少なくとも一部は、前記底部から前記面接触部に向かう方向において、前記面接触部よりも遠い側に位置していてもよい。
この構成によれば、より大きなバネ性を発揮させることができる。
(3) 上記(2)に記載の端子保持部材において、前記遠い側に位置する部分は略アーチ状であってもよい。
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の端子保持部材において、前記相手端子の前記一方の面と、該一方の面と面接触する前記面接触部の内壁は、互いに平らな面であるのが好ましい。
相手コネクタと面接触部の接触面を平らな面とすることにより、より密接に且つ効率的に、面接触部からの力を相手端子に伝達することができる。
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の端子保持部材において、前記導電部材の一方の面と、該一方の面と接触する前記相手端子の他方の面は、平らな面で面接触するのが好ましい。
導電部材と相手端子の接触面を平らな面とすることにより、より密接に且つ効率的に、導電部材と相手端子を接触させることができる。
(6) 上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の端子保持部材において、前記間隙を通じて挿入された前記相手端子と係合して前記相手端子の前記端子保持部材からの抜出を防止する可動部材を貫通させるための貫通穴を前記面接触部に設けるのが好ましい。
貫通穴を設けることにより相手端子に対する可動部材のアクセスを可能とし、これにより、相手端子の端子保持部材からの抜出を防止することができる。
(7) 上記(6)記載の端子保持部材において、前記貫通穴に挿入される前記可動部材の移動方向に沿って、前記貫通穴の周囲に前記可動部材の挿入側に立設した垂設部を設けるのが好ましい。
垂設部を設けることにより、可動部材から不用意な方向に力を受けた場合であっても、そのような力の影響を軽減させることができる。
(8) 上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の端子保持部材のいて、前記面接触部の縁に、前記収容部に向かって傾斜した、前記相手端子のための誘い込み部が設けられているのが好ましい。
誘い込み部を設けることにより、相手コネクタを端子保持部材の間隙にスムースに導くことができる。
(9) 上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の端子保持部材において、前記端子保持部材は、一枚の金属製の板材を加工することによって形成され、前記板材の合わせ目が前記底部に位置するのが好ましい。
一枚の板材から形成することにより端子保持部材の製造コストは安価となる。また、板材の合わせ目を底部に位置づけることにより、面接触部と相手端子との間の接触面積をより大きくし、また、バネ性を確保することができる。
(10) 上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の端子保持部材において、前記導電部材は、平らな板材であるのが好ましい。
導電部材を板状とすることにより、端子保持部材の底部や、相手端子との接触を容易にすることができる。
(11) 上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の端子保持部材において、前記端子保持部材は、ステンレス又はステンレスの合金から成るのが好ましい。
本構成は、互いに直接接触させた導電部材と相手端子をそれらの外側から弾性接触させる構造であるため、端子保持部材は必ずしも導電率の高い物質で製造されている必要はなく、従って、導電率は低いがバネ性の強いステンレスを使用することができる。
(12) 上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の前記端子保持部材と前記導電部材とから成るクランプ装置を構成してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、面接触部を利用して相手端子との接触面積を大きくし、面接触部の略全体で相手端子を導電部材に押し付けるようにして、相手端子を導電部材に対してより広い面積部分で押し付けることができる端子保持部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な一つの実施形態について説明する。
図1に、本発明に用いることができる電気コネクタ1の使用態様の一例を斜視図で示し、更に、
図2に、本発明に用いることができる電気コネクタ1の分解斜視図を示す。
図2によく示されるように、電気コネクタ1は左右対称形状を有し、ハウジング21と、このハウジング21の内部に設置されたクランプ装置20、ハウジング21の内部に可動状態で設けた可動部材50、少なくとも一部を外部に露出させた状態で電気コネクタ1のハウジング21にスライド可能に設けたスライド部材70を備える。クランプ装置20は更に、端子保持部材10と導電部材8から構成されている。尚、便宜上、ここでは電気コネクタ1の片側構成のみを詳細に示している。
【0010】
図1に示した使用態様は、特に、
図2に示した本発明の電気コネクタ1を、それらの側方にて複数(ここでは3個)相隣り合うように連結した多連型のコネクタを示したものである。但し、電気コネクタ1の連結個数や連結方法は特に限定されるものではなく、例えば、
図2に示した1個の電気コネクタ1だけを用いることもできるし、3個以外の様々な個数とすることもできるし、更に、複数の電気コネクタ1を互いにずらした状態で連結することもできる。また、電気コネクタ1をレール2上に設置してもよい。レール2上に設置する場合、電気コネクタ1のハウジング21の脚部22には、レール2の両縁に設けたガイド2’と係合するレール溝22’を設ける。
【0011】
ケーブル3の先端に設けた端子4は、各電気コネクタ1を用いて、各電気コネクタ1の両方向から互いに突き合わせた状態で配置される。この結果、これら一対の端子4は、各電気コネクタ1の内部に設けた導電部材8を通じて互いに電気的に接続される。尚、端子4の好ましい一つの態様として、ここでは板状の丸端子を用いているが、勿論、これに限定されるものではない。また、電気コネクタ1は、一対の端子4を接続させるため以外に、例えば、各電気コネクタ1の一方の側だけ端子4を接続する態様とし、突合せ側については端子4以外の接続手段、例えば、単なるケーブルを直接接続する態様とすることもできる。
【0012】
各端子4は、電気コネクタ1のアクセス孔5を通じて図示矢印「γ」方向に沿って電気コネクタ1に挿抜される。端子4の中心には貫通孔4’が設けられており、電気コネクタ1に挿入された端子4の貫通孔4’に電気コネクタ1の内部に設けた可動部材50の一部54が挿入されることにより可動部材50と端子4が係合し、また、貫通孔4’から可動部材50の一部54が抜出されることにより可動部材50と端子4との係合が解除される。これらの動作を利用して、電気コネクタ1からの端子4の抜出を防止し、或いは、許容することできる。尚、可動部材50と端子4の係合は、貫通孔と、挿入部(貫通孔4’に挿入される可動部材の一部54)と、の関係に限られるものではなく、例えば、端子4を凹状とし、これに対応して可動部材の一部を凸状等としてもよい。互いに係合して、端子4の抜出を阻止するような構成であれば足りる。
【0013】
貫通孔4’に対する可動部材50の挿抜は、手動操作可能なスライド部材70によって制御することができる。従って、可動部材50自体を操作する必要はない。スライド部材70は、少なくとも一部を電気コネクタ1の外部に露出させた状態で、電気コネクタ1のハウジング21にスライド可能に設けられている。スライド方向は、電気コネクタ1に対する各端子4の挿抜方向(図示矢印「γ」方向)と同じである。スライド部材70の上面には、ユーザの操作性を高めるため滑り止め84が設けられている。スライド部材70は、ハウジング21に対するスライド移動を通じて、可動部材50に対するスライド部材70の位置を変化させる。この位置の変化に応じて、可動部材50の貫通孔4’に対する移動が制御される。可動部材50に対するスライド部材70の位置は、スライド部材70の指示子79が指す、ハウジング21の側壁27の側面上部に設けた目盛によって目視で簡単に確認できる。可動部材50に対するスライド部材70の位置として、本実施形態では計3つの位置A乃至Cを設けている。
【0014】
スライド部材70が
図1の電気コネクタ1Aによって示される位置Aにあるとき、可動部材50は端子4の貫通孔4’に挿入された状態にあり、且つ、可動部材50を端子4から離間する側に移動させることは防止されているため、電気コネクタ1からの端子4の抜出は防止される。
一方、スライド部材70が
図1の電気コネクタ1Bによって示される位置Bにあるとき、可動部材50は端子4の貫通孔4’から抜出された状態にあり、従って、この場合、電気コネクタ1に対する端子4の挿抜は自由である。
また、スライド部材70が
図1の電気コネクタ1Cによって示される位置Cにあるとき、位置Aにあるときと同様に、可動部材50は端子4の貫通孔4’に挿入された状態にあるが、この場合は可動部材50を端子4から離間する側へ自由に移動させることができる。従って、電気コネクタ1への端子4の挿入を許容することができる。
【0015】
図3に、可動部材50の個品図を示す。
図3の(a)は、可動部材の上面斜視図、
図3の(b)は、その底面斜視図である。
【0016】
可動部材50は、略直方形上の基体51と、基体51の外壁に左右側方に向かってそれぞれ突出したアーム部55、基体51の上方に突出した押上部52、更に、基体51の下方に突出した止め部54を備える。
【0017】
各アーム部55は、電気コネクタ1に挿入された端子4に接近する側への、及び、電気コネクタ1に挿入された端子4から離間する側への、可動部材50の移動を制御するために使用される。各アーム部55は、その下側においてスライド部材70の突出部(傾斜部80)と接触或いは接触可能とされており、また、その上側においてスライド部材70の他の突出部(内壁突出部77)と接触或いは接触可能とされている。特に、各アーム部55の下側には、スライド部材70の突出部(傾斜部80の傾斜面81)と接触し得る傾斜部55’が設けられている。
【0018】
押上部52は、スライド部材70のスライド方向に沿って延びる一対の縦長押上部52Aと、アーム部55の延出方向に沿って延びる一個の横長押上部52Bとを含む。これらの押上部52は、端子4から離間する側への可動部材50の移動時に、スライド部材70の一部(74)と衝突して、そのような可動部材50の移動を防止する。スライド部材70との衝突を滑らかにするため、押上部52の先端にはテーパ52A’、52B’が切られている。
【0019】
止め部54は、全体として略円柱状である。止め部54の底側は、傾斜部54’として形成されており、該傾斜部54’の先端には水平部54”が形成されている。止め部54は、例えば、電気コネクタ1に挿抜される端子4の貫通孔4’に挿抜されて、電気コネクタ1からの端子4の抜出を防止し、或いは、許容する。
【0020】
図2に加え、
図4、
図5をも参照して、クランプ装置20の構成を説明する。
図4は、クランプ装置20の斜視図、
図5は、クランプ装置20の一部を構成する端子保持部材10の個品図の斜視図である。
【0021】
端子保持部材10とともにクランプ装置20を構成する導電部材8は、好ましくは、矩形の比較的厚い平らな板材であって、銅等の導電性の高い物質から成る。ハウジング21に挿入された、例えば、一対の端子4は、導電部材8と電気的に接続され、導電部材8との電気的接続を通じて、互いに電気的に接続され得る。
【0022】
端子保持部材10は、収容部19を有した左右対称の扁平筒形状とされており、好ましくは、一枚の平らな薄い金属製の板材を打ち抜き、曲げ加工することによって形成される。薄い板材から成るため打ち抜き、曲げ等の加工は容易であり、製造コストも安価である。端子保持部材10を導電部材8に取り付け際は、端子保持部材10の収容部19に導電部材8を挿入した状態とする。尚、本実施形態のクランプ装置20では、一枚の導電部材8の両端にそれぞれ1つずつ、計2個の端子保持部材10を取り付けているが、前述したように、各電気コネクタ1の一方の側だけに端子4を接続する態様とする場合には、当然のことながら、端子保持部材10は1つだけ取り付ければ十分である。
【0023】
端子保持部材10は、収容部19に挿入された導電部材8の底面8Bを支持する底部13と、この底部13の対向側に設けた面接触部12、更に、底部13と面接触部12を繋ぐバネ部11を含む。
【0024】
面接触部12には、可動部材50の一部(止め部54)が挿入される貫通穴14が設けられている。可動部材50は、この貫通穴14を通じて、端子保持部材10内の端子4にアクセスすることができる。貫通穴14の周囲には、貫通穴14に挿入される可動部材50の移動方向に沿って、可動部材50の挿入側に向って立設した垂設部15が設けられている。垂設部15を設けることにより、可動部材50が貫通穴14の内部で貫通穴14の縁に向かって傾斜するような不用意力を受けた場合にも、そのような力の影響を軽減することができる。
バネ部11の少なくとも一部11’は、底部13から面接触部12に向かう方向において、面接触部12よりも遠い側に位置しており、少なくとも先端部分は略アーチ状とされているこのような形状を有することにより、各バネ部11は、面接触部12を底部13の側に向って付勢する大きなバネ性を発揮する。尚、曲げ加工によって現れる板材の合わせ目16は、面接触部12ではなく、底部13に位置付ける。底部13に位置づけることにより、面接触部12と端子4との間の接触面積をより大きくし、面接触部12から底部13の側に向う力を確保することができる。
【0025】
図6を参照して、可動部材50による端子4の固定方法を説明する。
図6は、クランプ装置20の一方の側を、端子4や可動部材50とともに中心断面図で示した図であり、可動部材50が面接触部12の貫通穴14に挿入されている状態を示している。
【0026】
端子4は、クランプ装置20の間隙18に、側方(図示矢印「γ」方向)から挿入される。この間隙18は、収容部19への導電部材8の挿入時に形成されたものであり、面接触部12と導電部材8とによって形成される。端子4を間隙18にスムースに導くことができるよう、面接触部12の縁に、収容部19に向かって傾斜した誘い込み部17を設けてもよい。
【0027】
間隙18に挿入された端子4は、予め収容部19に挿入されている導電部材8とともに、端子保持部材10の弾性作用を利用して弾性保持される。このとき、端子4の一方の面4Aは、導電部材8の一方の面8Aと直接接触し得る。この結果、これらの間の接触抵抗は、端子等を介してそれらを接続した場合に比べて著しく小さくなる。本構成ではこのように、直接接触させた導電部材8と端子4を、それらの外側から端子保持部材10によって弾性接触させるものであるため、従来のように端子保持部材10自体を導電体として使用するものとは異なり、端子保持部材10を導電率の高い物質で製造する必要はない。この結果、導電率は低いがバネ性が強い部材、例えば、ステンレスやステンレスの合金で端子保持部材10を製造することもできる。また、端子保持部材10を構成する板材の板厚や材料を調整することにより、バネ性を細かく調整することができる。
【0028】
端子4が間隙18に挿入されたとき、端子保持部材10の面接触部12は、可動部材50を挿抜させるための貫通穴14を除くすべての部分で、端子4の他方の面4Bと面接触し得る。従って、面接触部12の略全体で端子4を導電部材8に向けて付勢することができ、より広い面積部分で、且つ、より強いバネ性を発揮し得る状態で、端子4を導電部材8に対して押し付けることができる。この結果、端子4の一方の面4Aと導電部材8の一方の面8Aとの間の接触抵抗を小さい状態として、発熱しにくい端子保持部材10を提供することができる。
【0029】
更に、本構成では、端子4の一方の面4Aと導電部材8の一方の面8Aとの間、端子4の他方の面4Bと端子保持部材10の面接触部12との間、及び、導電部材8の他方の面8Bと端子保持部材10の底部13との間の接触面が、全て、平らな面で形成されていることから、面同士をより密接に接触させることもできる。
【0030】
図7、
図8に、スライド部材70の個品図を示す。
図7は、スライド部材70の正面斜視図、
図8の(a)は、スライド部材70の平面図、(b)は、その側面図、(c)は、その正面図である。スライド部材70は、例えば、樹脂で製造されており、上面と両側側面によって覆われた略三面構造を採る。スライド部材70の前側は、ハウジング21の形状に合わせて矩形状とされており、また、スライド部材70の後側は、ケーブル3の形状に対応して半円弧状とされている。スライド部材70の前側端部72には、ロック突部33の所定部分(33’)と衝突させることができる衝突面72’が形成されている。
【0031】
指示子79を設けた上面前側には、スリット73をコ字状に切ることにより、前側に自由端が形成された弾性変位部74が設けられている。この弾性変位部74の前側に、ハウジング21の所定部分(ロック突部33)に嵌ってハウジング21に対してスライド部材70をロックすることができるロック孔75を設けてもよい。上面後側には、スライド部材70の操作性を向上させるための滑り止め84が設けられている。
【0032】
スライド部材70の両側側面、特にそれら外壁78には、スライド部材70をハウジング21に取り付けるための外壁突状部71が外方に突出した状態で設けられている。これらの外壁突状部71は、スライド方向に延長した棒状に設けられており、ハウジング21の対応部分(取付溝27’)にスライド可能に嵌められる。
【0033】
また、スライド部材70の両側側面、特にそれらの内壁76には、可動部材50のアーム部55と接触して、可動部材50の移動、更に言えば、電気コネクタ1に挿入された端子4に接近する側及び該端子4から離間する側への可動部材50の移動を制御するための内壁突出部77と傾斜部80とが内方に突出した状態で設けられている。これら内壁突出部77と傾斜部80は、スライド方向において互いに離間されており、傾斜部80は内壁突出部77よりもスライド方向において前方に配置されている。
【0034】
図9乃至
図11図に、ハウジング21の個品図を示す。
図9は、ハウジング21の斜視図、
図10は、その平面図、
図11は、その側面図である。
ハウジング21は、主に、基体23と、基体23の中央に垂設した垂設部29、更に、側壁27を有する。
【0035】
基体23には、クランプ装置20が設置される。基体23の表面には、クランプ装置20の形状に適合する段部24が設けられている。段部24には、クランプ装置20の導電部材8を位置決めするための3個の上段部24Aと、クランプ装置20の端子保持部材10を位置決めするための2個の下段部24Bが含まれる。尚、基体23の底側には、レール2(
図1)に取り付けるための脚部22が設けられていてもよい。
【0036】
垂設部29は、側壁27を介して間接的に基体23に接続されており、基体23に設けた上段部24Aとの間には、導電部材8を挿入するための隙間26が形成されている。
垂設部29の頂部32は十字状に形成されており、スライド方向に沿って延出した一対の自由端のそれぞれの先端には、スライド部材70の弾性変位部74に設けたロック孔75に嵌まるロック突部33が上方に突き出た状態で設けられている。スライド部材70が所定位置(
図1の電気コネクタ1Aによって示される位置A)にあるとき、ロック突部33はスライド部材70のロック孔75に嵌って、スライド部材70をハウジング21に対する所定位置にロックする。
【0037】
更に、ロック突部33の下側位置には、ロック突部33と同方向に垂設部29から延出された一対の保持片30が設けられている。各保持片30は、可動部材50の一部、即ち、押上部52(
図3等参照)を上下動可能に保持する働きを持つ。各保持片30の保持孔31Aには、縦長押上部52Aが、各保持孔31Bには、横長押上部52Bが、それぞれ嵌る。尚、縦長押上部52Aを構成する対は互いに離間されているため、可動部材50が上方に押し上げられた場合であっても、ロック突部33を支持するリブ32に衝突することはない。
【0038】
側壁27は、図示の例では、片側だけに設けられているが、これは、
図1に示した連結型の使用態様を示しているからである。複数の電気コネクタ1を連結させる場合には、電気コネクタ1の基体23の側面に設けた穴37に、対応位置において側壁の外方に突出した連結柱38を挿入して互いに連結させる。連結終了時には、電気コネクタ1の代わりに、基体23を有しない側壁(
図1の27a)を用いて閉じる。各側壁27の内側(内壁)27には、スライド部材70の外壁突状部71が挿入される取付溝27’が設けられている。コネクタの組立時には、スライド部材70の外壁突状部71は、この取付溝27’に規定される所定の範囲内でのみスライド可能となる。各側壁27の側面上部には、スライド部材70の位置を確認するために使用することができる複数の目盛35が設けられている。これらの目盛は、ここでは計3つの位置A乃至Cを規定している。
【0039】
図12乃至
図15を参照して、電気コネクタ1の組立方法を説明する。
電気コネクタ1を組み立てるにあたり、先ず、
図12の斜視図に示すように、クランプ装置20をハウジング21に取り付ける。クランプ装置20は、ハウジング21の垂設部29と基体23の隙間26から横方向に挿入し、基体23の段部24を利用して、ハウジング21の所定位置に設置する。
【0040】
次いで、ハウジング21に可動部材50を取り付ける。例えば、保持片30を上方に持ち上げて変位させた状態で、保持片30と基体23の間に形成された隙間に可動部材50を滑り込ませるようにして取り付ける。
図13に、可動部材50を取り付けた後の状態が示されている。
図13の(a)は、
図12と同様に斜視図を示したもの、
図13の(b)は、その側面図である。
【0041】
更に、
図14、
図15に示すように、ハウジング21にスライド部材70を取り付ける。スライド部材70を設置する際、電気コネクタ1の一方の側の側面は未だ閉じられていないため、容易にスライド部材70を取り付けることができる。スライド部材70は、その外壁突状部71を側壁27の取付孔27’に挿入するようにして設置される。
図15の状態とした後、開放された側を側壁(
図1に「27a」で示した)によって閉じることにより完成となる。
なお、ここではハウジング21に対してクランプ装置20を取り付けた後に、可動部材50を取り付ける方法を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハウジング21に対して可動部材50を取り付けた後に、クランプ装置20を取り付けることもできる。
【0042】
最後に、電気コネクタ1による端子4の挿入及び固定方法と、抜出方法を説明する。
先ず、
図16乃至
図18を参照して、端子4の挿入及び固定方法を説明する。ここで
図16乃至
図18における(a)は、電気コネクタ1の側面側の断面図を、(b)は、その平面図を、それぞれ示している。
【0043】
端子4の挿入時には、
図16に示すように「γ」方向に沿ってスライド部材70を位置Cに移動させる。スライド部材70が位置Cにあるとき、スライド部材70の内壁突出部77は、可動部材50のアーム部55の離間側、更に言えば、可動部材50が端子4から離れる側(β)には位置していない。また、スライド部材70の傾斜部80は、可動部材50のアーム部55の接近側(α)において可動部材50と当接し得る状態となっているだけで、可動部材50を実質的に移動させていない。更に言えば、スライド部材70が位置Cにあるとき、可動部材50は、可動部材50の接近側(α)においても、また、離間側(β)においても、スライド部材70の傾斜部80から実質的に何らの力も受けていない。故に、スライド部材70が位置Cにあるとき、可動部材50は、端子4による可動部材50の押し上げ方向、即ち、離間側(β)へ自由に移動することができる。更に、スライド部材70が位置Cにあるときには、スライド部材70の前端部72は、その前面72’において、ロック突部33の衝突面33’と衝突するため、この衝突を通じて位置Cを安定的に維持することができる。尚、可動部材50の移動方向(α、β)は、スライド部材70のスライド方向「γ」と直交する方向であることが好ましい。
【0044】
この
図16に示す状態において、端子4がハウジング21に挿入されたとき、更に言えば、導電部材8を挿入した後の収容部19の間隙18に端子4が側方から挿入されたときには、端子4の先端付近が可動部材50の止め部54の傾斜部54’と衝突し、この結果、可動部材50は、端子4の厚さ方向に沿って離間側(β)へと押し上げられる。離間側(β)へと押し上げられた状態で、その後、可動部材50が端子4の貫通孔4’に到達すると、可動部材50の止め部54は、接近側(α)へと降下して、端子4の貫通孔4’に嵌る。この結果、端子4は止め部54によって固定される。
図17は、このときの状態を示している。尚、止め部54の先端は水平部54”とされているため、止め部54は、そこに安定した状態で位置決めされる。
【0045】
可動部材50の止め部54が端子4の貫通孔4’に嵌って
図17に示す状態となったときには、スライド部材70を
図18に示した位置Aに移動させることができる。スライド部材70が位置Aにあるとき、スライド部材70の内壁突出部77は、端子4の離間側(β)においてアーム部55と接触し、或いは、接触し得る状態にあり、このため、電気コネクタ1に挿入された端子4から離間する側(β)への可動部材50の移動は防止される。この結果、端子4と可動部材50の係合状態を確実に保持することができ、端子4の電気コネクタ1からの不用意な抜出を防止することができる。この位置Aは、スライド部材70の弾性変位部74に設けたロック孔75に、ハウジングのロック突部33(
図2等によく示されている)が嵌り込むよう構成することによって、固定することもできる。位置Aを固定することにより、スライド部材70が不用意に位置Bへスライドされることがなくなり、従って、電気コネクタ1からの端子4の不用意な抜出が防止される。この場合、端子4は、少なくともロック孔75とロック突部33のロック状態を解除しない限り、ハウジング21から抜出されることはない。
尚、仮に、可動部材50の止め部54が端子4の貫通孔4’に完全には嵌っていない、いわゆる半嵌合状態である場合には、止め部54は、端子4の厚さ部分によって離間側(β)へ押し上げられたままとなるため、スライド部材70を位置Aにスライドさせようとしても、可動部材50のアーム部55とスライド部材70の内壁突出部77とがスライド方向において衝突することになり、スライド部材70を位置Aにまで移動させることはできない。よって、ユーザは、この仕組みを利用して、スライド部材70が位置Aにあることを確認することにより、可動部材50の止め部54が端子4の貫通孔4’に完全に嵌っているか否かを容易に確認することができる。
【0047】
端子4の抜出時には、スライド部材70を
図18に示した位置Aから
図17に示した位置Cへ移動させ、更に、
図19に示す位置Bへ移動させる。但し、端子4の抜出を可能とするといった点からすれば、位置Cから位置Bへの移動は必ずしも必要とされず、位置Aから位置Cへ移動させるだけでも抜出は可能となる。しかしながら、以下の説明から明らかなように、位置Cから位置Bへ移動させることによって、より簡単に端子4を抜出することが可能となり、しかも、位置Bから位置Cへの戻りは自動で行われるため作業が簡易化されるといった利点がある。尚、スライド部材70が位置Cから位置Bを超えて更に過剰に移動されることはない。
図7等を参照して説明したように、スライド部材70の外壁突状部71は、ハウジング21に設けた所定長さの取付溝27’に嵌め込まれているからである。
【0048】
図19から明らかなように、スライド部材70が位置Bにあるとき、スライド部材70の内壁突出部77は、可動部材50のアーム部55の離間側(β)に位置付けられていない。一方、スライド部材70の傾斜部80は、可動部材50のアーム部55の接近側(α)においてアーム部55の傾斜部55’と接触し、該アーム部55を離間側(β)へと押し上げた状態となっている。従って、スライド部材70が位置Bにあるとき、可動部材50(止め部54)は、端子4の貫通孔4’から抜き出された状態となるため、可動部材50との衝突を伴うことなく、容易に、端子4をハウジング21から抜き出すことができる。尚、スライド部材70の移動、及び、可動部材50の移動を容易にするため、スライド部材70のスライド方向に沿って、傾斜部80に傾斜面81を設けるのが好ましい。これにより、スライド部材70の傾斜部80をアーム部55の傾斜部55’の下側、即ち、接近側(α)にもぐり込ませることが容易となり、スライド部材70の移動、或いは、可動部材50の離間側(β)への移動をスムースに行わせることができる。
【0049】
スライド部材70が位置Bにあるとき、可動部材50は、傾斜部80との接触を通じて離間側(β)へ付勢された状態にあり、また、弾性変位部74は、付勢された可動部材50の押上部52によって離間側(β)へと変位させられた状態にある点に注意して頂きたい。明らかなように、この状態でスライド部材70から手を放せば、可動部材50は、弾性変位部74から受ける反発力によって接近側(α)へと付勢され、この結果、スライド部材70は、該スライド部材70の傾斜面81と可動部材50の傾斜部55’との接触を通じて不安定な位置Bから
図20に示した位置Cへの安定状態へ自然に戻ることになる。よって、本構成によれば、スライド部材70を位置Bから位置Cへ戻す作業は不要となる。
【0050】
本発明は、上に説明した実施形態に限定されるわけではなく、様々な変形が可能である。例えば、上の実施形態では、スライド部材70の内壁突出部77や傾斜部80と接触等する部分として、可動部材50のアーム部55を用いることとしたが、必ずしも、これらの部分を用いる必要はない。例えば、可動部材50のアーム部55以外の部分と、スライド部材70の内壁突出部77や傾斜部80を接触等させてもよいし、スライド部材70の内壁突出部77や傾斜部80以外の部分と、アーム部55を接触等させてもよい。また、カバーの位置は必ずしも3種類とする必要はなく、例えば、位置Aと位置Bの中間の位置Cを省略してもよいし、逆に追加の位置を設けてもよい。また、弾性変位部74は省略することもできる。