特許第6194616号(P6194616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194616
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/16 20060101AFI20170904BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20170904BHJP
   G01P 3/49 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   F02B39/16 H
   F02B39/00 B
   F02B39/00 C
   F02B39/00 T
   G01P3/49
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-82943(P2013-82943)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206067(P2014-206067A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 圭
(72)【発明者】
【氏名】中野 健
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−092526(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02930037(FR,A1)
【文献】 実開平05−083334(JP,U)
【文献】 特開昭62−194466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
G01P 3/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサインペラの回転軸を回転自在に支持するベアリングを保持し、冷却水が流通する冷却水流路が設けられたベアリングハウジングと、前記冷却水流路を避けて前記ベアリングハウジングに挿入されており、先端が前記コンプレッサインペラの背面から前記ベアリングまでの間に配設され、前記コンプレッサインペラの回転数を計測する回転計と、を有する過給機であって、
前記コンプレッサインペラの背面から前記回転軸の軸方向に延びる根本部、前記回転数を計測するための溝部が設けられている、ことを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記ベアリングと前記コンプレッサインペラとの間には、潤滑油シール部が設けられており、
前記回転計の先端は、前記コンプレッサインペラの背面から前記潤滑油シール部までの間に配設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記ベアリングハウジングは、前記潤滑油シール部を備えるシールプレートを有しており、
前記シールプレートには、前記回転計を挿通させるための孔部が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の過給機。
【請求項4】
前記溝部は、扁平ドーム状の断面輪郭形状を有している、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の過給機。
【請求項5】
ベアリングを含み、冷却水路が形成されたベアリングハウジングと、
前記冷却水路を避けて前記ベアリングハウジングに挿入されており、先端が前記コンプレッサインペラの背面から前記ベアリングまでの間に配設された前記コンプレッサインペラの回転計と、
を有し、
前記コンプレッサインペラの背面から前記回転軸の軸方向に延びる根本部、前記回転計の前記先端に対向する溝部が設けられている、ことを特徴とする過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に用いられる過給機は、コンプレッサインペラとタービンインペラとが同軸で連結された構造を有し、内燃機関の排気ガスによってタービンインペラが回転駆動され、該回転駆動によりコンプレッサインペラが空気を圧縮し、その圧縮された空気が内燃機関に供給されるようになっている。この過給機においては、コンプレッサインペラの回転数を計測するべく、回転計を備えているものがある。
【0003】
この回転計として、例えば下記特許文献1には、コンプレッサインペラを回転軸に固定するためのナットを強磁性体から構成して磁化すると共に、磁化されたナットの磁束を検出する磁気センサをコンプレッサハウジングに取り付けるようにしたもの(特許文献1の図2参照)と、コンプレッサインペラの回転軸に溝を設け、この溝と対向するようにベアリングハウジングに電磁ピックアップを取り付けるようにしたもの(特許文献1の図3参照)と、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−194466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術は、次のような問題がある。
コンプレッサハウジングに磁気センサを取り付けて計測する形態では、コンプレッサハウジングに形成された吸気流路に、磁気センサの先端が露出し、コンプレッサインペラに吸い込まれる気体の流れに乱れが発生してしまう場合がある。
また、ベアリングハウジングに電磁ピックアップを取り付けて計測する形態では、ベアリングには潤滑油が所定圧で供給されるため、油漏れ対策として潤滑油の圧力が解放される位置(先行技術ではベアリングとベアリングの間)に電磁ピックアップの先端を配設しなくてはならない。しかしながら、水冷式のベアリングハウジングを採用する過給機においては、通常、その位置に冷却水流路が形成されている。冷却水流路には、100℃以上となっても冷却水が沸騰しないように、高圧で冷却水が供給されており、その位置に電磁ピックアップを挿入すると、冷却水漏れや、漏れ出した冷却水と潤滑油との混合の問題が発生し、ベアリングハウジングの冷却構造に影響を与えてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、コンプレッサインペラに吸い込まれる気体の流れを乱すことなく、また、ベアリングハウジングの冷却構造に影響を与えることなく、コンプレッサインペラの回転数を計測できる過給機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、コンプレッサインペラの回転軸を回転自在に支持するベアリングを保持するベアリングハウジングと、前記コンプレッサインペラの回転数を計測する回転計と、を有する過給機であって、前記ベアリングハウジングには、冷却水が流通する冷却水流路が設けられており、前記回転計は、前記冷却水流路を避けて前記ベアリングハウジングに挿入され、その先端が前記コンプレッサインペラの背面から前記ベアリングまでの間に配設されている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、回転計が冷却水流路を避けて、その先端がコンプレッサインペラの背面からベアリングまでの間に配設されるように、ベアリングハウジングに挿入される。コンプレッサインペラの背面側からベアリングまでの間は、コンプレッサインペラに吸い込まれる気体の吸気流路に面することがないため、回転計の先端によってコンプレッサインペラに吸い込まれる気体の流れを乱すことはなくなる。また、回転計は、冷却水流路を避けてベアリングハウジングに挿入されているため、冷却水漏れや、漏れ出した冷却水と潤滑油との混合の問題を解消することができる。
【0008】
また、本発明においては、前記ベアリングと前記コンプレッサインペラとの間には、潤滑油シール部が設けられており、前記回転計の先端は、前記コンプレッサインペラの背面から前記潤滑油シール部までの間に配設されている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、回転計の先端がコンプレッサインペラの背面からベアリング手前の潤滑油シール部までの間に配設されるように、ベアリングハウジングに挿入される。コンプレッサインペラの背面側から潤滑油シール部までの間は、潤滑油流路に面することがないため、潤滑油漏れや潤滑油による計測への影響の問題を解消することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記ベアリングハウジングは、前記潤滑油シール部を備えるシールプレートを有しており、前記シールプレートには、前記回転計を挿通させるための孔部が形成されている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、冷却水流路が形成されていないシールプレート部分に孔部を形成し、その孔部に回転計を挿入することで、容易に冷却水流路を避けて回転計を配設することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記コンプレッサインペラの根元部に、前記回転数を計測するための溝部が設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、コンプレッサインペラの根元部に溝部を設け、この溝部と対向するように回転計の先端が配設される。コンプレッサインペラの根元部においては、冷却水流路や潤滑油流路が近くを通っているため、熱による計測への影響を低減することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記溝部は、扁平ドーム状の断面輪郭形状を有している、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、コンプレッサインペラの根元部おける溝部を扁平ドーム状の断面輪郭形状とすることにより、遠心力によって径方向に作用する引っ張り応力による応力集中を低減することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記コンプレッサインペラの背面に、前記回転数を計測するための溝部が設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、コンプレッサインペラの背面に溝部を設け、この溝部と対向するように回転計の先端が配設される。コンプレッサインペラの背面においては、根元部と比較して遠心力によって径方向に作用する引っ張り応力が小さいため、溝部の形状の制約が少なくなる。
【0013】
また、本発明においては、前記溝部は、半球状の断面輪郭形状を有している、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、コンプレッサインペラの背面における溝部を半球状の断面輪郭形状とすることにより、応力集中を避けつつ溝部を形成する領域を小さくすることで、コンプレッサインペラの回転バランス調整に与える影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンプレッサインペラに吸い込まれる気体の流れを乱すことなく、また、ベアリングハウジングの冷却構造に影響を与えることなく、コンプレッサインペラの回転数を計測できる過給機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態における過給機の全体構成図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるコンプレッサインペラの構成を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるコンプレッサインペラの要部構成を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態におけるコンプレッサインペラの構成を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態におけるコンプレッサインペラの要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における過給機1の全体構成図である。
過給機1は、内燃機関等から排気される排気ガスを受けて回転動力を得るタービン2と、タービン2によって得られた回転動力を伝達する軸部3と、軸部3から伝達される回転動力によって空気を圧縮するコンプレッサ4とを備えている。
【0018】
タービン2は、タービンハウジング2aと、タービンインペラ2bとを備えている。タービンハウジング2aは、タービンインペラ2bを収容すると共に、タービンインペラ2bの収容空間に接続される排気ガス流路(スクロール流路2c及び排気流路2d)を備える容器である。タービンインペラ2bは、スクロール流路2cから排気流路2dに流れる排気ガスを受けて回転駆動されるラジアルインペラである。
【0019】
軸部3は、ベアリングハウジング3aと、ベアリング3bと、回転軸3cとを備えている。ベアリングハウジング3aは、ベアリング3b及び回転軸3cを収容する容器であり、タービンハウジング2aに固定されている。ベアリング3bは、ベアリングハウジング3aの内部に収容されており、回転軸3cを回転可能に支持する。回転軸3cは、一端部がタービンインペラ2bと接続され、他端部がコンプレッサ4の後述のコンプレッサインペラ4bと接続されている。
【0020】
コンプレッサ4は、コンプレッサハウジング4aと、コンプレッサインペラ4bとを備えている。コンプレッサハウジング4aは、コンプレッサインペラ4bを収容すると共に、コンプレッサインペラ4bの収容空間に接続される空気流路(吸気流路4cとスクロール流路4d)を備える容器である。コンプレッサインペラ4bは、回転軸3cを介して伝達される回転動力によって回転駆動され、吸気流路4cから供給される空気を圧縮してスクロール流路4dに吐出するラジアルインペラである。
【0021】
上述のように構成された過給機1では、内燃機関からスクロール流路2cに排気ガスが導入されると、タービンインペラ2bに排気ガスが供給される。この排気ガスの供給によって、タービンインペラ2b、回転軸3c及びコンプレッサインペラ4bが、一体となって回転する。これにより、タービン2において回転動力が得られ、この回転動力が軸部3を介してコンプレッサ4に伝達され、コンプレッサ4において圧縮空気が生成される。
【0022】
次に、過給機1のベアリングハウジング3aの構成について詳しく説明する。
【0023】
ベアリングハウジング3aには、ベアリング3bとして、ジャーナルベアリング3b1と、スラストベアリング3b2とが組み付けられている。ジャーナルベアリング3b1は、所定間隔を空けて対となって配設されており、回転軸3cの径方向の荷重を受けるようになっている。また、スラストベアリング3b2は、ジャーナルベアリング3b1の外側(コンプレッサインペラ4b側)に配設されており、回転軸3cの軸方向の荷重を受けるようになっている。
【0024】
このベアリングハウジング3aには、潤滑油が流通する潤滑油流路3fと、冷却水が流通する冷却水流路3gと、が形成されている。潤滑油流路3fは、ジャーナルベアリング3b1、スラストベアリング3b2、回転軸3cに潤滑油を導くように、ベアリングハウジング3aの内部に形成されている。冷却水流路3gは、潤滑油流路3fとは連通せず、ジャーナルベアリング3b1、回転軸3cの周りを冷却水が流通するように、ベアリングハウジング3aの内部に形成されている。このように、ベアリングハウジング3aは、油冷式と水冷式の冷却構造を備えている。
【0025】
ベアリングハウジング3aは、コンプレッサハウジング4a側にシールプレート3dを有している。シールプレート3dは、不図示のボルトによってベアリングハウジング3aの本体に締結固定されている。シールプレート3dは、潤滑油シール部3d1を有している。潤滑油シール部3d1は、スラストベアリング3b2とコンプレッサインペラ4bとの間に配設されており、スラストベアリング3b2に供給された潤滑油がコンプレッサインペラ4bの背面4b1側に漏れ出さないようシールする構成となっている。
【0026】
このベアリングハウジング3aには、コンプレッサインペラ4bの回転数を計測する回転計10が設けられている。回転計10は、冷却水流路3gを避けてベアリングハウジング3aに挿入され、その先端11がコンプレッサインペラ4bの背面4b1からベアリング3b(スラストベアリング3b2)までの間に配設されている。なお、本実施形態では、回転計10の先端11が、コンプレッサインペラ4bの背面からベアリング3b手前の潤滑油シール部3d1までの間に配設されるようになっている。
【0027】
シールプレート3dには、回転計10を挿通させるための孔部3d2が形成されている。孔部3d2は、径方向に延在し、シールプレート3dを貫通して形成されている。また、ベアリングハウジング3aにも、回転計10を挿通させるための孔部3a1が形成されている。孔部3a1と孔部3d2は、径方向において連通し、ベアリングハウジング3aにおいて回転軸3cと直交する直交方向に回転計10を挿入可能としている。回転計10の先端11は、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2に隙間をあけて対向している。
【0028】
図2は、本発明の第1実施形態におけるコンプレッサインペラ4bの構成を示す図である。図3は、本発明の第1実施形態におけるコンプレッサインペラ4bの要部構成を示す図である。なお、図3(a)は、コンプレッサインペラ4bの背面4b1側の構成を示し、図3(b)は、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2の構成を示している。
図2に示すように、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2には、回転数を計測するための溝部20が設けられている。
【0029】
回転計10は、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2との距離間隔を計測するギャップセンサである。本実施形態では、回転計10として、例えば先端11にセンサコイルを備える渦電流式ギャップセンサを採用することができる。すなわち、本実施形態の回転計10は、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2に設けられた溝部20を、渦電流の作用によって検出することにより、コンプレッサインペラ4bの回転数を計測する構成となっている。
【0030】
本実施形態のコンプレッサインペラ4bは、回転軸3cがネジ締結するためのネジ孔4b3を有しており、孔が軸方向に貫通しない中実構造となっている。ここで、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2とは、ネジ孔4b3を形成するために背面4b1に突出して形成されたコンプレッサインペラ4bのネック部(首部)に相当する部分である。このコンプレッサインペラ4bの根元部4b2に設けられた溝部20は、図2に示すように、軸方向に沿って直線状に形成されている。
【0031】
また、この溝部20は、図3(a)に示すように、根元部4b2の周面の一か所に形成されている。本実施形態の溝部20は、図3(b)に示すように、扁平ドーム状の断面輪郭形状を有している。より詳しくは、溝部20は、底面21と、2つの曲面22と、を有する。底面21は、2つの曲面22を連続的に接続する平面部である。曲面22は、底面21の両側から立ち上がる側壁部である。
【0032】
続いて、上述のように構成された過給機1の回転計10の取付構造の作用について説明する。
【0033】
図1に示すように、回転計10は、冷却水流路3gを避けてベアリングハウジング3aに挿入され、その先端11がコンプレッサインペラ4bの背面4b1からベアリング3bまでの間に配設されている。コンプレッサインペラ4bの背面4b1側からベアリング3bまでの間は、コンプレッサインペラ4bに吸い込まれる気体の吸気流路4cに面することがない領域である。このため、回転計10の先端11によってコンプレッサインペラ4bに吸い込まれる気体の流れを乱すことはなくなる。
【0034】
また、回転計10は、シールプレート3dに設けられた径方向に貫通する孔部3d2に挿通されて配設されている。シールプレート3dには、冷却水流路3gが形成されておらず、このシールプレート3dに孔部3d2を形成することで、容易に冷却水流路3gを避けて回転計10を配設することができる。このように、本実施形態では、回転計10が、冷却水流路3gを避けてベアリングハウジング3aに挿入されているため、冷却水漏れや、漏れ出した冷却水と潤滑油との混合の問題を解消することができる。
【0035】
また、本実施形態においては、ベアリング3bの外側には、潤滑油シール部3d1が設けられており、回転計10の先端11は、コンプレッサインペラ4bの背面4b1から潤滑油シール部3d1までの間に配設されている。コンプレッサインペラ4bの背面4b1側から潤滑油シール部3d1までの間は、潤滑油流路3fに面することがない領域である。このように、回転計10の先端11がコンプレッサインペラ4bの背面4b1からベアリング3b手前の潤滑油シール部3d1までの間に配設されるようにすることで、孔部3d2からの潤滑油漏れや、先端11と溝部20との間に潤滑油が介在することによる計測への影響の問題を解消することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2に、回転数を計測するための溝部20が設けられている。コンプレッサインペラ4bの根元部4b2においては、冷却水流路3gや潤滑油流路3fが近くを通っているため、熱による計測への影響を低減することができる。コンプレッサハウジング4aは、気体の圧縮時の発熱により、全体が例えば200℃程度に発熱する。したがって、コンプレッサハウジング4aに回転計10を取り付ける従来構造では、耐熱性を具備するものを選定する必要があった。一方、ベアリングハウジング3aは、水冷及び油冷により例えば100℃程度に冷却されている。このため、本実施形態では、耐熱性による制限が少なくなり、回転計10に用いるセンサの選定の自由度を上げることができる。
【0037】
また、本実施形態においては、溝部20は、図3(b)に示すように、扁平ドーム状の断面輪郭形状を有している。コンプレッサインペラ4bが回転すると、遠心力によって翼部が径方向外側に引っ張られるような応力が作用する。この引っ張り応力は、コンプレッサインペラ4bの翼部の根元に向かうにつれて大きく作用する。溝部20は、底面21と2つの曲面で形成されており、模擬的に全体で曲率を緩やかにとる構成となっている。このため、コンプレッサインペラ4bの根元部4b2において、引っ張り応力が作用しても、溝部20における応力集中を低減できる構造とすることができる。
【0038】
このように、上述の本実施形態によれば、コンプレッサインペラ4bの回転軸を回転自在に支持するベアリング3bを保持するベアリングハウジング3aと、コンプレッサインペラ4bの回転数を計測する回転計10と、を有する過給機1であって、ベアリングハウジング3aには、冷却水が流通する冷却水流路3gが設けられており、回転計10は、冷却水流路3gを避けてベアリングハウジング3aに挿入され、その先端11がコンプレッサインペラ4bの背面4b1からベアリング3bまでの間に配設されている、という構成を採用することによって、コンプレッサインペラ4bに吸い込まれる気体の流れを乱すことなく、また、ベアリングハウジング3aの冷却構造に影響を与えることなく、コンプレッサインペラ4bの回転数を計測できる過給機1が得られる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0040】
図4は、本発明の第2実施形態におけるコンプレッサインペラ4bの構成を示す図である。図5は、本発明の第2実施形態におけるコンプレッサインペラ4bの要部構成を示す図である。なお、図5(a)は、コンプレッサインペラ4bの背面4b1側の構成を示し、図5(b)は、図4における領域Aの構成を示している。
第2実施形態では、コンプレッサインペラ4bの背面4b1に、回転数を計測するための溝部20が設けられている点で、上記実施形態と異なる。
【0041】
第2実施形態では、図4に示すように、コンプレッサインペラ4bの背面4b1に溝部20が設けられ、この溝部20と先端11が対向するように回転計10が斜めに配設されている。第2実施形態の溝部20は、図5(a)に示すように、径方向においてコンプレッサインペラ4bの半径の半分程度の位置に設けられている。また、溝部20は、図5(b)に示すように、半球状の断面輪郭形状を有している。溝部20は、曲面23を有する。曲面23は、上記実施形態の曲面22以下のR径で形成されている。
【0042】
上記構成の第2実施形態によれば、回転計10の先端がコンプレッサインペラ4bの背面4b1に配設される。コンプレッサインペラ4bの背面4b1は、コンプレッサインペラ4bに吸い込まれる気体の吸気流路4cに面することがない領域である。このため、上記実施形態と同様に、回転計10の先端11によってコンプレッサインペラ4bに吸い込まれる気体の流れを乱すことはなくなる。
【0043】
このコンプレッサインペラ4bの背面4b1においては、上記実施形態の根元部4b2と比較して遠心力によって径方向に作用する引っ張り応力が小さいため、溝部20の形状の制約が少なくなる。したがって、第2実施形態では、コンプレッサインペラ4bの背面4b1における溝部20を半球状の断面輪郭形状とすることにより、応力集中を避けつつ溝部20を形成する領域を小さくしている。このように第2実施形態では、溝部20を小さくすることができ、コンプレッサインペラ4bの回転バランス調整に与える影響を低減することが可能となる。
【0044】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、回転計の先端がコンプレッサインペラの背面から潤滑油シールまでの間に配設されている構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、回転計の先端が潤滑油シールの内側(ベアリング側)に配設される構成であっても良い。潤滑油流路内であっても、潤滑油の圧力が解放されていれば、シール対策は容易であり、回転計の挿入孔からの潤滑油漏れの発生を防止することができる。
【0046】
また、例えば、上記実施形態では、回転数を計測するための溝部が底面と2つの曲面からなる扁平ドーム状の断面輪郭形状を有している構成(図3(b)参照)について説明したが、底面は必ずしも平面でなくても良く、例えば、他の2つの曲面よりもR径が大きい曲面等であっても良い。
【0047】
また、例えば、上記実施形態では、回転計がギャップセンサからなる構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、コンプレッサインペラに磁石を埋め込み、その磁束を検出することで、コンプレッサインペラの回転数を計測する磁気センサを採用しても良い。
【0048】
また、例えば、上記実施形態では、コンプレッサインペラが回転軸とネジ締結するためのネジ孔を備える中実構造を有する構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、コンプレッサインペラが回転軸を挿通させるための挿通孔を備え、コンプレッサインペラの先端でナット止めする貫通構造を有するものについても適用することができる。この場合は、第2実施形態のコンプレッサインペラの背面に溝部を設ける構成を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…過給機、3a…ベアリングハウジング、3b…ベアリング、3c…回転軸、3d…シールプレート、3d1…潤滑油シール部、3d2…孔部、3g…冷却水流路、4b…コンプレッサインペラ、4b1…背面、4b2…根元部、10…回転計、11…先端、20…溝部
図1
図2
図3
図4
図5