特許第6194579号(P6194579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194579
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】空気清浄用濾材
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20170904BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20170904BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20170904BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20170904BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20170904BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   A61L9/01 B
   B01D39/16 A
   B01D46/52 Z
   A61L9/16 D
   B01J20/20 B
   B01J20/28 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-264003(P2012-264003)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-108260(P2014-108260A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 禎仁
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−096129(JP,A)
【文献】 特開2008−246318(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/026794(WO,A1)
【文献】 特開2007−300957(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0182102(US,A1)
【文献】 特開2000−117024(JP,A)
【文献】 特開2013−052369(JP,A)
【文献】 特開2013−215251(JP,A)
【文献】 特開2007−301434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
B01J 20/00−20/34
B01D 39/00−41/04
B01D 46/00−46/54
B01D 53/02−53/12
B01D 53/34−53/73
B01D 53/74−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
F24F 1/00
F24F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側と下流側のカバー層間に活性炭と熱可塑性樹脂を含み難燃剤を含まない空気清浄用濾材であって、
上流側のカバー層と下流側のカバー層とを構成する繊維の素材が異なり、上流側と下流側のカバー層の少なくとも一方がポリエステル系樹脂から成り、
熱可塑性樹脂が2種類以上の樹脂を含み、そのうちの少なくとも1種はポリエステル系樹脂であり、別の1種はポリエステル系樹脂以外の樹脂であり、かつ、当該ポリエステル系樹脂及び当該ポリエステル系樹脂以外の樹脂をそれぞれ前記活性炭に対して5〜15重量%含んでいることを特徴とする空気清浄用濾材。
【請求項2】
上流側のカバー層を構成する繊維および下流側のカバー層を構成する繊維の一方が芯鞘型複合繊維である請求項1記載の空気清浄用濾材。
【請求項3】
請求項1または2記載の空気清浄用濾材をプリーツ状に成型したフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭機能を有した空気清浄用濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用、家庭用フィルタ等の分野において、濾材の高機能化・多様化の要請が急激に高まっており、脱臭機能を有する空気清浄用濾材の検討が多くなされている。そして、これら空気清浄用濾材として、粒子状または繊維状の吸着剤と接着剤を用いてシート化する方法が多く採用されており、例えば、基材層間に粒状吸着剤と粒状接着剤の混合物を散布し、これを加熱接着してなる吸着濾材が開示されている(例えば、特許文献1)。
かかる吸着濾材は低コストで通気性に優れる吸着性シートが得られるが、吸着剤層と基材シートとの接着が弱いため剥離が生じやすく、プリーツ加工等で外力がかかる場合、あるいはフィルタを高風量下に曝した場合では吸着剤の脱落が大きい等、実用上の問題を有していた。
【0003】
かかる問題を解決するため、例えば接着シートを用いて吸着剤層と基材を接着した吸着性シートが開示されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、かかる吸着性シートは、接着シートが通気性を阻害して通気抵抗が高くなり、さらには接着面で粉塵が目詰まりしやすい、あるいは吸着性能を阻害するという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−5058号公報
【特許文献2】特開2002−273123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたものであり、低通気抵抗で剥離強度、燃焼性に優れプリーツ加工時の剥離や破れが無いプリーツフィルタ用濾材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)上流側と下流側のカバー層間に活性炭と熱可塑性樹脂を含む空気清浄用濾材であって、上流側と下流側のカバー層を構成する繊維の素材が異なり、熱可塑性樹脂が2種類以上の素材からなり、カバー層を構成する繊維の素材および熱可塑性樹脂の少なくとも1種がポリエステル系樹脂である空気清浄用濾材。
(2)カバー層を構成する繊維の1種が芯鞘型複合繊維である(1)記載の空気清浄用濾材。
(3)(1)または(2)記載の濾材をプリーツ状に成型したフィルタユニット。
【発明の効果】
【0007】
本発明による空気清浄用濾材は、低通気抵抗で剥離強度、燃焼性に優れプリーツ加工時の剥離や破れが無いプリーツフィルタ用濾材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の空気清浄用濾材の模式図である。
図2】本発明中の通気抵抗測定冶具である。
図3】本発明中のフィルタユニットの斜視図である。
図4】本発明中の剥離強度測定の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の空気清浄用濾材は、カバー層間に、活性炭及び熱可塑性樹脂を含む空気清浄用濾材である。本発明に使用されるカバー層は、織布状、不織布状いずれでも構わない。
【0010】
上流側のカバー層を構成する繊維の平均繊維径は20〜100μmが好ましく、20〜60μmがより好ましく、20〜45μmがさらに好ましい。上流側カバー層は、被処理空気の流入面であるため、構成繊維の平均繊維径が20μmより小さいと、繊維間の空隙も狭くなり、空気中の塵埃がカバー層上に堆積し、通気抵抗が急上昇する。構成繊維の平均繊維径が100μmより大きいと、特にプリーツ時に活性炭粒子が飛び出すあるいは脱落する。
【0011】
一方で、下流側のカバー層を構成する繊維の平均繊維径は特に限定されないが、活性炭の脱落を考慮し10〜30μmが好ましい。構成繊維の平均繊維径が10μmより小さいと通気抵抗が高く、30μmより大きいと活性炭の脱落が生じる。
【0012】
本発明のカバー層を構成する繊維部分の充填密度は0.05g/cc以上であることが好ましい。0.05g/ccより充填密度が低いとプリーツ加工時に熱セットが効かず、プリーツ形状を保つことが難しくなる。より好ましくは0.15g/cc以上である。
【0013】
本発明のカバー層は、厚みが0.1〜3.0mmであることが好ましい。厚みが0.1mmより小さいと目付斑も考慮すると活性炭の抜け、脱落の懸念が生じる。厚みが3.0mmより大きいと濾材全体の厚みが大き過ぎ、プリーツ状ユニットとした場合に構造抵抗が大きくなり、結果としてユニット全体での通気抵抗が高くなり過ぎ、実用上問題がある。
【0014】
本発明のカバー層は、目付量が15〜100g/mであることが好ましく、20〜80g/mがより好ましい。目付が15g/m未満であれば活性炭及び熱可塑性樹脂の抜けが多くなる。目付が100g/mを越えると、シート厚み大きくなり、プリーツ状ユニットとした場合の構造抵抗が大きくなる。
【0015】
本発明のカバー層を構成する繊維の素材は、上流側と下流側で異なっており、そのうちの1種はポリエステル系樹脂から構成されている。通常、上流側と下流側のカバー層を構成する繊維の素材は製造面、管理面から同一物あるいは同一素材が用いられることが多く、濾材としての機能性、加工性の柔軟性に欠けていた。本発明では上流側と下流側のカバー層を構成する繊維の素材に異なるものを用い、さらにその1種にポリエステル系樹脂のみからなる繊維を用いること、より効果を発揮することができる。さらに、ポリエステル繊維はその親水性、耐熱性から各種機能性薬剤を水溶液中でコーティング、乾燥して添着してから使用することができるので好ましい。
【0016】
ポリエステル系繊維を用いる層以外のカバー層の構成繊維の素材としては、ポリオレフィン系、レーヨン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系等の素材を用いることができる。そのなかでも、低融点成分を鞘成分に、高融点成分を芯成分に用いた芯鞘型複合繊維を用いれば後述する加熱シート化時に鞘成分が溶融して活性炭との結合力が高まり好ましい。
【0017】
また、タバコ煙粒子、カーボン粒子、海塩粒子をはじめとするサブミクロン粒子に対する除去効果も増大することができる帯電した不織布、いわゆるエレクトレットシートをカバー層に使用することもできる。エレクトレットシートをカバー層とすることにより、ダスト等が活性炭と熱可塑性樹脂から構成される吸着層に侵入して吸着層内の細孔が閉塞することを防止し、フィルタ寿命を延長することができるからである。
【0018】
本発明のカバー層の繊維配向は、特に限定はなく、例えば不織布状であればランダム状、クロス状、パラレル状いずれでも構わない。
【0019】
本発明においてカバー層と活性炭を含む吸着層との接着には、2種以上の熱可塑性樹脂が用いられ、そのうちの1種はポリエステル系樹脂から構成される。カバー層を構成する繊維の素材の1種にポリエステル系樹脂からなる繊維を用いることから、活性炭とポリエステル系樹脂からなる繊維を用いたカバー層との接着性を十分に維持するには同種の素材であることが好ましいからである。さらには、酸素指数(LOI値)が高いポリエステル系樹脂を用いることにより、濾材としての難燃性向上に大きな効果がある。
【0020】
ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂の素材としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、エチレンーアクリル共重合体、ポリアクリレート、ポリアーレン、ポリアクリル、ポリジエン、エチレンー酢酸ビニル、PVC、PS等の樹脂があげられる。
【0021】
熱可塑性樹脂の大きさは、粉末状の樹脂は平均で1〜40μm(以下、「粉末状熱可塑性樹脂」と呼ぶ場合がある)の粒径が好ましい。より好ましくは5〜30μmであり、さらに好ましくは1〜40μmの範囲に95重量%以上が含まれることである。かかる範囲の粒子径であれば、熱可塑性樹脂が、活性炭の表面細孔を塞ぐことを低減できる一方、活性炭との混合時にファンデルワールス力や静電気力による活性炭への予備接着が有効になされ、均一に分散することができ、活性炭層内、及びカバー層との接着性を良好にできるからである。
【0022】
粉末状熱可塑性樹脂の形状は特に規定はないが、球状、破砕状、繊維状等があげられる。粉末状熱可塑性樹脂の融点は、移動車両等の室内の環境温度等考慮すると80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【0023】
粉末状熱可塑性樹脂の溶融時の流動性は、JIS K−7210記載のMI値で、1〜80g/10minが好ましく、3〜30g/10minがより好ましい。かかる範囲であれば、吸着剤の表面の閉塞を防止しつつ、活性炭層とカバー層を強固に接着することができるからである。
【0024】
粉末状、粒状とも熱可塑性樹脂の使用量は、活性炭に対して1〜40重量%使用するのが好ましく、3〜30重量%はより好ましい。かかる範囲内であれば、カバー層との接着力、通気抵抗、脱臭性能に優れる脱臭濾材が得られるからである。
【0025】
粉末状、粒状とも熱可塑性粉末樹脂の粒径調整法は、機械粉砕、冷凍粉砕、化学調整法等があげられる。また最終的に篩にかけ一定粒径を得ることができるが、一定の粒径を確保できる方法であれば特に限定されない。
【0026】
本発明の空気清浄用濾材の構成単位としては、上流側カバー層/活性炭及び熱可塑性樹脂の混合粉粒体/下流側カバー層である。
【0027】
本発明の空気清浄用濾材に用いられる活性炭の平均粒子径は、通気性、ダスト保持性、吸着材の脱落、シート加工性等を考慮して、JIS K 1474活性炭試験方法に基づいた質量平均径にて400〜800μmであることが好ましい。より好ましくは、450〜750μmである。活性炭の平均粒子径が400μm未満の場合には、一定の脱臭性能を得るのに通気抵抗が大きくなりすぎ、また、同時にシート充填密度が高くなりやすく、ダスト供給時に早期の通気抵抗上昇を引き起こす原因になる。活性炭の平均粒子径が800μmを越える場合には、脱臭性能が極端に低くなり、さらには厚みが大きくなるため、プリーツユニットとしての構造抵抗が高くなる。なお、上記の粒状活性炭は、通常の分級機を使用して所定の粒度調整をすることにより、得ることが可能である。
【0028】
本発明の空気清浄用濾材に用いられる活性炭は、JIS K 1474活性炭試験方法にて硬さ90%以上を有するヤシ殻活性炭を用いることが好ましい。より好ましくは硬さ95%以上のヤシ殻活性炭である。活性炭の硬さが90%未満であるとシート加工時やプリーツ加工時に活性炭が破砕され、濾材表面やプリーツ頂点から活性炭の脱落が発生する。
【0029】
活性炭原料としては、ヤシ殻の他に木質系、石炭系、ピッチ系などが知られているが、ヤシ殻活性炭の細孔は他の原料と比較して小さい細孔の比率が多く、不純物である灰分も少ない。つまり、ヤシ殻活性炭は細孔が小さいために吸着した臭気分子に対して効果的に細孔壁との分子間力が働き、吸着した臭気分子を脱離させにくい特徴がある。また灰分が少ないことから重量当たりの臭気吸着性能も高い。
【0030】
本発明の空気清浄用濾材に用いられる活性炭のJIS K 1474に準拠して測定したときのトルエン吸着量は、20重量%以上が好ましい。悪臭ガス等の無極性のガス状及び液状物質に対して高い吸着性能を必要とするためである。
【0031】
本発明の空気清浄用濾材に用いられる活性炭の吸着層1層あたりの重量は、20〜500g/mの範囲であることが好ましい。かかる範囲であれば充分な吸着性能が得られるだけでなく、通気抵抗においても低く抑えることができるためである。
【0032】
本発明の空気清浄用濾材に用いられる活性炭は、極性物質やアルデヒド類の吸着性能を向上することを目的として、薬品処理を施して用いてもよい。
ガス薬品処理に用いられる薬品としては、アルデヒド系ガスやNOx等の窒素化合物、SOx等の硫黄化合物、酢酸等の酸性の極性物質に対しては、例えばエタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、P−アニシジン、スルファニル酸等のアミン系薬剤や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、5.5−ジメチルヒダントイン、ベンゾグアナミン、2.2−イミノジエタノール、2.2.2−ニトロトリエタノール、エタノールアミン塩酸塩、2−アミノエタノール、2.2−イミノジエタノール塩酸塩、P−アミノ安息香酸、スルファニル酸ナトリウム、L−アルギニン、メチルアミン塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩、ヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸ヒドロキシルアミン、過マンガン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が好適に用いられ、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン等の塩基性の極性物質に対しては、例えば、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸等が好適に用いられる。なお、薬品処理は、例えば、活性炭に薬品を担持させたり、添着することにより行う。また、活性炭に直接薬品を処理する以外に、シート面表面付近に通常のコーティング法等で添着加工する方法やシート全体に含浸添着することも可能である。この際、アルギン酸ソーダやポリエチレンオキサイド等の増粘剤を混入した薬品水溶液をつくり、これを担持、添着を実施する方法もできる。この方法では水への溶解度が低い薬品を担持、添着し、更に薬品の脱落を抑制するのにも有効である。
【0033】
本発明の空気清浄用濾材は、抗菌剤、抗かび剤、抗ウイルス剤、難燃剤等の付随的機能を有する成分等を含めて構成してもよい。これらの成分は繊維類や不織布、織物中に練り込んでも、後加工で添着、及び担持して付与してもよい。例えば、難燃剤を含めて構成することにより、FMVSS.302で規定されている遅燃性の基準やUL難燃規格に合致した空気清浄用濾材を製造することが可能である。
【0034】
上記の付随的機能を有する成分は、活性炭等へ添着または担持してもよい。但し、この際には、活性炭本来の吸着機能を損なわないよう留意する必要がある。また、カバー層や通気性シート等の繊維に吸着性能を有する機能を付与、例えば、酸やアルカリの薬剤を添着したりイオン交換繊維等を用いることにより、脱臭機能を強化することも可能である。
【0035】
空気清浄用濾材の基本的な製法について説明する。まず、活性炭及び粉末状熱可塑性樹脂を所定の重量秤量し、シェーカー(撹拌器)に入れ、約10分間回転速度30rpmで撹拌する。この際の水分率は混合物重量の15%以内が好ましい。この時点で粉末状熱可塑性樹脂が活性炭表面に仮接着された混合物となっている。次に、この混合粉粒体をカバー層の上に散布後、通気性シート(カバー層)を積層し、熱プレス処理を実施する。熱プレスの際のシート表面温度は熱可塑性粉末樹脂融点の3〜30℃、好ましくは5〜20℃高い程度が好ましい。
【0036】
別法として、活性炭と粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体をカバー層の上に散布後、さらに粒状熱可塑性樹脂を一定量散布し、さらに通気性シート(カバー層)を積層後、熱プレス処理を実施する方法、あるいはカバー層に予め粒状熱可塑性樹脂を固着させておき、このシートを上述したカバー層として、この上に活性炭と粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体を散布、あるいは通気性シート(カバー層)に使用し、熱プレス処理を実施して空気清浄用濾材を得ることもできる。
【0037】
また、熱処理する前に赤外線等で予め予備加熱し、仮接着しておけば、プレス時におこりがちな混合粉粒体の不規則な流動も生じず、より分散性が良好な空気清浄用濾材が製造できる。赤外線による熱処理は、気流などを起こさず、混合粉粒体を静置した状態で加熱することができ、混合粉粒体の飛散などを防止することができる。
【0038】
最終的に熱プレスしシート製造するにはよく使用されるロール間熱プレス法、あるいは上下ともフラットな熱ベルトコンベヤー間にはさみこむフラットベッドラミネート法等があげられる。より均一な厚み、接着状態をつくりだすには後者の方がより好ましい。また、本特許で記載するカバー層と上記製法の特徴の組み合わせにより、活性炭同志の過度の結着を抑制することができると同時に、基材不織布との実用上充分な接着強力を得ることができる。
【0039】
本発明で得られた空気清浄用濾材は、プリーツ形状に加工するのに好適である。プリーツ形状への加工方法は特に限定されずレシプロ方式、ロータリー方式、ストライピング方式等、広く利用できる。プリーツ形状に加工することによって単位面積あたりの濾材折り込み量を増やせるため、脱臭性能やダスト保持性能を飛躍的に向上させることができる。
【0040】
本発明の空気清浄用濾材を使用したプリーツ状フィルタユニットの厚みは、10〜400mmが好ましい。カーエアコンに内蔵装着をはじめとする車載用途や家庭用空気清浄機であれば、通常の内部スペースの関係から、10〜60mm程度、ビル空調用途へよく設置される大型のフィルタユニットであれば40〜400mm程度が収納スペースから考えると好ましい。
【0041】
本発明のフィルタユニットのひだ山頂点間隔は、2〜30mmが好ましい。2mm未満ではひだ山間が密着しすぎでデッドスペースが多く、効率的にシートを活用できなくなるため好ましくない。一方、30mmを越えると濾材折り込み面積が小さくなるためフィルタ厚みに応じた除去効果を得ることができなくなるため好ましくない。
【実施例】
【0042】
以下本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
なお、実施例中の数値は以下のような方法で測定した値である。
【0043】
(平均繊維径)
不織布の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)を撮影し、その写真からn=30にて繊維径を測定した平均値を算出した。
【0044】
(目付)
200mm×200mmの試料を使用し、80℃の恒温槽中に30分放置後、デシケータ(乾燥剤:シリカゲル)中で30分放置する。その後取り出し、感量10mgの化学天秤で測定して、m当りの重量に換算した。
【0045】
(通気抵抗)
図2に示す測定冶具により、試料大きさφ75mm、有効濾過面積φ50.5mm、濾材通過風速50cm/secの条件下で測定した。
【0046】
(厚み)
荷重686Paの圧力を加えた時の値を測定した。
【0047】
(剥離強度)
図4に示す様に測定する。試験片の大きさは幅50mm、長さ200mmとして、引張速度100mm/minとする。図4のL寸法は、スタート時200mmで終了時280mm(剥離量40mm)とし、その間の平均値を剥離強度とする。なお強度の計測は株式会社島津製作所製オートグラフを用いた。
【0048】
(燃焼性)
FMVSS302に従ってMD方向、TD方向について試験を行い、合否を判定した。
【0049】
(トルエン脱臭性能)
25℃、相対湿度50%雰囲気中で、80ppmのトルエンガスを風速20cm/secにて試験濾材に通風した。通風1分後に濾材の上下流の濃度をそれぞれガステック製検知管で測定し、上流側のガス濃度から下流側のガス濃度を減じた値を上流側のガス濃度で除した値の百分率で示した。測定は6cm×6cmに切り取った濾材単板サンプルで行った。
【0050】
(プリーツ性)
レシプロ式のプリーツ加工機を用いて濾材幅200mm、プリーツ山高20mmにて300山連続してプリーツ加工を実施した。加工後の濾材の層間剥離および濾材破れが無いものをプリーツ加工性良好とした。
【0051】
[実施例1]
平均繊維径27μm、目付30g/m、厚み0.2mmのポリエチレンテレフタレート繊維からなるスパンボンド不織布を上流カバー層として用いた。
活性炭として、平均粒径500μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法6.1.2の1/10トルエン蒸気平衡吸着量が30%であるヤシガラ系粒状活性炭と、熱可塑性粉末樹脂としてポリエチレン樹脂(平均粒径20μm、MI 24g/10min、融点106℃)とポリエステル系樹脂(平均粒径50μm、MI 13g/10min、融点115℃)を、10:0.5:0.5の重量比にて秤量し、均一になるまで撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流カバー層に総量100g/mになるように均一に散布した。
その上に鞘がポリエチレン樹脂、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂からなる芯鞘型複合繊維スパンボンド不織布(平均20μm、目付20g/m、厚み0.2mm)を下流カバー層として重ね合わせ、テフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.5mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。
【0052】
[実施例2]
ヤシ殻活性炭とポリエチレン樹脂とポリエステル系樹脂の混合比率を10:1:1に変更した以外は実施例1と同様に実施し、空気清浄用濾材を得た。
【0053】
[実施例3]
ヤシ殻活性炭とポリエチレン樹脂とポリエステル系樹脂の混合比率を10:1.5:1.5に変更した以外は実施例1と同様に実施し、空気清浄用濾材を得た。
【0054】
[実施例4]
実施例3において、ポリエチレン樹脂をエチレン−アクリル酸共重合体(平均粒径10μm、MI 9g/10min、融点105℃)に変更した以外は実施例3と同様に実施し、空気清浄用濾材を得た。
【0055】
[実施例5]
実施例3において、ポリエチレン樹脂をエチレン−酢酸ビニル共重合体(平均粒径200μm、MI 12g/10min、融点97℃)に変更した以外は実施例3と同様に実施し、空気清浄用濾材を得た。
【0056】
[実施例6]
平均繊維径27μm、目付30g/m、厚み0.2mmのポリエチレンテレフタレート繊維からなるスパンボンド不織布をビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛が0.1g/m、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)が10g/mとなるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。活性炭として、平均粒径500μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法6.1.2の1/10トルエン蒸気平衡吸着量が30%であるヤシガラ系粒状活性炭と、熱可塑性粉末樹脂としてポリエチレン樹脂(平均粒径20μm、MI 24g/10min、融点106℃)とポリエステル系樹脂(平均粒径50μm、MI 13g/10min、融点115℃)を、10:1.5:1.5の重量比にて秤量し、均一になるまで撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流カバー層に総量100g/mになるように均一に散布した。
その上に鞘がポリエチレン樹脂、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂からなる芯鞘型複合繊維スパンボンド不織布(平均20μm、目付20g/m、厚み0.2mm)を下流カバー層として重ね合わせ、テフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.5mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。
【0057】
[比較例1]
鞘がポリエチレン樹脂、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂からなる芯鞘型複合繊維スパンボンド不織布(平均20μm、目付20g/m、厚み0.2mm)を上流カバー層として用いた。
活性炭として、平均粒径500μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法6.1.2の1/10トルエン蒸気平衡吸着量が30%であるヤシガラ系粒状活性炭と、熱可塑性粉末樹脂としてポリエチレン樹脂(平均粒径20μm、MI 24g/10min、融点106℃)とポリエステル系樹脂(平均粒径50μm、MI 13g/10min、融点115℃)を、10:1.5:1.5の重量比にて秤量し、均一になるまで撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流カバー層に総量100g/mになるように均一に散布した。
その上に上流カバー層と同じ不織布を下流カバー層として重ね合わせ、テフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.5mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。
【0058】
[比較例2]
上流カバー層および下流カバー層ともに平均繊維径27μm、目付30g/m、厚み0.2mmのポリエチレンテレフタレート繊維からなるスパンボンド不織布を用いた以外は、比較例1と同様にして作成し空気清浄用濾材を得た。
【0059】
[比較例3]
平均繊維径27μm、目付30g/m、厚み0.2mmのポリエチレンテレフタレート繊維からなるスパンボンド不織布を上流カバー層として用いた。
活性炭として、平均粒径500μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法6.1.2の1/10トルエン蒸気平衡吸着量が30%であるヤシガラ系粒状活性炭と、熱可塑性粉末樹脂としてポリエステル系樹脂(平均粒径50μm、MI 13g/10min、融点115℃)を、10:3の重量比にて秤量し、均一になるまで撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流カバー層に総量100g/mになるように均一に散布した。
その上に鞘がポリエチレン樹脂、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂からなる芯鞘型複合繊維スパンボンド不織布(平均20μm、目付20g/m、厚み0.2mm)を下流カバー層として重ね合わせ、テフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.5mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。
【0060】
[比較例4]
熱可塑性粉末樹脂としてポリエチレン樹脂(平均粒径20μm、MI 24g/10min、融点106℃)を使用した以外は比較例3と同様の方法にて空気清浄用濾材を得た。
【0061】
[比較例5]
鞘がポリエチレン樹脂、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂からなる芯鞘型複合繊維スパンボンド不織布(平均20μm、目付20g/m、厚み0.2mm)を上流カバー層として用いた。
活性炭として、平均粒径500μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法6.1.2の1/10トルエン蒸気平衡吸着量が30%であるヤシガラ系粒状活性炭と、熱可塑性粉末樹脂としてポリエチレン樹脂(平均粒径20μm、MI 24g/10min、融点106℃)を、10:3の重量比にて秤量し、均一になるまで撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流カバー層に総量100g/mになるように均一に散布した。
その上に上流カバー層と同じ不織布を下流カバー層として重ね合わせ、テフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.5mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。
【0062】
[比較例6]
平均繊維径27μm、目付30g/m、厚み0.2mmのポリエチレンテレフタレート繊維からなるスパンボンド不織布を上流カバー層として用いた。
活性炭として、平均粒径500μm、JIS K 1474(2007)活性炭試験法6.1.2の1/10トルエン蒸気平衡吸着量が30%であるヤシガラ系粒状活性炭と、熱可塑性粉末樹脂としてポリエステル系樹脂(平均粒径50μm、MI 13g/10min、融点115℃)を、10:5の重量比にて秤量し、均一になるまで撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流カバー層に総量100g/mになるように均一に散布した。
その上に鞘がポリエチレン樹脂、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂からなる芯鞘型複合繊維スパンボンド不織布(平均20μm、目付20g/m、厚み0.2mm)を下流カバー層として重ね合わせ、テフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.5mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。
【0063】
以上、実施例および比較例にて得られた空気清浄用濾材について通気抵抗、剥離強度、燃焼性、トルエン脱臭性能、プリーツ加工性の評価を実施した。実施した結果を表1および表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
実施例1〜6は通気抵抗が低く、さらにポリエチレンテレフタレート不織布をカバー材に含み、またポリエステル系樹脂バインダーが併用されているので燃焼性に優れ、剥離強度が高いため、プリーツ加工時に濾材が剥離したり破れることもなく加工性は良好である。
一方、比較例1、2ではカバー層の材質が1種に対して、熱可塑性樹脂の材質が2種であるため、接着性に劣り剥離強度が低くプリーツ加工性に劣る。比較例3、4ではカバー層の材質が2種であるが、熱可塑性樹脂の材質が1種であり剥離強度が低く、加工性に劣っている。比較例5では剥離強度は高いが燃焼性に劣っている。さらに比較例6では熱可塑性樹脂の増量により剥離強度は高いが通気抵抗も高くなっており濾材として使用できない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上述べた如く、本発明の空気清浄用濾材は、低通気抵抗で剥離強度、燃焼性に優れプリーツ加工時の剥離や破れが無い濾材を提供するものであり産業界に貢献することが大である。
【符号の説明】
【0068】
1 空気清浄用濾材
2 上流側カバー層
3 活性炭/熱可塑性樹脂層
4 下流側カバー層
5 プリーツユニット
6 枠体
7 活性炭部
8 カバー層
9 チャック
図1
図2
図3
図4